| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百三十三話 イノベイターの蠢動

               第百三十三話 イノベイターの蠢動
「ああ、やっぱりね」
「予想していたのだな」
「勿論だよ」
リボンズは笑って仲間達に答えていた。
「それはね」
「帝国軍はあれだけの数があったのに?」
「確かに数は多いさ」
リボンズもそれは認める。
「けれどさ。それでも勝てないものは勝てないんだよ」
「数は多くてもか」
「うん、そうだよ」
こう述べるリボンズだった。
「帝国軍は数は多くても質は悪いね」
「ええ、それはね」
「確かにな」
仲間達もそれは認めるのだった。
「それもかなりね」
「改造もしていなければ個々の機体もな」
「質の悪い戦闘機や円盤が殆どだ」
「それじゃあ幾ら数があっても同じなんだよ」
こう述べるリボンズなのだった。
「それがあってもね」
「そういうものね」
「数にしろ質が大事か」
「しかも作戦が悪いよ」
帝国軍のもう一つの問題だった。
「まともな指揮官はローザ司令達三人とその部下達だけだったけれど」
「もうその三人はいないわ」
「今ではお尋ね者だ」
「そう。だからもう指揮官もいないんだ」
そうなるのだった。
「従ってね」
「じゃあ結局はもう」
「帝国軍は」
「僕は負けると見ているよ」
これがリボンズの予想であった。
「帝国はね」
「そしてシンクライン皇太子は」
「滅びるね」
やはり他人事そのものの素っ気無い言葉であった。
「もうね。勝てる筈もないよ」
「けれどリボンズ」
ここで女が言ってきた。
「何でも帝国からは皇帝が来るそうよ」
「帝国の支配者がだね」
「そうよ、実際のね」
それに対してシンクラインは実質である。この二重権力体制が今の帝国の特徴となっていた。
「それが来るらしいわよ」
「皇太子に呼ばれてだね」
「ええ」
こうリボンズに話すのだった。
「その通りよ」
「そして帝国軍も来る」
また一人が言った。
「さらにな」
「これ以上戦力を引き抜くんだね」
それを聞いてまた笑うリボンズだった。
「もうそろそろ圧政を維持できないだろうね」
「奴等のか」
「その通りだよ」
また語るリボンズだった。
「帝国は圧政しか知らないじゃない」
「そうだな」
「それはね」
これは他のイノベイター達もよく把握していることだった。
「彼等はね。そればかりね」
「確かに」
「だからだよ。圧政ができなくなったらね」
リボンズの言葉は続く。
「それで終わりだよ。圧政を維持する軍事力がなくなったら」
「それを考えると脆いのね」
ふと言ったのはリジェネだった。
「帝国も」
「圧政なんてそんなものだよ」
そしてリボンズは馬鹿にしたようにして述べた。
「所詮はね。三流でしかないよ」
「三流なの」
「神はそんなことはしないよ」
そしてこうも言うのだった。
「神はね。人を完璧にコントロールするものじゃないか」
「それではだ」
リヴァイヴが言ってきた。
「我々はこのまま管理するのだな」
「帝国の後でね」
「それは人間だけではなくか」
「そうだよ。宇宙全体をね」
リボンズの楽しそうな言葉は続く。
「その土台は帝国が残していってくれてるし」
「ではリボンズ、それは」
「このまま帝国を滅ぼして」
「その通り。じゃあまずは帝国には滅んでもらうよ」
そして最後に艦橋から宇宙を見る。その無限の星の海を。
「僕達がこの宇宙の神になる為にね」
「よし、じゃあな」
「行くか」
こうして彼等は今は戦いに向かう。今帝国軍は土星において護りを固めていた。
「父上は?」
「今土星に到着されました」
部下の一人がシンクラインに対して告げていた。
「その軍勢と共に」
「そうか、わかった」
シンクラインはそれを聞いてまずは頷いたのだった。
「それはな」
「では殿下、我々も」
「前線に行きましょう」
「いや、それには及ばん」
しかしシンクラインはここでは前に出ようとはしなかった。
「父上が連れておられる戦力は三億だったな」
「はい、そうです」
「三億です」
「ならば私が動いてはならない」
こう言うのである。
「父上が奴等に裁きを下すことの邪魔になるからな」
「だからですか」
「ここは動きを慎む」
言いながら思わせぶりな笑みを浮かべるのだった。
「ここはな」
「そうですか。それでは」
「ここは」
「動かぬ」
今それを断言するのだった。
「その三億の戦力で無事にロンド=ベルを倒すのを見るとしよう」
「わかりました、それでは」
「そのように」
こう言葉を交えさせるのだった。
「ではだ」
「はい」
「それでは」
「我々はここに戦力を維持しておく」
彼は思わせぶりな笑みを浮かべて言うのだった。
「父上の後詰としてな」
「あくまで動かれないというのか」
「だが。お助けさせて頂く」
思わせぶりな笑みはそのままだった。
「機雷の用意をしておけ。よいな」
「機雷をですか」
「それではそれでロンド=ベルの動きを」
「さてな」
しかしここではあえて答えないのだった。
「まあよい。では行くぞ」
「はっ、それでは」
「そのように」
こうして彼は今は動かなかった。しかし明らかに何かがあった。今皇帝はその巨大な戦力と共に布陣していた。ロンド=ベルを待ち受けて。
「ロンド=ベルなのだな」
「はい、そうです」
「我等をここまで追い詰めたのは」
「信じられんな」
皇帝は厳しい声で言った。
「我が帝国軍をそこまで追い詰めるとはな」
「ですが現に我等はここまで」
「追い詰められています」
「シンクラインは何をしておった?」
皇帝は懐疑的な顔になって今度はこう述べた。
「多くの将兵を失いここまで追い詰められるとは」
「わかりません、それは」
「ですが陛下」
皇帝直属の家臣達が口々に言う。
「この三億で敗れればです」
「我等はもう」
「そうだ、最早後がない」
それは彼もよくわかっていることだった。
「この三億は我等があらゆる宙域の制圧部隊から引き抜いたものだ」
「そうです、それがなくなればもう」
「我々は終わりです」
こう話すのだった。
「既に各地で奴隷達が不穏な気配を見せています」
「維持できる戦力は今がギリギリです」
「そこから三億を捻り出したのですから」
帝国軍も追い詰められているのである。
「しかもロンド=ベルだけではありません」
「ローザ達もまた」
彼等のこともあった。
「反逆しております」
「彼等も討たなければなりません」
「今はあらゆる不穏な気配に満ちている」
皇帝の顔も暗い。
「何とかしなければならないのだが」
「その為にはまず勝利を収めなければ」
「ロンド=ベルをだ」
「だからこそ今向かう」
皇帝は前に今にも出ようとする帝国軍を見ていた。
「今な」
「来ました」
「ロンド=ベルです」
彼等は言う。
「正面から来ました」
「どうされますか?」
「全軍攻撃を開始せよ」
帝国軍の作戦はもう決まっていた。
「よいな」
「はい、それでは」
「そのように」
こうして彼等は今ロンド=ベルに向けて攻撃に入るのだった。そのとてつもない大軍はロンド=ベルからもはっきりと確認されていた。
「来ました」
「数は三億です」
「もう完全に宇宙怪獣の時と同じだな、おい」
甲児はその数を聞いて言った。
「三億ってよ」
「そういえば感じは同じですよね」
ウッソが甲児のその言葉に応えた。
「数がもうこれでもかって来ますから」
「そうだよな。それでまとめて潰すっていうのもな」
それも同じなのだった。
「まあそれを考えたらわかりやすいよな」
「そうですよね、やっぱり」
「まあそれもそろそろ終わりだな」
そしてこうも言う甲児だった。
「いい加減数も尽きるだろ?ここまで派手にやってるんだからよ」
「そうよね」
さやかが彼の言葉に頷く。
「流石にもうやっぱりね」
「数は無限じゃねえんだ」
甲児でもわかることだった。
「幾ら何でもよ、もう限界だろ」
「それは前にお話させて頂いたままです」
ファーラがまた彼等に話してきた。
「もう彼等も」
「そうか、じゃあよ」
「この三億をやっつけたら」
「行くわよん」
ボスが腕をまくっていた。
「宇宙怪獣の時と同じだわさ!」
「そうですね、やっちゃいましょうボス」
「ここで一気に倒すでやんすよ」
ヌケとムチャも続く。三人も乗り気だった。
「じゃあファーラ」
「はい」
ファーラは今度は黄金の言葉に頷いていた。
「ここで決着をつけるぜ」
「はい、あれは皇帝の船です」
その中でファーラが言った。
「帝国の皇帝が」
「あれがか」
「はい、そうです」
ファーラはまた答えた。
「帝国の皇帝がここに来ています」
「皇帝!?それじゃあ」
「あの船を沈めればそれで」
「帝国は終わりか?」
錫石と青銅、黒銅も言う。
「少なくともその力はかなり落ちますよ」
「国家元首を倒せばそれで」
「ガルラ帝国もそれで」
「それは間違いありません」
ファーラもその通りとは言う。
「しかしです」
「しかし?」
「はい、まだ彼がいます」
こう仲間達に告げるのだった。
「シンクライン皇太子が」
「彼がいます。ですから」
「皇帝を倒してもまだ終わりではないと」
「そうなのですね」
「その通りです」
やはりそうなるのだった。ファーラの顔は曇っていた。
「ですから。皇帝を倒して終わりではありません」
「わかったぜ、じゃあよ」
「皇帝を倒してその後ね」
皆も言う。
「けれどまずはこの三億」
「一気にやるわよ」
「はい、そうしましょう」
「それではだ。諸君」
大河がここで全員に告げてきた。
「攻撃開始!」
「了解!」
「行くぜ!」
彼等はそのまますぐに進撃を開始した。しかし敵には直接向かわなかった。
「まずはあの基地ですね」
「そうだ」
ジェフリーがミーナに答えていた。
「まずはあの基地を奪取する」
宙域にある基地の一つを見ての言葉である。
「そしてそこに篭りだ」
「そのうえで迎え撃つというわけですね」
「三億もの相手をそのまま倒すことはできない」
そのことを踏まえての判断である。
「だからだ。それでいいな」
「はい、それでいいと思います」
ラムがそれに答えて頷く。
「数が多いです。ですから」
「この戦いは長くなる」
そして彼はこうも言うのだった。
「だからだ。座って戦うぞ」
「わかりました。それじゃあ」
「まずはあの基地を」
こうしてその基地に向かう。基地にはかなりの防衛戦力があった。しかしであった。
「この程度の数!」
「何てことはない!」
甲児と鉄也が向かう。そうして一気に胸の炎で蹴散らすのだった。
他の面々も一気に攻撃に出る。それにより基地の戦力を一掃してしまった。そのうえで基地に乗り込みそこに立て篭もるのだった。
「いいか、諸君」
「ああ、これでいいんだな」
「ここから敵を」
「そうだ」
また大河は皆に述べていた。
「ここに篭りだ。そうしてだ」
「敵軍を迎え撃つ」
「そうですね」
「うむ。さあ諸君」
今まさにその大軍が来た。
「決戦の開始だ、健闘を祈る!」
「了解!」
「やってやらあ!」
ロンド=ベルと帝国の決戦がはじまった。帝国軍はいつも通り圧倒的な数で押し潰そうとする。しかしその攻撃は全く当たってはいなかた。
「何っ、ダメージを与えてはいない!?」
「何故だ!?」
「基地に入って正解でしたネ」
「うむ」
大河は今度はスタリオンの言葉に頷いていた。
「この基地はかなりの防御効果を持っている」
「それにエネルギーや弾薬も凄い勢いで補充してくれますよ」
しかもそれもあるのだった。
「だからだ。このまま戦える」
「そうですね。幾ら数が多くても」
「攻撃が当たらないうえにエネルギーも弾薬も気にしなくていいんなら」
まさに最高の条件である。
「ここままいけます」
「いえ、やります」
こうした言葉まで出されていた。
「このまま戦います」
「三億の大軍と」
「それはいい」
皆のその言葉は受けはした。
「しかしだ」
「しかし?」
「まだ何かありますか?」
「三億だ」
彼もまた数はわかっていた。
「疲れには用心することだ」
「おいおい、そんなの俺にはよ」
「僕にも関係ないね」
「何時までも戦える」
「あれ本当ですか?」
「いいえ」
オルガ達三人の言葉を聞いたキサカがアズラエルに問う。しかし当のアズラエルはあっさりと答えるのだった。
「もう薬物投与はしていませんから限界があります」
「そうですよね、やっぱり」
「もっとも元からああだとは思いませんでした」
しかしこうも言う。
「ですがそれでも一応は生身の人間ですので」
「限界がありますか」
「しかしノープロブレム!」
今度はハッターが出て来た。
「このハッター軍曹には疲れなぞ問題ではない!」
「ハッちゃん頭悪いからね」
「だから何故そうなる!」
すぐにフェイにムキになって言い返す。
「この俺はロボットだ!だから疲れを知らないのだ!」
「それ言ったら私もじゃない」
「その通り!だから俺は何時までも戦い続けることができる!」
「いや、それは無理だ」
しかしその彼にテムジンが述べる。早速来た敵達を倒しながら。
「幾ら何でもな」
「何故だ兄弟」
「何事にも限度がある」
彼はここでも冷静であった。
「だからだ。やはり金属疲労があるのだ」
「その通りだ」
ここでライデンも言うのだった。
「だからだ。時々は休息も必要だ」
「何だ、そうなのか」
「っていうかそれすごく残念」
フェイはそれを聞いて不満を露わにさせる。
「ずっと戦っていたいのに」
「全くだ、それでは満足に戦えないぞ」
「時々交代で休むことだ」
大河がその彼等に告げる。
「そうして持久戦を取る。いいな」
「食べ物はたっぷり用意してあるからね」
命が片目を瞑って皆に告げる。
「だから疲れたらすぐに食べて寝てね。いいわね」
「よし、じゃあやるぞ」
凱の言葉に気合が入った。
「三億の敵、必ず倒す!」
「了解です隊長!」
「派手にやるぜ!」
ボルフォッグとゴルディマーグがそれに応える。
「私達は決して敗れません!」
「帝国の奴等、覚悟しやがれ!」
ボルフォッグの手裏剣が唸りゴルディマーグも攻撃を浴びせる。
「マイク、スタンバイね!」
「オッケー、ブラザー!」
「派手に行こうぜ!」
マイクと兄弟達も全員出撃し派手にギターをかき鳴らしている。
それで迫る敵を次々に粉々にしている。そして。
「氷竜!」
「わかっています炎竜!」
彼等は合体する。そして。
「この姿になったならば!」
「私達はもう負けません!」
「その通り。僕等も!」
「そうだ雷龍!」
雷龍と風龍も合体するのだった。
そのうえで彼等も攻撃を加えていく。
「いくよ光竜、闇竜!」
「はあい!」
「承知致しました」
彼女達はルネに続いていた。そうして彼女達も合体し。
「これで負けないわよ!」
「帝国軍、恐れることはありません!」
「幾ら数が多くてもね」
ルネもまた攻撃を仕掛けて敵をその拳で倒していた。
「今のあたし達には勝てないさ!」
「そうだ、ルネの言う通りだ!」
そして凱もドリルニーで今接近していた敵の戦艦を屠っていた。
派手に爆発し撃沈されたその戦艦を後に。今度は拳を放つのだった。
「ブロオクン、マグナムッ!」
「うわあっ!」
「し、沈む!」
また一隻沈める。しかしまだ三億の敵は減る様子もない。
戦いは一時間経ち二時間経つ。しかしであった。
「敵の数は!?」
「まだ一千万を倒したところです」
「やっと二千万です」
「そうか」
ブライトはサエグサとトーレスの報告を不満そうに聞いていた。
「まだそれだけか」
「一時間に一千万が限度ですね」
「それ以上は。無理です」
「そうか、なら仕方がない」
ブライトもそれで諦めた。
「ではこのままだ。戦うぞ」
「はい、やはり粘り強くですね」
「腰を据えて」
「焦るな」
ブライトの言うことはこれだった。
「このままじっくりと戦うぞ」
「ええ。ですが」
「この基地に入って正解でしたね」
二人はこのことも言うのだった。
「おかげでかなり安心して戦えます」
「防御もありますし補給の心配もありません」
「その通りだ」
そしてブライトもこのことはよくわかっていた。
「後は疲れを癒すだけだ」
「そうですね。それじゃあ」
「このままじっくりと」
「そういうことだ。疲れたなら休め」
ブライトはこのことを言うのも忘れていなかった。
「いいな」
「ええ、まだ大丈夫ですけれどね」
「食べ物もありますし」
二人は今はサンドイッチとカップヌードルを食べていた。
「まだいけます」
「安心して下さい」
「だが無理はするな」
それでも念を押すブライトだった。
「私もそうさせてもらうしな」
「艦長もですか」
「幸い修理設備も揃っている基地だ」
彼等にとってはまさにいこと尽くめの基地である。
「後はソフトウェアの問題だけだ」
「つまり我々ですか」
「それですね」
「その通りだ。だからだ」
彼はまた言う。
「疲れたら休め。いいな」
「わかりました」
「その時は」
とにかく彼等は無理はしなかった。そうしてそのうえで腰を据えて戦っていた。しかし帝国軍は違っていた。誰もが休まずに攻撃を加えている。
「怯むな!」
「このまま攻撃を仕掛けよ!」
こう叫んでロンド=ベルに攻撃を続ける。
「休むな、いいな!」
「押し潰せ!」
しかし彼等の消耗は時間が経つにつれ増えていく。そしてさらにその攻撃や動きの精度も次第にではあるが徐々に落ちてきていた。
それがまたロンド=ベルの狙い目となった。彼等の消耗は増えていくばかりだ。
「何故だ」
皇帝もまたそれを見て言う。
「我等が押されているぞ」
「はい、動きが鈍っています」
「損害も遂に」
そしてこうも報告された。
「五割を肥えました」
「全軍の五割が」
「一日経ってか」
「はい、そうです」
「この一日で」
既に戦闘がはじまってから丸一日経っていた。その間帝国軍は休んではいない。しかしロンド=ベルは確かに交代で休憩を取っていた。
「よし、じゃあ交代だな」
「うむ、頼む」
ケーンとマイヨが言葉を交えさせていた。
「後はな」
「で、旦那もまた出て来るんだよな」
「当然だ」
こう言いながらマイヨは休息に入る。そしてケーンが出撃する。彼等は交代で休息に入ってそうして疲れを癒して万全に戦っているのだった。
しかし帝国軍は違っていた。休息なぞなく疲れは蓄積される一方だった。動きがさらに悪くなっていく。
「駄目だね、これは」
「そうね」
「これはな」8
イノベイター達がリボンズの言葉に頷いた。
「このままじゃ帝国軍は敗れるよ」
「けれどそれはわかっていたのではないの?」
「先程言っていたな」
「その通りだよ」
リボンズは薄笑いと共にまた述べた。
「それはね。もうね」
「だったら今言っても」
「何の意味もないと思うが」
「それがあるんだよ」
しかしリボンズはこう言うのだった。
「ここはね」
「で、それでどうするの?」
「これ以上帝国と共に行動していてもだ」
「うん、もうやることは終わったよ」
リボンズは平然とした顔でまた述べるのだtt。
「これでね。後は」
「後は?」
「どうするつもりだ?」
「撤退するよ」
こう仲間達に対して告げた。
「もうね。これでね」
「撤退か」
「うん」
また言うリボンズだった。
「もう必要な戦力は手に入れたしね」
「そうか、彼等の軍勢をか」
「手に入れたのね」
「じゃあ。撤退するよ」
リボンズはまた平然と言った。
「これでね。それじゃあ」
「わかったわ。じゃあこれで」
「撤退するか」
こうして彼等は何時の間にか己のものとした帝国軍の一部を連れて戦場を後にした。だが帝国軍、とりわけ皇帝はそれを見て驚きの声をあげた。
「何だ、あの連中は!?」
「いきなり戦場を離脱だと!?」
「何を考えている!?」
皆それを見て驚きの声をあげる。
「しかも碌に戦わず」
「どういうつもりだ!?」
「戻るように言え」
皇帝も彼等に告げる。
「すぐにな」
「それはもう伝えています」
「ですがそれでも」
彼等は戦線を離脱しているというのだ。明らかな確信犯だった。
「彼等は離脱していきます」
「どうしますか?」
「追っ手を向けよ!」
皇帝の声が激昂したものになった。
「いいな、すぐにだ」
「はい、それはもう」
「ですが」
「ですが。何だ?」
「新たな軍勢が出て来ました」
「その軍勢に追っ手が」
「何だと!」
皇帝はそれを聞いて驚きの声をあげたのだった。
「地球の軍勢か!?」
「わかりません、ですが」
「かなりの強さで」
こう声があがるのだった。
「それで追っ手は瞬く間に」
「殲滅されました」
「馬鹿な、一体何者だ」
皇帝も彼等が何者かわかりかねていた。
「ここで出て来るとは一体」
「マシンは我等のものです」
ここでまた報告があがった。
「ということはだ」
「あの者達ですか」
「あの裏切り者達かと」
皆それぞれ驚きの声をあげる。
「どうされますか、陛下」
「ここは」
「ならばどのみち倒す対象であることには変わりがない」
皇帝は忌々しげに言葉を出した。
「ならばだ。さらなる追っ手を差し向けろ」
「はっ、それでは」
「そのように」
彼等はまた追っ手を差し向けた。しかしであった。
その謎の軍勢は彼等を何なく倒す。そうして言うのだった。
「私はわかったのだ」
「わかったのだな」
「うむ」
クロッペンだった。彼はテラルの言葉に応えていた。
「確かに私はクローンだ」
「それは受け入れるのだな」
「しかし私は私だ」
こうも言うのだった。
「ならばだ。私は戦う」
「クロッペンとしてだな」
「その通りだ。私はこのまま進む」
言いながら先陣で戦う。一直線にだ。
そしてそのうえで。ロンド=ベルに対して告げてきた。
「ロンド=ベルの者達よ」
「クロッペンか?」
「そうだ、楯剣人よ」
剣人に対して応えてきた。
「私はわかったのだ」
「何がわかったんだ?」
「私はクロッペンだ」
こう彼に言うのだった。
「それ以外の何者でもない」
「それで戦うっていうんだな」
「その通りだ。私はクロッペンとして生きる」
これが彼の言葉であった。
「クロッペンとして。そして戦う」
「わかった。じゃあそうしな」
剣人もそれを受けて言葉を返した。
「御前の望むようにな」
「うむ、そうさせてもらう」
「マリン=レイガン」
ローザはマリンに対して声をかけてきた。
「我々は我々として生きる」
「ガルラ帝国から完全に離れてだな」
「その通りだ、最早帝国とは決別した」
こうも言うローザだった。
「だからだ。我等は我等として生きる」
「わかった。御前の考えはな」
「そして戦う」
彼女もまた同じだった。最後はテラルが言った。
「壇闘志也よ」
「テラル、やっぱり御前も来たんだな!」
「御前達と共に戦うわけではないが」
前置きはした。
「私は私として戦う」
「よし、その意気だ!」
闘志也は彼のその意気を受けて言った。
「御前が望むようにやれ。いいな!」
「わかった」
彼等はそのまま帝国軍の追っ手を退きそのうえで戦闘に向かう。そうしてそのうえでロンド=ベルと合流する。流れはこれで完全に彼等のものとなった。
「好機ですね」
「そうだな」
「ここだね」
イーグルの言葉にジェオとザズが頷く。
「では全軍ここで」
「攻撃開始か」
「待ってたよ、この時間を」
三人の顔が微笑む。そうして一気に攻勢に出る。最早疲れきった帝国軍に彼等を抑える力はなかった。
「それ、進むのじゃ!」
「はい、アスカ様」
「このままですね」
「左様!」
アスカはチャンアンとサンユンの言葉に応えていた。
「それでは我等も」
「このまま前に」
童夢も前に出る。彼等もまた進撃に入った。
それは彼等だけではなく。タータとタトラも同じだった。
「姉様、ええな」
「ええ、タトラ」
姉もまたこの時は真剣な面持ちで妹の言葉に頷くのだった。
「このままね。行くわ」
「そや、ここまま行くで」
こう言って自分達の戦艦もまた前に出し。そしてジン達を放ったのだ。
「今まで鬱憤を留めとったけれどな!」
まずタータが叫ぶ。
「それもこれで終わりや!」
「タータ、焦ったら駄目よ」
タトラは血気にはやる妹を止めてきた。
「攻めはするけれどね」
「そやな、攻めるわ」
彼女達もまた攻勢に入る。他の者達も攻撃に入る。光達もレイアースの剣を振るう。
「行こう、海ちゃん風ちゃん!」
「わかってるわ光!」
「今が好機ですわ」
二人もまた光に続き一気に攻撃する。そうして剣を手に目の前の敵機を次々と切り払っていく。
「ここで帝国軍を倒せば」
「そうよ、後はあの皇太子だけよ」
「本当に正念場ですわ」
「だから私達も行くんだ」
そのまま一直線に突き進み薙ぎ倒していく。
「帝国軍を倒すんだ!」
三人もまた攻撃を仕掛けていく。戦いは激化していく。だがその勢いは完全にロンド=ベルのものであり帝国軍は押されていくだけだった。
「おのれ、止めよ!」
皇帝がその中で叫ぶ。
「ロンド=ベルを止めよ!」
「ですが陛下」
「最早それは」
できなくなっているというのである。
「奴等の勢いは止まりません」
「このままでは。ですから」
「撤退せよというのか」
ここで皇帝の顔が曇った。
「朕に対して。宇宙の支配者である朕に対して」
「止むを得ません」
「ここは」
彼等も必死だった。こう皇帝に進言するのだった。
「ですから今は」
「不本意ではあっても」
「止むを得ないか」
皇帝の顔は苦いものになっていた。
「ここはだ。撤退するとしようか」
「はい、それでは」
「すぐにでも」
こうして彼等は撤退しようとする。しかしであった。
彼等が後ろを振り向いた時そこには。何と機雷源があった。まるで彼等の退路を遮断するように。何時の間にか敷かれていたのだった。
「何っ、機雷源だと!」
「何時の間にだ!」
「父上、備えはしておきましたぞ」
ここでシンクラインの勝ち誇ったような声が届いてきた。
「安心して戦って下さい」
「シンクラインか」
皇帝は機雷源と彼の言葉を聞いて全てを察したのだった。
「貴様、何のつもりだ?」
「何のつもりとは?」
「とぼけるな。この機雷は何だというのだ」
「だからです」
平然とした顔で薄笑いを浮かべていた。
「父上に満足して頂けるまで戦って頂きたく」
「馬鹿な、これでは」
「撤退ができんぞ!」
「殿下、まさか!」
「そなた達もだ」
彼は今度はその薄笑いを皇帝直属の臣下に対しても告げた。
「父上を頼むぞ。いいな」
「くっ、殿下やはり貴方は」
「御父上であられる陛下を」
「今ここで」
「既にある程度はわかっていた」
皇帝もまた忌々しげに彼に告げてきた。
「貴様のことはな」
「私はあくまで父上をお慕いしているだけです」
「戯言を」
「いえ、真です」
しかし彼はまだ言うのだった。
「その皇帝としての座を」
「そうか。そういうことか」
彼はここまで聞いて苦い声を我が子に告げた。
「貴様のことはよくわかった」
「ではそういうことで」
「最後までお楽しみ下さい」
その笑みは最早父親に向けるものではなかった。
「ではそういうことで」
「・・・・・・くっ」
シンクラインはここまで言うとモニターから姿を消した。そして残っているのは機雷源だけであった。それは彼等の退路を阻み続けていた。
「陛下、後ろから来ています」
「このままでは」
「止むを得ん」
皇帝も決断を下すしかなかった。
「戦うぞ」
「はい、それでは」
「ロンド=ベルと反乱軍に勝ち」
「そうして生き残るしかない」
こう家臣達に告げるのだった。
「よいな、それでは」
「わかりました」
「生き残る為に」
「全軍反転せよ!」
皇帝がまた指示を出した。
「そしてだ。戦うのだ」
「はい!」
こうして帝国軍は反転してそのうえでロンド=ベル達に向かう。ロンド=ベルは既に彼等に対して向かっていて今まさに激突しようとしていた。
「敵は撤退を諦めたようです」
「そうですね」
ユリカはルリの言葉に応えていた。
「どうやら」
「覚悟を決めたようです」
ルリは静かな声を出し続ける。
「機雷源を見て」
「しかし何故でしょうか」
ここでユリカは首を捻るのだった。
「退路に機雷源を敷くとは」
「あっ、そうですよね」
「おかしいですよね、やっぱり」
メグミとハーリーも応えてきた。
「逃げられないようにって」
「何でなんでしょうか」
「それはわかりません」
ルリが彼等に返す。
「ですがこれは好機です」
「そうですね」
ユリカもそれに頷くのだった。
「このまま総攻撃です。機雷源を除去するのはその後です」
「ではまずは」
「グラビティブラスト発射用意」
ユリカが命じたのはこれだった。
「それでまずは一気に数を減らします」
「わかりました。それでは」
「艦首を敵方向に向けて下さい」
早速動きはじめるのだった。
「攻撃ルートに友軍はいますか?」
「いえ」
ルリはまたユリカに答えた。
「いません」
「それではです」
ユリカはここまで聞いてあらためて言った。
「グラビティブラスト発射です」
「わかりました」
「艦首向けたわよ」
ハルミの声も届く。
「それじゃあ何時でもってことね」
「はい。発射!」
今その指示が下された。
「このままです!」
こうしてナデシコから黒い光が放たれ敵を撃った。無数の火の玉が生じそれで敵の勢いも殺した。それと共にロンド=ベルが一斉に突撃する。勝敗は決した。
「動きが悪いんだよ!」
カムジンがグラージで突撃していた。その両手と頭のガンポッドから攻撃を浴びせそれにより帝国軍のマシンを次々と貫き火球に変える。
敵の攻撃はグラージには当たらない。最早一方的であった。
「へっ、所詮はその程度かよ」
「カムジン、いいか?」
その彼に声をかけたのはガルドだった。
「皇帝の旗艦はもうすぐだ」
「そうか、ならそれを撃沈してやるか」
「いや、待て」
しかしここでガルドは彼を止めるのだった。
「目の前に敵の艦隊がいる。俺達はそちらに向かうべきだ」
「何だよ、敵の総大将は狙わないのかよ」
「それって面白くないぜ、おい」
イサムも言ってきた。
「折角敵の総大将の一人がいるってのによ」
「それはどちらにしろ俺達の仕事ではない」
ガルドはまた言う。
「俺達のな。それはいる」
「誰だ?」
「じゃあ一体」
「ゴライオンだ」
こう二人に告げた。
「あの連中がいる」
「ゴライオンをがかよ」
「じゃあ俺達はサポートってわけだな」
「その通りだ」
イサムにもカムジンにも述べるのだった。
「俺達はな。それでいいな」
「へっ、わかったぜ」
「ガルラ帝国の相手ならゴライオンだしな」
二人もそれで納得していた。
「じゃあ俺達はよ」
「このまま敵の雑魚を倒すとするか」
「幸い敵の数は多い」
彼等はまだいた。しかもかなりの数がだ。
激しい戦いが続いている。例えロンド=ベルの一方的な攻撃だとしてもだ。それでも戦いが続いていた。そしてガルド達もまた。
「反応弾だ、いいな」
「わかってるさ」
イサムはガルドに対して不敵な笑みで応えた。
「それで一気にだな」
「そうだ、やるぞ」
「御前等はそれでやれ」
カムジンは既にグラージの機動力を駆使して攻撃を加えていた。やはり相変わらず敵機を倒していた。彼は彼で倒していた。
「俺はこのまま攻める」
「攻めるのか」
「そうさ、俺には俺のやり方がある」
彼はまた言った。
「それでな」
「しかしよ、カムジン」
イサムがここでカムジンに対して言ってきた。
「何だ?」
「御前もそろそろバルキリーに乗ったらどうだ?」
「バルキリーか」
「ああ、バルキリーも嫌いじゃないんだろ?」
こう彼に告げるのだった。
「それならな。いいだろ」
「それも悪くないだな」
カムジンは微妙な笑みを浮かべて彼に応えた。
「しかしな。俺はやっぱりグラージが一番合ってるんだよ」
「グラージがか」
「ああ、そうだ」
彼はまた言った。
「グラージが一番肌に合ってるからな。だからこれで乗っていく」
「ならそれで行け」
彼はまた言った。
「好きなようにな」
「イサム、いいな」
「ああ」
そして今度はガルドの言葉に応えるイサムだった。
「やるぜ、反応弾な!」
「ターゲットロックオン」
ガルドが言った。
「撃つぞ」
「おうよ!」
二人はバルキリーから反応弾を放ちそのうえで敵を倒す。やはり戦いはここでも一方的だった。三億の大軍は今まさに消滅しようとしていた。
「親衛隊壊滅しました!」
「直属艦隊の損傷が八割を超えました!」
皇帝の下には絶望的な報告が相次いでいた。
「この艦の周りもいよいよ」
「敵軍が」
「しかしだ」
だがここで彼が言うのだった。
「最早退くことはできん。ましてや捕虜なぞ」
「そうです、我等はガルラ帝国です」
「その我等がです」
彼等はそれぞれ話していく。
「ですから戦い。そして」
「死ぬまでです」
「おのれシンクライン」
皇帝は呪詛の声を出した。
「まだだ、まだ私は」
「ゴライオンが来ました!」
「遂にここにまで!」
そしてさらに絶望的な報告が絶望的な叫びになった。
「陛下、御覚悟を!」
「最早!」
「見せてやろうぞ!」
皇帝はその中で叫んだ。
「帝国軍の戦いを!」
「はい、それでは!」
「ここで我等の最後の戦いを」
「攻撃目標はゴライオンだ」
皇帝は最後の命令を下した。
「狙え、いいな」
「はい、それでは」
「このまま」
照準をゴライオンに合わせる。しかしであった。
「最後の砲撃になるぞ」
「わかっております」
「これで」
命中するとは思っていなかった。
「我等の命運はこれで」
「最後ですね」
既に覚悟を決めていた。そうしてその中で攻撃を放つ。だが。
「この程度!」
「くっ!」
あえなくかわされてしまった。そのうえでであった。
「黄金さん!」
「あれだ!」
「決めるぞ!」
錫石、青銅、黒銅がそれぞれ彼に言う。
黄金もそれに合わせ今。剣を抜いた。
「いくぞ皆!」
黄金はその剣を両手に持ち言った。
「これで倒す!」
「はい!」
今度はファーラが彼に応えた。
「これで。ここでの戦いを」
「終わらせる。行くぞガルラ帝国皇帝!」
今皇帝に対して言った。
「十王剣!」
剣の名を呼びそのうえで戦艦を斬った。凄まじい斬撃が艦を両断しそのうえで炎に包み込む。皇帝はその沈みゆく船の中にいてそうして。家臣達に囲まれていた。
「陛下、最早」
「この艦もまた」
「わかっている」
既に彼も負傷している。頭や口元から血を流している。だが皇帝としての威厳は失ってはいない。そうしてその中で。彼は言うのだった。
「では最後はだ」
「はい、最早」
「それでどうされますか?」
「皇帝らしく死のう。ガルラ帝国の皇帝としてな」
誇りは失ってはいなかった。そうしてその誇りの中炎に包まれ。叫ぶのだった。
「ガルラ帝国万歳!」
これが彼の最後の言葉になった。炎の中消え去り彼は死んだ。これがガルラ帝国皇帝の最後であった。その旗艦は今完全に炎となり消えた。
「ガルラ帝国皇帝の最後ですね」
「ああ」
黄金はファーラの言葉に頷いていた。
「これでな。皇帝は死んだ」
「そうですね、遂に」
ファーラは彼の言葉を聞いて納得したように述べた。
「これで帝国は」
「三億の大軍もなくなりました」
「これで遂に」
見ればあの三億の大軍もだった。完全に消滅してしまっていた。後に残っているのは夥しい数の残骸だけであった。他にいるのは彼等だけであった。
「よし、後はだ」
「機雷をどけれそれから」
「あいつを倒すだけだ」
しかし彼等はわかっていた。自分達の戦いがまだ終わってはいないことが。
「シンクライン皇太子、遂に」
「あいつだけだ」
そうだったのだ。ガルラ帝国はまだ彼がいるのだった。
「あいつを倒さないと終わらない」
「だからこそ」
「その通りです」
ファーラも仲間達の言葉に応える。
「彼を倒さない限り帝国は滅んだことにはなりません」
「そうだな。だからこそ」
「次の戦場に」
そういうことだった。最後に彼を倒さなければならなかった。今ロンド=ベルはガルラ帝国と最後の戦いに挑もうと決意していた。
「まずは機雷を除去する」
大河がまた述べた。
「そのうえでだ。帝国との最後の戦いに向かおう」
「わかりました、それじゃあ」
「今から」
彼等もそれに応える。そうして機雷を除去していく。三億の圧倒的な戦力を消滅させてもまだ最後の戦いが彼等を待っているのだった。
その頃シンクラインは。土星の丁度上空にいて報告を聞いているのだった。
「そうか、父上は戦死されたか」
「はい、ゴライオンにより」
「一刀両断でした」
「他愛のないことだな」
彼は父の死を聞いても表情を変えはしなかった。
「ロンド=ベルはほぼ無傷か。父上も使えなかったな」
「使えなかったですか」
「陛下が」
「そうだ。使えなかった」
いささか驚く家臣達に対してもこう返すだけだった。
「所詮はな。その程度か」
「はあ」
「左様ですか」
実の父親、しかも皇帝までそう言ってのける彼の冷酷さに驚いてはいた。しかしそれを口に出すことは最早誰にもできなくなっていたのだ。
「ですが殿下」
「三億の兵に陛下まで失い」
「我等は最早」
「わかっている。制圧している全宇宙の抑えが利かなくなっているのだな」
「はい、そうです」
「その通りです」
彼等が言いたいのはまさにそのことだった。
「既に各地で反乱の気配が見えます」
「このままでは」
「わかっておる」
だがここでもその返答は変わらない。
「それはな。わかっている」
「御存知なのですか」
「そうだ。そしてやるべきこともだ」
わかっているというのだ。
「そうだな。さし当たってはだ」
「どうされますか?」
「それで」
「ロンド=ベルを倒す」
造作もなく言ってのけた。
「これからな。倒す」
「倒すのですか、彼等を」
「ですが」
「案ずることはない。所詮は地球の猿共だ」
ここでその偏見も露わにしてみせてきたのだった。
「私が本気になればどうということはない。そして」
「そして?」
「まだ何かありますか」
「そうだ。その戦力を私のものとする」
不敵な笑みと共の言葉だった。
「私のな」
「では殿下、奴等を倒しその戦力を手に入れ」
「帝国の剣とされるのですね」
「その通りだ。これで全ては解決する」
こう自然に考えているのだった。
「全てな。私の思うままにだ」
「そうですか。思うままに」
「ではやはりここは」
「そうだ。迎え撃つ」
彼も撤退する気はないのだった。
「奴等をな。ここでな」
「はい、それでは」
「そのように」
彼等もそれに応えて言うのだった。
「我等の全軍を以って」
「それに当たりましょう」
「数はだ」
シンクラインはそれについても尋ねた。
「どれだけいるか」
「丁度五千万程度です」
「それだけです」
数についても述べられた。
「これが我が軍の残り全てです」
「地球に来ることができたのは」
言葉は微妙に頼りなくもなってきていた。
「これだけです」
「後は」
「これで充分だ」
だがシンクラインはそれでいいとした。
「三億も一億も本来はいらぬのだ」
「そうなのですか?」
「ですが数は」
「それは私だからだ」
傲然と言ってみせてきたのだった。
「私が指揮するからだ。それではな」
「この五千万で迎え撃ち」
「そのうえで勝利すると」
「その通りだ。それではな」
あらためて部下達を見回し。そして言うのだった。
「最後の戦いだ。よいな!」
「はい、ロンド=ベルとの」
「地球人共との」
「そしてだ」
彼の言葉はさらに続く。
「私の手による帝国の千年王国の。はじまりでもある」
不敵な笑みと共に自らも述べる。ロンド=ベルと帝国の最後の戦いが今はじまろうとしていた。
戦いがはじまろうとする中。イノベイター達は既に土星を離れていた。そうして今はある場所をただひたすら目指しているのだった。
「戦闘が終わったな」
「そうなんだ」
リボンズは仲間からの言葉を何でもないように受け取っていた。
「じゃあ皇帝は」
「そうだ、敗れた」
「やっぱりね」
やはり何でもないといった口調だった。
「負けたんだ。あっさりと」
「三億の軍勢も消え去った」
このことについても述べられる。
「一兵も残らずにな」
「それじゃあ帝国の命運は決まったね」
やはりリボンズの言葉は薄笑いの言葉であった。
「滅亡だね。確実にね」
「確実か」
「うん。もう宇宙を抑えられるだけの戦力はないし」
帝国のことがよくわかっている言葉であった。
「それに」
「それに。何だ?」
「もう帝国はロンド=ベルには勝てないよ」
確信した笑みでの言葉であった。
「何があってもね」
「絶対にか」
「そうさ、絶対さ」
「では宇宙はどうなる?」
「そうね。それだけれど」
イノベイターの面々はここで彼に対して問うのだった。
「治めていた帝国がなくなるとなると」
「どうなるのかしらね」
「決まってるさ。僕達のものになるんだよ」
リボンズはまたあっさりと言ってのけたのだった。
「僕達のね」
「私達のね」
「そうだ、神である僕達のね」
そしてこうも言ってのけるのだった。
「ものになるんだよ」
「それではだ」
「帝国の崩壊は私達にとって好都合なのね」
「抑えたのは彼等の戦力だけじゃないからね」
またリボンズの不敵な言葉が出される。
「それだけじゃね」
「あれか」
また一人が彼に問うた。
「あれのことだな、それは」
「その通りさ。この世を治めるにだよ」
リボンズの今度の言葉は悠然としたものだった。
「マップは必要だよ」
「そして人口統計もか」
「僕達はその全てを手に入れた」
続いてこう言うのだった。
「それなら後はね」
「治めることができる」
「この宇宙を」
「帝国のかわりに」
「そういうことさ」
またしても平然と述べるリボンズだった。
「それにはまずはロンド=ベルに動いてもらわないとね」
「帝国を倒してもらいか」
「その後で」
「そうだな。その時こそ」
「私達の時代がはじまるわ」
こう言い合う彼等だった。既に戦いは帝国のその後もはじまっていたのだ。この世界もまた果てしない戦いの渦の中にあるのだった。

第百三十三話完

2009・6・6  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧