ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者
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第五十九話 開始
時間は刻々と過ぎて行き、ゲームの開始時刻となった。
その後のルールの追加として今回のゲームは短期決戦方式となった。制限時間は三時間。つまり時間を多くかけられるほど悠長にしている暇は無い。リアスが椅子から立ち上がり、気合いの入った表情で言う。
「指示はさっきの作戦通りよ。イッセーと小猫、祐斗とゼノヴィアで二手に分かれるわ。イッセー達が店内からの進行。祐斗達は立体駐車場を経由しての進行。ギャスパーは複数のコウモリに変化しての店内の監視と報告。進行具合によって、私と朱乃とアーシアがイッセー側のルートを通って進むわ」
全員が耳に種子型の通信機を付ける。そして作戦が決行されると闇慈も行動を開始した。
闇慈は『遊撃手』と言う事でそれぞれのサポートを任された。闇慈は禁手を発動させ、デパート内を巡回し始めた。
「さてと・・・敵はどう動く?」
『リアス様のビショップ一名、リタイヤ』
開始早々、リタイヤの放送が館内に響いた。
(ビショップ?アーシアは朱乃先輩と一緒に居たはず・・・だから、ギャスパーがやられたの!?幾らなんでも早すぎるよ・・・)
闇慈が心の中で溜め息を付きながら飛んでいると、争っている光景が目に入った。それは一誠と匙だった。そして匙の黒蛇のような物が、一誠の篭手に張り付いていた。恐らく修行の成果でアブソーブション・ラインが進化したのだろう、以前と形が異なっていた。
(匙君のアブソーブション・ラインがイッセーの篭手に張り付いている!!あれじゃ力を倍増しても吸い取られてしまう!!)
闇慈は急降下で勢いを付け、その反動を乗せたデスサイズ・ヘルの斬撃で黒蛇を叩き斬った。
「俺のラインが!?」
匙が動揺している間に闇慈は鳩尾に蹴りを叩き込み、一誠から離した。そして闇慈は禁手を解除し、一誠の隣に姿を現した。
「大丈夫か?イッセー」
「悪ぃ、闇慈。助かったぜ」
「援軍か・・・よりにもよって黒神がくるなんてな」
匙は闇慈が加わった事で苦虫を噛んだ様な表情を浮べていた。しかし一誠が闇慈に頼み込んだ。
「闇慈。サジとはサシで戦わせてくれ!!」
一誠の迷い無い眼光を見ると闇慈は頷いた。
「・・・分かった。お前の修行の成果、あいつに見せてやれ!!」
闇慈は小猫の元に急いだが、勝負はもう付いていたみたいだった。匙の後輩らしい女子が片膝をついていた。そして小猫は猫又の状態だった。
「・・・気をまとった拳であなたに打ち込みました。同時にあなたの体内に流れる気脈にもダメージを与えたため、もう魔力を練る事は出来ません。更に言うなら内部にもダメージは通ってます。・・・もう、あなたは動けません」
(内部破壊を極意とした小猫ちゃんの力・・・!!)
小猫が言い切った瞬間、後輩の体は緑の光に包まれ、消えてしまった。
「自分の力を受け入れたみたいだね?小猫ちゃん」
「・・・闇慈先輩のお陰です。そして私はヘルキャットを目指します!!」
その心意気を聞いた闇慈はコクッと頷きここは大丈夫だと感じ、駐車場を目指すために踵を返し、小猫に呼びかける。
「ここは小猫ちゃん達に任せるよ。僕は祐斗達の元に向かうから何かあったら通信機で連絡して?小猫ちゃん」
「分かりました。先輩・・・気をつけてください」
「小猫ちゃんもね」
闇慈はそのまま翼を具現させ、飛び立つとそのまま禁手を発動させて姿を消した。
~~~~~~~~~~~~
闇慈が駐車場を飛んでいるとゼノヴィアと祐斗がソーナの眷属と戦っているのが目に見えた。そしてゼノヴィアは『聖』のオーラを纏ったデュランダルと一誠から預かったアスカロンでオーラをソーナのクイーン、『真羅椿姫』に向かって放った。しかし椿姫は何やら『鏡』のようなものを取り出すと、聖のオーラが『鏡』に吸い込まれ、そしてそれが割れると逆の『魔』のオーラとなり、威力が倍となってゼノヴィアに襲い掛かった。ゼノヴィアは吹き飛び、鮮血が飛び散った。
(何だ!?あの鏡は?攻撃を反射させていた。・・・真羅先輩のセイクリッド・ギアはカウンター系統か?考えている場合じゃない!今は祐斗とゼノヴィアを助けないと!!)
日本刀を持ったソーナのナイト、『巡』がゼノヴィアに止めを刺そうとしたが、闇慈は禁手を解除し、横からデスサイズ・ヘルで受け流し、それを許さない。巡は闇慈に阻まれた事に驚くと、残りの二人の元に下がった。
闇慈も素早くゼノヴィアを回収すると隠れている祐斗の元にやって来た。
「ゴメン、祐斗。バックアップが遅れた」
「来てくれただけでもありがたいよ、闇慈君。ソーナ会長の狙いは僕たちだったみたいだ」
「聖剣は驚異だからね・・・読みが甘かったか。ゼノヴィアも戦える状態じゃない。そしてカウンターを使う人がいるみたいだね?祐斗」
「うん。椿姫先輩を含めた2人いるよ」
闇慈はしばらく考え、祐斗に隠れているように指示した。聖剣使いの一人がやられた今、祐斗は貴重な戦力。そう捉えたのだろう。闇慈は死神の姿でデスサイズ・ヘルを右肩に担ぎながら、ソーナ眷属の3人と向き合った。
「さてと・・・ゼノヴィアの敵を討たせてもらいますよ?真羅先輩方」
「黒神闇慈。厄介な敵が現れましたね。由良、巡。彼の力を侮っては行きません!!全力でいきますよ!!」
「「はいっ!」」
椿姫は長刀を構え、巡は日本刀を、そしてルークの由良は格闘の構えを取った。闇慈はそれを見ると『真紅の魔眼』で威圧し始める。
「さて・・・誰から『死』の恐怖を味わいたい?」
闇慈のドスの効いた声を聞いたソーナ眷属3人は冷汗をかき、少し後ずさりをしたが、すぐに心を持ち直した。闇慈は女性には優しいが仲間がやられた為、容赦しないみたいだった。
そして初めに動いたのは椿姫だった。長刀で闇慈に斬りかかったが、デスサイズ・ヘルでそれを防ぐ。
「かなり太刀筋が鋭い。だが、見切れないスピードでもない」
「私たちを忘れています!」
由良が格闘を仕掛けてきたが『魔眼』でそれを見切った矢先、巡が背後から斬りかかるがそれもデスサイズ・ヘルで防ぐ。
しばらくソーナ眷属3人の猛攻を防ぐと闇慈は一旦距離を取った。
「中々の連携ですね。攻撃する暇がなかった」
「貴方に褒められると嬉しいですね。このまま行きますよ!!」
椿姫の言葉に他の二人も頷くと闇慈に仕掛けようとしたが・・・
「だが・・・もう貴女達は動けません」
闇慈の言葉と同時に金縛りにあったかのように3人は動けなくなった。
「何が!?」
「動けない!!」
「あ、足が・・・!?」
由良、巡、椿姫の順に声を発し、足を見てみると自分自身の『影』が足首に絡みつき、足が動かせなかった。闇慈がシャドゥ・ルーラーで影を密かに操り、足に絡ませたのだった。
「俺が貴女達を見ている限り、シャドゥ・ルーラーの束縛から逃れられることは出来ない。ここから魔力を使った技で一掃出来るかもしれないが、椿姫先輩のカウンターが厄介だと思うが?」
「流石ですわね。私のセイクリッド・ギア[追憶の鏡]『ミラー・アリス』。鏡を割った攻撃を倍増させ、そのまま相手に跳ね返すセイクリッド・ギアです」
「それはさっきゼノヴィアをやっていた時に知っている。これで・・・止めだ」
闇慈は知っておきながら何故か飛翔刃を椿姫に放った。
「っ!?何故私に魔力の技を!?跳ね返します!!ミラー・アリス!!」
椿姫の叫びと共に巨大な鏡が出てきたが・・・その飛翔刃は鏡の前で消えてしまった。
「えっ!?」
そして闇慈も自分の視界から消えていた。そして・・・
「この瞬間を待っていたんだ!!」
「背後!?」
闇慈は椿姫の背後からダークネス・フィストを叩き込もうとしたが・・・
「やらせません!!」
「ぐっ!!」
ナイトの巡がそれを阻む。背後に移動した時にシャドゥ・ルーラーが一時的に解除されたことを巡は見逃さなかった。闇慈はすぐに距離を取る。
(あの隙を見逃さなかったか・・・)
「副会長!!ここは私達が食い止めます!!」
「会長の元に行って下さい!!」
「しかし!それでは貴女達が!!」
由良。巡の声に椿姫が声を上げ、批判するが・・・
「今ここで貴女を失えば私達が不利になります!!」
「私達で囮になります!!」
二人の意気込みに、頷くとその場を離脱した。闇慈はそれを追おうしたが二人がそれを阻む。
「「貴方の相手は私達です!!」」
「こっちにも時間がないからな・・・痛みを知らずに終わらせてやる」
闇慈は由良との距離を一瞬で縮めると黒いオーラを纏った右手で頭を掴んだ。そしてそのまま自分の魔力を由良の頭に注ぎ込み脳内に抑圧をかけ、眠らせた。それまでの動作、約1,5秒。そして由良は緑の光となって消えた。
「由良!!」
巡は由良が一瞬でやられたことが分かると闇慈の死神姿に恐怖を抱いた。闇慈はすぐに巡にターゲットを変えると、持っていた日本刀を動揺している間に叩き落した。そして動きを縛る。
「君は確か・・・巡だったな?君にはさっきのルークとは違った落とし方で落としてやる」
「ひぃ・・・な、何をするの?」
「君には『夢』を与えてやる・・・[催眠眼]『チャーム』!!」
闇慈の真紅の瞳には何時もの逆五芒星ではなく、木の輪廻模様が刻み込まれた。そしてそれを見た巡は眼の光が無くなり、表情が恍惚となった。そしてそのまま地面に倒れ込むと目を閉じ寝息を立て始め、由良同様に光に包まれ消えた。それを見ていた祐斗は闇慈の元に駆け寄った。
「闇慈君。彼女に何をしたの?」
「彼女は『夢』を見ている。自分の『欲望』の夢を」
「欲望の・・・夢?」
「早い話。催眠術みたいなものだ。じゃあ俺は行く。何かあったら連絡を」
「分かった気をつけてね?」
「ああ!!」
闇慈は翼を具現させるとそのまま飛び立った。まだ勝敗の行方は分からない。
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