スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百八話 青い血の謎
第百八話 青い血の謎
「補給だ補給!」
「わかってるさ!」
ディアッカに対してミネルバのクルーが叫ぶ。
「だから待ってろ。今やってる」
「整備はいけるよな」
ディアッカはそのミネルバの格納庫で己のフリーダムを見つつ整備員達に尋ねていた。
「今回も派手にやったからな」
「一応それもやっておいたからよ」
「おっ、悪いな」
「しかしな。ディアッカ」
だがそれでも彼等は不機嫌な顔で彼に言うのだった。
「御前これはまた」
「んっ!?どうしたんだよ」
「派手に撃ちまくったんだな、ミーティアで」
こう言うのである。
「ミサイル空だぞ。全部使ったのかよ」
「ああ。あるだけはな」
本人もそれを認めた。
「ビームもかなり使ったけれどな」
「戦い相当激しいんだな」
「ああ。それはな」
真剣な顔で彼等に言葉を返す。
「マジですげえことになってるぜ」
「そうか、やっぱりな」
整備員達はディアッカのその言葉を聞いて納得した顔で頷いた。
「こっちもすげえからな」
「ああ。ミネルバも相当被弾してるしな」
それだけ戦いが激しいということである。
「それはわかるさ」
「こっちもな」
「そういやミネルバもあちこちやられてるな」
ディアッカは戻る時に見たミネルバの外装を思い出していた。
「どの艦もそうだけれどな」
「だからわかるんだよ」
「そっちのこともな」
「そういうことかよ」
「ああ。それでディアッカ」
「何だ?」
話が変わった。
「これが終わったらすぐに出撃だけれどな」
「ああ」
「綾人さんはどうなんだ?」
話は彼についてのものになった。
「あの人。大丈夫か?」
「一応はな」
ディアッカはこう彼等に言葉を返した。
「大丈夫だぜ。あの九鬼っておっさんとの戦いの後連邦軍の方に戻ったさ」
「そうか」
「それで一時整備補給を受けてるぜ」
このことも話すのだった。
「とりあえずはな」
「そうか。じゃあとりあえずは大丈夫なんだな」
「あの人はずとこっちにいてくれるさ」
ディアッカはここでこう言った。
「絶対にな」
「確信してるんだな」
「そっちはどうなんだよ」
「まあ俺もな」
「それもな」
実は彼等もそれは同じだった。
「遥さんとのやり取り見ていたらな」
「やっぱりな」
「だろ?今のあの人は大丈夫さ」
このことをまた言うのだった。
「もうな。けれど遥さんもなあ」
「ああ。まさか戦闘に参加するなんてな」
「しかも操縦かなり上手いみたいだな」
「一人でも大丈夫だな」
そこまで言い切るディアッカだった。
「あの人もな。じゃあそろそろ整備と補給終わったか?」
「ああ、いいぜ」
「そろそろだな」
「そうか。じゃあもう出るか」
ディアッカはすぐにコクピットに向かった。
「敵は待っちゃくれねえしな」
「ディアッカ」
ここでニコルがディアッカに声をかけてきた。
「そろそろ行きましょう」
「ああ。そっちも準備できてるよな」
「はい、今終わりました」
ニコルもそれは同じだった。
「デスティニーの整備と補給は」
「よし、じゃあ行くか」
「はい」
ニコルはディアッカの言葉に頷いた。
「今度で東京ジュピターに入りたいですね」
「そうだな」
こんな話をしながら彼等は出撃するのだった。出撃した彼等はそのまま東京ジュピターを包囲する形で布陣した。だがドーレムはまだ出て来てはいない。
「あれっ、まだかよ」
「そうみたいだな」
健一が豹馬に対して応える。
「だが。レーダーの反応は」
「かなりだな」
豹馬はここでコンバトラーのレーダーを見た。
「東京ジュピターから今にもな」
「すぐに来る」
それはもうわかっているのだった。
「本当に今にもな」
「じゃあよ、健一」
豹馬はあらためて健一に声をかけた。
「もう武器は出しておくか」
「ああ、そうしよう」
実際にコンバトラーとダイモスはそれぞれ剣とランサーを出していた。
「そして今度こそ」
「東京ジュピターだ」
「よしっ」
大文字もまた声をあげる。
「では諸君」
「はい」
「それじゃあ」
「攻撃準備に入るのだ」
まずはこれだった。
「来ました」
「そうか」
そしてこの時だった。
「東京ジュピターから来ます」
「よし、全機攻撃用意!」
大文字が命令を出す。
「これを最後の戦いにしよう」
「東京ジュピターの!」
こうして今再び東京ジュピターでの戦いがはじまるのだった。ロンド=ベルは早速ドーレム達に対して戦いに入る。その中には綾人もいた。
「綾人君」
「はい」
ラーゼフォンの横にいるアリエルからの声に応える。
「いいわね」
「わかってます」
正面を見据えたまま彼女の言葉に頷いた。
「これで。最後ですね」
「どうやら全てのドーレムを投入してきたみたいね」
見れば東京ジュピターからこれまでにない数のドーレムを出してきていた。
「だから。ここで」
「はい、決戦ですね」
「そうよ」
遥は綾人に対して告げた。
「それに特殊なドーレム達も来ていますし」
「んっ!?」
ここで綾人は見た。
「あのドーレムは」
「あれは」
遥もまたそのドーレムを見た。それは。
「何なの?あの禍々しいシルエットのドーレムは」
「何か。剣呑なものが」
「また援護に回る?」
エルフィが遥に問うてきた。
「どうするの?」
「いえ、それはいいわ」
だが遥はそれは断った。
「そっちもそっちでドーレム達を相手にしているのよね」
「ええ」
そのことは否定できなかった。エルフィ達も目の前にドーレムの大軍があり彼等と戦闘に入っていた。四機で何とか抑えているのだった。
「じゃあいいわ」
「いいの?」
「ええ、ここは綾人君に任せて」
また言うのだった。
「ここはね」
「そう。それでいいのね」
「ええ、いいわ」
遥の言葉は毅然としたものだった。
「だから。そちらを御願い」
「了解」
そこまで言われては引くしかなかった。エルフィはそのまま下がりそうして小隊のメンバーと共に敵に向かう。綾人は遥と共にその禍々しいドーレムに向かうのだった。
「このドーレムは」
「神名」
そのドーレムから声がした。
「まさか御前と戦うことになるなんてな」
「!?その声は」
「そうさ、俺さ」
「鳥飼!」
綾人はわかったのだった。
「どうして。この戦いに」
「俺もムーリアンだ」
これが鳥飼の返答だった。
「これでいいか?」
「まさか・・・・・・青い血に」
「朝比奈もそうだっただろ?」
彼はここであの少女の名前を出した。
「それと同じさ。俺もそうだっただけだ」
「そんな・・・・・・」
「あいつは生きているな」
今度は彼女のことを尋ねてきた。
「そうだな」
「うん」
鳥飼の問いに素直に答えた。
「けれど。俺はあいつを」
「死なせるところだった」
鳥飼も言う。
「御前がな」
「・・・・・・・・・」
「そして今御前はそこにいる」
綾人を責めるような言葉だった。
「ムーリアンとしてでなく赤い血の奴等の側にな」
「血の色なんて関係ないんだ!」
綾人はここで叫んだ。
「僕は。人間だ!」
「人間か」
「そうだ。青い血でも人間なんだ!」
彼は言うのだった。
「血の色なんて関係ない。力も!」
「戯言だ」
鳥飼はそれを完全に、頭から否定した。
「俺達は青い血を持っているムーリアンだ。それ以外の何でもない」
「何故だ、何故わからないんだ」
「それは俺の台詞だ」
鳥飼はまた頭から彼の言葉を否定した。
「御前は何を考えている?」
「何って?」
「ムーリアンであることを否定してな」
「否定なんかしちゃいない」
綾人は鳥飼の言葉に反論する。
「俺には青い血が確かに流れている」
「それこそが何よりの証だ」
「だから違うんだ!」
綾人もまた引かなかった。
「そんなのは何にも問題にならないんだ。人間は血の色なんかで決まらないんだ!」
「じゃあ何で決まるっていうんだ?」
「心だ!」
はっきりと言い切った。
「人間は心で決まるんだ。人間だって!」
「じゃあ俺は何だっていうんだ?」
「確かにムーリアンさ」
それは否定しなかった。
「けれど。御前も人間なんだ」
「御前と同じ人間だっていうのかよ」
「そうだ」
また言い切った。
「御前も人間なんだ。絶対に」
「そしてあいつもか」
「そうだ、朝比奈だって」
朝比奈についても彼の考えは同じだった。
「人間なんだ。俺と同じ!」
「なら見せてみろ!」
鳥飼が動いた。
「この俺にな。その人間ってやつをな!」
「綾人君!」
「死ね綾人!」
鳥飼のドーレムは綾人のラーゼフォンに接近した。
「裏切り者としてな!」
「僕は死なない!」
綾人もまた前に出た。
「何があっても!」
「無駄だ!」
そのラーゼフォンに鳥飼のドーレムの隠し腕が迫る。
「この俺の腕から逃れられはしない!」
「危ない!」
遥が叫んだ。しかしそれよりも速く異変が起こった。その異変は。
「なっ!?」
「光!」
突如としてラーゼフォンを光が包んだのであった。
「光がラーゼフォンを!?」
「これは一体!」
「まさか」
東京ジュピター側では神名がその光を見て呆然としていた。
「もうはじまるなんて」
「はじまる」
ここでまた声がした。
「最後の審判が」
「久遠!?」
「私か」
その少女久遠は言うのだった。
「彼が。どちらが生き残るか」
表情を消した虚ろなもののまま言葉を続ける。
「それにより世界が」
久遠は己の服を脱いだ。そうして庭園の池に足を進める。その青い池に。
光は次第に消えていく。その光が完全に消え去った時ラーゼフォンはその姿を変えていた。そこにいるのは彼そのものであった。
「綾人!?」
「綾人君!?」
ロンド=ベルの面々もそれを見て驚きの声をあげた。
「ラーゼフォンが綾人になった!?」
「これって一体」
「どういうことなんだ、これは」
鳥飼もそれがどうしてか全くわからなかった。
「神名、御前は」
「・・・・・・・・・」
ラーゼフォンになった綾人は答えない。何も答えようとはしなかった。
だが鳥飼は違った。そのラーゼフォンに対して動いた。そうして一気に倒そうとする。だが。
「ラアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「何っ!」
綾人は突如として歌った。その歌はただの歌ではなかった。
激しい衝撃波のようにもなっていた。そしてその衝撃により鳥飼のドーレムは各部をボロボロにされた。それにより彼はその動きを完全に止めてしまった。
「馬鹿な、この俺が」
「鳥飼・・・・・・」
綾人の声が出される。
「俺が倒されるだと・・・・・・」
「下がるんだ」
綾人の声がまた出された。
「もう闘うことは出来ない筈だ」
「うう・・・・・・」
だがそれでも鳥飼は引こうとはしない。まだ前に出ようとする。しかし。
「下がりなさい」
神名も言うのだった。
「鳥飼君、下がりなさい」
「しかし!」
「これ以上の戦闘を続けたら死ぬわよ」
神名はまた彼に言うのだった。
「だから。下がりなさい」
「俺は神名に負けるわけにはいかない」
鳥飼は身体のあちこちから青い血が流れていた。しかしそれでもまだ立ち上がろうとしていた。闘う意欲はまだ失ってはいなかったのだ。
「あいつには。俺こそが」
「これは命令よ」
神名の言葉がさらに強くなった。
「わかったわね。下がりなさい」
「くっ・・・・・・」
「死ぬことは許さないわ」
言葉はさらに強くなった。
「いいわね」
「何故ですか!?俺は」
「人間だからよ」
今度の言葉は絶対のものだった。
「貴方も。人間だから」
「俺が・・・・・・人間・・・・・・」
「そこまで綾人に、いえあの娘によね」
「朝比奈・・・・・・」
彼にはすぐにわかった。
「あいつに・・・・・・」
「彼女が綾人に行為を持ってるのに気付いているわね」
「はい・・・・・・」
このことは素直に頷くしかなかった。
「その通りです」
「だからこそよ。貴方は人間よ」
「だからだというのですか」
「誰かを好きになりその誰かに執着する」
神名はまた言う。
「それが人間でなくして何というの?」
「くっ・・・・・・」
「わかったわね」
これが止めになった。
「下がりなさい。そして生きなさい」
「生きるというのですか」
「そうです。人間として」
また言うのだった。
「生きなさい。他の皆もね」
「他の!?」
「戦闘は終わりです」
神名は今度は全てのムーリアンに対して告げた。
「ですから。これで」
「しかし博士」
「それは」
周りの者達がここで神名を止めようとする。
「我等ムーリアンは」
「我等の悲願は」
「元よりそんなものはなかったのです」
神名の言葉は鳥飼に向けたものと同じく強く有無を言わさないものだった。
「ムーリアンであっても人間なのですから」
「人間・・・・・・」
「青い血」
今度はこの青い血について言及した。
「青い血が流れているというだけだったのですから」
「・・・・・・・・・」
これで終わりだった。東京ジュピターでの戦いは終わろうとしていた。しかし作戦はその中でも進行し続けているのであった。
「戦いは終わりました」
「うむ」
一色は八雲の言葉に頷いていた。
「そうだな。しかし」
「障壁ですか」
「そうだ。絶対障壁だ」
彼が言うのはそれだった。
「それを破り東京ジュピターに侵入する」
「今がその時ですね」
「そうだ。ドーレム達が退き戦闘に勝利した今こそがだ」
彼は冷静に戦局を見ていたのだった。
「その時だ。いいな」
「はい。既に準備は整っています」
八雲は彼に答えた。
「障壁を取り除く用意は」
「なら今こそだ」
一色はまた言った。
「発動しろ。いいな」
「了解です」
モニターに映る東京ジュピターをペンタグラムが包み込んだように見えた。それが消えた時には。他のものも消え去ってしまっていた。
「よし、やったぞ!」
一色は珍しく感情を露わにさせた。
「誰も為しえなかったことを私はやったのだ!」
「そうですね」
「今より東京ジュピターに侵入する!」
一色はあらためて全軍に指示を出した。
「いいな」
「わかりました」
また八雲が彼に答えた。
「それでは」
「ドーレムも消えたことだしな」
「いえ、待って下さい」
しかしここでキムが言ってきた。
「それは違うようです」
「何だと!?」
「見て下さい」
モニターの画面が切り替わった。
「あれを」
「何っ!?あれは」
「あれは一体」
一色だけでなく八雲も思わず声をあげてしまった。
「ラーゼフォン!?」
「いや、翼の色が違う」
一色はその新たに出て来たその白い存在の翼を見ていた。
「翼が黒い」
「しかもあれは」
八雲もまたその白い存在をさらに見ていた。
「少女!?少女のラーゼフォン」
「時間がないようですね」
その時如月はある場所にいた。
「どうやら」
彼がいたのは教会の前だった。周りには墓地があり緑が絨毯になっている。彼はそこにいて一人で教会の中に入ろうとしていた。
「これで一つの因果が終わる」
彼は一人呟くのだった。
「だからこそ」
そうして教会の扉を開いた。そこには二人いた。
「如月君か」
「はい」
まずはエルンスト=フォン=バーレムが如月に声をかけた。
「私です」
「何故ここに?」
「一つの因果を終わらせる為に」
彼は言うのだった。
「だからこそここに参りました」
「一つの因果だというのか」
「その通りです。私はかつて」
彼は言葉を続けた。
「一色君とそこにいるヘレナと三人で過ごしていました」
「今更何を言う?」
「だからこそです」
彼はまた言った。
「こちらに」
何かが終わろうとしていた。
そしてある場所では。彼が一人ことの成り行きを見守っているのだった。
「順調ですね。全ては」
「御主人様、ロンド=ベルから離れたのは何故です?」
「その方が都合がいいからですよ」
シュウは静かに微笑んでチカに告げた。
「今はね。一人の方が」
「だからだっていうのですか?」
「その通りです。それでですね」
シュウはさらに言葉を続ける。
「今ムーリアンの因果が終わろうとしています」
「やれやれってところですね」
「しかしまた一つ別の因果が現われようとしています」
「また一つ!?」
「そうです。これで東京ジュピターの因果が終わりますが」
シュウは言う。
「それと裏表になっている別の因果が出て来ます」
「といいますと」
「あの街です」
シュウは言いながら楽しげに笑ってみせた。
「あの街のことが。遂にです」
「そうですか。あの街がですか」
「あの街は誰もが知っていますが誰も何処にあるのかは知らない」
「そうなんですよね」
チカも首を傾げながら言う。
「まあ御主人様とあたしは知ってますけれど」
「また時が来ました」
シュウはさらに言う。
「私が動かなければならない時が」
「じゃあ御主人様」
「そうです」
チカの問いに頷く。
「行きますよ、東京ジュピターに」
「それであの街にですね」
「あの街にはとてつもない秘密があります」
シュウの目の光がこれまで以上に知的なものになっていた。
「この世界そのものに関わる」
「そのものにですか」
「そうです」
また言うのだった。
「そしてそれもまたわかる時が来るでしょう」
「そうですか。けれど」
「けれど?」
「向こうの世界もあっちの世界も」
チカはあちこちうろうろしだした。そのうえで言葉を続けるのだった。
「謎だらけですね。本当に」
「そうですね。しかし」
「しかし?」
「その謎は一つですよ」
「一つ?」
「はい、そうです」
またチカに言うのだった。
「全ての謎は一つに帰結しています」
「一つにって」
「そうです。全ては一つなのです」
「そうなんですか!?」
チカはシュウの話を聞いてまた首を傾げさせた。
「一つにって」
「それはおいおいわかります」
シュウはここでは深くは言わなかった。
「では。まずはチカ」
「はい」
「行きましょう」
こうチカに声をかけるのだった。
「その謎の一つを解く為に」
「とりあえずわかりました」
シュウとチカもまた再び動きだした。謎はまた新たな局面に向かっていた。東京ジュピターを巡る戦いも最後の段階に入っていた。そして青い血の謎も。
第百八話完
2009・2・20
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