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銀河転生伝説 外伝

作者:使徒
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とある自由惑星同盟転生者の話 その6

<スプレイン>

宇宙暦799年/帝国暦490年4月13日、バーミリオン星域に帝国軍が侵入しつつある。
バーミリオン星域会戦の始まりだ。

ランテマリオ星域での会戦を終えて、ハイネセンに帰還した後、俺とモートン中将、カールセン中将の3名はヤン元帥の指揮下に加わった。

第十三艦隊を除いた同盟軍の残存戦力は24000隻。
これを8000隻ずつ3個艦隊に分け、俺たち3人の中将が指揮する。

帝国軍は、原作と同じく各艦隊が各地に散って同盟軍の基地を叩いているようだ。

原作のラインハルトと同じ手を採るのか?

いや、ヤン元帥の実力は転生者であるハプスブルク大公も知っているはず。
だとすれば……原作同様に考えない方がいいな。

それに、原作との大きな違いもある。

ライガール星域会戦、トリプラ星域会戦、タッシリ星域会戦が行われていないのだ。
そのせいか、本来なら4月24日に始まるはずであるバーミリオン星域会戦は今日4月13日に始まろうとしている。

……いや、今更そんなことを考えても詮無き事か。
今は戦いに集中しよう。

バーミリオン星域に侵入してくる帝国軍の艦艇数は約62000隻。
対するこちらは、伏兵となっているカールセン艦隊8000隻を除いた31000隻。
およそ2倍の戦力差だ。

なるほど、圧倒的な兵力差で粉砕する。
これが奴の策か。

確かに、原作ではヤン元帥が戦力で圧倒的に上回る敵を相手に勝利を収めたことは無い。

アスターテは引き分けに持ち込むのが限界だったし、ドヴェルグでは4倍の敵を相手に持ち堪えただけであり、アムリッツァは勇戦したとはいえ敗北。
バーミリオンはミュラー艦隊が参戦したのはラインハルトの敗北が決定的になってからだし、包囲されたラインハルト麾下の部隊を救おうとして大損害を被っていることを考えると論外。

伏兵の第十五艦隊を含めたとしてもまだ20000隻以上の戦力差があることを考慮すれば、確かにこれは妥当な策だ。

だが、それでも俺たちは勝つ。
そのための第十五艦隊だ。

「敵、射程内に入りました」

「司令部より攻撃命令」

「よし、全艦砲撃開始! 敵を殲滅しろ!」

ここが橋頭保だ。
カールセン提督率いる第十五艦隊が敵の背後に回り込むまで、なんとしても戦線を維持する。

・・・・・

あれから3日が過ぎた。
未だ戦線に大きな変化は無い。

どうやら帝国軍は原作と同様の手を取るみたいだな。
しかも、正面戦力だけでこちらの2倍の戦力を用意しておいて…だ。

だが、今回はそれが裏目に出た。
あのまま強引に力押しを図られたら、今頃こちらは第十五艦隊の到着を待たずして壊滅していたかもしれない。

さて、そろそろ第十五艦隊が到着する頃だな。

「敵後方に第十五艦隊、第十五艦隊が到着しました!」

「よし、挟撃のチャンスだ。撃って撃って撃ちまくれ!」

第十五艦隊との挟撃状態にあるのは中央の第十三艦隊で、右翼の俺の艦隊と左翼の第十四艦隊は今までと変わらない。

だが、俺とモートン提督が攻勢をかけることでメックリンガー、シュタインメッツ艦隊が援護に回らぬよう足止めしておくことは出来る。

第十三艦隊と第十五艦隊が敵中央を潰すまで足止めすればこちらの勝ちだ!

「敵中央、攻勢を強めます!」

凄まじい勢いだ。
如何にヤン元帥といえどもあの勢いを抑えるのは……。

ん、中央を空けた?
わざと突破させて損害を減らすつもりだろうか?

ハプスブルク艦隊、ミュラー艦隊が抜けて、メックリンガー、シュタインメッツ艦隊も抜けようとする。

「司令部より伝令、『敵の集結地点に砲火を集中せよ。なるべく正確に、効率的に』とのことです」

そうか、敵の集結地点を狙うのか。

「よし、撃て!」


* * *


あの後、帝国軍は再編のため一時距離を取り、こちらもその間に艦隊の再編を行った。
俺の艦隊が中央へ、第十五艦隊が右翼へ配置された。

第十四、第十五艦隊が敵両翼に攻勢を仕掛けて敵中央と分断し、俺の艦隊と第十三艦隊が敵中央を攻撃する。

ミュラー艦隊の突破にかなり梃子摺ったが、数の優勢もあってどうにか突破できた。

「前方にハプスブルク艦隊。数、18000!」

こちらは第十三艦隊と合わせて17000隻。
これだけやっても、まだ数の上で劣勢だ。
いい加減嫌になってくる。

「敵が奇妙な動きをしつつあります」

何だ?
何をしようとしている!?

「司令部より伝令、『敵が空けた空間の直線上の部隊を少なくし、急速回避の準備を怠るな』とのことです」

「うむ、あの直線上の部隊に回避準備を命じておけ」

「はっ」

ヤン元帥は何かを感じ取ったらしいな。
ここは言われた通りにしておこう。

「エネルギー波、来ます!」

直後、敵中から6本のビームが発射された。
要塞砲にすら匹敵する規模だ。

ん、あれはアースグリム級……か?
なるほど、あのビームはアースグリム級の艦首大型ビーム砲だったわけだな。

これが敵の切り札か。
だが、こちらの損害は軽微。
このまま敵を突き崩す。

「敵の策は潰えた! このまま一気に押し込め!」

火力の集中とフィッシャー提督の適切な艦隊運動でハプスブルク艦隊の戦力を削いでいく。

「敵軍、後退します」

「今が好機だ。ここでハプスブルク大公を討ち取るんだ!」

敵の艦艇はみるみる減衰していき、敵の旗艦も被弾し出している。

あと一息、あと一息だ!

「う、右方に多数の艦影。急速に接近してきます!」

「あ、あれは……敵の別動隊です!」

「中央に戦艦アースグリムを確認!」

何!?
ファーレンハイト艦隊だと!?
いくらなんでも早過ぎる!

「第十四艦隊、挟撃されます!」

メックリンガー艦隊とファーレンハイト艦隊に挟撃された第十四艦隊はみるみる内に数を減らしていく。

「戦艦アキレウス撃沈、モートン提督戦死!」

く、これはマズい。
モートン提督が戦死した今、第十四艦隊は組織だった抵抗が出来ない。
殲滅されるのは時間の問題だ。

「後方に敵艦隊出現、数8000!」

あれは……アイゼナッハ艦隊か。
これほど早く2個艦隊が駆け付けるとは……。
どうやら、これが敵の真の切り札だったわけだ。

「メックリンガー艦隊がこちらへ向かってきます!」

もはや第十四艦隊は烏合の衆でしかない。
ファーレンハイト艦隊だけで十分だと判断したのだろう。

「戦艦ディオメデス撃沈、カールセン提督戦死」

程なくして、第十五艦隊の旗艦ディオメデスも撃沈された。

「シュタインメッツ艦隊がこちらへ接近中」

「我が軍は包囲されつつあります!」

「敵の攻撃激しく、戦線を維持できません!」

「艦列、崩れます!」

次々と入る絶望的な報告。
それらは全て、同盟軍の劣勢を示していた。

「敵中央に砲撃を集中しろ! ハプスブルク大公さえ撃てば!」

そう言いながらも、もう無理だと何処かで諦めている俺が居る。

「こ、後方に多数の艦影! 敵の新手です!」

「詰んだか……ここまでだな」

勝敗は決した。
ここに至って、もはや逆転の目は無い。
後はヤン元帥の停戦命令を待つばかりだ。

力及ばず……だな。


* * *


その後、同盟は帝国に併合され宇宙から消滅。
ハプスブルク大公も皇帝に即位してアドルフ1世となり、勅命によって地球教も殲滅された。

ヤン元帥、ビュコック元帥は退役し、俺やチェン参謀長、パエッタ中将、フィッシャー、アッテンボロー、グエン・バン・ヒューなどの提督たちは帝国軍に編入され、帝国軍人となっている。

結局、俺は何も変えることが出来なかった。

……確かに、俺の介入によっていくらか原作から乖離した。
だけど、それは川の流れを少し変えた程度のことで、同盟の滅亡という行き着く先は変わらなかった。

歴史を大幅に変えたアドルフ皇帝とは大違いだな。

まあ、それもまた良し……か。


…………

そう思っていた時期≪ころ≫があった……。

今、目の前にいるのは俺と同じ転生者であり銀河帝国の皇帝へと登り詰めた男、アドルフ・フォン・ゴールデンバウム。

「スプレインくん、君は萌えが好きかな?」

「えっ? は、はい」

「そうか……アルト・スプレイン中将。卿を秘密結社『銀河団』の名誉顧問に任命する」

はて、どうしてこうなった?

・・・・・

話は2ヶ月前まで遡る。
ヴァーミリオン星域会戦で自由惑星同盟軍は敗れ、その後俺は謹慎生活を送っていた。

だが、アドルフ・フォン・ハプスブルク大公が皇帝に即位した後、俺の家に来た銀河帝国の武官らしき人物から『新帝都フェザーンへ出頭せよ』と命じられた。
何やら皇帝直々にお呼びのようだが……。

そう思ってフェザーンの宮殿(仮)に出頭し、皇帝へと謁見した直後の会話がこれだ。

頼むから俺を怪しげな教団に勧誘するのは止めてくれ。
しかも名誉顧問て……。

はっきり言って訳が分からないよ………。
 
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