とある星の力を使いし者
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第54話
とりあえず、打ち止めの話を詳しく聞きために二人はお風呂からあがり病室に戻った。
打ち止めはベットで胡坐をかき、一方通行は打ち止めの対面にあるベットに座り、麻生は近くの壁に背中を預けている。
「とりあえず、今ミサカが知っている情報を教えるね、ってミサカはミサカはお風呂での話の続きを説明してみる。
現在、世界八ヶ国と一九の組織が宇宙開発という名目上、宇宙にシャトルを打ち上げを実行、その目的は衛星軌道上にある「樹形図の設計者」の残骸を回収する為なの、ってミサカはミサカはネットワーク内の情報を整理してみたり。
様々な組織や国は欠片や破片を回収している所もあるらしいけど、それらだけでは「樹形図の設計者」を復元させることはできないの、ってミサカはミサカは追記をしてみる。
復元に必要な残骸は現在、学園都市内部にあるの、ってミサカはミサカは重要な情報を発表してみたり。」
打ち止めはいつもと変わらない口調で話をしているがこれは一方通行にとっては無視できない出来事であった。
「それでどうしてその残骸がここにあるんだ?」
麻生は打ち止めに質問する。
「何でも学園都市が他の組織よりも早く「樹形図の設計者」の残骸を回収したらしいんだけど、此処に運んでいる最中にどこかの組織の襲撃にあってその残骸は奪われちゃったの、ってミサカはミサカは学園都市で起こっている戦いを奪い合いについて説明してみる。
それで今は学園都市の事を快く思っていない人達と外部組織が手を組んで、その残骸を外に運ぼうとしている訳なの、ってミサカはミサカは事態が深刻になりつつあることを言ってみる。」
「要はよォ、残骸を取り戻そうとしている学園都市とそれを外部に渡そうとしている反逆者の戦いが、今起こっているって事でいいンだよなァ。」
「少し違うところもあるけど概ね合ってる、ってミサカはミサカはあなたの発言に大きく丸をつけてみたり。」
にこやかに打ち止めは言う。
麻生は学園都市に残骸が渡ろうと外部の組織に渡ろうと「樹形図の設計者」が再び開発され、あの時の「実験」が下手をすればそれ以上の「実験」が考案されるかもしれないと麻生は考える。
一方通行も麻生と同じ事を考えていた。
ならばどうするか、二人は考え、すぐに答えが出てきた。
一方通行はベットから立ち上がり、麻生は壁から背中を離す。
「あれれ?二人ともどうしたの、ってミサカはミサカは疑問を二人に聞いてみる。」
「そろそろ帰ってもいいだろう。
風呂からもあがったんだし俺の役目もここで終わりだ。」
「あの医者に用があってよォ。
あいつがいる所まで行ってくるわ。」
「だったらミサカもついていく、ってミサカはミサカは一人じゃあ退屈だから同行を要求してみる。」
「すぐに戻ってくるから、ここで待ってろ。」
一方通行はそう言って病室から出て行き、麻生もそれに続いて出て行く。
打ち止めは不満そうな顔をしていたが二人は気にせず出て行く。
病室を出た二人は背中を合わせるように別々の道を歩く。
そして、少し歩いたところで麻生は一方通行に言う。
「医者からチョーカー型電極でも貰いに行くのか?」
麻生の言葉に一方通行は足は止まる。
そして振り返らずに言葉を返す。
「そォいうテメェはどこに行くつもりだァ?」
「俺は保険をかけに行くだけだ。
お前がもし失敗してしまっても良いようにな。」
麻生の言葉を聞いた一方通行は小さく舌打ちをする。
「何でもお見通しって訳か。」
「何でもじゃない、ただ今のお前ならきっとそうするだろうと思っただけだ。」
「余計な世話だ。
さっさと帰って寝てろ。」
「そうもいかない。
もし「実験」が再び始まればあいつは俺に助けを求めるかもしれない。
しかも、それは前の「実験」よりも複雑で解決するのは面倒かもしれない。
そんな面倒事が目の前に転がっているのに黙って見過ごさない。
面倒事が起こる前にけりをつける。」
そう言って麻生は再び廊下を歩いていく。
一方通行も医者の所に向かう。
一人は自分の為に、もう一人は守ると誓った者の為に戦いに向かう。
麻生は病院をでると携帯で初春に電話をする。
おそらく外部の組織は学園都市のどこかにいるか、「外」に通じる門の外側のすぐ傍にいるかのどっちかだろう。
それらを全部調べるには時間がかかるし、何より能力時間が足りない。
前に麻生は初春に「実験」の事を調べて貰った時に、初春の情報収集能力が非常に高い事を覚えており、さらに風紀委員というのもあって今起こっている出来事について、詳しい情報を持っている筈だと麻生は考えた。
数コールの後、初春は電話に出る。
「麻生さん、どうしましたか?」
「初春に聞きたい事がある。
今、学園都市内で起こっている事件、「樹形図の設計者」の残骸をめぐって戦いが起こっている筈だ。」
「どうして知っているんですか!?」
「理由を説明している時間はない。
残骸を外部組織に引き渡す為の合流ポイントがどこか分かるか?」
「それは分かりますけど、麻生さんはそれを聞いてどうするつもりですか?」
いつもと違って真剣な声で聞いてくる。
彼女も風紀委員だ。
一般人である麻生が危険な所に向かおうとしている事に気づき、止めるつもりなのだろう。
それが分かっていて麻生は真正面から答える。
「外部組織を壊滅させれば少なくとも残骸が外に出回ることはない。
だから、教えてくれ。」
麻生の言葉を聞いた初春は何も返事が返ってこない。
少しの沈黙の後、電話越しでも分かるくらいのため息が聞こえた。
「いいですか、絶対に白井さんには内緒ですよ!!
もし教えたことが知られたら何て言われるか分かりませんから。」
その言葉と同時にキーボードを叩く音が聞こえる。
少しした後、外部組織と接触するであろうポイントを教えてもらった。
「教えてもらったのは感謝するが、どうして教えたんだ?
俺は一般人だ、風紀委員である初春は止めないといけない立場じゃないのか?」
「確かにそうですけど、今は人手不足で困っている所です。
麻生さんが何の力も持たない一般人なら止めていますけど、そうじゃありませんから。
白井さんは残骸を外部組織に持っていこうとしている能力者と戦っています。
その努力を無駄にしたくないんです。
警備員も協力して組織を押さえていますけどさっき教えた所だけ、手が回っていないんです。
だから、麻生さん。
風紀委員でもなんでもない人に頼むのは間違っていると思います。
けど、もう私の知っている人の中でこの状況を打破出来るのは麻生さんしかないんです。
どうかよろしくお願いします。」
おそらく電話越しなのに初春は頭を下げている事が麻生は何となく予想できた。
麻生はただ一言簡潔に答える。
「任せろ。」
その一言だけ聞いた初春は最後によろしくお願いします!!、と電話越しでも耳鳴りするくらいの大声で言って電話を切る。
麻生はつくづく思う。
自分は変わった、と。
前の自分ならさっきの言葉も今のこの行動さえも起こさなかった筈だ。
それでも構わない、と麻生は思う。
今の自分が一番しっくりきている。
携帯のGPSを使い、初春から聞いた場所を調べる。
場所が分かると能力を使い、空中に浮かぶと風を利用してその場所まで一気に移動する。
その場所まで行くと黒いスーツを着た人物が一〇人立っていた。
この学園都市には不釣合いな格好をした彼らを見た麻生は、一気に彼らに向かって急降下する。
(一撃で沈める。)
彼らの内の一人が何気なく空を見上げ、麻生が自分達に急接近している事に気づく。
手を胸元に伸ばし、拳銃を取り出して迎撃しようとする。
しかし、それよりも早く麻生は両足で地面を踏みつける。
ダン!!、という音と共に麻生を中心にコンクリートの地面がひび割れ、強烈な衝撃波が発生する。
拳銃を構えようとした彼らはその衝撃に巻き込まれ、吹き飛ばされいく。
「外」からの侵入者ならこの一撃で意識を失うと麻生は思っていた。
「ふむ、まさか貴様が此処に来るとは予想外だな。」
声が聞こえた。
麻生は声のする方に視線を向けると、周りで倒れている彼らと同じ黒いスーツを着た男が立っていた。
唯一の違いはその男は両手をポケットに入れ、拳銃を構えていないという所だけだ。
髪は金髪、目の色は緑で年齢は三〇代くらいの男がそこにいた。
見た目はどこにでもいるサラリーマンだ。
これといって特徴もなく街中で見かけたとしても、次の瞬間には忘れてしまう様な平凡さである。
しかし、対峙した瞬間麻生はその男の事を忘れる事は出来ないと確信した。
その男から溢れ出る異様な雰囲気が今までに感じた事が無いモノだ。
男から溢れ出るそれは、まるで瘴気の様に周囲を染めていき空気をドス黒く濁らせていく。
普通の人間が到底出せるモノでは無い。
「ふむ、この分だと「樹形図の設計者」の残骸を回収することは無理のようだな。」
男は独り言を呟いている。
麻生は警戒を解かずその男をじっと見つめる。
そして、男の視線が麻生に向いた。
「ふむ、折角貴様に会えたのだ、一戦交えても問題はなかろうな。
ふむ、周りの奴らは不満を言いそうだがな。」
少し笑みを浮かべながら男は右手をポケットから出すと突如本が出現し、右手に収まる。
麻生はその本から異様な魔力を感じた。
その瞬間、麻生の頭に痛みが走る。
魔道書を見た事による頭痛でも、敵の攻撃でもない。
麻生は頭を右手で軽く押さえながら言う。
「それは魔道書か。」
「ふむ、禁書目録でもないのによく分かったな。」
確かにこの男の言うとおりだ。
麻生は様々な事を記憶しているが男が持っている本が魔道書だと一見して分かった。
それは魔道書でない可能性もあるのになぜかあの本は魔道書だと直感だが分かった。
そして、禁書目録という単語を聞いた麻生は眉をひそめた。
「禁書目録を知っているという事は魔術師か。」
「ふむ、その通りだ。
ふむ、だがローマ正教やイギリス清教などの下等生物と一緒にするなよ。
ふむ、私は・・・いや私達は下等生物よりも格段に優れている種族なのだからな。」
男は魔道書を開けてながら言う。
ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるー るるいえ うがふなぐる ふたぐん
その瞬間、地面に魔方陣が現れるとそこから鋭く尖った銛を持った半魚人が三体現れる。
それを見た麻生はさらに強い頭痛に襲われる。
「ふむ、これは私達の教団のいわば信者みたいなものだ。
ふむ、私は教皇様から手を出してはいけないと言われている。
ふむ、彼らで君の力を測らせてもらおう。」
ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるー るるいえ うがふなぐる ふたぐん
男が何かを言った後、半魚人達の頭上に魔方陣が現れるとそこから水が滝のように流れてくる。
それを浴びた半魚人達の身体が一回り大きくなり、肌の鱗や口の牙が鋭くなっていく。
半魚人達は足に力を込めると、地面が軽く抉れ飛ぶくらいの力で麻生に向かって突撃する。
「ッ!?」
麻生は動体視力を最大まで強化して突撃してくる半魚人達の攻撃を紙一重でかわす。
かわされた半魚人達は地面を抉りながら動きを止める。
一体が大きく跳躍すると口から水鉄砲のように麻生に向かって水を噴射する。
それに合わせるように残りの二体の半魚人は銛を構えて麻生に襲いかかる。
麻生は干将・莫耶を創り出し、水鉄砲をかわして半魚人達の銛を受け止める。
(何て力だ!!)
受け止めているが半魚人達の力は凄まじく徐々に押されていく。
このままではまずい、と麻生は手首を反して片方の銛の軌道を逸らし、その勢いのままもう片方の銛を受け流し、隙の出来た胴体に干将・莫耶をクロスさせ斬りつける。
(こいつらは人間じゃない。
遠慮なくやらせてもらう。)
身体を捻りながら勢いよく斬りかかる。
だが、鱗に触れた瞬間、バキン!!という音を立てて干将・莫耶が砕け散った。
「なっ・・・・」
麻生が驚いている隙に後ろから水鉄砲を打ち出した半魚人が麻生の背中に向かって銛を突き出す。
麻生は避けるのは不可能と考え、地面に干渉して自分の足元の地面を盛り上げ、空中に逃げる。
半魚人の銛は盛り上がった地面を軽々と貫く。
(あれほどの貫通力なら空間の壁じゃあ防げない。)
麻生は両手にある折れた干将・莫耶を一瞥して投げ捨てる。
男の方を見ると、手に持っていた本は持っておらず両手をポケットに入れてじっと見つめていた。
どうやら戦う気はないようだ、と麻生は考える。
干将・莫耶をもう一度創り出し、今度は麻生の方から接近する。
半魚人達は一斉に水鉄砲を麻生に向かって打ち出す。
だが、麻生は空間移動を使い半魚人達の後ろに回り込む。
(普通の攻撃が通らないのならもう一段階上の攻撃をするまで。)
その瞬間、干将・莫耶が二メートルくらいまで伸び大きな大剣に変化する。
さっきと同じ様に身体を捻り、勢いをつけて真ん中にいる半魚人に斬りかかる。
今度は半魚人の身体が真っ二つに引き裂かれる。
両側にいた半魚人は麻生から離れようとするが片方の半魚人に向かって体剣と化した干将・莫耶を投げ飛ばす。
半魚人は後ろに下がっている途中なのでかわす事もできず貫かれ、後ろの木に打ち付けられる。
「壊れた幻想。」
干将・莫耶は一瞬だけ輝くと半魚人の身体ごと木端微塵に吹き飛ぶ。
最後に残った半魚人は玉砕覚悟なのか麻生に突撃してくる。
それをかわすと右手で銛を握り、動きを止める。
そして、左手を空に向かって伸ばす。
麻生の手から炎が噴き出すと炎が剣の形へと変わっていく。
「灼熱の烈剣!!」
そのまま振り下ろした瞬間に巨大な火柱が剣から吹き出し、半魚人の身体を燃やし尽くす。
炎が修まるとそこには灰すら残っていない。
すると、後ろから拍手の音が聞こえる。
「ふむ、星の力を使わずに倒すとはなかなかだな。
ふむ、信者クラスでは太刀打ちできないと判断した。
ふむ、お前を倒せるのは私のような幹部クラスか教皇様くらいか。」
男は一人で納得した表情をする。
麻生は灼熱の烈剣を男に向ける。
「お前には聞きたい事が山ほどあるんだ。
簡単に逃げれると思うなよ。」
「ふむ、私としては貴様と戦いところだが教皇様がそれをお許しにならない。
ふむ、では貴様の相手は彼らにしてもらおう。」
男は指を鳴らすと最初に麻生が吹き飛ばしたスーツの彼らが起き上がる。
だが、彼らは人の原型を留めていなかった。
皮膚は抉れ、身体中からは蛆が湧いており、その姿は屍人の言葉がぴったりだった。
屍人は麻生に一斉に襲い掛かる。
麻生は舌打ちをすると灼熱の烈剣を地面に突き刺すと、麻生の中心に火柱があがり屍人を燃やし尽くす。
全部燃やした後には男の姿はどこにもなかった。
あの後、周りを探しに回ったが男はどこにもいなかった。
一方通行の方は「樹形図の設計者」の残骸を破壊する事が出来たらしい。
隣の病室では白井が入院している。
どうやら美琴や上条も「樹形図の設計者」の残骸を破壊する為に動いていたらしい。
麻生は一方通行の病室でリンゴを剥いている。
(あの男、星の力って言っていた。
あいつも俺について何か知っている感じだった。
一体あいつは何を知っているんだ。)
リンゴを剥きながら麻生は先日の男の言動について考えていた。
「深刻な顔をしてどうしたのって、ミサカはミサカは心配な表情をして聞いてみる。」
「・・・何もない。
ほら、リンゴでも食べてろ。」
綺麗に六等分に分けたリンゴを打ち止めに渡す。
一方通行は寝転がりながら麻生に聞く。
「オマエの方でなンかあったのか?」
一方通行の言葉を聞いた麻生は唖然とした顔をする。
あの一方通行が麻生を気にかけてた言葉をかけてきたからだ。
「お前に心配されるようじゃあ駄目だな。
別に何もなかったから安心しろ。」
一方通行は舌打ちをすると目を閉じて眠り始める。
どうやら帰ってきたのは朝頃だったらしくとても眠いようだ。
麻生は打ち止めがリンゴを食べ終わってからどのようにして相手をするか考える事にした。
後書き
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