スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百二十八話 大兵力
第百二十八話 大兵力
ロンド=ベルは木星での最初の戦いには勝利を収めた。しかしそれが最終的な勝利ではないこともまたわかっていることであった。
「これから木星に向かうけれど」
「ああ」
闘志也がルナの言葉に応える。
「相手がね」
「そうだな。何してくるかわかんねえからな」
彼が最もよくわかっていることだった。
「あの博士はな」
「さて、何をしてくるかしら」
「少なくともとんでもねえことをしてくるのは間違いねえ」
エイジが言う。
「例えばよ。隕石をぶつけてくるとかよ」
「その程度で済めばいいけれどね」
しかしここでミヅキが言うのだった。
「隕石位じゃ」
「隕石でまだその程度か」
ジュリイはそれを聞いてサングラスの奥の目を顰めさせた。
「今の博士じゃ」
「そう思うよ」
また言うミヅキだった。
「今の博士はね」
「具体的には何をしてくると思う?」
謙作はそれが気になっていた。
「あの博士は一体」
「そうね。例えばだけれど」
「例えば?」
「木星を爆破してくるとか」
まさに博士が考えていることそのものだった。
「そういうのじゃないかしらね」
「まさか」
エイジはまずはそれは否定した。
「幾ら何でもそんな滅茶苦茶はしねえだろ」
「そうよ、幾ら何でもよ」
ルナも流石にそこまではないと思っているのだった。
「木星を爆破するなんて。まさか」
「いや、有り得る」
しかしここでジュリイは言った。
「今の博士ならそれも」
「おい、マジかそれは」
闘志也もそれはまさかと思っていた。
「木星を爆破かよ」
「そう、そして俺達をその道連れにする」
彼は言う。
「木星のな」
「だとすればさらに危険だな」
謙作はここまで聞いてあらためて述べた。
「博士は。放ってはおけない」
「はっきり言って倒すしかないわ」
ミヅキは冷静に述べた。
「あの博士はね。もうね」
「そうなんですか」
エイナはそのことに残念な顔を見せていた。
「あの人を」
「かつてはこっちの世界で偉大な科学者だったんだよな」
「そうよね。もう連邦政府からも信頼されるような」
「そんな科学者がねえ」
真吾にレミー、キリーがここで言う。
「そこまでの危険人物になるなんてね」
「変われば変わるものだけれど」
「因果なものだね」
「しかし倒さなくちゃいけないんだ」
闘志也の顔が険しいものになる。
「もう。あの博士は」
「その通りだ。俺達が倒す」
ジュリイも言う。
「何があってもな」
「この身体が半分になっても
当然謙作も同じ考えだった。
「倒してやる。あいつだけは」
「それはいい」
ゼンガーは三人のその心意気はいいとした。
「しかしだ。焦るな」
「焦ると失敗するってことか」
「そうだ。その通りだ」
やはりこういうことだった。
「いいな、それは」
「ああ、わかってるさ」
それは彼等もよくわかっていた。闘志也が代表して答える。
「それはな。よくな」
「わかっていればいい。どのような時でも焦るな」
彼はまた言うのだった。
「所詮悪は悪」
「悪は悪」
「狂気は狂気に過ぎない」
こう言うのである。
「狂気がことを果たしたことはない」
「それはないと」
「そうだ。必ず敗れ去るものだ」
ゼンガーの言葉は続く。
「正義の前にな」
「じゃあ今度の戦いも」
「焦り、迷うことはない」
リィナに対しても述べてみせるゼンガーだった。
「己を知るものは必ず勝つ」
「では今回もまた」
「そうだ。ただ断つのみ」
これが彼の考えであった。
「その悪をな。いいな」
「はい、それじゃあ」
「この戦いもそれで」
「既にあの男の命運は尽きている」
風間博士のことだ。
「それを断ち切るだけだ」
「難しいことは考えるなってことかよ」
エイジは少なくともこう考えた。
「ならそうやってやるさ。俺はな」
「あんたそれ全然違うんじゃないの?」
ルナはその目を顰めさせて彼に問うた。
「焦るなっていうのとはまた」
「おい、何が違うってんだよ」
しかし彼はわかっていなかった。
「同じだろ?だからよ」
「違うに決まってるじゃない」
しかしルナはその彼に言い返す。
「そんなの。本当に馬鹿じゃないの!?」
「何ィ!?」
馬鹿という言葉にはすぐに反応してみせた。
「俺が馬鹿だっていうのかよ、おい!」
「そうじゃなくて何だっていうのよ」
完全にいつものパターンだった。
「あんたが馬鹿でなくて」
「手前!」
「いや、その通りだ」
しかしここでゼンガーはエイジの言葉に応えるのだった。
「まさにその通りだ」
「そうなんですか!?」
「考える必要はない」
彼はまた言う。
「ただ倒す。そこにある」
「ほら、見ろよ」
エイジはゼンガーの言葉を受けてルナにこれみよがしの顔を見せる。
「その通りじゃねえかよ」
「どういうことなの?」
しかしそれはルナにとってはわからないことだった。
「考える必要はないって。戦いなのに」
「焦らず無心になるということだ」
彼が言うのはこのことだった。
「そういうことだ。いいな」
「はあ」
そう言われてもわからないルナだった。
「焦らず敵を倒す」
「それだけですか」
「そうだ。それだけでいい」
彼はまた一同に話した。
「わかったな」
「ああ、わかったぜ」
エイジの返答は明るいものだった。
「それならな。俺もな」
「私には全然」
しかしルナは首を捻るだけだった。
「どういうことなのかしら、これって」
「やがてわかる時が来る」
ゼンガーはそのルナに対しても話した。
「今わからなくともな」
「ですか」
「わかったならばだ。より戦うことだ」
「よりですか」
「そこにある」
そしてこうしたことも言うのだった。
「そこに勝利が、そして」
「そして?」
「道がある。いいな」
「どちらにしろ戦えってことか」
トウマはより簡単に考えていた。
「そして勝てってことだよな」
「そうね」
ミナキは彼のその言葉に頷いた。
「勝利を収めてこの世界も」
「だよな。ガルラ帝国ってのはまさにバルマー帝国だしな」
「ああ、それな」
剣人は今のトウマの言葉を聞いて言ってきた。
「俺も同じことを感じてたぜ」
「そうなのか」
「そっくりだってな。ただバルマー帝国はな」
「どうしたんだ?」
「何か色々と問題を抱えてるんだな」
こう述べるのだった。
「あの国は。そうなんだな」
「言われてみればそうね」
それにミナキも気付いたのだった。
「あの国は敵も多いわ」
「それにかなり内部に問題がないか?」
弾児はそこも察していた。
「あの国は。花氏を聞いていれば」
「そうかも」
ミナキもそれは否定できなかった。
「少なくともガルラ帝国以上に」
「あの帝国は特別でな」
黄金は顔を顰めさせながら述べる。
「一部を除いて大多数は奴隷だろ?」
「ええ」
「あえてそういうふうにして反乱を起こさせないようにしているんだよ」
「最悪の国家システムだな、それって」
アラドはそれを聞いて述べた。
「しかもその奴隷って殆ど何も食えないんだよな」
「ああ、その通りだ」
「それはな」
青銅と黒銅が答える。
「死ねばそれまでだ」
「かわりはいくらでもいる」
「それがガルラ帝国です」
錫石も述べる。
「そして強大な軍事力で支配しています」
「その中心にいる者こそ皇太子シンクライン」
ファーラの顔が曇る。
「あの最低最悪の男がです」
「そうですよね。けれど」
「けれど?」
「帝国は今かなりの戦力を消耗していますよね」
ゼオラが言うのはそこだった。
「私達との戦いで」
「はい、それは確かに」
ファーラはそれは保障するのだった。
「間違いありません、幾ら帝国といえど」
「その戦力には限りがある」
ゼンガーが述べる。
「例えどのような勢力であってもだ」
「けれど宇宙単位の相手ですよね」
アラドはそれを言うのだった。
「そう簡単には減らないんじゃ?やっぱり」
「いえ、決してそうではありません」
またここで話すファーラだった。
「確かにガルラ帝国の戦力は桁外れのものがあります」
「だよな、それ考えたらよ」
「ですが。それでも限りがあるのが現実です」
彼女はあくまでこのことを話すのだった。
「しかも普段から奴隷の反乱や虐政の維持に戦力の多くを向けていますが」
「それがなくなっていっているのだな」
「そうです。戦力を消耗しているのは間違いありませんから」
「ではそろそろだ」
ゼンガーはまた述べた。
「帝国は奴隷の不穏な動きに悩まされるようになる」
「不穏な動きにですか」
「そうだ」
今度はブリットに対して答えるのだった。
「悩まされるようになる。間も無くな」
「つまり帝国はそちらにも戦力を割かなくてはならなくなると」
「だとすれば余計に戦力を消耗させる」
「そういうことですね」
「その通りだ。帝国は邪悪だ」
ゼンガーは看破した。
「邪悪は必ず滅せられるもの。ならば帝国もまた滅びる」
「ではガルラ帝国は間も無く」
「滅亡ですね」
「うむ。既に我等は月と火星を解放した」
まずはこの二つであった。
「そして太陽系に送られてきていた奴隷を解放した。その戦力はかなり落ちている」
「ですからこのまま向かっていいのです」
ファーラがまた話す。
「木星に」
「木星に今いる戦力は千五百万だ」
エレドアが話す。
「その戦力のうち一千万を集結させてきている」
「一千万か」
ジュリイはその数を聞いて眉を顰めさせた。
「今までよりさらに多いな」
「そうだな。少なくとも尋常な数じゃない」
謙作も言う。
「そう簡単には勝たせてはくれないか」
「へっ、一千万だってな」
だが闘志也の闘志は変わってはいない。
「まとめてぶっ潰してやるぜ。あの博士と一緒にな」
「大体よ、一千万なんてよ」
甲児も言う。
「俺達にとっちゃ何でもねえぜ」
「そうなのか?」
「ああ、宇宙怪獣との戦いなんてよ」
マリンに対しても威勢よく話す甲児だった。
「それこそ何億ってきたんだよ。それと比べたらよ」
「ものの数じゃないってことか」
「そうさ。それを思い出したら平気だぜ」
「そういうことだ。あの時はこんなものじゃなかった」
鉄也もそのことを言うのだった。
「それならだ。倒せる」
「怖がったらかえって負けだぜ」
甲児はまた言った。
「ここはガーーーーーンとだよ、ぶっ潰してやるぜ」
「それじゃあこのまま戦うのね」
「一千万の大軍に」
かなめと宗介は慎重論に入っていた。
「それならかなり激しい戦いになるけれど」
「それでもいいのだな」
「おいおい、俺達の戦いに激しくない戦いってあったか?」
「そんなの初耳よ」
ハッターとフェイは明るく返す。
「激しければ激しい位楽しいもんだぜ、なあ」
「そうそう」
「そうだ。敵が多い」
「それは理由にはならない」
テムジンとライデンも言う。
「それに今は大軍が向こうにいても戦わなければいけない」
「戦略的にな」
「その通りだ。我々はこのまま木星に降下する」
ブライトが言い切った。
「そして彼等と戦う。いいな」
「それでは。全軍で」
テッサがそれに応える。
「降下しましょう」
「了解」
「それじゃあすぐに」
こうして戦略が決定された。全軍を挙げて木星への降下に向かう。そしてその間に彼等は食事を摂っていた。戦う前のエネルギー補給である。
「よし、炒飯できたぜ」
「おうよ」
「待ってたぜ」
皆ディアッカが作ったその炒飯を受け取って食べていく。
「それじゃあ早速」
「いただきますってね」
「おうどんできたわよ」
リィナはうどんを作っていた。
「伊勢うどんね」
「ふうん、真っ黒なんだ」
ヒメはそのうどんを受け取って言った。
「伊勢うどんって」
「そうよ。辛くておつゆはそれだけなのよ」
リィナはこのこともヒメに話した。
「食べてみて。かなり美味しいから」
「うん、それじゃあ」
「あれっ、思ったより辛くないな」
勇はその伊勢うどんを食べて述べた。
「案外食べやすいぞ」
「そういうふうに作ったし」
リィナにしてみればそうなのだった。
「っていうかこれでも本来の味を再現したのよ」
「へえ、そうなのかよ」
フェイもそのうどんを食べながら述べた。
「日本人も面白い麺食うもんだ」
「全くだ」
アレンも伊勢うどんを箸を器用に使って食べている。
「こうしてうどんにライスでエネルギーを補給してそれからだな」
「カツ丼くれよカツ丼」
ボスは彼の横でカツ丼を受け取っていた。
「やっぱり戦いの前にはこれだわさ」
「あとステーキでやんすね、ボス」
「その二つが」
「そうだわさ。戦いの前にはそれだわさ」
こう二人で話すボスだった。
「それで勝利祈願だわさ」
「ボスって結構縁起をかつぐのね」
リンダはそれを意外そうな顔で聞いていた。
「意外っていうか」
「けれどそれも考えてみれば普通なのよね」
ケイトはこう考えるのだった。
「誰だってね。戦いの前にはね」
「そういうことだわさ。だからこれとステーキだわさ」
ステーキをおかずにしてカツ丼を食べるのだった。
「さて、それじゃあ」
「肉を食えるうちは大丈夫だな」
ここで言ったのはオズマだった。
「うちもな」
「そういうものなんですか」
「少なくとも好きなだけ食べられるうちはな」
こうルカに返す。
「大丈夫だ。そのうちはな」
「それじゃあ僕も」
「ほらよ」
ヘンリーからホットドッグを受け取りそれを食べる。
「有り難うございます」
「サンドイッチもあるぜ」
「何か何でもあるな、この部隊はいつも」
「どいつもこいつも食い意地が張ってるということだな」
グン=ジェムはアルトに応えながら馬鹿でかい骨つき肉を食っていた。骨を持ってそのうえでかじりつき豪快に食い千切っている。
「しかし食えるのなら問題はない」
「食えるのならですか」
「そうだ。食欲がなくて勝てるか」
彼はまたアルトに告げた。
「そうだな。食えるからこそ戦えるのだ」
「確かに」
「わかったら御前も食え。好きなものをな」
言いながら今度はザワークラフトを缶詰を開けて中を丸ごと口の中に入れた。
「野菜も忘れずにな」
「またいつもながら豪快ですね」
ミシェルは彼のその食べっぷりを見て笑っていた。彼はフランクフルトを食べている。
「野菜も忘れないですし」
「当たり前だ、肉ばかり食べていたら身体に悪い」
そのことも忘れないグン=ジェムだった。
「だからだ。ちゃんと食うぞ」
「それに果物もですよね」
「おうよ」
林檎は一個丸かじりだった。
「食うぞ、ちゃんとな」
「じゃあ最前線で御願いしますね」
「ははははは、今から腕が鳴る」
実は最初からそのつもりである。
「一千万か。何億には程遠いがやってやるわ」
「そうだね。じゃあまたグン=ジェム隊は」
ミンは楽しそうに笑って話す。
「いつも通り大暴れだね」
「へへへ、百機は撃墜させてもらうぜ」
「お、おでは二〇〇機」
「まあ。所詮は雑魚だな」
ゴルもガルもジンも余裕で山のような肉と生野菜を食らっている。
「さてと、それじゃあよ」
「しゅ、出撃だな」
「軽くいなしてやるか」
彼等は言いながら最後のデザートを食べていた。大きなケーキを丸ごとだ。それを食べながらそのうえで戦いに心を向けるのだった。
ロンド=ベルは木星に降下した。するとすぐにであった。
「敵が来ました」
エマが報告する。
「四方八方からです。囲まれました」
「そうか、今度はこちらが包囲されるか」
ヘンケンはそれを聞いて静かに述べた。
「わかった」
「それでは艦長」
ナタルがここで彼に問う。
「どうされますか?」
「まずは円陣を組もう」
彼が選んだのはそれだった。
「そうして敵の包囲攻撃に備える」
「わかりました」
「そして皆に伝えてくれ」
そのうえでさらに言うのだった。
「外に向かって好きなだけ撃ってくれとな」
「好きなだけですね」
「そうだ。敵はそのまま向かって来る」
帝国軍の基本戦術であった。
「それを迎え撃つだけだ。いいな」
「はい」
ナタルは彼の言葉に微笑んで頷いた。
「それではそのように」
「うむ、では全軍」
さらに言葉を続ける。
「このまま敵を迎え撃つ!」
「了解!」
こうして彼等は殺到する敵を待ち受ける。こうして戦闘がはじまった。しかし戦局は帝国軍の、そして博士の思うようにはならなかった。
「おのれ、またしてもか!」
早速自分の乗艦の艦橋において喚いていた。
「何故攻撃が通じん。一千万だぞ!」
「そうです、その通りです」
「数では押しているというのに」
ガガーンとダルトンもそれを言う。
「それが何故」
「通じないのか」
「博士」
メサもまた彼に対して言ってきた。
「数では圧倒しています。必ず勝てます」
「その通りだ。このまま押せ」
彼は結局戦術を変えなかった。そのまま攻める。しかしそれでも無理だった。
二時間経つと数は半分以下になっていた。そして援軍も出していた。
「今木星に残っている予備1戦力です」
「三百万です」
「一千万で無理ならだ」
ここでまた言う博士だった。
「なおも注ぎ込む。クロッペンやテラルにも伝えよ」
「あの連中にもですか」
「そうだ。呼ぶのだ」
彼等についてもだった。
「その軍をな。呼べ」
「では木星にいる全軍をですか」
「今ここで」
「その通りだ。とにかく兵を集めよ」
彼は言い続ける。
「それで足りなければ土星からも要請せよ!」
「土星からも!?」
「そこからもですか」
「そうだ。数だ」
とにかく数なのだった。
「全て集めよ。よいな!」
「ですが木星は」
「殿下が」
「直率されている兵でなければよい筈だ」
彼が言うのはこのことだった。
「集めよ。よいな」
「は、はい」
「それでは」
「既に奴等は包囲してある」
彼はまた言った。
「その数で防ぐ。いいな」
「はい、それでは」
「このまま」
ガガーンとダルトン、そしてメサは彼等の言葉に頷きそのうえで戦力を集めさせる。兵が次から次に集められクロッペンやテラルまで来た。しかしであった。
「どう思うか」
「この戦いのことか」
「そうだ」
テラルは暗い顔になりクロッペンに問うていた。
「ただ悪戯に戦力を消耗し」
「うむ」
「そして木星まで巻き込もうとしている。友軍のことなぞ構わずな」
「風間博士にとって他人の命なぞ塵芥だ」
彼はそのことがよくわかっていた。
「所詮はな。だからできることだ」
「ですが司令、このままでは」
「我が軍は」
「わかっている」
テラルはターツとジーラの言葉に頷いた。
「それはな。だが」
「指揮権はあの博士に」
「しかも強硬派を従えていますし」
しかも彼等が多数派である。
「我等が何を言おうとも」
「無駄です」
「だが。このまま手をこまねいているわけにもいかない」
テラルはこのこともわかっていた。
「しかし。今の博士はだ」
「戦いは二時間経ちました」
ここでミズカがまた言った。
「二時間です」
「損害はどうなった」
「遂に一千万を超えました」
今度はカブトがクロッペンに述べた。
「土星からも戦力を集めていますがそれでも」
「司令、またです」
ボイダーがクロッペンに報告する。
「また催促です」
「戦闘に加われというのか」
「そうです」
言うまでもなく博士からのものである。
「どうされますか?」
「止むを得ん」
軍人としての決断はそれしかなかったのだ。
「ここはな。戦うしかありません」
「くっ、確かに」
「今は」
「前進開始だ」
彼は己が率いる全軍に告げた。
「いいな」
「はい、それでは」
プロザウルスが応える。テラルもそれに動きを同じくさせ彼等も戦いに参加した。
しかしだった。それでも戦局は一向に好転しなかった。四時間の戦闘が過ぎ二千万の大軍が失われようとも。ロンド=ベルは一機も失ってはいなかった。
「さあ、来やがれ!」
甲児がマジンカイザーの中から叫ぶ。
「これで終わりかよ!」
「生憎おいら達はピンピンしてるだわさ!」
ボスも叫ぶ。
「この程度でやられたりしないだわさ!」
「おのれ、まだ一機も撃墜できていないではないか!」
博士もそれを見て叫ぶ。
「攻めよ、まだだ!」
「いや、今回はこれ以上は無理だ」
だがクロッペンがここで彼に言うのだった。
「最早戦力を送られる限界だ」
「何だとっ!?」
「一時撤退だ」
そしてこうも言うのだった。
「いいな。殿軍は私が引き受ける」
「私もだ」
テラルも後詰を引き受けてきたのだった。
「いいな。ここは下がれ」
「ええい、黙れ!」
しかし博士はそれを聞こうとはしない。
「わしはまだ戦う!まだだ!」
「いや、最早戦力は五百万を切った」
「最早倒せん」
こう言うのである。
「最早な」
「撤退するのだ」
彼等は下がらせる。博士は強引に撤退させられ戦闘は終わった。木星での戦いはこれで終わった。しかしそれは完全ではなかった。
「やれやれ、勝ちはしたが」
「大変な戦いだったわね」
マリアが兄に応えていた。
「どれだけいたっけ。二千万?」
「三千万程度は倒したな」
実際に帝国軍はそのまで投入していたのだ。
「だがこれでまた帝国軍の戦力は減らした」
「そうね。三千万だからね」
マリアもそれを言うのだった。
「けれどあの博士大丈夫かしら」
「大丈夫ではないな」
鉄也が言った。
「おそらくこの敗戦でさらに怒り狂っている筈だ」
「じゃあいよいよ何をしてくるかわからないってことね」
「今分析結果が出ました」
テッサがここで皆に言ってきた。
「博士の性格と今わかっているだけの帝国の科学力を考慮しますと」
「どうなんだ?」
「木星を爆破します」
何とその通りの分析であった。
「そのうえで私達を木星ごと」
「また随分と無茶な作戦だな、おい」
フォッカーはそれを聞いて思わず言った。
「俺達を木星ごとかよ」
「つまりそれだけ本気ということでもありますね」
マックスはこう考えるのだった。
「あの博士も」
「あの博士なりにはってことかよ」
「そうなるのね」
柿崎とミリアも言う。
「まあどっちにしろそんな馬鹿な作戦は止めねえとな」
「そういうことね」
「じゃあどうする?」
輝は解決策を考えていた。
「あの博士を倒すしかないのか?やっぱり」
「その通りです。おそらくその爆破装置のコントロール部分は博士の乗艦にあります」
テッサがまた一同に説明する。
「ですからそれを何とかするには」
「博士の乗艦を撃沈するしかない」
「そういうことか」
「はい、そして地中に向かって放たれるミサイルを撃墜する」
この案もあるのだった。
「その二つです」
「よし、じゃあ作戦は決定だな」
金竜はそれを聞いて結論を下した。
「今度の作戦はミサイルと博士の乗艦を狙うぞ」
「了解」
「それじゃあ」
ガムリンとフィジカが彼のその言葉に頷く。
「やってやりましょう」
「木星を破壊されてたまるものですか」
「おそらく木星上空から攻撃してきます」
テッサの分析は続く。
「ですから我々も」
「忙しい話だな、また」
バサラはそれを聞いて言った。
「降下したり上にあがったりよ。けれどな」
「そうです。そんなことを言っている間ではありません」
テッサの言葉は真面目なものだった。
「ですから。宜しいですね」
「ああ、わかってるぜ」
バサラもそれはわかっていた。
「行くぜ。それで俺の歌を聴かせてやるぜ!」
「そのバサラさん達の歌ですが」
テッサはバサラ達の歌についても言及してきた。
「我が軍の士気の向上にかなり貢献しています」
「ええ、その通りよ」
それは未沙も認めるところだった。
「有り難いことにね」
「これからもどんどん歌って下さい」
バサラに対しての言葉だった。
「それにより我が軍の勝利がさらに高まっていますので」
「わかってるぜ。けれどな」
ここでバサラは言うのだった。
「俺はな、戦いを止めさせる為に歌ってるんだよ」
この考えは変わらないのだった。
「どいつもこいつも俺の歌を聴きやがれ!」
そしてまた言う。
「それで戦いを終わらせてやるぜ!」
「何か宗介とは違う意味で凄いわね」
かなめはそんな彼を見て呟いた。
「もう我が道を行くって感じで」
「それがこいつなのよ」
「悪いのか?」
「悪くはないけれどね」
一応認めはする。
「それでもよ。何かこう熱くなるってないの?」
「ない」
最早取り付く島もないといった感じである。
「特にな」
「っていうかあんたの声ドモンさんと似てるわね」
かなめはふとこのことも言いだした。
「イザーク君とかトウジ君にも似てるし」
「そういえばそうだな」
「あとトマーシュにもやな」
二人もそれに応えて言う。
「しかし俺と宗介は全くの別人だがな」
「俺ともな。全然ちゃうやろ?」
「そうなのよね。声って不思議よ」
かなめはこのことをつくづく言うのだった。
「似てる声の人って結構多いけれど」
「人間は違うからな」
「それは用心しとかへんとな」
「俺も最初シンを見てびっくりしたぜ」
エイジがここで言う。
「同じ声の奴が何でいるんだってな」
「別に驚くことはないんじゃないの?」
斗牙はその彼に対して穏やかな声で言った。
「僕もルカと声が似てるけれど」
「そうだよね。どうしてかわからないけれど」
「そうだ。声が似ているのはいいことだ」
サンドマンはこう断言するのだった。
「私もまたそれを喜ぶ」
「そういうことだ。それでわかったな」
レイヴンはそういうことにしてしまおうとしていた。
「私なぞ。それを言えばだ」
「俺と声似てるな」
マサキが彼に言ってきた。絶好のタイミングで。
「あとヒイロともな」
「その通りだ。それはいいことだ」
「いいことはいいことでも正直混乱するわ」
かなめはこうも言って首を捻る。
「いざって時に声が似ていたらあれっ!?ってなるし」
「そうですね。私も混乱する時があります」
テッサもそれは同じなのだった。
「ですがそれでもです。羨ましいものです」
「確かに」
これがかなめの本音であった。実は。
「私も声似てる人誰かいないかしら」
「私も。どなたかおられたら」
こんな話をするかなめとテッサだった。何はともあれ戦いは終わったのだった。
そして今度は大気圏外に向かう。博士の狂気を止める為に。
第百二十八話完
2009・5・13
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