スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百十九話 イノベイター
第百十九話 イノベイター
「まさかな」
「全くだ」
闘志也と謙作はそれぞれ苦い顔で述べ合っていた。
「博士がな。あんなことをな」
「全くだ。博士が捕虜虐待か」
「あんな人じゃなかったんだがな」
ジュリイも言った。やはり彼も苦い顔をしている。
「間違ってもな」
「俺達が気付かなかっただけか?」
闘志也は今度はこう言った。
「まさかな」
「その可能性もあるな」
ジュリイもそれを否定しなかった。
「やっぱりな」
「そうか」
「どちらにしろ博士は裁判にかけられる」
ジュリイが今度言うのはこのことだった。
「それはもう決まったことだ」
「そうか」
「じゃあ博士は終わりか」
闘志也と謙作が暗い顔になった。
「これでな」
「ショックだけれどな」
「ショックでもそれは忘れないとな」
ジュリイの今度の言葉は前向きなものになっていた。
「次の戦いがある。それに備えよう」
「ああ、気持ちはわかるがな」
ここで三人の話に入って来たのはドモンだった。
「次の戦いがある。それでだ」
「わかったさ」
闘志也も遂に彼の言葉に頷いた。
「それじゃあな」
「とりあえずはこの呉に残る」
今はそこで待機なのだった。
「そのうえで敵に備える。そういうことだ」
「呉か。向こうの世界と変わらないな」
ビルギットがここで言った。
「全然な。こうしたところは同じか」
「そうみたいね」
アンナマリーが彼に対して応えて頷いた。
「おかげでそれなり以上に楽しませてもらってるけれどね」
「呉が楽しいの?」
「めっちゃ楽しいで」
アスコットにカルディナが答える。
「この街。お酒美味しいし」
「カルディナまたお酒なの?」
アスコットはそれを聞いて髪の奥を顰めさせた。
「お酒ばっかりじゃない」
「人間やっぱりお酒やで」
カルディナはアスコットに言われてもこう言うだけだった。
「お酒もな。そうやろ?」
「ええ、その通りよ」
プリシラが満面の笑顔でカルディナに同意する。
「お酒がないとね。やっぱり生きていられないわよ」
「そうそう。米のお酒もめっちゃ美味しいで」
「確かにな」
カルディナの言葉に今度頷いたのはラファーガだった。
「魚もいい。ここはいい街だ」
「うむ。この世界もいいものだな」
クリフも満足していた。
「戦いもあるがな」
「それで導師クリフ」
アルシオーネが己の師に言ってきた。
「感じられたのですが」
「何処からだ?」
「島根です」
彼女は言った。
「今度感じられたのは島根です」
「そこか」
「はい、そこに気を感じました」
こうクリフに述べるのだった。
「おそらくはそこから」
「迫っているのだな」
「はい」
真剣な顔でまたクリフに答えた。
「ですから」
「すぐに皆に伝えよう」
クリフは弟子の言葉を受けてまた述べた。
「敵が迫っていることをな」
「それではすぐに」
「それで何日後になるか」
「二日後かと」
アルシオーネはそこまで感じ取っていたのだった。
「二日後か」
「まだ暫くは時間があります」
「そうだな」
クリフは弟子に対して頷いた。
「いいことだ。その間にだ」
「何が?」
「また友軍が合流するとのことだ」
「友軍がですか」
「ガンダムマイスター達がいるな」
「はい」
彼が今度話に出してきたのは彼等であった。
「彼等の所属していた組織が正式に連邦軍に加入した」
「確か」
「そうだ。ソレスタルビーイングだ」
グラハムが彼等に述べてきた。
「彼等が我々に正式に参加することになった」
「そうなのか」
「三年前のことだが」
彼が話すのはそこから遡ったものだった。
「我々は早乙女博士、そして彼に従うインベーダー達と戦っていた」
「そうでしたね」
シーブックが今の彼の言葉に頷いた。
「その中で真ドラゴンが姿を消しそしてガンダムマイスター達も死んだと思われていたのですね」
「激しい戦いだったよ」
ビリーも彼等に話してきた。
「多くの犠牲を払ってね。ようやく勝った」
「はい、お話は聞いています」
また応えるシーブックだった。
「ロックオンさんのお兄さんも戦死されたのでしたね」
「そうだ。本当に多くの犠牲を払って勝利を収めた」
カティも話す。
「その結果地球に統一政府ができ今に至るが」
「そうでしたね。あの時は」
ビリーは彼女の今の言葉に頷いた。
「今の我々が形成される原因でもありました」
「全ての終わりだったが全てのはじまりでもあった」
カティは今度はこう言うのだった。
「犠牲こそあったが」
「その時にソレスタルビーイングが活躍したんですね」
「そう、そういうことなんだ」
ビリーは今度はセシリーに述べる。
「彼等がいないと本当に勝利はなかったよ」
「そこまでだったんですか」
「四機のガンダムだけじゃなかった」
彼は言った。154
「ソレスタルビーイング自体もな」
「奮戦したんですか」
「それまで我々は彼等を敵視していた」
カティはまたその時のことを話してきた。
「確かにインベーダーとは戦うが非正規の組織だったからだ。ゲリラとみなしていた」
「おかげで苦労させられた」
ティエリアがここで言ってきた。
「僕達は協力を申し出ていたのに常に断られたのだからな」
「当然だ」
宗介が彼等に述べた。
「御前達は正規兵じゃなかった」
「それはね」
アレルヤもそれは認めた。
「ガンダムマイスターは正規兵じゃない。軍とはまた別の武装組織だ」
「その軍にない武装組織なのが問題なのです」
テッサは静かに述べた。
「あの時はそうでした」
「今は違うのか」
「はい」
今度は刹那に答えたテッサだった。
「今はゴライオンにしろゴッドシグマにしろ。色々なマシンがあり」
「そして組織がある」
サンドマンがまた出て来た。
「そう、私が大統領閣下に許可して頂いたのだ」
「そういうことです」
テッサはサンドマンのこれまたとんでもない言葉のサポートに回って述べた。
「ですから。問題はなくなりました」
「それで俺達もこうして何気なくロンド=ベルに合流できたんだな」
「その通りだ」
サンドマンは平然ととんでもないことを言い切る。
「この世界を守らんとするならば全て同志」
「随分と強引だな」
「全くだ」
カットナルとケルナグールは今のサンドマンの言葉を聞いて述べた。
「そこまで一括りにするとな」
「もう誰でも彼でもだぞ」
「しかしだ。その器の大きさ。それこそが」
またブンドルのいつもの言葉であった。
「美しい・・・・・・」
「何かこっちの世界でも向こうの世界でも変態っているんだな」
今のアポロの言葉はブンドルとサンドマンを見た言葉であるのは言うまでもない。
「何処にでもな」
「これは私の個性だ」
サンドマンは変態と呼ばれても全く意に介してはいなかった。
「そう、だからこそ諸君」
「この人もかなり強引だな」
ティエリアはぽつりと呟いた。
「全てを知っているみたいだが」
「今まさに道は開かれた」
どの道かは彼以外は知らない。
「その道を歩み世界に平和を取り戻すのだ」
「何かよくわからないがわかった」
刹那の言葉はとりあえずサンドマンの言葉の中身を置いておいたものだった。
「俺達は平和の為に戦っている」
「それは事実だから」
アレルヤも言う。
「喜んでね。戦わせてもらうよ」
「今度は島根か」
ロックオンはアルシオーネの感じたものを信じていた。
「そういえば行くのははじめてか」
「あっ、そういえば」
「確かに」
あちらの世界の面々も今のロックオンの言葉でそのことに気付いたのだった。
「山陰行くのは」
「これがはじめてよね」
「機会がなかったわね」
エマもそうなのだった。
「あの辺りには」
「これといって軍事基地もないですからね」
ファがエマの今の言葉に応えて言った。
「山陰には」
「ええ。呉とか横須賀は多かったけれど」
「はい」
そうした場所は軍事基地だから多いのであった。
「だから知ってはいるけれど」
「山陰はちょっと」
「けれど行かないわけにはいかないんでしょ?」
ロザミアの言葉はそうとしか言えないものだった。
「やっぱり。敵が来るんなら」
「ええ、その通りよ」
フォウが彼女の問いに頷く。
「それじゃあ。今からね」
「距離としてはすぐだな」
カミーユは言った。
「広島からすぐに超えてだからな」
「ええ。ただしよ」
しかしここでエマがカミーユに言ってきた。
「山があるから」
「それですか」
「越えるのは注意が必要よ」
山のことを話すのだった。
「山にぶつかったりしないようにね」
「そうですね。そうなったら洒落になりませんからね」
カミーユもエマの今の言葉には頷く。
「山にぶつかって戦線離脱なんて」
「結構高くて長く続くから注意してね」
「わかりました」
「そのうえで行きましょう」
こうして彼等は島根に向かうことになった。しかしその一日前に話のあったソレスタルビーイングの面々が呉に来たのだった。
「現地合流と思ったがな」
刹那は彼等が呉に来たと聞いて言うのだった。
「間に合ったか」
「間に合わせてくれたと言うべきか」
ティエリアはこう考えた。
「僕達との合流に」
「何だよ、じゃあ結構いい人達なんだな」
弾児は彼等の話を聞いてこう言うのだった。
「どんな連中かって思ってたんだけれどな」
「何でそう思うんだ?」
「いや、警戒してたんだよ」
弾児はこうロックオンに返した。
「何かよ、あの博士のことだってあったしな」
「気持ちはわかるけれど気にし過ぎだよ」
アレルヤは今の弾児の言葉に返した。
「確かに君達にとってはまさかだったけれど」
「じゃあソレスタルビーイングは違うんだな」
「そうだ」
刹那が彼の言葉にはっきりと頷いた。
「俺達は平和の為に戦っている」
「ああ」
「このことは間違いない」
念を押すような言葉だった。
「確かにおかしな人間もいるかも知れないがだ」
「あんなふうな人はいないってわけだな」
「それは安心してくれ。では行くぞ」
「行くって何処にだよ」
「出迎えにだ」
彼が今言うのはこのことだった。
「それとも行かないのか」
「あっ、いや」
「行かせてもらおう」
弾児だけでなく盾人も応えてきた。
「そういうことならな」
「では行くぞ」
「それはいいけれどよ」
見れば弾児はまだ戸惑った顔を見せていた。その顔で言うのだった。
「御前がかよ」
「俺がどうかしたか」
「いや、御前も出迎えするんだなってな」
彼が言うのはこのことだった。
「意外だったんでな。ついな」
「刹那も最初はそうしたことはしなかった」
ここでティエリアが話してきた。
「全くな。なかったことだった」
「ああ、やっぱりな」
弾児もそれを聞いて納得するのだった。
「やっぱりそうかよ。そうした奴だったんだな」
「しかし変わった」
そのうえでこうも言うのだった。
「刹那も三年前の戦いと今で随分と変わった」
「そうだったのかよ」
「だからこうして自分から出迎えに向かう」
ティエリアはそんな刹那を見ながら弾児達に話を続ける。
「いいことだ。彼にとってな」
「そうだな」
盾人は今のティエリアの言葉に頷いた。
「人と交わることはな。それだけで大きく変われる」
「刹那はそれによって変わったしこれからも変わる」
こうも言うティエリアだった。
「僕達はそれを見させていってもらう」
「そうか」
そうした話をしながら出迎えに向かう。出迎えの場ではティスが言うのだった。
「まあ役に立てばいいけれどね」
「ティス、そんなことを言ったら駄目だよ」
ラリアーが到着前から憎まれ口を言うティスを注意する。
「僕達に協力してくれる人達をそんなふうに言うのは」
「けれど実際あれじゃない」
しかしティスは注意されても減らず口を止めない。
「どんな人達かはっきりわからないんだし」
「だから。言ったら駄目よ」
デスピニスもおどおどとした様子でティスを止めようとする。
「悪口は」
「悪口で済めばいいけれどね」
ティスはそれでも言う。
「足手纏いなんかいらないわよ」
「御前本当に相変わらずだな」
そんな彼女をラウルが呆れながらも注意する。
「まあそういう御前が撃墜されないようにな」
「わかってるわよ」
「わかっていたらせめてグラビトロンカノンの射程内には入るなよ」
ラウルはまた彼女に言う。
「御前あの時下手しなくても死んでたぞ」
「だからわかってるわよ。とにかくね」
「ああ。とにかく?」
「出迎えよね。それで何時来るのよ」
「もうすぐですわ」
テセラがティスの言葉に答える。
「時計ではもうすぐ」
「まだ何も見えないけれど
空にも海にもだった。
「それで本当に来るのかしら」
「来ますよ」
つぐみは自分に言い聞かせるような言葉を出した。
「絶対に」
「そうだよね。来るって言ってるんだし」
ジョンも頼りない感じの言葉を出す。
「それじゃあやっぱり」
「待てばいいさ」
ピエールは悠然としていた。
「このままな」
「ああ、そうそう」
ここでシルヴィアが皆に言う。
「あともう一人一緒に来るらしいわよ」
「一緒に!?」
「誰、それ」
「それが誰かはよくわからないけれど」
そこまでは知らないシルヴィアだった。
「それでも来るんだって」
「そうなの」
クルトはそれを聞いて静かに頷いた。
「じゃあ誰かな」
「戦力としては有り難いわね」
クロエは素直に戦力の到着を喜んでいた。
「それはね」
「アクエリオンのパイロットかしら」
麗花はふとこう思ったのだった。
「だったらいいけれど」
「そうだな」
シリウスも彼女の今の言葉に頷く。
「戦力は本当に少しでも欲しい状況だからな」
そんな話をしながらソレスタルビーイングのメンバーの到着を待っていた。そうして暫くして一隻の戦闘用の艦艇が到着したのであった。
「あれは」
「プトレマイオスか!?」
その戦艦を見たクルツが言った。
「あれは沈んだんじゃなかったのかよ」
「いや、違う」
だが彼にグラハムが言う。
「あの戦艦はプトレマイオスではない」
「そうなのかよ」
「似てはいる」
グラハムもそれは認める。
「だが。しかしだ」
「そうですね」
「確かに」
ハワードとダリルがその戦艦を見て述べた。
「細部が違っています」
「そういうものを見ますと」
「やっぱり違うな」
ジョシュアも言った。
「あれはプトレマイオスとは別さ」
「では一体何かしら」
ソーマは表情を変えないで呟いた。
「似ているけれど」
「さてな」
パトリックはいつもの陽気な声を出した。
「まああれさ。来てみてわかるってことだろうな」
「それは少しいい加減ではないですか?」
アンドレイは今の彼の言葉に眉をひそめさせた。
「それからというのは」
「どっちみち近いのは間違いないさ」
しかしパトリックはこう言ってやはち何でもないといった感じであった。
「それからな。それじゃあな」
「しかし。それにしても」
「そうだな」
ここでビリーとカティが言葉を交えさせていた。
「まさか。生きているとは」
「死んだとばかり思っていたが」
何故か二人はここでは複雑な顔をしていた。そのうえでその戦艦が入るのを見ていた。呉にその艦が入る。そうしてそこから一人の女性が出て来たのだった。
「おっ、いいねえ」
ヤザンが彼女を見て思わず口笛を吹いた。
「美人じゃねえか。やっぱり一緒にいるんなら美人の方がいいよな」
「やはり」
「まさかと思ったが」
しかし彼女の顔を見てビリーとカティはその顔をさらに複雑なものにさせるのだった。
「生きていたんだね、スメラギ」
「あの戦いから」
「久し振りね」
その美女もまた二人に顔を向けて声をかけてきた。
「二人共ロンド=ベルに入っていたのは聞いていたわ」
「じゃあ何で連絡してくれなかったんだ?」
「生きているのならそうと」
「それができなかったのよ」
しかし彼女は難しい顔をしてこう答えるのだった。
「今までね」
「隠す必要があったということかい?」
「そうだからか」
「ええ」
美女もそのことを認めた。
「そうよ。御免なさい」
「そうか。事情はわかったよ」
「ならいい」
二人はそれで納得したようであった。
「けれどそれならそれで」
「言って欲しかった」
「それは御免なさい」
彼女もそれは謝罪した。
「やっぱり。ちょっとね」
「まあいいけれどね。事情があったんだし」
「しかしこれでまた一緒だな」
「そうね。またね」
美女は二人に対してにこりと笑う。皆そんな三人を見て言うのだった。どうやらビリーやカティと知り合いだということがわかってのことだ。
「やっぱり。そうよね」
「そうだよな」
「あの人ってビリーさん達の」
「うん、実はそうなんだ」
そのビリーが皆に言うのだった。
「彼女の名前はスメラギ=李=ノリエガ」
「ノリエガさんですか」
「スメラギって呼んで」
美女はにこりと笑って皆に言ってきた。
「そうね」
「スメラギさんですか」
「それでいいから。プトレマイオス2の戦術担当よ」
「戦術をですか」
「そうなんだ。実は大学でね」
またビリーが皆に言ってきた。
「僕達は同じ戦術予報の勉強をしていたんだ」
「戦術ですか」
「天才だった」
カティは隠さずに彼女を賞賛してきた。
「まさにな」
「いえ、私は別に」
「謙遜することはない」
カティは本人に対しても言った。
「事実だからな」
「すげえ、カティさんが誰かを褒めるなんて」
「滅多にないわよ」
「そうですね」
ルリもそのことはよくわかっていた。
「もうパトリックさんに至っては」
「おい、俺かよ」
パトリックは自分のことを言われて思わず彼女に言い返した。
「そこで俺が出るのかよ」
「よく目にしますので」
ルリはいつもの冷静さでそのパトリックに返す。
「ですから」
「それはわかってねえな」
しかしパトリックはこう言うのだった。
「大佐はな。ツンデレなんだよ」
「ツンデレなんですか」
「そうさ、素直じゃねえんだよな」
メグミに対しても言うのだった。
「本当は俺のことが大好きなんだぜ。けれど素直じゃなくてな」
「ほお、年上のツンデレか」
「いいですよね、それって」
サブロウタとヒカルはストレートに囃し立ててきていた。
「そう思うと大佐も意外とな」
「可愛い人なんですね」
「女は度胸と愛嬌だぜ」
「そうそう」
リョーコの言葉にハルカが笑顔で頷く。
「そうしたことも考えたら大佐もな」
「可愛い人よね」
「可愛い人は格好いい」
イズミの駄洒落のようなものがいつものタイミングで出される。
「そう、かっけえーーーーー」
「ええと、今のは」
「駄洒落、だよな」
ジュンとダイゴウジはこのことさえ疑っていた。
「何かイズミさん最近どうにもこうにも」
「駄洒落なのかわからなくなってきたな」
「それは置いておいてだ」
パトリックは調子に乗ったまま話を続ける。
「だから照れ隠しでな。俺にはあえてな」
「それはない」
しかしカティはそれを全力で否定するのだった。
「馬鹿者を馬鹿者と言って何がおかしい」
「俺って馬鹿だったのかよ」
「って自覚ないのかよ」
「この人って」
トッポとビューティが思わず言ってしまった。
「おいら達もうわかってたのに」
「本人だけは違ったのね」
「何かお決まりのパターンよね」
レイカも言う。
「これって」
「とにかく。同期だったんですね」
アキトはただビリー達に尋ねていた。
「貴方達は」
「うん。あの頃が懐かしいよ」
ビリーはまた微笑んで皆に話す。
「本当にね。学生時代がね」
「けれどこれでまた一緒ね」
スメラギはここでも微笑んでいた。
「協力させてもらうわ」
「ああ、是非ね」
「頼りにしている」
ビリーとカティはまた彼女に対して告げた。そして今度はプトレマイオス2から出て来ていたクルーの面々が次々に挨拶をしてきた、
「フェルト=グレイスです」
「ラッセ=アイオンだ」
「イアン=ヴェスティです」
「ミレイナ=ヴェスティでーーーす」
「久し振りだな、ロックオン」
この中の一人ラッセが笑顔でロックオンに言ってきた。
「四人共元気そうで何よりだ」
「いい感じでやらせてもらってるぜ」
ロックオンはニヤリと笑ってラッセに対して言葉を返した。
「おかげでな」
「そうか。それは何よりだ」
「いい部隊だ」
ティエリアも言う。
「僕達も受け入れてくれた」
「本当によくやらせてもらってるよ」
アレルヤも言うのだった。
「ソーマもいるしね」
「出会えたんですね」
「うん」
ここでミレイナの言葉に頷いて微笑むアレルヤだった。
「色々あったけれど今はね」
「アレルヤ・・・・・・」
「ソーマ、これからも一緒だよ」
アレルヤは自分の側にいたソーマに対して微笑を向けていた。
「ずっとね」
「ええ、ずっとね」
ソーマも微笑んで彼に対して頷いた。
「一緒よ。私達は」
「絆が戻ったんだな」
イアンはそんな彼等を見て言うのだった。
「戻るべき絆がな」
「そうですね」
今度は気品のある堂々とした美女が降りてきた。美男子を後ろに連れている。
「そして私も。決意しました」
「貴女は」
テッサは彼女の姿を見て思わず声をあげた。
「確か王家の」
「はい、王留美です」
微笑んでテッサに対して答えたのだった。
「私がソレスタルビーイングの協力者だったことは御存知でしたか?」
「話は聞いていました」
テッサは静かに彼女の言葉に答えた。
「貴女が彼等のスポンサーの一人だということは」
「そうですか。やはり」
留美は彼女の言葉を聞いて静かに微笑んだ。
「御存知でしたか」
「その貴女も私達にですか」
「はい」
また頷いたのだった。
「そうです。この世界の戦いを終わらせる為には貴方達の力が必要だとわかりましたので」
「それでロンド=ベルにですか」
「お嬢様だけではありません」
ここで青年は皆に言うのだった。
「お受けの全てを以って協力させて頂きます」
「おい、マジかよ」
大島はそれを聞いて思わず声をあげた。
「王家っていったらよ」
「そうだよ。世界有数の富豪じゃないか」
高須も言う。
「その王家がバックアップしてくれるなんて」
「鬼に金棒よね」
「ええ」
ユミとカオリも言い合う。
「本当にね」
「何かまた凄くなってきたわね」
「そうしなければならなくなったからです」
留美の顔からこれまでの微笑みが消えてきていた。
「今は」
「そうしなければ?」
「今は?」
皆今の留美の言葉に眉を顰めさせた。
「何があったんですか?」
「一体」
「そうか、遂にか」
ここで口を開いたのはサンドマンだった。
「彼等が遂に動いたのか」
「その通りです」
留美はその彼に対して答えた。
「彼等が動きだしました」
「そうだな。そろそろだとは思っていた」
「私は。今まで彼等と接触を持っていましたが」
「絶ったか」
「彼等は人ではないと言います」
留美は語る度にその表情を険しいものにさせていっていた。
「ですから。私は彼等との接触を絶ちました」
「そしてここに来たのだな」
「そうです」
こうサンドマンに対して答えるのだった。
「人としてここに」
「何かまたややこしいことになってる?」
「そうみたいね」
皆このことはわかった。
「問題はそれが何かだけれどよ」
「何なのかしら」
「すぐにおわかりになられます」
留美はその彼等に対して言った。
「すぐに」
「すぐにねえ」
「何か毎回そう言われているけれど」
「世界が動く時が来た」
サンドマンも言ってきた。
「そう、神になろうとしている存在がだ」
「神に!?」
「動き出しはじめたのだ。彼等に注意することだ」
「注意って」
「敵!?」
「そう、敵だ」
サンドマンはその存在を敵だと断言した。
「人でありながら人を否定する」
こう言う。
「そして人を支配しようとする。それを敵と言わずして何と言うのか」
「確かに」
「それは」
これは彼等にとってはまさにそうであった。
「敵以外の何者でもないわよね」
「ああ、そうだな」
「そうね」
皆頷き合う。サンドマンはその彼等にさらに言ってきた。
「では諸君」
「出撃ですか」
「そうだ。明日の朝この呉を発つ」
「明日ですか」
「そしてその新たな敵を迎え撃つのだ」
こう言って戦場に向かうことを告げたのだった。ロンド=ベルは戦場に向かう。そして次の日、島根に着いた彼等の前にいきなり三機のガンダムが姿を現わした。
「あれは!?」
「ガンダム!?」
「そうだ」
刹那が皆に答える。
「俺達とは別の目的で開発されたガンダムだ」
「そんなのがいたなんて」
ウッソはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「この世界にもガンダムが色々といるんだ」
「しかし。乗っている奴等は最悪ですよ」
ミレイナが皆に言う。
「注意して下さいね」
「最悪?」
「目的の為には手段を選びません」
ミレイナはまた言うのだった。
「三年前も一般市民がいても攻撃しましたし」
「最悪ね」
それを聞いたジュンコがすぐに顔を顰めさせた。
「そんな奴等なの」
「しかしだ」
オリファーはそのうちの一機の攻撃をかわしながらミレイナに問うた。
「あの連中も連邦政府だったんだろう?」
「はい、そうです」
スメラギが彼の問いに頷いてきた。
「連邦のものなのは確かです」
「じゃあ何で俺達を攻撃するんだ?」
トマーシュには納得のいかないことだった。
「俺達の世界と似たような事情か?」
「俺達の世界も連邦の中でもぐちゃぐちゃだったからな」
オデロもよく憶えていることだった。
「それと一緒なのか?」
「話は近い」
ティエリアがオデロの今の問いに答えた。
「要するにだ。あの三機のガンダムはだ」
「もう一機来たぜ!」
ここにもう一機だった。
「赤いガンダムだ!」
「アルケーか」
ロックオンはその赤いガンダムを見て顔を顰めさせた。
「あいつまで来たのか」
「あのガンダムもそうなのかしら」
マーベットはそのアルケーを見ながらスメラギ達に尋ねた。
「やっぱり。連邦軍でありながら連邦軍ではない」
「そうだ」
イアンが答えた。
「あれもだ。三年前に死んだと思っていたがな」
「死んだ!?」
「中のパイロットが?」
「アリー=アル=サージェス」
アレルヤがそのパイロットの名を言った。
「最低最悪の人間だ」
「おお、そうさ!」
それに応えてアルケーから声がしてきた。
「生きていたぜ!宜しくな!」
「貴様、まだ戦うつもりか!」
グラハムは彼の姿を見て怒りを露わにさせた。
「先の戦いで早乙女博士にくみしまだ!」
「あの時は危うく死ぬところだったけれどな」
しかしそれを言われてもアリーは平気な顔であった。
「しかしな。地獄の淵から帰ってきたんだよ」
「そのまま死んでりゃよかったのにな」
アレックスも忌々しげに呟く。
「ったくよお、あの連中といい」
「あの連中は三年前インベーダーについていたのか」
「はい」64
フェイがアルトの言葉に頷く。
「そうです。そして我々と戦いました」
「やっぱりな。そうだったのか」
「四人共確実にくたばったと思っていたがよ」
「残念だったわね!」
三機のガンダムのうちの一機から女の声がしてきた。
「あたしもね!そう簡単には死なないのよ!」
「ネーナ=トリニティか」
トニーがその声を聞いて言った。
「忌々しい。生きていたか」
「下手したら死ぬところだったわ」
彼女もそれは認める。
「けれどね。運がよかったのよ」
「余計な奴だけ運がいいわね」
「全く」
エルフィとキャシーは今のネーナの言葉に舌打ちした。
「しかも今度も敵なんて」
「今度は誰についたのかしらね」
「決まっている」
またガンダムのうちの一機が言ってきた。
「我々のあらたなスポンサーはだ」
「この人達さ」
最後の一機からも声がしてきた。
「ヨハン=トリニティにミハエル=トリニティか」
ジャンは彼等の声を聞いて言った。
「貴様等もやはり生きていたか」
「そうだよ」
「むっ!?」
「この声は」
張りのいい少年の声だった。
「彼等は僕達についてくれたんだよ」
「出て来たか、遂に」
サンドマンはその声を聞いてグラヴィゴラスの艦橋で呟いた。
「リボンズ=アルマーク」
「サンドマン、君がロンド=ベルについたのは知っていたよ」
その薄緑の髪に異様な目の少年が言ってきた。
「人間なんかにね」
「人間である者が何を言うか」
しかしサンドマンはそのリボンズに対して言い返した。
「人間が!神を気取るというのか!」
「いや、それは違うよ」
リボンズはサンドマンの今の言葉は否定した。見れば彼は一隻の連邦軍の戦艦に乗っていた。そこからサンドマンに対して言ってきていた。
「僕は神さ」
「まだ言うつもりか」
「君は所詮人間だ。しかし我々は違う」
「我々!?」
「あいつにも同士がいるのか」
「その通りだ」
サンドマンは珍しくその顔を忌々しげにさせて皆に告げた。
「それがイノベイターだ」
「昨日話しておられた組織ですか」
「そうだ」
ルカの問いに答える。
「人でありながら人であることを否定する愚か者達だ」
「愚か者か」
リボンズはそれを言われても何とも思わないようだった。嘲笑さえしている。
「君程の能力があれば神にもなれるというのに」
「ほざけ!」
やはりサンドマンは感情を露わにさせていた。
「私は人間だ!人間であることは決して忘れはしない!」
「それが愚かなんだよ」
リボンズはまた彼を嘲笑した。
「そうやって人間なんかにこだわるのがね」
「ならば見せよう」
サンドマンは遂に話を打ち切ってきた。
「貴様が否定するその力、今ここで!」
「じゃあ皆」
リボンズは悠然と言った。
「攻撃開始だ。ガルラ帝国軍と共にね」
「何っ!?」
「連邦軍同士が!?」
「これは一体」
ここで海の方にガルラ帝国軍が到着した。しかし彼等はロンド=ベルと向かい合うイノベイター達を見て驚きの声をあげたのだった。
「地球人同士が争っている!?」
「何があった!?」
「テラル様」
腹心の部下の一人が司令官であるテラルに問うた。
「これは一体」
「わからぬ。だが」
「だが?」
「どちらにしろロンド=ベルに対して攻撃を開始する」
彼女はそれは決めていた。
「今より」
「それでは今より」
「そうだ、攻撃を開始する」
今の地球人のいがみ合いはまずは置いておいた。そのうえでの命令だった。
「どちらもな」
「はい、それでは」
「我等が」
「リーツ、ジーラ」
その腹心の部下二人に対して言った。
「先陣を頼むぞ」
「わかりました」
「それでは」
彼等もすぐに向かおうとする。攻撃目標はロンド=ベルもイノベイターもどちらもだった。しかしここでリボンズが彼等に対して言ってきた。
「待って下さい」
「待てだと!?」
「そうです。僕達は貴方達の味方です」
こう彼等に言うのだった。
「貴方達に合流させて頂くこちらに来ました」
「我々にか」
「そうです。宜しいでしょうか」
あらためて彼等に対して問う。
「合流させて頂いて」
「テラル様」
「どうされますか?」
リーツとジーラは怪訝な顔になってそのうえでテラルに対して尋ねてきた。
「あのようなことを言っていますが」
「ここは」
「ううむ」
そう言われてもテラルにも決断しかねるものがあった。
「しかし地球人となると」
「僕達はもう地球人ではありません」
だがここでリボンズはまた言った。
「ですから。是非共」
「あのようなことを言っていますが」
「あの者達は」
リーツとジーラにも信じかねるところがあった。しかしここで彼等のところに通信が入って来た。それはシンクラインからのものだった。
「テラルよ」
「殿下、今ですが」
「わかっている」
既にイノベイターのことは知っているという顔であった。
「構わん、入れよ」
「入れられるのですか」
「駒は多いに越したことはない」
実にシンクラインらしい言葉であった。
「だからだ。受け入れよ」
「わかりました。それでは」
「その御言葉感謝します」
リボンズはシンクラインの言葉を聞いて微笑むのだった。
「それでは。今から我々も貴方達と共に」
「しかしだ」
シンクラインはここで彼等に険しい顔を見せてきたのだった。
「一つ言っておく」
「何でしょうか」
「失敗は許さん」
彼が言うのはまずこれであった。
「決してだ。失敗は死だ」
「死ですか」
「そして裏切りもだ」
それもだというのだった。
「私は決して許さん。それは憶えておくことだ」
「肝に命じておきます」
そうは言っても涼しい顔のままであった。
「その言葉」
「それでよいのなら私の駒になれ」
彼ににとってはイノベイターはそうでしかなかった。
「よいな」
「はい、それでは」
「裏切っただと!?」
テラルはそれを見て思わず言った。
「同胞達を」
「同胞ですか」
しかしそれに対するリボンズの言葉は冷笑そのものだった。
「それは違いますね」
「違うというのか」
「僕達は人間より上の存在です」
そしてこう言うのである。
「その僕達が人間を裏切ったとは」
「違うというのか」
「その通りです」
また言い切ったのだった。
「僕達は人間を支配する存在です」
「人を支配か」
「そう、神なのですから」
己を神だと。そう定義付けるのであった。
「神が人という存在を支配する為に今ここにいるのです」
「ふざけんな!」
リュウセイが彼の言葉を聞いているうちに激昂した。
「手前の何処が神だっていうんだ!」
「おや、そんなに感情的になられるとは」
しかしリュウセイのその怒りも嘲笑するのだった。
「また野蛮な」
「野蛮がどうした!」
しかしリュウセイはさらに彼に言い返す。
「俺は少なくともそうやって他人を見下したりはしねえ!」
「その通りだ」
ライは今のリュウセイの言葉を認めた。
「御前達のそれはただの傲慢だ」
「人が何を言うかと思えば」
「ならば見せよう」
ライもまた感情を見せてきていた。
「その人間の力。御前達にな」
「ああ?ライ、リュウセイ」
アヤが二人に声をかける。
「敵が来たところを」
「まとめて叩き潰すんだな」
「それですね」
「そうよ」
アヤもまたリボンズのその傲慢には嫌悪感を見せていた。
「容赦することはないわ」
「わかったぜ」
「そのつもりです」
「レビも。それでいいわね」
「ああ」
レビもまた彼女の言葉に頷いた。
「わかった。それでやらせてもらう」
「御願いね。じゃあ」
「あの者達は何もわかっていない」
ヴィレッタはそう看破した。
「そしてわからせる必要もない」
「その必要もか」
「語る価値もない」
フォルカに対してこう言ったのだった。
「つまらない連中だ」
「その通りだ」
そしてフォルカもそうだと見ているのだった。
「何もかもがわかっていない連中が人を見下すなどと」
「笑止千万だ」
フォルカもヴィレッタも言った。
「では行くぞ」
「私の持ち場は任せてくれ」
二人はもう戦闘態勢に入っていた。ここにロンド=ベルと帝国軍、それに彼等に組する者達との戦いがはじまった。三機のガンダムにはスティング達が向かう。
「気をつけろ」
三人に劾が言う。
「この連中。戦闘力はかなりのものだ」
「俺達よりもですか」
「最悪で互角だ」
こうスティングに答える。
「だからだ。注意しろ」
「海の中に引きずり込んでそのまま真っ二つにしたいですけれどね」
アウルはこう言いながらその手の矛を振る。
「これでね」
「気持ちはわかるが今は自重しろ」
しかし劾はやる気を見せる彼を今は制した。
「下手に出れば御前もあの数の前に押し潰されるぞ」
「また今回も多いですね」
見ればガルラ帝国軍は今回も数で来ている。優に七十万はいる。
「もう容赦なしってやつですね」
「だからだ。迂闊には前に出るな」
海に入るなというのだった。
「いいな」
「わかりましたよ。じゃあアビスはこのままで」
「そうしてくれ。そしてステラ」
最後にステラに声をかけた。
「待て。いいな」
「待つ」
「そうだ。積極的に仕掛けることはない」
彼は言うのだった。
「待ってそのうえで仕掛けろ。いいな」
「わかった。ステラそうする」
「あの赤いガンダムはだ」
アリーのガンダムも見ていた。
「誰が相手をするかだが」
「俺が行く」
ここで名乗り出てきたのはレイだった。
「このプロヴィデンスレジェンドでな」
「頼めるか?」
「任せてくれ」
今度はこう言うレイだった。
「あいつを止める位はやれる」
「そうか。それでは頼んだ」
「ああ」
「済まないな」
彼等のやり取りを見てティエリアが言ってきた。
「本来なら僕達が向かうべきだが」
「気にするなよ」
スティングが陽気にそのティエリアに言葉を返した。
「これも受け持ちだからな。それよりもあんた達はよ」
「僕達は?」
「自分達の仕事やってくれよ」
こう彼に言うのだった。
「そっちを頼むな」
「わかった」
ティエリアも彼のその言葉に頷くのだった。
「それじゃあ。そっちはな」
「まっ、ちょっとばかり遊んでくるさ」
アウルはわざと軽い調子でいた。
「この連中をゲームをな」
「任せて」
ステラもいた。
「きっとあの三人倒すから」
「いえ、待って」
しかしここでルイスが言ってきた。
「あの女は」
「女は?」
「私が」
見ればルイスの様子がおかしかった。普段の無口で人形を思わせる様子と違い何かが取り憑いたような顔になっているのだった。
「私が倒したい」
「!?ルイス」
「一体」
それを見たアンドレイとソーマが同時に声をあげた。
「何があったんだ?」
「様子が変わったが」
「あの女が皆を」
ルイスはさらに言う。
「パパもママも皆殺して」
「待て、ルイス」
「落ち着いて」
アンドレイとソーマは慌てて彼女に声をかけた。
「今我々は正面の敵と戦わなくてはならない」
「だからそちらには」
「行けない・・・・・・」
「何があったか知らないが落ち着け」
「いいわね」
ソーマの言葉の調子が変わっていた。
「だからだ、ここは」
「ステラ達に任せるのよ」
「ステラ達に」
「ステラ、ルイスの為にやる」
そのステラも言ってきた。
「だからそこにいて」
「ええ・・・・・・」
ここでやっと落ち着きを取り戻したルイスだった。
「わかったわ。それじゃあ」
そして普段の顔に戻る。しかしこれは周りにとって深刻な疑念を抱かせることになったのだった。
その中で戦闘がはじまった。しかしリボンズは四機のガンダムの戦闘を観るだけでは今は己の乗艦をこれといっても動かさないのだった。
「動かないのか」
「はい、今は」
テラルの問いにも平然と答える。
「その必要はありませんので」
「必要がないだと」
「今はほんの小手調べです」
またしても余裕に満ちた言葉であった。
「だからですよ。今はそれでいいのです」
「何か考えがあるな」
「そう思われますか」
「そうとしか思えないな」
テラルの言葉は彼を心の底から疑っているものだった。
「何を考えているかまではわからないがな」
「少なくとも貴女の味方ですよ」
しかしリボンズはこう彼女に返すのだった。
「それは御安心下さい」
「味方か」
「そう、今は」
思わせぶりに微笑んで言った。
「ですから」
「テラル様、やはり」
「この者は」
ここでまたリーツとジーラが彼女に言う。
「いや」
しかしテラルはここで言った。
「殿下も言っておられることだ」
「それではですか」
「そのように」
「そうだ。我々の言うべきことではない」
結論としてはこれしかなかった。
「いいな、それはだ」
「わかりました」
「どうも。信じられませんが」
二人はあからさまにリボンズに対して嫌悪感を見せていた。それはテラルも同じだったが彼女はこう言うしかなかったのであった。
「仕方がないのだ」
「ですか。しかしあの裏切り者」
「何とふてぶてしい」
彼の乗艦を見ながら言う。しかしリボンズとその周りの態度は変わらなかった。
「気にすることはないさ」
「そうだな」
彼等の周りの者は皆彼のその言葉に頷いていた。
「どうせ彼等も」
「そうね」
「私達に跪くことになる」
そしてこう言うのだった。
「近いうちに」
「そう。けれどまずは」
リボンズがまた言う。
「彼等には頑張ってもらわないとね」
「私達の為に」
やはり何かを企んでいた。しかしそれはまだ隠していた。そのうえでロンド=ベルとの戦闘を眺めているのだった。
戦いは続いている。しかしここでも質と戦術で圧倒するロンド=ベルが帝国軍の数を凌ぎ戦いを有利なものへと変えていっていた。
「このままだ」
ダイテツが言う。
「このまま射程に入った敵を集中的に潰していけ」
「はい」
テツヤが彼の言葉に応えて頷く。
「では引き続き主砲発射用意!」
「はい!」
エイタが応える。
「撃て!」
「撃て!」6
クロガネの主砲から轟音が轟きそのうえで凄まじい威力のビームが放たれる。そしてそのビームで敵艦を一撃で貫き真っ二つにするのだった。
敵艦は炎の中に消える。しかしダイテツはそれを見届けるだけで笑みを浮かべることなく引き続いて攻撃命令を下すのであった。
「次だ!」
「了解です!」
クロガネは今度は群がってくる戦闘機達を撃墜していく。戦艦まで激しい戦いの中にあった。しかし戦いは次第に質と戦術で勝るロンド=ベルのものに完全になったのだった。
「あと一息だ」
リーがその中で言う。
「もう少しで勝利を収めることができるぞ」
「そうですね」
彼の言葉にイワンが頷く。
「このまま行けば」
「ただしだ」
しかしここでリーは顔を険しくさせた。
「あのイノベイター達」
「どうしました?」
「何を考えているのだ。一体」
「問題はそこだな」
ブレスフィールドも同じことを考えていた。
「神になろうとしているというが」
「へっ、どうせシャピロの野郎と同じさ」
忍はこう言い捨てた。
「ああした野郎はどいつもこいつも同じなんだよ。自分だけ高見に立とうとしたいだけなんだよ、結局はな」
「そうだね」
沙羅もそうだと言う。
「あいつと同じだろうね、やっぱり」
「ふむ。だとするとだ」
リーは二人の言葉を聞いて彼等の見方を決定した。
「その程度の者達fだな」
「その程度ですか」
「そうだ、その程度だ」
こうシホミに返すのだった。
「神になろうとしているのならな」
「そうだね」
アカネはリーの今の言葉に対して頷いた。
「神になろうとしている奴に碌な奴はいないさ」
「しかも自称ならね」
「そうした輩が多いのもまた事実だが」
雅人と亮も言う。
「けれど気にすることはないね」
「器が知れるというものだ」
「だからよ、ここはギッタンギッタンにしてやるぜ」
忍の闘争心は健在だった。
「覚悟しやがれ!偽者の神様達よお!」
「僕達が偽者だと」
リボンズは今の言葉に怒りを見せた。
「その言葉。許しておくわけにはいかない」
「別に許してもらうつもりはない」
アランは極めて冷静に彼に言葉を返した。
「ただ。倒すだけだ」
「くっ・・・・・・、それなら」
「いや、待て」
リボンズは感情を露わにさせて攻撃に入ろうとする。しかしここでテラルが言うのだった。
「今は撤退する」
「撤退!?」
「そうだ。戦力を失い過ぎた」
こう言うのである。
「だからだ。撤退する」
「そうですか。戦力をですか」
「止むを得ない」
また言う。
「だからだ。いいな」
「ええ、わかりました」
リボンズもここで何とか冷静さを取り戻してきていた。そのうえで答えるのだった。
「それではここは」
「撤退だ」
こうして帝国軍もイノベイター達も撤退した。劾は彼等の撤退をい届けてから言うのだった。
「ここは簡単に退いたがな」
「話はこれからだな」
ロウはこのことを確かに把握していた。
「あの連中とのことはな」
「その通りだ。神になり人類を支配しようとしている」
劾はこのことを強く意識しだしていた。
「所詮は戯言だがな」
「しかしその戯言により多くの血が流れる」
イライジャはそのことを深く警戒していた。
「それは防がなければな」
「それなら。やることは一つだ」
ミゲルの出した答えは簡潔なものだった。
「倒す。それだけだ」
「その通りだ」
イライジャはミゲルの今の言葉に頷いてみせた。
「彼等をな」
「それじゃあ機会を見つけてかな」
アーサーの言葉は少し頼りないものだった。
「彼等を倒すのは」
「もう少し積極的にいかねえか?」
ジュドーがそのアーサーに対して問う。
「こうよ。見つけたら一撃で消し炭にしてやるとかよ」
「あっ、それいいわね」
マリアはジュドーのその意見に賛成した。
「もう後腐れなくね」
「だよな。もう出て来たら一発でよ」
「それはいいわね」
タリアもジュドーの案に賛成した。
「もうね。気兼ねなくね」
「そうしようぜ。派手によ」
彼はそうしたことを言っていた。言いながらも今は撤収するのだった。何はともあれこの島根での戦いは無事終わったのであった。
しかし呉に戻った彼等を待っていたのは悪いニュースだった。それは。
「何っ!?」
「嘘だろ!?」
皆それを聞いて思わず叫んだ。
「風間博士が脱走!?」
「しかもガルラ帝国に入っただって!?」
「残念ながら」
彼等に説明する連邦軍の士官の顔も暗い。
「その通りだ。一瞬の隙を突いてな」
「危険だ」
ロジャーはそれを聞いて顔を曇らせた。
「あの博士が自由になるとは」
「そんなになの」
ドロシーはそれを聞いてロジャーに問うた。
「あの博士は」
「それは君も知っていると思うが」
ドロシーの言葉にすぐに顔を向けた。
「あの博士が何をしたのかは」
「ええ」
当然ながらそれは知っているドロシーだった。こくりと頷く。
「それはね」
「それならわかる筈だ。博士は狂気を完成させることができる」
ロジャーは言う。
「それこそが最も危険なことなのだ」
「そうですね」
タケルはロジャーの今の言葉に深刻な顔になっていた。
「あの博士までガルラ帝国に入るとなると」
「こちらもすぐに手を打つ必要がある」
ブライトは即断した。
「我々もな」
「それでどうするんだ?」
アムロが彼の今の言葉に問う。
「御前の考えは」
「罠を用意するべきか」
ブライトは考える顔で述べた。
「それとも」
「それとも?」
「我々自身が彼等の本拠地を叩くかだ」
「あの連中の本拠地!?」
ギュネイはそれを聞いてその顔を思いきり顰めさせた。
「そんなの何処にあるんだ?」
「ガルラ帝国の本星じゃないの?」
クェスは考える顔で述べた。
「それがあるんならやっぱり」
「そんなところを攻めろって言われてもな」
ギュネイはまた言った。
「無理だろ、それは」
「そうよね」
「いや、それはある」
だがブライトはこう言うのだった。
「それはな。ある」
「あるって?」
「一体何処に!?」
「それはこの太陽系に存在している」
ブライトはこう主張するのだった。
「間違いなくな」
「間違いなくか」
「あれだけの数を展開させてきている」
ブライトはそこを指摘する。
「ならば近くに大規模な軍事基地がある筈だ」
「そこが彼等の本拠地というわけか」
「そうだ」
またアムロに対して答える。
「彼等はな。この太陽系にいる」
「そうか、わかった」160
アムロは彼の今の言葉にも頷いた。
「それではだ。まずはだ」
「どうするんですか?」
「それで」
「宇宙に出よう」
こう言うのだった。
「そして彼等を攻めていく」
「彼等を?」
「そうだ、宇宙に出たならば彼等の動きがすぐにわかるな」
「ええ、まあ」
「宇宙に本拠地があるんなら」
「それだ。そしてそこに向かう」
戦略は実に単純なものであった。
「それでどうだ」
「まずは一戦交えてからか」
それを聞いたブライトが述べた。
「大胆でも効果があるのは確かだ」
「そうだな」
これはブライトもわかっていることだった。
「敵の出て来る場所を知るにはな」
「だから。そうしよう」
アムロはまた言った。
「それで。いいな」
「よし」
ブライトはアムロの提案に対して頷いた。
「そろそろラチがあかなくなってきた。ここで一気に決めるとしよう」
「その通りだ。ではまずは宇宙に出よう」
「それでしたら」
ここでテッサが言ってきた。
「打ち上げの場所ですが」
「何処かな、それは」
「カルフォルニアです」
テッサは述べた。
「そこにあります。地球で最も設備の整った打ち上げ場所が」
「そうか。カルフォルニアか」
クワトロはそれを聞いて述べてきた。
「ではすぐ向かうとしよう」
「すぐにですか」198
「思い当たったら、だ」
彼はこうテッサに言葉を返す。
「だからだ。行くとしよう」
「わかりました。それでは」
「その前にね」
ここでスメラギが一同に言ってきた。
「追加メンバーの話が来てるわよね」
「追加メンバー!?」
「ええ、そうよ」
にこりと微笑んでまた言ってきた。
「といってもどちらもメインパイロットじゃないけれどね」
「そうなんですか」
「あとガンダムも」
「ガンダムですか」
「ええ、それもね」
にこりとした笑みはそのままだった。
「それじゃあ。それも楽しみにしておいてね」
「はい、それじゃあそれも」
「そういうことで」
とりあえずメンバーと兵器の追加は彼等にしても喜ぶべきことだった。しかしこれから¥が本当の戦いということも把握しなければならない上京なのもわかっていたのだった。
第百十九話完
2009・4・13
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