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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百十三話 四十年前の依頼

                   第百十三話 四十年前の依頼

ロジャーはアランとの闘いを終えてからあらためて農場に向かう。そのことはヒイロ達からロンド=ベルの面々にも伝わったのだった。
「これで謎が解き明かされるのだろうか」
大河はそう考えていた。
「果たして」
「そうなればいいがな」
火麻はいつもと少し違った調子だった。
「何せこんな話ははじめてだ。どうなるかわかったものじゃねえぜ」
「そうデスね」
スワンが彼のその言葉に応えて頷く。
「四十年前の記憶がない街なんて」
「だが。彼はその謎を解こうとしている」
大河はそれそのことに対して言った。
「そしてそれは果たされるべきだ」
「それで今度街に入ったのは誰なんだ?」
火麻はそれを問うた。
「凱に。後は誰だ?」
「タケル君が行ってくれた」
大河は火麻に対して答えた。
「そしてシュウ=シラカワ博士だ」
「あの彼がですか」
レフィーナはシュウが行ったと聞いて少し声をあげた。
「何か。行くとは思っていましたけれど」
「そうですな」
彼女のその言葉にショーンが応える。
「あの方が最後に行かれると思っていました」
「はい。この話は元はといえばあの人が持って来たお話ですし」
「いつものパターンね」
セニアの言葉は少しシニカルだった。
「クリストフは昔からそうなのよ。いつも変な話を持って来るのよね」
「その通りだな」
マサキが彼女のその言葉に応える。
「ラングランの時もそうだったな」
「ヴォルクルスね」
彼等のかつての戦いのことだった。
「あの時まさかあの破壊の神が出て来るなんて思わなかったわ」
「全くだ。だがあいつはあの神様を倒した」
「ええ」
「それで結果として世界を救った」
「自分の為でもあったけれどね」
やはりセニアの今の言葉は少しばかりシニカルであった。
「けれどそれは事実ね」
「それで今度もなのか?」
マサキが気になるのはそこであった。
「だからこの街に来たのか?」
「さあ。それでも気になることはあるわ」
「気になること?何かあったのかよ」
「この街は四十年前の記憶がないわよね」
「ああ」
「それで外の世界は一万二千年前の記憶がない」
セニアはこのこともマサキに話した。
「時間こそ違うけれど同じよね」
「あれっ!?そういえば」
「その通りニャ」
クロとシロがそれに気付いた。
「確かに天使達にやられてるけれど」
「そういえば同じだよな」
「そうだな。言われてみればな」
マサキも自分のファミリア達の言葉に頷いた。
「そうだな。同じだな」
「何かコインの表と裏みたいにね」
セニアは今度はこう表現した。
「しかもこれって地球だけじゃないんでしょ?」
「はい」
セニアの今の言葉に頷いたのはファーラだった。
「この世界の宇宙全てがそうです。やはり一万二千年前の記憶がありません」
「これってどう考えてもおかしいわよね」
セニアはあらためて一同に問うた。
「記憶がないって。そうでしょ」
「ああ、確かにな」
「その通りだニャ」
「地球だけじゃないなんてよ」
マサミとファミリア達もそれに応えて頷く。
「けれどどうしてニャ?」
「こんな一致なんてよ。有り得ないぜ」
「その有り得ないことに何かあるってんだな」
マサキはあらためて考える顔になって述べた。
「つまり。そういうことだな」
「多分それを知っているのはクリストフだけよ」
セニアはそう察していた。
「だから。ここにあたし達を呼んだのよ」
「そしてロジャーさんに依頼をした」
レフィーナも考える顔で述べた。
「そういうことですね」
「多分ね。さて、どうなるかしら」
「それがこれからわかるってわけかよ」
「ひょっとしたらだけれど」
セニアはマサキに応えながらまた述べてきた。
「謎はここじゃ終わらないかもね」
「この街の謎がかよ」
「そんな気もするのよ」
こう言うのだった。
「ひょっとしたらだけれどね」
「じゃあ何処で終わらせるんだ?」
「さあ。それは成り行き次第かしら」
「成り行き次第かよ」
マサキはそれはいい加減ではないかと思った。
「何かそれってよ」
「それならそれで仕方ないじゃない。それよりもよ」
「今度は何だ?」
「この話が終わったら元の世界に戻ることになるわよ」
セニアは今度はこのことを話すのだった。
「元の世界にね。その時にはね」
「また戦いってわけかよ」
「元の世界は今のところ平穏みたいだけれど」
そちらの情報も入って来ているのである。
「ドーレムがいなくなった分だけね」
「ガルラ帝国も大人しいんですね」
「ええ。今はね」
ファーラにも答える。
「天使達にも動きはないし」
「俺達のいない間に動きはないってのはいいな」
火麻はそのことは素直に感謝していた。
「それはとりあえずな」
「ええ。けれど多分戻ったらね」
「また戦いだな」
「さて、そちらはどうなるかしら」
セニアはこれについてさらに言った。
「ガンダムのあの子達のことも気になるし」
「あっちに戻ってもまた色々ってわけだな」
「そういうことね。まあそれはわかってるし」
「第一の敵は」
大河が考える顔で述べた。
「やはりガルラ帝国だろう」
「彼等デスか」
「その勢力は宇宙規模だ」
こうスワンにも返す。
「それを考えたら当然だと思う」
「その通りです」
ファーラが大河の今の言葉に頷いた。
「ガルラ帝国の力はこの程度ではありません」
「やっぱりそうなのかよ」
「まだまだ力はあります」
こうマサキにも返す。
「いえ、むしろ」
「むしろ?」
「まだその力の百分の一も出していません」
「百分の一・・・・・・」
「あれで」
「いや、考えてみればそれは当然のことだ」
驚く一同だったが大文字は冷静にその彼等に告げた。
「何度も言うが彼等は宇宙規模の勢力だ」
「はい」
「それだけにその力は相当なものだ」
あらためてこのことを一同に話す。
「あの程度ではない。間違いなくな」
「だからですか」
「そうだ。シンクライン皇太子というのは」
「彼等の実質的な総司令官です」
またファーラが答えた。
「卑劣で狡猾で残忍な男です」
「何だ、最悪じゃねえか」
甲児は彼女の言葉を聞いて思わずこう言った。
「銀の時もかなり頭にきたけれどよ」
「あの程度ではありません」
しかしファーラはこう彼に返した。
「美女を捕まえては慰み者にし」
「えっ!?」
「何それ」
この話を聞いた女性陣が一斉に声をあげた。
「それって女の敵じゃない」
「最低ね」
「そうです。最低最悪の男です」
ファーラも彼をこう評するのだった。
「彼が統治するようになりガルラ帝国はその腐敗をさらに進めています」
「腐敗した帝国・・・・・・」
「ボアザンみたいね」
健一とめぐみはこの話を聞いて咄嗟にその国のことを思い出した。
「あの国みたいな国がここにもあったのか」
「反吐が出るわ」
「その反吐が出る相手が俺達のここでも主な相手ってわけだな」
一平も嫌悪感を露わにさせていた。
「まあ思う存分戦える相手なのは有り難いがな」
「考えようによってはそうでごわすな」
「そうだね」
大次郎と日吉は一平のその言葉に頷いた。
「おいどん達も思いきりやれるでごわす」
「何の悔いも未練もなくね」
「そうだよな。あいつ等今度は今まで以上にギッタンギッタンにしてやるぜ」
甲児はその指をボキボキと鳴らしていた。
「あっちに戻ったらよ」
「それはいいけれどね」
セニアがここでまた口を開いてきた。
「まずはその前に」
「その前に?」
「ここでの謎を解かないと駄目じゃない」
彼女が言うのはこのことだった。
「このパラダイムシティのね。それよ」
「一応もうメンバーは潜入してるけれど」
命が言う。
「凱にタケルさんに」
「それにシュウの野郎だな」
今度はマサキが言った。
「話の元凶もここで行ってやがるってわけだ」
「そうね。クリストフも一緒ね」
セニアもそのことに注視していた。
「どう動くかしらね。それがね」
「あいつのことだ。何考えてるなんか絶対に言うわけがねえ」
マサキはそのことはもう確信していた。
「その時になってから言いやがるからな」
「今はその時かしら」
「さてな」
マサキにもそのことはわからなかった。
「どうなるかな。まあそれもこれからだな」
「全部何もかもなのね」
命はそれが少し不満そうだった。
「ロジャーさん次第なのね」
「あの人を信じるしかないわね」
セニアも彼女の言葉に頷く。
「ここはね」
「そうね。ここはね」
結局命も同じ考えだった。そしてそれはロンド=ベルの他のメンバーも同じであり今は艦内に待機してそのうえで待っているしかなかった。
その時ロジャーは農園に向かっていた。ドロシーもやはり一緒だ。
「もうすぐよ」
「わかっている」
ロジャーは車を運転しながらドロシーの言葉に応えていた。
「いよいよだな」
「いよいよ?」
「少なくとも何かがわかる」
彼はこうドロシーに応えた。
「この街の秘密の何かがな」
「わかるのね」
「一つ気になることがある」
ロジャーはここでまた言った。
「四十年前の謎」
「それのことでなのね」
「そうだ。あの時私は言われた」
先に農園に来た時の話だった。
「依頼されたと」
「そういえばそうだったかしら」
「それだ。何を依頼されていたかだ」
彼はまた話す。
「あの彼に。一体何を」
「それがわからないのね」
「有り得ないことだ」
彼はまた言う。
「私が依頼を受けてそれを覚えていないということはだ」
「そのことが有り得ないの」
「そうだ。何を依頼されたのだ?」
自分で自分に問うた言葉であった。
「私は。彼に」
「それを確かめに行くのね」
「その通りだ。話してくれるかどうかはわからない」
それは不明だというのだ。
「だが」
「だが?」
「それでも行く価値はある」
こうも言う。
「行かなければ何もなりはしない」
「だから行くのね」
「何かがなるには何かをすることだ」
彼の持論の一つであった。
「だから今私はそれをする」
「そうなの」
「そうだ。さて、もうすぐだ」
もうその農園が見えてきていた。黄金色の麦畑がそこにある。
「農園だ。行くか」
「わかったわ」
こうして二人は農園に入った。そうしてゴードンの家に入りそこで話をすることになった。コーヒーを差し出したゴードンはここでロジャーに対して言って来た。
「来ると思っていたよ」
「そうですか」
「アランと闘ったな」
そして今度はこう問うてきた。
「そうだな」
「御存知ですか」
「そうなることもわかっていた」
彼はこうもロジャーに話す。
「既にな」
「わかっていた」
「そう。全てはわかっていたのだよ」
彼はまたロジャーに話してきた。
「私が君に依頼したあの時から」
「それです」
ロジャーもそのことについて問うのだった。
「私が貴方から依頼を受けていた」
「うむ」
「私はそれを覚えていません」
このことを話すのである。
「全く。それは何時為されたのですか?」
「四十年前だよ」
彼はこうロジャーに告げてきた。
「四十年前にだ。依頼したのだな」
「四十年前!?」
ロジャーはこの言葉を聞いて顔を曇らせた。
「四十年前ですか」
「そうだ」
彼はまたロジャーに対して答えた。
「四十年前にだ。依頼したのだよ」
「そんな筈がありません」
ロジャーは彼の言葉を完全に否定した。
「私は二十五年しか生きていません」
「うむ」
ゴードンも彼の言葉に頷く。
「それはその通りだ」
「では何故」
彼にしては珍しくいささか言葉に感情が入っていた。
「四十年前に依頼をされているのですか」
「そこなのだよ」
不意にゴードンの言葉が止まった。
「問題はそこなのだよ」
「そこ!?」
「そう、そこなのだよ」
彼はまた言った。
「そこなのだ。君は二十五年しか生きていない」
「はい」
「それは絶対のことだ」
この前提をまず話の中に置いた。
「しかし。私は四十年前に依頼した」
「私に」
「そう。この街の謎を解くことを」
彼は話すのだった。
「依頼しているのだよ。私はそのことをはっきりと覚えている」
「しかしこの街の記憶は」
ロジャーはここでゴードンに対して述べた。
「四十年前の記憶がありません」
「その通りだ」
「では何故四十年前にその依頼を」
「それを確かめて欲しい」
彼はロジャーの目を見ながら告げた。
「そのことをな。いいかね?」
「依頼ですか」
「いや、依頼の再確認だ」
こう言うのであった。
「これはな。依頼の再確認なのだよ」
「では四十年前のその依頼をそのまま」
「頼めるだろうか」
あらためてロジャーを見つつ問う。
「この街の謎を解くことを。頼めるだろうか」
「それが依頼というならば」
ロジャーの返答はもう決まっていた。
「引き受けさせて頂きます」
「そうか。それは何よりだ」
「しかし」
だがロジャーの心の中の疑念は何一つ晴れてはいなかった。むしろそれはより深まっていた。
「全く何もかも」
「わからないのかね」
「ええ」
はっきりとゴードンに答えたのだった。
「貴方のお話ですと」
「言いたいことはわかっているよ」
「はい。私は四十年前にいたことになります」
彼はこのことにも言うのだった。
「この街に」
「そう。それは有り得ない」
ゴードンもまたそのことを言う。
「そうだな」
「はい、それは絶対に」
何故かということは既に二人はわかっていた。
「私は二十五です。それでどうして」
「それは私にもわからん。だからこそだ」
「そうですか。だからこそ」
「この街の謎を解いてくれ」
あらためてロジャーに告げた。
「頼むよ」
「わかりました」
ここでも頷きはした。
「それにつきましては」
「私にしろ間違いなく四十年前から生きている」
彼も自分の年齢はわかっていた。
「しかし。何も知らないのだよ」
「貴方もですか」
「君にそれを依頼したのは覚えているがその時以外の四十年前の記憶はないのだ」
「そして外の世界のことも知らない」
「外から出入りしている存在のことは知っているがね」
「では私が今仕事を依頼されていることもですか」
「ロンド=ベルだったか」
ゴードンは言ってきた。
「彼等のことかね」
「やはり御存知でしたか」
「知っているのは名前だけだ」
ゴードンは今はこう言うだけだった。
「それだけだ。君達の方が知っている筈だ」
「ですか」
「もっと言えばこの街の謎はここにいては解けないだろう」
「では。謎を解くには」
ロジャーは今のゴードンの言葉からあることを考えついた。
「外に出てみることですか」
「答えは中にあるだけとは限らない」
ゴードンも言った。
「外にあることもある」
「中には手懸かりになるものは乏しいものでした」
これはロジャーの今までの調査結果である。
「では外にですか」
「一度外に出てみればどうかな」
ゴードンもこのことを提案する。
「そうして探してみれば」
「そうですね。それでは」
「この街を出るのだね」
「そうしなければ謎がわからないのでしたら」
彼は述べた。
「出ましょう」
「わかった。それではな」
「はい」
こうしてロジャーは外に出ることになった。話はすぐに進みロジャーは自宅でこのことを凱やタケル、シュウに話した。三人はその話を聞いてから彼に述べた。
「ではロジャーさん」
最初に彼に言ってきたのはタケルだった。
「この街を出られるということは」
「うむ」
「俺達と一緒に出られるのですね」
「そのつもりだ」
こうタケルに答えるロジャーだった。
「それで謎が解決するのならばな」
「そうですか」
「中でわからないのなら外だ」
彼は言う。
「外に出てそのうえでこの街の謎を解明させてもらおう」
「そうか。ロジャーさんが俺達の仲間になるのか」
凱はこのことを考えるのだった。
「戦力としてかなり有り難いな」
「無論君達の戦闘にも協力させてもらう」
ロジャーもこのことにすぐに言葉を返した。
「外に出してもらって同行させてもらうのだからな」
「だからですか」
「それでいいか」
あらためて凱に対して問うのだった。
「外でのことは」
「はい、こちらはそれで」
タケルが彼に答えた。
「御願いします」
「わかった。それではだ」
「はい。では俺達と一緒に外に」
出ることになったのだった。
「行きましょう。外に」
「済まない。では早速外に出るとしよう」
「ロジャー」
ここでドロシーが彼に声をかけてきた。
「行くのね」
「うむ」
ロジャーはドロシーに顔を向けて応えた。
「そうだ。今からな」
「行ってらっしゃい」
「行くのは私だけではない」
だがロジャーはここで彼女にこう言うのだった。
「外の世界に行くのはな」
「どういうことなの?」
「君にも行ってもらう」
こう言うのだった。
「共にな。外の世界にな」
「そう。私もなの」
「嫌なのか?」
ロジャーはドロシーに対してまた問うた。
「それならいいが」
「いえ、御願いするわ」
彼女はこう彼に返したのだった。
「私も。外の世界を見てみたいわ」
「そうなのか」
「ええ。だから私も行かせてもらうわ」
あらためてロジャーに言うのだった。
「外の世界にね」
「よし。それではだ」
「旦那様」
「ノーマン」
「私も同行させて頂きます」
彼も言うのだった。
「それで宜しいでしょうか」
「来てもらえるのか」
「はい」
静かにロジャーの言葉に答えた。
「私がいなくてはビッグオーの整備ができません」
「それはその通りだな」
「そして家事も」
それもであった。
「ですから私もまた。同行させて頂きます」
「済まないな」
ロジャーは彼の言葉を受けて言った。
「ではこの家は完全に空けることになるな」
「私達がいなければこの家に何かをする者もいません」
ノーマンはこうも言った。
「ですから戸締りをしておくだけで」
「いいか」
「はい。それでは参りましょう」
ノーマンも乗り気であった。
「外の世界に」
「わかりました。それではです」
シュウがここで口を開いてきた。
「外の世界に出るとしましょう」
「そういえば貴方はパラダイムシティを自由に出入りできるのだったな」
「私のネオ=グランゾンの力の一つです」
それをはっきりと述べるのだった。
「それを使えば異なった世界への移動も可能なのです」
「ネオ=グランゾンか」
ロジャーはそのシュウのマシンの名を口にした。
「貴方のマシンもかなりの力を持っているようだな」
「さて。それはわかりませんが」
シュウは己のネオ=グランゾンの力についてはあえてぼかすのだった。
「ですがこの力によってまずは」
「外の世界に行かせてもらいたい」
ロジャーはシュウに告げた。
「それでいいな」
「はい。それでは」
「ではこれでまずは帰還ですね」
タケルがここで他の面々に対して言った。
「そして外の世界でまた」
「戦いが待っている。絶対にな」
「外の世界も何かと騒がしいのだな」
ロジャーは今の凱の言葉からこのことを察した。
「どうやら」
「騒がしくないと言えば嘘になりますね」
シュウがこうロジャーの今の言葉に対して答えた。
「実際様々な勢力が入り乱れています」
「そうか。やはりな」
「それでその勢力との戦いもありますが」
「それとこの街の謎を解く」
ロジャーはまた言った。
「そうなっていくな」
「やることが多いわね」
ドロシーがぽつりと述べた。
「外の世界は」
「だが。それは承知のことだ」
もうそれは受け入れているロジャーだった。
「だからだ。あえて行かせてもらう」
「では参りましょう」
シュウはここで立った。
「外の世界に」
こうしてロジャー達はロンド=ベルに合流しそのうえで外の世界に向かうことになった。そして海の底に待機している本隊と合流しようとするその時だった。
「むっ!?」
「これは」
「イールだ」
四人はそれぞれマシンに乗っている。その目の前の艦隊に不気味な長い身体のマシン達が無数に群がり襲い掛かっていたのである。
「長い間見ていなかったがここで出て来たか」
「ふむ。そうですか」
シュウはそれを見て言うのだった。
「どうやら何者かが私達を外に出そうとしていないようですね」
「外に?」
「はい。それが誰かはわかりませんが」
「ローズウォーター?」
ロジャーはふと彼の名前を出した。
「まさかとは思うが」
「さて。より大きな存在かも知れませんよ」
だがシュウはここでこう言うのだった。
「若しかしたら」
「!?それは一体」
「どういうことですか?」
この言葉に凱とタケルが顔を向けた。
「あの企業より大きな勢力が」
「この街にある?」
「さて、そこまではわかりません」
シュウの言葉は今はいつものはぐらかすものではなかった。
「私にも。そこまではわかりません」
「そうなのか」
「ですが。何者かがそう考えているのでしょう」
しかしこのことは言うのだった。
「どうしても私達をここから出さずに話を進めようと」
「考えているのか」
「だからです」
シュウはまた言った。
「外の世界に出るにはまず戦いましょう」
「そういうことか。それならだ!」
凱が最初に前に出た。既にガオガイガーに乗っている。
「やってやる。外の世界に戻る為にな!」
「ふむ。いいところで帰って来たな」
ここでリーの声がした。
「しかもビッグオーまで一緒か」
「あの艦隊のうちの一隻か」
「はい、そうです」
タケルがロジャーの言葉に答える。
「リー大佐です」
「ふむ、大佐か」
ロジャーは大佐と聞いて少し考える顔になった。
「では地位はかなりのものだな」
「まあそうですね」
だがタケルはそのことにあまり自覚はないようであった。
「うちの部隊じゃ階級はあまり関係ないですけれど」
「民間人も大勢いるからか」
「ええ、それで」
やはり理由はそれであった。
「それのせいで階級に関しては」
「そうか」
ロジャーはそれを聞いてまずは納得した。
「軍であって軍ではないか」
「俺もそうですし」
「君もか」
「はい。軍属ではないです」
こうロジャーに話した。
「実は」
「そうだったのか。軍人だと思っていたが」
「俺も違いますよ」
今度は凱が語った。
「軍人ではありません」
「そしてシュウ=シラカワ博士は」
「協力していたことはありますが違います」
やはりそうであった。
「私には軍は合いません」
「だろうな。それでは軍人の方が少ないか?」
「ええ、多分」
タケルがまたロジャーに対して答える。
「そうだと思います」
「成程、そういう組織か」
「それでどうされますか?」
今度問うてきたのはシュウであった。
「ロジャー=スミス」
そのうえで彼の名を呼ぶ。
「ロンド=ベルに入られますか?どうされますか?」
「それはもう決めている」
ロジャーはシュウの問いにまずこう答えた。
「私の答えは」
「貴方の答えは」
「入る」
一言であった。
「それはもう先に言わせてもらった通りだ」
「左様ですか」
「これから何が起こるのか」
ロジャーはそのうえで言うのだった。
「それは私にもわからない」
「はい」
「しかし。これは依頼だ」
その顔がさらに引き締まる。
「ならば。受けさせてもらおう」
「そう仰ると思っていました」
シュウは彼の言葉を聞いて微笑んだ。
「ではロジャーさん」
「うむ」
「行きましょう」
そうして彼を誘う。
「謎を解き明かしに」
「そうだ。だが」
「だが?」
「その前にやらなければならないことがある」
こう言うのだった。
「そうだな」
「はい、そうです」
シュウはすぐに彼の問いに答えた。
「それは」
「あのイール達を倒す」
既に前方では激しい水中戦になっていた。無数のイール達を相手にロンド=ベルの艦隊、それとマシン達が激しい戦闘に突入していたのだ。
「それをまずしなければ」
「じゃあロジャーさん」
ここでまたタケルが彼に声をかける。
「行きましょう」
「俺も行きます」
凱はもう前に出ていた。
「そしてあいつ等を」
「そうだ。だからこそ」
「さて、それではです」
シュウも言ってきた。
「ロジャー=スミスのロンド=ベルでのデビューとなりますね」
「そうだな。それではだ」
「やるのね、ロジャー」
「うむ」
傍らのドロシーの言葉にも頷く。
「ビッグオー、ショータイム!」
こう掛け声を出してそのうえでイール達に突っ込む。早速拳で彼等を次々と倒す。
「!?ビッグオー!?」
「もう来たのか」
既にロンド=ベルの面々も彼の参加は聞いていた。それには驚きはしなかったが彼が今ここに来たことについては驚いていた。
「早いな」
「まさかこんなに早く」
「私は決断は早く下す主義だ」
ロジャーは彼等の言葉に応えて述べた。
「だからこそだ」
「そうですか。それで」
「今ここに」
「その通りだ。ではやらせてもらう」
既に戦闘に入っており動きは的確だった。
「これからの謎を解く為に」
こうして彼はロンド=ベルに加わることになった。イール達は瞬く間に壊滅させられロンド=ベルは陣形を整えた。その彼等の前にシュウのネオ=グランゾンが立つ。
「それでは皆さん」
「いよいよってわけかよ」
「はい、そうです」
こうマサキの言葉にも応える。
「元の世界に戻ります」
「東京ジュピターのある世界になのね」
「そうです。その世界です」
遥の言葉に頷いてみせる。
「その世界に」
「わかったわ」
遥はその言葉を聞いて頷いた。
「それじゃあ」
「何か思えば短かったか?」
オリファーがここで言った。
「ここにいたのは」
「そうね。私達は今の戦いまで出番がなかったし」
マーベットが夫の言葉に応える。
「いるだけだったっていうこともあるけれど」
「そうだな。だが向こうの世界に戻れば」
「ええ。また戦いね」
マーベットの言葉が強いものになった。
「彼等との」
「そのガルラ帝国のだな」
ロジャーは二人の言葉に応え述べた。
「彼等との戦いがあるのか」
「ええ、そうよ」
「その通りだ」
二人もロジャーの問いに返す。
「かなり勢力は大きいから」
「数は覚悟しておいてくれ」
「それはわかっている」
そのことも既に聞いているロジャーであった。
「もう。それもまた」
「知っているのよ」
ここでドロシーも言ってきた。
「ロジャーは。外の世界での戦いは」
「おっ、それなら話は早いよな」
ジュドーがドロシーの声を聞いて明るく述べた。
「もう知ってるんならよ」
「しかし外の世界のことは知らない」
だがロジャーはこうも言った。
「そのことはな」
「戦いは知っていて世界は知らない」
カツがその言葉に首を捻る。
「それって?」
「だから。あちらの世界での戦争のことは知ってるのよ」
クリスがそのカツに説明する。
「けれどね。それは知ってるけれど」
「どんな社会かは知らないってことですか」
「そういうことよ」
ここでカツの言葉に対して頷いた。
「これならわかるわよね」
「ええ、まあ」
カツもそう言われてわかったのだった。
「そう言われれば」
「そういうことなのよ」
「そうだったんだ」
バーニィが今のクリスの言葉を聞いて声をあげてきた。
「それでか。戦いは知ってるけれどっていうのは」
「バーニィもわからなかったの?」
「かなりね」
これまた正直にクリスに述べる。
「何か変なこと言ってるなあってさ」
「何でわからないのよ」
クリスはバーニィのその言葉を聞いて述べた。
「すぐにわかるじゃない」
「そうか?」
だが彼はその言葉にも首を捻る。
「俺はちょっと」
「やっぱりわからなかったの?」
「今のクリスの言葉聞くまではさ」
また答えるのだった。
「ちょっとね」
「けれど今はわかるのね」
「ああ」
これは認めた。
「わかるよ。ちゃんとね」
「そう。だったらいいけれど」
とりあえず今の返事で安心するクリスだった。
「じゃあとにかくシュウさん」
「はい」
「これからですよね」
「はい、戻ります」
クリスに対して答える。
「皆さん」
「ああ」
「いよいよだな」
「そうです。いよいよです」
微笑んで彼等に述べてきた。
「元の世界に戻ります。それでは」
ネオ=グランゾンの身体を白い光が包みだす。そしてその光はすぐにロンド=ベル全体をも包み込んでしまいその中に消えるのだった。
「いよいよか」
「ええ、そうね」
「戻るのね」
皆こう言い合う。
「またあの世界に」
「さて、どうなってるかしら」
ルナが不意に言った。
「ドーレムはいなくなったけれど」
「ドーレムはね」
ミヅキがその言葉に応えてきた。
「確かにいなくなったわね。まずは一つね」
「けれどまだ天使とガルラ帝国がいるから」
それでも敵はいるのだった。
「あの連中も早く倒さないと」
「ええ、確かに」
「へっ、誰もいいぜ」
ここでエイジが威勢のいい声をあげる。
「どいつもこいつも出て来た端からぶっ潰してやるぜ」
「そうやっていつもこけてるじゃない」
またルナに突っ込まれる。
「何度同じこと言ってるのよ」
「うるせえ!」
そしていつもと同じパターンで言い返す。
「どうして手前はいつもよそうなんだよ!」
「いつもなのはあんたじゃない!」
これまたいつものパターンであった。
「何でそんなに馬鹿なのよ!」
「俺の何処が馬鹿だ!」
「いつもこうなのか」
ロジャーは二人の口喧嘩を見て周りに問うのだった。
「彼等は」
「ええ、まあ」
「他にもこうした面々がいますけれど」
皆も実に正直にロジャーに答える。
「ですからそんなに御気になさらずに」
「本当にいつものことですから」
「思っていたより賑やかな部隊のようだな」
ロジャーはそうした話も聞いて呟いた。
「どうやら」
「それでは宜しいですか?」
シュウが話が一段落したと見て一同に声をかける。
「行きますよ。元の世界へ」
「あ、ああ」
「それじゃあ」
こうして彼等は元の世界へ戻りロジャーにとっては新たな世界に向かうことになった。こうして彼等はパラダイムシティを後にしたのだった。

第百十三話完

2009・3・11



 
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