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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第六十九話 震える大地

                第六十九話 震える大地
アレクサンドリアに戻ったロンド=ベル。しかし彼等は警戒を解いてはいなかった。
「来るな」
「間違いないな」
フェイはアレンの言葉に頷いていた。彼等はゴラオンの中にいた。
「感じるぜ、すげえ気をな」
「オーラ力とも違う」
アレンは言う。
「闘気ってやつだな」
「ああ、それだな」
フェイはあらためてアレンの言葉に頷いたのだった。
「その気配だ。これは」
「来る」
二人はそれをはっきりと感じていた。
「このアレクサンドリアにな」
「そうだな。戦場はここだ」
アレンの言葉だ。
「来るぞ。明日にでも」
「えっ、明日かよ」
トクマクが出て来た。明日と聞いて驚いている。
「明日来るのかよ、敵が」
「って御前も感じていないか?」
フェイは少し呆れた顔で彼に言ってきた。
「これだけの気なら感じるだろうが」
「まあ少しは」
彼も感じるだけは感じているようだった。
「感じるな。これは来るよな、やっぱり」
「明日だ」
彼等は言う。
「激しい戦いになるな。気合入れていくか」
「ああ」
そう言い合って明日に備える。その明日になると。
「レーダーに反応です」
トーレスが述べる。
「敵が来ました」
「ああ、やっぱりか」
ジョナサンはそれを聞いて当然といった様子であった。
「出て来ると思ったぜ。今にもな」
「わかったいたのか」
「アレン達が言っていたからな」
彼はそれを聞いていたのだ。だから今それをシラーに答えてみせる。
「わかっていたさ。じゃあ出るか」
「わかった」
シラーは静かにジョナサンの言葉に頷く。
「敵はやはり」
「修羅だな」
ジョナサンはそれも読んでいた。
「絶対に出て来るぞ。いいな」
「わかった。じゃあ行く」
こうして彼等も出撃していく。彼等が総員戦闘配置に着いたところでもう修羅達が戦場に姿を現わしていた。ここまで予想通りであった。
「数は」
「千はいるよ」
勇にヒメが答える。
「もっといるかも」
「多分千じゃ済まないわよ」
カナンがここで言ってきた。
「援軍が来るわね、今までのパターンだと」
「ああ、間違いない」
カナンに答えたのはシオンだった。
「来る。気を感じる」
「そう、やっぱり」
「あいつもいる」
シオンはこうも言う。
「あの赤いマシンの男もな」
「フォルカ・・・・・・!」
コウタにはそれが誰かすぐにわかった。
「出て来るか。ここでも!」
「落ち着け」
クインシィは冷静な言葉を激昂しだしたコウタに声をかけてきた。
「いいな」
「ちっ、落ち着けか」
「いいわよね、お兄ちゃん」
ショウコは心配な顔で兄に声をかける。
「絶対に。いいわね」
「ちっ、御前までかよ」
「修羅は手強い」
「だからこそ余計にだ」
ナンガとラッセもコウタに声をかけてきた。
「落ち着け、いいな」
「焦ったらそれで終わりだ」
「くっ・・・・・・」
「それにコウタさん」
次に彼に声をかけてきたのはカントだった。
「今度は何だよ」
「今は目の前のことを考えていきましょう」
とりあえずフォルカのことを外すようにという言葉だった。
「今はそれよりも目の前の敵を」
「そうだな。カントが正しい」
そのカントの言葉を受けてナッキィも頷いてみせる。
「今はそれよりもな。目の前の敵をだ」
「見れば」
レーツェルは今その目の前の敵を見ていた。修羅達の中に一機アンコウを思わせる形のマシンがあった。
「あれが指揮官だな」
「あれか」
そのマシンを見たゼンガーの目が光る。
「あれが指揮官か。ならば」
「だが気をつけろ」
レーツェルは友に対して言ってきた。
「あのマシンは手強い」
「うむ」
ゼンガーもそれはわかっていた。わかっていると共に警戒するべきところもわかっていた。
「打たれ強いな。それもかなり」
「貴様等に名乗っておこう!」
ここでそのマシンから声がした。太い男の声だった。
「俺の名はマグナス!」
こう名乗るのだった。
「マグナス=アルド!修羅の一人だ!」
「やはり修羅か」
「その通りだ。貴様等を叩き潰す為にここに来た」
その言葉がゼンガーにも告げられる。
「覚悟しろ。ここが貴様等の墓場だ!」
「面白い。ならばだ!」
ゼンガーもその言葉を受けて立つ。
「ここで貴様を倒す。覚悟しろ!」
これを合図として戦いははじまった。修羅達は南と西からロンド=ベルに襲い掛かる。それを見たブライトはすぐに指示を下した。
「まずは西の敵を叩く」
「西か」
「その間南の軍は足止めだ」
こうアムロに答える。
「今はな。それでいいな」
「よし、わかった」
アムロが一同を代表して答えた。
「まずは西だな」
「アムロ、それでだ」
「どうした?」
ブライトは今度はアムロに声をかけてきたのだった。
「御前は暫くの間南の軍勢を足止めしておいてくれ」
「俺がか」
「御前とクワトロ大尉、そしてショウか」
ロンド=ベルでもエース中のエースばかりである。
「エース級で足止めを頼む」
「その間に他のメンバーで西の軍勢をだな」
「そうだ、そういうことだ」
彼が言うのはそれだった。
「まずは一気に叩き敵の数を減らす」
「よし。じゃあそれで行こう」
こうして戦術が決まった。まずは限られたメンバーで南の敵を足止めしその間に主力は西の修羅達に向かう。機動力も使った戦術だった。
「喰らえっ!」
ジュドーはまずミサイルを放った。ダブルゼータの数多い装備のうちの一つだ。
「派手に行くぜ。どうせ御前等援軍が山みたいに出て来るんだろうがよっ!」
「ジュドー、俺も行く!」
その後ろからカミーユが出て来た。既にゼータツーのメガランチャーが構えられている。
「受けろっ!まずは御前等からだ!」
そのメガランチャーを修羅達に向かって放つ。まずは西の軍勢は一気に薙ぎ倒されていく。
西の軍勢が瞬く間にあらかた倒されると。次の敵が出て来たのだった。
「来たか!」
コウタがヤルダバオトの姿を認めて叫ぶ。
「フォルカ!手前かよ!」
「御前は」
「コウタだ!」
自分の名を叫んでみせる。
「御前だけは倒す!ここでな!」
「ならばその闘志、受ける!」
フォルカもまた応えてきた。
「ここでもな!」
「面白え!それならだ!」
コウタも受けて立つ。
「ここで倒してやる!言葉通りな!」
『だから待て』
「ロア」
今度はロアが彼を止めてきた。
『御前は落ち着け。さもないと』
「さもないと。何なんだよ」
『御前は死ぬことになる』
かなり直接的に忠告してきた。
『わかったな』
「死ぬ、俺がかよ」
『そうだ』
またそこを言ってきた。
『わかったな。いいな』
「御前まで言うのかよ」
コウタにとってはそれが腹立たしいことこのうえなかった。それがついつい言葉に出た。
「ったくよお」
『俺だからこそだ』
しかしロアの言葉も変わらない。
『言う。いいな』
「ちっ、けれど俺は!」
それでもコウタの闘志は変わらない。
「あの野郎!ここで今度こそ!」
『待て!』
「待つかよ!」
ロアの制止も振り切ってフォルカに突き進む。最早制止は聞かなかった。
だがここで。ロンド=ベルの面々はあることに気付いたのだった。
「ねえショウ」
マーベルがショウに声をかけてきた。
「あのフォルカだけれど」
「ああ」
話はフォルカに関するものだった。
「いつもと様子が違うわね」
「そうだな。そういえば」
ショウもそれに気付いたのだった。
「いつもの闘志がない」
彼は言った。
「弱い。何故だ」
「そうね。何かおかしいわ」
マーベルもそこを言う。
「何かがあったわね」
「ああ。だがコウタはそれに気付いていない」
それに気付ける程冷静ではなかったのだった。
「だがこれは間違いないな」
「そうね。フォルカに何かあったか」
彼はそれをまた言う。
「それが問題だけれど」
「だが今はそれよりも」
既に西の修羅は倒し南の主力との全面対決に入っていた。それに目を向けていた。
「フォルカの方が気になるな」
「そうね」
「ねえショウ」
ここでチャムも話に入って来た。
「どうしたんだ、チャム」
「そのフォルカだけれどね」
彼女もまたフォルカを見ていたのだった。
「迷いがあるよ」
「迷い!?」
「うん」
それをショウに告げるのだった。
「何か今までと全然違うし」
「そうね。確かに」
マーベルもチャムの今の言葉を認めた。
「気配もね。普段とはその勢いが違うし」
「そうだな。そういえば」
ここでショウもフォルカの気配を完全に察し取ったのだった。
「あの激しい、焔の様な気配が消えている」
「かわりに迷いだよ」
チャムはまた迷いという言葉を出してみせた。
「やっぱり全然違うよ」
「あの男に何かがあった」
ショウはこう察してきた。
「精神的に。まさか」
「けれどコウタは気付いていないわ」
マーベルは今はコウタのコンパチブルカイザーを見ていた。そのうえでの言葉だった。
「そのことに」
「見えていないのよ」
チャムはコウタをこう評した。
「そういうことが全然」
「あいつは見えているものが狭いんだな」
「最初のショウみたいね」
「おい、俺なのか」
今のマーベルの言葉には苦笑いになる。
「最初のショウだって凄かったじゃない」
「そうそう」
「チャムまで言うのか」
「おまけにすっごいへそ曲がりだったし」
チャムはショウをこうまで言ってみせる。悪意はないが。
「あんまり酷いんで駄目だって思ったわ」
「駄目か」
「けれど今は全然違うじゃない」
「そうね」
マーベルも今のチャムの言葉に頷く。
「コウタだってきっと」
「だといいが。けれど」
「けれど?」
「あいつはフォルカの他にも視野が狭くなる原因があるな」
ショウはそこを見抜いていた。
「狭くなる原因!?」
「そうだ」
マーベルに対しても述べる。
「熱くなり易い。何事にも」
「何事にもなのね」
「肉親に対してもな」
ショウが指摘するのはそこだった。
「かなり熱くなる。だから」
「それが危険なのね」
「あいつは下手をすると俺よりも酷い暴走を見せるかもな」
「暴走?」
「ああ、そうだ」
今度はチャムに対して答えた言葉だ。
「その暴走に取り込まれないことを祈る」
「そうなの」
彼等は戦いながらコウタを見ていた。コウタはただ一直線にフォルカに向かい。その拳を繰り出すのだった。
「喰らえっ!」
「来たか」
フォルカは静かにコウタの拳を見ていた。
「拳か。御前の」
「来い、フォルカ!」
拳を繰り出したまま叫ぶ。
「俺の拳、受けてみろ!」
「いいだろう」
「何っ!?」
今のコウタの言葉にも普段の熱さはなかった。
「御前の拳、見せてもらう」
「!?お兄ちゃん」
ここでショウコは気付いた。
「おかしいわ、何か」
「何っ、どういうことだ」
「これまでのこの人と全然違うわ」
「そういえば」
ここでコウタも気付いたのだった。今まさに撃とうとしていた拳の動きを止めた。
「どういうつもりだ、フォルカ」
「俺は見たいものがある」
「見たいもの!?」
「そうだ」
コウタを見据えていたがやはり普段の闘志がない。
「御前達は何故戦っている」
「決まっている!」
コウタはその熱さのまま答えてきた。
「貴様を倒す!それだけだ!」
「お兄ちゃん、違うでしょ」
しかし彼は言うのだった。
「人類の平和を守る為でしょ」
「ああ、そうだったな」
言われてそれを思い出すコウタだった。
「そういえばな」
「ちゃんと覚えておいてよ、本当に」
「守る為か」
フォルカはそのことを呟いた。
「人類を」
「!?何なんだこいつ」
コウタは今までのフォルカの言葉に流石におかしなものを感じ取った。
「何の為に戦っているっていうんだ」
「戦う為」
フォルカはこうコウタに答えてみせた。
「それ以外の何ものでもない」
「戦う為に戦う!?」
『そうだ』
「!?ロア」
ロアが突如として口を開いてきた。コウタはそれに反応した。
「御前、修羅のことを知っているのか」
『修羅は戦う為に生き、戦うことこそが全てだ』
ロアの言葉だった。
『だからこそ修羅なのだ』
「だからこその修羅」
『そうだ』
『いい、コウタ』
珍しいことにエミィがコウタに声をかけてきた。
『修羅という名前はそこから来ているのよ』
「そうだったのかよ」
「だからお兄ちゃん」
今度のショウコの声は呆れたものになっていた。
「阿修羅って言うじゃない」
「ああ」
「戦うことが全て。だから修羅なのよ」
「修羅界にいるっていうあれだな」
「そうだ、俺は修羅」
フォルカは呟くようにして述べた。
「戦うことが全てだ。だが御前達は違うのか」
「だから言ってるのよ」
コウタではなくショウコがコウタに答えてきた。
「皆を守る為よ。いいわね」
「守る為か」
彼はまたそのことを呟く。
「誰かを守る為に戦っているのか」
「修羅は違うみたいだけれど私達はそうよ」
またフォルカに答えてみせるショウコだった。
「皆を守る為に貴方達と戦う!」
「そうなのか」
フォルカは静かにショウコのその言葉を聞いていた。
「御前達は。やはり」
「やっぱりおかしいな」
コウタもいい加減今のフォルカの不自然さに眉を顰めさせてきていた。
「こいつ。どうなったんだ」
「守る為に戦うか」
またそのことを呟く。
「その為に命を賭けるのか、御前達は」
「何が言いたいのかわからないけれどそうよ」
またショウコが答えた。
「だから貴方も・・・・・・!」
「喰らえっ!」
コウタはここでまた拳を繰り出してきたのだった。
「俺のこの拳で!死ねっ!」
「うっ!」
拳が直撃しヤルダバオトは大きく吹き飛ばされた。まるで人形の様に。コウタはそれを見てまたしても違和感を感じずにはいられなかった。
「あいつ、迷っていやがるのか」
「ええ、そうみたいね」
それをショウコも感じ取っていた。
「守る為の戦いに」
「修羅の戦いじゃないことにか」
「そうみたいね」
ショウコはコウタに対して述べる。
「どうやらね」
「フォルカの奴は」
『撤退した』
ロアが二人に告げた。
『今の一撃を受けてすぐにな』
「逃げた・・・・・・違うか」
『ええ、違うわ』
エミィがコウタに答える。
『今のフォルカはね』
「何がどうなっていやがるんだ」
コウタには訳がわからなくなっていた。それを隠すこともできなくなっていた。
「あの野郎、一体」
「わからないわ。ただお兄ちゃん」
「今度は何だよ」
「まだ敵がいるわ」
ショウコはこのことを兄に告げるのだった。
「だから今は」
「そいつ等を倒すことが先ってわけかよ」
「考えることは何時でもできるから」
ショウコが言うのはそれだった。
「だからね。今は」
「そうか。そうだな」
「ええ、行きましょう」
兄に次の戦いに向かうように促した。
「今の戦いを終わらせる為にね」
「よし!」
彼等はまずはフォルカのことを置いておいて次の戦いに向かった。その時アンドラスに対してシャニがニーズヘッグで斬りつけていた。
「こいつ・・・・・・嫌いだ」
言いながら鎌を振るう。
「何故俺の名前なんだ」
「おっ、そういやそうだな」
「そうだったね」
今のシャニの言葉にオルガとクロトが頷く。
「御前の名前シャニ=アンドラスだったな」
「そうそう」
「何故俺の名前なんだ」
シャニが気に入らないのはそこだった。
「うざい。死ね」
「殺すのか」
「当たり前」
一言でオルガに対して述べる。
「俺の名前を騙る奴、許さない」
「別にいいんじゃないの?」
クロトはあくまで他人事で述べる。
「名前なんてさ。どうでも」
「俺は自分の名前の奴いたらすぐに殺したくなるけどな」
オルガはそのまま率直に述べた。
「クロト、御前も実際はどうなんだよ」
「よく考えたら僕だってね」
クロトもそれは同じだった。
「やっぱり抹殺だね」
「御前等、名前だけでそこまで言うか」
劾にとってはその方がとんでもないことだった。
「何処まで危険な奴等なんだよ」
「まあ彼等はそういう人達ですから」
元凶のアズラエルは平然としたものだった。
「御気になさらずに」
「あんたのせいじゃないのか?」
流石に凱が突っ込みを入れる。
「あの連中がああなったのはよ」
「薬や改造の効果はもう切れていますが」
実はそうなのだった。
「ですから元々そういった少年達でして。死刑囚でしたし」
「そもそも何やって死刑判決受けたんだ?」
凱はそこが気になった。考えてみればそもそもそれがこの三人に関する最大の謎だ。
「そこも気になっていたけれどな」
「ああ、それなら簡単です」
アズラエルは軽やかに答えてみせた。
「実はですね」
「ああ」
「ティターンズの軍人を何人か殺しているのですよ。彼等」
「ティターンズの?」
「ええ、それで死刑判決となったんですよ」
何とそんな理由からであった。
「軍事裁判にかけられて死刑となって」
「それをあんたが引き取ったってわけか」
「はい、そういうことです」
こう凱に答えるのだった。
「かなり暴れたそうで。まあその場で射殺されなかったのが幸運でした」
「それは幸運か?」
ルネがそれに言葉を入れてきた。
「兵器扱いにまでなって」
「兵器扱いでも何でも命があればいいじゃないですか」
また随分と割る切ったアズラエルの言葉であった。
「違いますか?」
「いや、その通りだ」
凱はそれは否定しなかった。
「生きていれば何かが変わる時が来るからな」
「それで彼等は今ああなっているわけです」
「わからないものですね」
ボルフォッグはここまで聞いたうえで述べた。
「オルガ隊員達にその様な過去があったとは」
「まさかティターンズに流れるとは思いませんでしたが」
かつての戦いの時の話だ。
「いや、あの時は手強かった」
「そうだね。今思い出してもぞっとするよ」
ルネもその時のことを思い出した。
「あの三人、戦闘力はかなりのものだからね」
「ああ。しかし」
凱はその三人を見ていた。
「あの三人の攻撃を受けてもあのアンドラス」
「しぶといですねえ」
アズラエルの言葉はいささか他人事のようであった。
「あれだけの攻撃を受けてもまだ撃墜されませんか」
見れば三人はアンドラスに集中攻撃を浴びせている。しかしそれでもアンドラスは墜ちず宙に浮かんだままなのだ。かなりのものであった。
「くっ、こいつ!」
クロトがたまりかねたように声をあげる。
「ミョッルニルをこんなに受けてもまだ抹殺できないのか!?」
「俺だってかなり撃ち込んでるぜ」
オルガは後方からの集中攻撃に専念していた。
「それでもまだかよ」
「こいつ・・・・・・むかつく」
シャニもシャニで派手な攻撃を浴びせていた。
「死ね」
「こざかしい!」
だがそんな三人に対してマグナスは高笑いで応えるのだった。
「この程度で俺が沈むか!」
「何だと!」
クロトが今のマグナスの言葉に激昂する。
「貴様!もう一回言ってみろ!」
「何度でも言う!俺は不滅だ!」
こう言ってみせるのだった。
「不滅の俺を!倒せる者はいない!」
「じゃあ俺がやってやらあ!」
オルガはここで総攻撃を浴びせてきた。
「カラミティのパワー、舐めるなよ!」
「クロト、シャニ!」
劾はオルガのその総攻撃を見てクロトとシャニに声をかけてきた。
「何だ、おっさん」
「御前達も仕掛けろ!」
劾はシャニに対して応えた。
「一機一機の攻撃ではあれは撃墜できん。ならば」
「三機一遍にかかって殺す」
シャニは呟いた。
「その通りだ。わかったら行け!」
「よし!必殺!」
クロトはレイダーを一旦変形させてからアンドラスに突っ込んだ。
「シャニ!オルガ!後ろ頼むよ!」
シャニはそれに合わせてフレスベルグを放つ。曲がった禍々しいビームがアンドラスを襲う。またオルガの総攻撃もさらに激しくなっていた。そしてクロトは接近しミョッルニルの後でアフラマツダを放つ。それを受けてさしものアンドラスも大きく揺れ動いたのであった。
「うおっ!?」
「やったか!」
「何のっ!」
だがマグナスはまだ健在だった。何と彼は大破したアンドラスをまだコントロールしてみせていたのである。驚くべき生命力だった。
「俺はまだ倒れてはいない!」
「ちいっ!早くくたばれよ!」
「御前!消滅しろ!」
「くたばれ」
攻撃を終えた三人はまだ健在であるマグナスを見て思わず言うのだった。
「そう簡単にやられてたまるか。だが」
しかしここでマグナスは言うのだった。
「俺はここで去ろう」
「逃げるのかよ!」
「待てよ!抹殺してやる!」
「逃がすか」
「この勝負預けておくだけだ!」
また三人に対して叫ぶ。
「また会おう!修羅の名にかけてな!」
この言葉を最後として戦場を去るのだった。アレクサンドリアでの戦いはこれで終わった。だが謎が残されていたのであった。その謎とは。
「フォルカ=アルバーク」
コウタはその名を呟いていた。
「あいつ、何があったんだ」
「悩んでいるのは確かね」
兄にショウコが応えてきた。
「その悩みが何かまではわからないけれど」
「わからねえか」
「心読むなんてできないから」
ショウコにはそうした力はないのであった。あくまで普通の人間なのだ。
「だからそこまでは」
「そうだよな。しかし」
コウタはその言葉を受けたうえでまた言う。
「あいつ、今までのあの激しい闘気が消えていた」
「ええ」
これは確かだった。
「異変って言っていいな、間違いなく」
「その異変がこれからどうなるかだ」
「ギリアムさん」
ギリアムがここで出て来た。
「残念だが俺にもあいつのこれからはわからない」
「ギリアムさんにも」
未来をある程度透視できる彼でもわからないというのだ。
「ああ、全くだ」
「そうなんですか」
「だが。一つわかることがある」
「一つ!?」
「そうだ。あの男、そして修羅」
ギリアムは言う。
「今後の人類の未来に大きく関わってくるな」
「あいつ、そこまで大変な奴なのか」
「それはコウタ、御前もだ」
「俺も?」
こう言われてギリアムに顔を向けるのだった。
「そうだ。御前もまた人類の大きな運命の中にいる」
「俺が人類の運命の中にかよ」
「このロンド=ベル自体がな。そうだ」
こうも言うギリアムだった。
「まだまだ大きなことが起こる」
「大きなことがかよ」
「御前はその中で果たすべきことがあるのは間違いない」
「おい、待てよ」
コウタはそれを聞いて思わずギリアムに問うた。
「それは何なんだよ、俺が果たすべきことって」
「残念だがそれもわからない」
ギリアムの能力でもわからないのであった。
「俺にも。見えない」
「見えねえか」
「済まない。しかし」
「しかし?」
「気をつけろ。またすぐに大きな戦いが待っている」
「大きな戦いが」
コウタは戦いという言葉に目に炎を宿らせた。
「まさかその為に俺はここにいるのか」
「おそらくはな。だからこそ自重しろ」
自然とショウコと同じことを言っていた。
「わかったな」
「そうしないといけないのならやるしかねえか」
珍しく人の話を聞くコウタだった。
「俺もな」
「わかってくれればいい。さて」
「さて?」
「皆もう街に出ているぞ」
「おっ、遊びにかよ」
「そうだ。御前達もどうだ」
ギリアムはショウコにも声をかけてきた。
「戦いの合間の息抜きにな」
「そうね。お兄ちゃん」
ショウコがコウタに声をかけてきた。
「何処か行こう。食べにでも」
「エジプト料理か」
コウタはふと呟いた。
「どんなのなんだ、そもそも」
「和食のいい店があるんだよ」
ここでジャーダが出て来て二人に言って来た。
「皆そこにいるぜ。御前等もどうだよ」
「あたし達も今からその店に行くんだ」
ガーネットも出て来た。
「何なら案内するよ」
「そうだな。じゃあショウコ」
「ええ」
「行くか」
「そうね」
二人も行くことにしたのだった。今気付いたが和食を長い間食べていないのだ。
「寿司でもあればいいな」
「お寿司!?」
ショウコは寿司と聞いてその顔を輝かせるのだった。
「お寿司あれば。確かに」
「ああ、回転寿司ならあるぜ」
「かなり美味しいわよ」
「そうか。じゃあ丁度いいな」
「そうね。何か凄い楽しみ」
「その通りだ。では俺も」
ギリアムも微かに微笑んでいる感じになっている。
「一緒に行くとするか」
「!?ギリアムさんってひょっとして」
ショウコは今のギリアムの言葉で気付いた。
「お寿司好きなのかしら」
「そうかもな」
それにコウタが頷く。
「まあ寿司は確かに美味いからな」
「だから大好きなのよ」
「否定はしない」
どうやらギリアムは本当に寿司が好きらしい。
「回転寿司も当然大好きだ」
「そうだな。ギリアムの寿司好きはかなりのものだ」
カイも出て来た。
「教導隊の時も入り浸っていたしな」
「魚は身体にいい」
ギリアムの今の言葉は方弁である。
「だから余計にだ」
「まあ何はともあれ」
「行きましょう」
こうして彼等は寿司屋に向かう。寿司屋ではもう皆がいて恐ろしいまでに食べていた。よく食材が減らないものだと思わせるまでに。
この頃。フォルカは不可思議な場所にいた。赤と青と紫が混じり。立つ場所がないのに立つことができる。そうした混沌とした場所にいたのであった。
そしてそこで。マグナスと話をしていた。
「フォルカ」
「何だ?」
「一体どうしたのだ」
こうフォルカに問うてきたのである。
「あの時。御前は」
「何かおかしなところがあったか」
「ああ、あったな」
見ればマグナスの他にも数人いる。彼等はフォルカに対して声をかけてきていた。
「どう見てもな」
「何故あの時貴様は」
「俺は?」
「戦意に乏しかった」
彼等が言うのはそのことだった。
「何故か」
「普段の貴様ならあんなことはない」
彼等はフォルカに対して言う。
「満ち溢れんばかりの闘志を見せていた」
「しかしあの時は」
「知らん」
彼等の問いにこう言葉を返すのだった。
「俺は何も」
「知らないだと!?」
「そうだ」
また彼等に対して答えるのだった。
「知らん。俺はな」
「言っている意味がわからんな」
マグナスはここまで聞いてフォルカに言ってきた。
「今の貴様の言っていることは。わからん」
「わからないのならわからないままでいい」
フォルカも別にそれで構わないようであった。
「別に理解してもらおうとも思わない」
「何を考えている!?」
「フォルカ、貴様」
「俺は」
ここで彼は不意に呟いた。
「俺は何も」
「何だ!?」
「何かあるのか」
「いや、何もない」
やはり答えないフォルカだった。
「別にな」
「そうなのか?」
「フォルカ、果たして貴様は」
「俺は修羅だ」
今度のフォルカの言葉はこうだった。
「俺は修羅、このことは変わらない」
「そうだ、我等は修羅」
「それ以外の何者でもない」
「それでだ」
またマグナスが言ってきた。
「修羅界はさらに破滅に向かっている」
「破滅にか」
「王もまた動かれようとしている」
マグナスはこのことを今フォルカに対して言うのであった。
「王もな」
「そうか。ならば全ての修羅があの世界に向かうのだな」
「向かうのではない」
「このことはフォルカ」
また周りの者達がフォルカに声をかけてきた。
「これは貴様もわかっている筈だ」
「聞いていたな」
「ああ」
彼等の言葉に頷く。その通りだったのだ。
「聞いていた。あの世界もまた闘争の世界だ」
「そう、闘争」
「まさにそれに覆われた世界だ」
このことを述べていく。既にあの世界のことを知っている言葉であった。
「だからこそ移るのだ」
「我等の世界にするのだ」
「そう、我等の世界」
このことを述べていく。このことこそが彼等に滲み込んでいく。
「そうしていくのだ」
「あの世界に入りな」
「そうだ、その通りだ」
フォルカは周りの言葉に頷いてみせた。
「だからこそ俺達はあの世界に来たのだ」
「わかっているではないか」
「ならば。あれは何だ」
「フォルカよ」
またマグナスがフォルカに告げる。
「わかっているな。御前もまた修羅」
「ああ」
またこの言葉だった。繰り返される。
「ならば。戦え」
「わかっている。俺は戦う」
マグナスの今の言葉に乗ったのだった。
「何があろうともな」
「わかっているのなら話が早い」
「ではフォルカよ」
また修羅達がフォルカに声をかけていく。フォルカはそれを沈黙して聞いている。
「次の戦いがある」
「その戦いには」
「普段の俺でか」
「あの小僧」
マグナスが次に言ったのはコウタのことだった。
「貴様に激しい闘志を見せているな」
「コウタ=アズマか」
「その名前か」
「知っている。あの世界の人間だな」
「あの小僧を倒せばよかろう」
マグナスが言うのはそのことだった。
「貴様のその拳でな」
(あの小僧)
フォルカは心の中で呟いた。誰にも聞かれないように。
(そしてあの娘。俺はあいつ等に何かを見ている)
「フォルカ」
「むっ!?」
「我等修羅は戦いによって生きている」
「戦いこそ我等の全てだ」
また修羅達が声をかけていくのだった。フォルカに。
「全ては戦いの中に生きている」
「戦いこそ我等の全てだ」
(そうなのか?)
はっきりとした疑問だった。
(俺達にとって。戦いは全てなのか、本当に)
その疑問を抱いていく。しかし答えは出ない。それが出るのかさえもわからない。彼は今修羅から何かに変わろうとしていた。しかしそれにも気付かないのだった。

第六十九話完

2008・6・25 
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