スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第五十三話 非道、ゴステロ
第五十三話 非道、ゴステロ
「エネルギーはフルだ!そう、もう充分だよ!」
オルガがラーディッシュの格納庫で叫んでいた。
「あとは弾薬も。ありったけだ!」
「サブナック少尉」
そのオルガにナタルが声をかけてきた。
「おっ!?副長」
「気合は充分なようだな」
「俺は戦い前はいつもこうだぜ」
「いや普段以上にだ」
こう言葉を付け加えてきた。
「気合が入っているな」
「まあそれはな」
オルガもそれは認める。
「何かグラドスの奴等見てるとムカつくんだよ」
「腹が立つか」
「全員ぶっ殺してもいいんだよな」
彼が問うのはやけに物騒なことだった。
「あいつ等全員な」
「好きにすればいい」
そしてナタルもそれを止めない。
「思う存分戦え。いいな」
「ああ、わかったぜ」
「じゃあ僕達もだね」
「勿論だ」
クロトとシャニにも答える。
「何ならエネルギータンクを持って行ってもいい」
「それだけ戦えってことだね」
「面白い」
二人はナタルのその言葉を聞いて笑顔になる。
「副長も話がわかるようになったね」
「私はただ単に戦術上の必要性から言ってるだけだが」
「いやいや、他にも色々と」
「そうだ」
しかし二人はここで言う。
「やっぱり彼氏ができたから?」
「なっ!?」
そう言われると顔を急に赤くさせる。
「ブエル少尉、今の発言は取り消せ」
「取り消せって言われてもねえ」
「その通りだ」
「その通りとは何だ、その通りとは」
顔を狼狽させて必死になっている。
「私はだ。その、つまり」
「もうキスもしたんでしょ?」
「・・・・・・それはまだだ」
答えなくてもいいことを答えた。
「そういうことは結婚してからだ。それまではだな」
「あ~~~あ、奥手なんだから」
「副長さんよ」
オルガも参戦する。
「こういうのは積極的にいかないと駄目だぜ」
「何が積極的だ」
一応は言い返す。
「私はただ。そういうことはだな」
「そもそも二十五歳でキスもまだっていうのは」
「どうかと思うぜ」
「そうだそうだ」
「貴様等・・・・・・」
言い返すことができなくなりその顔をさらに真っ赤にさせる。
「何処でそんなやり取りを憶えたのだ」
「自然に」
「簡単に身に着いたな」
「ジュドー達だ」
教えたのはやはりガンダムチームの面々だった。何かとナタルをいつもからかっている面々だ。ナタルはそれを聞いて心の中で納得した。
「くっ、あいつ等・・・・・・」
「おい、御前等」
しかしここに劾が来て三人に声をかける。
「そろそろ出撃するぞ」
「おっと、もうそんな時間か」
「早いね、また」
「ああ」
三人は彼に顔を向けて応えた。
「そうだな。時間だ」
ナタルは助かったと見て素早くその場を取り繕いだした。
「出撃だ。後は頼むぞ」
「了解」
「帰ったらパーティーだね」
「イギリス料理だ」
「シャニ、それは止めておけ」
これは周りの皆が止めた。
「英国に美味いものなしだ」
「そうか」
そんな話をしながら出撃する。もう彼等はロンドン北郊外にまで来ていた。そこで布陣し既に目の前に防衛ラインを敷いているグラドス軍に対して攻撃準備に入っていた。
「さて、と」
勝平がまず声をあげた。
「一気に叩き潰してやるか」
「正面からだな」
「ああ、そのつもりさ」
宇宙太にも応える。
「御前だってそのつもりだろ?」
「あいつ等は正面から叩き潰すのが一番だ」
普段の宇宙太とは少し違っていた。
「ここでな」
「そうね」
彼の言葉に恵子が頷く。
「グラドスにはそれが一番ね」
「そういうことだね。それじゃあ」
三人に対して万丈が声をかけてきた。
「容赦せずに。行くとするか」
「全軍攻撃用意じゃ」
アスカが指示を出した。
「容赦するでないぞ」
「アスカ様、では童夢も」
「うむ」
サンユンに対して頷いてみせた。
「前にやれ。それでよいな」
「どうぞです」
シャンアンもアスカの指示に賛成した。
「彼等に対しては容赦する必要はありません」
「その通りじゃ。だからじゃ」
童夢は前に出た。それにNSXも続く。イーグル達もまたアスカと同じ考えだったのだ。
「まずはラグナ砲でいいよね」
「はい」
イーグルはザズの言葉に応えて頷く。既にラグナ砲の発射準備は整っていた。
「是非共。それでいきましょう」
「わかったよ。それじゃあ」
「ええ」
「それでだ」
今度はジェオが言ってきた。
「その後はどうするんだ?」
「そのまま突入です」
慎重なイーグルにしてはやけに過激な戦術だった。
「それで彼等を一気に」
「よし、じゃあそれでやるぜ」
「御願いします」
「チゼータもそれで行くつもりみたいだしな」
タータとタトラも己の乗艦を前に出してきていた。その中でタータが姉に対して問うていた。
「姉様、これでいいな」
「はい」
タトラの返事は何時になく鋭く強いものだった。
「グラドス人をここで退けなければ。大変なことになりますから」
「そやな。うちもあの連中は嫌いや」
はっきりと嫌いだと述べた。
「ここで全員いてこましたるわ」
「そうよ、タータ」
妹の言葉に応える。彼女達も前線に出る。
山積だけではなく他の面々も前に出る。そしていきなり手法の一斉射撃を開始するのだった。
「撃て!」
ヘンケンの指示を合図として一斉射撃が加えられる。それで敵陣が切り刻まれた。
その切り刻まれた場所に一斉にマシンが切り込む。ロンド=ベルは一気に潰すつもりだった。
「おら、死ねっ!」
オルガはまずスキュラを放った。それで敵の小隊を一つ消した。
「脱出は許さねえからな!文句は地獄で言え!」
「それだと要領が悪いんだよ、バァ~~~カ」
「何だと!」
「シャニ、御前もだよ」
「・・・・・・何」
今しがたフレスベルグで敵をまとめて消し飛ばしたシャニもクロトに顔を向けた。
「確実に殺しているぞ」
「手前はどうなんだよ、クロト!」
「僕はこうするんだよ!」
クロトは叫ぶと同時にまずは己のレイダーを変形させた。それで敵に接近しそれから瞬く間に元に戻る。それからその手に持つミョッルニルを振り回し敵の頭を叩き潰していくのだった。
「これなら確実に殺せるんだよ!」
「ちっ、その手があったか!」
「だがむかつく」
しかし二人はそれを見ても賛同はしなかった。
「じゃあよ。俺はもっと確実にぶっ殺してやるぜ!」
「死ね」
さらに気合が入った二人は今度はコクピットを次々と叩き潰していく。彼等は殺すことだけを考えていた。
「あいつ等、また今回も暴れているわね」
「御前もだろ、フレイ」
ムウがフレイに声をかけてきた。
「一体どれだけ撃墜したんだ、今で」
「四機ってとこかしら」
一回の戦闘での撃墜数ではなかった。
「まだ少ないわよ」
「それだけ撃墜すりゃ充分だがね」
「そう言う少佐は?」
「俺も四機だ」
彼もまたエースであった。
「まあまだまだこれからだな」
「そうね。ただ」
ここでフレイはふと気付いた。
「どうした?」
「ネス湖の戦いではル=カインがいたじゃない」
彼女は不意にル=カインの名を出してきた。
「ああ、あいつか」
「あいつの姿が見えないけれど」
それをまた言う。
「他の指揮官クラスも。どうしてかしら」
「そういえばそうだな」
ムウも言われてそれに気付いた。
「妙だな。このロンドンが今の奴等の地球の拠点だというのに」
「そこにエースがいないなんて」
「何かあるのか?奴等にも」
その予想は当たっていた。実はグラドス軍はこの時内部に問題を抱えていたのだ。
「ぬかったな」
後方で指揮を執るグレスコは苦い顔をしていた。
「ル=カインもゲイルも欠くことになろうとはな」
「全くです」
彼の言葉に側にいた参謀の一人が応えた。
「南に現われたマスターアジアの迎撃に向かわせたのは」
「しかも惨敗だ」
彼等もマスターアジアには勝てなかったのだ。
「そのおかげで二人のマシンも大破だ」
「はい」
「そのせいでこの戦いに投入できないとはな」
「閣下、ですから」
ここでこの部下は言うのだった。
「何だ?」
「奴等を出しましょう」
「奴等か」
「はい」
部下はまた言う。
「ここはやはり」
「そうだな」
そしてグレスコもそれに頷くのだった。
「では出せ。すぐにだ」
「はっ」
こうしてその『奴等』が出撃した。それは何と。
「げっ」
「死鬼隊かよ」
グラドス軍の将兵からも声があがる。彼等の評判は自軍においても悪いものだった。
「好きしていいらしいな」
「ああ」
ゲティにマンジェロが答える。
「じゃあ。早速やるか」
「おい」
ゴステロがボーンに声をかける。
「何だ?」
「あれをやるぞ」
「あれか」
「そうだ、あれだ」
残忍な笑みを浮かべての言葉だった。
「ここはな。じゃあやるか!」
「おうよ!」
彼等はいきなり非戦闘区域に向かった。
「!?あいつ等」
「何をするんだ?」
「聞け野蛮人共!」
ゴステロがそこに入ってからロンド=ベルの面々に対して叫んだ。
「ここで核爆弾を爆発させてやるぜ!」
「何だと!」
「またか!」
ロンド=ベルの者達はゴステロのその言葉を聞いて顔を歪めさせた。
「あの野郎、またしても」
「何と卑劣な!」
「おら、いいのかよ!」
ゴステロはなおも彼等に対して叫ぶ。
「ここで核を爆発させたらどうなるかわかるよな!」
「くっ!」
「わかったら兵を退けろ!いいな!」
「だが。兵を退いたところで」
大文字がここで言う。
「彼等はまた同じことを」
「そうですね」
サコンが彼のその言葉に頷く。
「おそらくは。退いても」
「しかし。あそこまですぐに行ける機体はない」
「サイバスターじゃどうだ?」
マサキが言ってきた。
「サイバードに変形したらよ」
「いや、無理だ」
しかし大文字はそれを否定した。
「サイフラッシュですら彼等のSPTを一撃で倒すことはできん。一撃で倒せないその場合は」
「ちっ!」
「グレートゼオライマーなら」
次に名乗りをあげたのはマサトだった。
「これなら瞬間移動で」
「しかしグレートゼオライマーのメイオウ攻撃は」
これはこれで問題があるのだった。
「核兵器と同じだ。だから」
「そうですか」
「そうだ。だからどれも駄目だ」
つまり打つ手がないのだった。
「どうするべき。手がないぞ」
「しかし」
ここでミドリが大文字に対して言う。
「ここで撤退してもですよね」
「そうだ。どうするべきか」
大文字は考えあぐねていた。グラドスの魂胆はわかっていた。だから彼は動けなかった。動けないその間にもゴステロは核兵器を構え恫喝を続けるのだった。
「さあ、どうするんだ!」
「逃げるのか逃げないのか!」
マルジェロも言ってきた。
「俺達は気が短いんだよ!早く決めろ!」
「さもないと!」
「くっ、卑怯者共め!」
ドモンも彼等を見て歯噛みするのだった。
「ここで倒さなければロンドンが」
「それに」
レインも言うのだった。
「退いても。けれど」
「くそっ、やはりここは」
一か八かの賭けに出ようとした。しかしその時だった。
「案ずる必要はない!」
「!?」
「この声は!」
「私だ!」
突如として影が現われた。それは。
「シュバルツ=ブルーダー!!」
「戦いにおいて武器を振るうのならともかく」
「き、貴様!」
「どうしてここに!」
シュバルツは死鬼隊の前にいた。そこで腕を組み脚を閉じて立っていた。
「貴様等に話す言葉はない!」
シュバルツは彼等に対して言い放った。
「シュバルツ=ブルーダー推参!」
「そうか、あの男」
ヂボデーが彼を見て言う。
「今のこの事態を何とかする為にここに」
「ああ。そうだね」
サイシーがヂボデーの言葉に頷く。
「これで何とかなりそうだよ」
「ここは私に任せろ!」
シュバルツ自身言うのだった。
「非道を極めるこの所業、許してはおけぬ!」
「やかましいんだよ!」
だがゴステロはシュバルツのその言葉を聞こうとしなかった。
「貴様なんてよ!これで!」
「無駄だ」
核を放とうとしたその彼にシュバルツは言った。
「何っ!?」
「既に核の信管は破壊させてもらった」
「何、馬鹿な」
「いや、間違いない」
マルジェロがゴステロに答える。
「こちらの核は。一つ残らず」
「くそっ、何時の間に!」
「外道!」
またしても答えずに逆に言い放つ。
「御前達の様に武器を持たぬ者達を襲いそれを利用する貴様等を許すわけにはいかぬ。覚悟!」
「何っ、正義の味方のつもりか!」
「少なくとも邪悪を許すことはない!」
シュバルツはまた言い放った。
「覚悟!」
「なっ!」
風になった。黒い風だった。
「シュツルム=ウント=ドランクゥッ!」
竜巻になり四人に襲い掛かる。それは彼等の相手になるものではなかった。
「う、うわああああーーーーーーーっ!」
「こ、こいつ!」
瞬く間に四つの爆発が起こる。ロンド=ベルを脅していた死鬼隊はこれで一人残らず壊滅した。シュバルツにより市民達は守られたのだった。
「くっ。何故ここで」
グレスコは死鬼隊の壊滅を見て歯噛みした。
「あの様な男が出て来たのだ」
「司令」
部下の一人がまたグレスコに声をかけてきた。
「何だ?」
「ロンド=ベルの攻勢が再開されました」
見ればその通りだった。ゴステロの恫喝で一旦足を止めていたロンド=ベルはまた動きを再開させていた。その攻撃は先程のものより激しいものだった。
「その卑劣な所業」
ジョルジュはローゼススクリーマーを放っていた。
「断じて許すわけにはいきません!」
「容赦はしない」
そしてアルゴも。
「ここで・・・・・・倒す!」
鉄球を振り回し周りの敵を叩き潰していく。そこにアレンビーも続く。
「あたしだって今回は本当に頭に来たよ!」
跳びながらフラフープを手に持つ。
「これで・・・・・・死にな!」
「グワアアアアアアッ!」
「ひ、ひいいいいいいっ!」
まずはSPTの頭部がまとめて吹き飛ばされた。その頭部にアレンビーのリボンが襲った。
「止めだよ!」
「うぐっ!」
その頭もまたまとめて粉砕する。アレンビーの攻撃は徹底していた。そして徹底していたのは彼女だけではなかったのだった。
他の者達もまた激しい攻撃を浴びせていた。その攻撃により遂にグラドス軍は総崩れとなったのだった。
しかしそれでも。ロンド=ベルの攻撃は終わらない。
「ムンッ!」
ボルフォッグが手裏剣を放ちやはりSPTを粉砕する。彼もまた意図的にコクピットを狙っていた。
「ブンドル!」
「何だケルナグール」
ブンドルがケルナグールに応えていた。
「このまま艦を前に突っ込ませるぞ!」
「よし」
「いいのか」
「私も同じことを考えていた」
彼もまた然りであった。
「グラドス軍を許すことはできん」
「その通りよ。この連中だけはな」
「ケルナグール」
今度はカットナルが彼に声をかけてきた。
「攻めろ。いいな」
「うむ!」
「このまま突撃だ」
ブンドルも言った。
「そしてグラドス軍を一人残らず倒す」
「降伏は偽りと心得よ!」
ケルナグールにももう彼等のやり口はわかっていた。
「このまま攻撃を加えよ。よいな!」
「はっ!」
「わかりました!」
部下達もそれに応える。戦艦まで突撃しロンド=ベルはグラドス軍に対して容赦ない攻撃を続けていた。
それを見てグレスコは。遂に動いた。
「艦を出せ」
「艦をですか」
「そうだ。ゼーレをだ」
バルマーの戦艦である。
「あれで迎え撃つぞ」
「しかし最早戦局は」
「野蛮人だ。所詮はな」
彼もまたその偏見を露わにさせていた。グラドス人らしく。
「その様な奴等にこれ以上好きにさせてたまるか」
「それでは」
「私も出る!」
今叫んだ。
「これ以上野蛮人共に好きにさせるつもりはない!」
「わかりました!」
こうしてゼーレを出撃させる。しかしその時には最早戦局は完全にロンド=ベルのものになっていた。彼が乗るゼーレに今大介が向かっていた。
「ひかるさん!」
「ええ、大介さん」
今はダブルスペイザーになっていた。共にいるひかるに声をかけたのだ。
「一撃で決める」
「何で決めるの?」
「ダブルハーケンだ」
大介は選んだのはそれだった。
「それで一気に」
「わかったわ。それじゃあ」
「行く!」
ゼーレの迎撃を左右にかわしながら突撃する。その手にダブルハーケンを出し接近しそして。
「受けろ!」
一気に突っ切った。一撃でゼーレを切り裂いたのである。
一撃だった。しかしその一撃でゼーレは両断されていた。艦は忽ちのうちにあちこちから火を吹き出す。それは艦橋にも及んでいた。
「司令、最早」
「くっ、野蛮人共め!」
この期に及んでもグレスコの偏見はそのままだった。
「ここで・・・・・・この私を」
「司令!」
「うわああああああああっ!」
無様な最後だった。他のグラドス人達と同じく。その横ではシンが逃げようとするSPTを追いその掌からのビームで次々と薙ぎ倒していた。
「逃がすかっ!」
「た、助けてくれーーーーーーっ!」
「お、俺達がこんなところで!」
彼等もまた無様な最後を曝す。戦場には何時しかグラドス軍の残骸しかなくロンド=ベルは無事ロンドンを人類の手に取り戻したのだった。
「作戦終了です」
レフィーナが全軍に告げる。
「敵機の反応、消えました」
「わかりました」
それにユンが応える。
「終わりですか」
「はい。これでロンドンは」
レフィーナはまた今度はショーンに応えた。
「解放されました」
「ようやくですな。ですが」
「はい。ロンドンの存在はかなりのようです」
「まだ地上にはグラドス軍の残党が残っているものと思われます」
「どうされますか?」
「掃討です」
指示は一つしかなかった。
「それで御願いします」
「わかりました。それでは」
「艦長」
ここでユンが声をかけてきた。
「何ですか?」
「ナデシコから通信です」
「ナデシコからですか」
「はい、ホシノ=ルリ少佐からです」
彼女からであった。
「出られますか」
「勿論です」
すぐにユンの言葉に頷くのだった。
「では通信を御願いします」
「わかりました。それでは」
「レフィーナ艦長」
すぐにモニターにルリが出て来た。
「ホシノ少佐、何かあったのですか?」
「ロンドンは解放されました」
「はい」
まずは話はそれであった。
「ですがまだ」
「まだ」
「敵は残っています」
こうレフィーナに告げてきたのだった。
「ロンドンにですね」
「いえ」
しかしそうではないと言う。
「どうやらすぐにロンドンを移ることになりそうです」
「ロンドンを」
「日本で百鬼帝国の動きが活発化してきています」
「百鬼帝国が」
「そうです」
まずは彼等だった。
「そして邪魔大王国も」
「彼等まで」
「すぐに日本に向かうべきです」
ルリの考えはこうだった。
「既に日本からはその要請も届いています」
「要請がですか」
「どうされますか?」
「はい、行きましょう」
レフィーナはすぐに決断を下した。
「日本に。彼等を放置してはおけません」
「そうです。ですから後は」
「どうしますか?グラドス軍の掃討は」
「連邦軍に御願いします」
ルリは既にそれも考えていた。
「アイルランドでグラドス軍と対峙していた連邦軍の部隊がいますので」
「そうですか。ではその方々に」
「はい。ではそういうことで」
「わかりました。では」
「はい」
こちらの方針も決まった。それに基きロンド=ベルは日本に向かった。彼等はロンドンを後にしユーラシア大陸を横切って日本に向かうことになった。
「しかしよ」
その中でサブロウタが言う。
「何でユーラシア大陸経由なんだろうね」
「何か色々とあるらしいぜ」
リョウコが彼に応える。
「色々か?」
「ああ。最近おかしな敵が出て来ているそうだ」
「おかしな敵?」
「シャドウミラーでしょうか」
ヒカルはこう予想した。
「何処にでも出られますし」
「いや、どうも違うらしい」
しかしリョウコはそれを否定した。
「何か見たこともない奴等らしいな」
「見たこともない奴等」
ジュンは今のリョウコの話に首を傾げる。
「何なのでしょうか」
「バルマーの奇襲じゃねえのか?」
サブロウタはこう予想してきた。
「あいつ等の十八番だろ、それって」
「あの連中色々な星から軍勢持って来るしな」
ジョナサンが話に入って来た。
「有り得るぜ」
「有り得るか」
「そうだ」
彼等は言い合う。
「連中の力ってのは底知れないものがあるからな」
「いや、待て」
「どうしたシラー」
「もう一つ可能性がある」
シラーは怪訝な顔で言うのだった。
「また別世界から来たということがな」
「別世界!?だとするとあれか」
クインシィはここで言う。
「セフィーロの様な世界か」
「そこから来ているということでしょうか」
「かもな」
カントとナッキィが言った。
「それか若しくはだ」
「勇、どうしたの?」
「いや、ひょっとしたらだけれど」
勇はヒメに応えて己の考えを述べた。
「パラレルワールドから来ているのかも」
「だとするとシャドウミラーと同じか」
ジョナサンはそれを聞いて呟いた。
「そうなるよな」
「そうね」
ジョナサンのその言葉にカナンが頷く。
「そうした存在がまた出て来ているというのは有り得るわね」
「今は。そうだな」
ヒギンズはカナンのその言葉に同意する。
「だからこそシャドウミラーが出て来たのだしな」
「シャドウミラーにしろ。随分わからねえ組織だよな」
サブロウタはこう述べて首を傾げさせた。
「戦争ばっかするんだろ?勘弁してもらいたいもんだぜ」
「ふん、だとしたら叩き潰すまでだ」
ダイゴウジは相変わらずだった。
「この拳でな!」
「旦那、それはいいけれどよ」
リョウコもこれに関しては大体同じ考えだ。だから否定はしない。
「それでも。あれだぜ」
「あれ?何だ?」
「そもそもその敵がわからないだろ」
彼女が言うのはそれだった。
「それは問題だぜ」
「それもそうか」
「出て来るなら出て来る」
イズミは珍しく駄洒落を出さなかった。
「安心していい」
「そうかね。あたしはそうは思えないけれどね」
今度はイズミに顔を向けるリョウコだった。
「どうしたものだか」
「まあ実際会ってみないとわからないよ」
アキトも言う。
「敵が本当にいるんならね」
「そうか。それにしても」
ここでリョウコは腕を組み首を捻る。
「どうにもこうにも。ユーラシアのルートも毎度色々あるよな」
「そうだよね、本当に」
彼女にヒメが応える。
「敵に一杯会うよね」
「敵に会うのはいいんだよ」
リョウコもそれはいいとするのだった。好戦的な彼女らしい。
「ただな」
「ただ。何?」
「日本大丈夫かね」
彼女が気にするのはそれであった。
「邪魔大王国やら百鬼帝国やら出てな」
「何か向こうも大変らしいよ」
またアキトが言ってきた。
「何しろ毎度毎度敵が出るからね」
「だよな。とにかく急ぐしかねえか」
「だから今ロンドンを出たんだよな」
勇が述べる。
「行く先はパリか」
「今度はパリは大丈夫なんだろな」
ダイゴウジはそれを問う。
「その謎の敵が出て来るか?」
「有り得ますね、それは」
ルリが出て来た。
「少佐・・・・・・」
「確かに百鬼帝国と邪魔大王国の行動は日本に限られています」
「え、ええ」
「確かに」
これは皆もう知っていた。
「ですが。その謎の未確認機は各地で発見され報告されています」
「各地で」
「パリもその可能性は皆無ではありません」
そのうえでこう述べるルリであった。
「ですから。皆さん」
「おう」
「わかってるさ」
彼等の言葉はもう決まっていた。
「御願いしますね」
「ああ。ところでルリちゃん」
「はい」
勇に対して応える。
「補給はどうするんだい?」
「ゼダンで受けます」
「ゼダン!?まさか」
勇はゼダンと聞いて思わずルリに問い返した。
「ゼダンは宇宙にあるのに。そんな」
「地球のゼダンです」
しかしルリはここでまた言ってきた。
「そこでです」
「ああ、あそこのゼダンか」
勇も今の言葉でようやくわかった。
「それならいいよ。成程」
「パリで若し何かあったとしても」
ルリはまた言う。
「一戦程度ならば大丈夫です」
「エネルギーも弾薬も」
「その通りです」
こう一同に述べた。
「では。皆さん」
「ああ」
ルリの言葉に応える。
「行くか」
「日本にな」
彼等は再び日本に戻る。そこまでの戦いを予感しながら。再び戦場に向かうのだった。
第五十三話完
2008・4・11
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