インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
過去話~終
――――現在
第三アリーナの整備室、そこではいきなり現れた篠ノ之束によって誘拐された一夏と箒の専用機『白式』と『紅椿』が修復されている。
「それにしても、派手にやられたね~」
「すみません……」
「面目ない……」
箒と一夏が謝るが、篠ノ之束がどこ吹く風といった感じに受け流す。
「いいよいいよ~。………それにしてもアイツ、何のつもりだろうね?」
段々と束の顔が黒くなっていくのを見た二人が冷や汗を流す。今の彼女がどれだけ危険かということを二人は知っていた。
「さ、さぁ~?」
「まぁいいか。さっさとこの修理を終わらせて問い詰めれば♪」
そしてその作業が終わったのは一時間後のことだった。
■■■
―――祐人side
「まぁ、へんな施設で動かせることが判明し、それから地獄の特訓漬けだな」
どれを話そうか考え、結局出したのはそれだけだった。
「………それだけ、か?」
「……ああ。それだけだ」
信じようと思ったが、俺はすぐにそうするのは止めた。理由なんて簡単だ。篠ノ之束と繋がっている人間相手に話す気はない。
「すべて話せ」
「じゃあ、「アンタらが兵器を世に出してくれたせいで影で実験に使われました」と言えば納得するか?」
「!?」
途端に織斑千冬の顔が青くなる。
「悪いけど、俺は記憶を取り戻してから大人なんてものは信用したことない。ただひたすら自分が知らない未知のテクノロジーの情報を公開するように迫ったり、気に入らないという理由で人を殺そうとする人間やその眷属なんてな」
「………一夏と箒までも今ではお前の敵なのか?」
「さあな。でも、このままだったらなってしまうかもしれないな。下らない正義感と行き過ぎた恋愛感情によってな」
―――ギリッ
歯ぎしりする音が聞こえると同時に織斑千冬は出ていった。
「祐人」
「ア?」
―――パシッ
おそらく頬を叩くつもりだったんだろう。だがそれは俺の腕によって止められていた。
「どうしてあんなことを言ったの? 織斑先生はあなたを助けようとしていたのに」
「無理だろ。あの女と一緒にいる時点で無理だ」
そうきっぱりと否定した。
「………それは彼女が私を襲ったから? でも―――」
「違う」
「だったら―――」
「何で」と続けるつもりだったのだろう。だけどそれ以降は俺が口を塞いだから言えなかった。
「………近いな」
そう呟くと同時に俺は後ろのドアを見つめた。
「ちょっと殺ってくる」
そう言ってドアを開けようとすると、楯無に抱きつかれた。
「何言っているの。彼女は―――」
「例えこの世界に必要というのが世界の認識でも、俺にとってはただの敵だ」
「―――え?」
一瞬だけ力が弱まり、俺はその隙に脱出してドアノブに手をかけて、
「別に俺だってあの女を敵とは思ってないさ。ただ信じられないだけで」
外に飛び出した。
■■■
―――千冬side
―――悪いけど、俺は記憶を取り戻してから大人なんてものは信用したことない。ただひたすら自分が知らない未知のテクノロジーの情報を公開するように迫ったり、気に入らないという理由で人を殺そうとする人間やその眷属なんてな
―――このままだったらなってしまうかもしれないな。下らない正義感と行き過ぎた恋愛感情によってな
さっきから私の頭に同じように再生される。
(一夏が、殺されるだと………?)
自分の弟の敵に回ると聞いて内心焦っていた。
最初見たとき記憶を失っていたからだろう、特に悪意などは感じられずむしろ今時の男性に見られるようにどこが弱腰だった。
だが戦い―――特にオルコットに喧嘩を売られた時や、それ以前の情報の吸収力の早さなどがどこか束に似ていたのだ。
そして福音を倒し、風宮は命を狙われた。おそらくその犯人は束だろう。大方、一夏と箒のために用意した福音を止められたせいで怒った―――といった具合だろうか。
(……そして専用機持ちのタッグマッチ、それに地下も……)
思えば、風宮があそこまで怒るのは当然だ。それを一夏を引き合いに出されて怒る私もどうかしている。
(………ウザイと思われるかもしれないが、もう一度話してみるか)
来た道を戻っていると、独特なファッションをした知り合い―――というより束を見つけた。向こうも見つけたのか、さっきまで向けていた足をこっちに向けて、
「ちーーーーーーちゃーーーーーーー」
―――ガシッ、カラッ
頭を掴んで近く窓を開け、
「ふざけるなぁあああああああッ!!!!」
全力で投げた。
すると、さっきの私の叫びを聞きつけて生徒たちが現れるが、私はそれよりも先にそこから離脱して着替えてから束が飛んでいった方向に向かう。
これまでの仕打ち、何が目的でしたか聞かせてもらおうと思って今はジャージ。そっちの方が動きやすいからだ。
「もう、酷いよちーちゃん。私に何の恨みがあって―――」
―――ゴガンッ
言葉の途中で雪片を部分展開して束を殴り飛ばす。
束はわけがわからず首を傾げて、
「どうしたのちーちゃん。一体私に何の恨みが―――」
「ほう。生徒を何度も殺そうとして、私の逆鱗に触れないとでも思ったのか!?」
「生徒って、あのゴミの事? それにしてもしぶといよね。しかも、何度も束さんの邪魔して何様のつもり―――」
「―――それはこっちのセリフだ、ゴミ」
第三者の言葉に私たちはそっちを向くと、そこには―――
「どけ、ブリュンヒルデ。そいつを殺せないだろ」
「どいてちーちゃん。そいつを殺せないから」
束の纏う気配が変わった。それだけ―――風宮の存在が邪魔なんだろう。
そしてその風宮は―――普段から想像つかないほどの殺気を出し、こちらに銃口を向けていた。
ページ上へ戻る