久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十七話 人との闘いその八
そしてその商業科の生徒だったとだ。上城は話したのである。
「いじめられていた人も同じ商業科で」
「同じ科だったの」
「幼稚園の頃から一緒だったらしいけれどね」
「その幼馴染みの人をいじめていたの」
「で、そのことが公になって凄い責められたらしいんだ」
いじめっ子がだ。そうなったというのだ。
「もう公衆の面前で謝罪させられたり家まで糾弾に来てね」
「えっ、家までって」
このことを聞いてだ。樹里は最初に言葉を失った。
「そんなの。幾ら何でも」
「その定食屋さんがある商店街のあちこちに貼り紙もしてね」
「その人がいじめをしてたって?」
「そう。その貼り紙までして商店街中に言いふらして回ったらしいんだ」
「それってルール違反じゃないの?」
「ルール違反どころじゃないよ」
上城は遠い目からだ。嫌悪を露わにした目にさせていた。
その目で前を見ながらだ。彼は言うのだった。
「犯罪だと思うよ。そこまでいったら」
「そうよね。やっぱり」
「けれどね。そこまでされたらわかるよね」
「お店が」
「うん、一旦潰れて家族も離散してね」
「酷い話ね」
「そのいじめていた人もノイローゼになってね」
いじめの報い、それによってだった。
「ぼろぼろになったらしいよ」
「よくそれで助かったわね」
「何とかね。いじめられていた人と仲直りできて」
「それでなの」
「助けてくれる人もいて何とかなったんだ」
「何とかなったのね」
「八条グループの偉い人の耳にも入って」
こうしたこともあったというのだ。
「それで何とかね」
「その人も助けてくれたの」
「うん、そうなんだ」
このことも話すのだった。
「だから一家も戻ってお店もまたやれるようになったんだ」
「そうなの。よかったわね」
「いじめは確かに最低の行いだけれど」
難しい顔になってだ。上城はまた言った。
「その糾弾もあまり酷いと」
「同じよね」
「それもまたいじめじゃないかな」
「そうね。いじめっていうか」
「それはもう虐待とかそんなものだよ」
いじめという域を超えてだ。それだというのだ。
「その人も確かに酷いことをしたけれど」
「それ以上に酷いことをしたらね」
「駄目だよね」
「そう思うわ。私も」
「うん。僕いじめとかは絶対に嫌だよ」
そうしたことはだ。上城の最も憎むことだった。
だからだ。こう言うのだった。
「そんなことは間違ってるからね」
「そうよね。私も」
「村山さんもいじめ嫌いだよね」
「やっぱり何度も見てきたけれど」
「どうしてきたの?僕はその都度止めてたけれど」
「してきたわ。止めないと絶対に後で後悔するから」
目の前で起こっている醜いことを止められずそれによって傷つく人がいること、そのことをだというのだ。
「だからね。その場合はね」
「僕もね。そうした後悔はね」
「したくないからよね」
「子供の頃。幼稚園の頃に一回あって」
いじめが目の前に、それでだというのだ。
「それを見て見ぬふりをしたんだ。するとね」
「するとって?」
「幼稚園の先生に怒られたんだ」
そうなったというのだ。その時に。
「いじめを見て見ぬふりをするのはいじめをしているのと同じだって」
「それで人がいじめられてるからよね」
「うん、言われたよ」
そうだというのだ。
ページ上へ戻る