スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百四話 さらば銀
第百四話 さらば銀
東京ジュピターに向かって進むロンド=ベル。しかしその彼等に思わぬ指示が下った。
「オーストラリアにですか」
「はい」
テッサが彼等に告げていた。
「至急向かって欲しいとのことです」
「というとドーラムが!?」
クルツが言った。
「また出て来たのか」
「いえ、彼等ではありません」
テッサはそれは否定した。
「今回はドーラムではありません」
「では天使が!?」
「奴等が」
彼等の敵はこの世界でもかなり多いのだった。それで天使達も話に出た。
「まさかここでも」
「出て来たっていうのかよ」
「彼等でもありません」
テッサは天使でもないというのだった。皆ここまで聞いて遂にわかった。
「そうか。奴等か」
「ガルラ帝国が」
「今海からシドニーに向かっているそうです」
「シドニーに!?」
「まずいな」
シドニーはこの世界においてもオーストラリア最大の都市なのである。そこを攻撃されれば損害も尋常ではないということである。
「それじゃあすぐに向かうか」
「そうね」
「はい。それでは一時東京ジュピターより進路を離れて」
「はい」
「そうして」
「オーストラリアに向かいましょう。市民の安全を優先させます」
「わかりました」
こうして彼等の方針が決まった。こうして彼等はすぐにオーストラリアに向かった。彼等はすぐに東南アジアを斜めに通ってそのうえでオーストラリアに入った。
「シドニーまでもうすぐなんだね」
「ああ」
エイジが斗牙に答えていた。
「そうさ。まああと一時間か二時間ってところだな」
「それでシドニーって街はどうなってるの?」
「今ガンダムマイスターが出てくれたわ」
ルナが斗牙に答える。
「それで止めてくれているけれど」
「ふうん、彼等がなんだ」
「そうなの。それでも」
だがここでルナの顔が暗いものになった。
「ガルラ帝国軍の数があまりにも多くて」
「どうかしたの?」
「街を守りきれていないの」
「連邦軍も来てくれているけれど」
今度はミヅキが言った。
「それに先発のマクロスクウォーターも先に向かってくれているけれどね」
「それでどうなったの?」
斗牙は特に感情を見せることなくさらに問うてきたのだった。
「シドニーは」
「かなりの損害が出ています」
テセラが暗い顔で述べてきたのだった。
「市民の間にも」
「ふうん、そうなんだ」
それを聞いても特に感じることのない素振りであった。
「市民の人達にもね」
「おい斗牙」
エイジはそんな彼を見て思わず声をあげた。
「御前それだけか?」
「それだけかって?」
「それだけかって聞いてるんだよ」
その驚いた顔でさらに言うのであった。
「御前、本当にそれだけか?」
「戦争で人が死ぬのは当たり前じゃないの?」
また言うのであった。
「それって」
「それも何もねえだろうが」
エイジの顔はさらに驚いたものになっていた。
「市民にかなりの犠牲が出てるんだぞ」
「うん」
「それがどうしたんだよ」
「どうしたもこうしたもって」
斗牙は相変わらずの様子であった。
「戦争で人が死ぬのは普通じゃない」
「普通っていうのかよ」
「戦争は勝ってこそじゃない」
今度はこう言う斗牙であった。
「それでどうしてそんなことを言うの?」
「御前・・・・・・」
「エイジ」
唖然とする彼にミヅキが言ってきた。
「斗牙はね。ずっとお城の中にいたから」
「いたから何だよ」
「世の中のことをあまり知らなかったりするのよ」
こう彼に告げるのである。
「だから。そうしたことも」
「知らねえっていうのかよ」
「ええ。だから」
言うのである。
「このことはね」
「ちっ、わかったさ」
エイジはここでは納得するしかなかった。
「しかしよ。今シドニーは」
「わかってるわ」
ミヅキもそれはわかっているのだった。
「一刻もね。早く行かないと」
「ああ、そうだな」
ミヅキの言葉には頷くことができた。
「早く行かねえとな」
「そうね。それはね」
「今マクロスクウォーターがシドニーに到着しました」
チュイルが報告してきた。
「たった今」
「そうか」
レイヴンがその言葉に頷く。
「では我々も急ごう。市民達の為にな」
「はい!」
ここで彼等は頷いたがそれでも斗牙は答えなかった。彼は表情を変えないままだった。
この時シドニーでは激しい戦いに入っていた。マクロスクウォーターとガンダムマイスター達が連邦軍と共にガルラ帝国と戦っていた。
「また一機だ!」
ミシェルが敵のマシンを一機狙撃して撃墜した。
「しかし。この数は」
「文句を言ってもはじまらないぞ」
そのミシェルにオズマが言う。
「その暇があったらだ」
「敵を倒せってことですね」
「そういうことだ」
彼が言うのはそういうことであった。
「今はな」
「わかってますよ」
言いながらまた敵を一機狙撃して撃墜するのだった。
「それはね」
「それならだ。ルカ」
「はい」
「敵の電子を妨害しろ」
「わかりました」
今度はルカに対して告げ彼もすぐに頷いた。
「敵の命中率を下げればそれだけ損害を減る」
「そうですね」
「そのうえで我々が前に出る」
オズマはこうも言った。
「いいな。さらに前だ」
「最前線というわけですね」
「そうだ」
彼は言葉を続ける。
「そして市民達から目を逸らさせるぞ。いいな」
「わかりました」
「それで隊長」
今度はアルトがオズマに声をかけてきた。
「ガンダムマイスター達ですが」
「うむ」
「連中もいますけれどどうします?」
「向こうは何と言っている?」
こうオズマに対して問うのであった。
「連絡は取れたか?」
「喜んで協力するとのことです」
ヘンリーがオズマに答えた。
「今そう通信が」
「そうか」
「僕達も地球を守る為に戦っている」
オズマのモニターにティエリアが出て来て答える。
「だからだ。ここは協力させてもらう」
「済まないな」
「それでそちらはさらに前に出るのか」
「ああ、そうだ」
オズマはまたティエリアに対して答えた。
「そうして一般市民から目を逸らさせる」
「わかった」
ティエリアは彼のその言葉に頷いた。
「それなら。僕達もだ」
「いいのか?」
「市民を守る為なら」
今度出て来たのはアレルアだった。
「それ位常識だ」
「そうか」
「少なくともあんた達の敵じゃない」
ロックオンも言ってきた。
「俺達はな」
「では共に前に出るか」
「よし、正面からな」
「行こう」
「おい」
アルトはここでダブルオーガンダムに声をかけた。
「あんたも前に出るのか?」
「当然だ」
刹那は感情のない声でアルトの言葉に答えた。
「俺達もそうして市民を引き付ける」
「そうか」
「そして倒す」
言葉は簡潔なものであった。
「それだけだ」
「よし、わかった」
アルトはそれだけ聞いてすぐにマクロスを前に出した。
「それではだ。行くぞ」
「俺も行こう」
こうして彼等は進んで前に出てガルラ帝国の面々を倒していく。激しい弾幕も今の彼等には全く効果がなく次々と倒していく。
「ルカ、やってくれてるね」
「有り難うございます」
ルカはカナリアの言葉に応えていた。
「電子妨害が効いてるね」
「はい、おかげで敵の攻撃がかなり軽減されています」
その通りだった。ガルラ帝国の攻撃は彼のバルキリーのジャミングによりその攻撃の効果をかなり減少させてしまっていたのである。
「けれど。数が」
「ええ、そうね」
カナリアもケーニッヒモンスターを駆りつつ答える。その重砲の射撃で敵を倒し続けながら。
「きりがないわね。これは」
「それにです」
ルカはさらに言う。
「また来ます」
「援軍ね?」
「はい、北です」
方角まで言うのであった。
「その数五千です」
「五千か」
クランはその数を聞いて顔を少し曇らせた。
「間に合うのか?本隊は」
「間に合ってくれると思いますけれど」
ルカの返答は暗かった。
「ですが。今は」
「ルカ」
ここでオズマがルカに声をかけてきた。
「はい、隊長」
「今は余計なことを考えるな」
こう彼に言うのであった。
「今はな」
「わかりました」
「そして生きろ」
オズマはこうも言う。
「何があってもな」
「生きろですか」
「死んでも何にもならん」
今度はアルトへの言葉だった。
「だからだ。いいな」
「わかってますっていうのが模範解答ですね」
「それ以外の言葉は許さん」
オズマも言う。
「わかったな」
「了解です。俺も死ぬつもりはないですから」
「わかったら無茶をせず真面目にやれ」
彼が言うのは結局のところこういうことだった。
「いいな」
「了解です」
「とにかく生き残るか」
ミシェルはここでまた狙撃を行い一機撃墜する。
「本隊が来るまでな」
「そうしましょう」
ルカが頷きマクロスクォーターの部隊はあらためて攻撃に入る。こうした攻撃と戦闘の中で三分が過ぎた。ここで刹那がアルトに通信を入れてきた。
「無事か」
「俺に聞いてるのか」
「そうだ、御前だ」
素っ気無い返答だが間違いなかった。
「生きてはいるようだな」
「まあな。そっちもな」
「俺のことはいい」
刹那の言葉の調子は相変わらずであった。
「俺は生きる」
「おい、まるで自分が絶対に死なないみたいだな」
「生きている限り戦う」
刹那はまた言った。
「それだけだ」
「そうか。まあこっちは大丈夫さ」
「ならいいがな」
「ああ。そしてだ」
「で、何なんだ?」
「ガルラ帝国の部隊がまた来る」
「何っ!?」
この言葉に驚いたのはアルトだけではなかった。
「北から来る部隊以外にもか?」
「まだいるのか」
「間違いありませんね」
ルカが深刻な顔でここで述べるのだった。
「レーダーに反応です」
「北か?東か?」
「南です」
こうオズマに答えた。
「南から来ます。かなりの数です」
「そうか。三方から来るか」
「はい、そうです」
また答えたルカだった。
「南北同時に攻めて来ます」
「まずいなんてものじゃないですね」
ミシェルはそれを聞いてもまだ冷静ではあった。
「この状況は」
「このままでは囲まれ」
クランも言う。
「私達は全滅だ」
「どうするかだ」
ヘンリーも自機のレーダーを見ていた。
「撤退しますか?艦長」
「いや、ここで退けば一般市民に損害が出る」
ジェフリーはそれは退けた。
「一般市民に犠牲を出すわけにはいかない」
「はい、そうです」
「ですから」
「撤退はない。いいな」
「わかりました」
「それでは」
彼等は撤退を選ばなかった。そうしてこの場に留まることにしたのだった。そうして二分が過ぎた。マクロスもバルキリー達もダメージを受けていく。だがそこでだった。
「待たせたな!」
「大丈夫ですか!?」
フォッカーと輝だった。そして彼等だけではなかった。
「ロンド=ベルか」
「来たんだね」
ティエリアとアレルヤが言う。
「どうやら持ちこたえたってわけだな」
「ああ」
ロックオンの言葉に刹那が頷く。ロンド=ベル本隊が遂に戦場に到着したのだった。
「用意はいいのう」
「勿論だぜ!」
「今か今かってな!」
兵左衛門の言葉に誰もが一斉に答える。
「さあ、早くよ!」
「シドニーも市民の人達もマクロスクォーターの連中も助けるぜ!」
「ですから早く!」
「それではじゃ」
彼等の言葉を受けて兵左衛門は大きく口を開いた。そして。
「全軍出撃じゃ!」
「よっし!」
「行くぜ!」
こうしてロンド=ベルは戦場に出て来た。すぐにその南北からガルラ帝国の大軍が挟み撃ちを仕掛けてきたが彼等はそれに臆してはいなかった。
「よし、来たな!」
「やってやるぜ!」
彼等はその大軍にそれぞれ向かい一気に総攻撃を仕掛けた。
「この程度ならな!」
「やれれないわよ!」
彼等はそのまま南北の軍勢を止めそのうえでアルト達とも合流した。やはりその強さは圧倒的なものがあった。
「相変わらず物凄い強さだな」
ロックオンが彼等の戦いぶりを見て言った。
「頼もしいのは確かだな」
「そっちも相変わらず元気みたいだな」
オデロがそのロックオンに対して言う。
「四人共健在ってわけか」
「ああ」
ロックオンはオデロのその言葉に対して頷いた。
「こちらも数多い戦いを経てきた」
「俺達とは別に戦っていたというわけか」
「そういうことだ」
ティエリアがトマーシュの言葉に答える。
「数多い戦いを経てきたがな」
「僕達も無事だ」
また言ったのはアレルヤだった。
「君達とそれは同じだ」
「皆無事なのはいいですが」
ウッソはこうは言ってもその顔は曇っていた。
「ただ」
「ただ?」
「貴方達四人だけですか」
彼が言うのはこういうことだった。
「この世界にいるガンダムは」
「言いたいことはわかっている」
その彼に答えたのはティエリアだった。
「我々の他の三体のガンダムのことだな」
「そうだ」
グラハムも言ってきた。
「君達以外の三人のガンダム。彼等の消息はわかっていないのか」
「こちらも知りたいところだ」
刹那が述べてきた。
「奴等が一体何処にいるのかはな」
「何かよくわからねえが消息不明か」
アレックスが今までの会話を聞いて言うのだった。
「まあ碌でもねえ奴等だったしな」
「・・・・・・・・・」
それを聞いて無言のルイスだった。
「一般市民を巻き添えにする攻撃なんてざらだったからな」
「はい」
シンルーも答える声は苦かった。
「その通りです。あの戦い方は軍人として最低です」
「その人達はいないのですね」
また問うウッソだった。
「今は」
「生きているんだろうがな」
ロックオンの言葉は突き放したものだった。
「それでも。戦っているかはどうかは」
「わからないですか」
「ああ。全くな」
また答えるロックオンだった。
「それはな」
「ですか」
「それよりもだ」
刹那が言う。
「今はここで戦うことだな」
「はい」
これはウッソもわかっていた。
「それじゃあ。今は」
「市民を守る為に戦う」
刹那の言葉はクールなものだった。
「いいな」
「わかりました」
こうして彼等は三方から来る敵軍をそれぞれ倒す。しかし敵は彼等だけではなかった。
「何っ!?」
「レーダーに反応!?」
ここで皆驚きの声をあげた。
「西から!?」
「まさか」
「いかんな」
兵左衛門の顔が曇った。
「今は三方だけで手が一杯だ」
「はい」
「だというのにここで」
「どうしたものか」
曇った顔で言う兵左衛門だった。
「ここで兵を西に割く余裕はないのじゃがな」
「ですが」
「わかっておる」
一平の言葉に対して頷く。
「仕方があるまい。キングビアルを分離させたうえで向かうか」
「はい」
こうして彼等がその西へ向かおうとする。しかしそれより先に彼等が西に向かっていた。
「おい、下がれ!」
神宮寺が何時になく感情的な声をあげた。
「今の御前等じゃ無理だ!」
「そうです!」
麗も言うのだった。
「今の貴方達では。とても」
「四人でも戦えるさ」
「そうです」
黄金と錫石が言った。
「足止め程度にはな」
「なれる」
青銅と黒銅も言う。
「だからな。ここは任せろ!」
「僕達が引き受けます!」
「西はな!」
「だからそちらの戦いに専念しろ!」
「冗談じゃないわよ!」
マリがその彼等に対して叫んだ。
「今のあんた達じゃ相討ちになるわ!下がって!」
「どうやっても。生き残れません」
猿丸の言葉が決め手になってしまった。
「ゴライオンは。四人では」
「ミスター、俺も行くよ」
洸が意を決した顔で言う。
「その間。頼むよ」
「洸、頼めるか」
「うん。一機じゃ駄目だけれど二機なら」
「いや、大丈夫だ」
しかしここでまた声がした。
「ゴライオンは。満足に戦える」
「何っ!?」
「どういうこと!?」
「俺がいる」
ここで一体の獅子が姿を現わしたのだった。
「俺も行くぞ!」
「何っ、銀!」
「馬鹿な!」
「馬鹿に馬鹿って言われたくはねえな」
戦場に姿を現わしたのは銀だった。その獅子もまた。
「お互い様だろ?それは」
「銀・・・・・・」
「本気か」
「御前、それでいいんだな」
「命には賭け時がある」
彼はこうも言った。
「それが今だからな」
「よし!わかったぜこの大馬鹿野郎!」
黄金が彼に対して告げた。
「それならな!一気に行くぜ!」
「よし!ゴライオン合体だ!」
「了解!」
今銀の獅子も合体しゴライオンは本来の姿に戻った。そして剣を手に持つとそのまま突き進むのであった。
「うおおおおおおおおおおおーーーーーーーっ!」
敵の真っ只中に入りそのうえで縦横無尽に斬り回す。
「いいか、黄金!」
「ああ!」
「一切手は抜くな!」
「わかってる!」
最早彼も覚悟を決めていた。そして銀の心を受け取っていた。
「何があってもな!」
「さもないと死ぬぞ」
銀はこうまで言った。
「敵は手強い」
「ああ」
「ここで俺達が負ければ後がない」
西にいるのは彼等だけだ。それで敗れればどうなるのかは言うまでもなかった。
「だからだ。手を抜くな」
「うおおおおおおおおおおおっ!」
ゴライオンは遮二無二剣を振り回して戦う。その間にロンド=ベルの面々は三方の敵を倒していく。シンクラインは後方の海から彼等を見ていた。
海の中に戦艦を置いてそこから見ているのであった。
「ふむ」
ゴライオンの戦いを見てほくそ笑んでいた。
「いい具合に進んでいるな」
「いい具合ですか」
「そうだ。見よ」
周りの部下達にゴライオンを見るように告げた。
「動きが鈍いな」
「確かに」
「普段と比べて」
「だからだ」
こう告げるのであった。
「先の戦いでの攻撃が効いている」
「そうですね」
「それでは」
「そうだ。これはいけるぞ」
ほくそ笑んでいるのが会心の笑みになった。
「これはな」
「ではこのままゴライオンに攻撃を続けるのですね」
「このまま」
「そうだ。このまま続ける」
また言うシンクラインだった。
「このままな。そうしてダメージを与えていき」
「そして敵を倒すのですね」
「その通りだ。いいな」
「はっ、それでは」
「そのように」
「まずはゴライオンを倒す」
シンクラインのその考えは変わらなかった。
「そのうえでだ。ロンド=ベルをゆっくりと料理する」
「ゴライオンを倒したうえでですね」
「そのうえで」
「ゴライオンがなければロンド=ベルの戦力はそれだけ落ちる」
これはその通りであった。
「そしてだ。そこに付け込み」
「ロンド=ベルも倒していくと」
「そのゴライオンには弱点もある」
今度はゴライオンの弱点にも言及した。
「ゴライオンは五人で戦うものだな」
「はい」
「その通りです」
「五人揃ってその力を完全に発揮する」
そのことも把握しているシンクラインだった。
「それならばだ」
「ゴライオンを倒すには」
「一人だけ倒せばいい」
これが答えであった。
「一人をな。つまりはだ」
「ロンド=ベルを倒すにはゴライオンを」
「そのうちの一人を」
「たった一人いなくなればそれでいいのだ」
シンクラインの考えの核心だった。彼はロンド=ベル全体を倒す為にあえてゴライオンだけを狙ったのだ。例えどのような犠牲を払おうともである。
「ならばだ。いいな」
「はっ、それでは」
「そのように」
「ゴライオンを倒す」
また言うのだった。
「いいな」
「了解です」
「それではこのまま」
「もうすぐだ」
シンクラインはまたほくそ笑んだ。
「その一人が死ぬ時はな」
こう言って選曲を見守る。確かにガルラ帝国のマシンはゴライオンの前に次々と倒されていく。だがそれ以上にだった。ゴライオンの傷はまた増えていたのだった。
「くっ・・・・・・」
「まだだ」
ゴライオンの面々は傷つきながらもまだ立っていた。
「まだ戦える」
「だから。俺達は」
「そうだ、まだだ」
銀も言うのだった。
「皆、俺は大丈夫だ」
「わかっているさ」
「それはな」
この場合は銀の心を見ての言葉だった。
「それじゃあな。今はな」
「頼むぜ」
「ああ。あともう少しだ」
見れば西にいるそのガルラ帝国の軍もその数をかなり減らしていた。
「だからな。ここは」
「頑張るぞ」
「よし、やってやる!」
黄金が一際確かな声をあげた。
「あと僅か!踏ん張ってやる!」
「その意気だ!行け黄金!」
銀は痛みを隠し彼に告げた。
「ここでな!やるぞ!」
「わかっている!銀!」
「ああ!」
「これがゴライオンの戦い方だ!」
こう叫びつつ剣を左右に上下に振るいそのうえで今斬りまくっていく。そして遂に最後の敵を両断したのであった。
「よし!終わりだ!」
「ああ、そうだな」
確かに最後の敵も斬った。銀もそれを見届けた。
「見事だったぜ、皆」
「銀・・・・・・」
「やりましたよ、僕達は」
「最後の一機までな」
「倒したんだ」
「ああ、倒した」
銀は四人の言葉を受けつつ微笑んでいた。
「確かにな。俺達はやったんだ」
「そうだ。御前の力もあった」
「じゃあ。後は大丈夫だな」
銀は微笑んでいた。
「皆、後はな」
「ああ、任せろ」
「僕達が後は」
「いるからな。だから」
「ゆっくりとな」
「少し疲れた」
今度はこう言う銀だった。
「だからだ。寝かせてもらうな」
最後にこう言い目を閉じたのだった。これが銀の最後だった。彼の死を見届けてかゴライオンは動きを止めた。シンクラインはそれを見てさらに笑うのだった。
「見よ、これでゴライオンは動きを止めた」
「はい」
「確かに」
「まずはこれでよし」
満足した笑みでの言葉であった。
「それではな。軍を撤退させろ」
「シドニーは宜しいのですか?」
「ロンド=ベルは」
「あの街には最初から何の興味もなかった」
彼は素っ気無く述べた。
「全くな」
「そうだったのですか」
「それよりもだ」
彼はさらに言う。
「ゴライオンのうちの一人が死んだ。これでいい」
「作戦目的は果たせたと」
「そういうことですね」
「その通りだ。だからこれでよいのだ」
また言うのであった。
「では。軍を退かせよ」
「御意」
こうしてシンクラインは兵を退かせた。確かにシドニーは護った。だがロンド=ベルにとってはあまりにも大きな犠牲であった。
「諸君」
グローバルが言う。今ロンド=ベルの全員がシドニー郊外に集まっていた。夕暮れの中で一つの墓標を前にして顔を俯けさせていた。
「それではだ」
「はい」
「敬礼!」
「敬礼!」
言葉が復唱され全員敬礼する。
「最後まで戦った我等の同志の為に!」
「銀・・・・・・」
ゴライオンの四人とファーラは墓標の前にいた。その十字架の前に横一列になっていた。
「じゃあな。俺達はまだ戦う」
「だから。そこで見ていて下さい」
「僕達の戦いを」
「御前の分まで戦うからな」
「何があってもな」
五人で言うのであった。銀は今ここで死んだ。ロンド=ベルは一人の戦士を永遠に失ったのであった。
第百四話完
2009・1・6
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