インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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過去話~懐かしむ思い
「…………………」
俺は唖然としていた。原因はさっきのディスクに入っていた映像―――篠ノ之束がISについて日本政府に発表している映像だ。
デモンストレーションも何もない、ただのスペック紹介に偉そうな態度。ただ発表していた。そして封筒の中には彼女についてこの組織《認識されない抵抗》が調べた資料なども閲覧する。
(………ISが認められなかった原因って、ほとんど自業自得だと思う)
その時の世界にとって現存する兵器を凌駕するオーバーテクノロジー満載のパワードスーツなんて怖がるに決まっている。さらにデモンストレーションもないのにそんなことを言われても一蹴するのは当然のことだ。
そして一番致命的なのは、話し方だ。
『このパワードスーツはね、私が発明しちゃいました!』
『すべての兵器は無力なんだよ!』
一部捏造しているが、似たような事を言っているので仕方がない。
まだ上げるとするなら、彼女が当時14歳という中学生に相当する年齢だということもあるだろう。それがオーバーテクノロジー引っ提げて「テメェらの兵器はゴミだ」と言ったところで眉唾物だと言われるのは目に見えている。
(「他人を見下す傾向アリ」、「彼女を操作できるのは『織斑千冬』だけ」……か)
織斑千冬。彼女は篠ノ之束の親友と呼べる間柄であり、徐々に女尊男碑が形成されつつある原因のISの世界大会『モンド・グロッソ』で“ブリュンヒルデ”で、白騎士の疑いをかけられている人間でもある。
(まぁ、それはそうだろうな。いや、絶対に各国の誰もが思っていることだろうな)
彼女の圧倒的な強さ。それは篠ノ之束と一緒にいたためにISのテストなどを手伝っていたのだろう。それなら誰にも余裕で勝った理由は納得がいく。それに、彼女は極度の人嫌いでもあり好意を持つのは限られた人物だけ。それだと、必然的に誰が『白騎士』を操縦したか限られる。
「………起きたか?」
昨日の男が部屋に入ってきた。名札をチラ見すると、そこには『斑克己』と書かれていた。難しい名前なのか、ふりがなが振られていた。
「……眠くなかったから今までビデオを見ていた……いました」
「いや、無理に敬語で話さなくていい。ここには子どもがたくさんいるからな」
「………」
その言葉でなんとなく察した。ここは実験場なのだと。
「―――博士、彼が天才少年なの?」
いきなり、誰かが部屋に入ってきた。おそらくここで実験台になっているのだろう。
「ああ、そうだ。彼はNo.22――布仏祐人だ。そしてこちらがEv.1―――風間結華だ」
「よろしくね、末っ子」
………末っ子?
「この施設内では色々と用途に分けて子どもたちの形式番号を変えているんだ。彼女はEvナンバー―――つまりISを扱うことに関して『ブリュンヒルデにも劣らないほどの実力を持つ人間』だ。俺は子どもを数字で呼ぶのはあまり好きになれないからそれぞれ過去の名前を教えているんだがね。ちなみに君はノーマルナンバー。これからは精進しろ。そうすれば今より高い位に就くことが出来る」
どうやら給料制らしく、高位に行けば行くほど給料が上がるらしい。それで結華という少女はその最高位にいるらしい。最高位に行けば一般の代表候補生よりも位が高く、さらに支給品が渡されるらしいのだ。そしてある程度なら自由が効く。これは利用する手はない、な。
「………それで、高位に就くのはどうすればいい?」
「簡単よ。月に一度テストが行われる。その時に私を倒せばいい。まぁ、ISを動かすことができなければ無駄―――と言いたいところだけど、そうでもないの」
結華の言葉に俺は首を傾げた。
「わかりやすく言うと、別分野でEvナンバーと同等の位に就けばいいのよ。そして幸い、私は掛け持ちとしてCoナンバーの1の称号も持っているわ」
戦闘においての最高位ってことか。まぁ、ISを使用できるのは女だけだからEvナンバーに名を連ねるのは女だけってことか。
だが同時に疑問に思う。女しか動かせないならどうして採用したのかが。
(だったらISコアを作り直せばいいだろ。それにそもそもそれだけしかできなくて何が天才だ?)
………いや、白騎士事件で認めざる得なかったというべきだろう。まぁ、いくら女性優遇制度なんて言っても結局は政治家にも女性が増えたから完璧な制度ではないんだけど。
「それでね。今日はその日なのよ」
結華の言葉に俺は驚いた。
「……それにだ、お前には一方的で嫌かもしれないがテストを受けてもらうことになった。上層部もうるさいからな」
克己はそう言い、俺はため息をついた。
「それで、相手がこいつってことですか?」
「こいつって失礼だなぁ。これでも私はここで戦闘においては最強だよ」
「……悪いな。今までいた場所が場所だからそういう奴に限って女性優遇制度だとか持ち出して俺は説教されるんだよ」
そういえば、一度簪様を侮辱したお嬢様気取りの転校生がいたな。それを注意すると、
『あら、男風情が何を言っているのかしら? こんな何の取り柄もないブスは私が慈悲で飼ってあげようとしているのよ?』
その時、クラスメイト全員が簪様を庇った。だが、全員の足が震えていた。
(………ああ、日頃の行いか……)
今では俺たちはクラスメイトに受け入れられて仲良く暮らしているが、それまでは『女性優遇制度』に乗っかった女子生徒とそれに逆らえなかった男子生徒が俺に喧嘩を吹っかけてきたが、全滅させた。それで今度は簪様に標的を変えたが………男女諸共壊滅した(ただし一人も死んでいない)。そこから俺たちの仲は最悪だったがそれを修復したのは本音だった。
『ゆーゆーは本当は優しいんだよ~。いつもは勉強を教えてくれたりするでしょ~?』
その時に俺は成績は常に主席だったので全員が俺と簪様に謝り、放課後に特に俺の用事がなければ勉強会が模様されることになった。
だが、目の前の転校生はそれを知らない。それが俺の戦闘が空気砲ビットだったりエアガンだったり。もちろん、その年には既に銃を扱っていたこともある。ちなみにエアガンは改造して空気を射出して攻撃する物に変えてある。
『うるさいハエ共ね。クラウド、やっておしまい』
いきなり執事が現れて何人かを倒していくが、その猛攻は急に終わる。
『………消えろ』
それを皮切りに大乱闘が始まり、両お嬢様とこっちサイドには本音が残り、それ以外の全員が別のクラスに移動した。結果は俺の圧勝。だが向こうも中々いい動きをしていた。おそらく小学生執事にしてはいい出来だろうと思った。
『あ…ああ……』
『これでこいつと俺の実力差はわかっただろう。ま、こいつを捨てるって言うなら止めておけと言っておくよ。こいつの敗因は俺が敵に回ったことだからな』
この時に本音は『とある裏切り者に見えた』と言っていた。止めてくれ。
「………俺は、いつからこんなキャラ付けになったんだろうか……?」
頬に涙が流れる。そして同時に『それ相応の装備を持たすとISを潰すかもしれないな』と陰で言われていたことを偶然聞いてしまったことを思い出した。
「違う。俺は強いんじゃない。そして頭がいいんだけじゃない。ただ魔法使いになりたかっただけなんだ………」
「「……………」」
そう考えると、俺は色々な本を呼んだなぁ。特に魔術関連の本。確か当時はありとあらゆる敵から簪様を守るために習得しようと思ったんだっけ。できなかったから別の物で代用しているけど。
―――まさか、これが俺がISコアを作るときのヒントになるとは思わなかったが
「祐人、先に言っておくけどここでは女は優遇されないし、常に男女は平等だ。だから誰もいちゃもんはつけない」
克己からそう言われ、俺は安堵した。それなら文句は言われないだろうし、思いっきり戦える。
「なら、いいぜ。俺はお前に挑戦する」
それを聞いた結華はニヤリと笑った。
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