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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第七十六話 オペレーション=プランタジネット 後篇

               第七十六話 オペレーション=プランタジネット 後篇
「おいヴィガジ」
インスペクター基地中枢。メキボスがヴィガジに声をかけてきた。
「どうした?」
「さっきアギーハから連絡があった」
まずはこう切り出すのだった。
「退くらしい」
「くっ、相変わらずしぶとい連中だ」
ヴィガジはそれを聞いて憎々しげに呻いた。
「ならば俺が」
「当然俺も出るぞ」
「ああ、四天王全員で守るか」
「一応言っておくが」
メキボスはここでまたヴィガジに言ってきた。
「何だ?」
「ここで負けた場合のことは考えてあるな」
「撤退先か」
「そうさ。地球はもうない」
地球での拠点がここである。だから他に場所はないのだ。
「宇宙しかないが」
「月だ」
「月!?あそこか」
「そうだ。あの衛星に進出する」
彼はこうメキボスに述べた。
「それでどうだ」
「そうだな。悪くはない」
ヴィガジの意見を一応は認めた。
「しかしだ。あそこには地球人の基地も多いぞ」
「裏側がある」
ヴィガジは既に答えを用意しておいていたのだった。
「裏側に進出する。これでどうだ」
「わかった。じゃあそれは御前に任せるぞ」
「任せておけ。それではだ」
「来たぞ」
早速レーダーにエネルギー反応が見られた。基地の前にロンド=ベルの艦艇が集結していた。
「ロンド=ベルだ。もう来たな」
「済まないね」
ここでアギーハが司令室のモニターに出て来た。
「やられちまったよ。おめおめと逃げ帰って来たってわけさ」
「いや、それは間違いだな」
しかしメキボスはアギーハに対して言うのだった。
「違うっていうのかい」
「これも想定の範囲内だ」
彼はあくまで冷静であった。
「だからだ。そんなに気にすることはない」
「そうなのかい」
「そうだ。それよりもだ」
冷静なまま言葉を続けるのだった。
「来てるぜ、もうな」
「見事なまでに動きが速いね」
「それは大いに賛成する」
ヴィガジはいささか不機嫌にアギーハの言葉に答えた。
「もう来たか」
「それを言ってもはじまらない。俺達も出るぞ」
「うむ、わかった」
「そっちのガルガウの準備はできているんだろうな」
メキボスが今度問うたのはヴィガジの愛機についてだった。
「どうなんだ?そこんところは」
「何時でも出られる」
これがヴィガジの返答だった。
「だからだ。案ずるな」
「よし、じゃあ行くぞ」
「御前も出られるな」
「ああ。グレイターキンで出る」
すぐにヴィガジに答える。これで四天王全員が揃ったのだった。
基地の前には無数のミサイル砲台が並び多くのマシンが展開している。その中にシルベルヴァント及びドルーキン、そしてガルガウとグレイターキンもあった。
「へっ、四人纏めて来てくれやがったな」
「ああ、ボス総登場ってわけだよ」
忍と沙羅がその四人を見て言った。
「じゃあ纏めてぶっ潰してやるぜ」
「行くとするよ」
「けれどさ」
だがここで雅人が言うのだった。
「どうした、雅人」
「ミサイルも多いそ。迂闊に飛び込んでも駄目みたいだよ」
「そうだな。雅人の言う通りだ」
亮が雅人の意見にはっきりと賛成してきた。
「ここはな。迂闊にはな」
「おいおい、攻めないわけにゃいけねえだろうが」
忍はここでもかなり攻撃的であった。
「行くつったら行くんだよ。ミサイルなんか全部叩き落してやるぜ」
「いや、藤原」
しかしアランがそんな彼を止めてきた。
「それは止めておいた方がいい」
「何ィ!?アラン、手前まで」
「どのみち連中には後がない」
忍の言葉を受けてもまだ言うのだった。
「ならば追い詰めればかえって痛い目に遭う。だからここはだ」
「冷静にだよね」
「その通りだ。だからこそだ」
「へっ」
どうしても自分の性に合わず不服そうであった。
「何だよ。荒ぶる魂が泣くぜ」
「まあそう言うな」
亮がそんな彼を窘める。
「どの道向こうから来る」
「敵も随分と強気だね」
沙羅が言うが見ればその通りだった。もうインスペクターの軍勢は前に出て来ていたのだ。
「もう来てるよ」
「じゃあよ。遠慮はしねえな」
忍の頭に早速血が昇る。そして」
「やああああああってやるぜ!」
ダンクーガがビーストモードに入った。その目が赤く光る。それが合図となりインスペクターとのこの基地での決戦となったのであった。
「おいヴィガジ」
メキボスがヴィガジに声をかける。四天王は並んで後方にいる。
「いきなり兵を動かしたな」
「当然だ」
ヴィガジはメキボスのその言葉を平然と受け止めていた。
「ここで動かさないでどうする?」
「守ればいいんだがな」
「確かに守る」
これはヴィガジも頭の中に入れていた。
「しかしだ。守りだけでもだ」
「駄目だっていうんだかな」
「簡単に言えば攻勢による防衛だ」
こうしたこともまたあるのである。
「これでわかったな」
「わかることはわかるさ」
メキボスの返答は軽い。
「それもだ」
「士官学校で習った筈だが」
「一応はな」
どうにも要領を得ないメキボスの返事であった。
「そういや習ったよな」
「しっかりしろ」
こう言ってメキボスを叱る。
「仮にも四天王がな」
「へいへい」
「まあいい。それでだ」
「攻めるんだな」
「ミサイルの援護がある」
それを頼りにしての攻撃的防衛であるというわけだ。
「だからだ。行くぞ」
「っていうとあたし達もかい」
「そうだ」
アギーハとシカログに対しても言うヴィガジであった。
「不服か?」
「いや、別にね」
「・・・・・・・・・」
「シカログは反対のようだが」
「ダーリンもいいんだって」
ヴィガジにも彼の言葉はわからないのであった。
「そう言ってるじゃないか」
「何も話していないが」
「口では言わないんだよ、ダーリンは」
こう述べるアギーハであった。
「それはいつも言ってるじゃないか」
「わかるものか」
「わかろうとしないだけだろ?あんたは」
「いや、俺もわからないぞ」
メキボスもわからないのであった。当然であるが。
「シカログの言葉はな」
「ダーリンはもっとミサイルを撃つべきだって言ってるよ」
「もっとか」
「そうさ。まだあるんだろ?」
ヴィガジに対して問う。
「それならさ。もっとだって」
「どうするんだ、ヴィガジ」
「そうだな」
二人に言われて考える顔になるヴィガジ、だがすぐに決断を下した。
「わかった。では撃とう」
「どれだけだ?」
「あるだけ撃つ」
やるとなれば徹底的であった。
「こうなればな」
「わかった。じゃあそれでな」
「よし、ミサイルを全て放て!」
ヴィガジが指示を出した。早速大型ミサイルが全て放たれる。
「それに紛れて敵を叩く。いいな!」
「ああ!」
アギーハがそれに応え戦闘開始となった。ロンド=ベルは前進して来るインスペクターとミサイル、両方を相手にすることになったのであった。
「ミサイル、無数です」
「来ましたな」
「はい」
ユンの報告にショーンとレフィーナが応えていた。
「そしてインスペクターの大軍もですが」
「このままです」
しかしそれ等を前にしてもレフィーナは冷静であった。
「このまま迎え撃ちます」
「迎撃ですか」
「そうです」
彼女の採った作戦はこれであった。
「敵が来るのならばこちらは」
「ふむ。それでは」
「そうです」
またショーンに応える。
「全機守りに徹して下さい」
こうも告げた。
「ミサイル及び敵機が来次第撃っていきます」
「あれ、サイフラッシュがあるぜ」
マサキがここでレフィーナに言う。
「こいつならミサイルなら一気によ」
「数が違い過ぎます」
だがレフィーナはそのマサキにも言うのであった。
「ですから今はサイフラッシュは」
「なしってんだな」
「そうです。今はあくまで守りに徹して下さい」
「わかったよ。じゃあ前には出ねえぜ」
「それで御願いします。そして」
レフィーナはさらに指示を出す。
「全機互いに守り合うようにして下さい」
「守るのかよ」
「そうです」
今度は忍に対して答えたのだった。
「そうしてそのうえで迎撃して下さい」
「了解」
ロンド=ベルは守って戦うことになった。とりあえずは攻防が逆転した戦いになった。三分程時間が経つとインスペクターの軍勢はその数をかなり減らしていた。
「くっ、相変わらずの強さだな」
「まあそうだな」
メキボスはヴィガジに冷静に答える。
「やはりあいつ等は強いな」6
「よくそんなに冷静でいられるな」
ヴィガジは不機嫌を露わにさせてメキボスに顔を向けた。
「ここまで負けが込んでいるのにな」
「何がだ?」
「だからだ。今我が軍はその数を大きく減らしている」
彼が言うのはこのことである。
「地球にあるのは今ここにあるだけで。よくそれで」
「安心しろ」
しかしメキボスの冷静な態度は変わらない。
「焦っても何にもならないぞ」
「それはわかっている」
ヴィガジも指揮官だけあり焦りが何にもならないことはわかっていた。
「しかしだ。今は」
「だから落ち着け」
メキボスはまたヴィガジに言った。
「いいな。落ち着け」
「ふん。落ち着いたぞ」
一応はこうメキボスに答える。
「それでどうすればいいのだ?」
「実はだ」
ここでメキボスは言うのだった。
「ここにまた軍が来ている」
「連邦軍か?」
「いや、また違う勢力だ」
「!?何処だいそれは」
アギーハも今の言葉を聞いてメキボスに顔を向ける。
「あたし達でも連邦軍でもないっていったら」
「何処だと思う?」
「バルマーかい?」
インスペクターにとっても彼等は敵対する勢力なのである。そういう意味では人類と彼等の利害は一致している部分もあったりするのである。
「あの連中ならそれこそ」
「まあ似たようなものだな」
メキボスの言葉は相変わらず涼しい。
「連中も俺達の敵だからな」
「じゃあ敵か」
「そうだ、敵だ」
メキボスはまたヴィガジに答えた。
「敵だ。それは間違いない」
「では安心できないではないか」
ヴィガジは怪訝な顔で彼に言い返す。
「敵が来るとなると。敵が増えるのだからな」
「だからそれは違う」
しかしメキボスはまだ言うのだった。
「敵同士争うだろう?」
「むっ!?」
「そういえばそうだね」
ヴィガジとアギーハは今のメキボスの言葉に顔を向けた。表情も怪訝なものになる。
「我々のここでの敵は」
「全部ロンド=ベルとも敵対しているからね」
「これで話はわかるな」
「うむ」
「そういうことならね」
「シカログ」
メキボスはシカログにも声をかけるのだった。
「御前もそれでいいんだな」
「・・・・・・・・・」
「いいってさ」
アギーハが話さない彼の代わりに答えた。
「シカログもそれでね」
「そうか。ならいいな」
「そしてだ」
ヴィガジはまたメキボスに問う。今は自軍の攻撃を控えさせている。それでとりあえずは様子見としているのである。ここが冷静であった。
「どの勢力だ、それは」
「そう、次の問題はそれだよ」
アギーハもまたメキボスに問うのだった。
「どの勢力かが問題だが」
「バルマーじゃなかったら何処なんだい?」
「今わかる」
メキボスがここで不敵に笑った。
「それはな」
「!?レーダーに反応だよ」
アギーハが言った。
「数は・・・・・・四千だね」
「四千だと!?」
「予想通りだな」
数を聞いてそれぞれ言うヴィガジとメキボスであった。
「多いな、かなり」
「さてと、ここから面白くなるな」
ここでも対象的な二人であった。
「シャドウミラーだ」
「その通りだよ」
アギーハがメキボスに答えた。
「その連中だ」
「よし、まずは攻撃中止だ」
今度はメキボスが指示を出した。
「今度は俺達が守りに徹するぞ」
「馬鹿な、それが」
ヴィガジがそれに反対しようとする。
「どうなるというのだ。ロンド=ベルはまだ健在なのだぞ」
「だからだよ」
しかしメキボスの言葉の調子は変わらない。
「だからだよ。わかるだろ」
「わかるだと・・・・・・むう」
ヴィガジは少し考えてからそのうえで述べた。
「漁夫の利というわけか」
「戦争はただ馬鹿正直に戦うだけじゃないってことさ」
メキボスは軽い調子でヴィガジに答えた。
「これでわかったな」
「ああ、そういうことならな」
「どうもあたしの性分には合わないけれどね」
アギーハはそういう意味ではヴィガジと似ていた。
「まあ今は仕方がないかい」
「そういうことだ。さて」
メキボスはあらためて戦場を見渡すのだった。そのシャドウミラーの軍勢はロンド=ベルの右側面に展開している。
「守るぞ。いいな」
「わかった」
「そうさせてもらうよ」
「・・・・・・・・・」
三人も今はメキボスの言葉に頷いた。こうしてシャドウミラーはまずはその動きを止めて守りに徹するのだった。ロンド=ベルとシャドウミラーを見据えつつ。
「おやおや」
「!?御前は」
「一度御会いしたでしょうか」
丸眼鏡の外見上は慇懃な男がシャドウミラーの中にいた。
「ロンド=ベルの皆さん」
「貴様は確かアーチボルト」
「はい、そうです」
レーツェルに対して答える。
「御存知でしたか」
「シャドウミラーの指揮官の一人だったな」
「如何にも」
またレーツェルに対して答える。
「あちらの世界から参りました」
「まさかとは思ったがな」
「同じだな」
「うむ」
レーツェルは強張った顔でゼンガーの言葉に頷いた。
「全くな。瓜二つだ」
「しかしあの男は死んだ筈」
レーツェルは言う。
「それがまたどうして」
「我々がこの手で倒した筈だというのに」
「!?私を御存知の方もおられるようで」
アーチボルトは慇懃な態度で二人に返すのだった。
「果たしてどういった事情かわかりませんが」
「そうか。そちらの世界では貴様は生きているのだな」
「そしてこちらの世界に来たのか」
「こちらの世界のことはよく知りませんが」
それについて走らないと言うアーチボルトであった。
「まあそれはいいでしょう。何はともあれ」
「来るな」
「その通りだ」
「行くぞ、ロンド=ベル」
ヴィンデルとアクセルもいた。当然エキドナも。シャドウミラーの主要人物が勢揃いしていたのである。
「総攻撃というわけだな」
「如何にも」
またレーツェルに答えるアーチボルトであった。
「その通りです」
「全軍陣形を横に向けて下さい」
レフィーナは素早く今までインスペクターに向けていた陣をシャドウミラーに向けたのだった。同時に左側面になったインスペクターへの警戒も忘れない。
「次の敵は彼等です」
「全軍進撃を開始せよ」
「了解」
アーチボルトがヴィンデルに答える。
「それではすぐに」
「攻撃目標は二つだ」
「おやおや」
メキボスはそれを聞いて少し楽しそうに声をあげた。
「俺達もってわけかい」
「守りに入って正解だったということか」
「そういうことだね」
ヴィガジもアギーハも言う。
「ここはな」
「メキボス、あんたが正しかったね」
「両方共来るぞ」
今のメキボスの言葉には普段の軽さがなかった。
「覚悟はいいな」
「うむ、守り通す」
「何があってもね」
「・・・・・・・・・」
三人共その心は変わらないのであった。インスペクターは迫り来るシャドウミラーを前にして陣を組んでいた。それと同時にロンド=ベルとシャドウミラーの戦いもはじまっていた。
「このっ!このっ!」
ルナマリアがインパルスのライフルを乱射していた。
「また出て来るなんて!いい度胸ね!」
「ルナマリア!」
その彼女にマリューが声をかける。
「ラミアス艦長?」
「少し上に飛んで!」
こうルナマリアに言うのだった。
「ローエングリンを放つわ。わかったわね」
「了解!」
それを聞いてすぐに上に飛ぶ。その間もライフルを放つのを忘れていない。
「艦長!」
「ええ」
マリューはサイの言葉に応えた。既にアークエンジェルの艦橋は緊張に包まれている。
「ローエングリンの発射準備完了です!」
「ローエングリン進路クリアです!」
ミリアリアが報告する。
「このままいけます!」
「ケーニヒ少尉!」
「はい!」
今度はトールがマリューの言葉に応える。
「舵はそのままで御願いね」
「わかりました!」
「各機周辺で攻撃を続けています」
カズイが通信でやり取りをしていた。
「そのままで御願い」
「了解です」
カズイもマリューの言葉に頷く。こうしてアークエンジェルのローエングリン発射への障害は完全になくなった。いよいよであった。
「艦長」
「ええ」
今度はノイマンの言葉に頷くマリューであった。
「わかっているわ」
「それでは」
「ローエングリン一番二番!」
マリューが叫ぶ。
「発射!」
「了解、撃てーーーーーーーーーっ!」
ノイマンが叫びローエングリンが放たれる。そのローエングリンがシャドウミラーの軍勢を撃ちその数を大きく減らさせた。しかしシャドウミラーの軍勢はまだ健在であった。
ロンド=ベルとシャドウミラーの戦いがはじまって三分。戦いは激しさを増すばかりであった。シャドウミラーの軍勢は数は大きく減らしているがそれでも果敢に戦闘を続けていた。
「行くぞ!」
アクセルが叫ぶ。彼はキョウスケに向かっていた。
「キョウスケ=ナンブ、今度こそ貴様を!」
「また貴様か」
キョウスケもまたアクセルを迎え撃つのだった。
「あくまで俺と闘うつもりか」
「そうだ」
敵意に満ちた目でキョウスケに答えた。
「貴様を倒す。それこそが己の望み」
「キョウスケって男にももてたのね」
エクセレンは軽い調子で述べた。
「何かジェラシー感じるわ」
「生憎だが冗談を言っている場合ではないようだ」
キョウスケはいつもと変わらない落ち着いた、無愛想なまでの態度だった。
「今はな」
「あらあら、それはまた」
「インスペクターの軍勢もいる」
見れば彼等もいた。相変わらず。
「油断はできないぞ」
「で、キョウスケはどうするの?」
「こいつの相手をしてやる」
アクセルを見つつ述べる。
「一対一でな」
「一対一なのね」
「手出しは無用だ」
また述べるキョウスケだった。
「いいな」
「男と男の勝負ってやつね」
「そう思うのなら思えばいい」
やはりキョウスケの態度は変わらない。
「今はこの男と闘う。それだけだ」
「死んだら駄目よ」
このことだけは釘を刺すエクセレンだった。
「そこ、注意しておいてね」
「わかっている。では行くぞ」
こうして彼等は戦いに向かう。二人の闘いは熾烈を極めていた。そしてその横では。ゼンガーが一人の男と剣を交えようとしていた。
「貴様か」
「左様」
ウォーダンであった。彼がいたのだ。
「我が名はウォーダン=ユミル・・・・・・」
彼自身も名乗る。
「ゼンガー=ゾンボルト!今日こそは貴様を倒す!」
「面白い!」
ゼンガーもまた彼のその言葉を正面から受けた。
「ならばここで!雌雄を決しようぞ!」
「参る!」
それぞれ剣を構えつつ言い合う。
「いざ、この悪を断つ剣で!」
「貴様を倒す!」
彼等もまた戦いに入る。そしてラミアもまた。エキドナと対峙していた。
「ラミア、元気そうね」
「はい」
エキドナを前に見据えつつ答えるのだった。
「おかげさまで」
「そして。いい顔になったわ」
何故か彼女をさらに褒めるのだった。
「貴女は何かを見つけようとしているのね」
「何かを!?」
「そうよ」
こうも言うのであった。
「そしてそれを見つけた時貴女は」
「私は」
「私が期待できる存在になるわ」
「エキドナ様が期待している」
「そうよ。それは近いわ」
「近い・・・・・・私が」
「けれど今は」
ここでエキドナの目が光った。
「貴女と闘う。いいわね」
「はい」
ラミアもまたそれに応えるのだった。
「ではいざ」
「行くわよ」
二人もまた闘いに入る。三組の死闘が展開するその中で。ヴィンデルも自ら前線に立ち戦っていたのだった。
「来い、ロンド=ベルにインスペクターよ!」
彼等に攻撃を浴びせつつ反撃をかわしながら叫ぶ。
「永遠の戦いの為に!」
「永遠にか」
その彼の前にギリアムが来た。そうして彼に問うのだった。
「永遠に戦うというのか」
「その通りだ」
ヴィンデルはそのギリアムに対して答える。
「それ以外に何があるというのだ」
「おいおい、そんな馬鹿な世界あってたまるかよ!」
「そうよ!」
彼の言葉にバーニィとクリスが反論する。
「永遠に戦うなんて!」
「そんな世界たまったものじゃないわ」
「愚か者にはわからん」
しかし彼は言うのだった。
「私の崇高な理想がな」
「理想!?」
「また何を」
「聞くのだ」
ヴィンデルはまた言う。
「私の崇高な理想をな」
「それは何だ」
ギリアムがその彼に問う。彼等は戦闘に入っていた。
「貴様の言うその理想とやらは」
「人は進歩しなければならない」
まずはこう述べるヴィンデルだった。
「そしてそれには」
「それには。何だ?」
「闘争が必要なのだ」
彼は言うのだった。
「永遠の闘争こそがな」
「だからこそ貴様は闘争を求めているのか」
「そうだ」
ギリアムに対して答える。
「私の理想を。この世界でこそ実現させよう」
「そんなの迷惑だって言ってんだろうが!」
モンシアが彼にすぐ言い返した。
「そんなの手前だけでやってやがれ!」
「ふん、愚か者が」
しかしヴィンデルは彼の話を一切聞き入れない。
「やはりわからぬか。私の理想を」
「だから迷惑だって言ってるじゃねえかよ!」
モンシアはかなりムキになっていた。
「人の話聞けねえのかよこの野郎!」
「待てよモンシア」
その彼をヘイトが制止する。
「何だ?」
「こりゃ言っても無駄だ」
「やっぱりそうか」
実はモンシアもそれは薄々わかってはいたのだ。
「そんな奴だとは思ってたがな」
「そうですね。では我々は」
ここでアデルも言う。
「周りの敵を倒していきましょう」
「その通りだ」
バニングが彼の言葉に頷く。
「今は敵を倒し戦いに勝つ。それだけだ」
「まあそうですね」
モンシアも彼の言葉に賛成するのだった。
「言っても無駄な相手ですから」
「そうそう、だからな」
「今は無視して他の敵を」
ヘイトとアデルがまた彼に言う。
「倒していこうぜ」
「そういうことで」
「よし、じゃあ隊長!」
「うむ」
バニングは今度はモンシアの言葉に応えるのだった。
「このまま敵を倒していく。いいな」
「了解!」
彼等は彼等で戦いギリアムはヴィンデルと戦闘に入っている。スラッシュリッパーがかわされる。ギリアムはそれを見て冷静に述べた。
「今のをかわしたか」
「この程度」
きっとギリアムを見据えつつ答えるのだった。
「何ということはない」
「そうか」
「では今度はこちらの番だ」
その手の剣が禍々しく輝いた。
「行くぞ」
「永遠の闘争」
ギリアムは自分に向かって来る彼を見つつ呟いた。そのうえで彼も剣を持つ。
「確かにそれは進歩をもたらす」
「その通りだ」
前に進みながらギリアムに答えるのだった。
「だからだ。私は」
「しかしだ」
だがここでギリアムは言うのだった。
「むっ!?」
「それは進歩といっても歪んだ進歩でしかない」
「やはり貴様も私の理想は理解できぬか」
「いや、できる」
それははっきりと否定したのだった。
「わかる。それもよくな」
「では何故私の理想を否定する?」
「わかるからだ」
「何っ!?」
ここで両者の剣と剣が打ち合う。そのまま競り合いに入る。
「わかるから否定するというのか」
「その通りだ。これは貴様にはわからん」
こうも言うギリアムだった。
「貴様ではな」
「欺瞞か」
ヴィンデルはこう考えることにしたのだった。
「所詮は。ならばよい」
言いながら間合いを離してきた。そしてまた攻撃に入る。
「貴様にはここで死んでもらう。理想の前にな」
「理想はいい」
ギリアムはまた言った。
「しかしだ」
「しかし。何だ?」
「貴様はわかっていないのだ、何もかもな」
「これ以上戯言を聞く気はない」
彼はこうした面に置いては非常に倣岸であった。
「死ぬのだ。無駄な言葉と共にな」
「言葉を聞き入れないのはわかっていた」
ギリアムはここでも冷静であった。
「では。思う存分相手をしよう」
「私の理想の為に」
ヴィンデルはまた剣を持って来たのであった。それで再び斬りつける。
「死ぬのだ!」
「無駄だ!」
その剣を受け止めてみせる。こうして両者もまた戦いに入るのだった。
ロンド=ベルとシャドウミラーの戦いの中で。インスペクターは比較的大人しかった。防戦に務め両者をあしらうような感じで戦場にいるのだった。
それを見てアギーハは。メキボスに声をかけてきた。
「これでいいっていうんだね」
「ああ、そうさ」
メキボスは不敵に笑って彼女に応えるのだった。
「実にいい。このままでな」
「そうか。それではだ」
「動くなよ」
ヴィガジを止めるのは忘れないのだった。
「今はな」
「まだか」
「ああ、まだだ」
また答えるのだった。
「まだ動く時じゃないぜ」
「ふん。今だと思うのだがな」
彼は戦いを見て血気にはやっていたのだった。
「だがそうしておくか」
「あ、そういうことだ」
こう言い合ってやはり動かないのだった。その間にギリアムとヴィンデルはさらに戦いを激化させるのだった。その中でヴィンデルは言う。
「ヘリオス」
「その名で呼ぶのか」
「だからといって拒まぬのだな」
「何か言いたいのだな」
冷徹な目で彼に言い返すギリアムだった。
「では言ってみるといい。貴様の好きなようにな」
「アギュエウスの扉」
「!?まさか」
「そのまさかだ」
ヴィンデルは不敵な笑みで彼に答え続ける。
「貴様があの扉を開けば我等の力はより強固なものとなる
「システムXNの修復が終わったのか」
「あとはテストをするだけよ」
レモンもまた楽しげにギリアムに答えながら述べる。
「それだけよ」
「もうそこまでいったというのか」
「さて」
レモンはここでエクセレンを見てきた。
「エクセレン=ブロウニング」
「!?私?」
「貴女にも用があるかもね」
「何が何だか」
「レモン」
何故かここでアクセルが顔を顰めさせてレモンを見るのだった。そして問う。
「貴様、まさか」
「ボーナスってやつよ、アクセル」
「ボーナスだと!?」
「そうよ。こういう出会いになっちゃったのは残念だけれどね」
「わかっている筈だ」
アクセルは少し憮然とした顔になって述べるのだった。
「ベーオウルフは俺達の存在を知らなかった」
「ベーオウルフだと」
キョウスケは今のアクセルの言葉に眉を動かした。
「それはまさか俺のことか」
「そうらしいわね」
エクセレンが彼に答える。二人は直感からそれを感じたのである。
「どうやら」
「しかしだ」
アクセルはまた言うのだった。
「例えそうであっても俺達の障害となるのは同じ」
「それはわかっているのね」
「当然だ」
またレモンに答えるのだった。
「ここはそういう世界だ」
「そういうことよ」
「貴様もだ」
アクセルはまたレモンに言った。
「その覚悟もなくこの作戦に参加していたわけではあるまい」
「何か妙ね」
「明らかにな」
エクセレンとキョウスケは今のアクセル達の話を聞き目を顰めさせていた。
「どういうことかしら」
「シャドウミラーはそもそも」
「知りたいみたいね、私達のことが」
そのレモンがエクセレンに声をかけてきた。
「私達のところに来ればわかるわよ」
「生憎だけれどそれはね」
いつもの調子で断るエクセレンだった。
「抜け駆けは今は止めておくわ」
「でしょうね。けれど」
「けれど?」
「選択肢は与えてあげるわ」
今度はこうエクセレンに告げた。
「選択肢?」
「そう、後は貴女次第」
こうも言うのだった。
「そういうことよ」
「悪いけれどね」
しかしここでエクセレンは言う。
「ラミアちゃんと同じでね」
「ラミアと」
「そうよ。だからそっちへ行くつもりなんてないのよ」
「何でも構わん」
またヴィンデルが言ってきた。
「だが貴様等の存在は私の理想にとって邪魔だ」
「まだ言うのかよ」
リュウセイが呆れた声を出すのは聞いていなかった。
「故に排除しなければならん」
「まあその通りだがね」
メキボスは今のヴィンデルの話を聞いて述べる。
「しかしあんた達もそうなんだよな。わかってるだろうけれどな」
「わかってるのかい?あの男」
「わかってるからここに来たのさ」
アギーハにも述べる。
「俺達を倒しにな」
「成程、そういうことかい」
「ああ、そうさ」
こんな話をするメキボスだった。その間にアクセルはキョウスケに向かっていた。
「ベーオウルフ」
「またその名を」
「何時ぞやの賭け、勝たせてもらうぞ」
その言葉と共に突っ込む。エクセレンがキョウスケのフォローに回ろうとするがその彼のところにはレモンが来たのであった。動きが速かった。
「貴女の相手は私よ」
レモンは楽しげに笑ってエクセレンに告げた。
「エクセレン」
「私の邪魔をするってことね」
「相手をするだけよ」
笑ってその言葉をはぐらかす。
「それは違うわよ」
「同じだと思うけれどね」
「このまま攻めよ!」
ヴィンデルがまた指示を出す。
「ヘリオス以外は全て抹殺せよ!」
「よし!」
その声を聞いてメキボスが声をあげた。
「今だ、俺達も攻めるぞ」
「!?今か」
「そうだ」
メキボスはヴィガジに対して答えた。
「今がその好機だ。行くぞ」
「そうか。それならばな」
「アギーハ、シカログ」
メキボスは二人にも声をかけた。
「それでいいな」
「ああ、いいさ」
「・・・・・・・・・」
「シカログは何考えてるかわからねえがな」
「いいってさ」
首を捻るメキボスにアギーハが答える。
「ダーリンはそれでね」
「わかったさ。じゃあそれでな」
「じゃあ全機前進だな」
ヴィガジがまた言う。
「それでな。いいな」
「ああ。決戦だ」
この言葉と共にインスペクターもまた防御から攻撃に戻った。三すくみの攻防が激化していく。しかしロンド=ベルはここで四機の魔装機神とヴァルシオーネを動かしたのだった。
「マサキ!」
「ああ!」
マサキがリューネの言葉に応える。
「あれだね?」
「ああ、あれだ!」
こうリューネに応える。
「あれをやるぜ!いよいよな!」
「了解!」
「では僕もだ」
当然ヤンロンもそこにいた。グランヴェールも。
「行くぞ」
「わかってるわ、ヤンロン」
テュッティが彼に応える。
「御願いね、それで」
「うむ」
「じゃあいっくよ!」146
ミオが明るい声をわざと出した。
「ここで一気に」
「行くわよ!」
「うん!」
テュッティの言葉にも頷く。そうして出すのは。
「サイフラーーーーーーーーッシュ!」
「サイコブラスターーーーーーッ!」
「メギドフレイム!」
「ケルヴィンブリザーーーード!」
「レゾナンスクエイク!」
五人が技を繰り出した。それで一気に戦局が変わった。広範囲の攻撃によりシャドウミラーの軍勢もインスペクターの軍勢も大きく傷ついた。この時だった。
「今だ!」
リーがハガネの艦橋で叫んだ。
「全軍総攻撃だ。いいな!」
「いいけれどさ」
「どうした?」
アカネに対して顔を向けた。
「不服なのか、それが」
「いや、それはいいんだよ」
彼女はそれは構わないとした。
「ただね」
「何が言いたい」
「艦長、今日は随分と気合が入ってるね」
楽しそうに笑ってリーに告げるのだった。
「一体どういう風の吹き回しだい?」
「気のせいだ」
今の言葉に少し憮然とした顔になるリーだった。
「忘れろ。いいな」
「ああ、そうさせてもらうさ」
アカネはまだ笑っていた。だがこれにより総攻撃となった。全軍をあげての総攻撃でシャドウミラーもインスペクターも大きく崩れてきていた。
「むう」
「博士」
エキドナがヴィンデルに問う。
「これ以上の戦闘は」
「やはり不可能か」
「そう思います」
こうヴィンデルに告げるのだった。
「今は。ですから」
「わかった。それではな」
「インスペクターも撤退をはじめています」
見ればそうであった。流石の彼等も戦闘を止めて撤退にかかっていたのだった。
「これでいいんだね、メキボス」
「ああ」
メキボスはアギーハの問いに答えていた。
「これ以上は流石に無理だ。基地を放棄する」
「わかったよ」
「止むを得んか」
ヴィガジはかなり無念そうであった。
「ここまでやられては」
「御前等は先に行け」
メキボスは三人に告げた。
「俺が後詰になるからな」
「いいんだね、それで」
「俺の順番だろう?」
笑ってアギーハに答える。
「確かな」
「まあそうなんだけれどね」
「じゃあ受けてやるさ」
また笑って答えるのだった。
「これでな。いいな」
「ああ、わかったよ」
「・・・・・・・・・」
「シカログは頼むってさ」
「そうか」
アギーハとシカログの考えはわかったのだった。
「ヴィガジ、御前はどうだ?」
「頼めるか」
見ればガルガウもかなりダメージを受けているのだった。絶望的な状況であるのは彼がその身を以ってわかっていることだったのだ。
「それで」
「ああ、いいさ」
こうしてメキボスが戦場に残る。そしてシャドウミラーも。
「俺は残る」
「ちょっと待ちなよ」
アクセルにレモンが声をかける。
「あんた、残るっていうのか」
「そうだ、あの男だけは俺が」
「俺を倒すつもりか」
「そうだ」
キョウスケを見据えての言葉だった。
「貴様をこの世から消し去る」
「やってみろ」
鋭い目でキョウスケは応えてみせた。
「出来るものならな」
「逃がしはしないベーオウルフ!」
叫びながらコードを入力してきていた。
「コード麒麟!」
「むっ!」
「砕け散れ!アルトアイゼン!」
その叫びと共に渾身の技を繰り出す。キョウスケはそれを見て咄嗟に守りの態勢に入る。
「この動きは」
「キョウスケ!」
その攻撃を見てエクセレンが叫ぶ。
「受けないで!その攻撃は!」
「しまった!」
ここで彼はようやく気付いたのだった。
「この攻撃を受ければ・・・・・・!」
「今気付いても遅い!」
この時アクセルは勝利を確信していた。
「これで・・・・・・終わりだ!」
「ぬうっ!」
「キョウスケ!」
アクセルの技が炸裂した。アルトアイゼンが吹き飛ぶ。エクセレンはそれを見て声にならない叫びをあげた。表情も普段とは一変していた。
「!!」
「ナ、ナンブ大尉」
「大丈夫ですか!」
クスハとブリットが慌ててキョウスケに声をかけるのだった。だが彼から返事はない。
「ま、まさか」
「これって」
「嘘でしょ!?」
あのエクセレンが顔を強張らせていた。真っ青にもなっている。
「悪い冗談は止めてよね。頼むから」
「冗談に決まっている」
冷徹なリーは断言していた。
「あの男はこの程度では死なない」
「それは信頼しているってことかい?」
「アルトアイゼンの性能とあの男の生命力」
カチーナに答えて述べる。
「そこから分析しただけで」
「そうかよ」
「だから安心しろ」
彼はまた断言するのだった。
「死ぬ筈がない。落ち着け」
「けれどよ!リー中佐!」
リュウセイがそのリーに叫ぶ。
「現に今は」
「落ち着けと言っている」
何故かここでリーの顔が歪む。
「それとも私の分析が間違っているというのか」
「無駄だ」
しかしここでアクセルがロンド=ベルの者達に告げる。
「最早奴は動けん」
「嘘をつけ!」
凱がその彼に叫ぶ。
「あの人がそう簡単にやられるかよ!」
「その通り!」
ハッターもそれに続く。
「ノープロブレム!それはこのハッター軍曹が保障する!」
「だからだ!有り得ねえんだよ!」
リュウセイもまた叫んできた。
「あの人がな!そう簡単にい!」
「貰っていく」
しかしアクセルはそんな彼等を尻目に言うのだった。
「この世界で貴様を倒した証をな」
「!?手前まさか」
吹き飛ばされ基地に叩き付けられたアルトアイゼンに近寄っていた。
「大尉を」
「止めをさす」
これがアクセルの答えだった。
「それが俺にとって何よりの証だ」
「手前!」
「やらせるかあっ!」
リュウセイと凱が彼に向かおうとする。しかしこの時だった。
「!?今度はこの連中か」
メキボスが声をあげた。今インスペクターで戦場に残っているのは後詰である彼だけなのである。その彼も撤収しようとしていたところだ。
「また賑やかだったな、今回は」
「アインスト・・・・・・」
エクセレンが呟く。
「また出て来るなんて」
「出て来ただけではないようだな」
ダイテツがここで言った。
「えっ!?」
「見るのだ」
エクセレンだけでなく皆に対して告げたのだった。見ればアインスト達は彼等に向かわずアクセルに向かっていたのだ。そして。
「くっ!」
「!?俺達を狙わない」
「それに」
アクセルを攻撃するのだった。彼だけを。
「やっぱり」
エクセレンはこの中で呟いた。
「何か感じたら」
「感じた!?」
「ええ」
今度はアイビスに答えるエクセレンだった。
「感じたのよ。アインストが出て来る直前に」
「そうだったのか。また」
「やっぱりこれはな」
ここでロンド=ベルの面々はエクセレンを見るのだった。
「エクセレンに何かあるな」
「間違いなくな」
「ちっ、もうこうなったら仕方がねえな」
メキボスは残念そうに舌打ちをしていた。
「連中を精々引き付けてサンダークラッシュを仕掛けてからと思ったがな。まあいい」
こう言い残して姿を消した。彼もまた。
アインストの攻撃を受けたアクセルは。苦い顔をしてキョウスケから離れたのだった。
「おのれ、すんでのところで」
「よし、今だ!」
「はい」
凱の言葉にボルフォッグが頷く。彼はすぐに動いた。
「今ですね」
「ああ、そうだ」
ボルフォッグは素早くアルトアイゼンを助け出した。これで彼の窮地は救われた。
「さて、形成逆転だぜ!」
タスクがそのアクセルに向かおうとする。
「覚悟しやがれこの野郎!」
「ナンブ大尉はやらせねえぜ!」
アラドも続く。
「さっさとどきやがれ!」
「くっ、こうなっては仕方ない」
アクセルもまた大きく後ろに下がった。そのまま撤退に入り姿を消すのだった。
そしてアインスト達は。
「あれっ、もうかよ」
「ああ」
気付けば。もうその姿は何処にもないのだった。
「いない。何時の間に」
「消えたか」
「そうね。それにしても」
セレーナはここで考える顔になりそれからまた述べた。
「おかしいわね」
「おかしいって何がですか?」
「だからエルマ」
エルマに対して答える、
「あのアインストよ。ナンブ大尉を守ったみたいじゃない」
「ええ、確かに」
「でしょ?それがわからないのよ」
またエルマに述べる。
「どうしてああいうふうに出て来たのかね。私達の敵なのに」
「シャドウミラーも敵だからではないのか?」
スレイはこう答えてきた。
「だからこそあのアクセルを」
「ああ、あたしもそう思うよ」
アイビスもスレイと同じ意見であった。
「だからじゃないのかい?それは」
「そうかしら」
「そうと思えるが」
「どうかな、それは」
「保留ね」
セレーナは今は結論を出すことを避けるのだった。
「もう少し見てみないとわからないかも」
「そうか」
「ええ、そうするわ」
そのうえでスレイに答えるのであった。
「じゃあそういうことでね」
「ああ。それでだ」
スレイはセレーナの話が終わると話題を変えてきた。
「とりあえず戦闘は終わった」
「ああ」
「そうね」
彼女の今の言葉にアイビスとツグミが答える。
「基地は手に入ったが」
「それでも」
「ボルフォッグ」
スレイがボルフォッグに声をかける。
「ナンブ大尉は無事か?」
「はい、どうやら」
ボルフォッグはこう彼等に述べた。
「御安心下さい、御命に別状はありません」
「そうか。まずは何よりだな」
「全くだ」
スレイもアイビスもそれを聞いてまずは一安心であった。
「では戻るか」
「ああ。これからも大変だからな」
「そうね」
ツグミも交えて三人で言い合う。しかしこれで戦いが終わったのは確かだった。戦闘を終えたロンド=ベルはすぐに基地を占拠し事後処理に当たった。それと共にキョウスケについての安否も確かめられたのだった。
「私の言ったその通りだったな」
「まあね」
リーの得意げな言葉に対してカチーナのそれは憮然としたものだった。
「ナンブ大尉ならば無事だと確信していた」
「それはわかるんだがね」
それでもカチーナは不満そうであった。
「何でこう面白くないんだ気分的によ」
「まあまあ大尉」
そんな彼女をラッセルが宥める。
「ナンブ大尉も生きておられたしよかったじゃないですか」
「それもそうか」
「そうですよ」
少し強引にそういうことにするのだった。
「だから。そんなにカリカリしないで下さいよ」
「わかったよ。それでだ」
カチーナは話題を変えてきた。
「作戦成功でいいんだよな」
「はい」
ラッセルがまた答えた。
「その通りです」
「じゃあすぐにアレクサンドリアに戻るのかい?」
「いや、それはまだだ」
ブライトがここで言う。
「ここで基地を少し整備しておく」
「整備かよ」
「やはり戦闘によりダメージを受けてしまっているからな」
「それの修復ですね」
「そうだ」
ブライトはラッセルの問いに答えた。
「だからだ。数日程ここに留まるぞ」
「了解」
「それでは」
「ああ、それでですね」
今度はエマがブライトに尋ねてきた。
「どうした?」
「ナンブ大尉ですが」
エマも彼のことを気にしているのである。
「大丈夫なのですか?」
「ああ、命に別状はない」
ブライトは静かにエマに答えた。
「アルトアイゼンのダメージは大きいがな」
「そうですか、それは何よりです」
「だが」
しかしここでブライトは言った。
「次の戦闘に参加できるかどうかというと」
「疑問ですか」
「アルトアイゼンのダメージが大き過ぎる」
それが理由であった。
「修理が間に合うかどうかだ」
「次の戦いが何時になるか、ですか」
「ここに敵がいきなり来るということも考えられる」
「確かに」
その可能性は否定できないものであった。どうしても。
「それはどうしても」
「今のところこの基地はすぐに撤収する予定だ」
「ああ、そうらしいですね」
それを聞いてフォウが応えてきた。
「ここは連邦軍が入るとか」
「そうだ、その予定だ」
ブライトはフォウのその言葉にも答えた。
「我々はすぐにアレクサンドリアに帰る予定だ」
「またそこで新たな敵に備えるというわけだ」
「備えるといいましても」
今の言葉を聞いたカツが顔を曇らせる。
「敵は何時何処に何が出て来るかわかりませんよ」
「それもそうね」
カツのその言葉にサラが頷く。
「これだけ敵がいてどれも神出鬼没ですから」
「敵は幾つかいるのにあたし達の部隊は一つ」
ライラの言葉には真理があった。
「それよね。とにかくあたし達ロンド=ベルは一つしかいないんだよ」
「部隊を分けるか?」
カクリコンはこのことを提案した。
「そうして複数の敵に当たるというのは」
「それも手だな」
ヤザンがそれに同意して頷く。
「正直なところな。敵がこれだけ分かれていたらな」
「けれどそれもどうかしら」
マウアーは二人の意見にいささか懐疑的であった。
「駄目なのですか?それは」
「分散したらかえってそれぞれの敵に各個撃破される危険もあるわ」
「言われてみれば確かに」
問うたカミーユはここまで聞いたうえであらためてマウアーの言葉に頷いた。
「そういうことになったら幾つかの敵はそうして来るだろうな」
「残念だがそんな奴は敵にわんさといる」
ジェリドの言葉はいささかシニカルだったがその通りであった。
「今は一つには分けられないってわけか」
「ではこのまま」
「部隊を一つでやっていくしかない」
ラムサスとダンケルの結論はこれであった。
「時間はかかるし個々でしか対応できないが」
「それが一番ですか」
「必ずじれて決戦を挑んでくる勢力が出て来る」
クワトロは焦ってはいなかった。
「その時を狙うのだな」
「けれど大尉」
カツがそのクワトロに異議を唱える。
「それを待っていたら僕達の損害も」
「正直なところ毎回毎回戦いは命懸けだ」
金竜の言葉は完全に現場の言葉だった。
「それが軍人の仕事だが。損害が出るのも避けられない」
「今回のナンブ大尉のようにですね」
「そうだ」
ガムリンに対しての言葉だった。
「幸い戦死者は今のところいないが」
「それもこれからどうなるかですよね」
フィジカは顔を暗くさせていた。
「何回が誰かが死に掛けていますし」
「げっ、俺ですか」
トールが今のフィジカの言葉に顔を真っ青にさせる。
「確かにあの時はスカイグラスパーが真っ二つになって」
「トール、生きていてよかったわよ」
ミリアリアはこのことをしみじみと実感していた。
「本当に心配したんだからね」
「俺だって一回は降りようと思ったし」
カズイはそれとは別に戦争から離れようと決意したことを思い出した。
「それまでもそれからも今だって何回死ぬかと思ったやら」
「今まで皆死んでいないのはかえって奇跡だな」
サイの言葉は至って冷静だったがその通りだった。
「このまま今みたいな戦いが続いたらそれこそそのうち」
「それは敵も同じだ」
しかしクワトロはそれでもこのことを言うのだった。
「敵も同じ」
「そうだ。しかもどの勢力も我々と比してその損害はあまりにも大きい」
「確かに」
今のクワトロの言葉に頷いたのはフィリスだった。
「私達は時々機体の損傷がある程度ですけれど」
「それに対してその敵も」
エルフィも言う。
「その損害はどれも一回の戦闘で夥しいものですね」
「しかもですね」
プレアが話に入って来た。
「どの勢力も戦略的目的を果たせていない」
「ということはそれだけで」
ジャックがここで気付いた。
「敵はかなりの焦りがある」
「どの勢力もというと」
カナードがそれに続く。
「やっぱり。焦ってくる勢力が出て来ますね」
「その通りだ。そしておそらくそれは近い」
クワトロの読みは続く。
「どの勢力かまではわからないがな」
「いや、待てよ」
エドが言った。
「日本の諺にあるよな。鳴かぬならって」
「鳴かせてやろう不如帰か」
ジャンがそれに応えた。
「そうだったな」
「だとするとだ」
ミハイルが言う。
「敵勢力のうちどれかを引き摺り出す」
「それも手ね」
ジェーンがそれにまず頷いた。
「敵が一つ減るとそれだけで大きいわ」
「だがどうやるかよ」
レナが言うのはそこだった。
「どの相手をどうやって」
「それを言われるとちょっと」
バリーが苦しい顔になる。
「かなり困るっていうか」
「やはり待つしかないのか」
バーンズは彼らしい慎重論を述べた。
「今のところは」
「何かそれってかなりまどろっこしいんだけれど」
「全くだよ」
ギリにローズマリーが続く。
「そんなことしていたら本当に敵の前に僕達がさ」
「やられちまうよ」
「それもそうですね」
二人の言葉に頷いたのは意外にもトビアであった。
「待つのもいいですけれどやっぱりそれとは別に」
「いつもならあれなんだけれどね」
ユウナが出て来て言う。
「戦術だったら誰か囮にするとかできるけれどね」
「確かにそうですな」
それに頷いたのはキサカであった。
「クサナギにしろその役目はできますし」
「だからといってね、キサカ」
ここでユウナは憂鬱な顔を見せた。
「いつもいつも敵のど真ん中にクサナギ置くのはどうかと思うんだけれど」
「大丈夫です、クサナギはそう簡単には」
「ヤキン=ドゥーエじゃあと一歩で死にそうになったけれど」
「気のせいです、ユウナ様」
トダカは強引にそういうことにしてきた。
「御気になさらずに」
「気のせいで何回も死に掛けるのかい?だから僕はだね」
ユウナはそれでも言う。
「幾ら何でも囮でも。いきなり敵に突っ込んだら死ぬよ、本当に」
「よく今まで撃沈されませんでしたね」
アズラエルもそれは同意であった。
「僕もこんなのやっていいのかって内心何度思ったことやら」
「指揮官は前線で戦うべきだけれど」
そうした分別はユウナにもある。
「けれどそれでも。戦艦は多少後方にいても戦術的にいいと思うんだけれどねえ」
「そういうユウナさんだってねえ」
「そうそう」
「結構前線にクサナギ出せって言ってますよ」
ここでアサギ、マユラ、ジュリがそのユウナに言う。
「それで何度敵の的になったか」
「ユウナさんも結構」
「命知らずって言うか」
「僕は本来そうじゃないんだけれどね」
彼に胆力のないことは誰もが知っていることである。
「ケースバイケースかな。うちのカガリといいミナといい結構命を大事にしないからねえ」
「私かよ」
「私もか」
カガリとミナは彼の言葉にそれぞれ顔を向けてきた。
「御前は何かっていうと私を出すがな」
「私はただ。一モビルスーツパイロットとして戦っているだけだ」
「何処にモビルスーツに乗って戦うお姫様がいるのやら・・・・・・ってロンド=ベルには多いんだったね」
言ってる側から気付く話であった。
「参ったなあ。おかげでカガリを止められないよ」
「御前は何の為に戦っているんだ?」
「そりゃオーブの人間としてだけれどね」
ユウナのぼやきは続く。
「全く。こんなに自分から囮になってくれるお姫様なんてねえ」
「御前本当にぼやくの多いな。白髪になるぞ」
「それで済めばいいけれど。全く、敵が減らないのなら」
彼はさらに言う。
「何か新型のモビルスーツが欲しいよ。戦力は少しでも多いか強いにこしたことはないからね」
「新型か」
「例えばだよ」
ふとした弾みで言葉を続ける。
「キラ君のフリーダムやシン君のデスティニーをさらにパワーアップさせたのが手に入って空いたフリーダムとかをイザーク君やディアッカ君に乗ってもらうとかね」
「御前随分と贅沢だな」
カガリは思わず彼に突っ込みを入れた。
「あの連中にはあれで充分じゃないのか?」
「充分って言葉はないよ」
だがユウナはそれでもカガリに言う。
「戦争ってのはやっぱり何があるかわからないからね。戦力は少しでも欲しいさ」
「それはそうだがな」
「とにかく今は」
ユウナはこれで締めとした。
「戦局の打開といきたいね。このままずっとってのは精神的にも辛いね」
「ですね」
「確かに」
彼の言葉に頷いたのはラージとミズホであった。
「やっぱりこのままの状況が続くと」
「ロンド=ベルは」
「とりあえずあれですね」
ラクスが口を開いてきた。
「戦力はモビルスーツを研究して」
「ええ」
「改良できるものは改良する。改造はもう」
「充分過ぎますよ」
ダコスタが彼女に答える。
「資金も換装も間に合っています」
「その問題ではないというのがまた問題なのはわかっていますが」
「精神的にこのままではもたないのですよ」
バルトフェルドもそこを指摘する。
「どうにかして。敵を減らしていきますか」
「だとしたらまずは」
「どの相手を」
「デュミナスですかね」
ここでラージが言うのだった。
「ここは」
「デュミナスですか」
「はい」
それを皆にも述べる。
「どうやら。彼等も何かと我々に興味がありそうですし」
「興味ねえ」
フィオナは今のラージの言葉を聞いて難しい顔になる。
「そうかしら」
「若しかしたら」
ラージはまた言う。
「やってみる価値はあるかも知れませんね」
「!?おい」
ラウルはそんな彼の言葉と顔を見聞きして問う。
「何考えてるんだ?一体」
「いえ、別に」
この問いには応えない。誤魔化すのだった。
「何もありません」
「だといいけれどよ」
「はい。それでミズホ」
「はい」
だが密かにミズホには声をかけるのであった。
「お話したいことが」
「わかりました」
二人は何かを考えだしていた。今は基地で様々な雑務をすることになった。とりあえず基地の占領は終わった。しかし敵はまだ全く減ってはいなかった。

第七十六話完

2008・9・1
 
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