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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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After days
spring
  強化①

 
前書き
『キャリバー Ver.レイ』的な 

 





新生ALOが稼働を開始して1週間。
イグドラシル・シティで早くも人気を集めている《リズベット武具店》の開店時間前に店主の顔馴染みがやって来た。



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「え?大太刀を強化したい?」

「おう。晴れて『両刀』も使えなくなったことだしな。2本あっても仕方ないから、合成して1本にしてくれ」


そう言って2本の大振りの刀をリズに差し出した。


「ちょっと。正気なの?2振りとも元アインクラッドの超魔剣クラスよ。そりゃあ、それらを合わせれば強力な剣ができるのは間違いないけど……」


リズは《鑑定スキル》で刀のパラメーターを表示し、その馬鹿げたステータスを眺める。

ちなみに、元々ALO内に存在しないこの刀達だが、使用するにあたりサーバーにアレして登録済みなので各種問題は解決済みだったりする。


「俺も長年の相棒を手放すのは忍びないが、『両刀』使えないんじゃ2本あっても意味無いし、まさかこの馬鹿でかい刀使って二刀流する訳にもいかんしな」


余談だが、UISSは原因不明の機能停止をした。もともとSAO規格(およそ1万人のデータを処理するだけ)で稼働していた超常システムだったので、ALOで再起動したときに壊れるのは無理もないのだが。
つまり、『両刀』がUISSの記録領域に保存されていたものであったため、ソードスキルが実装されたALO内で両刀を使うことは出来ないということだ。


「分かったわよ。で、どんな感じにするの?素材追加は?」

「んー、なんか有望なものってあるか?」


強化方法の1つである《武器合成》は追加する素材によって付属効果が顕れることがある。


「金属素材なら、ノーム領の上位ダンジョンにいいやつが出てきたらしいけど……この刀に合うやつとは思えないわね」

「だよなぁ。現時点で手に入れられる素材でこいつらに相当するとなると……オリハルコンインゴットぐらいか。……そう考えると普通に強化するしかないか」


はぁ、とため息をついてカウンターに突っ伏す。


「ところでなんで強化する必要があんのよ。しつこいようだけど、この2振りのパラメーターは古代級武器に匹敵するわよ」


リズがなおも納得のいかない様子で訊いてくる。


「アインクラッドのアップデートがあった日、そのまま1層攻略しただろ?」

「ええ。久々に歯応えのある戦闘だったわね」

「それだよ。1層のくせに強すぎだ」


リズがハッ、と目を見張る。
リズもほとんどが鍛冶スキルで得た経験値とはいえ、主武装のメイスは完全習得した実力者だ。強敵と戦った経験もあるだろう。
俺もキリトもアスナも長らく強敵と戦ってきたせいか、感覚が麻痺して気づかなかったが、新生アインクラッドの1層ボスは明らかに強すぎた。


「それって……フロアボスが強化されてるってこと?」

「体感だけどな。あのボスは10層ぐらい……かな?」

「ということは今後は10倍以上の強さ、って考えればいいのね」

「そうゆうことになるな」


途方もない話だった。そのためには出来る限りの装備強化は必要だろう。


「ねぇ、噂なんだけどさ。サラマンダー領の方に《竜の谷》ってあるじゃない?」

「ん?……ああ」

「そこのクエで『噴煙の嶺』ってやつがあるらしいんだけど、そのクエの途中でハイランクのインゴットが手に入るらしいわよ」

「……聞いたことないぜ?ソースどこよ」

「お客から聞いたんだけどね。何でもそこで出てくる竜が滅茶苦茶強いらしくてさ。唯一の成功例はサラマンダーのユージーン将軍が率いた大規模精鋭部隊だけらしいから」

「ALO最強部隊じゃん……。採れるわけないか……」


さらに深くため息をついて立ち上がる。どうやら他を当たるしかないようだ。

素材探して来る、と言って立ち去ろうとするとリズがスミス・ハンマーを振り下ろしてきた。


「いだぁ!?……って何だよ!?」


何が気にくわないのかリズは顔をしかめて俺を睨んでいる。


「あんたねぇ。強敵だからって諦めるつもり?昔のあんたはそんなんじゃなかったでしょ」

「………………」

「行くわよ。今日の昼から」


……マジで?






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さすがに2人だけでは勝てるとは思わなかったので、知り合いに片っ端から声をかけ、何とか1パーティーを揃えた。

メンバーは発案者の俺とリズ。集まったのはキリト、リーファ、クライン、アード、セインだ。


ちなみに、来れなかったメンバーの言い分。


セラ「……申し訳ありませんお兄様。新入りは色々と雑用がありまして……」

アスナ「ごめんなさい……お昼から用事があるの」

シリカ「課題が終わりません!!むしろこっち手伝って下さい!!」

エギル「仕入れにちょっと手違いがあってな……」

カイト&ホルン「デート……(!!)」

ユウリ「忙しいわ」

アルセ「ちょっと北関東せいあ……じゃなくて忙しいからごめんよ」



ここまではいい。皆忙しいのだろう。だが、



リオ「だりぃ……」

ハンニャ「……ヒック、ああ?昼から?んー……ぐぅ……」

ヴィレッタ 返信なし。




「やれやれ……」

「ま、1パーティーできただけいいじゃない」


久々に会った面子もいるので、軽く挨拶を済ませ、早速《竜の谷》へ向かう。


「なぁ、レイ」


距離を半分渡ったところでクラインが話しかけてきた。


「なんだ?」

「その滅茶苦茶強いMobってんのはどんなやつなんだ?」

「さあ?」


何せリズが聞き付けた噂話だ。攻撃パターンはおろか、姿形すら知らない。


「さあ、ってお前なぁ……。ちょっとは情報がねぇと1パーティーじゃきちいんじゃ……」

「何だクライン。ビビってんのか?」


ニヤニヤしながら話に割り込んできたのはキリト。「んなことねぇ!」と言ったクラインとじゃれ始めるのは最早何時ものことだ。


「……みんな、元気」


ボー、とした感じで飛んでいるアードは眠そうだ。


「おーい。大丈夫か?」


ふよふよ飛んでいるアードの頭をゴツゴツ叩くと「……大丈夫」と反応するが、まだ眠そうだ。


「アード君、寝不足?」


リーファが心配そうに寄ってくる。人の事を心配する気配りが出来るのがこの子の美点だな。


「う、うん」


アードが歯切れの悪い返事を返す。無口ながらはっきりとものを言うアードにしては珍しいことだった。


「何やってたんだ?そんな夜更かしして」

「凛が……」


………ん?何で頬を染める?















「寝かせてくれなかった」






………。


……………。


…………………。


…………………………はい?






「な、あ……は………へぇ!?」


これはリーファ。断じて俺じゃないぞ。


「………えーとだな。アード君。それはつまりオトナの階段を昇っちゃった訳か?」


きょとんとするアード。まるで何のことか分からないとでも言うように。


「……夜遅くまで電話してただけだよ?」

「紛らわしいわ!!」





そんな事をやっている内に前方に巨大な谷が現れた―――








_______________________________________








谷の入り口に降り立つとこの地特有の乾燥した空気の匂いが鼻に入ってきた。相変わらず律儀な環境設定だ。


「レイ。どうしたの?何か疲れてるみたいだけど……」


遠い目をしていた俺を気遣ってくれるのはセインだ。律儀さという面ではセインも負けてはいない。
今日の午前中に連絡を入れたにもかかわらず、顔の広さを利用して今回のターゲットである《The brightridge》の情報を集めて来てくれたのだ。

無理を言って召集をかけた本人がへばっていはだめだ。


「いや、大丈夫だ。疲れは精神的なものだからな」

「なら、いいけど……」


《竜の谷》の入り口には一軒の小屋があった。事前の情報ではこの小屋にいる老人から手紙を受け取り、谷の反対側にある小屋の老人に手紙を渡せばクリアらしい。


「んじゃ、早速行くぞ」


未だに好き勝手やっているパーティーメンバー達に声をかけると、小屋の中へ入っていった。

5分後、クエストフラグを立てて谷へ入っていくと、マップに巨大な黄色い点が現れた。

どうやらこのクエストの趣旨は《The brightridge》に見つからないように谷を抜けることらしいが、俺達の目的は遭遇することなので、むしろ好都合だった。


「みんな、今日は集まってくれてありがとう。ターゲットは手強いらしいが、俺達なら十分に渡り合えるはずだ。……で、肝心のお礼の話だが……」


見返りの話を出すと、全員が現金にこっちに注目する。


「……何時か必ずする」


とまあ、あまり締まらなかったが、ともかく出発した。








____________________________________









「右斜め下から対空攻撃!!」


セインの警告に俺、キリト、アードは散開して火炎の砲弾を回避した。
現在位置は全体の3分の1程の場所。
俺達はアルマジロに似た砲台付きMobと戦闘をしていた。

回避した体勢から羽を操って更に複雑な回避軌道を描く。

今度は反対方向からの砲撃が次々と放たれた。


「せやぁぁぁぁ!!」

「どりゃぁぁぁぁ!!」


砲撃の反動で硬直が生じたアルマジロにリズとクラインが斬りかかる。

堅い装甲をリズの戦鎚が叩き割り、露出した皮膚をクラインが切り裂く。


「リーファ!」


アードがシルフの高速機動を駆使して敵のロックから逃れる。

さらに、敵の死角である頭上に移動してそのまま上空から急襲した。アードの棍が装甲を砕き、接近していたリーファが止めを刺す。

アードはそれだけで終わらず、体勢を立て直す反動を使って跳躍し、さらにもう1体のアルマジロに襲いかかった。


「……と、キリト。サボってないで俺達も行こうぜ」

「そうしたいのは、山々だけど!!……っと!?」


俺とキリトに向かってドコドコ砲撃を加えているのはアルマジロ軍団より2回りほど大きなアルマジロ。
砲台を4門揃えた統率個体だ。回りには取り巻きらしい通常のアルマジロよりやや大きめな体を持ち、砲台を2門持ったやつらが4体居る。


「セイン!!一斉砲撃まで後どれぐらいだ!?」

「後30秒ぐらい!!」


セインは空中の最も高い場所に陣取り全体を把握し、指示を出す司令塔役をしていた。本来は俺がやるべきなのだが、空中戦に於いては未だにセインに軍配が上がるので彼に任せている。


「キリト、次の一斉砲撃をしのいだら特攻掛けるぞ。直に雑魚の殲滅も終わるだろう。それまで俺達だけであいつらを引き受けるぞ!」

「了解だ!」


ドゴンッ、ドゴンッ、と音がして合計12発の炎弾が撃ち出される。狙いは俺達を取り囲むように放たれている。

直撃するのは半分の6発。


「弾く!」

「ちょ……レイ!?」


実装されたばかりのソードスキルのモーションを立ち上げ、初弾の炎弾を迎撃する。

ALOに実装されたソードスキルの中でも上位剣技には属性が付与される。


大太刀垂直4連撃、『風爆斬』、物理2割、土3割、風5割。


初撃の垂直切りと炎弾が激しいライトエフェクトを撒き散らしてぶつかり、炎弾を撃ち落とした。
2撃目の切り上げも炎弾を上空に弾き、3撃目の同じく切り上げで炎弾を上空に弾いた。


「おおぉぉぉぉっ!!」


最後の上段切り、炎弾を下に撃ち落とし、体が技後硬直に捕らわれる。


「くぉぉぉぉぉっ!!」


が、間一髪で飛び込んできたキリトが炎弾2発を弾いてあさっての方向へ飛ばした。

キリトは何か言いたそうだったが、何も言わずに巨大アルマジロに向かって突進していった。

技後硬直から回復した俺と周りの雑魚アルマジロを倒し終えた他のメンバー、高空にいたセインも好機を見て畳み掛けるように群がっていく。


「ゴオォォォォォォ!!」


怒りの咆哮をあげる巨大アルマジロとその取り巻き達。


それらを色とりどりのライトエフェクトが包み、やがて沈黙させた。








___________________________________









アルマジロとの戦闘を終えて順番にログアウトして体力の回復を図っていると、マップの巨大な黄色い点が移動を始めた。進行方向はアルン側。

つまり、ここへ来る。全員が再び緊張し、得物を構えてその敵を待ち受ける。





最初に見えたのは先端があの巨大アルマジロ程もある雄々しい角。

次にそれが飾りに見える程の頭、そして異様な光を放つ目。


「……こいつは……」

「おっきい……」

「どうやって倒すんだよ。あんなやつ……」


分かりやすい比較を出すならば某人気狩猟ゲームに出てくる『豊穣竜』、あれの四足で角が1本で立派な羽が生えているのを想像してみるといい。


それだけではない。刮目すべきはその背中。赤く燃え上がり、噴煙を上げているのは間違いなく火山だ。






山の嶺のような背に火山を持ち、赤々と輝きを放つ巨大竜。




「ゴォォォォォォォォ!!!」






《The brightridge》―『輝く嶺』が姿を現した。




 
 

 
後書き
レイ「おいおい。『某人気狩猟ゲームに出てくる『豊穣竜』』って使っていいのかよ」

ULLR「細かい事は気にするな。改造したから大丈夫だよ。多分」

レイ「それにしても、どうやって倒すんだよ。あんな化け物」

ULLR「ガンバ♪」

レイ「他人任せ!?」


結末はまた明日…… 
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