とある星の力を使いし者
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第55話
どうしてこうなった。
麻生はバスの一番後頭部の座席に座りながら思った。
バスの中には麻生の他に人はおらず、横に大型の鞄が置かれていた。
そして、バスに乗って何度目になるか分からないくらいため息を吐いた。
バスの機械アナウンスの声がバス内に響き渡る。
「次は常盤台中学校前~、常盤台中学校前です。」
その声を聞いた麻生は夢なら覚めてほしい、と何度も本気で思ったが今は夢でも何でもない現実だ
麻生は誰も周りにいないが思わず言葉を洩らした。
そうしないとやってられないのだ。
「どうして俺が常盤台中学に体験入学しないといけないんだ。」
なぜ、そうなったのか。
それは前日まで遡る。
学園都市内で新しい試みが行われつつあった。
それはレベルの低い学生を他の名門高校や中学に一時的に編入させる事で、そのカリキュラムなどを受け少しでもレベルや学校生活を向上させるものだった。
期間は二週間。
大覇星祭が始まる五日前には終わる予定だ。
こんな試みは学園都市内でも初めてなので、レベルの低い生徒が多い高校を一つだけ選出。
さらにその三学年の中から一人だけ、名門高校や中学のどれか一つに一時編入する事になった。
「その選出に選ばれたのが私達の高校という訳です。
さらにさらに先生のクラスから一人、名門中学である常盤台中学に一時編入する事が決まりましたのですーっ!」
全部の授業が終わりホームルームの時間。
教室に入ってきた小萌先生は傍から見ても分かるくらい上機嫌だったので、クラスの一人が理由を聞くとその一時編入の説明を受けた。
「これで皆さんの内の一人だけですが、此処では受けられない授業や学校生活を受ける事が出来るんです。
さぁ、誰が行きますか、ってどうしたんですかーっ!?
何でみんなはどんよりとした暗い雰囲気を出しているのですかーっ!?」
小萌先生が生徒達を見ると一部を除き、暗い雰囲気に包まれていた。
しかし、一人だけ元気に挙手する男が一人。
青髪ピアスだ。
「はいは~~い!!
ボク、その一時編入に立候補します!!」
その声を聞いた小萌先生は微妙な表情を浮かべる。
普通の生徒なら喜ぶのだが、青髪ピアスは少し、いやかなり特殊な人間だ。
そんな生徒を常盤台に一時編入させるのは非常に不安だ。
「え~と、他に立候補はいないですか?」
「いる訳ないやろ。
せやから、先生。
ボクで決定やろ!?」
「誰か~~いませんですか!」
少し泣き声になりながら、必死に呼びかける小萌先生。
小萌先生は喜んでいたが生徒達からすればその試みは非常に厄介なものだった。
名門中学の常盤台中学は最低でもレベル3、最高でレベル5が在学している中学校だ。
そんな高位能力者がいる学校の時間割りを受けても自分達には理解する事もできないに決まっている。
さらに常盤台中学はお嬢様学校でも有名だ。
そんな所に行ったところで自分達がついていける訳がない、と誰もが思っていた。
「誰か立候補はいないんですかーっ!!
他でもない常盤台中学ですよ。
この先、二度と体験できないような事が待っているかもしれないんですよーっ!!」
「だから、ボクが行くって言うてるのに何で無視するんや!!」
必死に青髪ピアスの声を無視しながら言う。
その二度と体験したくない事を体験したくないんだよ、っとクラスの一部を除くもの以外は思う。
麻生は前に座っている制理に小声で話しかける。
「お前は立候補しないのか?」
麻生が話しかけると一応授業中なので制理は迷惑そうな顔をしたが一応返事はする。
「これが常盤台じゃないのなら立候補してた。
けど、常盤台みたいなお嬢様学校はパス。
あたしには似合わないわ。」
確かに吹寄制理が優雅に紅茶を飲んでいる所を想像しろと言われても出来ない。
話は終わり、という言わんばかりの雰囲気を出して前に向く。
小萌先生は誰も立候補しない事が分かると、大きな箱を取り出した。
「本当はこんな事をしたくないんですけど、せっかくのチャンスを無駄にしたくないのです。
ですので、くじ引きで当たった人に行ってもらう事にします。」
「だから、何でボクを無視するんや!!」
小萌先生がそう言うと他の生徒は安堵の表情を浮かべ、青髪ピアスは小萌先生の態度に納得がいかず、そしてある生徒は立ち上がってそんなの理不尽だ!!、と叫んだ。
叫んだ生徒は言うまでもなく上条当麻だ。
この男なら当たりくじを確実に引く。
クラス中は確信しているので皆、意気揚々とくじを引いていく。
上条はまだくじを引いていないのに不幸だ、と呟いている。
そして生徒皆がくじを引き終わる。
「それじゃあみんなは一斉にくじを開けてください。
紙に当たり、と書かれた人が今回の編入生徒さんです。」
「先生、これでボクが当たりを引いても文句なしやで。」
「その時はもう諦めるです。」
青髪ピアスは天に祈りながら紙を広げる。
上条は叶う訳がないと思いながらも心の奥底では外れてくれ!!、と願いながら折りたたまれた紙を開ける。
そこには何も書かれていなかった。
それを見た上条は一瞬唖然とする。
そして念には念をと小萌先生に聞く。
「せんせ~い、この紙って火であぶらないと文字が浮かんでこない仕組みですか?」
「そんな手間はかけていないですよ。
ちゃんと紙の真ん中に当たり、と書いてあるです。」
という事は、と上条は考えた。
これは当たりくじを引いていないという事になる。
思わず上条はガッツポーズをする。
周りの生徒はあの上条は当たりくじを引いていない!!、と驚きの表情を浮かべている。
「へっ!毎回毎回全部の不幸がこの上条さんについてくると思うなよ!!」
しかし、周りの生徒は白紙の紙を引いたらしい。
制理も姫神もハズレを引いている。
ちなみに青髪ピアスも白紙だったらしく、真っ白に燃え尽きていた。
そうなると誰が当たりのくじを引いたのか、上条は隣で座っている麻生を見た。
「・・・・・・・」
折りたたまれたくじを開けたまま表情が固まっている麻生。
上条は後ろから麻生が持っているくじを覗き込む。
そこには当たりです~☆、ととても可愛らしい字が書かれていた。
つまり、上条ではなく麻生が当たりくじを引いたのだ。
「なぜだ、どうして俺が当たりくじを・・・・・
こんな面倒な出来事は当麻の担当なのにどうして・・・・」
「いや、俺の担当とかないから。」
しっかり麻生の呟きにツッコむ。
上条ではなく麻生が当たりくじを引いた事に周りがさらに騒ぎ始める。
制理は少し小さく笑みを浮かべながら言う。
「この際だから貴様の堕落した学校生活を改善してみれば?」
それに続いて姫神も言う。
「最近。あなたは不幸な出来事に良く巻き込まれるわね。」
同情の言葉を貰い麻生は何とかして辞退できないか考える。
「では麻生ちゃん。
ホームルームが終わり次第、校長先生の所に行って資料を貰いに行きましょう。」
「先生、辞退とかする事は出来ますか?」
「駄目ですーっ!!
この行事は両校の交流を兼ねています。
もし麻生ちゃんがボイコットとかしてしまうと、私達の高校は低い評価を受ける事になるのです。」
「変わってもらう事は?」
「麻生ちゃんの周りで変わってくれる人はいるのですか?」
麻生は周りを見渡す。
誰も麻生と目を合わせる事はなかった。
しかし、あの男は違った。
「はいは~い!!
何ならボクが代わるよ!!
「先生、変わってくれる人が出てきましたが。」
「やっぱり駄目です!
麻生ちゃんの代わりに行ってくれる人が居ても代わったら駄目です!」
「何て、理不尽。」
「それじゃあホームルームはこれで終わりです。
後、麻生ちゃんは明日から編入する事になっているので荷物とかまとめてくださいね。
出席もあっちで確認できたら、こちらでも出席している事になるので心配する必要はないですよ。」
出席の事など、もはやどうでもよかった。
何で俺なんだ、と思いながら小萌先生に引っ張られ校長室に向かった。
教室を出る時、小萌先生の横暴に青髪ピアスの叫び声が聞こえたのは言うまでもない。
そして今に至る訳だ。
常盤台中学の門で待ち合わせをすることになっている。
ちなみに愛穂が昨日の夜に電話がかかってきた。
麻生が常盤台中学に一時編入する事を聞いて、電話をかけてきた。
「大変かと思うけどしっかり頑張るじゃん。
今の恭介なら全然問題ないじゃんよ。」
どこからそんな事が言えるのか麻生は不思議で仕方なかった。
さらに麻生を悩ませる問題があった。
常盤台中学は女子中学校なのだ。
麻生は校長室に資料を取りに行くとき、男である自分が編入する事は色々不味い事では?、と何とか辞退できる方法を考えていた。
しかし、意外にも男子生徒が一時編入する事をあちらの理事長は了承したのだ。
理由を聞くと、社会に出れば様々人と触れ合う事にある。
常盤台の生徒は男子と話をする機会が少ないので、こちらとしてもいい経験になると言っていたらしい。
たった一人だけ男子生徒が編入するのに経験もくそもないと麻生は思った。
どうやら逃げる事は出来ないようでついに編入の日がやってきた。
バスは常盤台中学前で止まった。
麻生は下りるか下りないか一瞬迷ったがため息をついて下りる事にした。
常盤台は特殊な時間割りや特殊実験施設などがある。
その為、いくら上層部の決定とはいえ機密事項などを漏洩するわけにはいかないので、麻生には常盤台の中でも比較的に普通の時間割りを受ける事になっている。
もちろん、学園内での行動範囲も決めるという徹底ぶりだ。
これを校長から聞いた時、麻生は了承しなくて良かっただろ、と率直に思った。
鞄を持ち、バスを降りて常盤台の門に向かう。
常盤台の敷地面積は並みの学校の一五倍らしい。
なのでバスとかの移動手段を使わないと色々大変なのだ。
少し歩いていると門の前に常盤台の制服を着た生徒が立っていた。
しかし、遠目から見た麻生はその姿にどこか見覚えがあった。
徐々に距離が近づくと見覚えが確信へと変わっていく。
門で待っている生徒は麻生が近づいている事に気づいていない。
「もしかしてあんたが待ち合わせの生徒か?」
「はい、大変お待ちして・・・・・」
凄く丁寧な言葉でこちらに振り向いた瞬間、その生徒御坂美琴の動きが止まる。
爽やかな笑顔のまま固まったまま次に出てきた言葉は丁寧な言葉とはかけ離れたものだった。
「何であんたが此処に居んのよおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
今日から麻生の常盤台中学での生活が始まる。
後書き
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