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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百二十九話 木星破壊作戦  

                第百二十九話 木星破壊作戦
  「よいか!」
風間博士がまた叫んでいた。
「今より木星に対してミサイルを放つ」
「はっ!」
「それでは!」
「木星を粉々にしそこにいるロンド=ベルを巻き込むのだ」
「それにより奴等を完全に消し去るのですね」
「その通りだ。木星なぞ惜しくとも何ともない」
博士にとってみればその通りだった。
「そしてそこにある基地もな」
「待て、博士」
クロッペンがここで博士にモニターから問うてきた。
「まだ木星には多くの基地がある」
「それがどうした?」
「そして基地には多くの将兵がいる。まだ完全な撤退は終わってはいないのだぞ」
「黙れ!」
しかし博士はその言葉を聞かなかった。
「それがどうしたのだ!」
「どうしただと!?」
「そうだ。犠牲なぞ知ることか!」
やはりそんなことは意に介してはいない博士だった。
「ロンド=ベルを倒す為に犠牲は付きものだ。違うか!」
「そのまま巻き込んでもだというのか」
「そんなことは承知のうえだ」
やはり彼は確信犯であった。
「構わん!撃て!」
「はい!」
「待て!」
今度はテラルも出て来た。
「それだけは止めろ!ここにいる戦力も巻き込まれるぞ!」
「それもどうでもいいわ!」
やはり他人のことなぞ構わないのだった。
「ロンド=ベルさえ倒せればな!」
「くっ・・・・・・」
「やはり言っても無駄か」
クロッペンもテラルも歯噛みするしかなかった。
「仕方ない。だが」
「何だ?」
「ロンド=ベルを甘く見ないことだ」
「その通りだ」
二人はまだこのことを博士に言うのだった。
「これで討てればいいがな」
「健闘を祈る」
ここまで言うとモニターから消えた。今彼等の軍は博士の軍には参加していなかった。だがそれでも博士は一千万以上の軍をそこに持っていた。
「ふん、臆病者共が」
「全くです」
「その通りです」
ガガーンとダルトンが忌々しげに博士に応える。
「あの者達は所詮あの程度です」
「ですが我々は」
「わかっておる」
博士もまた動じてはいなかった。
「それではだ」
「はい、それでは」
「ミサイルを」
「うむ、撃て!」
博士は攻撃を放つことを命じた。
「それにより木星をだ。よいな!」
「はっ!」
こうして遂にミサイルが放たれた。無数のミサイルが木星に向かう。今まさにそのミサイル達が木星に突き刺さろうとするその瞬間だった。
「むっ!?」
「何っ!?」
そのミサイル達は一斉に撃墜される。それは空しく汚い花火をあげるだけだった。そしてそれと共に。彼等が姿を現わしたのだった。
「何だとっ!」
「奴等が何故ここに!」
「よし、間に合ったぜ!」
「ざまあ見やがれ!」
驚く帝国軍の前にロンド=ベルが姿を現わした。ミサイルを全て撃墜したのも彼等だった。
「何故貴様等がここにいる!」
「手前の考えは読んでたんだよ!」
闘志也が怒りの声をあげる博士に応える。
「木星を爆破してそれで俺達も倒すってな!」
「何だと!」
「そんなことさせるかよ!」
闘志也もまた怒りの声をあげた。
「手前の狂った行動もこれで終わりだぜ!」
「おのれ、わしの作戦をことごとく邪魔しおって」
「博士、いい加減にするのだな」
ジュリイも彼に対して言うのだった。
「最早その狂気は達することはない」
「狂気が成就したことはない」
謙作もいた。
「最後は破滅する。それだけだ」
「おのれ、貴様等・・・・・・」
博士はその声に歯噛みするだけだった。
「言わせておけば」
「博士、ここは」
「奴等ごと」
「わかっておる!」
博士はまた彼等の声に応えるのだった。
「それではだ。奴等も潰してしまえ!」
「はい!」
「では!」
「全軍出撃せよ!」
彼は今度は全軍に出撃命令を出した。
「そして木星にいる戦力もだ。呼べ!」
「了解です!」
「今すぐに!」
彼等はすぐに全軍を出撃させそのうえでロンド=ベルに向かった。それと共にミサイルも再び放ち木星に向けるのも忘れていなかった。
「ちっ、またかよ」
「また撃ってきたかよ」
キースとバーニィがそれを見て言う。
「懲りないな、本当に」
「けれどあれも撃ち落とさないと」
「ミサイルを迎撃する部隊と敵に向かう部隊を分ける」
シナプスはすぐに決断を下した。
「ミサイルには魔装機神とヴァルシオーネが向かってくれ」
「あいよ」
「じゃあやらせてもらうよ」
「任せてもらおう」
マサキとリューネ、ヤンロンが応える。
「そして他の部隊で敵を迎え撃つ。いいな」
「了解!」
こうしてそれぞれの役割も分担されそのうえで作戦に移る。まずはミサイル達が次々に撃破されて散っていくのだった。
「一発たりともいかせないわ!」
「そうよ!」
テュッティとミオが言う。
「木星は私達が守る!」
「だから諦めなさいての!」
五機でミサイルを撃ち落としていく。そうして本隊は一直線に博士が率いる帝国軍に向かうのだった。数が多くともそれでも突き進んでいる。
「おら!木星でくたばるのは手前等だ!」
「僕達じゃなくてね!」
「地獄に落ちろ」
またオルガ、クロト、シャニが先陣を切っていた。そうして相変わらずの桁外れの破壊力を店そのうえで突破口を開いていた。
「よし、いいぞ」
ロウはそんな彼等の戦いを見て言うのだった。
「その調子だ。派手にやっていいからな」
「言われなくてもな!」
「やらせてもらうからね!」
「とりあえず死ね」
三人はロウの言葉を待つまでもなく派手に暴れ回っている。そしてそれは三人だけでなく他の面々も敵を次々と薙ぎ倒していた。
「このまま敵を殲滅すればいい」
「うむ、その通りだ!」
「撃て、撃つのだ!」
ブンドルとカットナル、ケルナグールもそこにいた。自分達の戦艦を突っ込ませている。
「所詮は烏合の衆。我々の敵ではない」
「そうだな。敵はただ数がいるだけだ」
「数が多いだけで手応えもないわ!」
一千万を超えてもだった。彼等は博士が率いる帝国軍を圧倒していた。やはり幾ら数がいてもロンド=ベルの相手にはなっていなかった。
「倒せ!」
博士は乗艦から支離滅裂な指揮を繰り返していた。
「右だ!」
「右ですか!?」
「いや、左だ!」
指揮は混乱していた。
「左から攻めよ。よいな!」
「は、はい!」
「そして囲め!」
しかも戦術は一つしかなかった。
「そのうえで殲滅せよ。よいな!」
「わ、わかりました!」
指揮官達は彼の言葉に混乱するだけだった。その支離滅裂な指揮もあり帝国軍は無駄に損害を出していく。しかしミサイルはそれでも放たれる。
「くそっ、しつけえ奴等だぜ」
「全くニャ」
「まだミサイルと撃ってくるなんてな」
マサキにクロとシロが応える。
「本当にしつこいニャね」
「いい加減諦めるニャ」
「それを諦めねえのがあの博士ってわけかよ」
マサキは忌々しげに二匹に返した。
「ゼツの野郎思い出すぜ」
「ああ、そういえば」
「あの博士に似てるニャ」
「マッドサイエンティストってのはどいつもこいつもこうなのかよ」
ゼツもその部類に入れて話すのだった。
「ったくよ、面倒な奴等だぜ」
「しかしマサキ」
「わかってるニャ?」
二匹は今度はマサキに対して問うてきた。
「くれぐれも焦らないことニャ」
「焦ったらどうしようもないニャよ」
「ちっ、そんなこと言ってもよ」
実際のところマサキはかなり焦りを見せてきていた。
「こんな状況じゃよ」
「こんな状況だからニャよ」
「焦ったら墓穴ニャぞ」
二匹はまるで親のように彼に注意する。
「じっくり見れば大したことはないニャ」
「ほら、動きが一定ニャ」
「んっ!?そういえばそうだな」
マサキも二匹の言葉でそれに気付いたのだった。
「それにどのミサイルも固まって一つの点に動いてるじゃねえか」
「そういえばそうだね」
リューネもマサキの言葉を聞いてそれに気付いたのだった。
「一つのポイントに集まってるわ」
「じゃあそこに集中してサイフラッシュとかを仕掛ければ」
「やっと気付いたのか」
二人にヤンロンが呆れたように言ってきた。
「その通りだ。ミサイルは木星の一つのポイントにしか向かっていない」
「じゃあよ、そこに集まっていて」
「それで狙えば」
「そうだ。僕は最初からそうしていたが」
見ればヤンロンはその位置にいた。丁度ミサイルの前にいた。
「君達もそうして欲しいのだが」
「ああ、わかったぜ」
「それじゃあ」
「けれどマサキもリューネも迂闊よ」
テュッティはヤンロンの側にいた。
「そんなの私でもすぐにわかったのに」
「だから言ったニャよ」
「焦ったら駄目ニャって」
「ちぇっ、何かまた言われっぱなしだな」
マサキは彼等の言葉にぼやいてしまった。
「まあいいさ。それじゃあよ」
「はい御二人様どうぞ」
ミオが明るく言う。
「五人いたらやっぱり有り難いわよね」
「そうでんなあ。やっぱり五人揃ったら」
「丁度よおおます」
「そうそう」
ショージ、チョーサク、ジュンも言う。
「これでミサイルは万端」
「万全備えあれば」
「憂いなしでんな」
「その通りです」
ランシャオはいつもの丁寧な口調で述べた。
「では皆さん」
「御主人様、我々も控えています」
「ですから周りも安心して」
フレキとゲリはテュッティに対して告げていた。
「ミサイル達を撃墜していきましょう」
「木星を守る為に」
「ええ。わかってるわ」
彼女もファミリア達の言葉に頷いて応える。
「それじゃあね」
「しかしよ。どうせなら分散して放ったらいいのにね」
リューネはこのことを言うのだった。
「何で集中させてきたんだろ、ミサイルを」
「その通りだな。そうすれば僕達も対処に苦労していた」
ヤンロンもそのことに気付いた。
「何故だ?やはりそれがあの博士の限界なのか」
「戦術ミスかよ、あいつの」
マサキは遥か後方にいる博士の乗艦を見た。
「だとしたらよ。こっちはそれに付け込ませてもらうか」
「その通りニャ。相手がミスをしたなら」
「そこで一気にやるニャよ」
クロとシロも応えて頷く。こうしてミサイルは彼等によって防がれる。博士はそれを見てまた怒鳴りそうして周囲に当たり散らしていた。
「おのれ、木星に届かんか!」
「は、はい!」
「敵の守りが堅く」
「五月蝿いわ!」
彼は電気鞭で応える部下達を打った。
「うわっ!」
「ひいっ!」
「そんなことが理由になるか!」
そしてそのうえでまた怒鳴り散らすのだった。
「この状況をどうするか。考えよ!」
「わ、わかりました!」
「それですが」
皆電気鞭の恐怖を前にして何とか答える。
「全軍で突撃しましょう」
「そうして敵陣を突き抜けそのうえで」
「ミサイルを放つのだな」
「その通りです」
積極案ということだった。
「ここはそれをされては」
「それで如何でしょうか」
「そうだな」
博士は腕を組み憮然とした顔になっていたがそれでも頷くのだった。
「ここはそれがよいか」
「それではすぐにも」
「積極的に」
「そうだ。進め!」
博士は全軍にあらためて突撃を命じた。
「そしてロンド=ベルを食い破りミサイルを放て。よいな!」
「了解!」
こうして帝国軍はロンド=ベルを突破にかかった。しかしそれはかえって逆効果だった。既に彼等は迎え撃つ陣を整えていたからである。
「来たな」
「飛んで火に入る何とやらってね」
照準を定めその彼等に集中攻撃を浴びせる。それで突撃を弾き返すのだった。
それでも帝国軍は突撃を敢行する。何度もそれを行う。しかしそれは無駄に損害を増やすだけで逆効果になってしまっていた。
しかもであった。あまりにも突撃に集中するあまり。彼等はミサイルの発射を忘れてしまっていた。
「!?ミサイルが」
「放たれなくなったぞ」
「どういうこと!?」
ロンド=ベルの面々はそのことに気付いていぶかしむ顔になった。
「何がどないなったんや」
「これは一体?」
ロドニーとデメクサもいぶかしむ顔になっていた。
「急にミサイルを撃たなくなって」
「突撃ばかりですね。ミサイルが尽きたのでしょうか」
「いや、おそらくそうではない」
しかしここでアハマドが言った。
「突撃に集中するあまりミサイルを放つことを忘れているのだ」
「何、それ」
ロザリーもこれには呆れるばかりだった。
「また物凄いミスね」
「ミスならそれでいいってね」
シモーヌはそれに付け入ることにした。
「それだけこっちが楽になるよ」
「そうそう。それじゃあ」
「攻める!」
ベッキーとエリスが早速攻撃を放つ。
「どんどん来ていいからね、あんた達」
「来る度に叩き落してやる!」
「その通りだな。敵が愚かならば」
「その愚かさに報いを返す!」
ジノとファングも攻撃を加えていた。それぞれの剣が敵の戦艦を腹部から両断し爆発させる。
「さて、ジノ=バレンシア参る!」
「死にたいならば来い!」
「左様、成仏させてしんぜよう」
「数がどれだけいようとも」
ティアンとゲンナジーもいた。
「この木星の為に!」
「相手をしてやる」
「何か皆凄いプラーナがあがってるけれど」
「それも当然だぜ」
ここでマサキ達が合流してきた。
「ここまでテンション上がったらよ。何処までもやってやらあ!」
「そうね。私だって!」
ディアブロのリニアレールガンで敵のマシンを貫いた。
「やれるんだから!」
「いいかプレシア!」
マサキは義理の妹に対して言ってきた。
「ここで踏ん張ったら後はあの博士を倒すだけだ。いいな!」
「ええ、わかってるわお兄ちゃん!」
応えながらまたリニアレールガンを放つ。
「正念場ってやつよね」
「そうだ!ほら行け!」
サイバスターのカロリックミサイルが放たれそれが戦闘機達を撃墜していく。
「このサイバスター、甘く見るんじゃねえぜ!」
「あらあら、焦ってるんじゃないの?坊や」
ここでサフィーネも出て来た。
「若いと焦って早くなっちゃうからね。焦ったら駄目よ」
「何かサフィーネが言うとニャ」
「凄く怪しく聞こえるニャ」
「そうだよ。御前はもうちょっと大人しくしろよ」
「あら、大人しくしたらそれだけあんた達の負担が増えるけれど?」
相変わらずの調子でマサキに返してくる。
「それでもいいのかしら」
「何かこいつだけは相変わらずだな」
マサキも彼女にはぼやくしかなかった。
「全く。どうしようもねえな」
「はいはい、お話はそこまでよ」
「とにかく敵を倒していこうよ」
セニアとテリウスがここで彼等の間に入る。
「折角いい感じで防いでるんだから」
「このまま防ぎきろう」
「ああ、それはわかってるさ」
「それでは皆さん宜しくないとは甚だ思う次第であるようですが」
モニカの文法もいつも通りである。
「ではこのまま流されないようにそれでいて」
「最早何が何だかわからないニャ」
「っていうか何言ってるのかさえ」
彼女の言葉は最早クロとシロにも理解不能だった。しかし彼女達もそのプラーナをあげ攻撃を仕掛けていた。それによりロンド=ベルは次第に帝国軍を押し戻してきていた。
「あと一息ですね」
「はい」
ショーンがレフィーナの言葉に頷く。
「それではこのまま」
「一気に攻撃に出ます」
防戦から転じて、であった。
「そしてそのまま殲滅します」
「殲滅ですか」
「はい、戦力的に可能です」
自軍の戦力を見ての判断であった。
「それで如何でしょうか」
「はい、今こそその時です」
ショーンも返答は既に用意していたのだった。
「このまま攻めましょう」
「はい、それでは全軍攻撃開始!」
艦橋から指示を出した。
「そのまま包囲に移り殲滅して下さい!」
「よし、やってやるぜ!」
「覚悟しなさい!」
全軍彼女の言葉と共に攻撃に移る。そうしてそのうえで敵を次々と倒していくのであった。
最早木星への攻撃どころではなかった。帝国軍は秒刻みでその数を減らしていく。最早その勝敗は決していた。
「博士、最早!」
「我が軍は!」
「わかっておるわ!」
博士は相変わらず怒鳴るだけであった。
「こうなっては仕方がない。撤退だ」
「は、はい」
「それではです」
部下達はそれに頷く。しかしであった。
「すぐに撤退しましょう」
「そしてまた」
「だがそれまでにだ」
しかしここでまた博士は言うのだった。
「残ったミサイルを全て放て」
「全てですか」
「そうだ、あのロンド=ベルを倒す」
それだけは忘れていないのだった。
「一機残らずな。よいな」
「わかりました。それでは」
「ミサイルを全て」
「放て!そのうえで撤退だ!」
「はい!」
こうしてミサイルが全て放たれそのうえで全軍撤退するのだった。ロンド=ベルもそのミサイルから目を離すことはできなかった。
「ちっ、仕方がねえ!」
「まずはミサイルだ!」
彼等もそちらに向かう。撤退する帝国軍は無視するしかなかった。
ミサイルは木星に向かう。その殆どはロンド=ベルの前にあったので撃墜に問題はなかった。しかしミサイルはそれだけではなかった。
二発木星に向かっていた。それは彼等の前にはなかった。
「おい、あの二発!」
「どうにかしねえとよ!」
「それはわかっています」
そこに向かおうとする彼等に対してルリが答える。
「既にそちらにはマリンさんが向かっています」
「マリンさん?バルディオスが」
「はい、そうです」
こう一同に答えるのだった。
「既に」
「けれど間に合うのか?」
「バルディオスで」
「任せてくれ」
しかし当のマリンが彼等に返すのだった。
「ワープする。バルディオスのエネルギーを使って」
「それでか」
「そうだ。じゃあ今から」
言うが早いかワープした。そうしてそれによりすぐにその二発のミサイルの前にワープしてすぐに撃墜した。戦いはこれで完全に終わったのだった。
「ちっ、帝国軍は逃がしたな」
「あの博士も」
皆撤退した帝国軍のことを言うのだった。
「何てこった」
「肝心要を逃がすなんてな」
「あの博士のことなら心配はいりません」
しかしルリはここでまた皆に話すのだった。
「次の戦いで倒すことができます」
「次で?」
「ミサイルを退けたことで博士に切るカードはなくなりました」
こう話すのだった。
「後は私達に対して決戦を挑むだけです」
「決戦をか」
「そうです。博士はもう後がありません」
ルリはそうしたことも見抜いているのだった。
「ですから次の戦いで倒すことができます。安心して下さい」
「そうか。次か」
「次の戦いでか」
皆それを聞いて意を決した顔になった。
「ならそれでな」
「やってやるか」
そのうえで次の戦いに思いを馳せる。何はともあれ彼等は木星を守り抜いたのだった。
「何はともあれな」
「おうよ、食おうぜ」
それであった。早速料理に酒が出されていく。肉に果物がどんどん出される。
「よし、シェラスコ焼けたぜ」
「そら来た」
イザークが焼いたそれを皆で食べはじめる。
「御前料理できたんだな」
「しかもブラジル料理なんてな」
「作ることは嫌いじゃない」
イザークはその皆に対して答えた。
「だからだ。皆で食べてくれ」
「それじゃあな」
「皆で早速な」
こうしてそのシェラスコにオニオンソースをかけて食べていく。他にはサラダやソーセージもある。皆でそうしたものをどんどん食べていく。
そしてその中で。彼等は話をしていくのだった。
「とりあえず次で木星も決着がつきそうだな」
「ああ、そうだな」
闘志也がアルトの言葉に頷く。
「次の戦いでな」
「あの博士を倒せばか」
「既に戦力はかなり減っている」
ジュリイが冷静に述べてきた。
「後はあの博士を倒せばもう木星を維持できることは不可能だ」
「既に木星での戦いで六千万倒しているからな」
ミシェルはその倒した敵の数を言う。
「これだけ倒したのはやはり大きい」
「数が多いのは確かですけれど」
ルカが言ってきた。
「何かそれでも戦えるんですよね」
「正直大したことはない?」
アレックスがふとした感じで言葉を出した。
「連中はな」
「どれだけ数がいても戦える」
アルトはアレックスの言葉に反応を見せた。
「そういう感じだな」
「やはりあれです」
それに応えてフェイが言ってきた。
「敵の質が関係しています」
「碌に改造もしていない戦闘機ばかりだ」
オズマは冷静にその理由を述べた。
「命中も悪ければ回避も悪い」
「しかも乗っているパイロットの質も悪いしAIの質も」
ソフトウェアについてもなのだった。
「全てが悪い」
「だからそれ程強くはないということか」
ジュゼ、イワン、ハンスはそれで納得するのだった。
「帝国軍の弱点がはっきり出ているってことね」
「確かに」
ファとフォウも言う。
「数だけ集めて」
「それに頼るだけなのが」
「しかも今回はあの博士の戦術が最悪だ」
カミーユもそれがわかるようになってきていた。
「だから俺達も勝てるんだな」
「間違いなく勝てる」
ヘンケンも言った。
「あの戦術と質ではな」
「戦いは数だけではない」
ナタルも言う。
「質と戦術も大事なのだ」
「帝国軍を支配しているものは恐怖のみです」
そしてファーラも言ってきた。
「その圧倒的な圧政によって奴隷達を抑えているだけなのです」
「それだけですか」
「たったそれだけなのですか」
「それだけに崩れだした時には脆いのでしょう」
ファーラはこう分析するのだった。
「そして軍も数だけはありますが」
「数だけは」
「質にかける金は全てシンクライン皇太子達の贅沢に使われるだけです」
「何かモロに悪の帝国じゃない?それって」
マリアもその話を聞いて呆れるばかりだった。
「一部の権力者だけ勢を極めるって」
「それが帝国なのです」
だがファーラはそれがガルラ帝国だと言うのである。
「完全な封建主義であり専制体制なのです」
「バルマー帝国以上の」
「そうですね。バルマー帝国なぞ比較になりません」
ファーラはアヤの言葉にも返した。
「そしてシンクライン皇太子自身も」
「あいつみたいな奴は他にはいやしねえ」
黄金が忌々しげに言い返した。
「最低の下衆野郎だ」
「その通りです」
錫石も腹立たしげに言うのだった。
「奴隷を遊びで殺したり後宮で女性達を嬲りものにしたり」
「何、それ」
「最低なんてものじゃないじゃない」
女性陣がそれを聞いて一斉に嫌悪の声をあげた。
「遊びで殺したり」
「嬲りものにしたりなんて」
「そういう奴だからだ」
「絶対に許しちゃいけない」
青銅と黒銅も言う。
「そして言い換えれば」
「あの皇太子を倒せば」
答えはおのずと出るのだった。
「倒せばガルラ帝国は終わりか」
「いや、待てよ」
しかしここでアポリーとロベルトは気付いた。
「皇太子だったな」
「だとすれば帝国には」
「はい、皇帝がいます」
ファーラはこのことも話すのだった。
「帝国には。ですが」
「ですが?」
「実権は皇太子が握っているのか?」
「その通りです」
こういうことだった。
「そもそも帝国がああなったのも皇太子によるものが大きいのです」
「諸悪の根源ということか」
「そうなります」
大介にもこう述べる。
「全ては。ですからあの皇太子さえ倒せばです」
「帝国は倒れる」
「それでか」
「次の戦いで木星は解放されます」
ルリがここでまた話す。
「その後は土星に向かい」
「それで決戦か」
「いよいよ」
「他にもまだ天使達がいるが」
レイヴンが言う。
「これで一つの節目になる」
「節目になら余計に」
「帝国を」
「その通りだ。帝国を倒す」
また言う彼等だった。
「土星でな」
「それに戦力もかなり減っているしな」
彼等の言葉は続く。
「いよいよ決戦だな」
「遂にな」
「しかし。どうなのだ?」
だがここでクワトロはふと考えるのだった。
「この世界は少し妙だ」
「妙とは?」
「何がですか?」
レイとルナマリアがそれに問い返す。
「この世界に何が」
「あるんですか?」
「まずパラダイムシティだ」
クワトロが最初に指摘したのはあの街のことだった。
「四十年前の記憶がない」
「あの街がですか」
「それにこの世界自体にしろ」
世界自体についても考えを及ばせていた。
「一万二千年前の記録が一切ない」
「それは天使達が破壊し尽したから」
シルヴィアがそれに対して言う。
「だからなのよ」
「しかしだ。それでもだ」
だがクワトロは彼女の言葉を聞いてもまだ言うのだった。
「あまりにも不自然ではないのか?」
「不自然!?」
「というと」6
「破壊されたのにしろ遺跡が残る筈だ」
彼はピエールに対しても応えていた。
「そう、遺跡がな。しかしそういったものは全くない」
「あれっ、そういえば」
「確かに」
つぐみとジュンがそれを聞いて声をあげる。
「この世界にはそうしたものは全然」
「ないけれど」
「そして化石もないな」
「!?そうだ」
サコンはクワトロの今の言葉で気付いた。
「何かおかしいと思っていたらそれだ。この世界には化石といったものが一切ない」
「化石どころか一万二千年より前のものは一切ない」
クワトロはその言葉を強調させてきた。
「全くな」
「パラダイムシティと同じか」
ロジャーはここまで聞いて呟いた。
「四十年前より以前のことがわかっていないのと同じだな」
「どういうことなのかしら」
麗花もいぶかしむ。
「これって」
「少なくとも俺達の世界とは全然違いますね」
ダバはあえてヤーマン人として話した。
「ペンタゴナでも何万年前の化石とか。いえ何億年前のものだってありますから」
「この世界だけないなんて」
「確かにおかしな話だな」
アムとレッシィも言い合う。
「っていうか有り得ないわよね」
「化石がない世界だと?」
「そう、作られた世界のような」
ギャブレーはこう表現した。
「そうしたものだな」
「何かよ、パラダイムシティなんか特にそうなんだよな」
キャオはパラダイムシティのことをとりわけ言った。
「イミテーション臭いっていうかよ。取ってつけたようなな」
「世界だというのね」
「ああ、そうさ」
キャオはドロシーにも述べた。
「そんな感じがするよな」
「ああ。はっきり言えばそうだ」
ダバはキャオの今の言葉に頷いた。
「この世界は。やっぱり何か妙だ」
「けれど私達はイミテーションじゃないわよ」
「そうだ」
クロエとクルトはこう主張する。
「ちゃんと血だって流れてるし」
「心臓も動いてるし」
「そうだよ。俺だってちゃんと生きてるぜ」
アポロも言ってきた。
「ちゃんとよ」
「当然私もだ」
シリウスは少し怒っているようだった。
「生きている。れっきとしてな」
「そうだ。君達は紛れもなく生きている」
クワトロもそれは否定しなかった。
「そして世界もれっきと存在している」
「じゃあ何故?」
「どうしてそんなことを」
「その世界を生み出し創り出す何か」
クワトロはサングラスの奥のその目を深い何かを見る目にさせていた。
「その何かがいるのではないのか。そう思えるのだよ」
「何かよくわからねえが神様か?」
アポロはそれをこう表現した。
「それが俺達の世界をどうにかしてるっていうのかよ」
「そうかも知れない。そんな気がする」
「何か異常に難しい話になってねえか?」
「そうよね」
エイジとルナは首を捻っていた。
「何かとてもよ」
「全然わからないわ、本当に」
「そうだな。信じられない話だ」
ティエリアも言う。
「そんなことがあるとはな。僕達のいるこの世界がイミテーションとは」
「だとすれば創り出している神様は誰かしらね」
スメラギは少し苦笑いして述べた。
「随分と意地の悪い神様らしいけれど」
「そうですね。どちらにしろよい神でないのは間違いないです」
留美も言う。
「私達にとってもこの世界にとっても」
「いるならばいずれ姿を見せる」
ここで言ったのはアムロだった。
「俺達が戦いその神の思惑に反しているのならな」
「その鍵はやはり天使なのか?」
ブライトは天使達に注目していた。
「一万二千年前にこの世界を滅ぼした」
「だとすればおそらくな」
アムロもその可能性を否定しなかった。
「どちらにしろ天使達とも戦わないといけない。その時にわかるだろう」
「そうだな。それではまずは」
「そうだ。木星だ」
物事には順序がある。今はそれであった。96
「まずはここでの決着をつけよう」
「風間博士と」
「今博士は木星の破壊に失敗して怒り狂っている筈だ」
アムロはそれを見抜いているのだった。
「ならばここはだ」
「ここは?」
「一つ思い切ったことをしてみないか?」
こう言うのである。
「一つな」
「思い切ったこと?」
「それは一体」
「帝国軍の位置はわかるか?」
アムロは今度はサエグサに対して尋ねた。
「おおよその位置が。それはどうなんだ?」
「はい、わかっています」
わかるではなかった。わかっているだった。
「衛星の一つに集結してきています」
「そうか。ならそこに向かおう」
アムロの決断は早かった。
「そうして急襲を仕掛けるんだ」
「急襲ですか」
「奇襲と言ってもいい」
こうまで話すのだった。
「とにかくだ。相手の不意を衝いて一気に勝負を決める」
「それでですか」
「これ以上博士を放っておくことはできない。それに木星を奪還する絶好の機会だ」
まさにそうであった。今の帝国軍の状況も考えれば。
「だからだ。やろう」
「急襲を」
「そうだ。それで一気に勝負を決める」
彼はさらに言うのだった。
「それでどうかな」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「リクスも大きいです」
エマは少し危惧する目でアムロに告げた。
「失敗すればそれでもう」
「そうだ。しかしだ」
アムロもそれは承知しているようだった。
「このまま待っていても同じことだ。どちらにしろ帝国軍は数で攻めてくる」
「だから攻めても攻められても同じですか」
「それなら先手を打つべきだ」
積極策ということだった。
「それでどうだ?」
「そうだな」
彼の言葉に応えたのはまずはクワトロだった。
「やってみる価値はあるな」
「そう思うか」
「どちらにしろ帝国軍とはそろそろ決着をつけなくてはならない」
彼はまずこのことを話した。
「それならばだ。積極的に仕掛けるに越したことはない」
「だからこそな」
「私は賛成だ」
彼はそれでいいとするのだった。
「積極的にいこう。ここはな」
「よし、それじゃあな」
「私もそれでいい」
次に賛成したのはブライトだった。
「今の博士なら急襲は確実に成功する」
「確実にだな」
「博士は今間違いなく怒りでさらに感情的になっている」
実にその思考を読まれ易い性格と言える。
「それならだ。ここで一気に攻めるべきだ」
「よし、だからだな」
「そういうことだ。私もそれに賛成する」
そしてブライトも賛成と言うのだった。
「皆はどうだ?」
「ああ、それでいいぜ」
「俺もだ」
「僕もです」
「私も」
皆賛成だった。これで決まりだった。こうして彼等は博士の軍勢を急襲することになった。すぐにその場を発ち博士の軍勢に向かうのだった。
「博士の軍は?」
「まだ衛星には到着していません」
メグミはユリカに答える。
「この調子でいくと宇宙での遭遇になります」
「わかりました」
ユリカはそれを聞いて静かに頷いた。
「それではそれで御願いします」
「じゃあ進路このままね」
「そうです」
ユリカはハルカにも述べる。
「御願いします、エマさん」
「おっと、私はエマ大尉じゃないわよ」
それは笑って否定するハルカだった。
「ハルカだから。宜しくね」
「あっ、すいません」
ユリカもそれに気付いて苦笑いになる。
「声が似てるからつい」
「了解、バジルール少佐」
ハルカもここで間違えてしまった。
「それはそういうことで」
「ハルカさんも間違えてます」
そして速攻でルリの突込みが入るのだった。
「確かに声似過ぎですけれど」
「あちゃ、これはしまったわね」
今度はハルカが苦笑いになる。
「ついついね。本当に声って怖いわね」
「実は私も一矢さんと竜馬さんの声を間違えてしまいます」
ルリとても例外ではないのであった。
「他にも色々な人のを」
「そうなのよね。何かメンバーが増えて余計にそれがね」
「私なんかまた随分増えてしまいました」
語るユリカの顔は困っているようなそれでいて嬉しいような。複雑な顔であった。
「またどうして」
「そういえばダイゴウジさんも」
メグミは彼の名前を出した。
「色々と増えてません?」
「そうですね。ヤマダさんも」
ルリはあくまで彼を本名で呼ぶ。
「物凄く増えました」
「イザーク君やドモン君、トウジ君だけじゃなくなったから」
確かにかなり多いと言えた。
「そこに宗介君まで入って」
「どうなのでしょうか」
「もう滅茶苦茶といいますか」
ルリはかなり酷いことを言っているのは自覚はしていたがそれでも言うのだった。
「おかげで誰がヤマダさんかわからない時があります」
「あとサブロウタさんやイズミさんもですね」
「はい」
ハーリーの言葉にも頷く。
「リョーコさんもノインさんと間違えてしまうことが」
「何かどんどん声が似てる人が増えてるんですよね」
「性格が違うから余計に困ります」
ルリはこのことも話した。
「全く以って」
「それではその似てる人達を集めて」
「どうするんですか?」
ハーリーは今度はユリカに対して尋ねた。とりわけそうした似ている人間が多い彼女に。
「進撃です。敵に向けて」
「やっぱりそれですか」
「それ以外にありません」
やはり答えはそれしかなかったのだった。
「いざ、木星の最後の戦いへ」
「進路このままです」
ルリはここでまた静かに述べた。
「そして速度もです」
「予定通りなんですね」
「そうです。それでは」
こうしてロンド=ベルは木星での最後の戦いに向かうのだった。木星の戦いは最終局面になろうとしていた。

第百二十九話完

2009・5・17  
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