久遠の神話
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第三十七話 人との闘いその二
「できるかい?それは」
「できなければ」
それでだ。どうなるかというのだった。
「僕の負けですね」
「負ければ戦線離脱だろうな」
この巨大な炎の柱を受ければだ。そうなるというのだ。
「確実にな。ただな」
「ただ、ですか」
「まあ死ぬことはないさ」
それは大丈夫だというのだ。
「戦線離脱で済むさ」
「僕を殺しはしないんですか」
「殺人ね。結果としてそうなるよな」
「はい、戦いの中で僕が死ねば」
「それは好きじゃないな」
戦死、それはだというのだ。
「俺は戦うにしても活人剣なんだよ」
「殺人剣じゃないんですか」
「はじめに会った頃の暴力教師な」
炎の柱は一本ではなかった。上城の周りを円を描く様にして動きそのうえで。
幾つも出していた。中田も渾身の力を出していた。
そうしながらだ。彼は言うのだった。
「いたよな。俺が再起不能にした奴」
「自分の生徒に暴力を振るって笑っていましたよね」
「ああいうのはな。嫌いなんだよ」
暴力、それはだというのだ。
「剣道に暴力を乗せるっていうのはな」
「否定されるんですね」
「例え戦うにしても」
それでもだというのだ。剣士同士の戦いにしても。
「殺人剣じゃないんだよ、俺の剣は」
「それじゃあ」
「暫く動けなくはなるだろうさ」
中田自身の攻撃、それによってだというのだ。
「けれどそれでもな」
「死ぬことはないというんですね」
「これ位で死ぬかい?君は」
「そのつもりはありません」
炎に囲まれながらもだ。こう返す上城だった。
「それは」
「だよな。君もこれ位じゃな」
死ぬ筈がないとだ。中田もわかっていた。
「剣士だからな」
「そうなりますね」
「剣士はしぶといんだよ」
その剣士の話だ。
「けれどそれでもな」
「中田さんは勝ちたいんですね」
「何度も言うけれどな。俺にもやりたいことがあるんだよ、いや」
「いや?」
「適えたいことがあるんだよ」
だからだというのだ。
「俺は戦って最後まで生き残るからな」
「その為にですね」
「ああ、恨みっこなしだぜ」
中田は上城に無数の炎を浴びせながら話すのだった。その炎達に対してだった。
上城は思い切った行動に出た。それは。
まず地面に刀をまた突き刺した。それによって。
周囲に無数の水柱を起こさせた。それと共に。
今度は刀を高々と上に向けて掲げた。するとだった。
雨が降り自慢の水柱と一緒にだった。中田の炎の柱達を上と下から攻めた。それにより。
中田の炎は水柱と雨の中に消えていった。水に相殺されたのだ。
己の炎がそうして相殺されるのを見てだ。中田は笑ってこう言った。
「やれやれだな」
「そう仰いますか」
「ああ、地面からと空からか」
「水を使わせてもらいました」
「まさか雨まで降らせるなんてな」
やや苦笑いになって言う中田だった。
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