インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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過去話~テンペストの適合者
俺と結華、そして楊香は唖然としていた。
『……これで終わりですか?』
夜祥は今、テンペストを纏ってテスト操縦をしていた。
テンペスト―――それは俺が開発した第三世代型ISで、じゃじゃ馬スペックで高速連撃が得意で並大抵の操縦者では翻弄され、倒れるのがオチなのだが………
「ちょっと待て。今試験段階の無人機を出す」
と言っても完全に俺と完成したディアンルグAのコピーなのだが。
ディアンルグ・コピーを出すと、
『では―――死合を始めましょう』
そう言うと同時に近接ブレード同士で鍔迫り合い、離れると同時にブレード・ビットが自動で離脱の援護に出る。だが、まるでそれが必要ないとばかりに瞬時加速で後ろに周りこみ、加速スラスターを駄目にして、
『……ファイアー』
夜祥が呟くと同時に刀身に炎が宿り、無人機を両断した。
『まだ―――』
「まだやる気!?」
今度は水で突き、風で刻み、岩で粉砕して無人機が跡形もなく壊された。
「「「……………」」」
第三世代兵器『エレメント』。四大属性の火、水、風、地の四つを使って戦うように再度設定し直して専属補佐となった夜祥にテストしてもらっていたのだが、その数値は異様だった。
(近接戦闘はうまいという表記だったけど、天才の領域だろ)
生まれもあるが、何より元から持っている美人さで余計に巫女という風体を表しており、「アンタどこの和製魔法戦士だよ」と言いそうになった今日このごろだった。
■■■
俺は専属補佐になった夜祥に常識を教えていると、二週間経過した。
本来ならダメだがベッドを二人で使ったりとしているとどうやら次第に心を開いてくれたのか、俺の後を付いてくるようになり、これ幸いとばかりにテンペストのテストをしてもらった。この時には既に俺の武装だったエレメント・ブレードをパワードスーツ用に大型にしてエレメント・システムを搭載しビットをAI処理にしているものだが、それに振り回されることはなく、敵を倒していった。
「祐人さん、アタシにやらせてくれ。今まで意向に合わないというだけで捨てられていた原石とやってみたい」
「私もいいわよね、兄さん」
俺は補給を終わらせてからという条件で許可して再度フィールドに立たせる。
「始め!」
管制室のマイクから合図を出すと同時に夜祥VSEvツートップの模擬戦が始まり、最初に出たのは夜祥、そして少し遅れてアイングラドを纏う結華が近接ブレード《斬霊》を展開して飛び出す。ハルバートをモデルにした大型ライフル《バイル・ゲヴェール》を展開して楊香が後ろから援護するが、それを多機構ビット《マルチ・ビット》をリフレクト・モードにして反射させて防ぐ。
『逃がしません』
アイングラドはディアンルグと対をなす存在だが、その分扱いが難しい。だから結華に託した。だが、
「もしかして、近接だけなら結華を超えるんじゃないか?」
意向に沿っているなら両方ともレベルが高い結華の方なのだが、近接だけに限定すると明らかに夜祥の方がレベルが高い。
『宝条一刀流……微塵乱舞』
そんな呟きが聞こえ、俺はあることを思い出した。
(微塵乱舞って、俺の得意技じゃん)
本当は大人用なのだが、テンペストを纏っているならパワーアシストが付いているし、俺の場合はIS用近接ブレードで戦闘はできるが微塵乱舞はできない。だがエレメント・ブレードなら―――使い慣れたが故にできる技だ。元々エレメント・ブレードは知り合いの鍛冶屋に手伝って貰ってできた一振りで、唯一無二の俺の刀。
―――閑話休題
それを捌き切れずに結華は吹き飛ばされ、さらにはガン・モードに変わっている《マルチ・ビット》のレーザーに撃たれる。
『このッ!!』
ビームを撃ちながら複雑な機動で翻弄して楊香は近付くが、夜祥はそれを避けたり弾いたり斬り流したりして近づき、《マルチ・ビット》で翻弄した挙句に風を纏った刀身を自身が回転して楊香を斬り付ける。
「ストップ」
俺は試合を止めた。
『どうして?』
『アタシはまだ戦える―――』
「自分のISのダメージレベルを見ろ。Cに突入しているだろ」
『『……あっ』』
それを気付いたのか、二人はそれだけ言った。いや、実際に俺でも驚いている。
「近接だけで倒すなんて、どこのブリュンヒルデだよ」
『ビットもなんとか操作できましたよ』
「『『………は?』』」
あまりの衝撃的な言葉に俺たちは唖然とした。
『はい。祐人様の部屋で見たアニメを参考にしてオリジナルを組み込んだのでわからなかったようですが』
そういえば、ビット兵器が飛び交うアニメを見ていたな。何故か夜祥はよく見ていたけど、家では見れなかったのだろうか?
「……とにかく、話は終了だ。三人は格納庫に来てくれ」
それから俺も格納庫に移動し、既に固定ハンガーで吊るされている。
「さて、始めるか」
「ところで兄さん、夜祥がどうして兄さんの部屋にいるの?」
「そこのところはアタシも聞きたいです」
俺はため息を吐きながらそのことを説明すると、なんと二人までもが同室になると言い出した。そしてシヴァは笑っていた。
彼女たちは少なからず俺に好意を持っているのはわかる。だけどそこまでか? 勘違いであって欲しいと思う。
「ダメだ」
俺はもちろん否定した。
「「何で!?」」
まるで否定されるとは思わなかったのか、結華と楊香は驚いていた。
「夜祥は庶民の常識を身に付けていないからな。そのためのリハビリ中だ」
「私もないわよ」
「アタシもだ」
いくら実験場とはいえ、少しばかり常識を覚えておいて欲しい。
「………はぁ」
会話しているといつの間にか全ISの修復も終わり、全部を待機状態にしてそれぞれに渡す。
そして自分の部屋に戻ろうとしたとき、辺りに警報が鳴り響いた。
『―――B19番テストアリーナでVTシステムが発動。IS操縦者は直ちにこれを止めてください』
そんなアナウンスが聞こえ、俺たちは一斉に展開してすぐにそっちに向かった。
だけどこの時にはわからなかった。まさかこれが原因で俺たちの居場所が消されるとは思いもしなかったんだ。
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