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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第二十二話~パラディン~

 
前書き

戦闘回です。
やっと、ライの本領発揮です。
ではどうぞ。 

 

目の前で敵意を向け合う2人を見ている。

その光景は1つの過去を思い出させる。

憎しみ合う親友、向け合う銃口、そして……見ていることしかできない自分。

あの時、自分は何もできなかった。そんな自分を憎んだ。

今、自分の前で起きようとしていることに自分は何ができる?

あの2人に何をしたい?

自分はどうしたい?

そう思ったときには駆け出している自分がいた。



機動六課・訓練場


自身に迫る桃色の砲撃に自らのバリアジャケットのコートを投げライはバックステップする。そのままビルの屋上から飛び降りる。
ライは落下しながらポケットからもう1人の相棒を取り出し、その相棒に産声を上げるよう声を掛けた。

ライ「パラディン、セットアップ。モード・アルビオン」

パラディン「ラジャー、セットアップ」

 声を掛けられた相棒は光を放つとライに新たな力を与える。
 光が収まるとライの両手、両足と背部に変化が現れていた。両腕には籠手、そして両足には脛の部分に装甲のようなものを装着している。どちらも白を基調に青いラインが入っている。
 そして背部には非固定浮遊ユニットになっている白い骨組み。特徴的なのは、そのユニットの付け根の部分に長方形の白いボックスがついていることである。
 最後にライの左手に収まるのは元の世界で親友が使い、自らも使用したヴァリスの改良型であるスーパーヴァリスを元にした大型のライフルが握られている。
 自分の新たな力を確認したライは一言つぶやく。

ライ「行くぞ。」

蒼月「イエス マイ ロード」
パラディン「ラジャー」

 短いやりとり終えるとその場からライの姿は消えていた。



 なのはは混乱する。

なのは(いつの間に彼は自分の背後をとったのだろう?)

 だがライは確かになのはの背後に回り込み、今は彼女を見下ろしている。

なのは(彼は飛行魔法を使えないのではなかった?)

 だが彼は確かに羽を広げ宙に浮いている。

なのは(あの光る羽はなんだろう?)

 ライの背中にはライトグリーンの羽が輝いている。

なのは(彼は何故未だに何も言ってくれないのだろう?)

 ライはただ何も言わずに左手に握ったライフルをなのはに向けるだけで口を開こうとはしなかった。

なのは「……さっき、ライ君は言ったよね。撃っていいのは撃たれる覚悟のある人だけって。なら私は今から君を撃つよ。」

ライ「……」

 あくまで無言を通し続けるライ。どちらも相手の様子を伺っているのか動こうとしない。だがその様子見は長く続かない。ライが一言つぶやいたのだ。

ライ「カートリッジ、ロード」

なのは「え!?」

 左右の羽の付け根からそれぞれ、1発の薬莢が排出される。そして次の瞬間になのはの視界からライの姿は消失した。

なのは「どこ、っ!」

 ライの姿を探すために首を振った瞬間、顔を向けた方向とは逆の方向から衝撃が来た。衝撃が加えらるとその勢いのままなのはは吹き飛ばされる。
 しかしなのはも実践と訓練を多く経験している。そのため、本能的に空中でブレーキをかけ反撃のためのスフィアを即時に生成する。その数12。すぐさま体制を整えライの姿を視界に収める。
 ライが足を振り抜いた姿勢になっているのを見て自分が蹴られたことをなのはは悟る。

なのは「アクセルシューター!」

 ライが体制を立て直す前になのはは反撃を開始する。
 生成されたスフィアが全てライを囲むように動き、全方位からライに迫る。
 なのはは最初こそライが飛んでいることに驚いていた。だがライが飛行魔法を戦闘で使うのは今日が初めてであるのを思い出し、空戦でよく行われるが陸戦では滅多に行われない全方位攻撃を使う。
 ライに向かって高速で迫るスフィアはどれもタイミングをずらし迎撃も回避も難しいものになっていた。
 なのはもそれを見ていたフェイト達も必中を確信したそれはライを捉え、そして……

“すり抜けた。”

「は?」

 そんな間の抜けた声は誰のものだったのか。そんな疑問も抱かない程目の前で起きたことを見た一同は理解できないでいた。
 なのはのアクセルシューターは確かにライに接触したように見えたが被弾することなくスフィアがライをすり抜けるのだ。そんな光景を一度も見たことが無いため戦闘中のなのはも呆けた表情をしている。
 アクセルシューターが全弾通り抜けライから少し離れる。その内のいくつかは廃ビルや地面に着弾する。残ったスフィアは再びライに向かう。
 そこで次にライのとった行動は迎撃であった。左手で握ったライフルをスフィアに向けライはトリガーを引く。
先端から発射されるのは通常のスフィアよりも一回り小さいものであった。さらに誘導性がないのか直線にしか進まない。しかし弾速は早く、連射もできるのか細かく方向転換し素早くアクセルシューターを撃ち落としていく。
最後の一発がライの間近に迫っていたがそれも蒼月の剣で一閃され落とされた。
一連の動作はまるでダンスを踊っているようで見る者全てを魅了した。そこでなのはは気づいた。先ほどよりもライの羽が薄くなっていることに。
その羽がさらに薄くなるにつれライは高度を下げていく。そこであの羽が推進力になっていると気づいたなのははその隙をつくように砲撃にはいる。
カートリッジを2発消費しライに照準する。

なのは「ディバインバスター!」

 即座に発射される砲撃。だがどこまでもライは冷静に対処する。

ライ「パラディン」

パラディン「カートリッジロード」

 今度はそれぞれ二発ずつ薬莢が排出され、再び翼が展開される。ライはその場で滞空するとライフルを構える。すると重心が縦に割れその間に一枚の魔法陣が展開される。

ライ「蒼月」

蒼月「演算終了、撃てます。」

ライ「パラディン、カートリッジロード」

 ライの指示でカートリッジが排出されたのは翼からではなく、手元のライフルから。

パラディン「コンプレッション」

 パラディンが発した言葉はその場にいた誰もが聞き覚えのないもの。

ライ「シュート」

 短い言葉と共に引き金を引き魔力弾が放たれる。その弾丸は先ほどアクセルシューターの迎撃に使われたものよりさらに小さい魔力の弾丸。それがなのはの放ったディバインバスターと正面から激突する。
 なのはの実力と魔法戦闘を知っているものであれば、カートリッジを2発消費し放たれた収束魔法とカートリッジを1発消費されて放たれた魔力弾が正面からぶつかりどうなるかは実際に試してみるまでもなく結果を予測するだろう。
だが誰も予測できない結果が起きる。
 正面からぶつかり合った結果、ディバインバスターが裂かれた。
 そのままディバインバスターを裂いた魔力弾は呆然としているなのはに向かい着弾、炸裂する。
 そして煙が晴れるとそこにいるのはバリアジャケットの節々が損傷しボロボロになっているなのはの姿であった。




 目の前で繰り広げられる戦闘を見ている一同は声を出すこともできずにただ見ているしかできなかった。
 その場にいる全員の頭に渦巻くのは驚愕という感情。

 だれが予測できるのだろうか?

 エースオブエースと呼ばれ確かな実力を持った高町なのはが一方的に翻弄される姿を。

 だれが考えることができるだろか?

 たった数ヶ月しか魔法を使ったことのない素人が10年のキャリアを持つエリートに競り勝つほどの実力を持っていると。

 だがそれは実際に起こっている現実。自分の目で見た真実である。
 やっと現実を受け入れることができたのかフェイトが話し出す。

フェイト「ライは“何”をしたの?」

 それはその場にいる誰もが思っていること。しかしその答えを知る者は誰もいない。

ヴィータ「知るかよ!こっちが聞きてーぐれーだ!」

 ライの割り込みがよっぽど気に食わなかったのかヴィータは声を荒げる。
 ここから見ているだけでは何も知ることはできない。それは分かるが見ていることしかできない自分たちに苛立ちを覚え始めた頃、なのはが再び話始める。
 だがそれは冷静さをかなぐり捨てた彼女の本音。

なのは「どうして……どうして貴方は私を否定するの!?そんなに私の考えが気に食わないの!?」

ライ「……高町なのは」

 そこで初めてライは口を開く。

ライ「君の教導の目的と方法は正しい。」

なのは「え?」

 ライの思いもよらない言葉になのはは呆けた顔をする。

ライ「だが、君は何故ティアナに言葉を与えなかった?何故、自分の考えを教え子である彼女たちに伝えなかった?」

なのは「それは――」

 ライはなのはの教導が何を目標とし、そして何を目指しているのかは気付いていた。だがそれはなのはが行っている訓練を外側から見ていたから気付けていたこと。実際に受けていたメンバーは訓練の厳しさと内容に集中してしまい長期的な結果を分析することは難しかったとさえ言える。現にライもそれに気付くことができたのはつい最近なのだ。

ライ「態度だけでは伝わらないこともある。彼女のことを信じるのは君の勝手かもしれない。だが信じていたのなら何故先ほどは力でねじ伏せようとした?」

なのは「……」

 ライは力ではなく言葉でなのはを追い込んでいく。

ライ「君の考えは僕にはわからない。だけど――」

 ライが言葉を続けようとしたが、それよりも先になのはの感情が爆発した。

なのは「大切なものを失いそうになったこともない人に私の気持ちなんてわからない!!」

 それを聞いてフェイトとヴィータは固まった。




ライ「……」

なのは「ハァハァ」

 自分の感情を爆発させ、力任せに叫んだせいでなのはは肩で息をしながら俯いている。それを見つめているライは今までの強い言葉ではなく、どこか悲しみを込めた弱々しい声で呟く。

ライ「確かに僕は失うことを悲しむ資格なんてない……」

なのは「え?」

それはなのはにしか聞こえなかった。
その今までに聞いたことのない程の悲しみの感情が込められた言葉に反応し顔を上げるがそこに残っているのは緑の軌跡のみ。次の瞬間、なのはの意識は途切れた。
 
 

 
後書き

なのはが叫んだ最期の言葉ですがあれは別に彼女の本心ではなく、子供の癇癪程度に考えてください。
本当はここで狂王としてのライを出すつもりでしたが、内容がかさばる気がしたので取りやめました。

あと二、三話でライの過去編(コードギアス、R2)をするつもりなのですが、しっかり語ったほうがいいですか?
そのことでアンケートを取るので答えて頂けたらと思いますm(_ _)m

①話数が多くてもしっかり書くべき

②話数少なめで話の進行を優先すべき

③話の進行と平行に小出しにすべき

以上です。最後に「あのキャラを出して!」とか「ギアスのあの設定を是非!」とかあれば参考にしますので気兼ねなく仰っていただければと思います。

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