スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第三十四話 アインスト造反
第三十四話 アインスト造反
ホワイトスター攻略を決定したロンド=ベルはゼダンで準備を整えるとすぐにホワイトスターに向かった。その途中で敵の動きを察知した。
「もう来たのか」
「はい」
テツヤがダイテツに報告する。
「敵の第一防衛ラインのようです」
「数は」
「およそ四千」
「そうか、いつもより多いな」
ダイテツはそれを聞いて述べた。
「それだけホワイトスターが敵にとって重要だということか」
「どうされますか?」
テツヤはここで問う。
「このまま攻められますか」
「無論だ」
それは最早決定事項であった。
「ここで退いては何にもならん」
「ではこのまま」
「前進する」
作戦を告げた。
「そうして敵の防衛ラインを突破するぞ。いいな」
「はっ、それでは」
テツヤはそれに応える。そうして軍を先に進ませる。程なくしてロンド=ベルの目の前にバルマーの大軍が姿を現わしたのであった。指揮官はロゼであった。
「よく来たわね、ロンド=ベル」
「ロゼ、御前なのか」
「マーグ、あくまで司令にこだわるのね」
ロゼはタケルのゴッドマーズの姿を認めて顔を顰めさせた。
「司令をたぶらかす不届き者が」
「違う、兄さんは騙されているだけだ」
タケルはこうロゼに言い返した。
「御前達バルマーに!だから俺は!」
「無駄なこと。そもそも司令は生粋のバルマーの方であられる」
ロゼは冷たくタケルに言葉を返した。
「その司令がバルマーの為に戦うことは道理。違うか」
「ロゼ、それが御前の考えなのか」
「そうだ」
また冷たく言い放った。
「私とてギシン家の女。ならば」
「バルマー人としてか」
「司令の為にこの命」
ここでバルマーの為にとは言わなかった。
「喜んで捧げてみせる」
「それなら俺も容赦しない!」
その言葉にタケルの心も燃え上がった。
「ここで。貴様を倒し今度を兄さんこそ。六神合体!」
六神を呼び寄せる。そうしてゴッドマーズに乗り込んだ。
「行くぞロゼ!」
「全軍迎撃開始!」
二人は同時に声をあげた。
「容赦はしない!」
「司令をお守りするのだ!」
両軍は同時に前に出る。そのまま戦闘に入った。ロンド=ベルはタケルのゴッドマーズを先頭にバルマーに激しい攻撃を浴びせていた。
「ここで倒れるつもりはないんだ!」
タケルはバルマーのマシンを次々に切り捨てながらゴッドマーズを先に進ませる。
「兄さんを、兄さんを今度こそ」
「司令を脅かさせはしない!」
その前にロゼのゼーロンが来た。そうしてゴッドマーズを止めようとする。
「貴様は司令を害するつもりなのか!」
「そうしているのは御前達だ!」
タケルは怒りに満ちた声でロゼに言った。
「御前達が兄さんを!それはわかっているんだ!」
「くっ・・・・・・」
何故かここで言葉を詰まらせるロゼであった。
「何を根拠にそれを」
「このゴッドマーズは兄さんにより与えられたものだ」
彼は言う。
「それが何よりの証拠だ。だから俺は兄さんを信じるんだ、バルマーに操られているだけだってな!」
「そして地球に連れて行くつもりなのか」
「そこまではわからない。けれど」
タケルはそこまで考えてはいなかった。だが。
「兄さんを救い出す、それだけは確かだ」
「そうか。ならば私は司令をお守りする」
タケルにはタケルの、ロゼにはロゼの考えがあった。それが今衝突していた。
「ここで貴様を倒して!」
「むっ!」
「死ねマーズ!」
ゼーロンからビームを放ってきた。
「ここで死んで司令を悩ませるのを止めろ!」
「何のっ!」
だがタケルはそのビームをかわす。そうして剣でゼーロンを切りつけた。
「この程度で!」
「きゃっ!」
剣がゼーロンを斬った。それでロゼは衝撃で吹き飛ばされたのだった。
だがまだ撃墜されてはいなかった。ロゼも健在であった。
「まだだ、この程度で」
タケルをきっと見据えて言う。
「倒れるわけにはいかない」
「なら次の一撃で」
タケルもそれならそれで攻撃を浴びせるだけであった。彼も引かなかった。
「決めてやる。そして」
「このまま死ぬのなら」
ロゼもロゼで覚悟を決めていた。自身の身体にもダメージを受けているがそれには構わなかった。
「この男を道連れにしてでも」
しかしここで。新たな軍勢が姿を現わしたのであった。
「むっ!?」
「援軍か!?」
ロンド=ベルの面々はそう考えた。だがロゼは違っていた。
「馬鹿な、そんな筈がない」
「えっ、副司令」
「それはどういうことですか?」
「司令は今ネビーイームにおいて第二次防衛ラインの指揮に備えておられる」
それはロゼだけが知っていることであった。
「それで援軍が来ることなぞ有り得はしない」
「それでは一体」
「何者が」
「少なくとも味方ではない」
ロゼはこう言う。
「ゲストか。それともインペクターか」
その二つの敵について考えた。
「何者か」
「いえ、副司令」
「彼等は」
「何者かわかったのか」
そう部下達に問うた。
「はい、グラドス軍です」
「彼等が来ました」
「!?グラドス軍が」
ロゼはグラドスと聞いてその整った眉を顰めさせた。
「彼等がどうしてここに」
「わかりません。ですが通信を開いております」
「わかった。私が出よう」
「はい、御願いします」
それを受けて通信に出る。すると出て来たのはゲイルであった。
「卿か」
「ロゼ殿、どういったおつもりでしょうか」
ゲイルはいきなりロゼに詰め寄ってきた。
「この度のことは」
「この度のこと!?」
ロゼはそれを言われてまずはまた眉を顰めさせた。
「それは一体」
「アインストが我々に攻撃を仕掛けてきたではないですか」
ゲイルはこうロゼに詰め寄ってきたのだ。
「これはどういったことでしょうか」
「馬鹿な、我々とて彼女の動きはわかっていないのだ」
ロゼは驚いた声でゲイルに返した。
「それでどうして」
「!?卿も御存知ないと見えるが」
「その通りだ」
ロゼはまた答える。
「私も司令も彼女の行方を捜しているのだ」
「そうだったのですか」
「それでアインストは何処へ」
彼女はそれをゲイルにまた問うた。
「わかるのか、それは」
「生憎だが」
ゲイルは首を横に振るだけであった。
「グラドス軍に急襲を仕掛けた後で消えた」
「そうか」
「しかし。辺境方面軍を離れたとなると」
「わからない。私にも」
ロゼはそう言うだけであった。
「アインストの動きは。どうなっているのかも」
「わかった。ならいい」
ゲイルはそれで納得した。
「しかし。これで用件が済んだとはいえ」
「今度は何だ?」
「むざむざと帰られるものではないようだ」
ゲイルは戦局を眺めながら述べた。
「どうやらな」
「!?」
「見よ」
見ればロンド=ベルはグラドス軍にも迫ってきていた。しかもかなりの速度であった。
「御前等は許さねえ!」
シンがその先頭にいる。その目を真っ赤にさせて。
「ここで!皆殺しにしてやる!」
「殺せ!グラドスの奴等は容赦するな!」
他の者達もそれは同じであった。
「グラドス人だけは生かして返すな!一人たりともな!」
「全軍に告ぐ!」
シナプスも指示を出す。
「一機たりとも撃ち漏らすな。いいな!」
「わかっています!」
「ここは!」
「今度こそ根絶させてやる!」
プラントの件以降ロンド=ベルはグラドス軍に対して激しい敵意を燃やしていた。今それを露わにさせて彼等に向かうのであった。その勢いはこれまで以上であった。
「手加減するつもりは一切ない!」
シンはその両腕に光を宿らせていた。
「纏めて死ねーーーーーーーーーっ!」
いきなりその光を派手に放った。それで忽ちのうちに数機のグラドスのマシンが消え去る。それを合図にロンド=ベルは切り込むのであった。
「コクピットを狙え!」
イザークが叫びながら自分も敵のコクピットを撃ち抜く。
「この連中だけは生かして返せば恐ろしいことになるからな!」
「わかってるさ!」
それにディアッカが応える。
「この連中だけはな!」
ディアッカもバスターガンダムでグラドス軍を抹殺していく。彼等の戦意は普段よりもさらに高まっていた。
「ロンド=ベルが普段と違う」
ロゼもそれを感じ取っていた。
「これは一体」
「どうやら我々に対して激しい敵意を抱いているらしい」
ゲイルがロゼに答えてきた。
「グラドス軍にか」
「我々のやり方は敵の殲滅だ」
「そうだったな」
「それが非戦闘員であってもだ。それを憎んでいるらしい」
「当然のことだ」
ロゼはゲイルに冷たい言葉で返した。
「あれだけのことをしていれば。何時かはそうなるものだ」
「冷たいな」
「はっきり言わせてもらう」
ロゼの言葉がきつくなった。
「私は卿等が嫌いだ。おそらくマーグ司令もな」
「そうか」
「グラドス人はバルマー直系だ」
つまりロゼ達と同じバルマーの眷属なのである。元々十二支族の流れを汲んでいるのである。
「それに過剰に誇りを持ち無道な振る舞いが多いからだ」
「そうかもな」
ゲイルもそれを否定しなかった。
「そのせいか。今の彼等の戦意は」
「少なくとも普段のロンド=ベルはああした戦い方はしない」
見れば彼等はあくまでコクピットを狙っていた。つまりグラドス人を確実に殺しにかかっていたのである。
「邪魔だ、死ね!」
忍がダンクーガの腕を振り回す。それで側にいる敵機の頭部を上から叩き潰した。コクピットのある頭部をだ。
「手前等みてえな奴等がいるから宇宙は平和にならねえんだよ!」
「悪いけれどその通りだね」
それに万丈が応える。
「悪いけれど僕も容赦しないよ。ダイターンザンバーーーーッ!」
巨大な剣で真っ二つにする。しかも唐竹割りであった。やはり彼もグラドス人は最初から殺してかかっていた。
「見れば脱出は殆どできていないな」
「本気だということだ」
「どうする?退くか?」
ロゼはゲイルに問うた。
「ここは」
「そうさせてもらいたいがすぐには無理のようだ」
既にロンド=ベルはロゼの軍勢もグラドス軍もかなり倒していた。特にフラドス軍に対しては過剰なまでに攻撃を浴びせていた。
「だが。そうさせてもらおう」
「そうか。後詰に回ろうか」
「頼めるか」
「仮にも友軍だ」
ロゼはここではバルマー軍の者として動くのだった。
「喜んでそうさせてもらおう」
「かたじけない・・・・・・むっ!?」
しかしここで。また新たな軍勢が姿を現わしたのであった。
「なっ!?」
「これは!?」
ショウとトッドが瞬時にその不気味な気配を感じ取った。そうして言うのであった。
「来たか」
「おいおい、こんなところでかよ」
「皆さん」
シーラも同じものを感じ取っていた。それを他の者達に告げる。
「来ました、彼等が」
「そうか」
「あらあら、連続出場ね」
キョウスケとエクセレンがそれを聞いて言う。
「ここで出るとはな」
「どういうつもりなのかしらん」
「くっ、こんな時にか」
「まずいな」
ロゼとゲイルはそれぞれ言った。
「また御会いしましたですの」
アルフィミリィもいた。そうして呟くように述べてきたのであった。
「皆さんお元気そうで何よりですの」
「いつも絶好調よん」
エクセレンはいつもの調子でにこりと笑って言葉を返す。
「貴女はどうかしら」
「私は別にどうということはありませんの」
そうエクセレンに答えるのだった。
「それじゃあ一応挨拶に」
周りにアインストの軍勢がいる。彼等を動かしてきたのだった。
「参りますの」
「やはり来たか」
「我々にも」
「アルフィミリィ、バルマーに反旗を翻すつもりか」
ロゼはアルフィミリィに問うた。
「そう捉えていいのだな、これは」
「構わないですの」
これがアルフィミリィの返答であった。
「私は。アインストですの」
「そうか。ならばわかった」
ロゼもそれを聞いて頷いた。そうしてここで戦術を変換するのであった。
「一時撤退だ!この防衛ラインを放棄する!」
「撤退ですか」
「そうだ。あれだけの新手の相手をすることは無理だ」
やはり既にロンド=ベルとかなり戦っていることが大きかった。ロゼはそれを見てすぐに決断を下したのである。
「わかったな。今のうちだ」
「わかりました」
「我々もだ」
ゲイルもロゼと同じ決断を下した。
「後詰だどうだと言っている場合ではない。逃げるぞ」
「撤退ですか」
「その通りだ。こうなっては致し方ない」
こうまで言う。
「わかったな。即座にこの宙域を離脱すrぞ」
「わかりました。それでは」
「うむ」
彼等は後詰ではなくアインストとロンド=ベルの先頭に紛れて撤退した。ロンド=ベルもアインストの軍を前に追撃は不可能だった。こうしてバルマー軍は何とか戦線を離脱することに成功したのであった。
「本来は彼等を追いたかったのだがな」
ダイテツはアインストと戦いながら撤退するバルマー軍を見据えて言う。
「こうなっては致し方あるまい」
「はい、それでは」
「アインストの迎撃に専念する」
今はそれしかなかった。
「それでいいな」
「はい、それでは」
テツヤはそれに応えた。そうしてダイテツの指示をそのまま伝えた。
「全軍アインストの迎撃に専念しろ!」
そう言う。
「バルマーは追うな。今は目の前の敵だ!」
「了解!」
彼等もそれに頷く。そのままアインストとの戦闘に入ったのであった。
アインストとの戦いはロンド=ベルにとっては鬱陶しかったがそれでも有利に進めることができた。しかしそれでもキョウスケの顔は晴れない。
「どうにもな」
「何かあるの?」
「そうだ」
エクセレンにも答える。
「やはりおかしなものを感じる」
「多分それは私と同じものね」
エクセレンもそれはわかっているようであった。
「私と似てるって言いたいのね」
「御前、妹はいたか」
「いないわよん」
エクセレンはまたこう答えた。
「だから私もわからないのよ。パパかママが以前に変なことしていないかって」
「そうなのか」
「けれどそれにしては急に出てきたし」
だから辻褄が合わないのだという。
「一体何なのかしら」
「俺にもわからない。しかし」
「しかし?」
「あの女が何かあるのは間違いないな」
「そうね。それはね」
エクセレンこそそれを最もよくわかっていた。
「鬼が出るか蛇が出るか」
「さてさて、楽しみね」
アルフィミィに向かいながら言う。その中でアルフィミィは何故か二人と距離を離してきた。
「むっ!?」
「逃げるのかしら」
「今日も早くです」
そう言って戦線を去りだした。
「申し訳ありませんの」
「バルマーに戦線を布告しただけか」
「はいですの」
そうキョウスケにも答える。
「ですからこれで」
「あらあら、本当にあっさりなのね」
エクセレンはそれを聞いて言う。
「女の子はもっと粘りがないと駄目よ」
「それは少し違うが」
キョウスケは突っ込みを入れる。
「まあいい。とにかくアルフィミィだったな」
「はい」
キョウスケの言葉に頷いてきた。
「そうですの」
「バルマーとも戦うのだな」
「バルマーも。私とは相容れないですの」
「相容れない。では他の勢力ともか」
「そうですの」
そうも答えてきた。
「ですからいずれ貴方達とも」
「本格的に戦うつもりか。わかった」
「わかったって中尉」
「それはちょっと」
リョウトとリオがキョウスケに言うがそれでも彼の言葉は続く。
「ではまた会った時に。容赦はしないぞ」
「わかっておりますの」
アルフィミィも言葉を返す。
「それではまた」
こうしてアインストも彼女も戦場を離脱した。これで今回の戦いは終わったがロンド=ベルにとっては予想外の戦いが響くことになってしまった。
「作戦を中止すべきだな」
「中止ですか」
「うむ、残念だが」
これは大文字の判断であった。
「損害も大きく出た。グラドス、アインストとの戦闘が響いた」
「それは確かに」
サコンもそれに頷いた。
「それでは博士、ここは」
「作戦を中止しゼダンに戻ろう」
彼は言う。
「それでいいな」
「はい、それでは」
サコンは大文字に対して応えた。
「ゼダンに」
「残念ではあるが」
それでもここは撤退するのであった。そうしてゼダンに戻った彼らを待っていたものは。
「何かまた凄いことになってねえか?」
「そうね」
アラドの言葉にゼオラが応えていた。
「兵器がこんなに届いていたのかよ」
「しかも新しいマシンまで」
見れば二人の乗るファルケンやビルガーの赤いもの、セングリフやグリーズの黒くないものがあった。二人はそれを見てまた言う。
「俺達はもう自分のがあるけど」
「これは誰が」
「あたしが乗るよ」
「僕もです」
カチーナとラッセルが名乗り出てきた。
「赤はあたしのカラーだしな」
「僕は中尉のパートナーというかサポートですので」
「二人でか」
「駄目かい?」
カチーナはアラドに対して問うてきた。
「あたしじゃ」
「いや、別にそれは」
「むしろ合っているっていうか」
アラドもゼオラもここではマシンのカラーで言っていた。
「中尉が乗れば確かにいい感じですし」
「戦力アップにも」
「だろ?しかしね」
カチーナはここで少し残念な顔を見せてきた。
「これがさっきの戦いにあればね」
「第二次防衛ラインまでいけたかも知れないですね」
「そうだよ。それが残念だよ」
カチーナはそれを言うのであった。
「まあ言っても仕方ないけれどね。どうせ次の戦いはすぐだろうし」
「その通りだ」
それにギリアムが応えてきた。
「では俺はラーズセングリフを使わせてもらおう」
「それをですか」
「じゃあグリーズは」
「私が」
ラーダが名乗り出てきた。
「それで宜しいでしょうか」
「ええ、どうぞ」
「あたし達はもうレイブンがあるし」
タスクとカーラが二人に答えてきた。
「戦力アップになりますしね」
「いいわよね」
「そうか、わかった」
「それじゃあ」
こうして二人も乗り換えることになった。その中でカルヴィナは統夜と三人娘を交えて話をしていた。
「何か私達ってかなり贅沢よね」
「そうですね」
統夜はカルヴィナが何を言いたいのかわかっていた。それで彼女の言葉に頷いていた。
「四機もマシンがあって」
「頼りになるサポーターが三人もいてくれているしね」
「いえいえ、それはお二人のおかげですよ」
「その通りです」
メルアとカティアが二人に応えてきた。
「あたし達は戦えないし」
テニアもそれはわかっていた。
「やっぱりお二人があってこそですよ」
「そうですよ」
「ですからそんな」
「私一人じゃ無理よ」
「ですよね」
しかしそれでも二人は言うのであった。
「やっぱり貴女達がいないと」
「だからこれからも頼むよ」
「何かそう言ってもらえると」
「嬉しいっていうか」
「有り難いっていうか」
三人にとっては心から有り難い言葉であった。
「頑張ります」
「お二人の力になれるように」
「これからも」
「ええ、御願いね」
「是非共ね」
二人もそれに応える。五人の仲は万全であると言えた。少なくともハガネのクルーよりは遥かに円満な関係であると言えたのであった。
そのハガネの面々というかリーとカーディアン家の面々は相変わらずの関係であった。男秋月はそれを見て剣呑な目で妹に囁いてきた。
「なあ」
「どうしたのよ」
「あの船よく動くよな」
それをまず思うのであった。
「あれだけ仲が悪くて」
「それは私も思っていたわ」
思うところは同じであった。
「普通あんなのじゃ動かないわよね」
「そうだよな」
妹の言葉にあらためて頷く。
「絶対にな」
「リー艦長って確かに名艦長って有名だったし」
「ガーディアン一家もな」
少なくともその腕は知られているのだ。
「それでも水と油だと」
「どうしてもねえ」
「だからこそチームワークは大事なのです」
フェアリがここで二人に言ってきた。
「それはおわかりですね」
「ああ、その通りだな」
「それがよくわかるわ」
逆説的であるがそれを再認識する二人であった。
「しかしそれでも本当にハガネはよく動いているな」
「それが不思議だけれど」
「少なくとも動く程度にはやっているということです」
フェアリの話ではこうであった。
「そういうことです」
「そうなんだ」
「はい」
こう兄に答える。
「ですがお二人はああならないで下さいね」
「わかってるよ」
「それはね」
これはよくわかっている二人であった。
「しかしネビーイームはどうなるのかね」
「また今度ね」
妹はこう兄に述べる。
「仕方ないわね、今は」
「そうか」
「どうせまた攻める機会はあるし」
これはおおよそ見当がついていた。それを行わないとは彼等もとても思えなかった。
「その時にね」
「そうだな。それじゃあ」
兄は言う。
「その時にまた派手に暴れるとするか」
「そういうことね。ところでフェアリ」
「はい」
フェアリは今度は妹の言葉に応えた。
「お昼は何かしら」
「サンドイッチを用意しています」
フェアリはこう答えた。
「それとソーセージですが」
「何かいい感じだな」
男秋月はメニューを聞いて微笑んだ。
「その組み合わせって」
「そうね。それじゃあ今から」
「皆さんも御一緒ですよ」
「ってことは」
ここでハガネの面々を見る。怒るリーに対してブレスフィールドがまたからかいで返していた。やはり相変わらずの二人であった。
「大丈夫かなあ」
「大丈夫よ」
不安げな兄に対して妹はあっけらかんとしていた。
「多分め」
「多分なのか」
「まあとにかく食べないと」
どうしようもない。これはもうわかっていた。
「いいわね」
「わかったさ。それじゃあ」
兄も結局はそれに頷いた。
「食べるか」
「そういうこと。いいわね」
「ああ」
何はともあれ食事に入る。そうして次の戦いに向けて英気を養うのであった。アインストという新たな敵を知った。彼等の戦いはさらに激しさを増していっていた。
第三十四話完
2007・12・31
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