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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第三話 闘志、炎に燃ゆる

                   第三話 闘志、炎に燃ゆる
茶色の短く刈り込んだ髪を持つ精悍な顔立ちの若者トウマ=カノウはこの時配達のアルバイトをしていた。ついこの前彼のいる東京でも戦いがあったというのに彼は上機嫌であった。
「へへへ、今日もあの人のところだな」
ある家への配達があるのを見て楽しそうに笑っていた。
「ラッキーなことだぜ。確かミナキさんだったよな」
その女性のことを思う。
「あの人にまた会えるなんてな。さて今日は」
そのうえで何かを決意する。
「いよいよ腹を括って告白するか。デートの誘いをな」
懐から二枚のチケットを取り出す。
「これで」
そうしてある家に行く。すると赤がかった茶色の髪と目の奇麗な顔立ちの少女が出て来た。
「はい」
「あの、宅急便です」
まずはこう述べる。
「印鑑御願いできますか?」
「はい、それじゃあ」
その少女は彼の言葉に応える。
「ここですね」
「はい、それでですね」
印鑑を押してもらったところでまた彼女に言う。
「あのですね」
「はい。まだ何か」
「あの、若しよかったら」
ここから言おうとしたところで。急に警報が鳴った。
「!?」
「また何か来たのかよ!」
トウマと少女はその声に顔を向ける。少女はそれを見てすぐに彼に声をかけた。
「ここにいたら」
「ええ、避難しましょう」
そう少女に声をかける。
「今すぐここから」
「はい」
少女も頷く。だがそこに兵士達が来た。
「君達、こんなところいてはいけない!」
「兵隊さん」
「早くこっちへ!」
「急いで!」
「あっ、けれど!」
しかしここで少女は家の方を見てそこに留まる。
「このまま行けば」
「何かあるかわからないが命あってのことだ!」
「とにかく避難するんだ!」
兵士達はそんな彼女に言う。ここで街にハニワ幻人達が出て来た。
「げっ、何か久し振りに出て来たな!」
「それはいいから!」
「君も!」
兵士達はトウマも避難させようとする。
「早くこっちへ!」
「いいな!」
「あっ、はい。それじゃあ」
そう言われたうえで少女に声をかける。
「貴女も」
「けれど私は」
「けれど。危ないですよ」
トウマは本気で彼女を心配して声をかけた。
「実際に敵が来ていますし」
「わかっています。けれど」
それでも彼女は思い止まっていた。
「家の中にはお父様の」
「お父さんのって」
「やっぱり来たか!」
「凱隊長、ここは!」
「そうだ!」
ここで凱とボルフォッグが戦場に現われた。ルネと他のマシンも一緒である。
「すぐにハニワ幻人達に向かう。いいな!」
「了解!」
「派手にやらせてもらうぜ!」
ゴルディマーグも威勢よく前に出る。彼等は早速戦いを開始した。
それはトウマ達も見ている。まずは彼等の到着に安心していた。
「それじゃあ俺達は今のうちに」
「うん」
「彼等が防いでいてくれる間にな」
兵士達も安心していた。しかし少女はまだ動こうとはしない。トウマはそんな彼女にまたしても声をかけるのであった。
「今のうちに」
「けれど」
「むっ、まずいぞ」
ここで兵士の一人が言う。
「敵の数が増えた」
「ロンド=ベルも本隊が到着したが。このままでは激しい戦いになる」
もう一人の兵士も言ってきた。
「早く安全な場所に」
「さあ」
「わかりました。けれど」
少女は観念したように兵士達に応えてきた。
「私はここで」
「だからですね」
またトウマが言った。
「このままここにいても」
ここで新たに出たハニワ幻人の攻撃がすぐそこに当たった。ビルが崩れる。
「うわっ!」
「きゃっ!」
幸い死人は出なかった。だが側のビルが崩れ逃げ惑っている人々の中に怪我人が出ていた。
「いかん、子供まで」
「君達、済まないが」
兵士達は子供が怪我をしたのを見て慌ててそちらに向かう。
「すぐに戻る。だが今は」
「我々も」
「ええ、わかってます」
トウマは分別のある顔でそれに応えた。
「子供の方が先ですね」
「そうだ、今は」
「申し訳ないが」
彼等はすぐに負傷した子供達のところに向かう。見れば傷は決して浅くはない。頭から血を流して泣いていた。
「あんな子供まで・・・・・・」
トウマは泣き叫ぶ子供の姿を見て呻く。
「しかもすぐそこまで来ていやがる。このままだと」
そして少女を見た。彼女の前に出る。
「あんたも一緒に逃げるんだ、皆と一緒に」
「いえ」
だがまたしても首を横に振った。
「ここはやっぱりあれしかないわ」
「あれしかって!?」
「雷凰」
少女は言う。
「あれしか」
「それ・・・・・・何だ!?」
「巨大ロボットよ」
少女はまた彼に答えた。
「お父様が作り上げた」
「わかった、じゃあそれに乗らせてくれないか」
トウマは反射的にそう少女に言うのだった。
「このままだと皆が」
「貴方が!?」
「そうなんだ。俺こう見えても経験豊富で」
そう少女に述べる。
「昔色々とやっていてさ。ロボットの操縦も」
「けれどあのロボットは」
しかし彼女はここで渋る。
「そう簡単に動かせるものじゃ」
「けれどこのままだと」
彼は頼み込むようにして彼女に言う。
「皆が」
「・・・・・・皆が」
「そうだよ、ロンド=ベルも来てくれてるけれどさ」
「おいニコルまずいことになってるぜ!」
そこでデイアッカが叫んでいた。
「一般市民のところにまでよ!」
「いけません、怪我をしている子までいるようですね」
「くっ、ならば俺が!」
イザークがそれを見てすぐに向かう。
「奴等を倒して来る!いいな!」
「ああ、援護は俺がさせてもらうぜ!」
ディアッカはすぐに前に出たイザークに言った。
「それでいいな!」
「ああ、頼む!」
「では僕も!」
そしてニコルも向かう。
「このままだと子供達まで」
「いや、待て」
イザークがここで言う。何かが起ころうとしていたのだ。
「どうしたんだ、イザーク」
「何か出るぞ」
イザークはディアッカに応える。
「あの家から」
「家からって何だ?」
「あれは」
三人は動きを止める。そこに何かが姿を現わした。それは黒い身体に赤いマフラーのマシンであった。
「何だ、マシンかよ」
ディアッカはそれを見て言う。
「今度は何処の研究所のだ?」
「少なくともうちじゃねえな」
甲児が答える。
「あれは」
「うちでもない」
竜馬も言う、
「あれは」
「あの」
その時マシンの中にはトウマがいた。そうして彼に声をかけているのはあの少女だった。
「いけるのね、本当に」
「あ、ああ」
トウマは彼女に答える。
「何とか。いけそうだ」
「わかったわ。じゃあ私の名前だけれど」
「ん!?そういえば」
トウマはここで今まで彼女の名前を聞いていないのを思い出したのだった。
「確か君の名前は」
「ミナキよ」
少女は言うのだった。
「ミナキ=トオミネっていうの。宜しくね」
「わかった、じゃあミナキさん」
「ミナキでいいわ」
また言う。
「それでいい?トウマさん」
「俺もトウマでいいよ」
トウマもそう返す。
「だから。俺もさ」
「わかったわ、トウマ」
ミナキは彼の言葉ににこりとしてきた。
「私もそれで」
「じゃあミナキ・・・・・・さん」
何だかんだでまださん付けであった。
「この雷凰の動きは」
「自然に動く筈よ」
ミナキは彼に言うのだった。
「貴方の動きに合わせて」
「わかった、けれど」
「けれど?」
「まさか俺がマシンに乗るなんてな」
彼はそのことにまず驚いていた。
「けれど俺の力で誰かを守れるのならそれで」
「ええ、御願い」
ミナキはトウマにまた言った。
「その力で」
「わかった。それじゃあ」
「おい、あんた」
ディアッカが彼に声をかけてきた。
「あれ、バスターガンダムってことは」
「知ってるか、俺はディアッカ=エルスマンだ」
彼は自分から名乗ってきた。
「ロンド=ベルのパイロットの一人だ」
「あんたがか」
トウマはディアッカの声を聞いて言うのだった。
「話は聞いてるぜ。かなり派手に活躍してるってな」
「おう、俺も名前が売れたもんだぜ」
「それでそこにいるのはイザーク=ジュールか?」
トウマは今度はデュエルに顔を向けていた。
「デュエルってことは」
「そうだ、御前も戦うのか?」
「ああ、そのつもりだ」
イザークに対して答える。
「俺だって皆を守りたい。それなら」
「それなら!」
今度は凱が彼に声をかけてきた。
「トウマといったな」
「ああ、あんたは」
「凱、獅子王凱だ」
凱も名乗ってきた。
「君も一緒に戦うんだな」
「そうだ、この雷凰で」
彼はそれ応えて言った。
「目の前にいる人達の為に。今から」
「よし!じゃあそのまま前に出るんだ!」
凱はトウマに対して言う。
「そのままだ。前に」
「前にか」
「ああ、そのまま前にだ」
また彼に言った。
「いいな」
「よし、わかった!」
トウマもそれに頷く。そうして前に出てそこにいるハニワ幻人達に向かう。
「うおおおおおおっ!」
拳と蹴りでハニワ幻人を倒す。しかし力不足か生き残っている幻人もいた。
「なっ、まだ生きているのか!?」
「トウマさん、危ない!」
ミナキがここで叫ぶ。
「ミナキさん!」
「あれを使って!」
「あれって!?」
「LIOHシステムよ」
ミナキはこう言ってきた。
「それを使えばいいから」
「LIOHシステムを」
トウマは不意にコクピットの中で何かを探しはじめた。
「それに何が」
「それを使えば雷凰は本来の力を解放できるの。だから」
「わかった。これか!」
ここで遂にそれを見つけた。
「これを使えば!」
「そうよ!さあ!」
ミナキがトウマに言う。
「そのシステムで!」
「よし!」
LIOHシステムを発動させた。すると雷凰の身体に何かが宿った。
「この力は・・・・・・」
「トウマさん、ライトニングフォールよ!」
「ライトニングフォール!?」
「ええ、それなら今の敵も!」
ミナキはまた言う。
「倒せるわ、だから!」
「わかった!」
雷凰が跳んだ。
「疾風迅雷!電光石火!」
彼はその中で言う。
「こいつで止めだ!」
「そう、その力!」
ミナキはまた彼に言った。
「その力ならやれるわ!それで皆を!」
「ライトニングフォール!」
雷凰の両手両足に光が宿る。その光を宿したままハニワ幻人に急降下を仕掛ける。
「ぶち抜けーーーーーーーーーーーーっ!」
そうして蹴りで屠った。白い光の蹴りで貫かれた敵はそのまま爆発して四散したのであった。
「これがLIOHシステムか」
「ええ、そうよ」
ミナキはトウマに答えた。
「この力こそが」
「すげえ、この力なら皆を・・・・・・うっ」
しかしここで異変が起こった。トウマは急に身体の力が抜けていくのを感じたのだ。
「なっ、何で急に」
「システムLIOHは確かに素晴らしい力を持っているわ。けれど」
「けれど?」
「その分利用者の気力体力を大きく消耗してしまうの」
それを今言うのだった。トウマに対して。
「だから使いこなすのはとても」
「けれどこれで」
しかしトウマは激しい疲れの中で言った。
「皆を助けられたんだ」
「ええ、それはね」
ミナキは彼に対してこくりと頷いた。
「けれど貴方は」
「いや、皆を助けられたから」
しかし彼は言う。
「これでいいさ。皆無事で」
がくりと崩れ目を閉じた。
「よかっ・・・・・・た・・・・・・」
そうして意識を失う。そこに凱がやって来た。
「貴方は」
「俺は獅子王凱」
彼はミナキにも名乗る。
「ロンド=ベルの一員でGGGの隊員でもある」
「貴方達がロンド=ベル」
「ああ、そうだ」
ミナキにまた答えた。
「無事で何よりだ。けれど彼は」
「今は休んでいるだけです」
ミナキは凱にそう述べた。
「ですから御心配は」
「わかた。ところでミナキさん」
「はい」
凱に応える。
「君はこれからどうするんだい?」
「えっ!?」
「見たところ君の家はかなり破損してしまった。避難先なら紹介するが」
「それなら私は」
「私は!?」
「一緒に戦わせて下さい」
自分から名乗り出てきた。
「一緒に!?」
「はい、この雷凰と一緒に」
そう言うのだった。
「私とこの雷凰ならきっと」
「しかし彼はどうするんだ?」
凱はあらためてトウマを見て言うのだった。
「彼は」
「それは・・・・・・」
「まあ今はいいな」
しかしここではそれ以上聞きはしなかった。
「今のところはな」
「すいません。御迷惑ばかりおかけして」
「何、心配は無用だ」
今度は大河が彼女に述べる。
「これもまた我々の仕事だからな。それでは諸君」
「はい」
「何でしょうか長官」
氷竜と炎竜が最初に彼に応えた。
「避難者の保護と警戒にあたってくれ。いいな」
「わかりました」
「それでは」
「そして彼等とそのマシンも回収しよう」
トウマ達を見て述べる。
「それでいいかな」
「はい」
ミナキが彼に答えた。
「それで御願いします」
「うむ。しかし新たなマシンの加入とはな」
「思わぬ誤算デス」
スワンが述べてきた。
「これは」
「確かに。しかしこれからのことを考えると」
「はい。彼の力もひょっとしたら」
「そうだな」
スワンの言葉に頷く。
「必要になるかも知れない。それが彼にとっていいのか悪いのかは別にしてだ」
「それでは大河長官」
ミナキが彼に言う。
「私達も御願いします」
「うむ。ではミナキ君、トウマ君」
「長官」
しかしここでボルフォッグが言ってきた。
「トウマ隊員は今は」
「おっと、済まない」
ここで彼が気絶していることを思い出した。
「そうだったな」
「はい」
「では彼には落ち着いてからまた離そう」
そういうことにした。
「それではな」
「ええ」
こうしてトウマとミナキがロンド=ベルに加わった。しかしここで話題になることがあった。
「そういえばだ」
鉄也が最初にそれに言及した。
「トオミネ博士というロボット工学の権威がいたな」
「そういえばそうだったな」
隼人が彼の言葉に頷く。
「最近亡くなられたそうだがな」
「残念なことにな。それでだ」
鉄也はここで言う。
「あのミナキっていう娘の名字はトオミネだな」
「あっ、そうだな」
甲児もそれに気付いた。
「ってことはだ」
「はい」
そこに当のミナキが来た。そうして彼等に言うのだった。
「トオミネ博士は私の父です」
「やはりな」
鉄也はそれを聞いて納得した顔で頷いた。
「そうだったのか」
「はい、父はあのマシンの開発に全てを捧げていました」
そう鉄也達にも告げた。
「けれど。その父ももう」
「ていうことはあれはあんたの親父さんの形見なんだな」
「そうです」
甲児の言葉に頷く。
「父はあのマシンが地球を、人類を救う為の力になって欲しいと考えていました」
「マジンガーと同じだな」
甲児はそれを聞いて自分と同じなのだと思った。
「俺のマジンガーもな。お祖父ちゃんと父さんが」
「そうですね。そういう意味では同じです」
ミナキも彼の言葉に頷く。
「雷凰も」
「しかしあのトウマという青年は違うな」
鉄也は今度は彼に対して言った。
「彼は確実に素人だ」
「ええ」
それは誰もがわかっていた。戦いを見れば明らかであった。
「あのまま戦ってもマシンの力を完全には発揮できはしないし」
「下手すると死ぬぜ」
鉄也と甲児がそれぞれ言った。
「気をつけねえとな」
「一番いいのはトレーニングだが」
大介が言う。
「僕はどうも他人に教えるのは苦手だな」
「俺もなんだよな」
大介と甲児はそれぞれ言った。
「生憎そういうのはな。苦手なんだよな」
「では俺が彼のトレーニングを進めよう」
鉄也が名乗り出て来た。
「それならいいな」
「おい、鉄也がやるのか」
竜馬がそれを聞いて驚きの顔を見せてきた。
「また大変なことになったな」
「大変なこととは?」
それはミナキにはわからないことであった。
「何なのでしょうか」
「いや、鉄也は戦闘のプロなんだ」
竜馬はそうミナキに説明した。
「マジンガーチーム、いやロンド=ベルの中でも特に訓練には厳しいな」
「それは当然だ」
鉄也本人もそれを認めてきた。
「戦いに備えてだ。真剣でなくてはならない」
「確かにな」
彼の言葉に隼人が頷く。
「そうでなくちゃ務まらない。これは事実だ」
「しかしよ、鉄也がやるとなるとな」
弁慶がここで言う。
「またきついことになるぜ」
「弱音吐いて出て行くかも知れないぜ」
「その時はその時だ」
鉄也はそう武蔵に返した。
「それまでの奴だったということだ」
「言い方はきついがそうだな」
隼人はそれに賛同してみせてきた。
「その程度に耐えられなければこれから先は生きてはいけない」
「そうですね」
ミナキもそれに頷く。
「やっぱり」
「あんたもそうだぜ」
甲児はミナキに対して言ってきた。
「私も!?」
「そうさ。多分これからまた洒落にならない位戦争が派手になるからな」
それはもう皆わかっていた。今が前哨戦に過ぎないことも。
「あんたも色々と腹を括っておいてくれよ」
「わかりました」
ミサキは甲児の言葉にまた頷いた。
「私も。お父様のマシンの為に」
「ああ、そうした方がいい」
甲児はここでは彼女の言葉に左程突っ込まなかった。
「まあ。これから先仲良くやろうぜ。戦争以外はな」
「は、はい」
甲児の顔が明るくなったのを見て彼女も笑顔になった。
「それじゃあ」
「何かと騒々しい部隊だけれどね」
「そこは適当に楽しむといいわ」
「よかったら適当以上に」
さやか、ジュン、マリアがそれぞれ言う。
「ただし。気をつけることが一つあるの」
「気をつけること?」
ひかるの言葉に顔を向ける。
「声には注意してね」
「声、ですか」
「ええ。何かと声が似ている人同士が多いから」
「そうなんですか」
「俺なんかは特にそうなんだ」
そうした話題になるといつも出て来る竜馬が述べた。
「どうにもそういう相手が多くて」
「はあ」
「貴女は大丈夫かしら」
ジュンが笑ってミナキに問う。
「あの彼も」
「ちょっとよくわからないですけれど」
しかし彼女はその問いに首を傾げるしかなかった。
「どうにも」
「そうよね。何か独特の声だし」
さやかはそう言って納得した。
「まあ気をつけておいてね。かなり混乱するから」
「そうですか」
「竜馬もそうだけれどあれだぜ」
また甲児が言う。
「ブライト艦長とかドモンとかすげえからな」
「そんなにですか」
「誰が誰かわかんねえ位だ」
これは事実である。
「俺だってまだ間違えるしな」
「俺だな、それは」
ここで宙が出て来た。
「俺とアムロ中佐だな」
「ああ」
「うわ、本当ですね」
ミナキは宙の言葉を実際に聞いて驚きの声をあげてきた。
「そっくりです」
「ね、そうでしょ」
ひかるがまた言う。
「他にもマリュー艦長とミサトさんとか」
「はい」
「あとステラちゃんとユリカ艦長とナタルさん。この辺りは気をつけてね」
「随分沢山おられるんですね」
ミナキはそのことにかなり混乱を覚えていた。
「何か」
「いやいや、一番すげえのはよ」
「凄いのは?」
また甲児の言葉に顔を向ける。
「あれだぜ。レイとシン」
「ザフトのですよね」
「ああ、鬼と竜の声でもあるんだよな」
「鬼と・・・・・・竜!?」
「そうさ。まあそこはユウナさんの特撮コレクション見て驚いてくれよ」
「はあ」
何が何だかわからないまま応える。
「わかりました」
「それじゃあミナキ」
マリアがミナキに言う。
「皆と親睦を深めに行きましょう」
「親睦!?」
「ロンド=ベルでは何かあるとすぐに宴会をするんだ」
大介がそう説明してきた。
「それに君にも参加して欲しいんだ」
「あっ、そうなんですか」
「飲んで騒いでデーーーーーーース!」
ジャックが陽気に言う。
「ミス=ミナキもここは朗らかに!」
「もう兄さんはいつもでしょ」
そんな兄をメリーがたしなめる。
「全く」
「そういえばジャックさんの声って」
「なっ、早速だろ」
甲児はここで言った。
「ピートやミスターの声とそっくりなんだよな」
「それもありますけれど」
彼女が驚いたのはそれだけではない。
「何か。宇宙海賊の声にも」
「宇宙海賊!?」
しかし甲児はその言葉に首を捻る。
「何だそりゃ」
「いえ、何となくですけれど」
ミナキも何故ここで宇宙海賊が出たかわからない。
「似てますね」
「HAHAHA、悪い気はしないデーーーーーーーース!!」
ジャックはその言葉にも陽気に返す。
「ミーもダンディに海賊に」
「何か話が妙になってきているな」
鉄也はジャックの言葉を聞いてそう述べた。
「まあいい。じゃあミナキ」
「はい」
「今は皆で楽しくな。パーティーと行こう」
「わかりました」
「それでミナキ料理はできるの?」
さやかが何気なく彼女に尋ねた。
「そこんところは」
「ええ、一応は」
「そう、できるのね」
皆それを聞いてにこりと笑った。
「じゃあいいわ。皆にその料理を」
「ええ、それでいいのでしたら」
ミナキは笑顔で皆に応える。
「御願いします」
こうしてまた一人であった。戦略兵器が揃ったのだった。何気にそうした人材も揃っていくのがロンド=ベルの変わったところであった。

第三話完

2007・5・22  
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