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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第二話 激戦のプレリュード

                  第二話 激戦のプレリュード

呉での戦いを終えたロンド=ベルは東京に移動していた。そこで裁判にかけられている三輪にかわって太平洋軍管区司令官となった岡と話をしていた。
「話は聞いているよ」
岡はまずは彼等にこう述べてきた。
「新しい敵だね」
「はい、どうやらインスペクターという勢力です」
「インスペクター!?」
岡はグローバルの言葉に目を動かしてきた。
「監査官かね」
「こちらではそう呼んでいました」
エイジが彼に述べる。
「バルマーではですけれど」
「ふむ、そうだったのか」
岡は彼の言葉を聞いて納得した。
「では我々も今後彼等をそう呼ぶか」
「はい」
ロンド=ベルの面々はその言葉に頷く。そうしてさらに話を進める。
「それでだ」
岡はまた言った。
「彼等の詳しいことはまだわかってはいないか」
「僕も話だけ聞いているだけで」
エイジが答えてきた。
「詳しいことは何も」
「わかった。では全てはこれからか」
「そうですね」
「ただ長官」
ここで大文字が述べてきた。
「何でしょうか」
「回収した彼等の機体からあることがわかりました」
「あること!?」
「はい、どうやら地球の技術が使われているようです」
「地球の」
岡はその言葉に目を向けてきた。
「それは一体どういうことでしょうか」
「それも詳しいことはまだわかっていません」
今度はサコンが答えた。
「まだ何もかもが」
「そうですか。それでは何事も今後ということで」
「ええ」
「残念ですが」
「わかりました、それでは我々の方でも調べてみます」
岡はそこまで聞いたうえでこう言うのだった。
「イゴール長官、大塚長官と力を合わせて」
「御願いします。それでは」
「うん、こちらもできる限りのことはさせてもらう。では君達も」
「はい、無論です」
大文字が答える。彼等は既に腹を決めていたのであった。
東京において今後のことを検討していた。豹馬はふとちずるに尋ねてきた。
「それでこれからどうなるんだ、俺達」
「とりあえずは日本に残るみたい」
ちずるはそう答えた。
「そこで一時待機して敵にあたるの」
「そうか」
「何や、そやったら暫く楽やな」
十三がそれを聞いて述べてきた。
「向こうから来てくれるやろしな」
「そうでごわすな」
大作が彼の言葉に頷く。
「今のところは」
「けれど気になりますね」
「バルマーがかい?」
日吉が小介に述べてきた。
「やっぱり」
「いえ、あのインスペクターです」
だが小介はこう返してきた。
「彼等が一体何者か。詳しいことは全くわかっていないので」
「それでごわす」
大次郎が彼のその言葉に応えて言う。
「一体何者であるのか皆目検討がつきもうさん」
「撃墜した機体からは戦死者も捕虜も得られなかったそうよ」
「逃げられたってわけか」
「ええ、多分ね」
めぐみは一平にそう述べた。
「脱出装置がいいらしくて」
「そうか。手懸かりはなしか」
健一はそれを聞いて残念そうに述べた。
「仕方がないな、それは」
「そうだよな。手懸かりが何もないっていうのは辛いけれどな」
「ああ。それでも戦うしかない」
健一は豹馬にも述べた。
「そのうち色々とわかるだろうしな」
「やれやれ。何か宇宙からどんどん出て来るぜ」
豹馬はそこまで聞いて大きく溜息を吐き出した。
「何か相手するだけでもあれだよな」
「そういえばだ」
神宮寺がここでふと気付いた。
「バルマーの中にはまだキャンベル星人もボアザンもいたな」
「彼等だけではありません」
それに麗が付け加える。
「ポセイダル軍もまた」
「そこにあれよね」
マリは顔を曇らせて述べる。
「バルマー自体も健在だし」
「その通りです。その戦力はまだまだあると思います」
猿丸が彼女に答える。
「彼等との戦いもあります」
「何だ、今までと大して変わらねえじゃねえか」
豹馬はそこまで聞いてまた溜息をついた。
「地球での戦いがやっと終わったって思ったらよ」
「戦力的にはこれからの方が大変なんじゃないかしら」
ちずるは悲観的なことを述べてきた。
「惑星間に跨る勢力ばかりだし」
「そうですね」
彼女の言葉に洸が同意して頷く。
「インスペクターにしろそれは間違いないようですし」
「何や、洒落ならん事態は一緒かいな」
「そうですね」
小介が十三に言う。
「結局は」
「では気合を入れる必要があるでごわすな」
「そうだな。俺達も気合入れて行くか」
神宮寺は大作の言葉に応えた。
「これからもな」
「そうですね。ところで」
「どうした?」
皆麗の言葉に顔を向けてきた。
「新たなメンバーが加わるそうです」
「新たな!?」
「はい、エイジさんのレイズナーを研究して新たなマシンを開発しまして」
「新たな」
「そうです。明日こちらに到着するそうです」
「それは有り難いな」
健一はまずはそれを素直に喜んだ。
「今は一人でも人手が必要だからな」
「そうよね。ブルーガーだって大忙しだし」
マリが言う。
「一人でも多くいたらそれだけ助かるわ」
「マリの言う通りだな。けれど」
「何?」
マリは洸の言葉に顔を向けてきた。
「何にしろ大所帯なのは変わらないんだな」
「けれどそれがいいんじゃない」
まぐみが彼に言う。
「賑やかになって」
「かなり個性派も多いしね」
「けれどそれもまたよしでごわす」
日吉と大次郎は笑っていた。
「そうだな。メンバーは多い方が何かといい」
一平も笑って述べる。
「何かと頼りになるしな」
「そうだな。しかしこうして皆を見ていると」
「見ていると?」
洸は今度は健一の言葉に顔を向けた。
「何かありますか?」
「いや、ハイネル兄さんのことも思い出すんだ」
「プリンス=ハイネルのことをですか」
「ああ。兄さんは今でもきっと戦っている」
彼は上を見上げて言う。まるでそこにハイネルがいるかのように。
「だから俺達も」
「そうよね。だから」
「どんな敵が出て来ても負けちゃいられないよな」
マリと洸がまた言う。
「俺達は」4
それだけは確かだった。彼等は負けられない。それをまた確認するのだった。
暫くしてすぐにそのインスペクターの軍勢が東京湾に現われてきた。今度はこの前の倍以上の戦力があった。
「敵も本気だってことでしょうか」
アーサーがそれを見てタリアに問う。
「この数は」
「どうかしら」
しかしタリアは彼のその言葉には懐疑的であった。
「まだ違うかも知れないわよ」
「というとインスペクターはまだ我々を探っていると」
「私だったらそうするわね」
タリアはここで自分に例えてきた。
「一回の戦闘だけで判断したりはしないわ」
「そうですか」
「ええ、それに」
彼女はさらに言葉を付け加えてきた。
「自分でも見ておきたいわね」
「自分でもというと」
「上級指揮官がいる筈だけれど」
「上級の」
「そう、それも司令官クラスね」
彼女はそう呼んでいた。
「メイリン、ちょっといいかしら」
今度はメイリンに声をかける。
「敵について調べてみて」
「何をですか?」
「敵の機体の種類をまずは」
そう言う。
「調べて。新しい機体がいないかしら」
「はい・・・・・・あっ」
すぐに声があがった。
「いたのかしら」
「はい、敵の後方です」
そこにいる一体をコンピューターで指し示してきた。
「これです。何か恐竜みたいな機体です」
「これね」
「これは全く新しい機体です」
ここでルリも言ってきた。彼女はそのハッキングを使ったのである。
「インスペクターの兵器の中でもかなり性能が高いです」
「じゃああれね」
タリアはそれを聞いて確信したように述べてきた。
「敵の司令官は」
「聞こえているか、地球の諸君」
その恐竜の如き機体から声がしてきた。
「あっ、向こうから来ましたね」
アーサーがそれを聞いて言った。
「何か話が早いですね」
「ちょっとアーサー」
タリアはその言葉には突っ込みを入れてきた。
「はい?」
「それは少し違うんじゃないかしら」
苦笑いを浮かべて言う。
「話が早いかどうかは」
「あっ、そうですか」
「そうですよ。そんなこと言ってるとアーサーさん」
メイリンが少し意地悪に笑って言ってきた。
「913の人が来ますよ」
「うわ、何か凄く嫌そう」
アーサーは本当に嫌そうな顔になった。
「その数字嫌いなんだよな」
「あら、何かあったのかしら」
「いや、何か天敵っぽくって」
何故かこう言う。
「その数字に関連する人間が」
「何か話がわからないわね」
タリアもそれがどうしてかわからず首を傾げさせた。
「何が何なのか」
「まあそれは置いておいて。話がはじまりましたよ」
そうインスペクターの方に話を戻すのであった。見ればその司令官が名乗っていた。
「私はインスペクターの司令官の一人ウィガジである」
「ウィガジ?」
「そうだ。以後覚えておいてくれ給え」
まずは丁寧に言葉を返してきた。
「今回は諸君に話を伝えたくてここまで来た」
「ああ、その前によ」
甲児がここで彼に問うてきた。
「何だ?」
「この前の呉のことだけれどよ」
「あの港町でのことか」
「ああ、あれあんた達だよな」
「そうだ」
甲児の問いに何も隠すことなく答えてきた。
「それが何か」
「何かじゃねえよ。ありゃ何だ?」
顔を顰めて抗議してきた。
「いきなり戦闘なんてよ。随分と物騒じゃねえかよ」
「諸君等の戦力を確かめたのだ」
「戦力を!?」
「そうだ。バルマー、そして宇宙怪獣を退けた諸君の実力をな。確かに素晴らしい」
それもまた素直に認める。
「諸君の戦闘力は傑出している。あまりにも」
「それで何が言いたいのかな」
今度は万丈が彼に尋ねてきた。
「どうにも上から下に対して言っているような口調が気になるんだけれどね」
「我々は諸君等を監視しに来た」
「監視!?」
「そうだ、君達はいずれその力によって宇宙にとって大きな災いとなる」
彼はそうロンド=ベルに告げてきた。
「我々はそれを無視できない。従って諸君等を監視下に置くことにしたのだ」
「おいおい、またえらく一方的だな」
宙がそれに突っ込みを入れる。
「俺達はそこまでされるようなものかよ」
「そうだ、だからこそだ」
彼はまた言う。
「我々の監視下に置く。素直に受諾することを望む」
「それはかなり筋が通らないんじゃないかな」
万丈が言ってきた。
「筋が?」
「そうさ。それを言うのならバルマー帝国はどうなるんだい?」
「彼等にしても監視対象だ」
これもどうやら事実であるらしい。それはウィガジのはっきりとした口調からわかった。
「彼等もまた宇宙にとっての災いなのだから」
「で、彼等はそれに従っているかい?」
「いや」
これについても隠しはしない。
「それはない。相変わらずだ」
「だろうね。そうだと思ったよ」
予想していたので大いに納得した万丈であった。
「さしづめ彼等とも戦争中なのかな」
「それについては答えるつもりはない」
いささか官僚答弁であった。
「こちらとしては宇宙の秩序の為に動いているのだ」
「その秩序の為に地球をだね」
「そうだ。返答は如何」
「それなら答えは決まっている」
グローバルが答えてきた。
「既に地球としての意志は決まっている」
「我々に関してか?」
「いや、全ての勢力に関してだ」
彼はそうウィガジに答えた。
「我々を脅かさんとする勢力には断固として戦う」
「我々は戦いに来たのではないが」
「ものは言いような」
ミサトは顔を顰めさせて口調をシニカルにさせて言ってきた。
「要は私達を支配下に置きたいのよね。見え見えなのよ」
「方弁ももう少ししっかりとしたら?」
ミドリも言う。
「全く」
「それで受け入れられないとどうなの?」
ミサトはまた彼に問うた。
「話し合い?それとも」
「残念だ」
それに対するウィガジの返事はこうであった。
「我々としてもこうはしたくないのだが」
「つまりは開戦だね」
万丈もそこから先はもう言わせない。
「それじゃあ」
「では我が軍はこれより攻撃を開始する」
ウィガジは今言った。
「それでいいな」
「じゃあ呉でのあれは何だってんだよ」
また甲児が言い返す。
「いいからさっさと来やがれ」
「わかった。それでは総員攻撃だ」
甲児の言葉を受けて彼は自軍に攻撃命令を出した。
「いいな」
「総員迎撃用意」
グローバルはそれを見て指示を出した。
「いいな」
「了解」
「やっぱりこうなったわね」
彼等は口々に言う。
「ミネルバ、前へ」
タリアはミネルバを前に出すように指示を伝えた。
「海岸に沿って防衛線を張るわよ」
「わかりました」
アーサーがそれに頷く。
「それじゃあ」
「あれ、じゃあ防衛戦なのか、今回」
シンはそれを聞いてすぐに察しをつけてきた。
「どうせなら派手にいつもみたいにいきたいんだけれどな」
「いや、今回はこれでいい」
だがその彼にレイが答える。
「東京防衛の必要があるのだからな」
「それもそうか」
「安心しろ、敵は必ず来る」
そう言ってシンを安心させる。
「俺達は待っていればいい」
「まあ来た奴は全員海に叩き落してやるぜ」
シンは最初からそのつもりであった。
「来やがれ、ゲストでもインスペクターでもな」
「おそらくゲストも来る」
レイはそう読んでいた。
「果たして彼等とインスペクターの関係が鍵になるな」
その彼等の側では防衛を不服に思う者達がいた。
「おいおい、攻めなきゃ意味ねえだろうが!」
「滅殺!!それしかないって!!」
「・・・・・・前に行きたい」
「あんた達もちょっとは落ち着きなさいよ」
ファがオルガ、クロト、シャニに注意する。
「騒いでも何にもならないわよ」
「つってもよお!敵を待つなんてよお!」
「僕達の性分に合わないんだよね!」
「・・・・・・殺す」
「どっちにしろ敵はすぐに来るわよ」
フォウがそう言って宥めてきた。
「安心するといいわ、それは」
「そうか。じゃあ安心して」
「撃墜してやる!」
「・・・・・・どいつもこいつも」
「わかってると思うが俺達は撃つなよ」
カミーユが彼等に言う。
「流石に後ろから撃たれたらやばいからな」
「派手な援護射撃期待しな」
「カミーユの分も残しておいてあげるからさ」
「安心しろ」
「そうさせてもらうよ。しかし」
カミーユはここであらためてインスペクターの軍を見た。そのうえで述べる。
「地球の兵器に似ているな」
「そうね」
エマがカミーユの言葉に頷く。
「どうやら。私達の技術を使っているみたいね」
「何時の間に」
「若しかしたら既にスパイを送っていたのかも」
エマはそう推察を及ばせてきた。
「それだと説明がつくわね」
「そうですね」
カミーユもそれに頷く。
「それなら」
「ええ。だとするとかなり手強いわよ」
彼女は言う。
「実際に性能が高い兵器だし」
「だからよ、ここは!」
また三人が騒ぎ出した。
「いっちょ派手にだな!」
「抹殺しちゃおうって!」
「・・・・・・攻める」
「だからそれは駄目なのよ」
ファがまた三人を注意する。
「どんどん来てるからそれを相手にしていて」
「ちぇっ、面白くないなあ」
「だるい」
彼等はそれを聞いて不満な顔を見せる。彼等にとっては護りに徹するというのは性に合わないことなのだ。根っからの攻撃的な性格故である。
「ほら、言ってる側から」
エマがここで注意を敵に向けさせる。
「来たわよ」
「よっしやああ!」
オルガがその敵達を見て喜びの声をあげる。
「まとめて消し飛ばしてやるぜ!」
「さあ来るんだよ!」
クロトはその好戦性を剥き出しにしていた。
「どいつもこいつもさあ!」
「前にいるなら」
シャニもその目を血走らせている。
「死ね」
「それにしても」
エマは早速血気にはやる彼等を見て言う。
「彼等って戦えればそれでいいのね」
「そうかも知れませんね」
カミーユがそれに頷く。
「彼等を見ていると」
「まあそれでも頼りにはなるわ」
だがそれは事実であった。
「その型破りの戦闘力はね」
「はい」
「カミーユもよ」
そのうえでカミーユにも言う。彼は言うまでもなくロンド=ベルのエースの一人だ。
「今回も頼むわね」
「やるだけはやります」
いささか謙虚にも取れる言葉であった。
「それでいいですよね」
「ええ、それで御願いするわ」
こうしてカミーユもメガランチャーを派手に放つことになった。東京湾での戦いではロンド=ベルは防御に徹することになった。
これは成功だった。それにより彼等は敵を抑え東京への侵入を許さなかった。後方で指揮を採るウィガジはそれを見て断を下すのであった。
「頃合だな」
「司令、それでは」
「うむ、撤退だ」
そう部下達に告げる。
「新たな戦闘データは手に入ったな」
「はい」
部下の一人が彼に答えた。
「それは御安心下さい」
「前の戦いよりも精密なデータが」
「ならいい」
その報告に満足して頷く。
「それではな」
「はっ」
「それでは」
「脱出ポッドを回収して全機撤収だ」
彼はそう指示を出す。
「いいな」
「了解」
「わかりました」
皆それに頷く。そうして速やかに撤退するのであった。
撤退自体はあっという間であった。東京湾から離れていく。ロンド=ベルの面々はそれを見送るだけであった。積極的に追おうとはしなかった。
「また腕試しだったのかね」
勝平は消えていく彼等を見てこう言った。
「何かしみったれた奴等だな」
「慎重と言った方がいい」
そんな彼に宇宙太が言。
「敵を知り己を知らばというだろう?」
「!?何だその言葉」
勝平がそんな言葉を知る由もない。
「はじめて聞いたけれどよ」
「中国の言葉よ」
恵子が呆れた声で彼に突っ込みを入れる。
「相手も自分も知ればそれで戦争をしても間違いはないってことよ」
「何だ、そういう意味かよ」
「御前これいつも聞いてないか?」
宇宙太も呆れる顔で彼に問う。
「何で知らないんだよ」
「悪い悪い」
悪いとは思っていない。
「今覚えたからよ、安心してくれ」
「ホントかしら」
恵子はそれを察して首を捻る。
「けれど頼むわよ。こっちを調べてきてるんだから」
「弱点を衝かれるってことか」
「その通りだ」
宇宙太はその言葉に頷く。
「だからだ。いいな」
「ああ、それならわかったぜ」
こう言うとわかるのだった。
「それじゃあよ」
「けれど。インスペクターよね」
恵子はそこに注目する。
「どうにもこうにも。敵が減らないわね」
「そうだな。ただガイゾックみたいに無差別に攻撃をする相手でもないようだな」
宇宙太はそれを冷静に見抜いていた。
「それだけは安心していいな」
「そうね。人間爆弾なんかはないみたい」
「ああ、インスペクターもゲストもそれはないよ」
エイジが三人に言ってきた。
「彼等は一般市民を巻き込む戦いはしないんだ」
「そうですか、よかった」
恵子はそれを聞いて安心した。
「そんな相手ってやっぱり嫌ですからね」
「ただしだ」
だがここでエイジの顔が曇った。
「バルマー外宇宙方面軍、そしてその主力であるグラドス軍は違う」
「というとつまり」
「そうだ、彼等はむしろ一般市民を攻撃対象とするんだ」
そう勝平にも答える。
「だから。戦う時には気をつけてくれ」
「随分と嫌な奴等だね」
沙羅はエイジの今の言葉に顔を顰めさせた。
「あのユーゼス=ゴッツォを思い出すよ」
「そうだな」
亮は沙羅のその言葉に頷いた。
「正直戦いたくはない相手だ」
「けれどそいつ等も来るんだよね」
雅人は沙羅に比べると少し弱気な感じだった。
「だとしたらこれからは」
「簡単な話だ」
しかし忍はいつもの調子であった。
「来やがったら全員ぶっ殺す。それだけだ」
「ああ、その通りだ」
エイジの答える顔は微妙に影がさしていた。
「グラドス人は間違っている。自分達こそが偉いと思っているから。十二支族の誇りが彼等を間違った方向に進ませているんだ」
「そうか」
「そうなんだ。だから彼等は」
「けれどよ」
忍は苦い顔をするエイジに問うてきた。
「あんた、そのグラドス人だったよな」
「うん、その通りさ」
苦い顔で彼に言葉を返す。
「地球人とのハーフだ。僕はそんなグラドスに嫌気がさして」
「ここに来たってわけか」
「彼等はバルマーの中でも特に憎まれている」
それも道理であった。高慢で居丈高ならば自然とそうなる。
「彼等がそれに気付いてくれればいいんだけれど」
「少なくともあんたは気付いたよな」
「ああ」
忍の言葉に頷く。
「誰かなんて関係ねえよ。気付くか気付かないかだ」
彼にとってはそうだった。
「それだけのことさ」
「有り難う」
「礼なんていいさ。ところで御呼びだぜ」
「あっ、うん」
また忍の言葉に応える。
「帰還だ。まあ戦艦の中でゆっくり話そうぜ」
「わかったよ。それじゃあ」
こうして戦争を終えたロンド=ベルは一旦は戦争から心を離した。しかしそれはほんの一瞬に過ぎなかった。また一つ勢力が現われたからであった。
「えっ!?」
「まさか」
それを聞いて誰もが驚いた。それは当然のことであった。
「邪魔大王国が」
「まさか」
「だがそのまさかだ」
大文字が驚く一同に説明する。
「今報告が入った。また九州に再び姿を現わしたのだ」
「九州に!?」
「じゃああのヒミカがまた」
「いや」
しかし彼は宙のその言葉には首を横に振った。
「女王ヒミカも三将軍も存在してはいない」
「では一体」
ククルが大文字に問うてきた。
「何者が」
「それについてだが」
突如としてモニターが開いた。そこに司馬博士のコンピューターが現われる。
「父さん!」
「宙、大変なことがわかった」
彼はそう息子に告げてきた。
「大変なこと!?」
「そうだ、銅鐸に書かれていた恐怖の王者だが」
「闇の帝王じゃなかったのか」
「違う。また別の存在だったのだ」
司馬博士はそう息子に語る。
「それは竜魔帝王」
「竜魔帝王!?」
「それこそが真の恐怖の王者だった。今それが復活したのだ」
「そんな、それじゃあ」
宙はそれを聞いて言う。
「また地底の勢力が」
「そうだ。そしてどうやら他にも地底の勢力がいるようだ」
「何っ!?」
皆大文字のその言葉にまた驚きの声をあげる。
「まだ地底の勢力が」
「それは一体」
「詳しいことはまだわかってはいない」
一旦そう区切る。だがさらに言うのだった。
「しかしだ。彼等は既に動きをはじめた」
「では一体何処に」
「既に東京にまで迫ろうとしているらしい。諸君等には悪いが」
「おっと、そっから先は言う必要はないぜ」
宙が言ってきた。
「こっちだってそれが仕事なんだからな」
「そうか、済まないな」
「何、じゃあこっから迎撃だな」
「うむ。では全軍」
「よしっ」
「じゃあ」
皆大文字の言葉に頷く。
「迎撃態勢だ」
「よしっ!」
こうして皆迎撃態勢に入る。また新たな勢力との戦いがはじまろうとしていた。
その頃阿蘇の地下深くでは。巨大な禍々しい顔の男が緑の肌をした妖しい美女を前に話をしていた。
「フローラよ」
「はっ」
フローラと名前を呼ばれたその美女は男に一礼して応えた。
「わかっております、我が主竜魔帝王よ」
「わかっているか。では任せたぞ」
「わかりました」
フローラは帝王の言葉に応えて頷いた。
「今からすぐに進撃を」
「邪魔大王国の戦力は全て手中に収めているな」
「無論です」
フローラはまた応えた。
「そちらも抜かりなく」
「ならばよい。手に入れなかったのはあのククルという女と三将軍だけか」
「あの者達は不要でしょう」
フローラは彼にそう告げた。
「どのみち」
「ふふふ、確かにな」
帝王はフローラのその言葉に笑って頷いてみせた。
「所詮は無能者共。いらぬわ」
「では今の戦力だけでよいな」
「はい。ところで」
「わかっている」
またフローラの言葉に応える。
「来ているな、鬼達が」
「はい」
今度はフローラが頷いた。
「どうされますか?」
「今はいい」
しかし彼はそれに関しては今は不問とした。
「今はな。むしろだ」
「むしろ?」
「手を組んでやってもいい」
笑ってそう述べるのだった。
「今のうちはな」
「それでは今後は」
「状況次第だ」
彼はまた言った。
「不利になればそれなりのことはする。わかったな」
「はっ、それでは」
「俺に任せていればいいのだ」
「では私は」
「そうだ。御前は俺の可愛い腹心」
笑ってそう声をかけるのであった。
「今もこれからも頼むぞ」
「わかりました。それでは」
こうして彼等の話は終わった。そうして彼等も独自の動きに入るのであった。

第二話完

2007・5・19


 
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