スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百三十二話 帝国の亀裂
第百三十二話 帝国の亀裂
ロンド=ベルは土星での最初の戦いを制した。そしてそのうえであるものを見たのであった。
「どうやら帝国軍が分裂したようね」
「そうね」
ミサトが真剣な顔でマリューの言葉に頷いていた。
「あの三人の将軍とシンクライン皇太子がね」
「それでどうやら動きがあったわよ」
「動きが!?」
マリューはミサトの言葉にその整った眉を動かしてきた。
「それでどういう動きかしら」
「あのまま三人の将軍は撤退して土星近辺にある基地の一つに入ったけれどね」
「ええ」
「そこに帝国軍が兵を向けているわ」
「つまり討伐ということね」
マリューはここまで話を聞いて察した。
「それは」
「ええ。それも私達に兵は向けずにね」
「つまりあれね」
マリューはミサトの話を聞いて次にはこう述べた。
「まずは内憂をどうにかするってことね」
「そういうことね。私達を無視してでもね」
またこのことを言うミサトだった。
「それでもみたいよ」
「帝国にも亀裂が出て来たようね」
「そうね。それでも」
ミサトはここで言うのだった。
「ここは面白いことになるわよ」
「面白いこと?」
「そうよ、それでね」
少し微笑みながらマリューに話すのだった。
「一つ考えがあるのだけれど」
「考えって!?」
「今帝国軍は私達に兵を向けていないわね」
「ええ」
彼女が言うのはこのことだった。
「それでね。そこを衝いてよ」
「帝国軍の陣地を攻略していくのね」
「そうよ。これはどうかしら」
ミサトの提案はこういうことであった。
「各個撃破で。どうかしら」
「そうね。それはいいわね」
マリューも彼女の言葉に頷いた。
「敵が気を取られている間にね」
「そういうことよ。その討伐に兵を向けている間にね」
ミサトの言葉は続く。
「隙を衝いてよ」
「わかったわ。それじゃあ」
マリューはまた頷いたのだった。
「早速ね。進撃を開始しましょう」
「そうね」
こうしてロンド=ベルはすぐに帝国軍の基地の各個撃破に向かうことになった。しかし二人の周りの皆は二人の話を怪訝な顔で聞いているのだった。
「なあ」
「どうしたの?お兄ちゃん」
リィナがジュドーの言葉に応える。
「いやよ、どっちがミサトさんでどっちがマリューさんなんだ?」
「声の話?」
「御前わかるか?」
このことを妹に尋ねるのだった。
「どっちがどっちか」
「私もちょっと」
しかしリィナも首を捻るばかりだった。
「わからないのよ」
「そうだよな。俺もな」
「何?」
「時々御前とエマさんやハルカさんが話するだろ」
「ええ」
「どっちがどっちか全然わからなくなるしな」
妹についてもそうなのだった。
「ビーチャとラムサスさんとかイーノとケーンとかもよ」
「それならお兄ちゃんもよ」
リィナもリィナで兄に言う。
「忍さんと一緒にいたらさっぱりわからないわよ」
「だよなあ。プル達とアムとかもな」
「全然どっちがどっちなのよ」
「同一人物じゃねえよな」
ジュドーはかなり真顔であった。
「ヤンロンさんとジェリドさんとかよ」
「この前ハマーンさんとマウアーさん間違えかけたしな」
「それでシンさんマウアーさんをおばさんって言って思いきり殴られてたわよね」
「だったな」
とにかく口は災いの元を地でいくシンだった。
「何かよ、とにかくよ」
「そうだよな。声が似てる人多過ぎよ」
「そういえば私もだ」
タータがここでにょっきりと出て来た。
「遥と声が似ている。自分でも思う」
「そうなのよね。私とタータなんて全然性格が違うのに」
「ついでに年齢もな」
そしてそのシンが言うのだった。
「二十九!?立派なおばさんじゃねえか。さっさと目のところの小皺何とかしろよ」
「あっ、手が滑ったわ」
そして遥はいきなりコップに何か得体の知れない液体を入れてそれをシンの方に偶然零してしまった。あくまで偶然ということだった。
「ぐわあああああああああっ!!」
「あらっ、これって硫酸だったわ」
シンにかけておいて平気な顔をしていた。
「何でこんなところにあったのかしら」
「何でって言われても」
「今の絶対わざとよね」
ジュドーとリィナもかなり引いていた。それはどう見てもわざとであった。
「あれってよ」
「どう見てもね」
「とにかくよ」
その硫酸をかけてからの言葉であった。
「声ってね。怖いわよね」
「タトラ姉様とテュッティを間違えたこともあるしな」
タータは何時の間にか関西弁になっていた。
「どちらも普段は温厚やさかい大丈夫やけれどな」
「そういえばタトラさんとテュッティさんって」
今度言ったのはリンダだった。
「あれですよね。アイナさんとも同じ声ですし」
「声が同じっていうのはね」
「どういうことかしら」
「どういうこともないでしょ」
しかしここで遥が言った。
「他人の空似よ」
「空似ですか」
「リンダちゃんだってロザミアちゃんと声が似てるでしょ」
「はい」
実は彼女もなのだった。
「それでケーンが間違えたり」
「まあ私はこの声のおかげでね」
ここで微笑む遥だった。
「あれよ。ミサト達やエリスちゃんやプレセアやサフィーネと仲良くやれてるし」
「あっ、それはわかります」
ひかるが今の彼女の言葉にはっきりとした顔で頷いた。
「私も。あとは」
「僕もわかります」
「私もよ」
シンジとダイアンもなのだった。
「セーラーで」
「それよね」
「ええ、それよ」
やはりそれだと言う遥だった。
「ヒルダ達もそうだしモニカ王女の双子姉妹も」
「じゃああれですよね」
シンジはここでまた言った。
「ミサトさんとアムロ中佐が仲いいのってやっぱり」
「それだと思うわ」
遥も微笑みながら述べる。
「やっぱりね。縁と相性よ」
「ですよね、やっぱり」
シンジはやけに明るく頷く。
「僕もあれなんですよ」
「どうしたの?シンジ君は」
「アズラエルさんや凱さんと息が合うんですよね」
「奇遇というものを感じるんですよ」
今度はアズラエルが出て来た。
「シンジ君とは」
「けれどアズラエルさんって」
「そうよね」
またここでジュドーとリィナが言う。
「シローさんとも声が似てるし」
「それはそれで混乱するんだよな」
「僕もそう言われるね」
ユウナまで出て来た。
「輝君とね。今の、って限定らしいけれどね」
「限定って!?」
「あっ、詳しいことはいいから」
この辺りはあえて言わないことにするユウナだった。
「まあとにかく。声の問題は難しいよ」
「ですよね、本当に」
リュウセイもこのことには頷くことしきりだった。
「このセシリーとうちの隊長間違えたし」
「あれはちょっと笑ったわ」
その間違えられたアヤがここでも笑っていた。
「前から声が似てるって思ってたしね」
「だから間違えちまってよ」
「俺も声を間違えられた」
ライもなのだった。
「それどころかサイクロプスとまで言われたことがある」
「サイクロプスって?」
「サイクロプスならいい方だ」
アスランはふと暗い顔になってしまった。
「俺は蝿呼ばわりされて久しい」
「わしは猫じゃが」
兵左衛門はそれなのだった。
「一体何なのじゃ?話がよくわからんのじゃが」
「気にすることはない」
こう述べたのはレーツェルだった。
「私はボスなのだからな」
「ああ、それはね」
ここで通であるユウナが言うのだった。
「特撮だから。けれどそう言われて誰も困ったりしないでしょ」
「それは確かにそうね」
プレセアがそれに頷く。
「私もプテラノドンって言われても別に」
「プテラノドンねえ」
「何かプレセアさんも色々あったんですね」
「そうみたいね。自分ではよくわからないけれど」
あくまで自分は、なのだった。
「とにかくおやって思うけれど別に悪い気はしないわ」
「あっ、それは俺も」
そしてジュドーもなのだった。
「俺もこの前竜がどうとかって言われたしよ」
「あれっ、お兄ちゃんもなの」
「そうなんだよな。何かそういう人って多いみたいだな」
「この部隊の特徴みたいね」
遥がここでまた言った。
「どうやらね」
「何か似てる人がいたり特撮だとか」
「この部隊も何か変なことが多いよな」
「ねえ」
かえすがえすもであった。
「おかげで誰が誰かわからなくなったり」
「そういうのがあるからねえ」
「まあとにかくよ」
ミサトはその中で冷静に皆に述べた。
「今回の進撃だけれど」
「ええ、それで基地ですよね」
「各個撃破ですよね」
「そうよ。まずは前線の基地を十個よ」
陥落させるべき基地の数も話される。
「それだけ攻略していくわ」
「わかりました。それじゃあ」
「一気に」
こうして彼等はすぐに基地の攻略に移る。まずは最初の基地であった。
「よし、今だ!」
「行けっ!」
ロンド=ベルは手薄になっていた最初の基地を襲う。そうして僅か数分でその基地を陥落させてしまったのであった。まさに疾風の如きであった。
「よし、最初はこれでいいな」
「これで」
「そうよ、次よ」
ミサトは基地を陥落させてすぐに言ってきた。
「次の基地に向かうわ」
「電撃戦ね」
エマがここで言った。
「つまり。そういうことね」
「その通りよ。それで行くわ」
やはりミサトが考えている作戦はそれであった。
「一気にね。基地を陥落させてよ」
「それで敵の補給路を絶つのね」
「帝国軍の主力は今反乱軍の討伐に向かっているわ」
「それでその補給路と絶って」
「そのうえで攻めるってわけね」
「そういうことよ。いいわね」
またエマに話すのだった。
「補給と連絡を中断すればそれで勝利は手に入るわ」
「じゃあ一気になのね」
「ええ」
こうして一気に進む。二つ三つと基地を陥落させていく。その間敵は次々と倒していく。
「消えろ」
レイは目の前の敵にドラグーンを放ちそれで一蹴する。そうして敵の基地に侵入しそのうえで乗り込む。そうしてそのうえで敵の基地に入る。しかしまだ進撃は止まらない。
「次よ!」
「わかっている」
レイはミサトの言葉に頷く。そしてそこに留まることはなくまた進撃に入るのだった。
また基地を陥落させる。こうして僅か一日で十の基地を陥落させる。しかしそれで終わりではなかった。
「とりあえず基地は陥落させたけれど」
「ええ」
「次ですよね」
「そうよ。基地を陥落させて終わりではないわよ」
あらためて一同に告げるのだった。
「後はね」
「反乱軍に向かっている敵の主力を倒すんですね」
「そうよ。悪いけれど今度はそちらに向かうわ」
こう告げるのだった。
「このままね。いいわね」
「了解、それじゃあ」
「次は」
「進路一気に」
ミサトは全軍に告げた。
「敵主力に。いいわね」
「はい!」
こうして彼等は今度はその帝国軍主力に向かった。帝国軍は今ローザ達と戦っていた。数は圧倒していたがそれでも苦戦していた。
「くっ、しぶとい奴等だ」
「まだ陥ちぬというのか」
指揮官達はそれを見て歯噛みするのだった。
「これだけの数で攻めようともまだ」
「だが」
しかしそれでもだった。戦局は彼等に圧倒的に有利になっていた。
「あと一歩だ、このままだ」
「攻めるぞ」
彼等はそのまま攻撃に入る。しかしだった。彼等はそのまま一気にローザ達反乱軍を攻める。数で一気に押し切ろうとしていた。
ローザ達は基地に篭り健闘してはいた。しかしであった。
「くっ、最早これで終わりか」
「司令、第十二艦隊が消滅しました」
歯噛みするローザの下に報告が届く。
「最早我が軍はこれ以上は」
「持ちこたえることができません」
もう限界であった。やはり敵の数が圧倒的であった。
「このままではもう」
「我々は」
「これで終わりか」
そしてローザも諦めようとしていた。
「最早。これで」
「ローザ」
「無事か?」
モニターにテラルとクロッペンが現われた。
「軍は」
「そして貴殿は」
「どちらも今のところはな」
ローザは苦い顔で二人に返しはした。
「しかしだ。最早それもだ」
「限界か」
「やはり」
「貴殿等はどうだ?」
ローザは今度は自分から二人に対して問うた。
「それでだ。大丈夫なのか?」
「貴殿と同じだ」
「こちらもだ」
これが彼等の返答だった。
「これでわかるな」
「そういうことだ」
「そうか」
ローザは表情を見せずその言葉を聞いた。
「よくわかった」
「だが最後まで戦うぞ」
「それでよいな」
「無論だ」
彼等はそれでもなのだった。
「戦わなくてはならない。いいな」
「うむ、その通りだ」
「ここが死に場所だ」
やはりローザは最初からそう決めているのだった。
「それでいいな」
「わかっている。何としても」
「最後まで戦う」
彼等はそのまま戦おうとする。彼等は今まさに滅びようとしていた。しかしその時だった。
「何っ!?」
「まさか!?」
帝国軍の方で異変が起こった。
「それはまことか?」
「嘘ではないのか?」
「残念ながら」
部下達がそれぞれの指揮官に報告していた。
「十の基地が陥落し」
「そして補給も通信も途絶えました」
このことを告げるのだった。
「僅か一日にして」
「我が軍は最早」
「馬鹿な、そんな筈がない」
「そうだ、有り得ぬ」
指揮官達はその報告を聞いても信じようとはしなかった。
「ロンド=ベルはまだ先にいた筈だ」
「それで何故なのだ?」
「わかりません。ですが」
「基地は実際に」
陥落している。これは事実だった。
「そしてロンド=ベルの行方はわかりません」
「何処にいるのかさえも」
「しかも奴等が行方不明だと!?」
「まさか」
彼等はそれを聞いてさらに狼狽した。
「ではまさかこちらにも」
「来ているというのか!?」
「それはわかりませんが」
これは確かなことはわからなかった。しかし。
「ですがそれでも」
「奴等の今までのパターンを考えますと」
「その通りです」
彼等は言い合う。
「おそらくは後ろから来ているかと」
「どうされますか?」
「反乱軍は」
「シンクライン殿下は反乱軍を征伐されよと仰った」
指揮官の一人が言った。
「殿下がな」
「殿下がですか」
「そうだ」
帝国軍にとって最重要問題であった。
「殿下がな」
「そうですか。それでは」
「まずは反乱軍を」
「そうだ」
やはりそれであった。
「このまま攻める。いいな」
「わかりました。それでは」
「このまま反乱軍を」
「攻め滅ぼす」
彼等の決断はそれしかなかった。
「このままな。よいな」
「はい、それでは」
「このまま反乱軍を」
そのまま攻め滅ぼそうとする。しかしだった。帝国軍がまさに最後の攻勢を仕掛けようとしたその時だった。彼等の後方から出て来たのだった。
「何っ、やはり!」
「来たというのか!」
「ロンド=ベル!」
「さて、上手くいったわね」
「はい」
ルリがマリューの言葉に応えていた。
「最高のタイミングです」
「帝国軍の数は?」
「二億です」
ルリはマリューに答えた。
「ですがその多くが損傷しています」
「そう。そして狼狽している」
条件はもう一つあった。
「おまけに反乱軍もいるし」
「二億といえぼ敵ではありません」
ルリは断言した。
「このまま攻めるべきです」
「わかってるわ。じゃあ皆」
ミサトはあらためて全員に告げた。
「このまま攻めて。いいわね」
「はい、けれど」
「どうしたの?シンジ君」
「反乱軍はどうするんですか?」
彼が問題にしたのはもう一つの軍のことだった。
「あの人達もやっぱり」
「攻撃してきたらね」
ミサトの返事はこうであった。
「その時に攻撃を仕掛けて。いいわね」
「わかりました。それじゃあ」
「まあ絶対攻撃してくるでしょうけれどね」
アスカはこう見ていた。
「その時はよ、容赦しないわよ」
「その時は容赦しなくていいわ」
ミサトはこうも言った。
「いいわね」
「わかってるわよ。とにかく二億潰すわよ」
アスカは早速エヴァを前にやってきた。
「さあ、さっさと倒されなさい!」
叫びながらそのライフルを放つ。それにより一斉射撃だった。一気にであった。
「死になさい!」
「よし、僕だって!」
「私も」
ここでシンジとレイも続く。彼等は一気に攻める。二億といえど後方から衝かれ動揺しそのうえ反乱軍との挟み撃ちになり帝国軍は瞬く間に瓦解してしまった。
「例え二億いても」
「キラ、大丈夫です」
ラクスがキラに対して言ってきた。
「私達はこのまま攻めることができます」
「そうだね。心配しなくていいんだ」
彼は冷静に照準を定めていた。
「数が多くても」
「そう、心があれば」
ラクスが言うのはこのことだった。
「私達は案ずることはないのです」
「今我が軍は押しています」
バルトフェルドも言う。
「このままいけます」
「はい、ではエターナルも」
ラクスは乗艦についても言った。
「このまま前に」
「突撃ですね」
「その通りです。敵には心がありません」
ラクスの言う心がである。
「その彼等に敗れることはありませんから」
「心がないから」
「そう、彼等はただ言われるがままに戦っているだけです」
より具体的な言葉になっていた。
「それに対して私達は」
「僕達は」
「平和を護り、そして道を踏み外さない心があります」
「そういう心がなんだね」
「覚えていますか、キラ」
ラクスの言葉が遡るものになった。
「あの時。私が貴方にフリーダムを授けた時」
「あの時のこと。あの時の」
キラもまたその時のことを思い出すのだった。ザフトにおいてラクスからフリーダムを授けられたその時を。その時に彼は多くのものを得たのだ。
「想いだけでも、力だけでも」
「そうです。そして今私達にはその二つがあります」
「想いと力が」
「私がそれに気付いたのはラウ=ル=クルーゼのことを知った時」
その時こそがラクスが戦いを決意した時なのだ。
「その時に私は戦うことを決意し同志達を集めました」
「それがアスランやシンだったんだね」
「ザフトだけではありませんでした」
そうした小さいものではなくなっていたのだ。
「コーディネイター、SEED。些細なことに過ぎません」
「それはわかるよ」
ロンド=ベルにいるからこそわかることだった。
「僕も。SEEDなんかは」
「そうです。大したものではありません」
同じSEEDを持つ者同士の言葉である。
「異なる星から来た人達、ニュータイプ、超能力者、聖戦士」
「そしてサイボーグ、宙さんのように」
「そういった人達と同じです。そしてまた多くの人達とも」
「ただ。力を持っているだけ」
「そうです。そして」
ラクスの言葉は続く。
「我々はその力を想いの為に使わなくてはならないのです」
「皆を護る為に」
「私は。グラドス人達を撃つように言いましたね」
「彼等を撃ってその時に」
「命は誰も同じです」
それがわかってのことなのだ。
「誰もが。ですが」
「彼等を撃たないと多くの人達が殺されたんだ」
グラドス軍は一般人を狙う。だからこそキラはあの時彼等を撃ったのである。
「だから僕は」
「それでいいのです。平和を護る為に」
ラクスの言葉は続く。
「彼等を倒さなければならないのです」
「そうだね。グラドス軍もガルラ帝国も」
「同じです。彼等は許されざる存在です」
何故そうかということもまたわかっていることだった。
「だからこそ。キラ」
「この戦いにも勝つんだ」
キラの言葉が強いものになった。
「この世界の平和の為に」
「そうです。行きましょう、キラ」
「うん、やるよラクス」
ストライクフリーダムが今前に出た。
既にそこにはアスランとシンもいる。彼等もまた激しい戦いの中に己を置いていた。
「キラ、正面だ!」
「御前はそっちだ!」
そのアスランとシンが彼に言ってきた。
「頼んだぞ、そちらは」
「いいな!」
「うん、わかってるよ」
「キラ、いいか?」
アークエンジェルからカズイが通信を入れてきた。
「今そっちにも大軍が向かっているからな」
「そうみたいだね」
それはもうレーダーに出ていた。それを見ての言葉である。
「とりあえず。数えきれないだけいるね」
「ミーティアを上手く使え」
サイがアドバイスしてきた。
「いいな、ミーティアならかなりの数でも相手にできる」
「わかってるよ」
キラも彼の言葉に頷く。
「それはね」
「ただ小回りには気をつけろよ」
トールがこう彼にアドバイスする。
「ミーティアは細かいところが見えにくいからな」
「うん」
「そっちは踏み止まってくれていいから」
ミリアリアもまた彼に言ってきた。
「踏み止まってね。御願いね」
「わかったよ、それじゃあ」
キラは四人の言葉を受けていよいよ前に出る。そうしてそのミーティアを縦横に使う。それだけではなくドラングーンも使い敵を倒していく。
キラだけではなく他の面々もだった、果敢にその二億の大軍に突っ込む。これはまさに決め手だった。帝国軍は後ろからの彼等の攻撃に総崩れになった。
「この調子だな」
「そうね」
「確かに」
皆総崩れになった帝国軍を見て言い合う。
「この調子でいけば少しずつ」
「少しずつでも」
「それでも」
彼等は戦い続ける。そこに通信が入った。
「御前達か?」
「ローザか」
「そうだ、私だ」
ローザはまずはバルディオスのマリン達に対して告げてきた。
「どういうつもりだ」
「どういうつもりかだと?」
「そうだ。何故私達の戦いに介入してきた」
このことを問うのだった。
「何故だ、それは」
「ただ作戦でだ」
こう答えるマリンだった。
「だからだ。俺達が今ここで戦っているのは」
「作戦か」
「そうだ、帝国軍の基地を陥落させそのうえで御前達と戦っている彼等を倒す」
今まさに彼等がしていることである。
「それだけだ。俺達はな」
「そういうことか」
「しかしだ。御前達に興味はない」
このこともローザに告げるのだった。
「御前達にはな」
「何故だ?」
ローザはそれを聞いて眉を顰めさせてマリン達にまた問うた。
「何故私達を攻撃しない」
「御前達は帝国軍じゃない」
だからだというのである。
「だからだ。御前達には攻撃しない」
「そうか」
「だが御前達が俺達に攻撃を仕掛けて来るなら」
その場合のことも言う。
「その時は俺達もだ」
「私達と戦うか」
「だがそうでない限りは俺達は敵じゃない」
マリンの声が微かに笑った。
「そういうことだ」
「そうか、わかった」
ローザはその言葉に対して頷いた。
「それでは御前達には攻撃をしない」
「ローザ、じゃあ御前は」
「ただしだ」
だがローザの声は鋭いままだった。
「御前達の味方になったわけじゃない」
「それは違うというんだな」
「今私達は生きる為に戦っている」
彼等が言うことはそれだった。
「それでいいな」
「わかった。それじゃあな」
こうして彼等は戦うことなく共闘に入った。そのまま前後から帝国軍を挟み撃ちする形になった。それにより帝国軍はさらに崩れた。ニ億の大軍は最早ただの烏合の衆だった。そうして遂にその二億の大軍はその数を殆どなくしそのうえで何処かに消えたのだった。
「勝ったな」
「どうやらな」
流石に二億の大軍を破ったことは大きかった。そしてその疲労も。
「やっとだったな」
「ああ」
「けれどこれで」
ロンド=ベルの面々は言うのだった。
「俺達は勝った」
「ニ億の大軍の殆どを叩き潰したんだ」
まさに殲滅だった。残った帝国軍は一千万程度だった。その彼等も何処かに消えてしまった。
「やっとな」
「御前達のおかげで命は助かった」
テラルがその彼等に言ってきた。
「そのことに対して礼は言おう」
「で、それでどうするつもりなんだ?」
ジュリイは警戒する目で彼を見ていた。
「今度は俺達と戦うつもりか?」
「そうだな。帝国軍は退けたんだ」
謙作も言う。
「今度は俺達とか?どうするつもりだ?」
「いや、そのつもりはない」
しかしテラルはそれを否定するのだった。
「まず我々にはもう御前達と戦う必然性はない」
「必然性はかよ」
「最早帝国から追われる身」
それが今の彼等である。
「それでどうして御前達と戦うのだ?」
「帝国じゃなければ戦うつもりはないってことか」
「そうだ」
また闘志也に答えるのだった。
「だからだ。私達は最早御前達とは戦わない」
「その言葉信じろというつもりか?」
ジュリイの言葉はまだ警戒するものだった。
「まさかと思うが」
「いや、ジュリイ」
しかし闘志也が彼等に言ってきた。
「それは違う」
「何っ、闘志也」
「違うというのか?」
ジュリイだけでなく謙作も眉を顰めさせてきた。
「まさかこの連中を」
「信じるっていうのか」
「ああ、テラルの言葉は本当だ」
彼にはわかったのだ。
「間違いなくな」
「本当か」
「あいつの言葉は」
「そうだ、現にあいつ等は帝国軍にあそこまで追い詰められた」
最早残っている戦力は僅かだった。彼等に残されているのは。
「そうじゃないのか?」
「そうだな。帝国軍は敗北を許さない」
「だからこの連中は」
「それにテラルは嘘は言わない」
「何だと!?」
「そんな筈があるか」
二人は今の闘志也の言葉も否定した。
「帝国軍の司令官だぞ、そんな筈があるものか」
「そうだ、帝国軍といえばだ」
「それはシンクラインだ」
彼だと言うのである。
「けれどこいつは違う」
「テラルはか」
「違うのか」
「ああ、違う」
またこう言うのだった。
「こいつはな。嘘は言わない」
「そういえばテラルって」
「ねえ」
ビューティとレイカもここで話す。
「汚い謀略とか使わなかったし」
「ローザもクロッペンも」
「我等には誇りがある」
クロッペンの言葉である。
「そのようなものには頼らん」
「だからなんだな」
「そうだ」
今度は剣人に答えるクロッペンだった。
「ダルタニアス、御前達との勝負もだ」
「へっ、いいこと言うじゃねえか」
そして剣人はそれを聞いて楽しげに笑った。
「そうでなくちゃよ。俺だって戦いがいがねえぜ」
「その通りだな」
弾児も言う。
「俺達もまた戦いがあってことだ」
「しかしだ」
だがここでクロッペンは言うのだった。
「貴様等に力を貸すつもりはない」
「力はかよ」
「今は共に戦う」
このことは言うがだった。
「だが。それでもかつての敵と轡を並べる気はない」
「そうか」
ガスコンは彼の言葉を静かに聞いていた。
「ならばそうするがいい、誇り高き男達よ」
「銀河の虎か」
彼もガスコンのことは知っていた。
「私のこの言葉を認めるというのか」
「如何にも」
そしてそれを隠そうとはしなかった。
「その通りだ」
「ではその言葉受け取っておく」
クロッペンはこう彼に返したのだった。
「有り難くな」
「わかった。それではだ」
「そうです、戦いは終わりました」
ミサトは真面目な顔で全軍に告げた。
「基地に戻ります」
「基地っていうと」
「ミサトさん、そこは」
「そうよ、私達が陥落させた基地よ」
こうヒカリとケンスケに答えるのだった。
「あそこの一番土星に近い基地にね。行くわよ」
「わかりました」
「それじゃあ」
「けれどミサトさん」
しかしここでシーラがミサトに問うのだった。
「それでも他の基地は」
「それは心配いりません」
ミサトは微笑んでシーラに答えた。
「既に手は打っています」
「手はですか」
「他の基地の施設も物資も全てその基地に集めるよう手配しておきました」
もうなのだった。
「ですから。御安心下さい」
「そうですか。それでは」
「しかし。早いわよね」
「そうだよね」
それを聞いたエルとベルが話す。
「もう手を打ってるなんて」
「しかも連邦軍もここまで来てるんだ」
「大統領が手配して下さっているのだ」
サンドマンが彼等に述べる。
「だからだ。連邦軍の動きも速いのだ」
「何かこっちの連邦軍も連邦政府も」
「かなり優秀?」
「そうだよね」
あちらの世界の面々はこのことを話すのだった。
「それがかなり羨ましいっていうか」
「最近はましになったけれど前の連邦政府なんてねえ」
「酷かったからねえ」
「全くだ」
カガリもそれに対しては完全に同意であった。
「おかげでオーブも苦労している」
「特にユウナさんがですよね」
「そうよね」
リョウトとリオはカガリよりもユウナに同情的だった。
「もうユウナさんなんて何役なんだか」
「オーブってそんなに人材いないのかしら」
「いない」
今断言したのはミナだった。
「残念だがな。オーブには人はそれ程いない」
「また随分とはっきり言い切ったな」
「今のはかなり驚いたけれど」
ユウキもカーラも少し引いてしまっていた。
「そこまで言い切るか」
「自分の国の弱点を」
「しかし事実だ」
だがそれでもミナは言うのだった。
「これはな。今オーブには人がいない」
「ああ、今度オーブ銀行の総裁にもなったから」
そのユウナの言葉であった。
「三ヶ月前に話があったけれど今日で就任する手筈だったからね」
「今度は銀行の総裁ですか」
「大変ですね」
「まあ健康には気をつけているけれどね」
一応こう答えはした。
「それでも。カガリがせめて」
「カガリちゃんがですか」
「せめてなんですね」
「デスクワークとかできればねえ。そういうの全然駄目だから」
そんなことがカガリにできる筈もなかった。
「で、僕がなんだよ。結果的にね」
「まあまあユウナさん」
「そんなに困った顔をするとかえってよくないですよ」
タスクとレオナがこう言って彼を慰める。
「そうだ、このスパムサンドどうですか?」
「私がとびきりまずく作りましたから」
「ああ、有り難う」
ユウナは気を取り戻してそのスパムサンドを受け取るのだった。
「それじゃあね。まず食べてだね」
「そうそう、食べたら気分もよくなりますよ」
「それにユウナさんにはあの趣味があるじゃないですか」
「うん、特撮にアニメはねえ」
ユウナも強靭な精神の持ち主だ。すぐに気を取り直していた。
「やっぱり男の浪漫だよ」
「はい、ユウナ様それでは」
「今度は戦隊ものでも観ますか」
キサカとトダカが誘う。こうしてユウナに復活してもらったのだった。
「それにしてもここの大統領ですが」
「はい」
レイヴンがユウナの問いに答える。
「サンドマン様とも懇意に為されています」
「そうですよね。かなり話がわかる人ですよね」
「その通りです。おかげで我々も助かっています」
テッサも言う。
「補給も後方支援も根回しをしてくれますので」
「それが一番有り難いのよね」
ミサトはそのことに最も感謝しているのだった。
「おかげで私達も思う存分戦えるわ」
「それでですが」
今度はエレが皆に言ってきたのだった。
「ローザ司令達は司令達で発たれるそうです」
「そのようです」
エイブも言ってきた。
「ですからやはり私達とは完全に別行動です」
「そうなりますので」
「わかりました。それじゃあ」
「俺達は基地に戻って」
「私達で作戦を進めるわ」
こう皆に告げるミサトであった。
「それでいいわね」
「了解、それじゃあ」
「いよいよ土星に」
「二億倒したわ」
ミサトもこのことは強く意識していた。
「そしてその前に一億倒してるから」
「それより前にも随分倒してるから」
「もう帝国の戦力も」
「はい、それは間違いありません」
ファーラも彼等に告げてきた。
「それに私達が地球に来る前に多くの帝国軍の基地を破壊し軍勢を倒していますので」
「帝国軍もその力には限界がきている」
「そうですね」
「そしてそれだけではありません」
それに留まらないというのである。
「帝国軍はその圧倒的な軍事力で奴隷達を押さえつけています」
「軍事力でか」
「というと」
答えは自然に出て来るものだった。
「それを失えば奴等は」
「間違いない」
そして答えが出された。
「奴隷を抑えられなくなって」
「崩壊する」
「既にその寸前の筈です」
ファーラはこうも指摘したのだった。
「帝国は。最早」
「そうか、それなら」
「帝国はここでも宇宙でも崩壊するのか」
「その通りです」
ファーラの言いたいことはこのことだった。
「ですから攻めるべきです、ここは」
「よし、じゃあ」
「そうするか」
「一気にな」
皆それで一致した。
「そうして攻めてそのうえで」
「帝国を滅ぼす」
答えはもう出ていた。
「それで行くぜ」
「今度ことガルラ帝国を倒す!」
そのことを誓い合ってそのうえで基地に戻るのだった。そうしてそのうえで帝国軍との最後の決戦に向かう。最後の決戦の時がまさに来ようとしていた。
第百三十二話完
2009・5・31
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