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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第三十五話 帝国外銀河方面軍

             第三十五話 帝国外銀河方面軍
「ほう、それはいい」
玄室の中で男が楽しそうな声をあげていた。
「ではマーグの軍はその勢力を大きく減退させたのだな」
「はい」
彼の前にいる部下がそう応えた。
「それは間違いありません。ですが」
「ですが。何だ」
「既に多くの援軍をネビーイームに召還してもいるようです」
「既にか」
「どう為されますか?」
「援軍の到着まではまだ時間があるな」
「おそらくは」
部下はこう答えた。
「そうか。ならば決まった」
「それでは」
「本格的に軍を送れ」
彼は命じた。
「そうしてロンド=ベルだったな」
「そうです」
部下はまた彼の言葉に応えた。
「今彼等はゼダンの門と呼ばれる場所に拠点を置いています」
「ゼダンの門か」
「所謂宇宙基地です」
そう説明が為される。
「そこから軍事作戦を展開していますが」
「ではそこをまず陥落させよ」
男はそれを聞いて言うのだった。
「いいな」
「わかりました。それでは次は」
「そのゼダンの門を陥落させる」
そういうことであった。
「それでいいな」
「はい。それでは」
「エイスを出撃させよ」
男は次にこう述べた。
「よいな、地球まで」
「はい、それではエイス様もまた」
「今回は容赦する必要はない」
男は不敵に笑ってさえいた。
「非戦闘員であろうが何であろうが」
「こちらは普段通りですね」
「その通りだ。殺せ」
言葉に酷薄な笑みが宿った。
「いいな」
「はっ、そちらもまた」
部下もそれに応える。
「抜かりなく」
「だが。俺はまだ動かないでおこう」
「どうされるのですか?」
「父上からの御言葉だ」
彼は己の父を言葉に出してきた。
「暫くの間外銀河に目を配って欲しいとな」
「また敵でしょうか」
「今度はゼントラーディとは違う」
彼等ではないと言う。
「他の勢力だ」
「それは一体何者でしょうか」
「どうやら。バックフランという勢力らしい」
「バッフクランといいますと」
「今のところはっきりわかっているのは名前だけだ」
彼等もそれ以上は知らないのであった。
「しかしだ。その勢力は」
「どうなのでしょうか」
「かなりのものだという」
男が知っているのはこれもだがそれははっきりしないものであった。
「だからだ。父上からは援軍も受けている」
「それで外銀河を守れと閣下は仰っているのですか」
「それと共に地球もだ。一応は地球優先にせよとの父上の御言葉だが」
「左様ですか」
「だが俺は今はここに留まる」
これは男の判断のようである。
「そしてそのバッフクランとやらに対する。それでよいな」
「はっ、それでは」
「今ある勢力の殆どは地球に向ける」
これはもう決定しているようであった。
「俺にはヴァイクランがあるからな。それで暫くはだ」
「わかりました。では」
「マーグにも遅れを取るわけにはいかん」
これはもう決まっていることであった。
「いいな」
「はい」
こうして彼等も彼等の動きを見せていた。そうしてすぐにゼダンに兵を向けるのであった。
この時ゼダンは今は落ち着いていた。しかし備えは怠ってはいなかった。
「どうやら来たみたいだね」
「そうなのか」
グラキエースはジョッシュの言葉に応えていた。今彼女はそのジョッシュとリム、ウェントスと共にゼダン近辺の哨戒にあたっていたのだ。
「数は。五千か」
「五千ってまた」
リムはそれを聞いて驚いた顔になる。
「かなりじゃない」
「となると。敵は誰なんだろう」
ウェントスはそれを考えた。
「バルマーかな」
「それはわからない。しかし」
ジョッシュは言う。
「これは皆にすぐに連絡をしないと。数が数だ」
「そうね。それはね」
リムもこれには素直に頷いた。
「じゃあすぐに」
「うん」
こうしてすぐにゼダンに留まる主力に連絡が入れられた。こうしてロンド=ベルは出撃してすぐにその大軍と対峙するのであった。
見れば敵はバルマーであった。シャインがそれを見て言う。
「あら、あれだけダメージを受けましたのに」
先のネビーイーム第一次防衛ラインでの戦いを言っているのだ。
「すぐにあれだけの勢力だなんて」
「あれは多分他のバルマー軍ね」
ラトゥーニがシャインに述べた。
「確か」
「あれは外銀河方面軍だ」
ダバがラトゥーニに答えた。
「グラドス軍もいるからな」
「またあいつ等か」
レッシィは彼等の姿を確認して顔を顰めさせた。
「なら容赦することはないね」
「言われなくてもそうよ」
「その通りだ」
アムとギャブレーが声をあげた。
「またギッタンギッタンにしてやるんだから」
「生かして帰すつもりはない」
二人だけでなくグラドスを見ただけでロンド=ベルの士気があがる。彼等にとってグラドスは許すことのできない相手になっていたのだ。
その彼等を前にして。ロンド=ベルは攻撃に入るのだった。まずは前進する。
「いいか」
その前進の中でグローバルが指示を出す。
「敵の数は多い。迂闊な前進は避けるのだ」
「了解」
それにフォッカーが応える。
「どうやら敵さんの方から来てくれていますしね」
「そうね」
フォッカーの言葉にクローディアが応える。
「こちらは守っていいかしら」
「へっ、甘いぜ!」
しかしそれにバサラが反論する。
「俺は何時だって激しく行くぜ!」
「もう、バサラ」
「バサラ君」
ミレーヌと未沙が同時にバサラに言った。
「また今度は何をするのよ」
「敵の数が多いから迂闊な動きは」
「迂闊でも何でもな」
しかし人の話が耳に届くバサラではなかった。
「俺は歌で、俺の歌でこの戦争を終わらせてやるって決めてるんだよ!」
「ある意味凄い御仁だねえ」
「馬鹿な」
ブレスフィールドとリーはそれぞれバサラに対して違う反応を見せた。
「その心意気買ったぜ」
「そんなことができるものか。戦いを終わらせるのは戦いだ」
言葉も違っていた。
「なら。乗るとするか」
「今迂闊な動きは命取りだ」
リーはそう言ってハガネを進ませようとはしない。
「熱気バサラを止めろ。さもないと」
「無理よ」
しかしアカネが答えてきた。
「もう行ったわ」
「くっ、愚かな」
「けれど。あれですよ」
ホリスが言う。
「敵の攻撃を全部かわしていますけれど」
「凄い・・・・・・」
ミヒロもこれには言葉がない。
「あれだけの攻撃を全部かわすなんて」
「艦長、どうされますか」
シホミはリーに問うてきた。
「このままではバサラ君が」
「見捨てるのがこの場合の常道だ」
リーは一旦は軍人として述べた。
「だが熱気バサラはロンド=ベルにとって必要な戦力だ。止むを得ない」
「それでは」
「全軍このままバルマー軍に突っ込む!」
彼はバサラを戦力と判断していた。だからこその言葉であった。
「いいな。そして敵を突き破るぞ!」
「了解!」
「じゃあ一気に行くぜ!」
「くたばれグラドスの野郎共!」
ここでグラドスへの憎悪が出ていた。
「今度もまとめて殺してやる!」
「覚悟はいらねえ!その前に地獄に送ってやるからな!」
そのままバルマー軍に向かう。そうして次々と切り込み敵機を叩き潰していっていた。
ザンボットもそうであった。彼等はグラドス軍に切り込んでいた。
「勝平!」
宇宙太がその中で勝平に声をかけていた。
「今回は好き勝手暴れろ、いいな」
「この連中全員殺してもいいんだな」
「一人も生かして帰すな」
宇宙太も普段の冷静さよりもグラドスへの怒りが勝っていた。
「だからだ。いいな」
「わかったぜ。それじゃあよ」
「ザンボットグラップよ、勝平」
恵子も声をかける。
「それで頭を切ってね」
「おうよ!喰らえグラドスの野郎共!」
ザンボットグラップを構えて吼える。
「手前等だけは許さねえ!ガイゾックと手前等だけはな!」
「ワン!」
千代錦も吼える。そうしてそのグラップでグラドス軍SPTの頭部を頭から切っていく。
「死ね!一人残らず!」
ザンボットは縦横無尽に暴れ回る。その横では万丈のダイターンがその巨大な拳でグラドス軍SPTの頭部を叩き潰していた。
「た・・・・・・!」
その中でグラドス軍兵士は叫ぶ。
「助けてくれええええっ!」
しかしそれは間に合わない。それより前に拳が頭部を潰す。パイロットもまた潰されSPTは無残に宇宙の塵と化すのであった。
「助けてくれってねえ」
万丈は今己が倒したSPTの爆発を見ながらシニカルに笑っていた。
「君達が殺戮していた無辜の市民達もそう言っていたよ。他人を害する連中がそう言うのはちょっと虫がいいと僕は思うけれどね」
「グラドスの奴等は容赦するな!」
シローも叫んでいた。
「こいつ等を残せば後でそれだけ」
「わかっていますよ」
「だからね」
「ここでも一人でも多く!」
サンダース、カレン、ミゲルがそれに応える。
「こいつ等を倒して次にバルマーの主力だ!横腹を衝く!」
「了解です、隊長!」
まずロンド=ベルは敵右翼のグラドス軍を薙ぎ倒していた。怒りも混じったその攻撃は凄まじく瞬く間にグラドス軍の殆どを倒してしまっていた。グラドスで生き残っている者は僅かであった。
「ひ、ひいっ!」
「に、逃げろ!」
グラドス軍は遂に壊走した。ロンド=ベルの中にはそれを追おうとする者もいたがそれはグローバルが止めたのであった。
「まずは敵の主力だ」
「そうですね」
キムがそれに応えて頷く。
「今は彼等よりも」
「バルマー軍だ」
グローバルの判断は冷静なものであった。
「まずはな。彼等だ」
「何か釈然としませんね」
柿崎は逃げる彼らを見て呟く。
「連中を放っておくっていうのも」
「まあ仕方ないですね」
マックスもそれは同じ考えだった。しかし彼はいささか冷静であった。
「今はそれよりも」
「そうだな。俺もグラドスは憎いけれど」
輝も心情的には柿崎と同じだったがそれでもマックスの冷静さも受けていた。
「仕方ない、今は」
「ですか」
「僕もグラドスは好きにはなれません」
マックスも言う。
「実際に彼等は本気で殺すつもりでしたし」
「おい、マックス御前もか」
金竜は今のマックスの言葉には驚きを隠せない。
「殺すつもりとはな。御前らしくないぞ」
「僕も自分でもそう思います」
マックス自身それを認める。
「けれどですね。それでも」
「感情的にか」
「到底彼等を許すことはできませんよ」
「その気持ち、私も同じよ」
ミリアが彼に同調してきた。
「私も彼等は」
「何か皆同じなんだな」
これはドッカーの言葉であった。
「グラドスに対しては」
「そりゃそうですよ」
フィジカはドッカーに同意していた。
「彼等だけは僕だってそうですし」
「それも道理だな」
フォッカーはそれを止めはしない。
「あの連中は放置できはしないからな」
「放置すればそれだけ一般市民に被害が出ますからね」
ガムリンはそれを危惧していた。
「幾ら何でも。彼等は」
「だが今は仕方がないよ」
輝はいささか穏健であった。
「それよりもバルマー軍を」
「そうだよな。それじゃあ」
ヒビキが輝に応える。
「まずはバルマー軍を」
「よし、そういうことだ」
フォッカーはまた言う。
「いまはこのままバルマーの主力に向かう。いいな」
「了解」
「もうとっくの昔に逃げていますしね」
「逃げ足だけは速いわね」
ヒビキ、ネックス、シルビーが既に安全圏まで逃げ去っているグラドス軍を見て皮肉混じりにフォッカーの命令に応えるのであった。
「わかったら。いいな」
「よし、それじゃあ」
「動きいいわね」
すっと前に出た霧生にレトラーデが声をかけてきた。
「今日もまた」
「ああ、ミスティ」
「ええ」
声をかけられたミスティがその霧生に応える。
「わかっているわ」
「全機突貫だ!」
フォッカーはまた指示を出す。
「敵の横腹から切り裂く。いいな!」
「はい!」
バルキリー隊を先頭にロンド=ベルはバルマー軍に切り込む。その中でバサラは相変わらず敵の攻撃を見事にかわしていた。超人的な反射神経によるものであった。
「この程度じゃな!」
バサラは敵の攻撃を余裕を以ってかわしていた。
「俺の歌を止めることはできないぜ!」
「ちょっとバサラ」
その彼にミレーヌが通信を入れてきた。彼女はロンド=ベル主力と共に敵の側面から入っていたのである。
「いい加減にしなさい、あんたはどうしてこういつもいつも」
「これが俺のやり方だ!」
ここでも彼の耳には入っていない。
「俺の歌で!戦いを止めさせる!」
「それはいいけれどね」
ミレーヌもそれ自体は否定しないのだった。
「やり方がいつも滅茶苦茶なのよ。何考えてるのよ!」
「うだうだ考えるよりも動け!」
まさしくバサラの言葉であった。
「そして歌う。それだけだ!」
「あんた・・・・・・何処まで破天荒なのよ」
ミレーヌも流石に呆れた。
「ここまで凄いなんて」
「ある意味あの変態爺さん以上ね」
アスカもミレーヌと同じ考えであった。
「滅茶苦茶じゃない」
「そうね」
レイは二人とは違うものをバサラに見ていた。
「バサラさんも。素敵な方ね」
「素敵っていうか」
シンジはどうもレイの今の言葉には納得できなかった。
「綾波って破天荒でパワフルな人が好きなのかな」
「それもまたいいことだ」
ヒイロはそんなレイの考えを肯定してみせた。
「戦いを終わらせるのにはそうした何かをこじ開ける力も必要だ」
「そうだな」
トロワはバルマー軍にミサイルを放ちながら応える。
「歌もまた戦いを終わらせることに必要な力の一つだ」
「また違う力の一つですか」
カトルはマグアナック隊の指揮にあたっている。
「戦いを終わらせる為の」
「ある意味かぶいてるねえ」
デュオの評価ではこうである。
「それで突き進むってのもありだと思うぜ」
「俺達とは違うが」
ウーヒェイもバサラは認めていた。
「それもまたよしだ。力は一つとは限らない」
「そんなものかしらね」
「だろうな」
「・・・・・・・・・」
首を傾げるミレーヌに仲間のレイとビヒーダが述べる。ビヒーダは声を出さないが。
「バサラもあいつなりにやっている。それはわかるだろう」
「わかるけれど理解はできないわ」
ミレーヌの言葉はいささか矛盾していた。
「あいつの考えだけは」
「まあそう言うな。今回の戦いも」
「何?」
「あいつが攻撃を引き受けていた」
これがかなり大きかった。
「それで俺達に注意が逸れた。それも大きかった」
「それはそうね」
ミレーヌもわかっていることであった。
「あいつがまあ敵陣に一人で突っ込んだのがはじまりだし」
「あいつを信じてみよう」
リーダーとしての考えであった。
「俺達は最後までな」
「わかったわよ。けれど」
またバサラを見る。やはりそれでも思うのだった。
「全く。何処まで横紙破りなのよ」
ミレーヌがぼやく間にもバサラはギターを奏で攻撃をかわし続けている。そうしてその間にロンド=ベルはバルマー軍を寸断ひ各個撃破に移っていた。戦いは完全にロンド=ベルのものになっていた。最早数は全く関係のないものになってしまっていた。
だがその中で。一機の赤い、蛾に似たマシンが姿を現わしてきたのであった。
「!?何だあのマシン」
最初にそのマシンに気付いたのはタダナオであった。
「見たところのないマシンだな」
「何か怪しいな」
オザワは直感でこう感じ取っていた。
「あの敵は。きっと何かあるぞ」
「!?あのマシンは」
それを見て声をあげたのはエイジであった。
「まさか、ひょっとして」
「おいエイジ」
タダナオはエイジの言葉を聞いて彼に声をかけた。
「何か知っているのか?」
「はい」
エイジは不吉な顔でタダナオに対して答えるのであった。
「あれは。ディバリウム」
「ディバリウム!?」
「何だ、そのマシンは」
タダナオだけではなくオザワもエイジに対して問わずにはいられなかった。
「バルマー外銀河方面軍の切り札の一つ」
「切り札!?」
「そうです、広範囲、多数の敵を相手にすることが目的の特殊かつ強力なマシンです」
彼の言葉ではこうであった。
「おそらく。このままでは」
「じゃあこのままじゃよ」
「僕達は」
「すぐに。散開して下さい」
エイジは仲間達に告げた。
「さもないとこのままでは」
「よし、全軍散開だ」
ブライトはエイジの言葉を受けてすぐに指示を出した。
「そして攻撃をかわす。いいな」
「そうだな」
彼の指示にアムロが頷く。
「嫌な予感がする、俺も」
「そうか。なら間違いないな」
「感覚が感じられないんだ」
アムロの危惧の根拠はこれであった。
「感覚がか」
「そうだ。あの赤いマシンのパイロット」
彼もディバリウムを見据える。
「そこからは何の気配も感じられない。中には機械が乗っているのか?」
「いえ、機械ではありません」
アムロに対してエイジが答える。
「中にはパイロットがいます」
「そうか。ではそれは一体誰なんだ?」
「エイス=ゴッツォ」
エイジは彼の名を言った。
「外銀河方面軍司令官ハザル=ゴッツォの腹心です。彼が出て来たということは」
「それだけ向こうも本気だということか」
「そうなります。まさかもう出て来るなんて」
エイジはこのことに驚いてさえいた。
「思いませんでしたけれど」
「しかし。出て来たのなら相手をせねばならないだろう」
クワトロはエイジに言うのだった。
「では。散開して一旦彼の攻撃をやり過ごすとしよう」
「そうして下さい。その間にもできるだけ」
エイジの言葉を待つまでもなく。ロンド=ベルは散開しながらもバルマー軍に攻撃を仕掛けていた。既にその戦力の半数近くを倒している。
そこにディバリウムが来た。そうしてロンド=ベルの中央に突っ込みそのまま派手な攻撃を仕掛けるのであった。
「・・・・・・・・・」
「来たぞ!」
「全機回避!」
皆急いで回避に移る。戦艦もその中に入っている。何とか皆致命傷は避けた。しかしこれによりロンド=ベルの陣が大きく崩れたのも事実だった。
そこに隙が出来た。それを見たバルマーの指揮官がすぐに決断を下した。
「今だ!」
彼はまず叫んだ。
「全軍撤退!いいな」
「はい!」
「わかりました!」
既にその戦力を大きく殺がれていたバルマー軍は指揮官のその指示に応えた。そうして一気に退きそのまま戦場を離脱するのであった。
戦いはこれで終わった。一応はロンド=ベルの勝利であった。しかし。
「ディバリウムか」
「一機だけであそこまでの戦闘力かよ」
すぐに散って回避に移った為にダメージは軽微であった。しかしそれでも彼等を一機だけで退けたのは事実である。ロンド=ベルにとっては新たな脅威なのは間違いなかった。
「何て野郎だ」
「また強敵出現だな」
彼等は言い合う。
「あんなのがひょっとして何機もいるとかじゃねえよな」
「それはないです」
エイジはこう皆に答えた。
「あれだけの高性能なマシンは流石に一機しかないです」
「一機だけか」
「はい」
そう皆に対して言う。
「バルマーといえどもそれは」
「そうか。けれど」
それでも彼等は言うのだった。
「あれだけのマシンがバルマーにあるなんてな」
「これから気をつけておかないとな」
「へっ、一機だけじゃねえか」
甲児はここでも強気であった。
「一機程度なら簡単に倒してやるぜ」
「おいおい甲児君」
強気な甲児に対して鉄也が言う。
「また随分強気だな、いつもながら」
「まあそれが甲児君だな」
大介は笑顔であった。
「その強気さがいいな」
「いいっていうかね」
「甲児君が弱気だったら怖いものがあるわね」
さやかとジュンは三人のやり取りを聞いて言うのだった。
「そうよね。それに今までああしたマシンは幾らでもあったじゃない」
マリアも特に深刻な様子はなかった。
「それを考えればそんなに不安になる程じゃないかしら」
「そうでやんすね」
「かえって考え過ぎたら駄目ってことかな」
ひかるとヌケ、ムチャは言い合う。
「おいらが倒してやるわよん」
「へっ、ボスには無理だぜ」
甲児がまた言う。
「やっぱりここは俺の仕事だぜ」
「兜、えらく自信だな」
「あたぼうよ。あいつは俺が倒してやるぜ」
甲児は不敵な笑みを浮かべていた。
「絶対にな」
「何はともあれ何時かは倒しておかないとな」
「そうだね。できるだけ早いうちに」
鉄也も大介もここでは甲児と同じ考えであった。
「機会を見つけてな」
「倒しておきたいね」
「そういうことだな。しかしあれだよな」
甲児はここでふと気付いた。
「バルマーも色々な兵器があるよな」
「そうよね、それは」
「それもかなりのものが」
セシリーとアヤが言う。
「これからも何が出て来るのかわからないけれど」
「焦らずに対処して行くべきね」
「けれどよ、何かさっきのマシンってよ」
「どうしたリュウセイ」
ライがここで声をあげたリュウセイに対して問うた。
「乗っている奴の気配はなかったけれどよ」
「それでも何かあったのか?」
「ああ。動きが普通と違っていたぜ」
彼はそれを感じ取っていたのだ。
「それもかなりな」
「そうなのか」
「よくわからねえけれど俺と似ていたような気がしたな」
「リュウセイとか」
「ああ」
リュウセイはレビの言葉に応えた。
「タイプは全然違うけれどな」
「そうか。では力か」
「力?念動力のことか?」
「多分そうだ」
レビにまた応える。
「念動力の持ち主かもな」
「だとすると何者なんだ、一体」
「ディバリウムのパイロットは」
謎が一つ出来た。今度はあのマシンのパイロットだ。
「何者かだよな」
「ただ手強いマシンだけじゃないのは確かだな」
「そうだな」
これだけはわかっていた。
「謎は増える一方で」
「どうにもこうにも参ってしまうけれどな」
彼等も言い合う。
「それでも戦うしかないか」
「これからもな」
「ただ。何か気になるんだけれどよ」
アラドがここでふと言うのだった。
「どうしたの、アラド」
「いやさ、バルマーって言っても系列がねえか?」
そうゼオラに述べるのだった。
「系列?」
「あの今ホワイトスターにいるタケルさんのお兄さんの軍とな」
「ええ」
「今の軍。二つあるよな」
「そういえばそうね」
ゼオラもアラドの今の言葉に気付いた。
「今のバルマー軍は明らかにホワイトスターにいる軍とは違うわよね」
「そうだろ?あのゲートから来ているしな」
「確かあれだったわね」
オウカは二人の言葉を聞いてあることを思い出した。
「バルマー軍には様々な方面軍があったわよね」
「はい」
またエイジが応えてきた。
「彼等は外銀河方面軍です」
「そうだったわね」
「タケル君のお兄さんの軍は銀河辺境方面軍なんです」
「それぞれ系統が違うのね」
「その中でも外銀河方面軍は」
またエイジの顔が曇る。
「最悪の軍です」
「それは言わなくてもわかるさ」
ジュドーが忌々しげに言葉を返した。
「グラドスの奴等だけでな」
「そうだな、それは」
カミーユもそれに応える。
「あいつ等だけは生かして返せないな」
「そうさ。あの連中のボスだからどうせ碌でもねえ奴だろうしな」
「そうだよ」
何故かここでエイジの顔が曇った。
「その中でも司令官のハザル=ゴッツォとグラドス軍はね。この前みたいな作戦を好んで採るから気をつけていておいて欲しい」
「じゃあ奴等だけは片っ端から殺しておくぜ」
「そうするんだね」
エイジの顔はジュドーの今の言葉でも少し曇った。
「やっぱりそうだよね、皆」
「エイジのことはわかっているつもりだ」
カミーユが言う。
「それでもあの連中は許すわけにはいかないな」
「許せることと許せないことがあるんだよ」
ジュドーの考えははっきりしていた。
「あの連中は絶対に許せねえ」
「一人でも逃がせばそれだけ多くの罪のない人が殺される」
カミーユはそれを危惧しているのだった。
「だから。生かしておくわけにはいかない」
「はっきりと言わせてもらおう」
クワトロの言葉は冷徹であった。
「生きる資格のない者達もいる」
「生きる資格ですか」
「そうだ。罪のない人達を己の優越感や差別しそうに基いて殺戮する」
シャア=アズナブルとはまた違った考えであった。
「そうした者達は生きる資格がないのだよ」
「そうだな」
彼の言葉にアムロが頷いた。
「その通りだ。だからグラドス人は放っておくことはできない」
「殺すか殺されるかか」
カミーユはまた言う。
「それしかない、あいつ等には」
「エイジさんはそれを覚悟しておられたのですか?」
ラクスは急に話に入って来た感じでエイジに問うてきた。
「えっ」
「それはどうなのでしょうか」
じっとモニターからエイジの目を見て問うのであった。
「戦う気があって地球に来たのですね、彼等と」
「そうです」
エイジはラクスのその問いにこくりと頷いた。
「ですがここまでになるとは」
「思っていませんでしたか」
「皆グラドス人を殺すつもりなんですね」
それが痛い程わかるのであった。
「憎しみにより」
「仕方のないことです」
ラクスもそれを認めるのだった。肯定であった。
「彼等を倒さないと罪のない人達が殺されるのですから」
「そうですよね」
エイジもそれを否定することはできなかった。
「グラドス人を放っておいたらまた」
「私もまた。グラドスの方々に対してはその命を奪うことにしています」
「命をですか」
「戦いは相手の命を奪うことです」
ラクスはそれをはっきりとわかっていた。
「それは避けられません」
「はい」
わかっているつもりだった。
「それは」
「そして罪のない人を救う為にはそれを害する相手を倒さなければならないのです」
「そういうことですか」
「ですから私はジュドーさん達の考えに賛成なのです」
根拠はそこであった。
「それは守る為なのですから」
「人々を守る為に」
「エイジさんの剣は人々を守る為にあるのですね」
「そのつもりです」
エイジもそのつもりで地球に来ていた。そのことを今思い出していた。
「地球が狙われていることはわかっていましたから」
「かつての同胞からですね」
「僕は。半分は地球人です」
それも言う。
「それもあって。ここに来ましたから」
「では。覚悟はおありですね」
「覚悟は」
エイジの顔がまた曇った。
「如何でしょうか、そこは」
「あります」
顔は曇っていたがそれでも言うのだった。
「だからここまで来ました」
「そうですね。それでは」
「僕も・・・・・・戦います」
エイジは言う。
「人として。地球人として」
「地球人としてですね」
「はい」
ラクスの言葉に頷いた。
「絶対に。罪のない人達を守ってみせます」
「守るべきものの為に戦う」
ラクスは言う。
「そうでなければ戦う資格はありません」
「資格ですか」
「力は何の為にあるか」
それをエイジに告げるのであった。
「それをよくお考え下さい」
「わかりました。それでは」
「間違えても。グラドス人のようにはならないで下さい」
ラクスはそれをつとね願うのであった。
「それだけは」
「はい。僕も決めました」
エイジは強い言葉で頷いた。まだ顔には迷いがあるが。
「力は皆の為に」
「心のない力は滅びます」
またラクスは言う。
「それも覚えておいて下さい」
「はい」
エイジにとっては大きな話だった。彼はそれを覚えておくのだった。しかもそれを実感していくことにもなるのだった。また時が動こうとしていた。

第三十五話完

2008・1・3
 
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