リリカルなのは~優しき狂王~
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第二十一話~すれ違い~
前書き
更新スピードがガンガン遅れてきている作者です(--;)
リアルの方でいろいろやっているので物理的に無理なところがあるのですが執筆時間をできるだけ取れるようにしていくので生暖かい目で見守ってくれたらと思います。
では本編どうぞm(_ _)m
機動六課・デバイスルーム
この日、スターズFとライトニングFのペアがそれぞれ模擬戦を受ける日にライはデバイスルームに足を運んでいた。
部屋にいるのはライともう一人、ライが機動六課に協力することになってからおそらく最もライと一緒の時間が長いリインフォースである。
リインフォース「どうぞ。」
そう言うとリインフォースはライに一つのデバイスを渡す。それはライが以前から開発していた、蒼月と対になるデバイスであった。
そのデバイスの待機状態は元の世界ではライにも縁があるが、最も縁があるのはスザクである。その形状はランスロットの起動キー。その手に馴染みすぎている重さに若干の懐かしさを覚える。だがその思考もすぐに切り替え、リインフォースにお礼を言う。
ライ「ありがとう、リインが調整してくれたおかげで思ったより早く完成できた。」
リインフォース「いえいえ、元々の基礎プログラムはライさんが組んでいたので微調整だけでしたから。」
ライの怪我の治療中、ライはデバイスルームに入室することはできなかった。入ろうとすると“何故か”近くにいるはやてやフェイトに注意されて病室に連行されてしまっていたのだ。その為、ライがやろうとしていた作業はリインフォースが代わりに行っていた。しかしリインフォースが言っていたようにホテル・アグスタでの任務以前からライはそのデバイスの作業をしていたため、彼女が行うのは精々微調整のみであった。
リインフォース「ところでライさんはこれから訓練場の方へ?」
ライ「ああ、スバル達の模擬戦の後にフェイトと模擬戦をする約束があるから。」
シグナムとのやりすぎ気味な模擬戦は既に機動六課内では誰もが知るものになっていた。しかしそれを知り黙っていなかったのがシグナムと同じく他人と競い合いながら高みを目指すことが好きな(平たく言えばバトルジャンキー)フェイトであった。
フェイトは始めてライとシグナムとの模擬戦を見てから何度か「ライと模擬戦をしたい。」と思っていた。思っていたのだが、執務官の仕事やらなにやらで結局言い出せないでいたのだ。それに加えて、ライの過去の一端を知っている彼女からしてみれば戦闘に関する頼みごとをするのは気が引けていた。だがそんな考えはシグナムの話を耳にしてから吹き飛んだ。
それからの行動は早かった。ライの怪我が治ってからフェイトはライと約束をしたのだ。「都合の着いた時にライと模擬戦をする。」と。そして本日、フェイトの仕事はフォワード陣の教導の手伝いだったので、その後にライとの約束を予定していた。
ライからフェイトとの約束を聞いたリインフォースは苦笑いを浮かべながらも、デバイスルームから訓練場に向かうライに手を振り見送った。
機動六課・訓練場
ライが訓練場に到着するとそこにあるのは廃棄都市。もちろんそれは本物ではなく機動六課が保有する空間投影シミュレーションである。
ライはその廃棄都市の中にあるビルの一つに入っていく。そしてそのビルの屋上に向かうとそこにいるのはヴィータ、エリオ、キャロ、フェイトの4人。4人は今現在行われているなのはを相手にするスバルとティアナの模擬戦を見ている。
しかしそこでライは気付く。フェイトとヴィータの2人がしきりに首を捻っているのだ。不審に思ったライも2人の視線の先で繰り広げられている模擬戦を見る。
そこにあったのはいつも訓練で行われている安定性のある戦術ではなかった。我が身を顧みずに敵を倒すことだけを考えている戦術。それをスバルとティアナの2人はその危険性に気付いた素振りも見せずに使っていた。
それを確認したライは2人が首を捻っていることに合点がいった。ライが納得している間も状況は進んでいく。
スバルがウイングロードの上でなのはを攻撃し、くい止めている間にフェイクシルエットを使いなのはの頭上に回り込み、近接攻撃を行おうとするティアナ。
ライ(兵士としての戦術としては正解だ。だけど……)
クロスミラージュの銃身に魔力刃を展開しなのはに向けて一直線に突っ込んでいく。ティアナの攻撃がなのはに当たるか当たらないかというところでその言葉がライの耳に届く。
なのは「レイジングハート、モード・リリース。」
静かに、だがしっかりと紡がれた言葉の後にティアナの攻撃が当たり、爆発する。瞬間的に舞い上がった煙が晴れると、そこには素手でティアナの攻撃を受け止めているなのはの姿があった。モード・リリースされたレイジングハートはいつもの首飾りに戻りなのはの首にかかっている。
なのは「おかしいな? 二人とも、どうしちゃったのかな?」
弱々しくではあるがなのはは言葉を重ねていく。
なのは「頑張ってるのは分るけど……模擬戦は喧嘩じゃないんだよ?練習の時だけ私の言うこと聞いて、本番でこんな真似してたら……練習の意味、ないじゃない?」
ティアナは自分の間違いに気付いているのか、なのはの顔を見ることができない。その代わりに見えたのが攻撃を受け止めたなのはの手。そこからは少しではない量の血が流れていた。自分がその原因を作ったことへの恐怖からティアナは体を震わせる。
正常な判断が下せないティアナにさらになのはの言葉がかけられる。
なのは「だからさ……練習どおりやろう?ねえ?それとも私の訓練、間違ってるかな……?」
その言葉を聞いた瞬間、ティアナはなのはから距離をとる。そして自分の中で纏まらない思考の中で必死に自分の言葉を叫ぶ。
ティアナ「私は!私はもう…何もなくしたくないから!傷つけたくないから!!」
それは絞り出すような声。
ティアナ「だから……だから強くなりたいんですっ!!!」
涙を流しながらもハッキリと言葉にする。それと同時に自分の意思を証明するようにクロスミラージュを構え、砲撃魔法の構えをとる。
なのは「少し……頭冷やそうか…」
ティアナの言葉が途切れるとなのはは自然な動作で右手の人差し指をティアナに向ける。
フェイト「なのは!」
フェイトは叫ぶ。親友が何をしようとしているかを察して。
エリオ・キャロ「……」
エリオとキャロの二人は目の前で起こっていることについていけずただ見ていることしか出来ないでいた。
ヴィータ「……」
ヴィータはなのはのやり方に賛成なのか静観している。そして……
ライ「蒼月、セットアップ。」
蒼月「イエス マイ ロード」
ライは駆け出していた。
自分が立っているビルに一番近いウイングロードを確認。すぐにそこに飛び乗る。
背後から声がかかるがそれを振り切りティアナの元に駆ける。
ライ「アクセル。」
ウイングロードのティアナまでの道のりが直線になった瞬間、加速魔法を発動し距離を詰める。
なのは「クロスファイア――」
ティアナ「うあああああ、ファントムブレイ――」
ティアナが砲撃魔法を放とうとするがなのはの方がひと足早かった。
なのは「シュート。」
ティアナ「……あ」
自分に向かってくる桃色の光の塊。それを目にした瞬間ティアナは戦意を喪失した。その場にいる誰もがティアナにその砲撃が直撃すると確信する。……1人を除いて。
ライ「蒼月、リミッターリリース。」
蒼月「リミットリリース。」
自身の魔力の消費量が増えたことを感覚で感じ取り、その魔力を刀身に収束させる。
ライ(ビスマルクほどではないが!)
砲撃が直撃する間際、ライはティアナの前に躍り出る。そして記憶の中で大剣を振るうかつての敵の姿を思い出し、模倣しながら刃を振るう。
迫っていた砲撃はライが剣を振るうとその魔力の塊を四方に散らした。
その場にいた誰もがその結果に驚いていた。魔力の塊を散らしたこともそうだが、あの攻撃を正面から打ち破ろうとするライのその精神性に。
誰もが呆然とする中ライは口を開く。
ライ「ティアナ・ランスター。」
ライに話しかけられティアナは肩を震わせる。なぜならライの声はいつもの優しく温かいものではなく底冷えのするような冷たいものであったのだから。
ライ「なぜ、貴様は力を求めた?力を手に入れ貴様は何をしようとしていた?」
ティアナ「わた…し…は、ただ兄さんの――」
ティアナが言葉を続けようとするとライは目を細めティアナの言葉を断ち切る。
ライ「兄を言い訳にするつもりか?」
ティアナ「ちがっ――」
ライ「今までの貴様の軽率な行動でどれだけ周りに影響を与えたか理解できていないのか?」
ティアナ「そんなこと!」
ライ「自分がもし間違えを犯したとしても『兄のためにしたこと』として他人を、そして」自分を誤魔化せる。違うか?」
ティアナ「あなたに……あなたに何がわかるんですか!?」
ライの言葉に激昂したティアナはライに銃口を向ける。それを冷めた目で見ながらライはティアナに向き直る。
ライ「1つ言っておく。撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ。」
その言葉が聞こえた瞬間、ティアナの視界からライが消えた。すぐにライの姿を探すが、背後からの衝撃を感じた途端、ティアナの意識は途切れた。
ライ「……」
倒れるティアナを片手で支え、こちらに向かってきていたスバルに目を向ける。
スバル「ティア!」
よほど心配だったのか、ティアナを奪うようにライから受け取る。
ライ「スバル・ナカジマ。ティアナを医務室に連れていけ、今すぐに。」
ライの言葉を聞いたスバルはなのはとライに視線を往復させて、どうすればいいか分からないでいた。
ライ「他人の顔色に合わせるだけなら阿呆でもできる。今しなければならないことを判断しろ。」
そう言われたスバルはショックを受けた顔をするが、そのままティアナを抱え機動六課の隊舎に向けて進んでいく。それと同時にウイングロードが消えていくため近場のビルの屋上にライは足場を移す。
なのは「ねぇ、ライ君。」
足場を移し終えると今まで静観していたなのはが口を開く。それはライに負けず劣らずの底冷えをする声であった。
なのは「どうして、教導の邪魔をしたのかな?ライ君も私のやり方に文句があるのかな?」
ライ「……」
なのはが問いかけてもライは無言を貫く。それが癪に障ったのかなのははレイジングハートを再起動させ、ライに向ける。
それを見ていたフェイトは声をあげる。
フェイト「なのは!駄目!!」
今にも飛び出していきそうなフェイトを見かねてヴィータは声をかける。
ヴィータ「ほっとけ。」
フェイト「何言ってるの、ヴィータ!?このままじゃ…」
ヴィータ「何も知らないくせにしゃしゃり出てきたアイツが悪い。」
フェイト「でも、それは……」
『私たちも彼のことを知らない』と続けようとした時、なのはがライに砲撃を放った。
ライ「……」
放たれた砲撃を見ながらもライは無言。しかし行動は迅速に起こしていた。
着ていたバリアジャケットのコートを広げるよう投げる。先ほど切り裂いた砲撃よりも威力の高い砲撃はライの投げたバリアジャケットを貫く。
だがバリアジャケットの強度もそうそう低いものでは無いため砲撃の軌道が若干それてライの足場のビルに直撃する。
そのビルは倒壊こそしなかったものの、着弾時の破片やホコリが舞い上がりライの姿を見えなくしていた。
なのは(左右どちらかに出てきたところを狙い打つ。)
ライが陸戦魔道士のスタイルであったため、ビルの屋上を注視する。だがなのはの予想を覆すことが起きる。
レイジングハート「プロテクション」
なのは「え?」
思わず間の抜けた声をあげてしまう。それと同時にレイジングハートが自動展開した障壁に一発の魔力弾が着弾する。着弾したのは背後。そのため反射的になのはは振り向く。そこにいたのは一対六翼の翼を広げ、青い大型の銃を構えるライの姿があった。
後書き
ということでライの新武装でした。いやほとんどその性能書いてませんけど。
前回自分のわがままに近いことを書いてしまい、書いたあとにすごく後悔したのですが感想を書いてくださる方がいらっしゃったので感謝してもしきれませんヽ(;▽;)ノ
これからも頑張っていくのでよろしくお願いします。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
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