スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百三十九話 与えられた柱
第百三十九話 与えられた柱
アトランティスに入って来たロンド=ベル。その彼等の前にはもう天使達がいた。
「遂にここまで来たか」
「夜使」
錬使途剛使が彼に声をかけてきた。
「これでいいのだば」
「人をこの世界に入れて」
「よい」
彼は二人の同胞の問いに静かに答えるのだった。
「それはもう決めていた」
「決めていたのか」
「このことを」
「これで全てが終わるのならばだ」
彼はまた言った。
「人間達を入れるのもまたよしだ」
「それで何かがわかるからだな」
「我等について何かが」
「まだ柱がある」
アトランティスの中央にそれはあった。
「あの世界の支柱がな」
「あれがある限りは世界は崩れはしない」
「だがそれも」
智使達の言葉は暗いものだった。
「我等がいなくなればそれで」
「あれも崩れてしまう」
「それも見たいのだ」
夜使は今度はその柱を見て言葉を出していた。
「果たして我等のところにどうしてあるのかもな」
「そういったものもか」
「そういえば我々は何も知らない」
智使達はこのことにも気付いたのだった。
「長い間生きているというのに」
「それなのにあの柱のことも知らなかった」
「だからだ」
彼は言うのだった。
「ここで全てをわかりたい。それではな」
「人間達と向かい合うのだな」
「今ここで」
錬使途剛使もそれで頷いた。そうして今はじまるものを見守るのであった。シルヴィアは何時の間にか緑の異形の檻の中に入れられていた。
「シルヴィアを何故そこに」
「今全てを見極める為だそうです」
音使が頭使に述べていた。
「その為に彼女には動いてもらってはならないと」
「夜使の考えか」
「そうです」
そうだというのである。
「だからこそ。彼女には」
「わかった」
頭使はそれで納得したのだった。
「それではな。私はそれでいい」
「わかりました。それでは」
「よし。詩使よ」
シリウスに対して声をかけるのだった。
「それでいいか」
「いや」
だが彼はその問いに対して首を横に振るのであった。
「シルヴィアを放してもらおう」
「何かを見極めるのの支障になろうともか?」
「それはない」
彼は断言していた。
「決してな」
「そうか。だからか」
「夜使よ」
シリウスは今度は夜使に対して言ってきた。
「御願いできるか」
「それがそなたの考えか」
「そうだ。それは駄目なのか」
穏やかだが確かな声であった。
「それは」
「どうされますか?」
音使は怪訝な顔で夜使に問うた。
「これは。一体」
「いいだろう」
彼の出した言葉は意外にもよし、であった。
「ではあの娘を放すのだ」
「本当にそれで宜しいのですか」
「よい。人のところに帰してやるのだ」
「人の場所に」
「そうだ。人の場所だ」
彼女はまた言う。
「そこに戻してやるのだ」
「わかりました。それでは」
こうしてシルヴィアは放たれる。そうしてそのアクエリオンに乗りロンド=ベル達の方に戻った。
アポロはそれを見てシリウスに対して言うのだった。
「おい、御前も戻って来い」
「断る」
しかし彼の返答はこうであった。
「私は天使だ。人間ではない」
「まだわかんねえのかよ」
アポロはそんな彼の言葉を聞いて怒りの声を出した。
「まだよ。そんなこと言ってんのかよ」
「まだでも何でもだ」
しかし彼も強情であった。
「私は天使だ。人間ではない」
「いや、御前は人間だ」
アポロはまた彼に言い返した。
「人間なんだよ。天使も人間なんだよ」
「戯言を」
「戯言なんかじゃねえ。本当のことだ」
アポロも引かない。
「御前は人間なんだよ。紛れもなくな」
「何故そんなことが言える?」
それなら、と問い返した感じであった。
「天使が。私が人間だと」
「心がそうだからだよ」
「心がだと」
「そうさ。御前の心は人間のそれなんだよ」
このことをさらに言うアポロだった。
「だから人間なんだよ。天使もな」
「だとすると」
「我々もまた」
智使達もここで話をした。
「人間となるのか」
「人の心を持っているのならば」
「その通りだ!」
そして不動が叫んだ。
「どのような姿であろうとも心が人ならばそれは人なのだ!」
「そうか」
「では我々も人になるのだな」
錬使途剛使もここでわかったのだった。
「人の心を得れば」
「そうなるのだな」
「御前達も既に人だ」
不動は彼等に対しても告げた。
「古の同胞達よ」
「同胞だと!?」
「まさか貴様は」
音使と両使もこれでわかったのだった。
「アポロニアスはあの赤い髪の少年ではなく」
「貴様だというのか!?」
「アポロニアスは人の心に気付いたのだ」
不動はあえて答えないようであった。
「だからこそ彼は人の世界に入ったのだ」
「そうであったのか」
夜使は全てを察したのであった。
「だからこそだな」
「シリウスよ」
そして不動からもシリウスに告げてきた。
「帰って来るのだ。我々の中に」
「私が。人間だからか」
「そうだ。だからこそ」
「しかし」
それでも彼はここで。躊躇いを見せるのだった。
「私に戻ることは。敵となった私に」
「御前、まだそんなことを言いやがるのか」
「兄さん・・・・・・」
アポロだけでなくシルヴィアも声を出した。
「そんなこと言ってもよ」
「兄さん。兄さんの居場所は」
「いや、私の居場所はロンド=ベルではない」
それをあくまで否定しようとする。
「袂を分かった私には」
「そんなのどうでもいいじゃない」
しかしここで。子供の声がしたのであった。
「そんなのさ。何でもないよ」
「!?その声は」
音使いが最初にその声に反応した。
「戻って来たの?やっと」
「そうだよ。御免ね、音使」
双使であった。彼もまたアトランティスに戻って来たのであった。
「遅れてさ」
「今まで何処に行っていたのだ?」
「心配したのだぞ」
智使達の言葉には実際にそれが強く出ていた。
「全く。遊んでいたのか」
「それにしてもだ」
「ちょっと。見てきたんだ」
彼はこう智使達に対して述べるのであった。
「ちょっとね。人間の世界をね」
「見てきたのだな」
「うん」
夜使の言葉にも頷いくのだった。
「そうだよ。見てきたよ」
「それでわかったことがあったのだな」
「やっぱり。僕達は人間なんだね」
このことを言うのであった。
「人間なんだよ。やっぱり」
「そうか。我々は人間か」
「僕達の心って人間の心と同じなんだね」
「人間の、か」
シリウスは彼の言葉もまた聞いていた。そうしてそのうえで呟くのであった。
「やはり。天使も私も」
「だから。詩使だった?」
「そうだ」
双使の言葉にも応える。
「それが今の私の名前だ」
「戻りなよ。そっちの方に」
彼もまたシリウスにそれを勧めるのだった。
「僕達は柱を守らないといけないけれど君はそうじゃないしね」
「柱!?」
柱と聞いて麗花が声をあげた。そしてこの場で一際大きなそれを見るのだった。
「あれがまさか」
「そうみたいね」
「うん」
つぐみとジュンもその柱を見て頷いた。
「あれが柱なの」
「言われてみれば確かにそんなふうだよね」
「さあ。だから仲間達のところにさ」
「仲間の」
「シリウス、さあ」
麗花が手を出してきた。
「もうこの手を止めないわ。だから」
「麗花・・・・・・」
「全ては調和の下に収まるのだ」
不動がまた言った。
「全てのことがだ」
「その通りだ。最早我々が人に対して何かをすることはない」
夜使の言葉は実に穏やかなものであった。
「糧となっている人は全て放つのだ」
「はい」
音使は彼の言葉に静かに頷いた。
「そうして花や水を糧とし。この柱を護り静かに暮らすのだ」
「それが天使の役目なのですね」
「そうだったのだ」
頭使に対しても同じ言葉であった。
「本来はな」
「では我等はこのまま」
頭使も静かに頷こうとした。しかしその時であった。
「えっ、馬鹿な」
「そんな筈がないのに」
キムと八雲が驚きの声をあげた。
「レーダーに反応!?」
「どういうことなんだ、これは」
「レーダーに反応だと!?」
ブライトもまた今回は驚きを隠せなかった。
「どういうことだ。我々以外にもこの世界に入ったというのか?」
「わかりません、しかしです」
「これは間違いありません」
トーレスとサエグサも彼に報告する。
「ラー=カイラムのレーダーにも反応があります」
「反応は三つです」
「三つ!?何だそれは」
アムロはそれを聞いて怪訝な顔になった。
「少なくともここに普通に来たというのは只者じゃないな」
「そうだな」
クワトロもアムロのその言葉に頷く。
「ここまでできる存在といえば」
「ガンエデンか?」
ゼンガーは最初にこの名を思い浮かべた。
「いや、それはないか」
「ガンエデンは確かにかなりの力を持っていた」
ククルが彼に告げる。
「しかし今はもう我等の敵ではない」
「その通りだ。あの少女は最早敵ではない」
ゼンガーもそれはわかっていた。
「だが。だとすると一体何者だ?」
「ブリット君、感じる?」
「ああ」
ブリットはクスハのその言葉に対して頷いた。
「この気配は」
「尋常なものじゃないわ」
「しかも三つだけじゃないな」
「そうね」
二人はそこまで感じ取っていた。
「その後ろにまた一つ」
「いや、若しかするとさらにまた」
何かを感じ取っていたのだった。彼等も。
「夜使様」
「わかっている」
天使達も同じであった。夜使は音使の言葉に対して頷いていた。
「来ている。間違いなくな」
「はい。それも柱に」
「頭使、両使」
次に二人に声をかけたのだった。
「柱を頼む」
「わかりました。夜使よ」
「それでは」
「あの柱に何かあれば世界はそれで崩壊する」
「何っ!?」
それを聞いて驚きの声をあげたのはアラドだった。
「あの柱ってそんなに大事なものなのかよ!」
「この世界が崩壊するって」
ゼオラも声をあげていた。
「そんなのに何かあったらよ」
「冗談じゃ済まないわよ」
「そうね。じゃあ決まりね」
オウカは二人の言葉を受けて述べた。
「あの柱を護るわよ」
「ああ、そうだな」
「すぐにね」
二人はオウカと共にすぐに柱に向かう。そしてそれはロンド=ベル全軍がであった。
「あのエネルギー反応は一体」
「あの球体は?」
その柱の側に三つの球体が出て来ていた。とりあえずマシンではないようであった。
「しかし何だこのプレッシャーの強さは」
マシュマーはそれをはっきりと感じ取っていた。
「これだけのプレッシャーはまさにガンエデン以外だ」
「怖気付いたとかはなしだよ、マシュマー」
キャラがその彼に言ってきた。
「わかってるだろうけれどね」
「私に怖気はない」
マシュマーはやはりマシュマーであった。
「決してな」
「それはいいですけれどね」
しかしここでゴットンが彼に対して言ってきた。
「あれは本当に何なんでしょうか」
「さてね」
キャラはその彼に素っ気無く述べた。
「少なくとも味方じゃないね」
「敵、ですか」
「それは確かさ」
随分と割り切ってもいるキャラだった。
「それでだよ。敵だったら」
「倒す」
マシュマーもまた一言であった。
「それだけだな」
「そうですか。じゃあやっぱり」
「行くぞゴットン」
「覚悟はできてるんだろうね」
二人はこうゴットンに問うてきた。
「無論行かなければそれでいいが」
「置いていくだけだしね」
「わかってますよ、それは」
そしてゴットンもそんな二人のことはよくわかっているのだった。
「じゃあ行きますよ。それじゃあ」
「私も行こう」
ハマーンもまた既に動きだしていた。キュベレイがまるで蝶のように舞う。
「それではな」
「はい、ハマーン様」
マシュマーが真っ先にそのハマーンに対して応える。
「参りましょう」
「うむ」
こうして彼等もその三つの謎の光に向かう。光は巨大な柱に向かっていた。
夜使はその動きを見てすぐに叫んだ。
「いかんぞ」
「いかんとは」
「ではやはりここは」
「そうだ。守らなくてはならない」
こう智使達に対しても述べるのだった。
「何があろうとも。だからだ」
「はい、それではすぐに」
「我々も」
「いや、ならん」
だが夜使は彼等が動こうとするのは止めるのだった。
「そなた達、死ぬつもりだな」
「それは」
「つまりは」
「わかっておる」
彼等に対してそれ以上は言わせなかった。
「当然そなた達もだな」
「その通りです」
「否定はしない」
錬使も剛使もそれは同じであった。
「さもなければ世界は」
「それならば我等の命で」
「それがいかんのだ」
やはり彼等に対してもこう言うのだった。
「頭使、両使」
「はっ」
「何か、夜使よ」
「そなた達は光を食い止めるのだ」
彼が言うのはあくまでそれだけであった。
「よいな。光をだ」
「!?しかし既に柱は」
「かなりのダメージを」
彼等も僅かに間に合わなかったのだ。その為に柱は既に結構なダメージを受けてしまっていたのである。
「柱はこのままでは」
「どうされるおつもりですか?」
「私が行く」
彼はこう言うのだった。
「私が柱に行こう」
「!?それでは」
音使はすぐに夜使の考えを察したのだった。
「夜使、貴方は」
「私は死ぬことはない」
彼は既に前に出ていた。宙を舞っていた。
「ただ。柱と共にいるようになるだけだ」
「!?柱と?」
「それって一体」
アポロとシルヴィアはそれを聞いても理解できなかった。
「何なんだよ、それってよ」
「柱と共にって」
「すぐにわかる」
今は彼等にも答えようとはしないのだった。
「すぐにな。詩使、いやシリウス」
「私をその名で呼ぶのは」
「いいのだ。そなたの真意はわかっている」
ここではこう言うのだった。
「既に戻ることを決意しているな」
「・・・・・・・・・」
「ならば戻るのだ」
また彼に告げた。
「よいな。ならば戻れ」
「ロンド=ベルに」
「そしてそなたの戦いをするのだ」
「私の戦いを」
「アクエリオンに乗り戦うのだ」
「夜使、では貴方は」
「私はそれを見届ける」
これが彼の考えであった。
「それだけだ。それではな」
「夜使・・・・・・」
「暫しの間。柱を守ってくれ」
彼はまた一同に告げた。
「私はその間に」
そのまま柱に向かう。その間にも三つの光は柱を攻撃しようとする。しかしそれは適わなかった。
ロンド=ベル、そして天使達が必死にそれを防いでいたのだ。アポロとシリウスは今は肩を並べてそのうえで光のうちの一つと対峙して戦っていた。
「行かせるか!」
「柱は守る!」
こう言いそのうえで柱の前に立っていた。
その間に柱に夜使が近付く。そして遂に。
柱の中に入ったのだった。その中から彼は一同に告げた。
「私はここにいよう」
「ここに!?」
「その柱の中にですか」
「そうだ。私はやがてこの柱と同じになる」
彼は既に柱と同化しようとしていた。
「そして世界を支えるこの柱を守っていくのだ」
「世界を護るのだな」
「そうだ」
今不動に対して答えた。
「その通りだ。アポロニウスよ」
「その心確かに受け取った」
不動もまたその言葉を受けて述べた。
「それでは私もまた」
「後のことは頼んだ」
夜使はもう柱と共になろうとしていた。
「それではな」
「わかった。ではな」
こうして夜使は世界を守る為に今柱になるのだった。しかしであった。
まだ光達は残っていた。彼等はそれでも柱を攻撃しようとしていた。
「参ったわね」
「はい」
麗花とつぐみが暗い顔になっていた。
「折角あの人が柱を護る為に一つになったのに」
「このままじゃその努力も無駄に」
なろうとしていた。光達はなおも諦めようとはしないからだ。
攻撃がまた出された。だがアポロが操縦するアクエリオンがそれを止めていた。
「うっとうしい!」
彼はその両腕で光自体を受け止めていた。
そしてその無限に伸びる腕で光を遥か彼方へ追いやってしまった。
「おい、そう使うのかよ」
「まさかとは思ったが」
トッドとギャブレーは今のアクエリオンの行動には驚く他なかった。
「しかしこれでよ」
「うむ、残るは二つだ」
だがこれは確かであった。
「あいつ等も退けりゃよ」
「柱は護れる」
勢いに乗り一気に残る二つの光を攻めようとする。しかしであった。
その光達は一つが消えるとすぐにその姿を消してしまった。これまた一瞬の出来事であった。
「何っ、消えた!?」
「まさか」
皆それを見て思わず声をあげた。
「光が消えたって」
「何故なんだ!?」
「理由はわからぬ」
大河がここで言うのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
スタリオンがその彼に対して問う。
「どうだというのですか?」
「これで柱は護られた」
このことを言うのだった。
「それは確かだ」
「柱をですか」
「それでは」
スワンも兄と同じく大河に問うた。
「私達は勝ったのデスね」
「その通りだ。ここでの戦いは終わった」
彼はまた告げた。
「それでは。去ろう」
「それはいいのですが」
だがここでスメラギが彼に言ってきた。
「閣下」
「むっ!?」
「多くの戦いのことを考えますと」
「安心はできんか」
「あの光、ただの光ではありません」
スメラギはその鋭さからそれを見抜いていたのだった。
「おそらくは何か大きな謎が」
「そうだな」
そして大河もその話を理解することができた。
「間違いなくな。まさかとは思うが」
「まさか?」
「この世界とも大きな関わりがある存在かも知れない」
こうも考えているのだった。
「若しかすると」
「それではここはどうされますか?」
スタリオンはそれを大河に問うた。
「天使達とは和解ができるようですが」
「我々としても」
「それを願う」
智使達もまたそれに応えてきた。
「最早我々に戦う理由はない」
「この世界を共に護るだけだ」
こう人間達に告げるのだった。
「人間達よ」
「そしてシリウスよ」
「私もか」
シリウスは完全に人間の立場に戻っていた。
「私は。やはり人間なのか」
「戻るのだ。そなた達の世界に」
「そしてそなた達の戦いを行うのだ」
「わかったぜ、その言葉」
アポロが彼等の言葉を最初に受け取った。
「俺は戻る。それでいいな」
「うん、頑張ってね」
双使が笑顔で彼に対して告げた。
「僕達は僕達で護るべきものを護っていくから」
「そして我等の種族を維持していく」
「花達に囲まれ」
頭使も両使もそこにいた。
「それだけだ」
「最早我々が戦う理由は何もない」
「既に囚われの人間達は皆放たれました」
今度は音使が述べた。
「これでもう。私達は」
「よし、わかったぜ」
アポロは彼女の言葉も受けた。
「もうこれで俺達は」
「行くのだ」
「後はな」
錬使と剛使も同じことを告げる。
「そなた達の戦いに向かうのだ」
「そちらの世界のな」
「では戻ろう、諸君」
サンドマンがここで告げた。
「また我等の世界へ」
「そしてサンドマン」
彼に声をかけてきたのはレイヴンであった。
「我等の世界での相手は」
「おそらくはだ」
ここでサンドマンの表情が微かに変わってきた。
「私にとっては運命を見る戦いになるだろう」
「運命!?」
「どういうことですか?それって」
彼の周りのメイド達はその言葉にまずは顔を見合わせた。
「サンドマン様の運命って」
「一体何なんですか?」
「すぐにわかる」
だが彼はここでは言おうとはしなかった。
「すぐにな」
「すぐに、ですか」
「本当に何が」
「話はいい」
レイヴンが彼女達の詮索を止めさせた。
「それよりもだ」
「あっ、はい」
「元の世界にですよね」
「その通りだ。諸君、戻ろう」
また皆に告げるサンドマンであった。
「そしてまた戦いに戻るのだ」
「気をつけられよ」
「貴殿達の戦いに」
智使達が彼等に声をかけた。
「我等はここで世界を護り続ける」
「夜使の意志を受けて」
「僕達はここで花を愛しながら生きていくんだね」
「そうだ」
双使に対して答えたのは錬使だった。
「ここでな。最早人を糧にすることはないのだ」
「わかったよ。じゃあ僕も花を愛するよ」
にこりと笑って答える双使だった。
「それが夜使の最後の御願いだからね」
「柱・・・・・・夜使の柱」
剛使は柱を見据えていた。
「これからは永遠に我等と共にあるのだ」
「これから生まれ出て来るであろう私達の同胞達」
音使は花に囲まれながら未来を見ていた。
「人を糧にするのではなく花達を愛すればそれで私達は生きながらえることができたとは」
「それに今気付いたことをよしとしよう」
両使が彼女に言った。
「滅びる前にな」
「ええ、そうね」
「詩使、いやシリウスよ」
頭使はシリウスを見ていた。そうしてそのうえで彼に言葉をかける。
「向こうの世界で再びな」
「戻らせてもらう。同胞よ」
シリウスは気品のある笑みで彼に応えた。
「翼のある人間達よ」
「うむ」
頭使もまた気品のある笑みで彼に応える。そうしてそのうえで別れを目で交えさせるのだった。
ロンド=ベルは天使達と別れを告げ彼等の世界に戻った。それはまた一つの勢力との最後の決戦のはじまりでもあった。また一つ終わろうとしていた。
第百三十九話完
2009・7・30
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