俺屍からネギま
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修行開始!!
あの定例会議からもうすぐ五年になる……
関西呪術協会は近右衛門からの横槍にも動じず、一枚岩となって事に当たり内外問わず関西呪術協会は安泰であると評された。
そして我らが御陵の若様はと言うと………
「はははっはーーー!いくぞお前らー!ついて来ーい!」
「若〜まってよぉぉ〜〜!」
ガキ大将となっていた。
彼らは御陵一族の孤児院にて育って血は繋がっていないが、御陵一門の子として育てられてきた者たちである。
その孤児院から社会人となり政治や経済等の道に入って日本だけで無く世界を動かしてきた先達や武の道に入り新撰組に入隊し妖達と戦う先達らを見てきた彼らだ。いずれどの道かを選び、国の為、世界の為………そして自分達を育ててくれた御陵の為に、彼らは活動して行くだろう…最ももっと先の事になるであろうが…
我らがガキ大将は健やかに育ち、孤児院に住んでいる年の近しい者たちから親しまれ気づけば彼らの中心にいた…ごく自然に、其れがあたかも当然であるかの様に……あの日から
とある昼下がり 御陵孤児院の裏庭
「ふぇ〜〜ん!うぇーーん!」
「やーい!チビ助!また泣いているのか!!」
「泣いているのかぁ〜!」
「ウェーーーん!ぇーーん!!」
小さな少年は体を丸めて更に小さくなって泣き出した。
この小さな少年の父親は妖討伐時の怪我が元で、母親は病で既に亡くなってしまい、頼るべき親族も引き取る事は叶わず、御陵孤児院に引き取られた。
孤児院に引き取られてからまだ日数が経っておらず、場に馴染めない少年は裏庭に来て良く泣いおり、今日もいつもの様に泣いていた。
周りのやや年上の少年数人は、泣いている少年よりも前に引き取られた似た境遇の者たちでありながらも泣く少年を苛めていた。
少年は悲しかった、大好きだった父が、母が、亡くなってしまい、親族からは見限られ、孤児院の人達は優しかったが、其れが尚更亡くなった両親を思い出させ涙が出てきた。
少年は更に泣きじゃくりそうになるその時…
「とりゃーーーー!」
大きな声をあげながら飛んできて、苛めていた少年に対し飛び蹴りを決めた。
飛んで来た少年は着地を決めると周囲を見渡した。
まだ泣いていた少年と同年位の少年だった。
泣いていた少年はその少年に見覚えがあったが思い出せなかった。
「若には関係無いだろ!引っ込んでろ!」
「そうだ!御陵だからってデカい顔すんなょ!」
「「そうだ!そうだ!」」
若と言われて思い出した。この少年は自分を引き取った孤児院を経営している一家の子供だった。
親がいて羨ましい位にしか思っていなかった少年が場に入ってきた。
「てめーーら!此処にいる以上お前らは御陵の身内だ!俺の家族だろうが!!喧嘩は兎も角くだらねぇい事してんじゃねーー!」
周囲の少年達は若よりも年上にも関わらず、若の言葉にただ圧倒されていた。
若は泣いていた少年を見て、不機嫌そうな顔をした。
「お前もお前だ!何時迄も泣くなぁ!」
「う、うるさい!親のいるお前に言われたくない!」
泣いていた少年はやって来た若を睨みつけ、周囲の少年達は場の流れに困惑していた。
「いい目つきじゃねーか、その目が出来ていればこいつ等だってバカな真似してなかったろーに……。
親が亡くなったんだ泣くのは構わない…だがな、お前の両親はお前に泣いて欲しいだなんて思っちゃいねーハズだぞ。」
「…………。」
「お前の両親は、お前に笑って欲しいハズだ。新しい家で…新しい家族と…友達と…。俺はこの先、国を守る為に、家を守る為に…そしてお前らは家族を守る為に命張るって決めてんだからよ。」
そう言って周囲を見渡すと皆が皆、羨望の眼差しを向けていた。
「改めて自己紹介させて貰うぜ、俺は御陵 陣 お前らの家族だ。」
その瞬間彼等は、御陵の若では無く自分達の若だと認めたのだ。
時は戻って、
「はははーっ!遅いなーあいつら!おっ見晴らしが良いなココ、丁度イイ椅子もあるし座って休むか。」
陣は大きい岩に座って休んだ。
少し遅れて他の少年達もやって来た。
「つ、疲れた〜。若早すぎ〜〜」
「水がのみたいよぉ〜。」
「ひ〜つかれたぁ〜〜。」
「おーーおつかれさん。ほれ、水やっから皆で分けな!」
そう言って持っていた水筒を渡すとケンカせずに仲良く分けた。
「うわぁ〜いい眺め〜!」
「ホントだぁ〜!すっげぇ〜!」
「おっ本家や孤児院も見えるよぉ!若〜。」
着いたそこは見晴らしの良い山の中腹で崖の様な場所であり、そこからは御陵の屋敷や孤児院、新撰組屯所の他にも今日の街並みが見られる場所であった。
「ああ、そうだな…そして京の街並みも見えるな…一族は古くからこの京を守ってきた……俺も守って見せるぜ。京だけで無くこの国をな…。」
「俺も若と一緒に守るぜ!」
「ウチも守るわぁ〜!」
「「「ぼくも!ぼくも!」」
陣はもうすぐ五歳になる位とは思えない様な物言いをする事が多いが、その言葉一つ一つに一族の誇りを感じ受けられ、そんな陣の言葉を聞いた少年少女達は魅せられ自分たちも陣と一緒に御陵の誇りを守って行きたいと強く思った。
こんな仲間と戦って行きたいと言う思いを感じていたその時……
「…ぁ〜!……かぁ〜〜!!わか〜!どこで………かぁ〜!」
「なんかイツ花お姉ちゃんの声がしない?」
「ん?そうだな、なんか聞こえるな?」
「若様〜!一体どちらにいらっしゃるんですか〜!!」
下から聞こえるなと崖から見下ろしてみると、イツ花が大きな声をあげながら彷徨っていた。
「オーイ!イツ花!上だ、上!!」
「若様!そんなところに居て危ないじゃないですか!御当主様が読んでましたよぉ〜!!今日から本格的な修行が始まるんじゃ無いですか〜!もうご自分で早めてくれって仰ったじゃないですか!」
「はははーー!わりーわりー!今すぐ降りるわ!」
イツ花に大きな声で応じると陣は後ろに振り返った。
「つー訳で、俺は今日から本格的な修行に入る。しばらくは前見たくお前らんトコ行ったり遊んだりはもうできないかもしれねーが、孤児院のガキどもの世話頼んだぜ!」
「!…ああ、任してくれ!もうイジメなんてしないし、若が来るまで孤児院の子供たちは俺たちが守るよ!…なぁみんな!?」
「「「うん!」」」
突然の言葉に子供達はビックリしたが、若が御陵の人間としての誇りを誰よりも持ていると知っていた子供たちは得心し、陣に任された事を必ず守ると約束した。
「よろしくな、お前ら俺は行くが帰る時は寄り道すんなよ!じゃぁな!!」
言い終わった直後崖から飛び降りていったと思ってビックリした子供たちが覗き込むと途中にある岩に飛び移りながら降りて行きすぐさま下まで降りた。
「なぁ〜俺たちにも出来るかな??」
「「「ぜったい ムリ!!」」」
一人の少年の質問に残った子供たち全員は一斉に顔を横に振った。
「「「「「まっ若だしな」」」」」
若と言う事で全員が納得した所は、流石御陵と言った所であろうか…
「若様〜危ないですよぉ〜」
「ははーわりぃなイツ花!じゃっ行って来るわーー!!」
崖の岩を飛び移ってあっという間にイツ花の前に着地し驚きつつも陣を嗜め様としたが、次の言葉が出る前に陣は駆け出した。
「イツ花!上の連中の事頼むぜ!」
「あっハイ!若様、バーーンと修行頑張って下さい!」
「「「「若〜!バーーンと頑張って〜〜!!」」」」
皆の声援を背に、陣は笑顔を浮かべつつ父・哲心との修行を思い、強い意志の宿った瞳で御陵の屋敷を見つめ駆けて行く速度が徐々にあがって行った。
御陵と新撰組の者達が鍛練する為の道場が有り、その奥で御陵当主にして、新撰組筆頭の哲心は本日より修行を開始する愛息子・陣を今か今かと待っていた。
ダダダダダーーー!
「オヤジーーー!待たせたな修行頼むぜ!」
「待たせすぎだ!自分から早くと言っておいて何なんだ!!あと口調を直さんか」
悪びれない陣を見て散々待たせられた哲心は怒りの声を上げた。
「ははっすみませぬ父上、先ほどまで孤児院の子供たちと会ってました。しばらくは遊ぶ事も少なくなるゆえ、長引いてしまいました。申し訳ありません。」
「ん、そ、そうか。仕方あるまいな。しかし陣よ、誕生日までまだ有ろう。それまで友達と遊ぶ事を優先しても良いぞ…。」
陣の口調が変わり…いや変わり過ぎではあるが………弦一郎や美幸と決めていた五歳にはまだなってないにも関わらず陣たっての願いで修行開始の運びとなったが………友達と遊ぶ事も出来ずに修行の道を歩ませてしまう事に憂いていた。
「いえ、私が望んだ事なればお気遣い無用で御座います。」
「そうか…そうだな。お前は五歳にもなっていないが、御陵の事を誇りとしてくれている。わしは其れが嬉しい…そして誰よりも才に溢れている。…もしかしたら、直ぐにわしを抜くかもな…。」
陣の言葉に決意を感じ取りこれ以上言う事は無いと哲心は喜びを露わにした。そして陣の才を誰よりも見抜いていたが、最後の言葉は小さく陣には聞こえなかった。
「よし!これより御陵陣の修行を開始する。修行の間に甘えは無い!分かったか!」
「はい!」
こうして陣の修行は開始された。
まずは、基礎体力・気・魔力の扱い方
そして…
御陵一族は、一族の中でも正しく直系の血筋にのみ伝えている武術がある。
哲心は自身の父から教わり、父は祖父から教わり、祖父は曾祖父から教わった。
弦一郎が槍使いの直系である様に、弓使いの直系がある様に、薙刀,砲術,拳闘と有るが、哲心は剣士の直系である。
御陵一族の剣術は、初代・御陵 陣,そして初代の父・源太が御陵流剣術の開祖とされている。
そして陣もまた、剣士としての道を歩む事となる。
真剣でなく鉛入りの木刀を用い、真剣と同等の重量にすることで基礎体力の向上を図っている。
気や魔力の扱い方は、生誕時にその才の片鱗が見えており一を聞いて十を知ると言った様に…砂漠に巻いた水の様に、一瞬にしてその技術を吸収して行った。
剣も剣術では無く基礎の部分だけであったが、凡人の百振りをたった一振りで超えてしまう程の才能を哲心は感じていた。
哲心は確信した…
陣は、息子は十年の内に自身を超える存在になる…と…。
日も暮れたため、修行を終えた
「よし!今日はこれまで!明日また修行を行う。(全く、我が子とはいえ末恐ろしいな)」
「はい!………ふうぅ疲れたぜ、剣は基礎ばっかだったけど…技はいつ教えてくれんだ、オヤジ?」
「お前は…修行中はヤケに礼儀正しいと思ったら、直ぐにこれだ。」
「俺は修行と仕事の時,関西呪術協会の中では礼儀正しくするって決めてるんだよ。最も俺が当主になれば話は別だけどさ〜。」
「全くお前と言う奴は…。」
哲心は陣の物言いに呆れていたが、内心は嬉しかった。
陣の才能に……
一族を誇りに思うその様に……
「剣術では基礎はモチロンだが、各流派の技を習得していく。まずは御陵流剣術を習得し、次いで他の流派を習得していくぞ。なに安心しろ…ワシも父から全ての流派を教わったんだ、お前にも同じ様に教えて行く所存だ。」
哲心は自分も父から教わった事を思い出しながら、息子にも同じ事を教えて行こうと思いつつ、これからの修行内容を考えた。
「ああ、基礎が大事なのはわかっているつもりだけど、やっぱ技の練習が無いと気持ちの込めようが違うよ。それに、御陵流以外の剣術も早く習得したいしね。」
御陵流以外の剣術……以前にも話したが、御陵一族は妖達との戦いを制する為に古来から古今東西の剣術を習得し続け、現在も哲心は強いと話しを聞けばその流派の習得する様に心掛けており研鑽を怠ってはおらず、陣もまた同じ様に研鑽を続けて行く腹積もりであった。
哲心もその意図がわかっていた為に、頷くと早期に開始すると話すと二人で並んで屋敷に向かって行った。
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