ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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新たな始まり
「おーい、キリトくん、リンくん、こっちこっち!」
明らかに高級そうな喫茶店の中から響く無遠慮な声。そのせいで俺たちは視線の集中砲火を浴びていた。俺とキリトは一つため息をつくと呼んだ男……菊岡誠次郎の前に二人で腰掛ける
「ここは僕が持つから、何でも好きに頼んでよ」
俺たちがメニューを広げたのを見て菊岡が陽気に話しかけてくる。どうせ経費で落とすんだろうが。とメニューに目を通す。どれも四ケタ以上のものばかり。俺はまだ勘当される前、たまにこういう店に入ったことがあるからいいが、キリトは庶民。若干緊張している。まあ、目の前の男のせいというかおかげで若干ですんでいるみたいだが
「ええと……パルフェ・オ・ショコラ……と、フランボワズのミルフィーユ……に、ヘーゼルナッツ・カフェ」
「俺は、アールグレイだけでいい」
「零くん。遠慮はいらないよ?」
「お前の顔を見ながら食べる気が起きない。まあ、お前の財布に風穴を空けれるなら目一杯頼むけどな」
にやりと笑って俺は菊岡に毒を吐く。正直、俺は菊岡が気に入らない。笑顔の裏に何を隠しているか分からないからな
「つれないなぁ……」
そう言って肩を落とす菊岡。心配する必要性は皆無だろう。どうせふりなのだから
「以上です」
「かしこまりました」
注文を律儀に待っていてくれたウェイターさんにそう言った
「さて……落ち込んでるところ悪いが本題に入ってもらえないか?こっちも暇じゃないんだ」
詩乃を送ってからこっちに来たが、もう少し一緒にいてやるべきだったかな
「どうせまたバーチャル犯罪がらみのリサーチなんだろ?」
「おお、君たちは話が早くて助かるね」
落ち込む振りをやめると菊岡はアタッシュケースからタブレット型の端末を取り出すとつつきだした
「いやあ、それがねぇ。ここに来て、バーチャルスペース関連犯罪の件数がまた増え気味でねぇ……」
「へえ。具体的には?」
基本的にキリトと菊岡の話を聞く方に徹する。正直俺まで呼ばれて理由がわからないし
「……ずいぶん遠回りをしたが、今日の本題はそこなんだ。これを見てくれ」
VRMMOが現実に与える影響などについて話していた菊岡がタブレットをこちらに渡してきたので、キリトと一緒に覗き込む
「ええと、先月……」
そこからその男、ゼクシードと薄塩たらこの不審死について、死銃と名乗る人物が関係しているのか、という話になった。確かに出来すぎている。二人の死亡時刻と撃たれた時刻。あまりにも近過ぎた。加えてその事件が起きたゲーム。ガンゲイル・オンラインの運営ザスカーはアメリカにサーバーを置いていて全てが非公開のため、全く情報がない
「とまあそんな理由で、真実のシッポを掴もうと思ったら、ゲーム内で直接の接触を試みるしかないわけなんだよ。もちろん万が一のことを考えて、最大限の安全措置は取る。キリト君とリン君には、こちらが用意する部屋からダイブしてもらって、モニターしているアミュスフィアの出力になんらかの異常があった場合はすぐに切断する。銃撃されろとは言わない、君たちの眼から見た印象で判断してくれればそれでいい。……行ってくれるね?」
「……それはお願いではなく強制ってやつだろ?まあ、俺は行くよ。貸しを作っておくのも悪くない」
「リンが行くって言うなら俺も行かないとな」
俺の言葉にキリトも乗ってくる
「ありがとう。じゃあ、これが死銃氏の声だよ。どうぞ、聴いてくれたまえ」
準備よくイヤホンを菊岡はこちらに差し出してくる。キリトと一緒にそのイヤホンを受け取り耳に突っ込む
『これが本当の強さだ!愚か者どもよ、この名を恐怖とともに刻め!』
『俺と、この銃の名は死銃……デス・ガンだ!』
その叫び声は金属質な声だったが、紛れもない、殺人へと駆り立てる狂気を孕んでいた
「どう思う?」
「ん?」
店をキリトと出ると早速キリトに話しかける
「死銃のことだよ。……どこかで聴いたことある気がするんだよな……」
声に出さずにソードアート・オンラインで、と言うとキリトも真剣な顔になる
「俺もだ。……だが、思い出せない」
「ああ……」
しばらく無言で歩くキリトと俺
「ガンゲイル・オンラインね……。キリトは銃使えるのか?」
ちなみに俺は一応アメリカで射撃経験はある
「飛び道具って苦手なんだよな……」
頭をかきながらそうぼやけキリト
「おいおい……大丈夫かよ」
正直致命的だろう。回避に関しては大丈夫だと思うが
「まあ、当たって砕けろ、だな」
そのキリトの返答に自然とため息が出る
「相変わらずだよな……。振り回される方の身にもなってくれ」
アスナもどこか無鉄砲なところがあるからなぁ……。脇役としてはもうちょっと計画性を持って行動してもらいたいところだ。とりあえず、俺の言葉に笑うキリトを今すぐぶん殴りたい
「よし……俺はアスナとちょっと出かけるが、燐はどうする?一緒に来るか?」
「馬に蹴られる趣味は無いから遠慮しとく。まあ、帰って下調べってところかな?」
「……よくやるよな……」
「お前がやらなさすぎなだけだ」
そう言って手を振りキリトと別れる。さて、家に戻るか
「ふむ……」
携帯でガンゲイル・オンラインを検索しながら電車に乗り込む
この時間帯はあまり人がいない。何気なく辺りを見回すと詩乃が座席に座っていた。……電車で偶然知り合いに会うってどんな確率だよ
「よう、詩乃」
「ひゃっ……」
「そんなに驚くことは無いだろうに」
声をかけると詩乃は少し飛び上がった。苦笑しつつ詩乃の手元を覗き込む。そこにあった携帯の液晶画面にはガンゲイル・オンライン(・・・)の文字が
俺の視線に気付くと詩乃はあわてて携帯を閉じる
「……見た?」
「何を?」
とぼける俺。理由は自分でもわからなかった
「そう……」
目に見えてほっとする詩乃。……詩乃は隠し事ができないタイプだな
「今、帰りか?」
「うん。ちょっと、買い物に」
買い物袋を左右に揺らし、微笑む詩乃
俺は詩乃が座っている場所の近くに立つ。……ねばつく様な視線から詩乃を隠す様に
「燐こそ。どこに行ってたの?」
「俺はちょっと野暮用。知り合いとお茶してた」
菊岡を知り合いとカウントしたくないが……
「燐……」
しばらく沈黙の後、急に詩乃が口を開いた
「私……強くなるから」
「ああ……」
その言葉は俺にたいしての宣言か、また自分に言い聞かせたものか、俺には判断できなかった
「死銃……ね……」
詩乃と駅を出たところで別れる。しばらく出てくる人の波を眺めているが視線の主はわからなかった
おそらく最後の一人だろう人が出てきたのを確認し、俺は家に向かう
「……とりあえず、直接戦わないとわからないよな」
戦闘形態を見れば誰なのか判別できる自信がある
「っと、ただいま」
考え事をしているといつの間にか家に到着していた
帰るとすぐに、分けてもらった自分の部屋に向かう。すぐにパソコンを立ち上げ、ガンゲイル・オンラインについての下調べをする
「バレット・オブ・バレッツか……」
次、狙うとしたらここだろう。中継も入り、知名度もかなりある。今までの死銃の行動から、目立ちたいらしい、ということがわかっている。格好の獲物だろう。しかし……
「詩乃……」
詩乃が見ていたページ。それはガンゲイル・オンラインで、かなりの有名人のページだということがわかった。前回大会にも出場して、上位入賞経験も持つ
「詩乃も出場する可能性が高いな」
観客という可能性もあるが、観客ならばあんな眼にはならない。あれは間違いかく戦士の眼だ。追い詰められた、な
俺は直葉が呼びに来るまで考え事に耽っていた
後書き
蕾姫「いろいろ伏線張りな回でした」
リン「あからさま過ぎないか?」
蕾姫「俺にはこれが限界です……。まあ、次回にはガンゲイル・オンライン内に入ります!」
リン「ようやくか……」
蕾姫「アリアの方と同時執筆なんで多少遅くなりますが、よろしくお願いします……。まあ、メインはこっちなんですけどね」
リン「まあ、よろしく頼む」
ではでは、感想その他お待ちしています
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