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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第九十七話 酷薄な天使達

              第九十七話 酷薄な天使達
ペルーでの戦いを終えたロンド=ベル。彼等はまずはそのまま中南米に止まることとなった。
「ここにもジャブローに基地があるんだな」
「そうだな」
彼等はジャブローの連邦軍基地に入りながらそれぞれの言葉を交えさせていた。
「しかもその規模もな」
「かなりのものだな」
「そちらの世界にもジャブローの基地があるんですか」
「ああ、実はそうなんだよ」
アンドレイにカイが答えた。
「規模もこんなもんだな。かなり大きいぜ」
「ここは密林で守り易いですからね」
この理由も向こうの世界と同じであった。
「ですからここに基地を置いたんですよ」
「連邦軍の本部だよな」
「はい、その通りです」
この点も同じであった。
「ここにあります。ですがそのせいでここでも何度か戦闘になっています」
「そうだろうな」
ハヤトはそれを聞いて当然と言わんばかりに述べた。
「やっぱり本部だったら敵も来るよな」
「かつては早乙女博士も来ましたし」
「あの博士がねえ」
リュウはアンドレイの説明を受けて声をあげた。
「その辺りが今一つ想像できないんだがな。あの温厚な博士が世界を滅亡させようとしたっていうのがな」
「ですがリュウさん」
こう言うリュウにセイラが声をかける。
「こちらの世界と私達の世界は似ている部分もありますが全く違う世界ですから」
「だから早乙女博士も違う人間だってことか」
「はい、そうです」
またリュウに言うのだった。
「ですから。それはよく踏まえておかないと」
「考えを誤るってわけか」
「その通りです。ですから」
「そうだな」
セイラの今の言葉で考えをあらためるリュウだった。
「考えてみれば確かにそうだよな」
「その通りです。ですから注意しないと」
「わかった。それにしても本当にそっくりだな」
セイラの言葉を聞いたうえで再度ジャブローを見るが感想はこうだった。
「細かい部分までな」
「全くだ」
クワトロも言うのだった。
「二度ここで戦ったな」
「そうだったな。あの時は御前とは派手にやり合ったな」
「ふふふ、そうだったな」
少し楽しげに笑ってアムロに言葉を返すのだった。
「思えば私もあの時は若かった」
「今でも二十代では?」
ソーマの今のクワトロへの言葉は少しばかりピントが外れていた。
「確か」
「まあそれはそうだが」
そのピントの外れた言葉にも何とか応えるクワトロだった。
「だが。今となっては懐かしいのだよ」
「そうなのですか」
「この気持ちは時間が経てばわかるものだよ」
優しい声でソーマに述べたのだった。
「少しずつだがね」
「はあ」
「君も。四年前の戦いはそうではないのか?」
「いえ、私は」
クワトロの問いに首を小さく振るのであった。
「それは。まだ」
「若いうちはそうだ」
また若さを語るクワトロだった。
「だが。歳を取ればわかるものだ」
「ですか」
「まあよ。女なんて二十を過ぎればただの婆だ」
予定調和の如くシンが言わなくていいことを言いだす。
「とりあえずあの眼鏡のおっかないおばさんなんてよ。もう白骨だからな」
「おい、シン」
ハワードが深刻な顔で今のシンの放言に対してクレームをるける。
「今の言葉は下手をしたら死ぬぞ」
「そんなの平気さ。所詮おばさんはおばさんだよ」
やはり人の忠告は聞かない。
「耳だって耄碌してるからよ。聞こえ・・・・・・たわばっ!!」
後ろから踵落としが奇麗にその脳天に突き刺さった。見ればその脚はそのカティのものであった。
「残念だが耳は健在だ」
「やっぱりな」
「こうなると思っていたぜ」
ハワードだけでなくダリルも呆れていた。シンは何処までもシンであった。
何はともあれジャブローに入ったロンド=ベルはそこで正式にこちらの世界の戦力としても認められたりここにいる間の待遇等も正式に定められた。それは今の状況の追認であった。
「何かあっさりと終わったな」
「そうですね」
アムロがスレッガーの言葉に頷いていた。今二人は基地の廊下を並んで歩いている。
「とりあえずはこれで」
「御前さんも相変わらず中佐でいいいんだよな」
「スレッガーさんは大尉ですね」
「ははは、よく考えればもう御前さんの方が階級は上だ」
そのことを笑って言うスレッガーだった。
「連邦軍のエース中のエースだからな、もう」
「からかわないで下さいよ」
今のスレッガーの言葉にはついつい苦笑いになるアムロだった。
「俺はあの時と同じですから」
「その割には随分成長したな」
「そうですか?」
「ああ。大人になったな」
こうアムロ自身に言うのだった。
「ロンド=ベルのトップガンに相応しくな」
「色々ありましたからね」
スレッガーの言葉を受けて過去を振り返ったアムロだった。
「一年戦争にバルマー戦役」
「ああ」
「未来にも行きましたし」
「そっちも大変だったらしいな」
「はい。何度も死線を潜り抜けました」
その時のことも思い出しているアムロだった。
「そして今も」
「長い戦いが続くかと思えばこうして異世界だ」
「何があるかわかりませんしね」
「全くだ。それにだ」
「それに?」
「ここでも戦ってる奴がいるしな」
「ええ、それもですね」
今共にいるこちらの世界の仲間達のことだった。
「ここでも。本当に」
「そしてジャブローも何度か襲撃を受けているらしいしな」
「そのことですけれど」
ここで話を変えてきたアムロだった。
「気になることを聞きました」
「気になること!?」
「はい、天使です」
アムロは真剣な顔で天使という存在を口に出してきた。
「この世界では天使達が人類の敵ですね」
「そういえばそんな話もあったか」
己の口に自分の手を当ててそのことを思い出したスレッガーだった。
「ガルラ帝国やドーレムだけじゃないってな」
「彼等がこのジャブローを攻めて来るそうです」
「ここをか」
「はい。それでかなりの損害を出しているとか」
このことをスレッガーに話すアムロであった。
「だから俺達がこの基地に入ったようです」
「つまり俺達は用心棒ってわけだな」
「そういう感じですね」
「成程な。じゃあ次の相手は天使か」
スレッガーはすぐにこのことを己の中で受け入れた。こうした考えの柔軟さが実に彼らしかった。
「また随分と変な相手だな」
「またはじめての相手ですね」
「それでデータはあるのか?」
「一応は」
とりあえずこう答えることはできたアムロであった。
「ありますけれど」
「じゃあ後でそれを見せてくれるか?」
「もう全員の分を作ってあります」
「早いな」
「ブライトの奴が頑張りましたから」
ブライトの名前を出すとアムロの顔も微笑んだ。
「それでですよ」
「相変わらず勤勉な艦長さんだな」
「あいつも成長していますよ」
今度はアムロが成長という言葉を口にしてみせた。
「苦労人ですしね、本当に」
「そうだな。ロンド=ベルでも一、二を争うな」
「色々な面子がいますからね。昔の俺だって」
「ははは、確かにあの時の御前さんもかなり噂になっていたぞ」
「ええ。わかっています」
また苦笑いの顔になるアムロだった。
「あの時の俺は。本当にどうしようもない奴でしたから」
「あの艦長さんも頼りなかったそうだな」
「そうでしたね。今ではとても信じられませんけれど」
「もう昔の話ということだな」
スレッガーはふと昔を見る目になって述べた。
「その辺りはな」
「そうですね。本当に」
「ああ。さて、それで話は今のことだけれどな」
「はい」
そこに素早く戻すスレッガーとそれに合わせるアムロだった。
「後で皆集めてミーティングだな」
「ええ、暫くしたら」
その話になるのだった。そうして実際に皆ジャブローのブリーフィングルームに集められ。そこでテッサやカティの説明を受けるのであった。
「以上だ」
カティがまず厳しい声で一同に告げた。
「これが天使達の詳細だ」
「ふうん、そうなのか」
「また変わった相手だな」
あちらの世界の面々は話を聞き終えまずはこう述べた。
「生命力を吸い取るっていうのがな」
「しかも一万二千年に一度か」
「そうだ。前の世界はそれにより滅んだ」
カティは険しい声で彼等に述べた。
「彼等の侵略によりな」
「侵略というよりはだ」
サコンがここで言った。
「破壊だな」
「破壊、ですか」
「俺はそう思いました」
テッサに対してもこう答えた。
「何か。この世界をそれにより全て破壊するような」
「言われてみれば」
「確かに」
それを聞いたアレックスとジョシュアが声をあげた。
「そんな感じだな」
「つまり破壊の天使というわけか」
「まだ断定はできませんが」
一応はこう断るサコンだった。
「そうではないでしょうか」
「言われてみれば」
「確かに」
こちらの世界の面々はサコンの言葉に頷きだしていた。
「創造ではないし」
「そういう役目ですね」
「そうですね。その通りです」
テッサもまたサコンのその言葉に頷くのだった。そのうえでまた彼に問うてきた。
「それではサコンさん」
「はい」
「彼等の目的は何だと思われますか?」
「世界を破壊することは先に述べましたね」
「ええ」
「ですが。それだけではないでしょう」
こう述べるサコンであった。
「それで終わりとは思えません」
「あれですね」
テッサは話を聞いていてあることを思い出した。
「あの。インド神話の」
「破壊神シヴァか」
カティも言う。
「だとすると」
「いえ、この場合は黙示録でしょう」
だがサコンはこう述べるのであった。
「天使ですし。それに」
「それに?」
「正式名称は天使ではありませんね」
「はい、堕天翅です」
こう答えるテッサであった。
「それが彼等の名です」
「そうですか。ですが同じ様なものですね」
サコンは話を聞いてこう断定してみせた。
「黙示録の天使達と」
「ではやはり人類を滅亡させ」
「そうです」
またテッサに答えた。
「新たな世界を創るのがその目的でしょう」
「おいおい、冗談じゃねえぜ」
「そうだそうだ」
その話を聞いた闘志也と剣人が言う。
「俺達だって生きなきゃならないんだよ」
「それで滅ぼされてたまるかよ」
「しかしだ」
だがここでジュリイが二人に対して言ってきた。
「それは俺達の都合だ。向こうには向こうの都合がある」
「じゃあ滅ぼされっていいっていうのかよ」
「おい、ジュリイ」
謙作も今のジュリイの言葉には顔を顰めさせていた。
「それだったら俺達の戦ってる意味が」
「無論そんなことは俺も願い下げさ」
それははっきりと言うジュリイだった。
「けれどな」
「ああ」
「けれど?」
「こういうことは知っておいて問題はない」
こういうことであった。
「相手の考えはな」
「相手の考えをか」
「相手を理解するのは戦略の基本だな」
「確かにな」
その言葉に頷いたのは弾児だった。
「そうじゃなきゃまともな戦略は立てにくい」
「そういうことだ。だからなんだよ」
ジュリイはさらに言う。
「相手のそうした考えを理解するのも。大事なんだ」
「その通りですね」
ビリーが彼のその考えに賛同した。
「では我々は少しでも彼等のことを学びましょう」
「その余裕があるかとうかはまた別だけれどな」
パトリックは明るいがややシニカルな感じであった。
「まあ、やってみるか」
「問題は連中が何時来るかだけれど」
万丈が言う。
「このジャブローはそんなに襲撃を受けているのかな」
「はい、何度か」
テッサが万丈のこの問いに答えた。
「受けています。天使達もこの前に」
「そう。だったらまたすぐに来るかも知れないね」
彼はそれを聞いて落ち着いた声で述べた。
「用意だけはしておこうか。戦いがあってもいいようにね」
「はい、それじゃあ」
「その時に備えて」
こう言い合いその日の話し合いは終わりとなった。そして二日後。その天使達がジャブローに姿を現わしたのであった。
「来たわね!」
アスカが話を聞いてすぐに叫んだ。
「行くわよ!早速!」
「ってアスカ」
シンジがそのアスカを呼び止める。
「行くのはいいけれどさ」
「何よ」
「せめてプラグスーツは着ようよ」
こう彼女に言うのであった。
「さもないとエヴァに乗れないよ」
「くっ、わかってるわよ」
実はいきり立つあまりそのことを忘れかけていたアスカであった。
「じゃあ。早速」
「うん。もう皆出撃準備にかかってるしね」
「そうね。やっぱり動きは速いわ」
「ジャブローかあ」
シンジはそのジャブローに対して思うのだった。
「何かこっちの世界でもここで戦うなんてね」
「向こうの世界じゃミケーネ帝国と戦ったわね」
「そうだったね。あの時も激しい戦いだったけれど」
「正直南米の戦いにはあまりいい思い出ないのよ」
「何で?」
「パナマ運河の時よ」
忌々しげにその時の話もするアスカだった。
「オペレーション=スピットブレイクの時」
「あれはアラスカじゃないの?」
「そうやろ?確か」
既にブラグスーツを着ているトウジが来て言った。さりげなく彼等は話をしながらエヴァに向かっているのである。レイも来ていた。
「アラスカで三輪長官に殺されかけた時やろ?」
「あれにも驚いたけれど」
連邦軍でも切れ者のサザーランドが唖然とした程である。三輪はいきなり日本からサイクロプスのボタンを押してロンド=ベルや連邦軍、その基地ごとザフト軍を壊滅させようとしたのである。なおこのことでも三輪は責任を問われ軍法会議にかけられたのである。
「その後よ。問題は」
「ボゾンジャンプの後?」
「そうよ」
シンジは話しながら上着を脱いでいる。
「あの時。いきなり変態爺さんが出て来て」
「またそれ!?」
「御前この世界にあの人はおらんやろが」
「いなくても記憶はあるのよ」
そういうことであった。
「あの変態爺さんが何だかよくわからない間に戦争終わらせたから」
「だから中南米にはいい思い出がないんだ」
「そうよ」
忌々しげに答えるアスカだった。
「どうにもこうにもね」
「まあ気持ちはわかるけれど」
「理解しなさい。ところでシンジ」
「何?」
「あんたどうして上着脱いでるのよ」
「だって。向こうですぐにプラグスーツに着替えられるように」
既にトウジからスーツを受け取っている。
「だからだけれど」
「着替えなんて一瞬で済ませなさいよ」
また無茶を言うアスカであった。
「そんなの」
「一瞬って。できるわけないじゃない」
「できるわよ」
それでも言うアスカだった。
「ほら、こうして」
「こうして?」
「これで終わりよ」
中学の制服に手をかけ威勢よく翻すとそれで終わりだった。どうやって脱いだのかさえわからないがそれでもアスカはそれだけでプラグスーツに着替えているのであった。
「ほら、簡単じゃない」
「簡単って」
「御前今のは」
シンジもトウジも今の着替えには眉を顰めさせていた。
「どうやって着替えたの?」
「しかもどうやって脱いだんや?」
「万丈さんに教えてもらったのよ」
誇らしげに言うアスカであった。
「ほら、万丈さんって何処からかマシンガン持ち出したりするじゃない」
「うん」
「確かにな」
それも考えてみればかなりおかしなことではある。
「それに一瞬で着替えたりするわよね」
「その方法を教えてもらったの?」
「そういうこと。これがかなり役に立つのよ」
こう言うアスカであった。
「お風呂やこうした着替えの時にね」
「何かアスカも何だかんだで変わったよね」
「ちゅうかやっぱりガンダムファイターに近くもなっとるで」
シンジもトウジも今のアスカを見て言うのだった。
「このノリは」
「そうかも」
「それにしてもあの方」
レイがここで呟く。
「こちらの世界には来られないのね。そしてあの勇姿を」
「そんなのあってたまるものですか」
アスカはそのレイの言葉にムキになって返す。
「幾ら何でも。世界を飛び越えるとか」
「やれそうだよね」
「あの人だけはな」
「できてたまるものですか」
あくまでその可能性を全否定するアスカであった。
「あんな変態爺さん。どうして死ななかったのよ」
「ってあの人死ぬの?」
シンジの言葉は身も蓋もない。
「あんな人が」
「あの方は不滅よ」
またレイが言う。
「決して。何があっても」
「是非。死んで欲しいわ」
あくまでマスターアジアを認めないアスカであった。
「ついでにあのドイツ忍者もね」
「ああ、そういえばあの人も今どうしてるのかな」
「生きてることは間違いないけれどな」
シュバルツ=ブルーダーのことも思い出す彼等であった。
「向こうで戦ってるんだろうけれど」
「あの人等普段の行動わからへんしな」
「わかってたまるものですか。とにかく」
アスカは言うのだった。
「出撃よ、いいわね」
「わかりましたあ」
「!?アスカが二人!?」
「御前何喋り方変えてるねん」
「しかも一人芝居までして」
「おかしくなったんか!?」
「えっ!?あたしは別に」
言われて逆に驚くアスカだった。
「何も。ないけど?」
「行きましょう、アスカさん」
ここで出て来たのはグリースであった。
「出撃ですよ」
「あんただったの」
彼女に気付いて目を丸くさせるアスカだった。
「誰かって思ったら」
「行くぞ」
そこにアーウィンも来た。
「天使達は手強い。注意しろ」
「え、ええ」
「命を吸い取られる」
またアスカに言うアーウィンだった。
「特に力があるのが何人かいるしな」
「何かその辺りはよくわかるわ」
アスカは過去の自分達の戦いからこのことを思うのだった。
「その辺りはね」
「確かそちらの世界にもそんなのがいたな」
「ええ。宇宙にいるのよ」
マクロス7が出会ったその相手のことを話すアスカだった。
「その連中が地球にも来てね」
「そうだったな。そちらも何かと色々あるな」
「色々なんてものじゃないわよ」
アスカは少しうんざりとしたように言ってみせるのだった。12
「本当にね。物凄い状況なんだから」
「何処も同じだな」
その言葉を聞いてまた言うアーウィンだった。
「俺達の世界も」
「全くね。ところでね」
ここでアスカは話題を変えてきた。
「アーウィンだったわよね」
「そうだ」
名前を尋ねてきたので素直に応えるアーウィンだった。
「アーウィン=ドースティンだ」
「わかったわ。それでアーウィン」
アスカは名前を確認したうえでまた彼に言ってきた。
「あんたその声で何か言われない?」
「言われるが」
「やっぱりね」
彼の返答を聞いて納得した顔で頷くアスカだった。
「そうだと思ったわ」
「何故それがわかった?」
「うちじゃいつもそれだから」
だからだというのである。
「やっぱりね、って思ってね」
「あの一色司令に似ていると言われる」
それが少し不満なようだった。顔には出さないが言葉には僅かに出てしまっている。
「それがな。少し」
「こっちの世界の人間にも一杯似ているのいるでしょ」
「不思議だ。他人の気がしない」
こうも言うアーウィンだった。
「彼等とはな」
「私もですう」
グリースはにこりと笑ってアスカに抱きついてきて言う。
「アスカさんとは。どういうわけか」
「そうなのよね。私も他の人だったら嫌だけれど」
見ればアスカは本当に嫌そうな素振りは全くない。
「グリースさんだったらね。何ともないわ」
「そうですよね。他人の気がしませんよね」
「不思議よ、それが」
それを自分でも言うアスカだった。
「どういうわけかしらね」
「全くだ。それではだ」
「ええ」
話がここで動く。
「行くぞ。いいな」
「ええ、わかったわ」
「それじゃあ」
「行きますですう」
こうして彼等も出撃した。出撃すると早速その天使達がジャブローを囲んでいるのが確認される。シンルーがそれを見て皆に対して言ってきた。
「くれぐれも一機にならないで下さい」
「一機に!?」
「はい。彼等はその孤立した一機を狙います」
こう皆に述べるのだった。
「ですから。それだけは絶対に」
「わかった」
彼女の言葉に最初に頷いたのはショウだった。
「それなら。今は」
「御願いします」
「何かショウも変わったわね」
ショウが独断専行をしないと言ったのを見てチャムが言うのであった。
「昔はそんな言葉聞こうともしなかったのに」
「俺だって多くの戦いを生き抜いてきたんだ」
ショウはそのチャムに応えて言う。
「なら。やっぱりな」
「そういうことなの」
「ああ。それにしてもこのオーラ」
天使達の気を察しての言葉だった。
「これまでにない感じだ」
「そうね。それはね」
チャムもまた彼の言葉に頷くのだった。
「あるね。高貴で何かを求めているのに」
「それでいて。破壊と餓えたものを感じさせる」
目の前の天使達を見てまた述べる。
「そんな気配が」
「何だろう、これ」
チャムは怪訝な顔をして呟いた。
「この気配って」
「これが天使の気配だとするなら」
ショウはその気配を感じ続けながら言葉を続ける。
「サコンの言葉は嘘じゃないな」
「そうね」
チャムはショウの言葉に頷いた。そのうえで戦いがはじまる。攻め寄せる天使達に対してロンド=ベルが迎え撃つ。その形でのはじまりだった。
「行けっ!」
ダバのエルガイムマークツーが右手からビームを放ち天使に攻撃を浴びせる。攻撃を受けた天使の一機が光に貫かれすぐに撃墜されてしまった。後には爆発が起こる。
「普通に倒せるんだな」
「はい、それは」
今撃墜したダバの言葉に応えるビリーだった。彼は今アークエンジェルの環境に詰めている。そこにはカティも一緒である。
「それは可能です」
「そうなのですか」
「ただし。くれぐれもです」
「それはわかっています」
真面目な顔でビリーの言葉に頷くのだった。
「一機になるな、ですね」
「御願いします」
あらためてビリーはこのことを言ってきた。
「それについては」
「わかっています。ところでですね」
「はい」
「ガンダムも来る可能性がありますので」
ビリーはこのことも言うのであった。
「その場合は彼等と協力して下さい」
「わかりました」
「ただ」
だがここで。ビリーは言葉を僅かに濁らせてきた。
「あの四機はいいのですが」
「四機は!?」
「待て」
ギャブレーもこの言葉に突っ込みを入れてきた。
「今四機は、と言ったな」
「はい」
「ということは四機だけではないのか」
今のビリーの言葉からこのことを察知したのである。
「この世界のガンダムは」
「はい、実は全部で七機います」
こう皆に答えるビリーだった。
「この世界には」
「ガンダムは七機か」
ギャブレーは彼の言葉を聞いてまた考え込んだ。
「この世界のガンダムは」
「ガンダムは普通に何機あるものだけれどな」
ダバも言う。
「けれど。後の三機のガンダムには」
ここで彼もまた感じていたのだった。
「何かあるんですね」
「彼等は手段を選びません」
こうダバ達に告げるビリーだった。
「勝利の為には」
「ああ、つまりあれだな」
それを聞いてすぐに理解したのはアレンだった。
「どんな非道な作戦も辞さないってわけか」
「目的の為には手段を選ばずか」
フェイも言う。
「いるがな、そういう奴は」
「一般市民を巻き込んだこともあります」
ビリーの言葉が苦々しげなものになった。
「協力関係にある我々でさえも時にな」
「物騒な話だな、おい」
それを聞いてトッドも述べた。
「そんなやばい奴もいるのかよ」
「はい。ですからお気をつけ下さい」
「わかったぜ。それはな」
「ええ。そういうことで」
そんな話をしながら天使達と戦い続ける。ある程度の数を倒したところで。彼等の前に三機の戦闘機が姿を現わしたのであった。
「!?何だありゃ」
「今度は戦闘機かよ」
「連邦軍のものか!?」
「いえ、あれは」
テッサがあちらの世界の面々の言葉に応えて言う。
「連邦軍のものではありません」
「連邦軍のものじゃない!?」
「じゃあ一体あれが」
「さて」
テッサも眉をひそめるばかりだった。
「私にも。それが」
「では敵か」
バーンが最初にこう考えた。
「あれは」
「いや、待て」
しかしその彼にニーが言う。
「あれはこちらには来ていない」
「むっ!?」
「むしろ天使達に向かっている」
こう述べるニーだった。
「だとすればあれは」
「ガルラ帝国は天使達とも対立関係にあります」
ここでテッサがこのことも一同に話す。
「彼等は彼等以外の勢力全てと対立しています」
「それじゃあガルラ帝国!?」
「いえ、メカのタイプが違います」
テッサはこうも言うのだった。
「ですからあれは」
「といってもドーレムでもないな」
「そうですね」
彼等はこのことも言い合うのだった。
「明らかに」
「じゃあ何だ、あれは」
「あの三機の戦闘機は」
「通信を入れよう」
ここで大河が提案した。
「どうだ?」
「入りマシた」
スワンがすぐに答えてきた。
「ですガ」
「ですが。どうしたのだ?」
「答えがありまセン」
スワンの声もいぶかしむものになっていた。
「妙デス」
「では敵なのか?」
大河はこのことから彼もこの判断を考慮に入れだした。
「やはり。彼等は」
「いや、待てよ」
今度は火麻が言ってきた。
「それにしちゃおかしいぜ」
「というと?」
「何か向こうは向こうで大変みたいだぜ」
彼はその三機の戦闘機からの声を聞いて言うのだった。
「こりゃな」
「そういえばそうですね」
命もここで気付いた。
「この声は。何か」
「合体準備か!?」
火麻がまた言う。
「これは」
「合体準備!?まさか」
「いや、有り得る」
スタリオンに対して大河が述べた。
「その可能性もゼロではない」
「では彼等は一体」
「まずは戦闘を続けよ」
とりあえずそれは続けさせる大河だった。
「そしてだ」
「はい」
「あの三機の戦闘機への警戒を怠るな」
これは言い忘れなかった。
「絶対にだ。いいな」
「了解デス」
「わかりました」14
皆それに頷く。こうして戦いながらその三機の戦闘機を見守る。やがてその三機の戦闘機から少年と少女の声が聞こえてきたのであった。
「お兄様、それじゃあ」
「そうだ」
兄と呼ぶ声がした。
「今回はこれで行く」
「はじめてでこれは」
「だが仕方がない」
毅然とした青年の声だった。
「私達だけしかいないのだからな」
「わかったわ」
少女の声がその声に頷いたのがわかった。
「それじゃあ。私も」
「合体だ」
また青年の声が言う。
「いいな、シルヴィア」
「ええ」
その少女の声が頷いてきた。
「麗花」
「わかったわ」
そしてもう一人の声も。
「それじゃあ。いよいよ」
「行くぞ」
青年の声がリーダーになっていた。
「アクエリオン、合体!」
「アクエリオン!?」
その名を聞いたテッサが思わず声をあげた。
「まさか。あれが」
「知ってるんですか!?」
「はい」
ユリカの問いに答える。
「ですが。まさか本当に存在しているなんて」
「本当にって」
「じゃああれは」
「噂では聞いていました」
こうあちらの世界の面々に述べるテッサだった。
「そうしたマシンが開発されていることは」
「そうだったのですか」
「天使に対するマシンです」
こう述べるテッサだった。
「彼等に対する。それがここで投入されるとは」
「それじゃあ彼等は私達の」
「はい、味方です」
これは確実だと言うテッサであった。
「それは間違いありません」
「そうですか。それじゃあ今はとりあえずは」
「安心して下さい」
また言うテッサだった。
「彼等に関しては」
「わかりました。それじゃあ」
「今は」
とりあえずはそのアクエリオンは置いておきむしろ彼等と協力する形で天使達を倒していく。だがその間見るアクエリオンの動きは今一つぎこちないものであった。
「大丈夫なのか?あれで」
「確かに」
ナタルがヘンケンの問いに応えていた。
「反応が鈍いように思えます」
「まさかと思うが」
ヘンケンは眉を顰めつつ述べた。
「あのマシンは初陣なのか」
「おそらくは」
これはナタルも感じることであった。
「あの動きを見れば」
「そうだな。だとしたら危険だな」
「はい」
ヘンケンの言葉に頷いた。
「それではあちらの援護に行ってもらうのは」
「あの三人は止めておこう」
オルガ、クロト、シャニのことである。彼等は何かあるとすぐに味方ごと敵を始末しようとするので評判が悪いのである。しかもかなり。
「他のメンバーだが」
「誰にしますか?」
「そうだな。a小隊にするか」
彼等であった。
「頼めるか、それで」
「わかりました」
エルフィが生粋の軍人らしく真面目に応対をしてきた。
「それではすぐにあちらに」
「頼む。それではそちらはな」
「お任せ下さい。戦局はこちらに有利になってきていますし」
「そうだな。それはな」
それはヘンケンも感じていることであった。
「このままいけば勝てるな」
「はい、間違いなく」
「後は。あのアクエリオンだが」
「全ては戦闘が終わってからです」
ナタルがここで述べた。
「そういうことですね」
「そうだな。少なくとも今は戦闘に専念しよう」
「はい」
やはしそれしかなかった。戦闘中にどうこうすることは彼等とて無理な話であった。
「では敵の掃討に移る」
「わかりました」
こうして戦闘の最終局面を抑えるのだった。それが終わったのはすぐだったがそのアクエリオンは。瞬く間に姿を消してしまったのだった。
「おいおい、また気が早いねえ」
「はじめてだからって早いのは嫌われるわよ」
「そうそう、それが礼儀ってやつだからな」
ゴーショーグンの三人はアクエリオンが消えてしまったのを見て冗談めかして言った。
「だが。それにしてもだ」
「そうね。アクエリオンって名前はわかったけれど」
「他は何にもわかっちゃいないな」
「そうなのです」
テッサも三人に対して述べた。
「私も。彼等のことはまだ」
「所属部隊とかは?」
「まさかそれも?」
「一切が機密なんてジョークはなしだぜ」
「それがその通りなのです」
何とそうなのであった。
「ですから。何も」
「あらら、打つ手なしってわけね」
レミーがそれを聞いて困った顔を見せた。
「どうしようもないわね、それは」
「これは待つしかないか」
「全くだな」
真吾とキリーもこう言うしかなかった。
「とりあえず。また出て来るだろうしな」
「その時までのお楽しみってわけだな」
「申し訳ありません」
「謝る必要はないわよ」
「そうさ。こういうことはよくあることだからな」
「ロンド=ベルじゃ常識ってやつだな」
三人は彼等の調子でテッサに言葉を返した。
「まあとにかく戦闘は終わったし」
「次の作戦に備えて今は」
「リフレッシュといくか」
「ふむ。そうだな」
ブンドルが三人の言葉を聞いて頷く。
「それでは私も」
「ではわしはかみさんに送ってもらった枕で昼寝をするとしよう」
「ケルナグール、貴様そんなものを送ってもらったのか」
「おうよ、マクロスクォーターでな」
彼はわざわざそれで枕を取り寄せたのであった。
「かみさんの手作りじゃぞ。いいじゃろ」
「まあそうだな」
「って嘘だろ!?」
アレックスが今のケルナグールの言葉に色を失っていた。
「あんな青い肌のおっさんが結婚してるのかよ」
「おいおい、それだけで驚いてちゃ駄目だよ」
コウが笑いながらその彼に声をかけてきた。
「しかも美人なんだからな」
「何だってえ!?」
それを聞いていよいよ言葉を失うアレックスだった。
「あんな人が美人のかみさんをかよ!?」
「ははは、そう妬くな」
色々言われてもケルナグール自身は平気だった。
「ほれ、これがかみさんだ」
ここで結婚式の時の二人の写真を見せるのだった。
「どうじゃ。羨ましいだろう」
「世の中狂ってやがる」
「全くです」
ソーマも真顔であった。
「どうやら世界には異常事態が頻発するようです」
「はっはっは、そこまで妬いてくれるか」
「あのさ」
ヘクトールが呆然としながらリュウセイに尋ねた。
「あの人何であそこまで言われて平気なのかな」
「ああ、あの人奥さんのことになったらいつもああだからな」
「いつもなのかよ」
「だからだ。気にするなよ」
「ううむ、何と恐ろしい」
「ミステリーね」
ミーナも顔を顰めさせている。
「これは」
「だが。とにかくだ」
「ええ、そうね」
シェスとパトリシアもそんなケルナグールを見ていたが二人は結構受け入れていた。そのうえで別のものを見ているのであった。
「これで今回の天使達との戦いは終わりだ」
「だから。とりあえずは」
「全軍帰還して下さい」
ここでテッサが一同に告げる。こうして戦闘は終わったのであった。
そしてその頃。ある場所で厳しい顔の男と金髪の美男子が向かい合って話をしているのであった。間には端整な壮年の男もいる。三人で何やら話をしていた。
「大統領閣下」
「うむ」
大統領と呼ばれたその壮年の男は金髪の青年の言葉に顔を向けていた。
「アクエリオンのことだな」
「それは成功しました」
「あれでか」
「まずはあのようなものです」
今度は厳しい顔の男が答えた。
「はじまりは」
「そういうものか」
「はい。続いてです」
金髪の男がまた述べてきた。
「グラヴィオンですが」
「それもいよいよなのだな」
「準備は整いました」
こう述べるのであった。
「そして時もまた」
「そうか。遂にか」
「はい。時が来たのです」
彼は言った。
「ですから。今こそ」
「わかった」
大統領は彼の言葉に頷いた。
「それでは。君達に全てを任す」
「わかりました」
「それでは」
「まずこれで全ての役者が揃ったのか」
「いえ、まだです」
だが金髪の男はそれは否定した。
「まだもう一人います」
「一人か」
「一人と。一体でしょうか」
「一体だというのか」
「そうです」
金髪の男は答えた。
「彼等もまた出て来るでしょう」
「まさかと思うが」
大統領は彼の言葉からあることを察したのだった。それは。
「パラダイムシティか」
「おそらくは」
男はまた答えた。
「そこにあります」
「しかし。あそこに行くことはできない」
大統領は男の言葉に首を横に振った。
「そもそも。実在するかどうか」
「実在します」
しかし男はまた大統領に述べた。
「それは間違いありません」
「だが何処にあるのだ?パラダイムシティは」
「既にある程度察しはつけています」
「では何処にだ?」
「木星です」
これが男の返答だった。
「木星にあります。それは」
「木星にか」
「謎が解かれる時が来ました」
男はまた言った。
「そして私もまた」
「私も?」
「時が来ています」
何かを確かに感じ取り、そのうえで意を決した言葉であった。
「その時が来たのです」
「君にとってもか」
「そうです。ですから」
男は言葉を続けた。
「私も。行きます」
これがこの場での最後の言葉であった。彼も厳しい男もその場を後にした。最後に残った大統領は一人その場で呟くのだった。
「どちらにしろ。大きく動くのだな」
それだけはわかった。彼はそのことを己だけで確かめていた。彼もまた時が動きだしたのを感じ取っていたのであった。そこにおいて。

第九十七話完

2008・12・8 
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