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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百四十四話 魂の凱歌

              第百四十四話 魂の凱歌
  「敵の数は?」
「五十万はいます」
「そうか」
ブライトはその報告を聞いてまずは頷いた。
「流石に最後の戦いだけはあるな」
「どうしますか、艦長」
「それで」
「言うまでもない」
こうトーレスとサエグサに返すブライトだった。
「これまで通り総攻撃だ」
「了解」
「わかりました」
そして彼のその言葉に頷く二人だった。
「じゃあラー=カイラムもですね」
「主砲も他の砲も全部いけますよ」
「壊れるまで撃ち続けろ」
ブライトはこう告げたのだった。
「いいな」
「ええ、わかっていますよ」
「ここまできたらね」
「さあてと、厳しいけれどやりますか」
「おいおい、何が厳しいってんだよ」
マサキは速攻でミオに突っ込みを入れた。
「これ位の戦い幾らでもあっただろうがよ」
「まあね。私達はそれでいいけれどね」
自分達はいいというのだった。
「けれどね。サンドマンさんはね」
「あの人はかよ」
「そうよ。やっぱり辛いと思うわ」
珍しく真面目な顔になるミオだった。
「それでも来たんだと思う。やっぱり」
「そやろな。わしもそう思うわ」
ロドニーもそれは感じ取っていた。
「ほなわし等の出来ることはや」
「戦うだけでね、将軍」
「そや、その通りや」
エリスの今の言葉に頷くロドニーだった。
「やったるわ!五十万が何や!」
「その心意気だな。では私も」
ジノもいた。彼もまた言うのであった。
「ジノ=バレンシア、参る!」
「全機ここで倒れようとも悔いることはない!」
ファングが叫ぶ。
「サンドマン殿、周りは我等に任せてもらおう!」
「その通りよ!雑魚はあたし達が全部やっつけるから!」
ロザリーもいつも以上に燃えている。
「安心して決着をつけていいわよ!」
「皆、済まない」
サンドマンはここで彼等に対して礼を述べた。
「では私もまた」
「来ました!」
ここで命が告げてきた。
「ゼラバイアの大軍が取り囲んできます!」
「全軍突撃!」
大河はすぐにこの指示を出した。
「そして敵を迎撃する。いいな!」
「了解!」
今ここでゼラバイアの大軍が動いてきた。ロンド=ベルはそれに向かう。こうして今決戦がはじまった。
「来たな」
ヤンロンのグランヴェールが身構えていた。ゼラバイアの大軍を前にして。
「ならばこちらも行こう。メギドフレイム!」
その紅蓮の炎を放ったのだった。
それによりゼラバイアの大軍を焼き尽くす。しかしまだそれでも彼等の数は尽きない。
「サイコブラスターーーーーーーーッ!」
リューネのヴァルシオーネも攻撃を放つ。まさに最初から総攻撃だった。
幾ら倒そうとも向かって来るゼラバイア達。しかしロンド=ベルは怯んではいなかった。
「マサキ、また来るニャ」
「サイフラッシュニャ!?」
「決まってんだろうがよ」
こうクロとシロに返すマサキだった。
「ここはよ。どんどんやるぜ!」
「エネルギータンクはどんどん送られてくるニャ」
「だから心配することはないニャぞ」
「わかってるぜ。潰れるまでやってやらあ」
最初からそのつもりのマサキだった。
そして彼もサイフラッシュを放つ。その横にはテュッティがいた。
ガッテスも氷を放ちそのうえで。接近してきたその敵をグングニルで貫くのだった。
「これで!」
そのグングニルで貫かれた敵が爆発して果てる、これは戦いの一幕だった。
ロンド=ベルは圧倒的な数の敵に対して果敢に向かう。その結果ゼラバイア達はその数を大きく減らしていた。だがそれでもだった。
「敵は四十万か」
「はい」
命が大河に対して答える。6
「今はそれだけです」
「ようやく十万か」
「あと四十万ですね」
「何、大したことはない」
彼は言いながらそのまま目を正面に向けていた。そして言うのだった。
「全軍このまま攻撃を続ける!」
「それでいいんだな」
「そうだ。それこそが我等の今の進むべき道だ」
火麻にもこう返すのだった。
「今はそれだ」
「わかったぜ。じゃあ派手にやるぜ!」
彼等はその作戦を続けた。そして遂にゼラバイアの数が十万を切った時だった。ゼラバイアの惑星から遂にあの男が姿を現わしたのだった。
「!?あの巨大なゼラバイアは」
「まさか!」
「そのまさかだ」
ヒューギの既に勝ち誇った声が聞こえてきた。
「さあジークよ、いるな」
「僕はここにいる」
サンドマンは確かにいた。彼もすぐに応えるのだった。
「今ここに」
「ならば来るがいい」
ここでまた勝ち誇った声を出すのだった。
「そして私が倒してやろう」
「決着をつける」
「御前の死でな」
その巨大なゼラバイアがジークのグラヴィオンの前に来た。そして。
その激しい攻撃を浴びせてきた。忽ちのうちにサンドマンの乗るグラヴィオンは大きく揺れ動きその中で激しいダメージを受けてしまった。
「くっ!」
「サンドマンさん!」
「大丈夫ですか!?」
ロンド=ベルの面々はダメージを受けた彼のグラヴィオンを見て慌てて駆け寄ろうとした。
しかしそれは。サンドマン自身が止めたのだった。
「来る必要はない!」
「えっ、けれど」
「そのダメージじゃ」
「私はまだ大丈夫だ」
彼はこう言って仲間達を下がらせるのだった。
「私は。まだ戦える」
「ふふふ、そうでなくては面白くない」
ヒューギは必死に立っている彼を見てまた笑うのだった。
「貴様にそう簡単に死なれてはな。私としてもな」
「簡単には、か」
「そうだ。ただでは殺さん」
声にある嗜虐性がさらに強いものになっていた。
「ただではな。さあ来るのだ」
「言われずとも・・・・・・!」
その満身創痍のグラヴィオンの中で言うのだった。
「私は貴方を倒す!」
「グラヴィオンの援護に!」
レイヴンがここで叫んだ。
「援護に回れ!他のゼラバイアを近付けるな!」
「えっ、あのゼラバイアは攻撃しないんですか?」
「あのゼラバイアは」
「いいのだ」
こうオペレーターのメイド達に対して決意した声で頷くのだった。
「あの方がそう望まれているのだから」
「けれど。あのままじゃ」
「本当にサンドマン様は」
「いいのだ・・・・・・」
声が辛いものになっていた。
「それがあの方の決意なのだからな」
「・・・・・・そうですか」
「それじゃあ」
彼女達もそれに頷くしかなかった。レイヴンの今の言葉を受けては。
「わかりました。じゃあ他の敵を近付けません」
「サンドマンさんの周りに」
「そうしてくれ。頼む」
頼む、だった。
「ここはな」
「よし、じゃあそうするぜ」
バサラが応えてきた。
「あの旦那のステージならな。あの旦那に全部任せるぜ!」
「ちょっとバサラ」
ミレーヌは今のバサラの言葉におドと板。
「そんなこと言っていいの!?サンドマンさんは」
「あの旦那なら大丈夫だぜ」
しかし彼はこう言うのだった。
「絶対にな」
「何でそんなことが言えるのよ」
「俺にはわかるからなんだよ」
バサラの言葉は変わらなかった。
「もうな。それがな」
「わかるって。あんたまさか」
ミレーヌは今の彼の言葉から返した。
「また直感っていうの!?」
「その通りだ!」
いつも通りギターを手に高らかに言う。
「俺はそれで充分なんだよ!」
「あっきれた」
ミレーヌもこう言うしかなかった。
「しかもあたし達のバルキリーは武器を持っていないのにこんなに前に出て」
「攻撃になんて当たるかよ!」
実際に彼はその攻撃を避けていた。まるで蝶が舞うように華麗に。
「こんな攻撃によ!」
「それも直感だっていうの!?」
「御前だって攻撃は全部かわしてるじゃねえか」
「こんなの当たるわけないでしょ」
どうやらミレーヌもこうした意味でバサラと同じらしい。
「まるで止まってるみたいよ」
「へっ、それと同じなんだよ」
バサラは今のミレーヌの言葉にまた言った。
「俺には見えるんだよ。あの旦那がな!」
「じゃあサンドマンさんはどうなるのよ」
「心配するな」
不敵に笑って言った言葉だった。
「あの旦那は貫き通すぜ」
「勝利をってこと?」
「そうさ。だから俺はあの旦那のフォローに回る!」
言いながら早速ギターを派手にかき鳴らす。
「この歌でな!」
「何かわからないけれど納得してあげるわよ」
ミレーヌもここまで来ればだった。
「歌うわよ。いいわね!」
「よし、これで決まりだな」
レイは二人の話がまとまったところで言った。
「行くぞビリーナ」
「・・・・・・・・・」
ビリーナはいつものように無口だった。しかしこれで決まりだった。
バサラは今回も戦場で派手に舞う。そして歌うのだった。
「ゼラバイアでも何でもな!」
「ええ!」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーっ!」
彼は叫んだ。
「この歌が!戦いを終わらせるんだ!」
「相変わらず無茶苦茶だな」
リーはハガネの艦橋からそのバサラを見て呟いた。
「だが。その破天荒さがこの戦いを変えてきている」
「ほお、あんたにしては珍しい言葉だな」
ブレスフィールドは今のリーの言葉に突っ込みを入れた。
「認めるのか。あれを」
「認めざるを得ない」
これがリーの言葉だった。
「実際に我が軍の士気はあがり敵の動きに異変が生じているのだからな」
「はい、それはその通りです」
ホリスがここで言った。
「敵の動きがさらに散発的になっています」
「それじゃあ私達は」
「その敵を各個撃破するだけね」
シホミとアカネが言った。
「それでいいんですね」
「数が多いだけの相手になったのね」
「その通りだ。負ける気がしねえ!」
カズマがヴァルホークから叫ぶ。
「どれだけいてもよ。勝てる!」
「お兄ちゃん、この戦いいけるわ!」
ミヒロも言うのだった。
「このまま勝てるわよ!」
「ならばハガネもこのまま砲撃を続ける」
リーはバサラを認めはしてもその冷静さを崩してはいなかった。
「主砲一斉発射!」
「了解!」
ハガネも果敢に攻撃を続ける。そしてそれにヒリュウ改も続いていた。
「戦局が変わりましたね」
「はい」
ショーンがレフィーナに答えていた。
「かなり楽になりました」
「このままいけます」
レフィーナは言い切った。
「押します。宜しいですね」
「わかりました」
ユンが彼女の言葉に頷く。
「では艦長」
「ヒリュウ改も主砲一斉発射です」
それを行うというのだった。
「宜しいですね」
「了解です」
「では主砲一斉発射です」
レフィーナの右手があがった。
「それで敵を倒します」
「わかりました」
またユンが頷く。戦いはロンド=ベルに大きく傾いてきていた。
しかしそれは戦局全体のことであった。サンドマンとヒューギの戦いはサンドマンにとって著しく不利な状況であった。
グラヴィオンはさらに傷付き今にも落ちそうである。だが何とか立っている状況だった。
それはサンドマンも同じだった。コクピットの中で傷付いている。しかしそれでも彼は立っているのだった。
「まだ生きているのだな」
「僕は・・・・・・死なない」
彼は言うのだった。
「まだ・・・・・・死なない」
「先程も言ったがそうでないと面白くはない」
ヒューギはまた嗜虐性に満ちた笑みを浮かべてきた。
「私としてもな」
「義兄さんの乗るそのグラヴィオン」
見ればそのゼラバイアは確かにグラヴィオンに酷似していた。青に金色であった。
「必ず・・・・・・倒す!」
「貴様にこのゼラヴィオンは倒せん!」
だがヒューギはこう言って豪語してみせた。
「この業魔王ゼラヴィオンはな!」
「くっ!」
「食らえジーク!」
再びその攻撃がサンドマンを襲う。
「これが貴様の最期だ!」
何度も激しい攻撃を浴びせる。サンドマンのグラヴィオンは何時爆発してもおかしくない状況だった。エイジ達も何とかしたかったがそれは無理だった。
「動いたらいけないんだ」
「駄目だっていうのかよ!」
「サンドマンが言っているから」
斗牙がこう言ってエイジ達を止めているのだった。
「だから。僕達は」
「!?斗牙御前」
ここでエイジは彼のことに気付いた。
「言葉に血が。滲んでやがるぞ」
「血が・・・・・・」
「唇。噛んでやがるな」
今の彼の言葉でわかったのである。
「そして必死に思い止まっているんだな」
「いや、僕は」
「嘘をついても無駄だぜ」
斗牙の言おうとしていることはわかった。だから止めたのだった。
「もうよ。それはな」
「エイジ・・・・・・」
「そうだよ、御前の言う通りだよ」
そしてまた言うエイジだった。
「俺達はサンドマンを助けちゃいけないんだ。一緒に戦っちゃな」
「あの人との戦いは」
斗牙もまた言う。
「それだけは」
「そうさ。けれどあのままじゃよ」
だがそれでもだった。
「サンドマンやべえぜ」
「まさか」
しかしここで。リィルが言ってきた。
「まさかですけれど」
「!?リィル」
「どうしたんですか?」
ルナとエイナがそのリィルに問うた。
「まさかって一体」
「何かあるのですか?」
「私がゼラヴィオンに接近すれば」
リィルはここで言うのだった。
「まさかゼラヴィオンは動きを止めるかも知れません」
「!?それってどういうことなの?」
ミヅキは今のリィルの言葉に怪訝な顔になった。
「一体。どういうことなの」
「伯父様はまだお母様のことを思っておられます」
彼女が言うのはまずこのことだった。
「妹であるお母様のことを」
「思っている?」
「まさか。そんなわけねえだろ」
斗牙もエイジもそれには懐疑的な言葉を返した。
「あの人がそんな」
「絶対に有り得ねえよ」
「けれどやってみる価値はあります」
だがそれでもリィルは言うのだった。
「お母様の娘である私が近付けば」
「それでどうなるっていうのかしら」
ミヅキは真面目に彼女の話を聞いていた。
「あのゼラヴィオンが」
「動きが止まると思います」
こう言うのである。
「伯父様がまだ私のことも思っていてくれているのなら」
「御前のことがかよ」
「そうです。ゼラヴィオンは私を守る為に」
その動きを止めるというのである。
「ですから私が近付けば」
「戦わなくても近付くことはいいっていうんだね」
斗牙は今の戦いのルールについて考えを及ばせていた。
「そういうことだね」
「それもあります。ですから」
「よし、わかったよ」
斗牙が頷いた。
「今から行こう」
「斗牙、いいんだな」
エイジがその彼に問うた。
「行くんだな、本当に」
「うん」
斗牙ははっきりとした声で頷いてみせた。
「そのつもりだよ。リィルの言う通りにね」
「よし、わかった」
エイジは彼の言葉を聞いたうえで頷くのだった。
「わかったぜ。じゃあ行くか」
「エイジもそれでいいんだね」
「御前もリィルもそれでいいっていうんならな」
彼も言うのだった。
「俺もそれでいいぜ。好きにやりな」
「有り難う、エイジ」
「礼なんかいいんだよ」
それはいいというエイジだった。
「だからだ。行くぜ」
「了解」
「わかりました」
続いてルナとエイナが答える。
「あたしもそれでいいわ」
「私もです」
「当然私もよ」
ミヅキも微笑んで応えてきた。
「行きましょう。皆でね」
「よし、グラヴィオン行くよ!」
斗牙がここでグラヴィオンを動かしたのだった。リィルの言葉に従い。
そのうえでゼラヴィオンに近付く。それだけだった。だがそれだけのことでゼラヴィオンは。その動きを止めてしまったのだった。
「何っ、まさか」
「やっぱり」
その動きを止めたゼラヴィオンを見てヒューギとリィルが同時に声をあげた。
「リィルなのか」
「伯父様はまだ私のことを」
「くっ!」
ヒューギは歯噛みした。しかしそれだけだった。
「リィルならば」
「そうか」
そんな彼を見たサンドマンは言うのだった。
「義兄さん、貴方は人間だ」
「私が人間だというのか!?」
「そうだ。今貴方はリィルに気付き見た」
まずはそのことを言うのだった。
「そしてそのゼラヴィオンもリィルを守る為に彼女が近付けば動きを止める」
「戯言を」
「いや、戯言ではない」
サンドマンは彼の否定する言葉を否定して返したのだった。
「それが何よりの証拠だ。貴方はまだ人間なのだ」
「黙れ!」
そう言われてもまだ否定しようとするヒューギだった。
「私は人の心を捨てた。この私は!」
「ならばだ」
しかしサンドマンはまだ彼に言うのだった。
「貴方は何故ルフィーラを傍に置いているのだ」
「何だとっ!?」
「貴方の最愛の存在だった彼女を。何故だ」
「くっ・・・・・・」
「それは貴方が人間だからだ」
だからだというのである。
「貴方が人間だからだ。だからこそ彼女をアンドロイドとしても傍に置いているのだ」
「戯言を言うのもいい加減にしろ」
しかしヒューギはなおも否定するのだった。
「私はゼラバイアだ。ヒューギ=ゼラバイアだ」
こう言うのである。
「その私に対してそのようなことを言うとは」
「兄さん・・・・・・」
この時だった。声がした。
「兄さん、ジーク・・・・・・」
「何っ!?」
「やはり」
その声に対してヒューギは驚いた。サンドマンは納得した顔だった。
「ルフィーラ。まさか」
「彼女に心が宿ったのだ」
サンドマンは驚くヒューギに対して告げた。
「長い間貴方と共にいるうちにだ」
「心が宿ったというのか」
「そうだ。宿ったのだ」
こう言うのである。
「ルフィーラの心が」
「馬鹿な、そんな筈がない」
「では今の声は何だというのだ」
サンドマンはなおも彼に告げる。
「彼女の今の声は」
「くっ・・・・・・」
「彼女の心はある。そして貴方も人間だ」
こう告げるのだった。
「それを今はっきりさせよう」
「ほざけ!はっきりしていることはただ一つだ!」
ヒューギの声が叫びに変わっていた。
「ジーク!貴様の死だ!」
「今その決着もつける!」
サンドマンの目が光った。
「僕達の因縁に!」
「死ね、ジーク!」
二人は同時にそれぞれの最大の攻撃を繰り出した。
「超重剣!」
「受けてみよゼラヴィントソード!」
二人はお互いに剣を繰り出した。それにより断ち切らんとしていた。
「サンドマン!」
「御父様!」
エイジ達は赤と青の凄まじい衝撃が走る中を見た。双方の激突の中で彼等は消えていた。しかしその衝撃が消えた時だった。立っていたのは。
「くっ・・・・・・」
「終わった」
サンドマンは呟いていた。その超重剣を一閃させた彼だけが立っていた。ヒューギのゼラヴィオンは袈裟斬りにされそこからスパークを生じさせていた。
「ジーク、勝ったのは御前だったか」
「義兄さん、僕は」
「そうだな。私は人間だ」
ヒューギの顔が急激に穏やかなものになっていく。そのうえで言うのだった。
「私はな。人間なのだ」
「やっとわかってくれたんだね」
「今までそれを否定してきた」
そのことをだというのだった。
「それをな。だがもうそれはできない」
「人間であることを否定することを」
「そうだ。最早な」
こう言い続けるのだった。
「私はな。人間なのだ」
「うん。義兄さんは」
「そしてこうなることを望んでいたのだ」
こうも言った。
「御前に倒され。私自身の過ちを認めることをな」
「けれど義兄さんはわかっていた」
そのヒューギに対して問う。
「本当は間違っていたことを」
「人間だからだ」
しかしここでまた人間だと言うのである。
「自分が間違っていることを容易には認められないのだ」
「そう。人間だから」
「そうだ。そういう意味でもやはり私は人間だ」
人への批判の言葉だった。しかしその言葉もまた温かいものになっていた。
「醜いものだ。だがそれと共に」
「それと共に」
「温かいものなのだな」
「そう。人は確かに醜い部分もある」
サンドマンもそれは認めることだった。人のその顔も。
「だがそれと共に温かく美しい。人はそういうものだ」
「私もその人なのだな」
「そう。義兄さんも人間なんだ」
その醜く温かく美しい人間だというのだ。
「だから。もう」
「全ては終わった」
これまで彼が発したことのないような温かさのある言葉だった。
「ジーク、さらばだ」
「義兄さん・・・・・・」
「ルフィーナは幸せだった」
そして妹のことも言うのだった。
「御前を愛し愛されたのだからな」
「・・・・・・・・・」
「生きろ」
次にサンドマンに告げた言葉はこれだった。
「御前は生きろ」
「僕に・・・・・・生きろと」
「御前の考えることはわかっている」
彼に告げ続けるのだった。
「このまま。死のうというのだな」
「それは・・・・・・」
「御前の考えていることならすぐにわかる」
目もまた温かいものになっていた。
「己の罪を償いタナトスの下へ行こうと考えているな」
「・・・・・・・・・」
「行くな。御前が行くのはまだ先でいい」
それでいいというのだ。
「私はそこで長い間ルフィーラと共に御前を見たい」
「僕を・・・・・・」
「そうだ。幸せに生きている御前をな」
これが今の彼の言葉だった。
「見たいのだ。だから行くな」
そしてまた言うのだった。
「御前は残れ。いいな」
「そして義兄さんは」
「見ている。御前のことを」
ゼラヴィオンは今炎に包まれようとしていた。そしてヒューギもその中に消えようとしていた。
「だからだ。まだいい」
いいとも告げたのだった。
「そこにいろ。いいな」
最後にこう告げて炎の中に包まれていく。ヒューギ=ゼラバイアは微笑み今静かに息を引き取ったのだった。
そして今ルフィーラも。サンドマンに対して微笑んでいた。
「ジーク」
「ルフィーラ・・・・・・」
「貴方と一緒にいたこと。忘れないわ」
それは紛れもなくルフィーラの言葉だった。彼がよく知る。
「だから。さようなら」
「君も僕はまだここにいろと」
「貴方はまだやるべきことがあるから」
だからだというのである。
「貴方の幸せを見守っているわ。だから」
そして言う言葉は。
「さようなら」
こう言って彼女も姿を消した。後には微笑みだけが残った。
その時には周りの戦いも終わっていた。ゼラバイア達は全て倒されていた。ロンド=ベルは今回の決戦にも勝利を収めたのである。
「やったな!」
「ええ!」
「勝ったんだ!」
まずはその勝利を祝う彼等だった。
「俺達は勝ったんだ」
「ゼラバイアにもね!」
「よし、諸君!」
大河がここで言う。
「月に入る。そこでパーティーだ!」
「了解!」
皆笑顔で月に向かおうとする。だがここで。
サンドマンがいた。彼は言うのだった。
「生きろか」
こう呟くのだった。
「私に生きろというのか。義兄さん、レフィーナ」
「当たり前だろ」
それに応えてエイジが言ってきた
「そんなの当然じゃねえかよ」
「エイジ・・・・・・」
「あんたは生きなくちゃいけないんだよ」
彼もヒューギ達と同じことを言うのだった。
「絶対にな。何でかっていうとな」
「何故かというと?」
「俺はあんたに貸しがあるんだ」
こう彼に告げるのだった。
「数え切れない程のな。貸しがあるんだ」
「貸しだと。私にか」
「そうだよ。無理矢理グラヴィオンに乗せられて」
まずはそれだった。
「他にもよ。姉ちゃんのことだってよ」
「そうか。そうだったな」
「その貸しを全部返してもらうまであんたに死なれたら困るんだよ」
さらに言うのだった。
「ずっとな。永遠にな」
「永遠に。生きよというのか」
「ああ。あんたが死ぬまでな」
そういう意味だった。
「生きるんだよ。いいな」
「私は。やはり生きよと」
「そうよジーク」
ここでグラヴィゴラスから声がした。
「貴方は死んでは駄目。絶対に」
「えっ!?」
「レイヴンさん!?」
「いや、違う」
皆グラヴィゴラスの方を見て驚きの声をあげる。
「レイヴンさんの服を着てるけれどあの人は」
「女の人!?」
「しかも凄い美人」
さりげなくこのポイントはチェックされる。
「誰なの、本当に」
「あの人って」
「姉ちゃん・・・・・・どういうことなんだ」
ここでエイジが唖然とした顔で言った。
「何でアヤカ姉ちゃんがそこにいるんだよ」
「えっ、エイジのお姉さんってまさか」
「あの人だったの!?」
「あれがアヤカさん!?」
「そうよ」
今度言ってきたのはミヅキだった。
「私もアヤカもね。連邦軍から入っていたのよ」
「連邦軍からって」
「それでだったの」
「けれど私も彼女のことに気付いたのは最近のことよ」
ミヅキはこうも述べたのだった。
「いないと思って心配していたけれど。まさかね」
「御免なさい、ミヅキ」
アヤカはまずこのことを彼女に謝罪するのだった。
「誰にも言うわけにはいかなかったから」
「そうね。レイヴンだったってことはね」
「そうなの。だからエイジ、貴方にも」
「言わなかったのかよ」
「御免なさい」
弟に対しても謝罪した。
「貴方には辛くも当たったけれど」
「いいさ。どうせ俺ははねっかえりさ」
「自分でも認めているのだな」
カガリはそれを聞いて納得した顔になった。
「それは何よりだ」
「そうだね、カガリ」
ユウナは彼女異常に納得した顔になっていた。
「はねっかえりの保護者になると本当に苦労するんだよ」
「御前は何が言いたいんだ」
「全く。摂政でもあるし」
ユウナはオーブの摂政でもあるのだ。
「保護者っていうのは楽じゃないよ」
「私は子供か?」
「って御自身でわかっておられないんですか?」
「カガリ様、それはちょっと」
「問題なんですけれど」
アサギ、マユラ、ジュリがそれぞれ突っ込みを入れる。
「私達だって御守り役ですし」
「もう大変なんですけれど」
「気が休まる暇がありません」
「私は本当に手のかかる子供なのか?」
「子供っていうより猿だな」
ここでシンがまた言わなくていいことを言う。
「もうよ。動物園に入れられたばかりのニホンザルと同じだぜ」
「貴様!誰が猿だ!」
流石に去ると言われては黙っていられなかった。
「私が猿だというのか!」
「頭も外見も猿そのものだろうが!」
そしてシンもいつも通り言い返す。
「この雌猿!」
「許さん!ここで死ね!」
戦いが終わったのに撃ち合いをはじめる二人だった。
「今ここで!地獄に送ってやる!」
「おもしれえ!インパルスデスティニーの実力見せてやらあ!」
「こちらもだ!ストライクルージュをなめるな!」
「最新鋭に勝てると思ってるのかよ!」
「ベテランの味見せてやる!」
撃ち合い避け合う二人だった。そんな二人の間に呆れながらも入ったのはキラだった。
「ちょっと二人共」
「どけキラ!」
「どかないと御前も撃つぞ!」
これまた無茶苦茶を言うカガリだった。
「巻き込んでも知らねえぞ!」
「それでもいいのか!」
「だからカガリ」
ユウナも呆れ果てながら入って来た。
「そんなのだから言われるんだよ」
「ええい、黙れ!」
「黙れじゃなくてね」
「こいつだけは今ここで倒す!」
「望むところだ!こっちだってな!」
インパルスデスティニーのドラグーンまで出すシンだった。
「やってやらあ!覚悟しやがれ!」
「ドラグーンまで出すか、あいつ等」
エイジは主役の座を奪われながらも言うのだった。
「本気でやり合うつもりかよ」
「とにかくね」
アヤカはそれでも言うのだった。
「とりあえずはあの二人止めないといけないわね」
「今止めているよ」
万丈から通信が入った。
「ダイターンでね」
見ればダイターンが彼等をそれぞれ両手で摘んでいた。それで間を空けさせていた。
「味方同士でそんなことをするもんじゃないよ」
「くっ、放せ!」
「ほっときやがれ!」
カガリもシンもまだやる気だった。
「こいつだけは!こいつだけは!」
「ケリつけてやらあ!」
だがそれでも引き離されていた。何とかこれで喧嘩を終わらせるのだった。
これで話は元に戻った。アヤカはあらためてエイジに告げてきた。
「私はレイヴンだったの」
「ああ」
「レイヴンは仮面にその記憶が受け継がれていくの」
あの赤い仮面を見せながらの言葉だった。
「代々ね」
「そうだったのかよ」
「そしてルナ」
「はい」
今度はルナに言ってきたのだった。
「貴方の御父様もレイヴンだったのよ」
「そうだったんですか」
「レイヴンの記憶は代々受け継がれていく」
こうも話すのだった。
「それで仮面を着けている間は私もレイヴンだったのよ」
「じゃあ今は」
「そう。アヤカよ」
微笑んで答えるのだった。
「紅アヤカ。完全にね」
「まさかこんな近くにいたなんてよ」
エイジは驚きを隠せなかった。
「姉ちゃんがな」
「そしてジーク」
アヤカは今度はサンドマンに顔を向けていた。
「私からも言うわ。貴方は生きて」
「君も言うのか」
「そうよ。まだ戦いは続くわ」
こうも告げた。
「そしてその後の平和は」
「平和は」
「私と共に過ごして欲しいの」
これが彼女の願いだった。
「ずっと。一緒に」
「一緒に」
「貴方と一緒に生きていたいの」
心からの言葉だった。目は濡れていた。
「だから。御願い」
「それが君の願いか」
「僕もです」
「俺も」
「私もです」
ここでロンド=ベルの皆が彼に言ってきた。
「貴方と共にいたい」
「だからサンドマンさん」
「生きて下さい」
「皆・・・・・・」
「これで断るなんてことはできねえよな」
エイジが笑って彼に告げてきた。
「これでな。そうだろ?」
「皆が私に生きることを望むなら」
サンドマンは遂に顔をあげた。
「私はそうしなければならない。そうだな」
「そうだよ」
斗牙も言ってきた。
「だからサンドマン」
「うむ。では諸君」
「はい!」
「月に入ろう。そこで祝杯をあげるのだ」
「了解!」
遂にサンドマンは生きる決意をしたのだった。アヤカと、そして皆と。だがここで。残された最後の脅威が牙を剥くのだった。
「!?惑星が」
「来た!?」
「まさか!」
ヒューギとゼラバイア達のいたあの惑星が彼等に襲い掛かってきたのだ。
「惑星もゼラバイアだったの!?」
「そんな、ここにきて」
「どうする!?」
「グランナイツの諸君」
しかしサンドマンは冷静に言った。
「最後の合神を行う」
「最後の!?」
「それは一体」
「最終合神だ」
それだというのである。
「それを行う」
「最終合神!?」
「それって一体」
「最強にして最凶のグラヴィオンだ」
「最強にして最凶!?」
これもまたグランナイツの面々にはわからない言葉だった。
「それって一体」
「何なんですか?」
「アルティメットグラヴィオンだ」
サンドマンは彼等にこう答えた。
「今からそれに合体するのだ」
「アルティメットグラヴィオン」
「それが最強にして最凶のグラヴィオン」
「そして最後のグラヴィオンでもある」
サンドマンはこうも述べた。
「諸君、それに変身していいか」
「ああ、いいぜ」
最初に答えたのはエイジだった。
「あんたに従うぜ。何があってもな」
「僕もだよ」
次に頷いたのは斗牙だった。
「サンドマン、貴方にね」
「そうか」
「私もです」
「私も」
次にはルナとエイナだった。
「サンドマン様の仰ることなら」
「間違いありませんから」
「私を信じてくれるのか」
サンドマンはこのこと自体が嬉しかった。
「有り難う」
「当然私もね」
そしてそれはミヅキもだった。
「一緒に戦わせて」
「うん、わかった」
「御父様」
最後はリィルだった。
「伯父様と御母様の御言葉通りに」
「その通りだ。では諸君!」
「おお!」
「うん!」
応えるのはエイジと斗牙の二人だった。
「今こそ最後の合体を行う!」
「サンドマン、その言葉は?」
「最終合神!」
サンドマンはそれだというのである。
「それこそが最後の言葉だ、斗牙」
「よし、じゃあ行くよ皆!」
今ここで斗牙が叫んだ。
「最終合神!」
その言葉と共に今十機のグラヴィオンのマシンが合神下。そして今ドリルに剣、それとキャノンをその身に備えた神が降臨したのだった。
「あれがアルティメットグラヴィオンかよ」
「凄い・・・・・・」
「何て姿なの」
皆その姿を見てまずは息を呑んだ。
「あれなら本当に」
「ああ」
「やれるわ」
その腕でこうも言うのであった。
「あの惑星だって」
「たった一機でも」
「アヤカ!」
サンドマンはここでまた叫んだ。
「一撃で決める」
「ええ、ジーク」
アヤカもその言葉にこくり、と頷いた。
「これで終わるのね」
「全てが。ゼラバイアの因果の全てが」
終わるというのだ。
「義兄さん、ルフィーナ」
彼を見ていると告げて笑顔で去った二人の名も呟いた。
「見ていてくれ。これで決める」
「サンドマン!」
「うむ、これで終わらせる!」
エイジの言葉に応え今。グラヴィゴラスから重力子エネルギーを受ける。そうしてそのうえで今黄金色にその身体を輝かせ。不死鳥となったのだった。
「火の鳥!」
「その姿で!」
「全てが終わる!」
剣を構えながら突撃するグラヴィオンの中でまた叫ぶサンドマンだった。
「超重炎皇斬!!」
その姿で惑星に突進し剣を振り下ろした。すると。
巨大な惑星の動きが止まった。その次の瞬間に惑星は真っ二つになりそのうえで。静かに爆発し全てが終わったのだった。遂に。
「終わった・・・・・・」
「一撃で」
「何もかもが」
誰もがそれと見届けて呆然となっていた。
「ゼラバイアとの戦いがこれで」
「本当に終わったのね」
「諸君」
その全てを終わらせたサンドマンが皆に告げてきた。
「戦いは終わった」
「はい」
「そうですね」
「ゼラバイアとの戦いは終わった」
この戦いが終わったのは紛れもない事実だった。今確かに。
「では月に行こう」
「はい、待ってましたよ」
「祝賀にですね」
「そうだ。まだ倒すべき敵はいるが」
彼等のことばまだ覚えているのであった。
「しかし今は」
「ええ」
「ゼラバイアとの戦いが終わりました」
「それを祝おう」
そういうことだった。
「今は。それでいいな」
「皆それを待ってたんだよ」
「そうだったな」
ディアッカの言葉に微笑むサンドマンだった。
「待たせて済まなかった」
「いいことだ。貴方は私達に素晴らしいものを見せてくれた」
マシュマーは心からそのサンドマンを賞賛していた。
「このマシュマー=セロ、感服つかまつった」
「本当ですよね」
ゴットンも今回はそうであった。
「まさかね。こんな凄いもの見せられるなんて」
「ではサンドマンさん」
ミネバが微笑んで彼に告げた。
「行きましょう、月に」
「うむ、祝賀の場に」
「戦いはまだ続くわ」
プロフェッサーが言った。
「この世界でも。けれど今は」
「そうですよね。一つの戦いが終わったんですし」
「折角ですから」
「もう派手にいきましょう」
グラヴィゴラスのオペレーターのメイド達がそれぞれ言う。
「ぱーーーっと」
「思いきり」
「心ゆくまで」
「その通りだ」
アヤカはもうレイヴンに戻っていた。
「ここは。心ゆくまでだ」
「それは貴女の言葉かしら」
ミヅキがそのレイヴンに対してくすりと笑って問うてきた。
「それともレイヴンとしてかしら」
「どちらもだ」
こう返すレイヴンだった。それと共に仮面を外してアヤカにも戻って。
「私も。祝福したいわ」
「げっ、物凄い美人」
「確かに」
メイリンとルナマリアはそのアヤカの顔を見て言うのだった。
「何か聞いたような声だけれど」
「何度見ても凄い奇麗な人ね」
「何か聞いたような声か」
それに反応を見せたのはメリッサだった。
「それは何処で聞いたのだ?」
「メリッサさんだけれど」
「本当にそっくりなんですけれど」
こう彼女に突っ込みを入れる二人だった。
「何か心当たりないですか?」
「本当に」
「他人の空似だが」
こう返すメリッサだった。
「別に私はな。面識もなかった」
「そういえばメイドの娘の中にも似た声の人いるし」
「ステラちゃんだってねえ」
「ステラ。リィルと似てる」
実際にこんなことを言うステラだった。
「そういえば俺も」
「ああ、俺も思ってたんだよ」
スティングとアレックスが同時に言い出した。
「あんたと何か似てるよな」
「どっかで遺伝子が一緒なのかね」
「私も何かチュイルちゃんと」
「クスハちゃんと似てるぱよ」
「僕もルカと何処か似てるよね」
「前から思ってたんですよ」
クスハとチュイルの他に斗牙とルカもそうだった。
「何か僕もそういう人がいたんだ」
「ほっとしますね」
「声が似ている相手がいるのはいいことさ」
「その通りだ」
ミシェルの言葉に頷いたのはティエリアだった。
「それだけで随分落ち着くんだよ」
「もう一人の自分がいるように思えることで」
「ふん、羨ましくはないわよ」
「はい、そうですよねえ」
すねるようですねないアスカにミーナがのどかに笑って述べてきた。
「だって私にもやっとできたし」
「そうですね。アスカちゃん」
「何か声を言うと滅茶苦茶になりますね」
カトルはここまでのやり取りを聞いて思わず呟いてしまった。
「僕はよく敵の方にそうした人がいるって言われますけれど」
「結構いたわね、そういえば」
それに突っ込みを入れたのはミサトだった。
「あのファラ=グリフォンにしろね」
「あの人は本当にそっくりで驚きました」
「何かうちの部隊って似ている相手が敵味方に入り乱れてるのよねえ」
こう言ってぼやきもするミサトだった。
「そういえばマシュマー君とライト君とイルム中尉もね」
「おっと、そっから先は言わないでもらいたいな」
速攻でこう返したイルムだった。
「あれだろ?さっきのゼラバイアのよ」
「何度も同じ人かって思ったけれど」
「俺も気になって仕方がなかったんだよ」
実のところ彼自身もそうなのだった。
「何か異常に似ていてよ」
「そういえば俺も何か」
今度言ったのはタケルだった。
「黄金と雰囲気が」
「そうなんだよな。そっくり過ぎるぜ」
「あとファーラ姫」
タケルは彼女についても言うのだった。
「ロゼに雰囲気が」
「似てるっていうか」
「同一人物?」
皆タケルの言葉に一斉に頷く。
「お兄さんだって豹馬に似てない?」
「そうそう」
「俺がそれ一番不思議なんだよ」
その豹馬も言うのだった。
「何なんだよ。そっくりさんが何でこんなに多いんだよ」
「この部隊の特徴とはいえ」
「ここまで来るともう何が何だか」
「そうしたことも踏まえてだ」
このことについては自身も色々とあるサンドマンがここで言うのだった。
「諸君」
「ええ」
「それじゃあ何はともあれ」
「祝賀だ」
話をそこに戻してきたのだった。
「それでいいな」
「ええ、何はともあれ」
「月ですね」
「月で英気を養いそのうえでだ」
彼は言うのだった。
「彼等との戦いに向かう」
「はい」
「いよいよ最後の勢力ですね」
「さて、それはどうか」
最後の勢力というのには懐疑的なサンドマンであった。
「それについてはな」
「違うんですか?」
「まさか」
「いずれわかる」
だがここでは言わないのだった。
「いずれな。とにかくだ」
「ええ、何はともあれ月に」
「行きましょう」
「全軍月に向かう!」
サンドマンはあらためて指示を出した。
「それで今回の作戦を終了とする」
「了解!」
こうしてゼラバイアとの決戦に勝利したロンド=ベルは月に向かう。そして今はその勝利の美酒を心ゆくまで味あうのであった。今は。

第百四十四話完

2009・8・22
 
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