八条学園怪異譚
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第十七話 舞と音楽その八
「じゃあそこからなの」
「お水を汲んで一から煎れたのね」
「僕達そんなことしてないけれどね」
「正直なところね」
「術で手を使わずに水汲んでるし」
「そうなんだよね」
「まあ魔法を使うのはいいけれど」
愛実もそのことにはこだわらない。愛実も同じだ。
「それでも。あの井戸まだ使えるのね」
「そうだよ。充分にね」
「まだまだお水出るよ」
「深い井戸だけれどね」
「中々いい井戸だよ」
狐狸達がこう言うとだった。
愛実はかなり怪訝な顔になった。そのうえでお菓子の中にあった田舎饅頭を食べながら聖花に
対して尋ねた。
「ちょっと見てみる?」
「井戸の中よね」
「ええ。泉があるかも知れないから」
それでだというのだ。
「ちょっと中見てみよう」
「そうね。ここはね」
聖花も愛実のその言葉に頷いた。聖花は今は笹団子を食べている。
「それがいいわね」
「泉が見付かるかも知れないから」
「だから井戸の中見てみようって思うけれど」
「ええ、それじゃあね」
また頷く聖花だった。そうした話をしてから二人は日下部にも顔を向けてはっきりとした顔でこう告げた、。
「これでどうでしょうか」
「私達で行くっていうのは」
「井戸の中ですけれど」
「いいですよね」
「構わない」
日下部は二人にまずはこう答えた。
「君達が調べたいのならな。だが」
「だが?」
「だがっていいますと」
「井戸の中に入るのだ」
だからだというのだ。日下部の口調が厳しいものになった。
「その時は気をつけることだ」
「昔結構井戸に落ちて死んでるからね」
「そうそう」
狐狸達がここでまた話す。
「その井戸もほら」
「覆いしてるでしょ」
見ればその通りだ。そこにある井戸は人がそのまま落ちてしまわない様に金網で覆いがしてある。そのガードはかなりのものだ。
「危ないからだからね」
「誰かが誤って落ちない様にね」
「だからね。中に入るにしても」
「かなり注意してね」
「あそこは深い井戸だし」
井戸に落ちればどうなるかというのだ。
「死ぬからね、本当に」
「頭から落ちて首の骨を折るとかね」
「そういうのになるから」
「だから気をつけてね、中に入るのだったら」
「それはね」
「中に入るのは」
愛実は狐狸達の言葉を聞いてそれで言うのだった。
「ちょっとね」
「考えてないの?」
「それは」
「実は井戸を覗こうとは思っていたけれど」
だがそれでもだというのだ。
「それでもね」
「井戸の中は広いよ。というか奥が深いから」
「覗くだけじゃわからないよ」
「中に入らないとわからないからね」
「そこはしっかりしてね」
「そこまで言うのなら」
どうかとだ。愛実は聖花に顔を向けて言った。
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