| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十二話 偽りの華麗

              第五十二話 偽りの華麗
ロンドン。今ここはグラドス軍に制圧されていた。その中でロンドン市民達は地獄の苦しみを味わっていた。
大英博物館は彼等の目の前で破壊されビッグベンもであった。彼等の誇りが次々と失われていっていた。
「野蛮人の文化なぞ不要!」
「泣く者は容赦なく殺せ!」
グラドス人達はこう叫びながら文化に関するものを破壊し市民を殺戮していた。そこには何の妥協も躊躇いもなかった。
また首相官邸も王宮も破壊されその跡地にグラドスの建物が建てられていた。グラドス軍首脳部がそこに入っていた。
「司令」
ロンドン市民達から食べ物まで奪いそれでもって築き上げたその宮殿の中に彼等はいた。一際豪華な一室に一人の男が将校の言葉を受けていた。
「野蛮人共がこちらに来ています」
「地球人か」
「はい、北から」
こう彼に答えるのだった。その男は険しい顔をした初老の男であった。
「迫って来ております」
「わかった」
彼は将校のその言葉に頷いた。
「それではル=カインに知らせろ」
「ル=カイン様にですか」
「そうだ」
将校に対して答える。
「迎え撃つ場所は何処になるかな」
「奴等の言葉ではスコットランドです」
彼はこう報告する。
「そこで迎え撃つことになるかと」
「わかった」
男はそれを聞いて満足そうに頷いた。
「では死鬼隊はここに置いておこう」
「彼等は野蛮人共に対して非常によく働いてくれています」
「そうだな」
また将校の言葉に頷く。
「おかげでこちらもかなりやり易い」
「全くです」
「それでだ」
彼はさらに言う。
「地球の文化抹殺は進んでいるか」
「少なくともこの島は」
将校はこう報告する。
「かなり進んでいます」
「そうか。ならいい」
その報告を聞いて満足そうにまた頷いた。
「ではこのまま順調に続けるのだ」
「わかりました。それでは」
「うむ。ではそのようにな」
将校はその言葉にまた応えて頷くのだった。
「作戦を進めていけ」
「わかりました。それでグレスコ司令」
男の名が呼ばれた。
「どうした?」
「北から来ている野蛮人共ですが」
また地球人に対する偏見を露わにさせる。
「どうした?」
「その数はかなりのものです」
そのことをグレスコに報告するのだった。
「かなりか」
「そうです」
またグレスコに述べる。
「ニューヨークを陥落させそのままの数で来ております」
「ふむ、ニューヨークを陥落させた部隊か」
グレスコは述べる。
「確かこれまでにも何度か戦闘を経ている部隊だな」
「ロンド=ベルだとか」
その名前が告げられた。
「そう自称しています」
「ロンド=ベルか」
あらためてその名を呟く。
「あの者達は手強いな」
「野蛮です」
グラドス人から見ればそうでしかない。
「野蛮人ですから戦闘能力だけは高く」
「そうだな」
「今度こそ倒しておきましょう」
まるで虫を殺すような調子の言葉だった。
「そうして我等の憂いをなくし」
「ハザル司令は早急な地球圏の制圧を望んでおられる」
「司令が」
将校はハザルの名を聞いてこれまで見せていた傲慢な調子を消した。強張った顔になった。
「わかるな、その言葉の意味が」
「は、はい」
「我がグラドス人は十二支族の直系」
つまりバルマー帝国の分家筋なのだ。
「しかしだ。それでも」
「やはりゴッツォ家の嫡子には勝てません」
「そういうことだ。だからだ」
「はい。早急に」
「兵は送れるだけ出せ」
グレスコの言葉は続く。
「それで一気に倒すのだ。いいな」
「はっ」
こうして迎撃部隊が向けられた。その頃ロンド=ベルはグリーンランドからイギリス本土に入ろうとしていた。スコットランドに北から入ろうとしていた。
「スコットランドか」
ベッキーがふと呟いた。
「何かウイスキーが飲みたくなるね」
「バーボンじゃなくて?」
「そうじゃない。スコットランドっていったらやっぱりね」
笑顔でシモーヌに応える。
「ウイスキーじゃない?だから戦いが終わったら一杯さ」
「悪くないね」
シモーヌも右目もウィンクさせて彼女の言葉に応える。
「ただ。あたしはウイスキーはいいけれどね」
「おや、フランス人だね」
「そういうことよ。ブランデーにしておくわ」
どちらにしろ強い酒を望むのだった。
「ストレートで一気にね」
「いいねえ。じゃああたしは氷に入れて」
ベッキーもベッキーでウイスキーを楽しみにしているようだった。
「楽しく飲むとしますか」
「グラドスの奴等をやっつけた後でね」
「うむ、それはよきこと」
ここでティアンが出て来た。
「戦いの後の酒はまた格別」
「あんた、本当に戒律無視するねえ」
「戒律は問題ではない」
シモーヌに突っ込まれても平気である。
「心こそが問題なのだ」
「そうなの」
「左様、だから問題ではない」
無理矢理そういうことにする。
「そしてだ。よいか?」
「今度は何よ」
「拙僧は両方頼む」
「両方飲むっていうの!?」
「博愛の心を忘れてはならぬ故」
ベッキーの呆れた声も聞き流す。
「だからこそ両方飲もうというのじゃ。ついでにつまみはエスカルゴとローストビーフがよいぞ」
「全くこのお坊さんは」
「相変わらずなんだから」
顔を崩したティアンに思わず突っ込みを入れる。その横ではゲンナジーがむっつりとしていた。
「ねえゲンちゃん」
「むっ!?」
ミオがそのゲンナジーに声をかけてきた。
「ゲンちゃんは何を飲むの?」
「何をとは」
「だから。戦いの後によ」
それをゲンナジーに問うのだった。
「何を飲むの?」
「ウォッカだ」
ゲンナジーはそれを言うのだった。
「それをやるつもりだ」
「あれって強くない?」
「だからいいんだ」
やはりロシア人であった。強い酒を好むようだ。
「それを一杯な」
「思いきり飲むんだね」
「その通りだ。ミオもどうだ?」
「あたしは割ってなら」
ミオも何だかんだで飲むのだった。
「ウォッカ。一緒にやろうね」
「うむ」
ゲンナジーが微笑む。二人もまた飲む約束をする。そうこうしている間にロンド=ベルはスコットランドに入りそのまま南下するのだった。
その途中で。報告が入る。
「もうすぐネス湖です」
ユンが報告する。
「ネス湖なのね」
「はい」
レフィーナの言葉に応える。
「もうすぐです」
「ネス湖ね」
レフィーナはそれを聞いてまずは頷いた。
「じゃあ怪獣がいるのかしら」
「ネッシーですか」
「ええ、それはどうなのかしら」
「それは」
しかしここでユンは微妙な顔になる。
「どうでしょうか。あの写真はインチキですし」
「いや、それは違う」
ここで出て来たのは意外な人物だった。
「ネッシーならいるぞ」
「リー艦長」
「あの写真が偽物と断定されただけだ」
彼はこう主張する。
「その他の多くの写真はそうではない。違うか」
「じゃあリー艦長はネッシーはいると思われているんですね」
「その通りだ」
何故かここで強力に主張する。
「ネス湖の大きな謎はまだ解決されていないのだ」
「左様ですか」
「それにだ」
リーはさらに言う。
「この辺りの湖には他にも怪獣が存在する」
「怪獣がですか」
「モラグだったか」
実によく知っている。
「おそらくはネッシーと同じだ。ただ」
「ただ?」
今度はショーンが彼に問う。
「何なのでしょうか」
「ネッシーは恐竜ではないな」
「恐竜ではないと」
「じゃあ一体」
レフィーナも思わず彼等に問う。
「何なんでしょうか」
「おそらくは鰻か何かだ」
「鰻!?」
「そうだ」
リーは主張する。
「こぶが幾つもあったり肌の色が変わったりしているのだから。恐竜とは思えない」
「それでも鰻ですか」
「鰻でなければ首の長い大きなアザラシかアシカか」
「アザラシ」
また一つ仮説が出た。
「陸に出ていた報告もあるからだ。ゾウアザラシなら有り得る」
「ううん」
「そうでしょうか」
「そうだ」
ユンとレフィーナに対して述べる。
「だからだ。あの写真一つでネッシーがいないと判断するのは早計だ」
「左様ですか」
「そのネス湖に至るか」
リーはそのことに感慨を感じているようだった。
「面白い。果たして怪獣が見られるかどうか」
「そうだといいですね」
ユンがそれに頷く。そのネス湖に入った時だ。
「敵です」
「むっ」
ダイテツがエイタの言葉に顔を向ける。
「グラドス軍だな」
「はい、バルマーの兵器も一緒にいます」
「そうか。ならば間違いないな」
「艦長、どうされますか?」
そこまで聞いてテツヤがダイテツに問う。
「このまま進まれますか?それとも」
「決まっている」
既に答えは一つしかなかった。
「このまま倒す」
「倒しますか」
「相手はグラドス軍が主力だな」
「はい」
既にこれはわかっていたがあらかじめ聞くのだった。
「その通りです」
「ならば。このまま前に進め」
まずはこう指示を出す。
「そしてだ。マシンを出す」
「わかりました」
「全軍を挙げて敵を倒す」
ダイテツだけではない。誰もがそのつもりだった。グラドスの所業を知っているだけにその闘志は高いものだった。しかしそれはグラドスも同じだった。
「野蛮人はもう出撃したか」
「はい」
赤い髪の男が部下達に問うていた。部下の一人がそれに答える。
「かなりの数ですが」
「そうだな。しかしだ」
だからといってこの赤い髪の男も戦意を衰えさせてはいなかった。
「このまま進めば勝てる」
「勝てますか」
「そうだ。私を信じろ」
自信に満ちた声で部下達に告げる。
「このル=カインをな」
「わかりました、ル=カイン司令」
「それなら」
彼等はル=カインの言葉に頷く。そのうえで動くのだった。
「全軍このまま野蛮人共を取り囲め」
「はっ」
ル=カインの言葉通りに動く。
「それではそのように」
「先に」
彼等はその数を活かしてロンド=ベルを前から包囲しようとする。だがそれを見ても彼等は一向に驚いた気配もなかった。
「屑共が来やがったぜ」
カイの言葉だった。
「ちょっと潰してやるか」
「カイ、流れ弾にだけは注意してくれよ」
そのカイにハヤトが言う。
「敵の数が多いからな」
「へっ、奴等の弾にだけは当たらねえさ」
だがカイは笑ってこう言葉を返す。
「あんな奴等のにはな」
「御前も随分頭にきてるんだな」
「否定はしねえさ」
こうハヤトに言葉を返した。
「あいつ等だけはな」
「そうだな。だから」
「ハヤト、いいな」
今度はカイからハヤトに声をかけた。
「奴等、一機残らずな」
「ああ」
ハヤトも彼の言葉に頷く。
「俺もそのつもりだ」
「じゃあよ。早速行くぜ!」
インコムを次々と放ちそれで敵のSPTのコクピットを撃ち抜く。
「言っておくが容赦はしねえからそのつもりでな!」
「覚悟しろ!」
ハヤトもそれに続く。二人の量産型ニューガンダムが最初に敵に攻撃を浴びせた。
続いてアムロも。彼が放つのはフィンファンネルだった。
「見える!」
彼には敵の攻撃が見えていた。その急所も。後はそこにファンネルで攻撃を仕掛けるだけだった。
グラドス軍のSPTが次々と撃墜される。しかしそれでもまだ彼等は突っ込むのだった。10
「恐れることはない」
ル=カインはそれを見てもクールなままだった。
「このまま攻めていけばいい」
「攻めるのですか」
「そうだ」
部下の言葉にも答える。
「そして」
「そして?」
「私も行く」
こう言って自ら前線に赴こうとする。
「奴等を倒しにな」
「野蛮人共の相手をするということですか」
「その通りだ」
また答える。
「奴等は手強い」
「まさか」
「野蛮人が」
「野蛮人だと思うか?ただの」
しかしル=カインはここで彼等に問うのだった。
「!?それは一体」
「どういうことですか、隊長」
「だから今言った通りだ」
ル=カインはモニターで怪訝な顔になった彼等にまた言った。
「ただの野蛮人ではない」
「ただの」
「少なくとも手強い」
それは認めるのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「所詮は野蛮人。私の相手ではない」
こう言って前に出るのだった。そこにはエイジがいた。
「おい、エイジ」
「何だい?」
デビッドの言葉に応える。
「前から敵が来るぜ」
「あれは・・・・・・指揮官機か」
「多分な」
エイジのその言葉に頷いてみせてきた。
「それでまたどうするんだ?」
「決まっているよ」
エイジの返事は毅然としたものだった。
「何があってもな」
「わかったぜ。じゃああいつは御前に任せるぜ」
「うん」
エイジはル=カインのマシンに向かう。その間に普通のSPTは次々に破壊していく。
「うわああっ!」
「な、何だこいつ!」
彼等はエイジのレイズナーマークツーの動きに困惑しつつ撃墜されていく。
「このソロムコでは駄目だ!」
「こ、こいつ!」
「その程度で!」
エイジは彼等を撃墜しながら叫ぶ。
「僕は止められない!」
「野蛮人共が!」
「調子に乗るな!」
彼等はそのレイズナーを止めようとする。だがその彼をデビッド達を倒す。
「な、まだいるのか!」
「野蛮人共がSPTを!」
「野蛮人野蛮人って五月蝿いんだよ!」
デビッドは彼等のコクピットを潰しながら叫ぶ。
「御前等こそな!」
「勝手なことばかりして!」
ロアンも攻撃を浴びせる。
「どっちが野蛮人なんだ!」
「野蛮人が言うな!」
「そうだ!」
しかしそれでも彼等は言うのだった。
「貴様等が我等誇り高きグラドスに口を聞くなぞ!」
「身の程を知れ!」
「ああ、よくわかったぜ!」
ディアッカが今の彼等の言葉を聞いて叫んだ。
「手前等の性根はわかったからよ。もうこれ以上汚ねえ言葉出すなよ!」
「そうよ!」
それにアスカも続く。
「わかったからよ!」
「これで地獄に落ちなさい!」
思いきり砲撃を放ちATフィールドでまとめて切り裂く。二人はグラドス人達の罵倒を聞く前に対していた。他の者達もそれに続くのだった。
「野蛮人の攻撃ってやつをな!」
忍もその中にいた。
「受けて地獄に行きやがれ!行くぜ!」
「わかったよ、忍!」
「あれだね!」
「そうだ!」
沙羅と雅人に応える。
「亮、あれだ!」
「うむ!」
「断空砲!」
遠距離から派手な攻撃を開始する。
「一匹も逃がすつもりはねえからな!苦しまずに地獄に落ちやがれ!」
「うわあああああーーーーーっ!」
彼等はダンクーガの攻撃を受けて爆死していく。それでも攻撃を浴びせるがそれでもだった。グラドス軍の損害は次第に増えていく。
ロンド=ベルの攻撃は激しさを増す一方だった。彼等は容赦するつもりはなかった。
「言っとくけれどな!」
キースはエメラルドのメビウスから言う。
「降伏してもな。今度は騙されないぜ!」
「貴様等にはな」
アルフレッドも同じことを言う。
「ここで倒れてもらう!」
「死ねっ!」
ボーマンも攻撃を放つ。彼等もまた本気でグラドス軍を狙っていた。
その中でエイジは。ル=カインのマシンと戦っていた。彼のマシンのスピードにまずは困惑させられた。
「なっ、こいつ」
「言っておくがこのザカールをただのSPTとは思わないことだ」
「何っ!?」
「このザカールはそのレイズナーと同じだ」
「同じだというのか!?」
「そうだ」
「くっ!」
ここで攻撃が来たが何とかかわした。
「この動きは」
「そうだ。V-MAXだ」
ル=カインは言うのだった。
「そのレイズナーにあるのと同じだ」
「それを備えているSPTが他にあるなんて」
「だからだ。貴様に負けることはない」
静かだが自信に満ちた声であった。
「覚悟するのだな、野蛮人の血が混じった混血よ」
「混血の何処が悪い」
しかしエイジはその言葉を認めようとしなかった。
「少なくとも今のグラドスよりは」
そしてまたV-MAXで向かって来るザカールに狙いを定める。同じV-MAXを使って。
「ましだ。今の御前達は!」
「なっ!」
エイジの攻撃が当たった。コクピットこそ貫かれなかったがその腹部を貫かれたのだった。
大ダメージだった。それを受けてザカールの動きが鈍った。
「な・・・・・・この私が」
「御前達には負けない!」
エイジはル=カインに攻撃を当ててからまた叫んだ。
「何があっても!」
「くっ、野蛮人が。この私に」
「おい、そこのゴミ!」
ル=カインに対してトッドが言った。
「私をゴミだと!」
「ゴミって言わないで何を言うんだよ!」
また彼に言い返す。
「御前等みたいな奴等をな。そう言うんだよ!」
「言わせておけば・・・・・・!」
ル=カインは怒りを見せる。しかしだった。トッドは彼の周りに来たSPTを次々に切り捨てていく。まるで蝿や蚊を払うようにであった。
「何か言ったか?」
「くっ、我がグラドスの同胞を」
「俺はゴミを始末しただけだぜ」
トッドはまだ言うのだった。
「違うか?今度は手前が掃除される番だぜ。エイジ!」
「うん!」
エイジも彼のその言葉に頷いた。そして。
「ル=カイン。ここで!」
「くっ!」
攻撃を受けようとするその時だった。何とかV-MAXを発動させたのだった。それで間合いを離してそれから戦場を離脱するのであった。
「逃げた」
「今日のところは負けを認めよう」
「へっ、文明人らしい逃げ口上だな」
「何とでも言え」
トッドにも言葉を返す。
「だが次はこうはいかん」
「ル=カイン。御前達グラドスはまだ」
「貴様等は地球にいてはならん」
勝手なことを述べた。
「この宇宙の何処にもな」
「ああ。そうかよ」
だが彼の言葉を誰も聞こうとはしなかった。
「そう勝手に思ってな。こっちは手前等は絶対に逃がさねえからな!」
こう言って彼等は撤退するグラドス軍を追撃し徹底的に撃墜した。撤退できたグラドス軍は一割にも満たなかった。後は全て戦死であった。
ネス湖近辺での戦闘は終わった。ロンド=ベルの戦士達は戦場に立ちながらこれからのことを思うのだった。
「まずは敵の迎撃は潰したな」
「ええ」
ドモンの言葉にレイが頷く。
「それもかなり」
「これだけ潰しておきゃロンドンにはそんなに残ってないだろ」
「まあそうだろうね」
ヂボデーとサイシーが言う。
「そこのところはどうなのだ」
「葛城三佐、どうですか」
アルゴとジョルジュはミサトに問うのだった。
「確かにSPTは減ったわね」
ミサトもそれは認める。
「けれど」
「まだ戦力はあるということだな」
「ええ、その通りです」
アムロの言葉に答えた。
「半分程度は潰しましたが」
「これで半分なのね」
アレンビーはそのことに少し呆れていた。
「相変わらず数が多いんだから」
「バルマーだから」
ミサトが言うのはそこであった。
「数が多いのよ。どうしても」
「じゃあそれはそれでいいことだ」
フォッカーはそれを肯定さえした。
「撃墜スコアが増えるだけだ」
「少佐、また随分と強気ですね」
「マックス、御前もだぜ」
マックスに笑いながら言葉を返した。
「何十機でも好きなだけ落とすんだな」
「まあ何十もは流石に無理ですけれど」
苦笑いを浮かべながらもフォッカーに言葉を返す。
「撃墜するだけはします」
「それでいいんだよ。さて、と」
ここまで話したうえでマクロスに帰還するのだった。
「じゃあ戻るか」
「戻れば少佐」
ミリアがその彼女に問うてきた。
「何だ?」
「どうされるのですか?」
「決まってるだろ、スコッチだよ」
いきなり酒であった。
「それで盛大にやるぞ」
「それですか、やはり」
「ミリア、御前もどうだ?」
「いえ、私は」
しかしミリアはそれを断るのだった。
「スコッチではなくカクテルを」
「何だ、いつものか」
「はい。カンパリを」
ミリアはそっちが好きなのだった。
「そちらでソーダでも」
「わかった。じゃあ飲みに行くか」
「マクロスの中でですね」
「皆も集めてな」
話はそこに至るのだった。結局。
「よし、じゃあやるか」
「はい。それでは少佐」
マックスもそれに乗る。
「派手にいきますか」
「そういうことだ。今度の戦いに向けてな」
こう言い合ってマクロスの中に入る。そして酒を飲み合うのだった。
その場で彼等は。盛大に飲んでいた。
「ロンドンでライブだぜ!」
「もう、バサラ!」
相変わらず派手にギターをかき鳴らすバサラをミレーヌが叱っていた。
「ライブって。相手はグラドスよ」
「それがどうしたってんだよ」
「どうしたってね、あんた」
いつもの調子でのやり取りだった。
「あたし達を野蛮人呼ばわりして平気で虐殺したりして来る連中よ。そんな奴等に何するのよ」
「俺の歌を聴かせてやる!」
これも変わらない。
「何が何でもな!」
「あいつ等が聴くわけないでしょ」
ミレーヌの考えが多くの者の考えだった。
「あんな非常識な連中が」
「非常識でいいんだよ」
しかしそれでもバサラは言う。
「派手にやって横紙破りでやってやるぜ」
「全く。人の話聞かないんだから」
今更な言葉だった。
「そんなので戦争が終わったら苦労しないわよ」
「いや、終わるぜ」
だがバサラはここでも人の話を聞かない。
「俺の歌でな。何でもかんでも終わらせてやるぜ」
「勝手にしなさい。まあとにかく」
ミレーヌはもう完全に呆れていた。
「今は飲みましょう。バサラも好きでしょ」
「ああ、ビールくれ」
最初はビールだった。
「そっからソーセージだな」
「ソーセージね。わかったわ」
すぐにそのソーセージとビールを持って来た。
「はい、それじゃあ」
「よし、じゃあ食うか」
そのソーセージにマスタードをたっぷりつけてから口に放り込んだ。それからビールを飲む。最高の組み合わせを堪能するのだった。
それかもギターを奏でる。それは終わらない。皆はそんなバサラを見ながら話をしていた。話はやはりグラドスに関するものだった。
「やはりですね」
ダンがマイヨとプラクティーズの面々に対して述べていた。
「グラドス軍とは妥協ができません」
「その通りだ」
マイヨはダンのその言葉に頷くのだった。
「彼等に関してはな。バルマーの中でも」
「はい。とりわけ悪質です」
クリューガーもそれに同意する。
「ですから我々もまた」
「そうだ。しかしだ」
カールがここで言った。
「彼等は何故あそこまで不遜なのか」
「選民思想だ」
マイヨは彼等に対してこう述べてみせてきた。
「選民思想ですか」
「そうだ。かつての我々がそうだったようにだ」
「ギガノスと」
「ギルトール閣下は意図してはおられなかったが」
彼の考えはまた別だったのだ。
「結果としてそうなっていた。我々もな」
「我々もまた」
「優れた者だけが生きる」
ギガノスの思想だった。
「それは結果としてグラドスと同じなのだ」
「そうなのですか」
「自覚はしていませんでしたが」
「しかしだ」
マイヨはまた言う。
「かつての我々ですら。あそこまでは」
「その通りです」
「彼等はまた」
プラクティーズの面々もまた。グラドスに対しては激しい嫌悪感を見せるのだった。
「我等は一般市民には銃を向けませんでした」
「ところが彼等は」
「そうだ」
マイヨが最も嫌悪感を感じていたのはそこだった。
「私が剣を向けるのは常に戦士に対してだけだった」
「その通りです」
「だからこそ我々は大尉殿を」
慕っているというのだ。ギガノスの蒼き鷹は武人だったのだ。
「済まない。今度のロンドンの戦いは」
「激しいものとなるでしょうか」
「間違いなくな」
彼はそう読んでいた。
「覚悟はしておいてくれ」
「はっ」
「わかりました」
三人はマイヨのその言葉に頷く。そのうえで酒を飲むのだった。その横ではアズラエルが得体の知れない気色の悪いものをオルガ達三人と食べていた。
「おい、旦那」
カチーナがその彼に声をかける。
「その食い物何だ?」
「クスハさんの料理でして」
「・・・・・・そうか」
それだけでもうわかるのだった。
「何でも山羊の肉を特別にアレンジしたそうです」
「山羊を!?」
「そうです」
一見すると山羊には見えなかった。ラグクラフトの小説に出て来るような物体だったのだ。料理にも見えないところがまた恐ろしかった。
「山羊に色々かけて作ったそうで」
「色々か」
「その詳しい内容は私も憶えていないのですよ」
クスハだけが知っていることだった。
「ですがこの味は」
「美味いか」
「かなりのものです」134
アズラエルの味覚もかなりのものである。
「一度食べると病みつきになりますよ」
「・・・・・・そうか」
「貴女も如何ですか?」
ここでカチーナにも勧める。
「是非共」
「いや、あたしはいいさ」
しかしカチーナは戦場での勇敢さをここでは見せなかった。
「遠慮しておくよ」
「そうですか」
「ああ。悪いな」
口ではこう言うが実際は違っていた。
「またな」
「蛸もありますが」
それでもアズラエルの勧誘は続く。
「蛸焼きが」
「蛸焼き!?何処にあるんだ」
一見すると周りにはそうしたものはない。
「何処にもねえじゃねえか」
「何を言っているんですか、これです」
こう言ってアズラエルが指差したのは蛸を丸焼きにしてそこから緑と青の奇怪なソースをかけたものだった。とりあえず料理には見えない。
「これですよ」
「・・・・・・それは一体誰のなんだ?」
「ミナキさんの料理です」
「今度はあいつか」
ミナキの料理も相当なものなのだ。
「これまた絶品で」
「そんなにいいのか」
「ほら、あの三人は」
今度はオルガ達三人を指差した。
「喜んで食べていますよ」
「まああいつ等はな」
ここでちらりと本音が出た。
「かなり特別だからな」
「そうでしょうか」
アズラエルもまた特別なのでわからないことであった。
「私は別にそうとは」
「とにかくだ。旦那」
「はい」
話が移る。
「今度の戦いへの補給とかはどうなったんだ?」
「グリーンランドで受けたものをそのままです」
返答はこうであった。
「それ位はいけると思うのですが」
「まあ確かにな」
アズラエルのその言葉に頷く。
「戦いが終わったら今度はフランスで補給受けてだな」
「そういうことです」
「ラッセルの奴が気にしていてな」
ラッセルの名前が出て来た。
「それでこんな話をしたんだよ」
「そうですか、道理で」
アズラエルはあらためてカチーナの言葉に納得した顔で頷くのだった。
「貴女が補給のお話をされるので不思議に思っていましたよ」
「そんなに不思議か?」
「はい」
にこやかに笑って答える。
「これがユウナさんならともかく」
「まああたしやカガリはいつも弾薬の残りとか気にせずドカドカ撃ってるからな」
それがカチーナの戦い方だった。
「それも仕方がねえか」
「御自覚はおありなのですね」
「そりゃな」
自分でもそれは認めているようだ。
「毎度毎度言われてるしな」
「左様ですか」
「だからといってよ」
側に置かれていたワインのボトルを空けてそれを一気飲みしてからまた話す。
「この戦い方を止める気はねえぜ」
「左様ですか」
「そうさ。これがあたしのやり方だからな」
次第に赤くなっていく顔での言葉だった。
「性に合ってるんだよ」
「成程」
「今度のグラドスにもだ」
声に怒りが宿った。
「やってやるからな」
「是非思う存分に」
そしてアズラエルもその言葉を受けて言ってきた。
「このままお客様や産業に実害が出てはお話になりません」
「ここでも儲けかよ」
「そういうことです」
あくまで商売人のアズラエルだった。彼にしてもグラドスは腹の立つ存在であるということだった。今そのグラドスに対してロンドンでの決戦を挑むのだった。

第五十二話完

2008・4・8  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧