スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第七十七話 確信へ
第七十七話 確信へ
基地で雑務を行い続けるロンド=ベル。今のところ戦闘はなかった。
だがそれでもであった。彼等は多忙な日々を過ごしていた。戦闘で荒れ果てた基地の復興にあたっていたのである。総員出動であった。
「やれやれってところだぜ」
ビーチャがぼやいていた。
「戦争がなくても仕事はあるんだな」
「全くだね」
モンドが彼の言葉に頷く。二人はそれぞれモビルスーツに乗って作業に当たっていた。
「基地の整備もあるなんて」
「しかし。凄いね」
イーノは苦笑いを浮かべている。
「ここまで派手に破壊されるなんて」
「随分暴れたしね」
エルが笑って言う。
「それも当然だね」
「あたし達も随分とやったしね」
ルーにも心当たりのあることであった。
「その結果ってやつだね」
「これ終わったらお風呂入らない?」
「ああ、いいなそれ」
プルツーがプルの言葉に頷く。
「ここのお風呂どうなのかな」
「かなりいいみたいだぞ」
「ここまで来て風呂かよ」
ジュドーは二人の話を聞いてぼやく。
「全く。何時でも何処でも風呂だよな」
「そういうお兄ちゃんはね」
ダブルゼータに乗る彼に通信を入れてきたのはリィナだった。
「下着替えなさい、いい加減」
「まだ一週間じゃねえかよ」
「一週間もよ」
怒った顔で兄に告げる。
「全く。何時まではくのよ」
「トランクスは汚れが目立たないからいいんだよ」
「そういう問題じゃないの。匂うじゃない」
「俺はそんなの気にしねえぜ」
「周りは気にするの」
妹は兄を正論で攻める。
「そんなことしてたら何時か大変なことになるわよ」
「えらい言われ様だな、俺」
「トランクスにしろ下着は毎日替えろ」
マシュマーからも言われるのだった。
「私なぞは一日二回だぞ」
「風呂もかよ」
「うむ」
身だしなみに気を使う彼だった。
「しっかりとな。それは怠らない」
「お兄ちゃんも見習いなさい」
ここぞとばかりに兄に言う。
「マシュマーさんを。いいわね」
「何だよ、トランクス位でよ」
「汗かくでしょ」
あくまで正論で攻める。
「全く。何でお兄ちゃん達ってこんなに」
「おい、旦那」
リョーコがダイゴウジに声をかけていた。
「そっちはどうだ?」
「かなり終わった」
こうリョーコに答えるのだった。
「そっちはどうだ?」
「ああ、こっちも大丈夫だ」
「もうすぐ終わりでーーーす」
「一件落着」
ヒカルとイズミも答える。
「何か思ったよりも早く終わりそうですね」
「尾張で終わり」
「何でこうイズミの駄洒落は無理があるんだ?」
リョーコもいい加減疲れていた。
「何でもかんでも。全くな」
「とにかくよ」
いいタイミングでサブロウタがそのリョーコに声をかける。
「こっちはもう終わりだぜ」
「ああ、そうだったな」
「周りも何だかんだで随分終わってるしな」
「じゃあもうすぐアレクサンドリアに帰還だな」
「そうだな。さて、帰ったら」
いつもの軽い調子のサブロウタであった。
「食うか、羊をよ」
「あんたそればっかだな、最近」
「だって美味いじゃないか」
彼が羊に凝っている理由はこれに他ならなかった。
「だからだよ」
「まあ美味いことは美味いな」
「帰還は明日ってところかな」
こうも予想を立てる。
「今日でこの基地ともお別れかって思うと」
「名残惜しくはあるよな」
こんな話をしつつ作業をしていた。実際に作業はこの日で終わり翌日ロンド=ベルはアレクサンドリアに向かって帰った。その彼等のところに報告が届いた。
「ああ、そっちは終わったそうだな」
「おや、お久し振りですな」
アデナウヤーがモニターに出ている。大文字が彼に応える。
「お元気そうで何よりです」
「いや、最近実に多忙でね」
うっすらと苦笑いを浮かべて大文字に言葉を返してきた。
「どうにもこうにも。全く」
「そちらもお忙しいですか」
「暇はできないね」
今度はこう答えるのだった。
「当分の間はね」
「そうですか」
「こうまで戦う相手が多いと」
彼にしろロンド=ベルと同じ理由で多忙なのだった。
「どうしてもね。作成する書類も決裁するべき事柄も多い」
「それでですか」
「三輪長官の後始末が終わったと思ったらすぐこれだ」
彼の悩みは尽きないのであった。
「どうしたものか、全く」
「そちらも大変なようで」
「まあ前線で戦う君達程ではないが」
ここではロンド=ベルの面々を気遣う。
「やはり大変だよ」
「今は何処も同じですな」
「既に基地には連邦軍が向かっている」
アデナウヤーはここで話を変えてきた。
「もう基地には入っているかな」
「早いですな」
「君達に合わせた」
こうも述べる。
「あえて早く行ってもらったというわけだ」
「そうでしたか」
「うん。さて」
また話を変えてきたアデナウヤーであった。
「クエスは元気かな」
「ええ、まあ」
すぐに彼に答えるのだった。
「至って。戦場で頑張っておられます」
「そうか。思えば長い間戦っているものだ」
ここで彼は珍しく父親の顔になるのだった。
「家を出て。それからだからな」
「会われますか」
「いや、いい」
拒みつつ寂しげな笑みを見せる。
「残念ながら私はいい父親ではないからな」
「それは」
「事実だから仕方ない」
自分でこう言うのであった。
「これはな。さて、と」
「はい」
「私はこれで消えるとしよう」
こう答えもした。
「君達も多忙だし私もな」
「そうですか」
「これでミスマル長官や岡長官がいないと私は過労死だったよ」
「それ程までですか」
「書類は増えることはあっても減ることはないよ」
今の連邦軍上層部の状況である。
「当分の間ね」
「そうですか。それでは」
「ああ、また会おう。それでは」
「お疲れ様でした」
最後の挨拶をして通信を切るのだった。まずはこれで話を終わるのだった。
中央アフリカから北上しアスラン=ハイダムのところに来た時に。不意にレーダーに反応があった。すぐに総員配置につく。
「今度は何処のどいつだ!?」
「どの連中なの?」
「これはゲストですね」
エイタが報告する。
「ゲストのマシンが前方に展開しています」
「ゲストか」
「はい」
格納庫から話を聞く一同に答える。
「既にかなりの数が戦闘態勢に入っています。ですから」
「よし、総員出撃だ」
ダイテツはそれを聞いてすぐに指示を出した。
「ゲストならインスペクターと同じ兵器だったな」
「ええ、そうです」
またエイタが答える。
「ですから戦い方も」
「同じになるか」
「いや、そうとは限らないな」
しかしダイテツはこうテツヤに言葉を返す。
「違いますか」
「指揮官による」
彼はこう言うのだった。
「敵の指揮官によってだ。戦い方が違ってくるぞ」
「その通りでした」
「敵の指揮官機がわかるか」
「はい」
またエイタが答える。
「後方にいるあの青いマシンです」
「ふむ、あれだな」
武骨なデザインのマシンがそこにいた。何処となくガンダムに似ている。
「あのマシンか」
「どうされますか?」
「まずは向かって来る敵とだけ戦う」
彼はまずそうして戦うつもりであった。
「それからじっくりとだ。焦る必要はない」
「布陣は」
「ここだ」
こう言ってダムの右翼を指し示した。
「ここに布陣する。いいな」
「わかりました。それでは」
「うむ、すぐにかかるぞ」
「はい」
「敵はおそらくまだ出て来る」
こう呼んでいるダイテツだった。
「それならばだ。油断してはならない」
「そうですね。それでは」
「戦闘開始だ」
こうしてロンド=ベルは戦闘態勢に入った。対するゲストではその青いマシンに兵士達がかなり念入りに通信を入れていたのであった。
「では隊長」
「援軍が来るまで」
「そうだ」
紫の髪の男が彼等の言葉に頷いていた。
「動くな。いいな」
「はっ、それでは」
「そのように」
そして彼等もそれに頷くのであった。慎重な面持ちで。
「させて頂きます」
「その援軍を指揮しておられるのは」
「ゼブリーズ=フルショワ」
彼はまずこの名前を出した。
「そしてもう一人だ」
「ではあの方ですね」
「・・・・・・ああ」
何故かここで男の顔と声が曇る。
「彼女だ」
「ジャスティヌ=サフラワース将軍ですね」
「我々もそろそろ時だからな」
「確かに」
「今はインスペクターの勢力も弱まっていますし」
どうやらそうした情勢も把握しているらしい。
「動くとすれば今ですね」
「ですが」
「ですが。何だ?」
「ロンド=ベルだけではないようです」
ここで部下の一人が報告してきたのだった。
「どうやら」
「!?援軍ではないな」
「あとそれぞれ二分後、三分後です」
別の部下が報告する。
「ですからそれにはまだ」
「その軍は何分後こちらに到着するか」
「一分後です」
こうも報告が入る。
「一分後我等の左翼に」
「そうか。出て来るか」
「何者でしょうか」
「まだそこまではわからん」
「では閣下」
今の言葉を聞いた部下達の声が変わった。
「やはりここは」
「迎撃ですか」
「その心積もりはしておくことだな」
彼もそれは忘れてはいないのであった。
「わかったな。それは」
「はい、それでは」
「今は護りを固めつつ」
「いいか」
彼はあらためて指示を出した。
「迂闊に前に出るな」
「はっ」
皆それに頷く。
「今は防御を固める、いいな」
「わかりました」
こうしてゲストも動くことはなかった。まずは両軍睨み合うことになった。それはロンド=ベルからもはっきりと確認されていた、
「動きませんね」
「そうだな」
マイヨはダンの言葉に頷いた。
「レーダーに反応があるせいだな」
「我が軍から見て右翼です」
カールが彼に答える。
「そちらに一分後です」
「何者だと思うか」
「おそらくですが」
ウェルナーがマイヨの問いに言葉を返す。
「デュミナスではないでしょうか」
「デュミナスか」
「今シャドウミラーもインスペクターもその戦力を大きく減らしています」
「確かにな」
これはマイヨもよくわかっていた。これまでの戦闘の結果だ。
「バルマーも今のところ大人しいですし。それならば」
「それではだ」
ここでマイヨは言う。
「今は守りを固めるべきだな。目の前の彼等と同じで」
「そうするべきだな」
その彼にクリフが言ってきた。
「導師クリフか」
「そうだ。嫌な気配を感じる」
見ればモニターの彼の顔が曇っていた。
「この気配はおそらくは」
「何かあるというのだな」
「あのアインストとはまた違う」
アインストの話も出た。
「より別の。やはりこれは」
「デュミナスか」
「どうやらですが」
プリシラも言ってきた。
「修羅はいません」
「いないか」
「彼等の気配は感じません」
こうマイヨ達に述べる。
「おそらくデュミナスだけです」
「だたら安心ってわけにはいかないのがねえ」
「その通りだな」
アムとレッシィはここで顔を曇らせるのだった。
「あの連中も癖あるからね」
「子供にしてはな」
「それも怪しいよ」
今度はアスコットが言ってきた。
「怪しいって?」
「うん。確かにあの子達は子供だよ」
今のアスコットは背が伸びているから言える言葉であった。
「それでも。そこには計算があるかも知れないよ」
「計算だと」
ギャブレーは今のアスコットの言葉にいぶかしむ顔になった。
「言っている意味がよくわからぬのだが」
「だから。あれやあれ」
カルディナが彼に答える。
「ギャブやん」
「また随分変わった仇名だな」
カルディナに言われてさらにいぶかしむ顔になる。
「ギャブやんか」
「そや、ええ仇名やろ」
「そうは思わないが。とにかくだ」
「ああ」
「計算だというのか?それは一体」
「あの三人の子供達からはあの気配がするのよ」
アルシオーネが彼に述べる。
「あの気配!?」
「人造人間の気配がするの」
こう述べたのであった。
「何故かわからないけれど」
「人造人間のか」
ちらりとバルマーのことを考えたギャブレーだった。
「あの類か」
「まだ確信はないけれど」
「だからだ。気をつけてくれ」
フェリオも忠告してきた。
「それに何か企んでいるみたいだしな」
「そういえば前も」
ダバは先の彼等との戦いを思い出していた。
「甲児達を狙ったな」
「あれって何だったのかしら」
「それはわからない。けれど」
リリスに対して答えるダバだった。
「俺達の技術を狙っているのかも知れないな」
「私達の?」
「我々には様々な技術が集まっている」
クリフがまた言う。
「だからだ。用心しておいてくれ」
「来るぞ」
ラファーガが言ったその時だった。
「その彼等がな」
「右翼に来ました」
メグミが報告する。
「デュミナスの軍勢です」
「久し振りってところね」
当然ティスもいる。彼女はロンド=ベルに対して声をかけてきた。
「元気そうで何か腹が立つわ」
「やかしましいわこの小童があ!」
その彼女にケルナグールが怒鳴る。
「少しは可愛くせんか。それではわしみたいないい男はもらえんぞ!」
「ちょっと待ちなさいよおっさん!」
ティスも今のケルナグールの言葉には本気で怒った。
「おっさんの何処がいい男なのよ!」
「かみさんに言われとるわ!」
「じゃあその奥さんがおかしいのよ!」
「何ィ!?」
ケルナグールの逆鱗に見事に触れていた。
「貴様、今何と言った!わしのかみさんがおかしいだと!」
「その青い肌は何なのよ!」
「わしの個性だ!」
随分と強引な言葉である。
「気にするな!」
「気にするわよ!あたしはおっさんなんか興味じゃないわよ!」
「まあ落ち着け娘よ」
今度はカットナルが出て来た。
「カルシウムが足りないようだぞ」
「放っておいてよ」
「牛乳がいいぞ」
そしてこうも言う。
「あと薬はだな。我がカットナル製薬の」
「こんな怪しい人が社長さん!?」
「怪しいとは何だ怪しいとは」
「その格好の何処が怪しくないのよ」
「なぬっ!?」
「眼帯して肩に烏止まらせて」
確かにすこぶる怪しい格好だ。
「何処が怪しくないっていうのよ」
「貴様、言ってはならんことを言ったな」
「だから何だっていうのよ!」
「美しくない」
ブンドル参戦であった。
「全く。子供相手に何をしているのだ」
「そこのお兄ちゃんもおかしいわね」
「な・・・・・・」
今のティスの言葉を聞いて愕然とするブンドルだった。
「この私が。おかしいだと」
「そうじゃない。薔薇まで持って」
今も確かに持っている。
「ワイングラス掲げて。思いきり変人さんじゃない」
「私を変人だと」
「さあ、その奇人変人さんを相手にしてあげるわよ」
ティスの口の悪さは続く。
「かかって来なさい、ついでにゲストもね」
「我々のことも知っているのか」
男の目が光った。
「そうよ。グロフィス=ロフレインよね」
「むっ」
「仇名はロフだったっけ。士官学校を首席で卒業だったわね」
「俺のことも知っているというのか」
「デュミナスを甘くみないことよ」
くすりと笑って彼に告げる。
「こんな情報は簡単に手に入るわ」
「情報収集能力も高いということか」
「ゲストに対してだけじゃない」
今度はラリアーが言う。
「他の組織のことも」
「では我々とインスペクターのことも知っているな」
「勿論よ」
またティスが彼に答える。
「わからない筈がないじゃない」
「けれどそれでも」
ラリアーもまた再び口を開いてきた。
「時空だけはわからない」
「時空!?」
「ラリアー」
しかしその彼をデスピニスが制止する。
「それは言ってな」
「そうだったな、済まない」
デスピニスに言われて彼も言葉を止めた。
「言わないでおこう」
「ええ」
「まああんた達はただ倒すだけだから」
ティスのロフに対する言葉は実に素っ気無い。
「安心していいわよ」
「倒すだけ」
今の彼女の言葉を聞いて眉を動かしたのはラージであった。
「ではやはり彼等の目的は」
「ラージさん、どうしたんですか?」
「いえ、別に」
ミズホの問いにまずは言葉を打ち消す。
「何でもありません。今は」
「今はですか」
「後でお話します」
そしてこう述べるのだった。
「その時宜しく御願いします」
「わかりました」
「どうやら。大きく動くかも知れません」
そのうえでこうも言うラージであった。
「デュミナスに関しては」
「さて、と」
ティスはここでまた言ってきた。
「両方相手にしてあげるわ」
「俺達もってわけかよ」
「そういうことよ」
ラウルに対して答える。
「いいわね、それで」
「へっ、偉い自信家だな」
「そうそう上手くいかないわよ」
フィオナも彼女に言葉を返す。
「幾らその数でもね」
「いや、そうも言ってはいられませんよ」
しかしここでカラスが言うのだった。
「カラスさん」
「来ていますので、また」
「またっていうとやっぱり」
「今度はゲストです」
このことをフィオナ達に教える。
「ゲストの軍勢が二度に渡って来ますよ」
「二度も」
「ですから。デュミナスだけではありませんので」
このことが強調される。
「気を抜かれることなくよう」
「来たぞ」
ドレルが言った。
「左翼だ」
「そしてもう一分後にも来る」
ザビーネも報告してきた。
「どうやらここでも激しい戦いになるな」
「来ました!」
マヤが声をあげた。するとロンド=ベルから見て左翼にあらたな敵軍が出て来た。
「パターンオレンジ、ゲストです!」
「ま~~~たせたなロフ」
「ゼブ、御前か」
長い顔のあばたの男がロフのマシンのモニターに顔を見せていた。
「やはり御前が来たか」
「助っ人に来たぜ」
「多くは言わん。頼む」
「じゃ~~~よ」
妙に間の伸びた声で語る。
「相手してやるぜ。ロンド=ベル」
「やはり出て来たか」
「ええ」
セシリーはシーブックの言葉に頷く。
「どちらを相手にするべきか」
「それが問題だけれど」
「左に回る」
この判断を下したのはアムロだった。
「左ですか」
「そうだ。一分後また敵の援軍が来るな」
「はい」
シーブックが彼の言葉に頷く。
「レーダーにはっきりと映っています」
「そうだな。だからだ」
「だからですか」
「一度にゲストとデュミナスの相手をするのは愚だ」
これが彼の判断である。
「二つの方向に仕掛けるのはな」
「だから左に回るのですね」
「そうだ。一分後出て来る新手のゲストに向かう」
「そのうえでゲスト全軍に向かい」
セシリーはアムロの作戦を分析していた。
「そしてそこからですね。両方を相手にすると」
「同じ方向で二つの敵を相手にするのは容易い」
どうせ双方を一度に相手にするならということだった。
「だからだ。それで行くぞ」
「わかりました。それでは」
「では決まりだな。ブライト」
「うむ」
ブライトもまたアムロのその言葉に頷く。
「全軍これより左に迂回する。攻撃開始は一分後だ」
「了解」
「そのうえでゲスト、デュミナス両軍に攻撃を仕掛ける、いいな」
「はい!」
こうしてロンド=ベルの戦術が決定した。彼等はまずデュミナスの矛先をかわす形で左に迂回した。これを受けてデュミナスはその攻撃をゲストに向けさせた。
「それならこっちよ!」
「来たか」
「ロフ、俺がい~~~くぜ」
ゼブとその部隊がデュミナスに向かう。その間にロフの軍は少し前に出る。ロンド=ベルに備える形に布陣をしつつだった。
そして一分後。そのゲストの援軍がまた出て来た。
「ロフ、来たわ」
「セティか」
「どうやら混戦のようね」
赤い髪で左目に変わったスカウターをしている。ゲストの将軍の一人ジャスティヌ=シャフラワースであった。
「ロンド=ベルだけじゃなくデュミナスまで」
「今ロンド=ベルがこちらに向かってきている」
「ええ」
それはもう把握しているセティであった。
「来ているわね、確かに」
「デュミナスは今はゼブが止めている」
「じゃあ私達は」
「ロンド=ベルだ」
ロフの決断はロンド=ベルに向けられた。
「それでいいな」
「わかったわ。それじゃあ」
「全軍迎撃開始だ」
遂にここで指示を出すロフだった。
「ロンド=ベルに備えよ。いいな」
「はっ!」
全軍それに応える。そうしてロンド=ベルに向かう。だがここでそれを見たデュミナスの軍勢もその動きを突如として変えるのだった。
「来たわよ、奴等」
「成程、そう来たか」
ラリアーがティスの言葉を受けてロンド=ベルに顔を向ける。
「僕達とゲストを一度に同じ方向で相手にするつもりか」
「考えてるっていえば考えてるわね」
「合理的だよ」
ラリアーはロンド=ベルをかなり正統に評価していた。
「彼等もね」
「それでどうするの?」
ティスはあらためてラリアーに問う。
「先にゲストをやっつけちゃう?それとも」
「いや」
だがここで。彼は言うのだった。
「まずは目的を果たそう」
「そう、やっぱりね」
「ゲストは後回しだ」
こう決断を下した。
「そしてその分を」
「ロンド=ベルってわけね」
「デスピニス」
ラリアーはデスピニスにも声をかけた。
「まずはゲストへの攻撃を中止しよう」
「攻めないのね」
「彼等は後回しだ。まずはロンド=ベルだ」
「わかったわ」
「もうゲストにはないことはわかっている」
これは彼等にだけわかる言葉であった。
「それなら。彼等だ」
「ロンド=ベルねえ」
ティスは楽しげな笑みを浮かべてロンド=ベルを見やる。既に彼等はゲストの軍勢と戦闘を開始している。
「候補者は多いみたいだけれどね」
「いや、それも限られてきた」
「あら、そうなの」
「おそらくは」
ここでラリアーの目が光る。
「あの二機だ。多分ね」
「狙う?」
ある二機のマシンを見るラリアーに対して問うティスであった。
「ここは」
「勿論。デスピニス」
「ええ」
「行こう」
また彼女にも声をかけるのであった。
「ここで。いいね」
「わかったわ。それじゃあ」
「ゲストへの攻撃は中止するよ」
このこともまた伝える。
「それよりもだ。今は」
「わかったわ」
「私達の目的を」
三人はゲストとの戦闘を中断し全軍でロンド=ベルに向かって来た。それを見てゲストもその戦力を全てロンド=ベルに向けた。二つの軍が並んでロンド=ベルと戦う形になった。
「これはやりやすいな」
「ああ」
フェイはアレンの言葉に頷く。
「敵が同じ方向から来りゃよ」
「一つと同じってわけだ」
言いながらオーラ斬りで敵を次々と両断していく。
「どれだけ来てもその方向が一つなら」
「やりやすいって話だ」
ゲストもデュミナスも関係なく斬っていく。その中で彼等は両軍を徐々に押していった。ここでブライトは次の指示を下すのであった。
「包囲だ」
「囲みますか」
「そうだ、勢いは我々にある」
こうトーレスに答える。
「この機を逃してはならない」
「わかりました。それでは」
今度はサエグサが答えた。
「すぐに全軍に伝えます」
「包囲ですね」
「この機を逃したら苦しくなるのはこっちだ」
ブライトは歴戦の勘からこのことを察知していたのである。
「だからだ。すぐに動くぞ」
「了解っ」
こうしてロンド=ベルは今度は敵の包囲にかかった。すぐに左右に軍を動かし包囲する。そのうえでまた総攻撃に移るのであった。
「くっ、相変わらず動きが速いわね!」
「囲まれたか」
ティスとラリアーは取り囲まれた自軍を見て声をあげる。
「ましてやゲストの奴等と一緒だし」
「こちら側でも戦闘になっているよ」
「どうするべきだと思う?」
ティスはラリアーに対して問う。
「退く?それとも」
「退こう」
ラリアーの決断はこれであった。
「既にこちらの数は半分を割っている。ロンド=ベル、ゲスト双方との戦いで」
「ロンド=ベルも強かったけれど」
ティスは忌々しげに語る。
「ゲストの奴等も強かったわね」
「特にあの三人」
ゼブ、セティ、ロフのことであった。
「あの三人のマシンはデータ以上だった。さらに強くなっているね」
「ええ、確かにね」
「ゲイオス=グルードの数も多かったし」
ゲスト、インスペクターの誇る高性能マシンである。
「それのせいもあるね。だからここは」
「撤退ね」
「デスピニス」
ラリアーはデスピニスにも声をかけた。
「撤退するよ。いいね」
「ええ」
「けれど」
しかしここでラリアーの目が光った。
「その前に」
「仕事はしておくのね」
「上手くいくかどうかはわからないけれどね」
一応はこう述べるラリアーであった。
「それでも。やっておこう」
「わかったわ。それじゃあ」
今度はティスがデスピニスに声をかける。
「三人で行くわよ、いいわね」
「ええ、わかったわ」
おどおどした様子でティスに答えるデスピニスであった。
「それなら」
「あの二機だ」
ラリアーが目標を指し示す。
「あの二機を奪う。そのうえで撤退しよう」
「時間は・・・・・・あまりないわね」
ティスはここで周りを見回した。デュミナスの軍はその数を一秒ごとに大きく減らしている。このままでは消滅も時間の問題であった。
「だからこそね」
「仕掛けるよ」
「うん」
三人はその二機のマシンに向かった。そのマシン達とは。
「デュミナスの三人が来たぜ!」
「ならば!」
デュオとウーヒェイが声をあげた。彼等は丁度前線でデュミナスのマシンを斬っていたのだ。
「行くぜ!」
「ここで貴様等を!」
「生憎だけれどね!」
しかしティスは二人を振り切りにかかった。
「今はあんた達の相手をしているわけにはいかないのよ!」
「今の僕達の相手は君達じゃない」
「だから」
「!?こいつ等」
「何処に行くつもりだ」
振り切られた二人はそれでも彼等を追うことにした。それにカトルとトロワも続く。カトルはその中でいぶかしむ顔でトロワに尋ねるのだった。
「おかしいですね」
「ああ」
トロワも彼の言葉に頷く。
「明らかにな」
「どうしてこの時に突撃して」
「しかも俺達を振り切るか」
彼等はここに不自然なものをはっきりと感じていたのであった。
「何かがありますね」
「そうだな。だがそもの何かが」
「はい、わかりません」
「どっちにしろ急がないといけねえ話みてえだな」
「あの三人にとってはな」
デュオとウーヒェイも言う。
「けれどよ、こっちに害になるのならよ」
「やらせん!」
二人を先頭に三人を追う四人であった。その三人が目指す先にいたのは。
「!?あいつ等こっちに来るのか」
「何でまた」
ラウルとフィオナは自分達のエクサランスのところに来る三機を見て首を傾げていた。二人はどちらかというとゲストをメインに相手をしていた。
「方角もおかしいしよ」
「撤退する気はないの?」
「撤退?するわよ」
ティスはフィオナの今の言葉に応えた。
「けれどね。その前に」
「その前に」
「エクサランス」
今彼女はエクサランスの名を呼んだ。
「それを頂くわ」
「遂に見つけた」
ラリアーも言う。
「デュミナスの為の力」
「だから。御免なさい」
デスピニスは二人に対して謝る。
「その力。私達に」
「!?何訳わかんねえこと言ってんだよ」
「そうよ」
ラウルもフィオナも三人の言っている意味が全くわからなかった。
「何が力だ?」
「このエクサランスの」
「やはり」
だが今の彼等の会話を聞いて。ラージは頷くのであった。
「そういうことでしたか。僕の予想通りでしたね」
「ラージさん」
ミズホがここで彼に声をかける。
「やっぱりそうでしたね」
「はい、ミズホ」
「それでどうしますか?」
ミズホはラージに対して尋ねる。
「やっぱり。ここは」
「いえ、まだです」
しかし彼はミズホの言葉に首を横に振るのだった。
「それはまだです。今は無理です」
「無理ですか」
「戦闘中です」
理由はそれであった。
「ですから。今は」
「それじゃあ今度ですね」
「ええ、そのつもりです」
こうミズホに答えた。
「機を見て動きましょう。いいですね」
「わかりました」
「さて。これではっきりとわかりました」
ラージはあらためてデュミナスの三人を見て言う。
「彼等の真の狙いが。そういうことでしたか」
だが今は彼は戦いを見ているだけであった。戦いは三人がラウル達に突き進むものであった。
「行くわよ!」
「君達自身に用はないんだ」
「用があるのは」
完全に動きを合わせてラウル達に迫る。
「あんた達の乗っているそのマシン!」
「デュミナスの為に」
「その力を使わせて」
「ふざけたこと言ってんじゃねえ!」
「そうよ!」
二人はその三人の突撃と共の攻撃をかわして言葉を返した。
「何が何だか全くわかんねえしよ!」
「はいそうですかって渡してたまるものですか!」
怒りを向けて三人に告げる。
「大体理由は何だよ!」
「理由聞いても渡さないけれどね!」
「理由はあんた達には関係ないわ」
ティスはこう言葉を返すのだった。
「だから一切気にしなくていいのよ」
「余計に訳がわかんねえよ」
「何が言いたいのよ」
「とにかく」
またラリアーが攻撃を仕掛けようとする。
「僕達にはエクサランスの力が必要なんだ」
「だから」
デスピニスも二人に動きを合わせていた。
「その力を」
「力、力ってなあ」
「だからこれはあたし達のなのよ」
二人も退かない。
「渡さねえぞ、絶対にな!」
「あたし達だって戦わないといけないんだからね!」
二人もまた攻撃を仕掛ける。三人と二人の攻撃が激しくぶつかり合う。しかし勝ったのは三人だった。二機のエクサランスは吹き飛ばされ動かなくなった。
「ちっ、こいつ等」
「普段よりも」
「あたし達だってやらないといけないのよ」
ティスの顔がいつもと違っていた。
「デュミナスの為にね」
「さあ、君達に用はないんだ」
ラリアーはエクサランスに近付いてきていた。
「早く降りるといい。命は取らない」
「だからもう」
そしてデスピニスもいる。
「私達に」
「くっ、何のつもりだよこいつ等」
「どうしてここまでエクサランスを・・・・・・」
呻きながらラリアーのマシンを見る。しかしも動けない。遂にエクサランスが奪われようとしたその時だった。ラリアーの前に漆黒のガンダムが姿を現わした。
「なっ!?」
「油断したな、おい!」
デュオであった。そして彼はデスサイズヘルカスタムに乗っていた。
「俺達は追ってたんだよ!」
「その通りだ!」
「あんたまで!」
ウーヒェイのアルトロンカスタムはティスの前にいた。二機でそれぞれ二人の前に立ちはだかる。
「何てしつっこいのよ!女の子に嫌われるわよ!」
「元々もててるから関係ねえぜ!」
「戦場に男も女も関係ない」
それぞれの口でティスに言い返す。
「わかったらさっさと帰りやがれ!」
「ここは通さん!」
「くっ、デスピニス」
ラリアーは自分が足止めされているので残っているデスピニスに声をかけた。
「頼む、ここは」
「えっ、ええ」
やはりおどおどとした様子で答えてからエクサランスに向かう。しかしその彼女の前にも砂漠から姿を現わしたガンダムがやって来たのだった。
「ここは通しませんよ」
「どうして・・・・・・」
「どうしてもこうしてもありません」
カトルはサンドロックカスタムの両手の刀を構えつつ彼女に言葉を返す。
「ラウル君もフィオナさんも渡すわけにはいかないからです」
「けれどエクサランスは私達の」
デスピニスは困った顔でカトルに言葉を返す。
「力になるから。デュミナス様の」
「御前達の事情があるのは聞いた」
トロワは三組の戦闘の後方にいた。
「しかしだ。だからといって二人とそのマシンを渡すわけにはいかない」
「そういうことです」
カトルも三人に対して言う。
「どうしてもというのなら僕達が」
「相手してやるからよ!」
「覚悟するのだな」
「ちっ、厄介なことになったね」
ティスは四機のガンダムを前にして舌打ちした。彼はデュオと闘い続けている。
「ここでこの連中が来るなんてさ」
「彼等だけではないしね」
「えっ!?」
「見るんだ」
ラリアーの言葉に顔を向ける。するとそこには何十機ものマシンがカトルの周りに展開していた。
「何なのよ、あれ!?」
「マグアナック隊だ」
こうティスに答えるのだった。
「彼等はサンドロックカスタムの指揮下にある。だから」
「ここにも来たってわけね」
「数での劣勢は絶望的だね」
ラリアーはまた言う。
「ここは。もう」
「じゃあ退くっていうの?」
「それしかない」
ラリアーも苦い顔をしていたがやはりそれしかないこともわかっていた。
「残念だけれどね」
「ここまで来てそれはないんじゃないの?」
「チャンスはまたある」
苦い顔をしているがそれでも冷静さは保っているラリアーであった。
「また。だから今は」
「わかったわ撤退ね」
「デスピニス」
「ええ」
デスピニスは静かにラリアーの言葉に頷いた。
「わかったわ」
「全軍撤退だ」
言いながらもう後方に退きだしていた。
「すぐに消えよう」
「わかったわよ」
「じゃあ」
ラリアーの言葉に頷くと三機のマシンもデュミナスの軍も姿を消した。後にはゲストが残ったが彼等も一点突破を仕掛けんとまだ包囲が完全でないポイントに向かった。
「敵が撤退に移っています」
「そうね」
ミネバはイリアの報告を受けていた。
「ハマーン」
「はい」
ここで彼女はハマーンを呼んだ。すぐにモニターにその赤い髪の女が出て来た。
「ここはどうしたらいいの?」
「我が軍の勝利は確実なものになっています」
「ええ」
「デュミナスを退け今はゲストも」
「それでゲストの軍勢は」
「既にその七割以上を撃破しています」
戦果としては満足すべきものであった。
「ですが既に我が軍もエネルギーと弾薬の多くを消耗しています」
「そうね。それは確かに」
「そして彼等は撤退せんと必死になっています」
ハマーンはこのことも把握していた。
「ここでこれ以上彼等を攻撃しては」
「無駄な損害を出すのね」
「その通りです。ですから」
ここまで話したうえでまたミネバに述べた。
「今は退かせましょう。決戦の時ではありません」
「わかったわ。では全軍集結」
ハマーンの言葉を受けたうえで指示を出した。
「敵の退路を開けて下がらせて」
「了解」
「わかったわ」
皆それを受けて攻撃を止めてゲストの軍勢を退かせる。攻撃限界点に達していたのも大きかった。その為彼等は下がりゲストを撤退させたのであった。撤退したゲストはそのまま何処かへと消えた。アスランハイダム近辺での戦いは幕を下ろしたのであった。
そして戦いが終わってから。ラウルとフィオナは言うのだった。
「あいつ等、俺達を狙ってたよな」
「ええ」
妹は怪訝な顔で兄の言葉に頷くのだった。
「はっきり言っていたわね」
「どうしてだ?」
ラウルも珍しく深刻な顔になっていた。
「何であの連中は俺達を」
「ねえラージ」
ここでフィオナはラージに対して問うた。
「どうしてかわかるかしら」
「どうしてか、ですか」
「そうよ。エクサランスに何かあるの?」
「そうだよな。そういえばよ」
ここでラウルも言う。
「エクサランスはブラックボックスになって部分があるよな」
「そうよね。それよ」
それについても言うフィオナであった。
「何なのかしらって前から思っていたけれど」
「あれは何なんだよ?」
「それは僕にもわかりません」
しかしラージもそれはわからないというのだった。
「何が何なのか」
「わからねえのかよ」
「申し訳ありません」
謝罪をすることはしてきた。
「エクサランスに最初からあったものでして」
「そうなの」
「何か不自然っていったら不自然だよな」
「そもそもよ」
フィオナは言葉を続けていく。
「エクサランスって最初からあったわよね」
「ああ」
妹の言葉に頷く。
「何かな。気付けばって感じだったよな」
「連邦軍にスカウトされて入ったけれど」
実は二人は民間からスカウトされて連邦軍第一遊撃隊に参加したのである。そのうえでロンド=ベルに合流して今に至るのである。
「エクサランスって最初は」
「ヒュッケバインとかと同じものだと思っていたよな」
「ええ」
実は二人は今までこう思っていたのである。
「それが何か違うみたいだけれど」
「しかもブラックボックスから」
「それに何かがあるんじゃないかしら」
フィオナは怪訝な顔で述べた。
「ひょっとしなくても。どうかしら」
「そうだよな。そこんとこ調べられねえか?」
「調べておきます」
ラージは一応は二人の言葉に頷きはする。
「ブラックボックスについても」
「ああ、頼むぜ」
「御願いするわ。あの三人」
二人は顔を顰めさせてまた語る。
「何か絶対あるな」
「エクサランスについても知ってるみたいね」
「それもまた調べておきますので」
「ラウルさん、フィオナさん」
今度はミズホが二人に声をかけてきた。
「おっ、何だ?」
「どうしたの、ミズホ」
「皆さんが御呼びですよ」
こう二人に言うのであった。
「何でも飲み会するとかで」
「ああ、それいいな」
「行こう、ラウル」
笑顔で兄に告げる。
「折角だしね」
「そうだな。じゃあラージ」
「はい」
「御前も後で来るよな」
「ええ、勿論です」
物静かな笑みで彼に答えるラージであった。
「少しここにいてから行かせて頂きます」
「そうか。じゃあ先に行っとくぜ」
「ええ」
「私も」
ミズホも言ってきた。
「後から行かせて頂きます」
「そうか。じゃあまた後でな」
「はい。それで御願いします」
にこりと笑って二人に述べるミズホであった。
「そういうことで」
こうして二人は先に行きラージとミズホが残った。この二人は二人だけになると深刻な顔になりそのうえで話をするのであった。
「先程のことですが」
「あのことですね」
「そうです。僕は考えているのですが」
その深刻な顔でミズホに答える。
「ここはですね」
「どうされますか?」
「思い切った手段に出ようと考えています」
「思い切った!?」
「ええ、そうです」
こうミズホに語る。
「彼等に対して」
「それで話が解決するのですね」
「します」
今度は断言であった。
「必ず。ですからここは僕に任せてくれますか」
「ラージさんにですか」
「はい。ミズホさん」
顔は真剣なものを増してきている。
「貴女にも協力して欲しいのですが」
「私にもですね」
「僕だけでは力が足りません」
また言う。
「ですから。御願いできますか」
「わかりました」
静かにラージの言葉に頷くのであった。
「では。覚悟を決めて」
「ええ。では時が来れば」
「動きますね」
「そうです。それにしても」
ここでラージは怪訝な顔になった。
「あのデュミナスというのは」
「勢力の名前でしょうか」
「それだけではないと思います」
ラージは直感で語っていた。
「おそらくは。ですが」
「それが何かまではわかりませんね」
「その通りです。何かまでは」
また怪訝な顔になっていた。
「わかりはしません」
「そうなんですよね。他の勢力もそうですけれど」
「特にデュミナスは異質なものがあります」
「異質ですか」
「他の勢力はこの世界を自分達のものにしようとしているか」
「若しくは」
「この地球圏を勢力下に収めようとしている」
おおまかに分けてこの二つなのだ。
「どちらかですが彼等は」
「そうした気配は明らかにありませんね」
「そうです、それよりも何か」
怪訝な顔での言葉が続けられる。
「何かを捜し求めています」
「そしてその何かは」
「エクサランスです」
ラージは言った。
「それは間違いなくエクサランスにあります」
「ではあのブラックボックスに」
「その通りです」
またミズホに答えた。
「間違いありません。実はですね」
「実は?」
「わかっているのです」
こうミズホに述べる。
「これからどうするべきかは」
「そうなんですか」
「僕達がどうするべきか。ですが」
「実行に移せなかったんですね」
「確信がありませんでした」
理由をそれだというのである。
「ですが今は」
「実行なんですね」
「ミズホ、構いませんか」
ミズホに顔を向けて問う。
「貴女を危険な目に遭わせてしまいます。それでも」
「いいです」
そして彼女はその言葉を反論することなく受け入れるのであった。
「この戦いで危険じゃなかったことはないですし」
「だからですか」
「それだけじゃないです」
強い声でラージに答える。
「私は。それで戦争が少しでも終わるのなら」
「それなら」
「戦います」
戦士の声だった。
「私もまた。ですから」
「そうですか。それでは」
「行きましょう」
「ええ。僕達の戦いへ」
二人は強い声で頷き合うのであった。二人にとっての戦いも今正念場を迎えようとしていた。
第七十七話完
2008・9・6
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