ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
風と火
ユイは木が少し少ない広場のような場所の手前で停止した。その先には赤い翅の男のサラマンダー三人が一人の女のシルフにランスを構えている光景があった
「あれ?あれ?」
キリトはそんなことを言いながらとまりきれずそのシルフとサラマンダーの間に突っ込んだ
「うう、いてて……。着陸がミソだなこれは……」
見物するだけのつもりだったがキリトが出てしまったので俺も姿を見せる
「馬鹿だろキリト……着陸ぐらい練習しておけ」
「何してるの!早く逃げて!!」
シルフの女の子が叫んだ。……なぜ?と思ったが自分の姿を思い出した。そういえば初期装備だったな。キリトは右手をポケットに突っ込むとそこにいる全員を見渡し、口を開いた
「重戦士三人で女の子一人を襲うのはちょっとカッコよくないなぁ」
「何だとテメエ!!」
俺はとりあえずキリトを一発殴る
「何をする」
「馬鹿かおまえは……ストレートに喧嘩売ってどうするんだ。少しずつ、追い詰めるのが楽しいんだろ。俺の楽しみを奪うな」
「ああ……すまん」
やられた経験を持つキリトは顔色を青くする
「そっち!?」
シルフの女の子が突っ込んでくる。……いいタイミングだ。グッジョブと親指を立てているとサラマンダーの一人が苛立ったように声を発する
「初期装備でノコノコ出てきやがって馬鹿じゃねぇのか。望みどおりついでに狩ってやるよ!」
サラマンダー達はシルフの女の子の牽制に一人残し、二人がこちらにランスを向けて突進してくる
「相手の力量も読めないような奴に負けるとでも?」
キリトがランスの先を掴む。ガードエフェクトの光と音が響く。俺は剣を抜き、ランスの先を無造作に払う。重量はあちらの方が上だがスピードが桁違いにこちらの方が上だ。ランスを弾かれ、無防備な体に右手の拳を放つ
「ぐわっ」
吹っ飛ばされ木に叩きつけられるサラマンダー。そのまさに同じ場所にキリトはもう一人のサラマンダーを投げ飛ばした
「「ぐえっ」」
「ナイスピッチング」
いえーいとキリトとハイタッチ。その後キリトは剣を抜くと戸惑ったような表情で止まった
「ええと……あの人たち、斬ってもいいのかな?」
「……そりゃいいんじゃないかしら……。少なくとも先方はそのつもりだと思うけど……」
「それもそうか。じゃあ失礼して……」
俺もため息をつきながら構える。キリトはだらりと地面に垂らすあの独特の構え。俺は前に肩に担ぐように構える。そして、斬った。それしかいいようがない。俺たちにとってはそれが普通の速度だからだ。だが女の子の方を見ると唖然とした表情になっていた。二人のサラマンダーは赤い炎に包まれ直後に四散。その後には小さな残り火があった。女の子は状況を理解したのか驚きの表情をしていた。空中のサラマンダーは……唖然としていた
「効果音がうるさすぎるな」
「風の音と地を蹴る音な。……たしかに」
「どうする?あんたも戦う」
キリトが緊張感のない言葉でサラマンダーは我に返ると苦笑した
「いや、勝てないな、やめておくよ。アイテムを置いていけというなら従う。もうちょっとで魔法スキルが九百なんだ、死亡罰則が惜しい」
「正直な人だな」
「君はいいの?」
シルフの女の子に話しかける俺。すると女の子は笑うと口を開いた
「あたしもいいわ。今度はきっちり勝つわよ、サラマンダーさん」
「正直君ともタイマンで勝てる気はしないけどな」
そう言い残すとサラマンダーは翅わ広げ飛び去って行った
「……で、あたしはどうすればいいのかしら。お礼を言えばいいの?逃げればいいの?それとも戦う?」
キリトは剣を納めると言った
「うーん、俺的には正義の騎士が悪漢からお姫様を助けた、っていう場面なんだけどな」
にやりと笑うとキリトは続けた
「感激したお姫様が涙ながらに抱き……のわっ!?」
後半を言えなかったのは文脈から予想し、言おうとしていた言葉を察した俺がキリトを全力で蹴飛ばしたからだ。ちなみにキリトの胸ポケットにいたユイは回収済みだ。キリトは木を二本ぶち抜いた後、木に張りつけられ倒れた
「あの……」
シルフの少女は唖然としながらも心配そうな声をあげる
「あの馬鹿はほっといていいから」
「そ、そうですか……」
苦笑いの少女
「で、話は戻すけど俺たちには君を襲う気はさらさらないから心配ない」
「そう……よかった」
少女は息を吐くと俺の手の中にいるユイに気が付いた
「ねぇ、それってプライベート・ピクシーってやつ?」
「えっと?」
「あれでしょ、プレオープンの販促キャンペーンで抽選配布されたっていう……。へえー、初めて見るなぁ」
「あ、わたしは……むぐ!」
SAO関連をしゃべりそうになったユイの口をふさぎどう言おうか悩んでいると、復活したキリトが口を挟んだ
「そ、そう、それだ。俺クジ運いいんだ」
「まあ……たしかに」
ちなみにキリト、墓穴を掘ったぞ、今。まあ、しかしSAOのβテスターになれたのはある意味幸運だったな
「ふうーん……」
少女は俺とキリトを交互に見た
「な、なんだよ」
「や、変な人たちだなあと思って。プレオープンから参加してるわりにはバリバリの初期装備だし。かと思うとやたら強いし」
「ええーと、あれだ、昔アカウントだけは作ったんだけど始めたのはつい最近なんだよ。ずっと他のVRMMOをやってたんだ」
半分真実で半分嘘を言うキリト。きな臭さ抜群である
「へえー」
見事な棒読みだ
「それはいいけど、なんでスプリガンがこんなところをうろうろしてるのよ。領地はずうっと東じゃない。インプも同じようなものか……」
「み、道に迷って……」
キリトのその言葉に俺はずっこけた。そして、ユイとひそひそ話を開始する
「なあ、道に迷ってってのはいくら何でもむちゃくちゃな気がするんだが……」
「はい……世界樹を挟んで反対側ですし、言い訳にしては……」
そんなことを話しているとシルフの少女は案の定吹き出した
「ほ、方向音痴にも程があるよー。きみ変すぎ!!」
……訂正。案の定ではなかった
「……彼女は天然なのか?それとも馬鹿なのか?」
「あれで疑わないなんて……」
「まあ、とにかくお礼を言うわ。助けてくれてありがとう。あたしはリーファっていうの」
少女、もといリーファは己の武器である長刀を鞘に納めるとお礼と自己紹介をしてきた
「……俺はキリトだ。んで、こいつがリン。この子はユイだ」
紹介されたので握手を求める
「俺はリン、よろしく」
「リーファです。よろしく」
ユイは軽く会釈すると飛び立ちキリトの肩に座った
「ねえ、君たちこのあとどうするの?」
「や、とくに予定はないんだけど……」
「嘘つけ……世界樹に行かなきゃならんだろ」
「え……世界樹に?」
「まあ、こっちの話。そんなに切羽詰まってないから暇はあるよ?」
俺はリーファに微笑む。ちょっと赤くなったリーファは口を開いた
「そう。じゃあ、その……お礼に一杯おごるわ。どう?」
「じゃあ、お言葉に甘えてお願いしようかな」
「じゃあ、ちょっと遠いけど北のほうに中立の村があるから、そこまで飛びましょう」
「あれ?スイルベーンって街のほいが近いんじゃあ?」
キリトがそう口を挟む。するとリーファは呆れ顔でキリトを見る
「そりゃそうだけど……ほんとに何も知らないのねぇ。あそこはシルフ領だよ」
「シルフ以外は立ち入り禁止とかなのか?」
「街の圏内だと別の種族はシルフを攻撃できないけど逆はアリなんだよ」
「へえ、なるほどね……。でも、別にみんなが即襲ってくるわけじゃないんだろう?リーファさんもいるしさ。シルフの国って綺麗そうだから見てみたいなぁ」
「……リーファでいいわよ、リンさんもね。本当に変な人。まあそう言うならあたしは構わないけど……命の保証まではできないわよ」
「俺もリンでいいよ、リーファ。大丈夫。いざとなったらキリトを生け贄に逃げるから」
「ひでぇ……」
「何てな、冗談だよ。ぬるま湯に浸かってるやつらが何人こようとも一発あてられるか疑問だしね」
「……ぬるま湯?」
おっと口が滑った
「気にしないでくれ。とりあえず俺たちはスイルベーンでもいいから連れて行ってくれ」
釈然としないといった表情をしていたがリーファは口を開いた
「じゃあ、スイルベーンまで飛ぶよ。そろそろ賑やかになってくる時間だわ」
リーファは左手を動かすことなく翅を広げたのでキリトは首を傾げた
「あれ、リーファは補助コントローラなしで飛べるの?」
「あ、まあね。君たちは?」
「ちょっと前にこいつの使い方を知ったところだからなぁ」
「そっか。随意飛行はコツがあるからね、できる人はすぐできるんだけど……試してみよう。コントローラ出さずに、後ろ向いてみて」
「あ、ああ」
「わかった」
俺とキリトは体を半回転させる
「今触ってるの、わかる?」
「「うん」」
「あのね、随意飛行って呼ばれてはいるけど、ほんとにイメージ力だけで飛ぶわけじゃないの。ここんとこから、仮想の骨と筋肉が伸びてると想定して、それを動かすの」
新しく想像すること、これは会社をやっていく上で最も必要なものの一つだ。よって幼いころから鍛えられてきたのでそれは容易だった
「(まあ、こんなところで役に立つとはな)」
「リンは大丈夫そうね……ほんとに初めて?」
「そうだけど?」
そういって俺は地面を蹴る。上空で多少ふらついたがすぐに慣れる。旋回、加速、減速、降下、上昇などを練習する。そうしていると下からキリトが弾丸のように飛び出してきた
「ああああぁぁ」
俺はそれを見送ると俺の少し上のあたりで左右に運動し始めた
「わあああああぁぁぁぁぁぁ……止めてくれぇぇぇぇぇぇ」
情けない悲鳴が響き渡る
「「「……ぷっ」」」
キリトを追いかけてきたらしいリーファとユイと顔を見合せ、同時に吹き出す
「あははははは」
「ご、ごめんなさいパパ、面白いです〜」
「お前は俺の腹筋を崩壊させる気か?」
しばらく三人で笑い転げていたがさすがに不味いと思ったのかリーファがキリトの首根っこを捕まえてコツを伝授していた。俺は、ユイと空中戦闘の真似事を。ユイがえいっ、とかやあっ、とか言うのが非常に可愛らしかったとだけ言っておこう。もちろん俺は攻撃してないが
「おお……これは……いいな!」
コツを手に入れたらしくキリトは感嘆の声を上げた……大音量で
「うるさい!」
とりあえず蹴ってみる。リアルライダーキックじゃんと地味に感動してしまった。吹っ飛ばされたキリトはどうにか体制を立て直したらしく戻ってくる
「……そんなに叫ばなくても聞こえるだろうが」
「ごめんなさい……」
空中にキリトを正座させて説教を始めようとする俺
「まあまあ……」
とリーファが俺を止める
「慣れてきたら、背筋と肩甲骨の動きを極力小さくできるように練習するといいよ。さっきのリンの飛び蹴りのときみたいに大きく動かしてると、空中戦闘のときちゃんと剣を振れないから。……それじゃあ、このままスイルベーンまで飛ぼっか。ついてきて!」
そう言ったリーファを俺たちは追う。スイルベーンに向かって
後書き
リン「飛ぶって楽しいな」
蕾姫「俺も飛んでみたいよ……」
リン「まあ、VRMMOなんて今現在の技術じゃ夢のまた夢だしね」
蕾姫「……茅場的な人、出てこないかな……」
リン「それは多分SAOを読んだ人全員に共通する願望だよな」
蕾姫「はぁ……まあ、いいや。小説内の話に行こう!」
リン「蕾姫が……真面目……だと!?」
蕾姫「俺だって真面目になるときもある!話を戻すけどいつぞや質問されたことだが、主人公の容姿について!リアルは、<<緋弾のアリア>>の遠山 金次を意識しています。中身は……<<魔法少女リリカルなのは>>の八神 はやてかな?ALO内の容姿は……まあ、特徴ない感じですかね?このキャラじゃない?って思ったらそういう意見をもらえると嬉しいです。では次回、よろしくお願いします!」
ページ上へ戻る