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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第七十話 未来への飛翔

                第七十話 未来への飛翔
アレクサンドリアでの休息に入っているロンド=ベル。しかし警戒を解いたわけではなかった。
ミネルバの艦橋で。タリアはアーサー、メイリンに対して問うていた。
「今度は東なのね」
「はい、連邦軍から報告がありました」
「バグダットに向かっているそうです」
二人はこうタリアに対して述べるのだった。
「修羅及びあのデュミナスの軍が」
「今度は六千とか」
「六千ね」
タリアはまずはその数を聞いて声をあげた。
「数としては相当なものね」
「はい、しかも数だけではありません」
アーサーの言葉だ。
「修羅もいますしデュミナスまで」
「そうね。どちらも手強いわね」
これはタリアもよくわかっていることであった。
「何度も戦ってきて。特に最近はね」
「そうですね。ただ」
「ただ。何かしら」
今度はメイリンに応えた言葉だった。
「いえ。今までカイロとかに出ていましたよね」
「ええ」
「それで今度はバグダットですか」
彼女が言うのは地理的なことでああった。
「それって何か」
「何か?」
「おかしいですよね」
「おかしい?」
「だって。全然逆ですよ」
困惑した顔でタリアに語ってきた。
「西から東にって。ってことはつまり」
「ええ、私も同じだと思っているわ」
真剣な顔でメイリンに答えるタリアだった。
「彼等もまた。シャドウミラーと同じくね」
「あらゆる場所に出ることができるんですか」
「元々いる世界が違うから」
タリアはこのことを指摘した。
「だからよ。こうしたことも普通なのよ」
「そうですか」
「あくまで彼等にとってはね」
このことを強調した言葉だった。
「そうなるわ」
「そうですか」
「ただ」
ここでタリアはまた言う。
「ただ?」
「いえ、どうしても不思議なのよ」
顔を曇らせての言葉になっていた。
「不思議といいますと?」
「シャドウミラーにしろ修羅にしろ焦っているわ」
タリアは言う。アーサーに応える形で。
「何か妙に」
「そうですかね」
「あっ、そうですね」
ここではメイリンの勘が働いた。その勘での言葉である。
「出て来たらもうしつこいまでに攻撃してきますからね、どの異世界の勢力も」
「そうよ。今保有している戦力をとことんまで投入して来るわね」
「はい」
タリアの言葉に対して答える。
「そうですよね。何故なんでしょう」
「ひょっとしてだけれど」
今度はタリアがその勘を働かせた。
「彼等にも危機があるのじゃないかしら」
「危機、ですか」
「ええ。それもかなり深刻なものがね」
こうアーサーとメイリンに語る。
「あるのかも。そもそもそうでなければこちらの世界に介入する筈もないし」
「そうですね。そういえば」
ここでやっとアーサーも気付いたようである。
「我々だって今自分達が安泰ならあんなことはしませんね」
「複数の世界が危機に瀕している」
タリアはまた言う。
「おかしいと思わないかしら」
「ですね。それは」
「幾ら何でも有り得ないですよ」
「しかもよ」
また二人に述べる。
「こんなことが幾つも起こるなんて」
「偶然にしてはあまりにも」
「多いですよね」
「何か。おかしなことだらけね」
タリアの顔がさらに曇る。
「神様が何かしているんじゃないかって思う位にね」
「神様っていえばそういえば」
「ああ、そうそう」
アーサーはメイリンの言葉であることに気付いた。
「ガンエデンだよね、あれは」
「あれはなくなったけれど」
これはもう皆わかっていた。
「けれどそれでもね」
「そうですよね」
タリアの言葉にメイリンが頷く。
「引っ掛かるっていうか」
「あのガンエデンは女だった」
「女!?」
「気付かなかったの?」
アーサーに対して問う。
「ひょっとして今まで」
「気付いていなかったっていうか」
アーサーは戸惑いながらタリアに答える。
「あれはちょっと」
「神様に性別がないってこと?」
メイリンは首を傾げつつ言う。
「それだから?」
「うん、そうなんだけれど」
「いえ、けれどあれは違うわ」
しかしタリアはこう見ていたのだった。
「多分だけれどね」
「神様に性別があります?」
「キリスト教の神様以外はそうじゃない」
「あっ、そういえば」
こう言われてやっと気付くアーサーだった。
「そうでした」
「アーサーさん・・・・・・」
メイリンも今のアーサーの言葉には呆れてしまった。
「ボケ過ぎでしょ、それって」
「そうかな、やっぱり」
「そもそも貴方って宗教何なの?」
「浄土真宗です」
意外なことに仏教徒であった。
「仏様に性別ってあまり関係ないですから」
「まあそれはそうだけれどね」
「それでも今のは」
今度はタリアとメイリンが同時に言う。
「どうしたものかしら」
「ちょっと深刻なボケですよ」
「何か僕が凄い馬鹿みたいだけれど」
「普通に甲児さん超えてました」
「そうね。勝平君も」
「あの二人よりって」
流石にこう言われてはアーサーも落ち込む。
「何か凄いショックなんですが」
「ショックならもっとしっかりして下さい」
「そうよ、ミネルバの副長でしょ」
「ええ、まあ」
一応そういうことになっている。
「その通りですけれど」
「最近あれですよ」
またメイリンが言ってきた。
「ミネルバはタリアさんだけでやってるって言われていますよ」
「メイリンが副長じゃないかって言う子もいるわ」
「そ、そこまで言われるなんて」
「言われるのも仕方ないっていうか」
メイリンの言葉はさらに辛辣なものになる。
「本当にしっかりしてもらわないと」
「せめてアークエンジェルのノイマン君みたいにね」
「あそこはサイ君達もいますし」
「そうね」
アークエンジェルは人材豊富であった。
「戦隊ものみたいに人材が揃ってるわね」
「キラ君達がそうですね」
そういう感じで戦っているのがアークエンジェルというわけである。色々あったが今では和気藹々として見事なチームプレイを見せているのだ。
「キラ君が赤でサイ君が青、ミリアリアちゃんがピンク?」
「トール君が緑でカズイ君が黄ね」
タリアもメイリンに続く。
「そんな感じかしら」
「ノイマンさんが黒でムウさんが紫で」
「じゃあミネルバは」
「艦長さんだけ」
またメイリンの容赦のない言葉が炸裂する。
「そう言われていますよ」
「うう・・・・・・」
「こっちはパイロットが戦隊かしら」
「戦隊っていうかライダーですね」
メイリンは意外と細かく設定付けていた。
「シンとかアスランさんとか」
「そういう感じね。チームプレイより個人プレイが得意だしね」
「特にシンは」
シンはやはり個人プレイが得意なのであった。
「そうですよね」
「そうね。それが時としてとんでもないことになるけれど」
「時としてっていうかしょっちゅうじゃ?」
メイリンはまた言う。
「あいつだけは」
「最近目立たないけれどそれでも言わなくていいことばかり言うしね」
「困ったことですよ」
「何か僕ってそれだと」
「影薄いですよ」
今度のメイリンの言葉は核心だった。
「相変わらず九一三って数字は」
「聞いただけで震えるよ」
ついでに言えばその変身ポーズだけで身体が硬直するアーサーだった。
「あいつだけはね」
「それが駄目なんですよ。アスランさんも最近やっと蝿を克服したじゃないですか」
「蝿とカメレオンはね」
タリアが言葉を加えてきた。
「やっとね」
「その分何かキラ君が最近おかしな感じになってますけれどね」
「彼もねえ」
タリアの声がぼやきになっている。
「あと最近ブリット君もね」
「何か話がわからないんですけれど」
アーサーは二人の話に突っ込みを入れる。
「そういえば艦長」
「何?」
「艦長この前アムロ中佐とお話していましたよね」
「ええ、そうだけれど」
タリアはアーサーの言葉に対して頷いて応える。
「私達結構馬が合うのよ」
「それはまたどうして」
「それは」
「多分あれですね」
メイリンがにこりと笑って述べてきた。
「聖衣のおかげですよ」
「聖衣!?」
「逆にこの話だと私ムウさんと気まずい関係になるのよね」
メイリンの顔が苦笑いになる。
「お姉ちゃんともね」
「何か変な話が続くなあ」
「気にしないことね。さて」
ここでタリアは話を変えてきた。
「明日出発ね」
「明日ですか」
「そう、明日よ」
話は戦いのことに移っていた。
「明日出撃してバグダットに入るわ。いいわね」
「わかりました」
「バグダットかあ」
メイリンはバグダットと聞いて何か思うところがあるように街の名前を呟いた。
「どんな街なのかしら、一体」
「奇麗な街だって聞くけれどね」
タリアはメイリンに対して述べる。
「今まで見たことはなかったわね」
「そうですよね。そういえばあの辺りでの戦闘はなかったですよね」
「あっ、そういえば」
アーサーも気付く。
「メソポタミアでの戦いはあまり」
「アメリカや中国ではかなり多かったけれどね」
「そうそう」
タリアの言葉に対して頷いてみせる。
「特に日本がね」
「日本。そうね」
タリアは言う。
「本当に日本での戦いが続くわよね」
「そうでしたね、本当に」
「おかげで皆日本に詳しくなりましたよね」
「日本人も多いしね」
「はい」
メイリンがタリアの言葉に頷く。
「シンだって日系ですし」
「そうね。あの子もそうだったわよね」
「他にも日本人っていえば」
「ロンド=ベルのかなりの割合で」
多いのがロンド=ベルであった。
「いますよね」
「そうなのよね。半分位かしら」
「あとアメリカ系と中国系とドイツ系ね」
「ですね。多いのは」
「僕はイギリス系ですけれど」
アーサーはそうなのだった。
「少ないみたいで。ライト君がいてくれていますけれど」
「特に少ないのがアラブ系ですよね」
「そうなんだよね、実は」
アーサーはメイリンの言葉に頷く。
「アハマドさんがいるけれど」
「このエジプトにしろあれよ」
タリアがまた言う。
「アラブになるのよ」
「あっ、そうですね」
「そういえば」
今回やたらと気付くことが多いようである。
「ここもそうでした」
「今のエジプトも」
「不思議とアラブ系での戦いが少なかったわね」
タリアはあらためてこのことに言及した。
「けれど今はね」
「はい」
「今度はバグダットです」
「とりあえず今は英気を養って」
話を戦いに戻してきていた。
「明日ね。いいわね」
「わかりました」
「それでは今日は」
「総員艦内で待機」
タリアは指示を伝えた。
「一応何時でも出られるようにしておいて」
「了解です」
こうして明日の出撃に備えられるのであった。そして次の日。ロンド=ベルはアレクサンドリアからバグダットに向かうのであった。マクロス7もそこにいる。
「何ていうかな」
「どうしたんだ、カイ」
ハヤトはそのマクロス7を見て声をあげるカイに対して尋ねた。
「いやよ、でけえなあって思ってよ」
「そうだな。マクロスより大きいからな」
「これでマクロスが二隻だ」
カイはこのことを強調する。
「強い戦力になるぜ、かなりな」
「そうだな。おかげでダイターンの輸送も楽になった」
「まずはそれかよ」
「あれがな。大きいからな」
ハヤトは言う。
「ザンボットはまだ分離できるからいいんだけれどな」
「まあそうだな。かさばるんだよな」
「何か荷物みたいな言い方ね」
今のカイの言葉にセイラが突っ込みを入れる。
「あまり関心はしないわ」
「そりゃどうも」
「けれど。輸送が楽になったのは事実ね」
これはセイラも認めていた。
「戦力として以外にもね」
「全くだぜ。戦艦が一隻増えるってのはそれだけで有り難いな」
スレッガーも言う。
「だから正直マクロス7の参加は有り難いな」
「そうですね。それは確かに」
ハヤトは今度はスレッガーの言葉に頷いた。
「いざって時はやっぱり戦艦ですから」
「ああ。それにしても」
「それにしても?」
リュウの言葉に顔を向ける。
「修羅の目的がわからないのがな」
「それですか」
「ああ。気にならないか?」
リュウはこのことをハヤト達に対して問う。
「何を考えているのか」
「そうですね。それも」
セイラがそれに応えて頷く。
「気になります。けれど」
「わからねえんだよな、まだ何も」
カイの言う通りであった。
「あの連中の闘争心だけがわかってな」
「そうだな。それに」
「それに?」
リュウの言葉に問う。
「あのデュミナスっていう三人の子供達もいるしな」
「とりあえずシャドウミラーとは関係ないみたいですね」
「ああ、それはな」
これはわかってはいた。何もかもが違うからだ。
「シュウ=シラカワ博士なら御存知でしょうか」
セイラはこう考えてきた。
「ひょっとしたら」
「あの博士かよ」
カイはシュウの名前を聞いて声をあげた。
「あの博士もな。何時出て来るかわからねえからな」
「そうだよな。何を考えているのかもわかりゃしねえ」
スレッガーはそれについても言う。
「よくわからねえ御仁だぜ」
「また出て来ますかね」
「さてな」
リュウはハヤトの言葉に首を捻るばかりだ。
「神出鬼没だからな。本当に」
「そうなんですよね。だから余計に」
「出て来る時になったら出て来るだろ」
カイはこう言うのだった。
「あの博士の性格からしてな」
「そうね」
セイラも同じ様な考えになっていた。
「いつもそうだしね」
「そういうことだな。さて」
またスレッガーが言う。
「そろそろだぜ」
「バグダットですか」
「ああ、準備はいいな」
「はい」
「何時でも」
皆スレッガーに対して答える。確かにもう準備はできていた。
「それなら出るか」
「ええ」
こうしてロンド=ベルはバグダットに到着するとすぐに布陣した。するとその目の前に。もう修羅達が布陣していた。また新しい修羅のマシンもあった。
「二機か」
「あれが指揮官と思われます」
シナプスにヘンケンが通信を入れてきた。
「おそらくですが」
「そうだろうな。あれしか考えられない」
「そして援軍の報告もあがっています」
ヘンケンはこうも言うのだった。
「援軍か」
「レーダーに反応です」
それで援軍の存在を掴んでいるのである。そういうことだった。
「それもかなりの数です」
「二段か。敵も相変わらず慎重だな」
「それで司令」
ジャクリーヌがシナプスに声をかける。
「どうされますか」
「だからといって戦わないわけにはいかない」
シナプスの言葉は軍人の言葉であった。
「全軍戦闘用意」
「わかりました」
ジャクリーヌも軍人としてそれに応えた。
「それではすぐに」
「全軍まずは敵を引き付けろ」
シナプスは言う。
「そのうえで攻撃を仕掛ける。いいな」
「後手打ちですか」
「そうだ」
パサロフに対して述べた。
「それでいいな」
「はい。それではその様に」
「問題はあの二機が動くかどうかだが」
シナプスはその二機の修羅のマシンを見て呟く。
「様子見の意味もある。攻撃は慎重にな」
「了解です」
こうしてロンド=ベルはまずは敵を待った。修羅達はそのままロンド=ベルに対して向かって来た。そしてロンド=ベルはその修羅達に対して。静かに攻撃を仕掛けるのだった。
「受けろ!」
「喰らいやがれ!」
それぞれの声と共に攻撃を浴びせる。まずはそれで修羅達を次々と倒していく。だがそれでも。後方にいる二機はまだ動こうとはしない。
「アリオン」
「何だ?」
アリオンと呼ばれた紫の長い髪の男が緑の精悍な顔の言葉に応える。
「そろそろ行くか」
「そうだな」
彼の言葉にアリオンは頷いた。
「そろそろ頃合いか」
「うむ。それではだ」
緑の髪の男はアリオンの言葉に頷いた。
「行くとしよう。いいな」
「よし。ではフェルナンド」
アリオンはここで彼の名を呼んだ。
「御前は右から行け」
「右か」
「そうだ。俺は左に行く」
こうフェルナンドに告げた。
「いいな」
「わかった。それではだ」
「行くぞ」
こうしてこの二人も進撃を開始した。この二人の参戦を見てロンド=ベルも身構えた。
「来たぞ!」
「よし!」
とりわけ身構えたのはコウタだった。
「修羅の奴等!ここでまた!」
「お兄ちゃん、今回はあの人いないわね」
「ああ」
コウタはここで妹の言葉に対して頷いた。
「いないな。確かに」
「ダメージはそんなに受けてはいない筈だけれど」
「あいつにはあいつの事情があるんだろうな」
ここでは素っ気無い言葉になるコウタだった。
「そこまで知らないさ、俺もな」
「そうなの」
「それよりだ。あの連中を絶対にバグダットには入れねえぞ」
「ええ」
これには素直に頷くショウコだった。
「何があってもね」
「街の人達は何があっても守る」
コウタの強い決意だった。
「わかったな」
「わかってるわ。じゃあ」
「来たな、修羅!」
「へえ、熱いのがいるな」
アリオンはそのコウタを前にして楽しげに笑ってみせた。
「普段のフォルカとはまた違った熱さだな」
「あいつを知ってるのか」
「知らない筈がないだろう?」
楽しげに笑いつつコウタに述べる。
「俺達は同じ修羅なんだからな」
「同じ修羅」
「そうさ、戦いに生き戦いに死ぬ修羅」
アリオンは言う。
「その修羅だからこそ知ってるってわけさ」
「しかし御前は」
コウタはここでアリオンの気配を察した。既に拳を交え攻撃を繰り出し合っている。
「あいつとはまた違う。御前の気配は」
「風だ」
アリオンは言う。
「俺は風なのさ。覚えておきなよ」
「風!?」
「そう、風さ」
楽しげに笑いつつ述べてきた。
「俺は風なのさ。このアガレスもな」
「アガレス!?」
「待て、確かその名前は」
すぐ側で戦っていたレーツェルがその名前に反応してきた。
「確か。魔神の名前だったな」
「魔神!?」
「そうだ。ソロモン王が封じた七十二柱の魔神」
ショウコの言葉に応える形で述べるレーツェルだった。
「アンドラスもそうだったな」
「へえ、そうだったのか」
アリオンはそのことは知らない感じだった。
「あんた達の世界では魔神になるんだな、こっちの戦いの神様達は」
「戦いの神様!?」
「それに私達の世界って」
コウタとショウコはそれぞれ今のアリオンの言葉であることに気付いた。
「どうやら本当に御前達は」
「この世界には元々いないのね」
「そうさ。俺達は修羅の世界から来た」
そしてアリオンもそのことを隠そうとはしなかった。
「崩壊していく世界からこの世界に来たんだよ」
「どうしてだ」
コウタは次にこうアリオンに問うのだった。その時フェルナンドはゼンガーと対峙していた。
「何故俺達の世界に来たんだ、どうしてだ」
「こっちの世界もまた戦いに満ちているからさ」
「俺達の世界もだと!?」
「いえ、その通りよ」
コウタは否定しかけたがショウコがそれを肯定してきた。
「私達の世界はやっぱり」
「くっ、そうか」
「戦いに満ちているのは確かよ」
「その通りなんだよな、これが」
アリオンもまたそこを言ってきた。
「この世界も俺達の世界と同じく戦いに満ちているからな。だから来たんだよ」
「ということはだ」
レーツェルはそこまで聞いたうえで述べた。
「御前達はこの世界に完全に入るつもりさ」
「御名答」
アリオンは笑って答えてみせた。
「俺達と同じ世界にする。この世界をな」
「成程な」
「だからだ。あんた達とも戦うってわけだ。感謝しろとは言わないさ」
「誰が感謝なんてするか!」
コウタが怒鳴ってきた。
「この世界を貴様等の好きにさせてたまるか!」
「だから戦うのかい。あんたは」
「そうだ!」
「この世界と皆を守る!」
ショウコも言ってきた。
「だから貴方にも!負けない!」
「俺もだ!」
コウタはまた叫んだ。
「御前を倒す!修羅を全て!」
「そうじゃないとな。俺達も困るんだよ」
「あくまで戦いか」
レーツェルはそれを聞いて述べる。
「御前達は」
「そういうことさ。それが俺達の世界ってわけだ」
「わかったか?」
アリオンだけでなくフェルナンドも応えてきた。
「この世界もまた」
「戦いにより全てを支配させてもらおう」
「ふざけるな!」
だが今の彼等の言葉に。コウタは激昂して叫ぶのだった。
「戦いだけじゃない!俺達は!」
「そうよ!」
ショウコもそれに続く。
「勝手に断定しないで欲しいわ。私達が戦うのは」
「戦うのに理由がいるのか?」
「おかしな話だな」
アリオンとフェルナンドにとってはそうだった。
「戦うのは修羅にとって全て」
「それ以外の何者でもない」
「まさかに修羅というわけか」
レーツェルは彼等の話を聞いてこう呟くのだった。
「戦いに理由はいらないか」
「そうだ。それはこの世界も同じじゃないのか?」
「だからこそ飽くなき戦いを繰り広げている。違うのか」
「そうだ、違う」
今度答えたのはゼンガーだった。
「むっ、貴様は」
「我等と同じ。いや」
フェルナンドはここで気付いた。
「それ以上の闘志を持っている」
「そうだな。修羅ではないというのに」
「言っておこう」
ゼンガーは二人に対して述べたのだった。その間もフェルナンドとの攻防が続いている。
「我等が戦う理由は二つ!」
「二つだと!?」
「そうだ!まずは剣を持たぬ者を守る為!」
彼はまずはこう叫んだ。
「そしてもう一つは!」
「何だ!?」
「悪を断つ為だ!!」
断言しつつダイゼンガーの巨大な剣を構える。そして再びフェルナンドに向かおうとする。しかしその時だった。
「そうか。何かを守り悪を断つ為か」
「手前!」
「こんな時に!」
コウタとショウコは彼の姿を認めて思わず声をあげた。そこにいたのは。
「フォルカか」
「そうだ」
アリオンに対して答えた。確かにフォルカはそこにいた。
「予定通りだな」
「しかしだ」
だがここで。フェルナンドが言ってきた。
「貴様、どうしたのだ」
「どうしたとは?」
「闘志がない」
彼が言うのはそこであった。
「その闘志のなさ。一体どうしたのだ」
「どうということはない」
だがフォルカは彼等に対してこう言葉を返すのだった。
「俺は。考えているだけだ」
「考えているだけだっていうのかよ」
「そうだ。だから俺は」
アリオンに応えて述べる。
「ここでは戦わない」
「何っ!?」
「今何と言った」
アリオンだけではない。フェルナンドも今のフォルカの言葉には思わず問い返した。
「戦わないとはどういうことだ」
「俺達は修羅だ。それでどうして」
「俺にもわからない」
今度の返答はこうだった。
「しかし今はだ」
「わからん」
「どうしたのだ、フォルカ」
「そしてこれで」
今度はヤルダバオトを何処かへと動かすのだった。
「むっ!?」
「今度はどうするつもりだ」
「修羅を去らせてもらおう」
「馬鹿な、修羅を去るだと」
「一体何を言っているのだ」
これまた二人にはわからないことだった。あまりのことで追うことすら忘れている。しかしその間にもフォルカは姿を消していくのだった。
「答えが出たならばまた会おう」
「風か?」
アリオンはふとした感じで述べた。
「風に誘われたってのか」
「それはわからん。だが」
フェルナンドはあらためてロンド=ベルの面々を見る。やはり彼等の相手をしないわけにはいかないということだった。修羅として。
「御前達の相手はするぜ」
「それは忘れることはない」
「望むところだ!」
「ここから先は行かせないわ!」
コウタとショウコが二人に応える。
「バグダットには入らせねえ!」
「貴方達を倒す!」
こう叫んでアリオンに向かう。そしてゼンガーもまた。
「参る!」
「では私も行こう」
レーツェルは二人のフォローに向かうのだった。
「諸君等とはまた違う理由で戦っていることを。知らさなければな」
「戦いには理由があるのはわかるわ」
ここでまた何者かの声がした。
「その声は」
「また出て来たのね」
ラウルとフィオナがその声に応える。そこにいたのは。
「あたし達もあたし達の理由で戦っているんだしね」
「デュミナスかよ」
「あんた達も出て来たのね」
「当たり前でしょ。あたし達は修羅のパートナーよ」
ティスが言うのだった。今いるデュミナスは彼女だけだった。
「だからここにいるんじゃない」
「多分それだけじゃねえな」
「そうね」
フィオナは兄のその言葉に頷いた。
「どういう魂胆なんだ?一体」
「あんた達はあんた達で怪しいのよ」
「怪しいなんて随分な言い方ね」
「またどっかの世界から来てるのはわかるんだよ」
ラウルはそうティスに述べた。
「しかしな。それだけじゃねえだろ」
「それだけなんだけれどね」
「嘘つけ。しかしだ」
「あんた達も出て来るなんてね。予想はしていたけれど」
「ティス、先に行くな」
「そうよ」
ラリアーとデスピニスも姿を現わしてきたのだった。デュミナスの三人が揃った。
「まして敵の挑発に乗るな」
「落ち着いてね」
「それはわかってるわよ」
減らず口めいて二人に返すティスだった。
「けれどね。何かこの連中いつもいつも」
「むかつくって言いたいのか?」
「御言葉ね、それだと」
「それとはまた違うわ」
しかしティスはこうラウルとフィオナに言葉を返してきた。
「あんた達の何かがデュミナスの為になるわね」
「為になる!?」
「どういうことよ、それは」
「それはまだわからない」
ティスにかわってラリアーが答える。
「けれど貴方達の力を使えば」
「デュミナスは答えを見つけられるかも」
「何を言いたいのかわからねえな」
「それならそれでいいわ」
デスピニスの言葉まで聞いたうえであらためて対峙する。
「覚悟しな!」
「今度もやっつけてあげるわ!」
「こっちだってね。事情があるのよ!」
「だから負けるわけにはいかないんだ」
「デュミナスの笑顔が見たいから」
しかし三人も退かない。二人にそのまま向かう。
「三対二かよ」
「相手に不足はないって感じかしら」
「いや、それは違うぜ」
「そうですよ」
だがここで一機助っ人に来た。それは。
「カズマ!」
「ミヒロも!」
二人の乗るヴァルホークだった。巡航形態で一気に二人のところに来たのだ。そしてすぐに二人のところでマシン形態に変形した。
「これで数のうえじゃ互角だな」
「ふん、数の問題じゃないわよ!」
ティスはそのカズマに対してムキになった顔で向かい合うのだった。
「あんた達の相手はあたしがしてあげるわよ!」
「御前かよ、このガキ!」
「ガキですって!?」
「ガキじゃなかったら何だっていうんだ!」
カズマがティスに対して言う。
「ミヒロと同じ位じゃねえかよ」
「そういえばこの三人って」
ミヒロは今の兄の言葉で気付いた。
「子供の姿でいるってことで何かあるみたい」
「何か!?」
「ええ、何か」
また兄に言う。
「そんな感じがするのよ」
「!?どういうことだそりゃ」
「子供だって思うわよね」
「ああ」
「そこに何かあるのかも」
首を捻りつつ述べたのだった。
「人造人間っぽいし」
「人造人間ですか」
その言葉に応えたのはナラージだった。
「そういえば。感覚的にこの娘達は」
「はい、確かに」
それにミズホが続く。
「戦闘タイプを見ても。人造人間のそれを思わせます」
「クローン等とはまた違って」
「クローンか」
それに反応したのはレイだった。
「レイ君!?」
「やっぱり感じますか」
「あの三人は俺に似ている」
レイは呟くようにナラージ達に述べた。
「あの年齢に達するまでにもやはり経験がある」
「ええ、それは」
「そうですね」
「しかし。あの三人はそれを感じさせない」
レイが言うのはまずそこだった。
「そして」
「そして?」
「俺はラウのクローンだった」
これはもう誰もが知っていることだった。だが彼はその自分自身から別れて今ここにいるのだ。己の中にある葛藤から解き放たれて。
「だからラウの動きと同じなのは確かだ」
「それはそうだな」
彼にアスランが答える。
「しかし御前は御前だ」
「有り難うアスラン。しかし」
アスランに礼を述べてからあらためて三人を見て言う。
「あの三人が俺とは違うのは確かだ」
「少なくともクローンじゃないか」
「ああ。むしろ」
「動きが機械めいていやがる」
シンの評価はこうであった。
「何かそんな感じだな」6
「そうだ。やはりな」
そしてアスランもそれに頷く。
「けれど生身だ」
「正体は大体わかってきた。ならば」
「どうするつもりだ、レイ」
「暫く様子を見るべきだ」
レイはこう考えていた。
「多分今よりももっと情報が入るからな」
「様子を見ていけばか」
「そう思う。俺は」
「そうね」
レイのその言葉に頷いたのはタリアであった。
「艦長」
「レイの言う通りよ。ここはやっぱり」
「暫く様子見ですか」
「倒すのも容易じゃない相手だし」
こうした事情もあった。
「ここは。見ておきたいわ」
「わかりました。それでは」
「ラウル、フィオナ」
アスランはそれを受けて二人に通信を入れた。
「それでいいな」
「それでいいって言われてもよ」
「手強いわよ」
二人は苦い顔でアスランに言葉を返してきた。
「手加減したらこっちがやられるぜ」
「それでやっつけるなって言われても」
「いや、これは」
だがここでカズマが言ってきた。
「この三人はあれだぜ」
「あれ!?」
「ああ。全力でぶつかってもはいそうですかで倒せる相手じゃない」
彼は珍しく冷静に見ていた。
「問題はないさ。一人で全力でぶつかってもな」
「そうなのか」
「それじゃあここは」
「それにですよ」
今度はミヒロも言ってきた。
「ミヒロちゃん」
「どうしたの?」
「全力でぶつからないとこっちがやられますよ」
ミヒロが言うのはそこだった。
「相手はかなり手強いですし」
「そうですね、確かに」
ミヒロの言葉にまずナラージが頷く。
「相手の強さを考えれば全力で向かってやっと五分です」
「じゃあこのままですね」
ミズホもそれでいいと言うのだった。
「全力で向かいましょう。逆にやられない為に」
「わかった。じゃあな」
「それで行くわ」
こうして三人はそれぞれの相手に向かう。戦いはその間に順調に進んでいるがその中で。ラリアーがラウルと戦いながら他の二人と修羅達に対して告げた。
「ティス、デスピニス」
「何?」
「どうしたの?」
「今回はここまでにしておこう」
こう言うのだった。
「今は」
「戦いを止めるっていうの!?」
「そうだよ。もう戦力がなくなってきたから」
見ればもう戦力がなくなっていた。ロンド=ベルの後手打ちが効いて戦いは終始そのロンド=ベル優勢だった。その結果である。
「だから」
「撤退しろってことなのね」
「どうかな、それで」
その言葉に最初に頷いたのはデスピニスだった。
「そうね。それじゃあ」
「あたしはまだ戦いたいんだけれどね」
ティスはまだ不満そうだった。
「けれど今の状況じゃこれ以上戦っても無駄ね」
「うん。二人共先に撤退して」
ここで彼は二人に言った。
「後詰は僕が引き受けるから」
「おいおい、御前等だけで話を済ませるのはどうかと思うぜ」
だがここでアリオンがラリアーに言ってきた。
「アリオンさん」
「俺が後詰になるぜ、今回はな」
「えっ、どうして」
ラリアーはそれを聞いて思わずアリオンに対して問い返した。
「気が向いたんでな」
これがアリオンの返答だった。
「だからさ」
「気が向いたからって」
「風が言っているんだよ」
彼はまたラリアーに答える。
「俺に行けってな。だからさ」
「風が」
「わかったら早く行くんだな」
そしてまた言うのだった。
「俺に任せてな」
「ですが」
しかしデスピニスはここで言うのだった。
「アリオンさんだけで相手をされるのは」
「難しいことは言わなくていいんだよ」
しかしアリオンはデスピニスのその言葉に取り合わない。
「風が言っているんだ。早く行け」
「風が」
「そうだ。わかったら行きな」
また言う。
「いいな、それで」
「そうね。わかったわ」
最初にアリオンの言葉を受け入れたのはティスだった。
「アリオンさん、じゃあここは任せるわよ」
「ああ、じゃあな」
「ラリアー、デスピニス」
ティスは今度は仲間の二人に声をかけた。
「わかったわね、それでね」
「アリオンさんがそこまで言うんだったら」
ラリアーもそれに頷くのだった。
「わかったよ。それじゃあ」
「デスピニスもいいわよね」
「ええ」
遂にデスピニスも頷いたのだった。
「アリオンさん、じゃあ御願いします」
「よし、じゃあフェルナンド」
三人の了承を得たアリオンは今度はフェルナンドに声をかけたのだった。そして言う。
「御前もそれでいいな」
「そうだな」
フェルナンドは表情を変えずにアリオンの言葉に応えてきた。
「わかった。じゃあ俺もな」
「行きな。俺に任せてな」
「しかし。こうした時も風か」
「それがどうかしたかい?」
「全ては風に誘われるまま」
フェルナンドの言葉に感慨が入る。
「御前らしいな」
「褒めてくれて有り難いぜ。じゃあ行きな」
「わかった。それではな」
その言葉に頷きフェルナンドも撤退する。こうしてアリオンは後詰を務めた。彼は自軍が全て撤退するまで戦場に残りそれから撤退したのだった。
「じゃあまたな」
「修羅っていっても」
「そうね」
ショウコはコウタの言葉に頷いていた。
「色々な奴がいるんだな」
「そうね。それにしても」
ショウコはまた言ってきた。
「あのフォルカが戦場を離脱したけれど」
「あいつ、どうするつもりなんだ?」
「それはわからないわ。けれど」
ショウコの言葉は続く。
「また何かありそうね」
「ああ、それはな」
「よし、じゃあ皆」
戦いが終わったところでテツヤが皆に声をかけてきた。
「一旦アレクサンドリアに戻るぞ」
「いや、待て」
だがここでダイテツが話に加わってきた。
「艦長」
「このバグダットに残ることにする」
「バグダットにですか」
「そうだ。ここにも基地はある」
まず理由はこれだった。
「だからだ。いいな」
「ですが艦長」
しかしここでテツヤは言うのだった。
「バグダットの基地はアレクサンドリアよりも規模は小さいですが」
「それでもだ」
これはダイテツも承知していた。
「今はここに残る。おそらく敵はまたこのバグダットに来る」
「来ますか」
「今は即応体制を維持しておきたい」
「それでですか」
「そうだ。駄目か」
「いえ」
それには異議を呈さないテツヤだった。
「そういうことでしたら」
「よし。それではな」
「はい」
あらためてダイテツに対して頷くテツヤだった。
「そうしましょう。それでは」
「うむ。それではな」
こうしてロンド=ベルはバグダットに留まることになった。早速連邦軍の基地に入りそこから敵の攻撃に対して備えるのであった。
その中でラウルは。フィオナ達を前にして話をしていた。
「レイはあの三人に何かあるって言っていたな」
「ええ、確かにね」
「その通りです」
フィオナとナラージがそれに応えて頷く。
「デュミナスの謎です」
「デュミナスの」
ラウルはまた言う。
「そういえば修羅と同じ位謎にまみれた奴等だよな」
「そもそもですよ」
今度はミズホが言ってきた。
「デュミナスって何なんですか?」
「さあ」
フィオナもこれには首を傾げるばかりだった。
「何なのかしらね。そういえば」
「只の組織の名前でしょうか」
ナラージはまずはこう述べた。
「ですがそれにしてはどうも」
「おかしいっていうのか?」
「ほら、あの子供達は言っていましたね」
ここで彼はティス達のことを話に出してきた。
「あいつ等か」
「はい、デュミナスの考えだと」
彼が言うのはそこだった。ティス達の言葉である。
「確かに言っていましたね」
「ああ、そうだったな」
言われてそれに気付くラウルだった。
「じゃああれか?デュミナスは」
「人かしら」
フィオナはこう述べた。
「何かそんな感じがするけれど」
「そうですね」
ナラージもまずはフィオナのその言葉に賛同して頷いた。
「少なくとも意識のある存在でしょう」
「意識のある存在って」
「正直わからないところがあるんですよ」
ミズホの顔は曇っていた。
「わからないところ?」
「はい、何かあの子達の態度って」
ティス達のことだ。
「妙に崇拝しているような感じですから」
「あっ、確かにね」
フィオナが最初にそれに頷いた。
「そんな感じね。親っていうか」
「神か。そんな感じです」
ナラージの言葉だ。
「それを考えると果たしてデュミナスは人なのかどうか」
「じゃああれか?」
ラウルはここまで聞いて述べた。
「デュミナスっていうのも神様かよ」
「少なくともあの三人にとってはそうなのでは?」
「私もそう思います」
ナラージとミズホはこうラウルの問いに答えた。
「あの三人が何者なのかもまだわかっていませんが」
「それでも。デュミナスへの崇拝は感じますので」
「わからなくなってきたな」
ラウルはここまで聞いて顰め顔になり述べた。
「デュミナスもあのガキ共も何もかもな」
「謎が謎を呼びってやつ?」
フィオナの言葉はいささか冗談が入っていたがそれでも真実だった。
「そんなふうになってきてるわね、この話も」
「ああ、全くだ」
ラウルは今度はフィオナの言葉に頷いた。
「また出て来るかね、あいつ等」
「おそらくは」
ミズホがラウルのその問いに答えた。
「今までのパターンですとそれが妥当です」
「その意味で今バグダットに残っているのは正解でしょう」
「正解か」
「はい」
ナラージはまた述べる。
「それに僕は」
「んっ!?どうした?」
ナラージの言葉の調子が変わったのに気付いたのだ。
「何かあるのかよ」
「そのデュミナスの目的も気になります」
「デュミナスのかよ」
「またシャドウミラーとか修羅みたいにこの世界で何かしたいのじゃないかしら」
フィオナの予想ではこうである。
「いつものパターンで」
「それも考えられます。ただ」
「ただ?」
「やはりそれ以外のケースも考えられるのではないでしょうか」
ナラージはその頭の中で色々なケースを想定させていた。その中で己のデュミナスへの考えも進めていくのであった。慎重にかつ確実に。
「それが何かまではやはりわかりませんが」
「今のところは修羅と行動していますね」
「ああ」
ラウルはミズホの言葉に頷いた。
「これは目的が修羅と同じだからではないのかも知れません」
「あの連中とは違うってか」
「目的が同じなら争っていますね」
ナラージはミズホの説を捕捉してきた。
「互いに。そうなる筈です」
「けれど今のところ二つの勢力は協力関係にある」
「そうです」
ナラージは今度はフィオナの言葉に対して頷いてみせた。
「それなりに親密に。おそらく互いに利用し合っているでしょうが」
「ってことはやっぱりあの連中は目的は違うのかね」
「そうじゃないでしょうか。だから同盟を組めて」
「目的ねえ。何かあいつ等の情報収集も必要になってきたな」
「修羅かデュミナスから投降する人が出て来ればいいんだけれどね」
「おいおい、そりゃ幾ら何でもないだろ」
ラウルはすぐに妹の願望を否定した。
「絶対にねえな」
「やっぱりそうかしら」
「御前もわかってるじゃねえか」
今のフィオナの言葉に突っ込みを入れる。
「あの連中はそんなタマじゃなさそうだぜ」
「ではやはりここは」
ナラージの言葉に慎重なものが宿る。
「これまで以上に慎重に調べていきますか」
「そうですね。手懸かりは今のところなしですが」
「そうだよな。じゃあとりあえずは」
「はい?」
「何ですか?」
ナラージとミズホはラウルの言葉に顔をあげた。
「休もうぜ。これ以上考えてもいい答えは出ねえよ」
「そうね、ラウルの言う通りね」
フィオナもそれに賛成して頷いたのだった。
「考えが煮詰まってきたし。それよりも」
「それよりも」
「骨休めにしましょう」
彼女もまた兄と同じことを言うのだった。
「お茶でも飲んでね」
「お茶ですか」
「あっ、それでしたら」
ここでミズホが笑顔になって二人に言ってきた。
「お茶菓子で美味しいのがあるんですけれど」
「お茶菓子?何だ?」
「クッキーです
話す側から笑顔が零れる。
「今の時間だとそろそろユウキさんがお茶の時間に入りますし」
「じゃあユウキのところに行って皆でかよ」
「それでどうでしょうか」
「いいわね、それ」
フィオナがにこりと笑ってミズホに答えた。
「紅茶とくればクッキーよね、やっぱり」
「はい」
「そうですね。それでは皆で」
「ああ」
ナラージとラウルも続く。
「ユウキさんのところへ」
「賑やかにやろうぜ」
笑顔で言い合いながら今はユウキのところに向かう。クッキーを手に。バグダットでの戦いはその一幕を終えた。しかしすぐにまた。もう一幕が開けるのだった。

第七十話完

2008・6・30
 
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