スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百四十七話 小さき神
第百四十七話 小さき神
メメントメリを破壊したロンド=ベルは次の作戦行動について練っていた。
その場で。ルリがこう言った。
「彼等の居場所はわかりました」
「えっ」
「それも!?」
「メメントメリをハッキングした時にです」
その時のことを話すのだった。
「それがわかりました」
「ああ、そうか」
アキトはそれを聞いてすぐに納得して頷いた。
「メメントメリにそのデータがあったんだね」
「そうです。そこから判明しました」
「罠じゃないのか?」
サブロウタはここで疑う言葉を出した。
「まさかと思うけれどよ」
「罠!?」
「っていうと?」
「いやよ、わざとハッキングされるようにメメントメリに偽のデータを残しておいたとかよ」
彼はこう考えていたのである。
「そういうのじゃねえのか?よくある話だぜ」
「確かに」
「有り得る話ね」
皆サブロウタのその主張に頷くものを見出していた。
「そうして罠に誘い込む」
「よくある手だよな」
「いえ、それは違います」
だがここでルリは言うのだった。
「それなら最初からメメントメリは囮だった筈です」
「あれが囮!?」
「そしてそこから情報を渡して罠に誘い込む」
サブロウタの主張を受けたうえでの今の言葉だった。
「そうする筈です」
「そうですね」
テッサも今のルリの言葉に頷いた。
「確かにそうします」
「そしてその誘い出した場所で私達を叩く」
ルリの言葉が確かなものになった。
「ところがメメントメリはまさに最終決戦兵器でした」
「俺達を倒す為の」
「確かにそうだったわ」
「ですからそれは有り得ません」
あらためて罠の可能性を否定するルリだった。
「あれが罠だというのは」
「じゃあやっぱり」
「ハッキングから手に入れた情報は」
「本物の情報です」
あらためて言うルリだった。
「彼等の本拠地、そして戦力のことも」
「戦力までわかったの」
「凄いわね」
「まず本拠地は金星にあります」
「金星か」
「あそこなの」
皆金星と聞いて意外な顔になった。
「まさかあそこに本拠地を置いているなんて」
「太陽系の内側に」
「そしてさらにです」
ルリの言葉は続く。
「メメントメリはもう一つあります」
「何っ!?」
「まさか」
そのことも聞いて皆今度は驚いた。
「メメントメリがもう一つだなんて」
「あのデカブツが」
「いや、あっても不思議じゃないわ」
だがここでセニアが言うのだった。
「あれが二つあってもね。データがあるんだし」
「じゃあそれも潰さないと」
「駄目ってわけね」
「その通りです。そのメメントメリもまた潰さなければなりません」
ルリは言うのだった。
「そして他の戦力ですが」
「ああ、そっちもだよな」
「そっちはどうした感じなの?それで」
「ガルラ帝国の残存戦力に連邦軍から密かに流し入れた兵器」
そういうものだというのだ。
「そうしたもので構成されていますが」
「今まで戦った戦力と同じね」
「そうだな」
皆それを聞いて言い合った。
「それだったら」
「どうってことないな」
「数はそれなりにありますが」
ルリはこのことも把握しているのだった。
「ですがガルラ帝国と比較すると微々たるものです」
「よし、じゃあ決まりだ」
「一気に金星だ!」
「攻めましょう!」
彼等らしい積極的な攻撃案が述べられる。
「ルリちゃん、それでいいわよね」
「ここは一気に」
「はい、そうするべきです」
そしてルリもまたそれに賛成であった。
「ですが」
「ですが?」
「何かあるの?」
「ただ一気に金星に行っても何にもなりません」
こう言うのである。
「それでは相手にも迎撃の時間を与えます」
「それはそうだけれど」
「まさかと思うけれどここは」
「はい、ボゾンジャンプです」
それをするというのである。
「金星までボゾンジャンプを行い一気に」
「彼等を倒す」
「そうするのか」
「その通りです。敵の懐に飛び込みそのうえで勝負を決めます」
ルリはロンド=ベルの執り得る戦術の中で最も奇襲性の高い戦術を主張するのだった。
「それで如何でしょうか」
「了解」
「わかったわ」
皆それで頷くのだった。
「じゃあそれでね」
「やろうぜ」
「まずはその準備をしなければなりません」
ルリはここでまた言った。
「ボゾンジャンプは三日後に行いたいのですが」
「今からじゃないのかよ」
「何でなの?」
「あの火星の継承者の時はすぐに向かったのに」
「あの時はすぐに敵を倒す必要がありました」
その時はそうだったというのである。
「ですから急襲しましたが」
「今は違う」
「そうなの?」
「準備万端を整えたうえでの奇襲です」
今回はそれだというのである。
「ですから今すぐではありません」
「じゃあ補給物資とかも持って」
「そのうえでの奇襲なのね」
「そうです。それで行きます」
こう述べるのだった。
「それで宜しいでしょうか」
「賛成」
「異議なし」
皆これといって反対はしなかった。
「一気に行きましょう」
「準備を整えてからな」
「それではルリさん」
「はい」
ルリは今度はテッサの言葉に応えていた。
「三日後、一気に行きましょう」
「了解です」
こうして作戦が決まった。ロンド=ベルはそのうえで準備にかかる。その三日の間彼等は極めて平穏な状況であった。
しかしその中で。ガンダムチームの面々は月の街のハンバーガーショップにおいて窓の外において。あるものを見たのであった。
「えっ、あれって」
「まさか」
「アニューよね」
「ああ、間違いないな」
イーノにモンド、エル、ビーチャが次々に言う。
「外出するの珍しいよね」
「それも一人でって」
「最近ロックオンと一緒にいるけれど」
「今は一人だよな」
こう話すのだった。
「何かあるのかしら」
「ただぶらぶらしてるだけじゃねえのか?」
今度はルーとジュドーが言う。
「たまたまよ。そうしてるだけなんだろ」
「そうね」
ルーはジュドーのその言葉に頷いたのだった。
「じゃあ気にする必要はないかしら」
「そうだよね」
「ただ遊んでいるだけだ」
プルとプルツーもそう考えただけだった。
「じゃあパフェ注文しよう」
「チョコレートパフェがいいな」178
二人はここでもパフェだった。
「じゃあ皆も」
「それでいいか?」
「あたしはアイスクリームパフェ」
「僕はチョコレートサンデーかな」
「俺はバナナパフェがいいな」
「俺はソフトクリーム乗っけてな」
エル、イーノ、モンド、ビーチャはそれなのだった。
「今アイス食べたいから」
「僕はチョコレートがたっぷりと」
「俺バナナ結構好きなんだ」
「俺はソフトがな」
だからなのだった。四人はそれなのだった。
「じゃあ私は」
「そうだな。俺も」
ルーとジュドーも話すのだった。
「フルーツパフェにするわ」
「俺は一番でかいジャンボにするか」
「ジャンボ!?ハマーン、ジャンボって」
「ミネバ様はそれを召し上がられたいのですね」
何と店の中にはミネバとハマーンもいた。彼女達の姿を見て驚いたのはガンダムチームの面々であった。
「げっ、何であんた達がここにいるんだよ」
「いて悪いのか」
こうジュドーに問うハマーンだった。
「私達がハンバーガーを食べていて」
「いや、あんたがハンバーガーかよ」
そのハマーンを見ての言葉である。ハマーンの前には確かにハンバーガーがある。
「食べるのかよ、そんなの」
「私もまたハンバーガーを食べる」
だがハマーンはこう言うのだった。
「だからだ」
「それにパフェも食うのかよ」
「私も女なのだぞ、ジュドー」
不意にこんな言葉まで出すハマーンだった。
「私とて甘いものは好きだ。女だからな」
「じゃあパフェもかよ」
「大好物だ」
ここで衝撃の告白をするハマーンだった。
「よく食べる」
「ハマーンの作るパフェは最高よ」
ミネバが満面の笑顔で言うのだった。
「他にもケーキとかクレープとかムースとか。お菓子作るのが得意なのよ」
「って嘘だろ」
「ねえ」
皆それを聞いてまずはこう言い切った。
「ハマーンさんがお菓子ってよ」
「ちょっとねえ」
「想像がつかないよ」
ビーチャもモンドもイーノもひそひそと話をする。
「食うだけじゃなくよ」
「作るって」
「本当かな?」
「絶対に嘘よね」
「間違いないわ」
同じ女性であるエルもルーも信じてはいなかった。
「ワインとかならわかるけれど」
「そもそもお料理作ることだけでもまだ信じられないし」
何処までも妙なイメージを持たれているハマーンだった。
「けれどよ、料理上手いのは事実だしな」
「そうよね」
ジュドーとリィナはそれは知っていた。
「ちょっと。それでもよ」
「どうなのかしら」
「へっ、嘘に決まってるぜ」
「その通りだ」
ここで言い切ったのはエイジとシンだった。
「このおばさんがお菓子だって?冗談きついぜ」
「全くだ。全然女に・・・・・・ぐわっ!」
「それ以上の発言を禁じる」
ハマーンはそれぞれの手で二人の首を絞めてきたのである。
「いいな」
「あ、あぐぐぐぐ・・・・・・」
「ぐえええええ・・・・・・」
二人はそのまま落ちる。恐ろしい腕力だった。
「私はまだ二十一歳だ。おばさんではない」
「そ、それは知ってますよ」
「え、ええ」
サイとトールは落ちた二人を見ながらとりあえずハマーンに応えた。かなり引いている。
「けれどハマーンさんお菓子って」
「本当にお好きなんですか」
「けれど実際に今食べてるし」
「そうよね」
見れば今自分の前にあるジャンボパフェを食べている。それもかなりの勢いで。サイとミリアリアもそれははっきりと見ていることは否定できなかった。
「少なくとも食べることは好きなのは」
「事実なんですね」
「だからハマーンは甘いもの大好きなのよ」
ここでまたミネバが皆に話すのだった。
「いつも私と一緒におやつ食べてるし」
「御相伴させて頂いています」
ハマーンはにこりと笑ってミネバに顔を向けて答えた。
「ただ」
「ただ?」
キラがここでふとハマーンの言葉に気付いた。
「何かあるんですか?」
「あまり甘いものを食べ過ぎるのはよくないことだ」
ハマーンが言うのはこのことだった。
「糖分は歯に悪いし過度の摂取は肥満の元だ」
「つまりデブになるってことだよな」
「歳取ると新陳代謝落ちるしな」
復活したエイジとシンがまた言わなくていいことを言う。
「まあおばさんは仕方ねえよ」
「デブになるのが当たり前だしな・・・・・・ぐほっ!」
今度はハマーンの鉄拳をそれぞれ顔に受けて吹き飛ぶ。そうして店の壁に頭を打ちつけてまたしても倒れ伏すことになってしまった。
「生きてるかな」
「安心しろ、息はある」
斗牙とレイがそれを見てとりあえず言った。
「そう。じゃあいいけれど」
「そう簡単に死ぬ二人ではない」
このことはよく知っているレイだった。
「だからこのままでいい」
「そう。じゃあこのまま放置しておくね」
「それにしてもこの二人」
「本当に学習能力ないわね」
ルナとルナマリアはこのことに心底呆れていた。
「今さっき首絞められて落とされたのに」
「それでまた言うなんて」
「いい薬よ」
メイリンはこれで終わらせてしまった。
「暫くそこで昼寝させておけばいいわ」
「まあそういうことでね」
本当に二人を放置するミヅキだった。
「それではハマーンさんは」
「困っているが私も甘いものは好きだからな」
「時間とか決めてちゃんと食べているの」
またハマーンとミネバが言う。
「その後はしっかり運動もしている」
「いつも二人でね」
「何かお話を聞いていますと」
エイナの顔は笑顔だった。
「ハマーンさんってとても女性らしい方ですね」
「とりあえずあそこで昼寝している馬鹿二人にはわからないことね」
「全く」
ミレーヌとシルヴィアは今も倒れ伏しているエイジとシンを見て言う。
「まあわかる連中じゃないけれど」
「声も似てるけれど性格も頭の構造も似てるのね」
「とにかくよ。ハマーンさんよ」
アポロはアイスクリームを貪りながらハマーンに尋ねる。
「今度あんたのその手作りパフェな」
「食べたいのか?」
「ああ。悪いけれどそれでいいか?」
こう彼に尋ねるのだった。
「今度よかったらな」
「こちらとしても誰かに私の料理を食べてもらうことは有り難い」
ハマーンとしてもそうなのだった。
「是非共だ。頼む」
「では私も」
「私も。よかったら」
シリウスと麗花がそれを聞いて笑顔になる。
「御馳走になろう」
「喜んで」
「思えば不思議な話だよな」
ピエールは楽しそうに笑って言うのだった。
「別の世界の人の料理が食べられるっていうのもな」
「そうですよね。しかもこうして仲良くって」
「ないですよ」
つぐみとジュンも言う。
「何かと色々ありますけれど」
「楽しいですよね」
「戻って来てどうなっているかと思っていたけれどな」
ここにはグレンもいた。彼はゼリーを食べている。
「いいものだな。こうした雰囲気も」
「はい」
リィルもいる。
「この部隊でずっといたいです」
「私も。ハマーンと皆と一緒にいたいわ」
ミネバも笑顔で言う。
「ハマーンもそれでいいわよね」
「私の心はミネバ様と同じです」
ハマーンはそのミネバに顔を向けて答える。
「ですから」
「そうよね。皆一緒にね」
「しかし。明日いよいよなですよね」
「そうだな」
今度はプレアとカナードが話す。
「金星にボゾンジャンプで入って」
「そのうえで戦う」
「ルリちゃんの話じゃ一気に決めるつもりらしいけれど」
樹里がこのことを言う。
「どうなるのかしら」
「それは行ってみてだよね」
「ある程度は」
ジョージとリーアムはそんな話をしていた。
「とりあえずメメントメリは破壊するけれど」
「その他は不確定要素も多い戦いかな」
「それも中々面白くない?」
ギリはそうした状況も喜んでいるようだった。
「いきなり敵の中に飛び込んでそれで一気にやるわけだし」
「そういうものかな」
トビアはそれには少し懐疑的な顔であった。
「ルリさんはもう金星のこと全部知っていて教えてくれたけれど」
「それでも不確定要素は多いよ」
「そうよ」
「何だかんだいってもね」
アサギとマユラ、ジュリはこのことがわかっていた。
「はじめて行く場所だし」
「金星で今まで戦ったことないし」
「私達の世界でも」
「そういえばそうだったな」
カガリもここでこのことに気付いた。
「金星は本当にはじめてだ」
「そんなところでいきなり戦うっていうのはバクチか」
ジュドーは話を聞いていてこのことを察した。
「それもかなりのかよ」
「けれどやってみる価値はあるよ」
「そうだ」
プルとプルツーはこうジュドーに言ってきた。
「このまま金星に行くよりはよ」
「一気に勝負を決められる」
「ハイリスクハイリターンってことかよ」
「そうなりますね」
「今回の作戦はな」
ディアッカとニコル、イザークが言う。
「まあそういうのも面白いけれどな」
「奇襲して攻めますか」
「勢いも時として重要だな」
「よし、ここはもう腹を括るしかない」
アスランが言い切った。
「蝿でも何でも食べる覚悟だ」
「アスランさん、蝿って」
「まだ取り憑かれてるんですか?」
フィリスとエルフィはそれに突っ込みを入れる。
「やっと小さなドラゴンになれたのに」
「まだだったんですか」
「そういえば俺もだ」
「そうだな」
ハイネとミゲルもここで言う。
「間違えられることがあるからな」
「困ったことがある」
「俺はそういうのないんだよなあ」
ジャックはそれがかなり残念そうだった。
「結構羨ましいんだけれどな、それってよ」
「私も実は」
そしてそれはシホも同じだった。
「そういう人いなくて」
「私もだぞ」
「わたくしもですわ」
光と風もいた。
「かなり羨ましいぞ」
「歌は歌えますのに」
「私は結構いるけれど」
海はいるのだった。
「そういう人が」
「蝿の話は俺もあまり思い出したくないんだけれどな」
自分でもそうだというアスランだった。
「けれど思い出してしまうんだ」
「最早呪いみたいなものなんだね」
「ああ」
キラに対してもそうだと答える。
「シンはエイジはそれに比べて」
「答えは聞いてねえからな」
「俺も同じだ」
ここでその二人が見事復活してきた。
「じゃあ俺はヨーグルトサンデーな」
「レモンシャーベットな」
「っていうかあんた達」
「タフだな」
皆このことにまず呆れていた。
「さっき二回も落ちたのに」
「すぐ食べられるなんて」
「タフじゃなきゃ生きられないだろうがよ」
「伊達に不死身じゃねえぞ」
エイジもシンも全くこたえていなかった。
「俺は何があっても生きるからな」
「落ちた位で死んでたまるかよ」
「まあそれ自体はいいけれどね」
「かなり鬱陶しいことは鬱陶しいけれど」
ルナマリアとメイリンはかなり冷たい目で言い放った。
「あんた達戦力としては使えるし」
「頭の構造はともかく」
「頭だけは余計だよ」
「アカデミーの首席だろうがよ」
「座学は全然だったじゃない」
メイリンの言葉はきつい。
「実技がずば抜けていたらかトップだったんでしょ」
「やっぱり馬鹿だったんだな、こいつ」
エイジがそのシンを見て言った。
「俺もよく言われてるけれどな」
「同じ空気がするからわかるぜ」
「何で御前に言われても頭にこないんだ?」
シンはそれが自分でも不思議だった。
「他の奴だったら問答無用でぶん殴るけれどな」
「だから声似てるからじゃないの?」
今度はルナが彼に突っ込んだ。
「それって相当大きいから」
「やっぱりそれかよ」
シンは彼女に言われて気付いた。
「俺はマユ大切にしてるしな」
「俺だってアヤカずっと探していたしな」
「その一途さだけは認めるわ」
アスカも珍しくシンを認めている。
「他はともかく」
「何だよ、御前もいるのかよ」
「あたしがいて悪いの?」
「しかも綾波だっているじゃねえか」
見れば彼女やシンジもいた。
「綾波は肉食べないんじゃねえのかよ」
「マッシュポテト食べるから」
見れば実際にそれを食べていた。
「あと甘いものも」
「それはいいのかよ」
「ええ」
いいというのである。
「いいの。それにしても」
「何だよ、それで」
「アニューさん」
レイが言うのは彼女のことだった。
「何かおかしい気がするわ」
「おかしいか?」
「私の気のせいかも知れないけれど」
こう言いはする。
「けれど。何なのかしら」
「まあよ。気のせいってあるからな」
「直感からわかることっていつもだけれど」
シンに続いてシンジが言う。
「アニューさんに限ってそれはないよね」
「ええ人やしな」
トウジも彼女の人間性は認めていた。
「よお気がつくし」
「そうよね」
「いつもね」
ヒカルにケイスケも言う。
「ああいう人になりたいわ」
「全くだよ」
「少なくともあんたとは大違いね」
アスカがシンジを見ながら述べた。
「全く。かなり抜けてるんだから」
「何で僕なんだよ」
言われたシンジはかなり不満そうである。
「僕だって頑張ってるんだよ」
「シンジ君は頑張ってるよね」
「だよな」
キラとジュドーはシンジのフォローに回った。
「洗濯だってお掃除だって真面目だし」
「ブライトさんや未沙さんに言われるより前にやるしな」
「まあそれが普通なんだけれど」
ミレーヌはここでこう言った。
「中には普通じゃない人もいるしね」
「また俺かよ」
シンはミレーヌが自分を見ていることに気付いた。
「何で俺ばっかり言われるんだよ」
「あんた自分で洗濯したことあるの?」
「洗濯機ってどうやって動かすんだ?」
そんなことは全く知らないシンだった。
「そもそもよ」
「全く。こりゃ駄目ね」
速攻で駄目出しするミレーヌだった。
「マユちゃんも家で大変だったんでしょうね」
「別に洗濯機動かせなくても死なないだろ?」
「いや、やっぱりそれ位はできないと」
「駄目だと思うよ」
キラとシンジがそんなシンに突っ込みを入れる。
「何かいつもレイに一緒に洗濯してもらってるけれど」
「干すのも入れるのも」
「バサラでも普通にしてるのに」
「汗をかいた後はな。速攻で洗濯するんだよ」
そのバサラの言葉である。
「シャワーも浴びてな。それですっきりするぜ」
「バサラさんって案外」
「奇麗好きだったんだ」
「バサラはこれでも清潔よ」
ミレーヌがここで言う。
「性格はかなりあれだけれど」
「まあとにかく今は食べましょう」
アスカは自分の前に出て来たジャンボパフェを見ながら述べた。
「それからよ。話は」
「そういうことね。それじゃあ」
「食うか、明日に備えて」
皆は話を止めて食べはじめた。しかしその頃アニューは。
「ええ、明日よ」
何処かに自分の携帯で連絡を取っていた。
「明日出て来るから。その時は御願いね」
「わかったよ」
電話の向こうから声がした。
「それじゃあ明日ね」
「私達の為に」
アニューはまた言った。
「それじゃあ」
ここまで話して携帯の電源を消した。そのうえで姿を消すのだった。
その次の日だった。ロンド=ベルはボゾンジャンプによる金星への移動の準備を進めていた。
「さて、それじゃあ」
「行くか」
皆集まろうとしている。その中で話すのだった。
「まずは集結して」
「それから」
「皆さん、出来るだけ急いで下さい」
テッサが全軍に告げていた。
「遅れるとそれだけ敵に機会を与えてしまいます」
「そうですね」
ユリカが彼女の言葉に頷く。
「早いうちに集結しないとイノベイター達に気付かれます」
「急ぎましょう」
今度はスメラギが言った。
「そしてすぐに」
「金星へ」
「とにかく集結だ」
何はともあれ集結を急ぐ。だがいざ集まったその時に。
「!?」
そのボゾンジャンプを担当するルリが声をあげた。
「まさか」
「レーダーに反応です!」
メグミの声は悲鳴に近かった。
「四方八方から来ます!」
「イノベイター!?」
「まさか」
「いえ、そのまさかです」
ルリはここで全員に告げた。
「イノベイターです。来ました」
「気付かれた!?」
「間違いないわね」
スメラギはここで視線を暗くさせた。
「これは」
「じゃあスメラギさん」
「ここはどうします?」
「迎撃するしかないわ」
彼女の下した決断は現実を見たものだった。
「ここはね」
「やはりそうですか」
「ここは」
「じゃあスメラギさん」
ハルカがスメラギに問う。
「金星に行くのは」
「金星には行くべきです」
スメラギはここでまた言った。
「それもボゾンジャンプで」
「ボゾンジャンプで行くんですか?」
「けれどそれは」
「やはりそれが一番効果があります」
彼女はこう読んだのだった。
「おそらく今集まってきている敵は」
「この数、かなりですよ」
ハーリーの言葉は悲鳴に近かった。
「何か。十万はいますけれど」
「十万か」
「じゃあこの辺りにいる全部の敵が」
「そのまま金星に向かってもその都度敵と戦うだけです」
スメラギはさらに言う。
「それをその都度突破するよりもです」
「一気に金星に向かう」
「それですか」
「じゃあ一気に」
彼は言った。
「ボゾンジャンプで」
「二十分です」
またルリが言った。
「それだけ持ちこたえてくれればボゾンジャンプに入られます」
「よし、二十分か!」
「それまで思う存分戦ってやるぜ!」
「円陣を組め!」
カティも指示を出す。
「そのうえで守りきれ。いいな!」
「そしてあれですよね」
パトリックはそれを聞いて笑いながら言ってきた。
「それから全員で金星ですよね」
「その通りだ。金星には全員で向かう」
これが彼女の考えだった。
「わかったな」
「よし!たった二十分!」
「その間守りきるぜ!」
「できれば全滅させてやるか」
「だから来やがれ!」
総員守りきろうとするだけではなかった。積極的に倒そうとさえしている。
「どいつもこいつも叩き潰してやるぜ!」
「覚悟しやがれ!」
「そんな」
アニューは彼等を見て呟いた。
「これで戦意を喪失しないなんて」
「アニュー」
そのアニューにスメラギが声をかけてきた。
「は、はい」
「オペレート御願いね」
「わかりました」
何とか平静を装って彼等の声に応えた。そうして今はロンド=ベルのままでいるのだった。
戦いがはじまった。イノベイターの軍勢が一斉に襲い掛かる。しかしロンド=ベルはその彼等に対して一斉に攻撃を浴びせた。
「おらよ!」
「受けやがれ!」
まずは遠距離攻撃で彼等を吹き飛ばす。
続いて接近してきた彼等をそれぞれの攻撃で叩き潰すのだった。
「今度はこれでな!」
「どうだ!」
これでイノベイターのかなりの数が減った。しかしまだかなりの数がいた。
「ちっ、まだ来るな」
「十万の数は伊達じゃねえぜ」
「何、構うことはねえさ」
ロックオンがここで言う。
「敵はどんどん来てくれるんだ。俺達はただ倒すだけさ」
「そうだな。ここはそれだけでいい」
ティエリアも割り切って述べた。
「僕達は今は二十分だけ戦えばいいだけだ」
「二十分。長いのか短いのかはわからない」
アレルヤは言葉の間も敵を倒していく。
「けれど今はとにかく戦わないと」
「次につながることはない」
今度言ったのは刹那だった。
「それならだ」
「敵の第二波来ます!」
そのアニューが叫ぶ。
「またここで!」
「よし」
アニューの言葉を聞いて再び身構える。そのうえで沙慈に声をかける。
「いいな、行くぞ」
「うん」
彼もその刹那の言葉に頷くのだった。
「金星で彼等との戦いに決着をつける為に」
「今を戦い抜く」
こうして彼等はその第二波を迎え撃つ。今まさに彼等が来た。
「来たか!」
「それならな!」
「また倒してやるぜ!」
その第二波も迎え撃つ。彼等の戦いはそのまま凌いでいた。
戦いは果てしなく続くかと思われた。だが時間は必ず過ぎていくものだ。何時しか時間はその二十分になろうとしていた。
「時間です」
ここでルリが皆に告げた。
「ボゾンジャンプに入ります」
「敵は?」
「何だ?もう終わりか?」
見ればもういなかった。十万の敵は二十分の戦いで消え去っていた。
「よし、それなら」
「これで」
「全機艦に入って下さい」
こう告げるルリだった。
「そして今から金星に向かいます」
「了解」
「それじゃあな」
「さて、はじめてじゃのう」
童虎の中でアスカが言う。
「そのボゾンジャンプとやらは」
「色々ワープしたりとかはしていますけれどね」
「確かにそれははじめてですな」
サンユンとシャンアンが彼女に言ってきた。
「さて、どんなものでしょうか」
「少し期待ですな」
「金星でイノベイターの連中と決戦かよ」
「何かわくわくしてくるね」
NSXの艦橋ではジェオとザズが話している。
「そうだな。一気に乗り込んでな」
「やっつけてやろうか」
「僕も何か楽しみですね」
イーグルも二人に対して言ってきた。
「どうも彼等は好きになれませんので」
「よっしゃ!このまま殴り込みや!」
「あら、タータったら興奮して」
タータとタトラもいた。
「まずは慌てずに乗り物酔いしないようにこのお茶を」
「姉様、流石にそれはないから」
彼等はいつもの調子だった。その中で今ボゾンジャンプに入る。
「イノベイター、いよいよだな」
「刹那、それじゃあ」
「ああ、決める」
沙慈に対しても答えた。
「この戦いでな」
「そうだね。行こう」
沙慈も彼に対して頷いてみせた。
「戦いを終わらせにね」
「ああ」
ボゾンジャンプが皆を包む。そうしてそのうえで今金星に向かう。いよいよイノベイター達の本拠地での運命の戦いがはじまるのだった。
第百四十七話完
2009・9・6
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