スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百四十三話 義兄弟
第百四十三話 義兄弟
宇宙に出たロンド=ベル。だがまずは静かなものであった。
「来ませんね」
「そうだな」
テツヤとエイタはこのことに少し拍子抜けしていた。
「もうすぐにでも全軍で襲い掛かって来るって思っていたんですけれど」
「そうはならないか」
「諸君」
ここで全艦のモニターにフィッツジェラルドが出て来た。
「礼を言う。この世界の為に戦ってくれて」
「いや、それはいいですよ」
「もうそれはね」
「君達の中にはこの世界の者ではない者も多いというのに」
「ああ、それこそどうでもいいことなんだよ」
こうフィッツジェラルドに告げたのは勝平だった。
「俺達だって今はこの世界にいるんだからな。同じだよ」
「同じか」
「そうさ、同じさ」
彼ははっきりとフィッツジェラルドに話していた。
「だからいいってことよ」
「ううむ、そう考えてくれるか」
「難しいことは考えることはありません」
次に彼に言ってきたのはミサトだった。
「私達もまた同じですから」
「そうだな。同じ人間だな」
フィッツジェラルドはこう考えることにしたのだった。
「それではだ」
「はい」
「頼んだぞ。連邦軍も参加させてもらう」
最後にこう告げて姿を消した。彼の姿が消えてから皆言うのであった。
「こっちの世界の大統領はな」
「そうね」
「意外と話がわかるな」
フィッツジェラルドへの評価は悪いものではなかった。
「結構酷い奴が向こうには多かったからなあ」
「最近大分ましになったけれど」
「三輪のおっさんとかな」
彼の名前を出したのは京四郎であった。
「あのおっさんはまた極端だったがな」
「凄かったわよね、本当に」
ナナも三輪のことを思い出して言う。
「あの人は特に」6
「他にも色々いたからな」
今度言ったのはコウだった。
「ティターンズみたいな組織もあったしな」
「そっちの世界も随分と大変だったんですね」
八雲が話を聞いてきて彼等に告げてきた。
「それもかなり」
「かなりっていうかね」
「まあ洒落にならなかったっていうか」
あちらの世界の面々はこれには頷くのだった。
「もう何ていうかね」
「出鱈目だったし」
「それで今はどうなんですか?」
今度はキムが彼等に問うた。
「やっぱり今もそんな感じですか?」
「今はかなりましになったよな」
「ああ」
「少なくともまともにスペースノイドのこと考えてくれるようになったし」
「惑星開発だって進んでるし」
それは確かにかなりの進歩であった。
「おかしな人はかなりいなくなったし」
「普通に動くようにはなったわ」
「曲がりなりにだけれど」
「相当酷かったんだな」
剣人はここまで話を聞いて述べたのだった。
「そっちの世界は」
「こっちの世界はまだ政府はしっかりしているみたいだな」
アキラはこのことは把握できたのだった。
「だから随分助かったのか」
「そうよねえ。確かに」
ルナが視線を上に向けて考える顔になって述べた。
「それはないわね。大統領はあの人だし」
「羨ましいな。それは」
「そうよね」
あちらの世界の面々にとってはまさにそうであった。
「三輪長官がサイクロプスのボタン押した時なんか」
「どうなるかって思ったし」
「あれは俺も唖然とした」
イザークがここで言った。
「あの時はザフトにいたがな」
「サザーランド君も目が点になっていましたし」
アズラエルもこの話は知っているのであった。
「あの時彼はアラスカ基地の司令官でしたが」
「ああ、サザーランド大佐」
「あの人も元気かしら」
「サイクロプスから逃げられたけれど」
最早彼等にとっても懐かしい思い出であった。
「失脚はしてないのよね」
「確かな」
「今は台湾にいますよ」
アズラエルがここでそのサザーランドの現状を話した。
「そこで頑張っていますから」
「そうですか、それはよかった」
「台湾だと食べ物は美味しいですしね」
「まあそれはともかくとして」
「これからだけれど」
話はこれからの戦いのこといなるのだった。
「ゼラバイア、どう来るのかな」
「それね」
遥がここで言うのだった。
「私はてっきり宇宙に出て来たらもう大軍が待っているって思っていたわ」
「僕もです」
八雲もそれは同じなのだった。
「最後の戦いになるのですからやはり」
「けれどそうしてこない」
遥の顔が考えるものになっていた。
「それが何故かというと」
「策がある」
今言ったのはレイヴンだった。
「そう考えるのが妥当だな」
「その通りだ」
不動もまた言うのだった。
「間違いなくゼラバイアは仕掛けてくる」
「さて、それが何か」
「それですけれど」
「ヒューギ=ゼラバイア」
不動は今度は彼の名前を出した。
「果たしてどう攻めて来るのか」
「全軍警戒を怠るな」
ブライトは冷静に述べた。
「いいな。どんな事態にも対処できるようにだ」
「わかりました」
「それじゃあ」
皆警戒を怠ってはいなかった。何時何が起こっても対処できるようにしていた。その中で斗牙はリィルと共にいた。グラヴィゴラスの廊下で窓を見ながら話していた。
「ねえリィル」
「はい」
リィルは斗牙の言葉に応えてきた。
「あの時のことですか」
「御免ね」
リィルに顔を向けて謝る斗牙だった。
「あの時は」
「いえ、私わかったから」
リィルはこう彼に返したのだった。
「斗牙が言いたかったことが」
「僕が言いたかったこと?」
「ええ。私は一人じゃない」
リィルはまた言った。
「それが言いたかったのよね」
「・・・・・・・・・」
斗牙は今は何も言わなかった。ただ無言でこくりと頷くだけだった。
「そう。やっぱり」
「君にはサンドマンがいる」
彼はここであらたに口を開いた。
「御免、それを言いたかったけれど」
「私には御父様がいる」
リィルはここでまた言った。
「それがわかって」
「わかって?」
「今はとても嬉しいわ」
見れば笑顔になっていた。
「一人じゃないってわかったから」
「そうだったんだ」
「ええ。私は一人じゃない」
笑顔での言葉がまた出される。
「それに斗牙も傍にいてくれているから」
「僕はずっとリィルの傍にいるよ」
見れば斗牙もまた笑顔になっていた。
「前に言ったよね」
「ええ」
「リィルは僕が守るって」
彼もまた笑顔になっていた。
「言ったよね、前に」
「ええ」
「だから。ずっと傍にいるよ」
だからだというのである。
「僕はリィルの傍にね」
「有り難う」
今度は静かに微笑むリィルであった。
「それじゃあ。私も」
「これが最後の戦いになるかも知れないけれど」
その覚悟はあるのだった。
「それでもね。傍にいるよ」
「有り難う」
二人は今その絆を感じ合っていた。それを廊下の陰から見ているのはルナだった。彼女はそんな二人を見ながら寂しい顔をしていた。
「おい」
その彼女に声をかけてきたのはエイジであった。後ろから声をかけてきたのだ。
「どうしたんだよ」
「どうしたんだよって?」
「そんなところにいてよ」
こう声をかけてきたのである。
「何かあったのかよ」
「別に」
その質問にはぷい、と顔を背けるルナであった。
「何もないわよ」
「そうかよ。何もないのかよ」
「そうよ。なにわ」
「だったらいいけれどな」
「今二人は一緒にいるけれど」
ルナはそう言いながらまた斗牙達を見るのだった。
「二人はもう」
「ああ、そうだな」
エイジもここで彼等を見るのであった。
「一緒にいるよな」
「そうね。一緒にいるわね」
また言うルナだった。
「斗牙はリィルと」
「おいルナ」
エイジはそのルナに声をかけた。落ち込もうとしている彼女に。
「てっきり震えてるんじゃないかって思ってたけれどよ」
「そんなわけないじゃない」
ルナはそれは少し怒った顔になって否定した。
「私だってずっと戦ってきたんだしね」
「そうか。じゃあ平気だな」
「そうよ」
ややムキになってまたエイジに返す。
「これ位ね」
「じゃあ行くぜ」
また言うエイジだった。
「飲みにな。流石に出撃が近いかも知れないから酒は駄目だけれどな」
「じゃあ何があるの?」
「ジュースかサイダーか」
そういったものだというのである。
「烏龍茶か。何がいいんだよ」
「紅茶がいいわ」
彼女はそれがいいと答えた。
「それとお菓子よね」
「ああ。そっちは随分とあるぜ」
笑ってルナに告げるのであった。
「じゃあ楽しくやるか」
「あんたと私で?」
「駄目か?」
またルナに問うのであった。
「それじゃあよ。嫌なら別にいいんだけれどよ」
「いいわ」
しかしルナは微笑んでこう答えるのだった。
「それじゃあね。一緒にね」
「ああ、行こうぜ」
「ええ」
二人は笑顔で廊下から姿を消した。そうして二人になるのだった。エレベーターではミヅキとレイヴンが二人並んで一緒に立っていた。
「最後ね」
「そうだな」
「少なくともゼラバイアとの戦いはね」
それは最後だというのである。
「もっともこれで本当に最後になるかも知れないけれど」
「覚悟はしている」
これがレイヴンの返答であった。
「そうなってもな」
「後悔はしないというのね」
「私はあの人と共に行く」
だからだというのである。
「後悔はしない」
「絶対になのね」
「絶対にだ」
レイヴンの言葉は変わらない。
「だからだ。私は行く」
「わかったわ」
微笑んでレイヴンの言葉を受けるミヅキだった。
「じゃあ私も」
「頼んだわ」
ここではこう言うレイヴンだった。そしてエレベーターが今止まった。するとレイヴンはすっと前に動いてエレベーターから出るのであった。
「それじゃあ」
「不器用ね」
ミヅキはその背を見て呟く。
「昔からだけれど」
微笑んでの言葉だったがレイヴンは答えなかった。そうしてそのままエレベーターを後にして何処かへと向かい姿を消してしまったのであった。
宇宙に出たその日はゼラバイアの動きはなかった。警戒は怠っていなかったが至って平和であった。
「ゼラバイアは?」
「いや」
「何処にも」
実際にこうしたやり取りがあった。
「見当たらないな」
「一機もね」
「おかしいわね」
それを聞いたミネバが怪訝な顔で呟いた。
「プレッシャーは感じるのに」
「ミネバ様もですか」
「やはり」
今の彼女の言葉に傍にいたランスとニーが応える。
「それは私もです」
「はっきりと感じます」
「何か歪んだ邪なプレッシャー」
言うミネバの顔は曇っていた。
「それをはっきりと感じるわ」
「その通りです。間違いなくいます」
感じているのはイリアも同じであった。
「あの男、ヒューギ=ゼラバイアは」
「ええ」
「間違いなくこの近くにいます」
それははっきりと感じ取っているのだった。
「ですが姿は」
「まだ見せてこないのね」
「姿を見せたその時こそなのですが」
こう述べて暗い顔にもなるイリアだった。
「ですが今は」
「焦ったら負けなのはわかっているけれど」
ミネバもそれがわかるようになってきていた。
「けれど今のままじゃ」
「お気持ちはわかります」
「それは」
そのミネバにまたランスとニーが告げてきた。
「ですがミネバ様、ここはどうか」
「御気を鎮められたままで」
「わかっているわ。ハマーン」
「はい」
モニターにハマーンが出て来た。彼女も今は出撃しているのだ。
「そろそろ休憩よね」
「その時間ですが」
「グワダンに戻って来て」
こう彼女に告げるのだった。
「そして二人で」
「わかりました」
ここまで言えば充分だった。二人の間では。
「それではホットケーキを焼きますので」
「頼むわ」
ホットケーキと聞いて微笑むミネバだった。
「それを二人で食べましょう」
「ですがミネバ様」
ハマーンは少し釘も刺してきた。
「召し上がられた後は」
「歯を磨けっていうのかしら」
「その通りです」
こう微笑んでミネバに告げるのであった。
「さもなければ虫歯になってしまいますので」
「わかってるわ」
少し苦笑いになって言葉を返すミネバであった。
「ハマーンの言うことはいつも聞いているわ。安心して」
「そうして頂ければ何よりです」
ここでハマーンも微笑むのであった。
「歯は非常に大事ですから」
「ハマーンは歯も凄く奇麗だからね」
ミネバはハマーンを褒めもした。
「私も何時までもハマーンみたいな歯になりたいわ」
「有り難き御言葉。それでは」
こんな話をしたうえでミネバはここではハマーンと二人で彼女が作ったそのパンケーキを食べるのだった。それでかなりリラックスするのだった。
その日は結局何もなかった。それで拍子抜けしている面々もいた。
「ちぇっ、今日のうちにって思ってたのによ」
「そんなに残念だったのね」
「当たり前だろ!?」
シンであった。いらいらした様子で皆に応えていた。
「もうよ。ゼラバイアの連中ともこれで決着だって思ってたのによ」
「気持ちはわかる」
アーウィンが答える。
「その気持ちはな」
「ですけれどお」
しかしここでグリースも言うのだった。
「短気は損気ですう」
「っていうかシンってねえ」
「気が短いにも程があるぜ」
パットとヘクトールの突っ込みであった。
「もうちょっと落ち着けないの?」
「そんなんだと長生きできねえぜ」
「俺はゲーセンの占いで百二十歳まで生きるって出たから大丈夫なんだよ」
しかしシンはこう言い返すのだった。
「長生きに関しちゃな」
「うわ、確かに凄い生命線」
「異様に長いな」
ミーナとジェスが彼の手の生命線を見て言った。確かにとんでもない長さである。
「そりゃこれだけ長かったら」
「長生きできるか」
「俺に戦死はねえしな」
この自信もあるのだった。
「だからだいじょうぶだよ、絶対にな」
「やれやれだな」
「確かに死にはしないだろう」
今度はイルムとリンが彼に言ってきた。
「しかしよ、どんだけ大怪我しても知らねえぜ」
「怪我をしても生きることは生きるのだぞ」
「まあ怪我はな」
怪我については流石に思い当たるところのあるシンだった。
「結構やってきたしな」
「それでもどんな大事故でも大怪我はなってないのよね」
「骨折とか捻挫とか全然しないのよね」
ルナマリアとメリリンはその目を線のように細めさせたうえで横目でシンを見て言ってきた。
「本当に不死身なんじゃないかって思うけれど」
「無駄に怪我しにくいのよね」
「俺は鉄人なんだよ」
今度はこんなことを言うシンだった。
「だからな。絶対に死なないんだよ」
「死なないのはいいことだ」
レイは何故かシンの方についている。
「その強運が助けにもなる」
「強運はいいことだがな」
「けれど何かシン君って」
「シンでもシンきれない」
リョーコ、ヒカルときてイズミだった。
「死に切れない・・・・・・」
「・・・・・・あのよ、イズミさんよ」
静まり返ってしまった中でシン本人がイズミに突っ込みを入れた。
「もう最近駄洒落じゃねえ別の世界に行ってねえか?」
「駄洒落でない駄洒落」
「っていうか強引過ぎてよ」
最早強引というレベルすら超えているのが現実である。
「何がもう何だかよ」
「確かにそうなんだよな」
サブロウタもここで頷く。
「どうも最近駄洒落とはまた別のもんになってるんだよな」
「じゃあ何なんですかね」
ジュンもここで言う。
「最近のイズミさんは」
「わからん」
ダイゴウジは一言だった。
「それを言われてもな」
「確かに何かなのだろうが」
ナガレも言う。
「それが何かまでは」
「それがイズミさんらしいって言えばらしいけれど」
アキトは一応はイズミを認めてはいた。
「やっぱり。駄洒落じゃないような」
「そうだよなあ。あたしも最近何だって思ってたんだよ」
「そうだったんですか」
ヒカルがリョーコに問い返す。
「リョーコさんはそういうふうに」
「じゃあヒカルはどう思ってたんだよ」
「いえ、普通に駄洒落だって」
彼女はこう思っていたのである。
「思ってましたけれど」
「いや、それは絶対にねえ」
リョーコは断言してみせた。
「最近のこいつのネタはな。駄洒落じゃねえ」
「駄洒落はもう止めなしゃれ」
ある意味絶好のタイミングでまた言うイズミであった。
「今度は?」
「寒い・・・・・・」
「何か急に寒くなったけれど」
「これって」
これこそが皆の返事だった。
「ちょっと今のも」
「何ていうか」
「了解」
しかもここで敬礼で返すイズミだった。
「そういうことで」
「まあとにかくよ」
とりあえず話を戻してきたシンであった。
「明日にはあいつ等出て来るんだろうな」
「そうじゃないの?」
「多分」
皆の返事は今一つ要領を得ないものだった。
「向こうも必死だし」
「それ考えたら」
「よし、じゃあ出て来たら派手にぶっ潰してやるぜ」
彼は奮い立つ声で言い切った。
「もうよ。片っ端からな」
「それはいいけれど」
「今のシンの言葉って」
皆今度はシンのその言葉に対して突っ込むのであった。
「何ていうかね」
「エイジそっくりだし」
「おまけに声そのものだって」
「最近やたら間違えられるんだよ」
エイジもここでこう皆に返すのだった。
「エイジの奴とよ。声がよ」
「俺もだけれどね」
アキトもここで言うのだった。
「ほら、ビリーさんとね」
「あっ、確かに」
「そっくり」
皆一斉に今のアキトの言葉に突っ込みを入れる。
「っていうか声同じじゃないの?」
「似ていないようでそっくりだけれど」
「そうなんだよな。外見は違うのに」
アキトとしてもこう言うのだった。
「何でかな。そっくりなんだよな」
「私はレイちゃんなのよね」
「私はアスカちゃんですう」
パットよグリースはそうなのだった。
「って性格全然違うのにね」
「不思議ですよねえ」
「俺はウーヒェイなんだよな」
「俺はデュオの他にも一杯いるのだがな」
ヘクトールとアーウィンも相手がいた。
「やっぱりキャラがなあ」
「それぞれ違うのはどういうことだ」
「私何でハーリー君に似てるんだろ」
「俺はどうしてカツに似ているんだ?」
ミーナとジェスはそれが不思議でならないようである。
「最初彼と会ってびっくりしたけれど」
「不思議なこともあるものだ」
「おいおい、俺だってマシュマーの旦那やライトと似てるっていつも言われるぜ」
「私はイーグルとシンジ君にだ」
何とイルムとリンもであった。
「それもそっくりってよ」
「何処が似ているんだ?」
「声って不思議よねえ」
「全く」
ルナマリアとメイリンがここで言った。
「私なんかパンドラって言われるし」
「私もアテナって」
二人は妙な心当たりがあった。
「何よそれ、って思うけれど」
「妙に納得できたりするし」
「世の中色々とある」
レイはそれをまとめてこう述べた。
「本当にな」
「あんたが言うと説得力あるわね」
「確かにね」
今のレイの言葉に頷く二人だった。
「あんたも声似てる人一杯いるしね」
「そう思いますよね、アーウィンさんも」
「そ、そうだな」
何故かここでは口篭るアーウィンだった。
「俺も同感だ」
「そうなんですね、やっぱり」
「けれど何か今のアーウィンさんって」
しかしここでふと気付いた二人だった。
「焦ってません?」
「どうかしたんですか?」
「い、いや別に」
戸惑いながら答えるまた言うアーウィンだった。
「何でもない。気にしないでくれ」
「何でもないんですか」
「そうなんですか」
二人はそれでいいとした。しかし話はこれで終わりではなかった。とんでもない方向に向かうのだった。
不意に警報がなった。皆そちらに顔を向ける。
「警報!?」
「まさか!」
「はい、そのまさかです!」
テセラの声が響く。
「ゼラバイアです!」
「よし、遂に来たか!」
「総員出撃ね!」
「いえ、ちょっと待って下さい」
だがここでテセラがまた言ってきたのだった。
「そうじゃなくてですね」
「!?どうしたんだよ」
「ゼラバイアが来たんじゃないのかよ」
「それが妙なんです」
こう言ってきたのだった。
「何か。これって」
「これって?」
「どうしたのよ」
「詳しいことはモニターを見てくれ」
そのモニターにレイヴンが出て来て皆に言う。
「この映像をだ」
「な、何だこりゃ!?」
「あんなでかい星が何時の間に!?」
何と地球のすぐ傍に巨大な黒い惑星が来ていたのだった。そしてそこから地球を覆うようにしてゼラバイア達が出撃しようとしていた。
「しかもあれって」
「何だよ、あの瘴気」
何か得体の知れない瘴気まで生じていたのだった。それもまた惑星から放たれていた。
「あれでまさか地球を!?」
「それで人類も」
「その通りだ」
今度はサンドマンが出て来て皆に告げてきた。
「これが彼等の最終作戦だ。これを防がなければ我々に未来はない」
「ええ、そうですね」
「確かに」
皆それを見てすぐにわかった。そうしてそのうえでサンドマンの言葉に頷くのだった。
「このままじゃ本当にこの世界の地球は」
「ゼラバイアに」
「諸君、時は来た」
ここでサンドマンはまた言った。
「総員出撃、そして」
「はい、地球を守ります!」
「何があっても!」
こう叫んで皆出撃するのだった。そうしてそのうえで配置に着く。ゼラバイア達は今惑星から出ていた。だが彼等は出たところで拡がるのを止めたのだった。
「俺達に来るってのか」
「まずはそれで倒すつもりか」
彼等はそれを見て言うのだった。
「ならよ。やってやらあ!」
「一機残らず倒してやるぜ!」
全員向かって来る彼等に対して向かう。今ゼラバイアとの最後の戦いがはじまった。
「ブライト」
「わかっている」
ブライトはアムロの言葉に頷いた。
「ここは総攻撃だ」
「そうだな」
「エネルギー及び弾薬の補給は何時でもできるぞ」
「既にエネルギータンクは随分持ってきていますからね」
「ええ、大統領がくれたものが」
トーレスとサエグサも言う。
「あれだけあれば好きなだけ戦えますよ」
「ゼラバイアがどれだけいても」
「そういうことだ。突撃しそのうえでそれぞれの得意なやり方で戦うのだ」
「接近戦もいいんだな」
それに応えたのは豹馬だった。
「コンバトラーはやっぱりそれだからな」
「ならばそうするのだ」
こう返すブライトだった。
「どちらにしろこれがゼラバイアとの最後の戦いだ。地球を守る為に」
「ああ。やってやるぜ!」
忍が応えて叫ぶ。
「かかって来やがれ。容赦はしねえぜ!」
「行くぞ皆!」
健一も言う。
「ゼラバイアを倒して地球を守るんだ!」
「了解!」
こうしてロンド=ベルは敵に向かって突撃した。そうしてすぐに目の前にいる敵を次々と薙ぎ倒していく。ゼラバイア達を圧倒していた。
しかしゼラバイア達も数で攻める。それは途方もない数だった。だがそれでも彼等は戦う。その当然ながら中にはグラヴィオンもいる。
「おい斗牙」
「うん」
「敵は多いけれどよ」
エイジは言うのだった。
「肝心のボスはいないみてえだな」
「そうだね。指揮官はいないね」
斗牙もそれを察していた。
「どういうわけか」
「そのせいか敵の戦術はないわね」
ミヅキはそのことを見抜いていた。
「ただ遮二無二個々で攻めて来るだけだわ」
「だから対処は簡単ね」
ルナも言う。
「何かやけに」
「おかしいですね」
エイナはこのことに違和感を感じていた。
「最後の戦いならあの人が出るのが当然なのに」
「あいつか」
エイジはそれを聞いて嫌そうな顔になった。
「サンドマンの義理の兄貴だっていうよ」
「はい。あの人です」
「伯父様・・・・・・」
リィルの顔が曇った。
「けれど伯父様は確かに」
「それは間違いない」
近くで戦うカミーユが応えてきた。
「ヒューギ=ゼラバイアだったな」
「はい」
「邪悪なプレッシャーがある。間違いなくここにいる」
「いるんですか。伯父様は」
「ここまで邪悪なプレッシャー。嫌でも感じる」
カミーユはその目を鋭くさせていた。
「嫌でも感じるんだよ」
「じゃあよ。迷うことはねえな」
エイジはカミーユの今の言葉を聞いて明快に述べた。
「この連中よ。全部潰してやるぜ!」
「十万ってところね」
「十万!?上等だぜ!」
その数を聞いても臆するところのないエイジだった。
「もうよ。数で怯んでたらガルラ帝国には勝てなかったからよ!」
「じゃあいいね、皆」
「ええ、斗牙」
ルナが応える。
「やりましょう。皆で」
「うん、行くよ」
「おうよ!」
エイジが頷いてみせた。
「行くぜ、地球の人達の為にな!」
ゼラバイア達との戦いはそのまま激しさを増していく。アクエリオンもその手を伸ばしていた。
「うおおおおおおおおおおっ!!」
「伸ばしたのはいいが」
「どうするのアポロ」
アポロに対してグレンと麗花が問う。
「伸ばしただけというんじゃないだろうな」
「それは何にもならないわよ」
「こうする!」
二人に応えてその手を振り回しはじめた。するとそれで周りにいるゼラバイア達をその両腕で薙ぎ倒していくのであった。
「そうか。伸ばした手で潰すか」
「そうした戦い方もあるのね」
「後ろはない。なら戦うだけだ!」
アポロは叫ぶ。
「こうやってな!」
「そうだ、そのまま戦うのだ」
不動がアポロのその戦い方を認めて頷く。
「己が最もいいと思うやり方でな」
「かなり無茶苦茶ではありますね」
スメラギもこう言うだけだった。
「あんなのまさかと思うわ」
「その通りだ」
カティもそれは同じ意見だった。
「この部隊の戦い方はかなり滅茶苦茶だが今のはな」
「敵を倒せればいいんだよ」
だが当のアポロはこう言うのだった。
「何をやってもな」
「その通りだ。戦い方は一つではない」
やはりアポロを認める不動だった。
「諸君、このまま戦うのだ!」
そしてそれを全員に告げる。
「正面からな!」
「了解!」
戦いはさらに激しさを増していくがロンド=ベルはゼラバイア達の数を減らしていっていた。そうしてやがて惑星に近付いてきていた。
「よし、いよいよだ」
「あの星がゼラバイアの本拠地だな」
そのことを直感で察しているのだった。
「それなら遂に」
「来たのね」
「来たな、遂に」
ヒューギの声も出て来た。
「ジークよ」
「義兄さん・・・・・・」
「では来るのだ。決着を着けよう」
「・・・・・・・・・」
「私と御前のな」
「ならば」
サンドマンはその言葉を受けた。そうして艦橋の中で背を向けた。そうしてそのまま姿を消すのだった。
「後は頼んだ」
「!?サンドマン様」
「どちらに」
「私も行く」
こうメイド達に告げるだけだった。
「最後の戦いの為に」
そして向かった場所はゴッドシグマグラヴィオンの前だった。今それに乗り込もうとしていた。
だがその彼に追いすがるようにしてレイヴンが来た。そうして言うのだった。
「待って下さい」
「行くのをか」
「そうです」
その通りだというのだった。
「若し行けば貴方は」
「わかっている」
サンドマンはこくりと頷いて応えるのだった。
「私にとってこの戦いは」
「わかりました。ですが」
レイヴンはここで仮面を取った。そうしてアヤカに戻り。そのうえで言うのだった。
「約束して、ジーク」
アヤカはサンドマンを見て言った。
「必ず戻って来るって」
「・・・・・・済まない」
だがサンドマンは言えなかった。その言葉への返答は。俯いてこう言うだけであった。
「だがそれでも私は」
「行くのね」
「義兄さんとの決着をつけに」
それは必ずだというのである。
「私も行かなければ」
「けれど貴方のG因子はゴッドシグマグラヴィオンに乗れば」
「それもわかっている」
全てわかっているというのだった。
「しかしそれでも私は」
「命を縮めてまで」
「命あるものは必ず死ぬ」
サンドマンとて、なのだった。
「ならば今がそれを賭ける時だ」
「ジーク・・・・・・」
「ゴッドシグマグラヴィオン出撃する!」
今サンドマンはそのゴッドシグマグラヴィオンに乗り込んだ。
「えっ、グラヴィオンがもう一機!?」
「まさか!」
「そのまさかだ」
サンドマンは驚くメイド達に告げた。
「私が行く」
「サンドマン様・・・・・・」
「まさか・・・・・・」
「義兄さんとの決着は私がつける」
ここでもこう言うサンドマンだった。
「だからこそ。私は今ここで」
「サンドマン様の仰る通りにするのだ」
アヤカはもうレイヴンに戻っていた。
「レイヴン様」
「じゃあ」
「そうだ。今よりゴッドシグマグラヴィオンは出撃する」
そしてレイヴンとして彼女達に告げた。
「今からな」
「わかりました」
「それじゃあ」
彼女達もレイヴンにまで言われてはうなずくしかなかった。そうしてそのうえで出撃するサンドマンだった。その時にはもう戦いは一旦終わっていた。
しかしそれでもサンドマンは戦場に姿を現わしていた。まるで戦いがこれからであるかのように。
「!?グラヴィオンがもう一機だと!?」
「乗っているのは誰!?」
「私だ」
サンドマンは出撃している皆に対しても言うのだった。
「私が乗っているのだ」
「サンドマンさん、グラヴィオンに」
「どうして」
「義兄さんとの決着をつける為に」
彼等に対してもこう答えるのだった。
「だからこそ私も」
「けれどよ。髪が違ってねえか?」
「ええ、色が」
「金色になっているけれど」
彼等もそれに気付いて言うのだった。
「どうして紫から金色に?」
「昔のサンドマンさんと全く同じだけれど」
「そうだ。今の私はあの時の私なのだよ」
サンドマンはここでも自分から言うのだった。
「あの時とな。だからこそ私は戦うのだ」
「サンドマンさん・・・・・・」
「いいんですね、それで」
「元より承知のこと」
いいというのであった。
「では諸君、これが本当のゼラバイアとの最後の決戦だ」
「ええ」
「それじゃあ」
「我々が敗れれば地球はその姿を完全に変えられてしまう」
「そうですね。あの惑星によって」
このことは皆戦う前の話でもうわかっていた。
「何もかもが作り変えられて」
「そして全ての生物は」
「だからこそ私は今ここに来たのだ」
その最後の戦いの為であった。
「行くぞ、義兄さん」
「来たなジークよ」
「その声は!」
「ヒューギ=ゼラバイア!」
「如何にも」
声の主であるヒューギ=ゼラバイアが応えてきた。
「どうやら貴様は私がこの手で倒さなければならないようだな」
「僕達はお互いを憎み合い生きてきた」
それが彼等のこれまでだった。長きに渡ったお互いの人生だったのだ。
「だがそれも終わりだ」
「御前が死ぬことでだな」
「どちらが倒れてもこれで終わる」
サンドマンは今心の剣を構えたのだった。
「そう、ここで」
「そうだな。それではだ」
「それでは?」
「我々の戦いを見てもらおう」
ここでこんなことも言ってきたヒューギだった。
「妹にな」
「妹!?まさか」
「あの人が生きていたっていうの!?」
「そんな・・・・・・」
今の彼の言葉に驚いたのはロンド=ベルの面々だった。
「死んだ筈じゃないのか!?」
「それでどうして」
「見るのだ」
しかし彼は彼等のその言葉をよそに言うのだった。
「妹をな」
「ルフィーラ・・・・・・」
サンドマンは今見た。宇宙に映像として姿を現わした自分の妻を。
「どうして君がここに」
「ルフィーラは今は人ではない」
また言ってきたヒューギだった。
「アンドロイドとして生まれ変わったのだ」
「アンドロイド!?」
「それでだったの」
「アンドロイドだっていうのね」
美久はアンドロイドと聞いて複雑な顔になった。
「それはつまり」
「いや、美久」
その彼女にマサトが声をかけてきた。
「彼女は君とは違うよ」
「違うっていうの?」
「あの人が彼女を作ったのは」
悲しいがそれでいて咎めるような目になっているマサトだった。
「自分の為なんだ」
「自分の為に」
「うん。一人でいる自分の為にね」
こう話すのだった。彼はわかっているようだった。
「さあ、ジークよ」
「義兄さん・・・・・・」
「我が妹の見ているその前で罪を償うのだ」
こう彼に告げてきたのだった。
「いいな。そして裁きを与えるのは私だ」
「くっ・・・・・・」
「今ここで戦いは終わる」
ヒューギは確かな声で言い切ってみせてきた。
「貴様の死によってな」
「来るぞ!」
「ゼラバイアの大軍がまた!」
全機体のレーダーに凄まじい反応が起こった。
「何て数だ」
「まだこれだけいやがったのかよ」
「数の問題じゃねえ」
だがここでエイジが言うのだった。皆に対して。
「こんなの何だってんだよ!」
「何っ、エイジ」
「また言うのね」
「当たり前だろ。数なんてもうどうでもいいんだよ!」
こうルナとミヅキに返すのだった。
「勝つんだよ、この世界と皆の為にな!」
「その通りだ」
今の彼の言葉にサンドマンも応える。
「だからこそ私もまた」
「行くぜサンドマン」
エイジから彼に声をかけるのだった。
「最後の戦いだろ?」
「うむ」
「ゼラバイアが何だっていうんだ!」
彼はまた叫んだ。
「斗牙!いいな!」
「うん」
斗牙もその心は同じだった。
「じゃあエイジ」
「行くぜ!」
あらためて彼は叫んだ。
「最後の戦いにな!」
今ゼラバイアとの最終決戦の幕が開いたのだった。遂に全てが終わろうとしていた。同時に全てがはじまろうともしていたのだった。
第百四十三話完
2009・8・18
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