IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~
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number-9 she is feelings
前書き
彼女の気持ち。
この場合は、更識楯無。
クラスの代表同士が戦う『クラス対抗戦』が近くなって来た。
一夏は箒やセシリアに頼み込み、近接戦、遠距離戦の二つを放課後に教えられていた。――――相変わらず弱い。やはり、一夏は実戦の中で成長していく人のようだ。
鈴に関しては、一夏をただの友人として接するようになり、麗矢と一緒に居る所をよく見かける。今では時折、一夏の前でさえ見せることがなかった表情も麗矢の前では見せるようになった。それを見た一夏は、嬉しく思いながら、それでもどこか悲しく感じていた。
そんな人間関係の変化が多かった。
ようやく、トーナメント表が発表された。
『一学年、第一回戦、一試合目、一組 織斑一夏 VS 二組 鳳鈴音』
何かしらの作為を感じた麗矢。
たぶん、千冬辺りが面白がってそうしたに違いない。
機械で決めていたら――――どんな確率だったのだろうか。
まあ、麗矢は気にしないが。
その麗矢は自由を求めていた。その理由は――――
「ねえ、麗矢。生徒会に入ってくれない?」
「絶対に嫌だ。」
楯無から生徒会の勧誘を受けていた。
逃げたくても、ルームメイトである。一日に一回は聞いている。いい加減にしてほしかった。
それなのに懲りることなく勧誘を続けられる。
どうしても麗矢を生徒会に入れたいのか、様々なコスプレをして麗矢を誘う。
メイド、ナース、体操着、挙句の果てにはスクール水着である。それも旧型の。
勘弁してほしい。
時たまに麗矢が寝ているベットに潜り込んでくることもある。本当に寝顔は可愛いのだが……起きるとあの調子である。喰えないやつだ。
楯無の心の内を麗矢は知っている。それは嬉しいのだが、麗矢自身、すでに犯罪者。
それも全世界に指名手配されてもおかしくないレベルのことまでやっている。
麗矢は裏の世界では篠ノ之束に並ぶほど有名なのだ。今、こうして学校に通えていること自体が奇跡である。
今日もまた、麗矢の腕を枕にしていた楯無が起きる。
「うーん……おはよ、麗矢。」
「…………おはよう。」
まだ眠いのか目を擦りながら、体を起こす。
布団から出た楯無は何も纏っていなかった。それを見ないように目をそらしながら、そこらへんに脱ぎ捨てられている楯無の服を楯無に抛る。
頬を赤らめるもあんまり隠そうとしない。
楯無のそんな姿を見ないように、目を逸らしつつキッチンに向かい二人分の朝食を作る。
「あっ、そうだ。麗矢、私と勝負してくれない?」
「勝負?」
唐突に楯無が麗矢に勝負を持ちかけた。
いまいち理解が出来ない麗矢は聞き直した。
「そう勝負。私が勝ったら麗矢は生徒会に入る。でも私が負けたら別に入らなくてもいいし、もう勧誘もしない。どう?」
麗矢は考える。
勝負を受けて勝てば、もう勧誘を受けることがないから、静かになるはず。
「わ――――。」
分かったと言いかけた口を閉じる。
麗矢は重大なことを見落としていた。この勝負は麗矢にメリットがないことに。
負ければ生徒会入り、勝てば勧誘は受けなくなるが――――
生徒会長に勝ったことになり、そのまま生徒会長に。
麗矢は楯無をちらっと見るが……おいしそうに麗矢が作ったパスタを頬張っている楯無。
それを見るとやる気が無くなってくる。
「いや、やっぱりやらない。」
えーっとパスタを含ませた頬を膨らませてむくれる楯無。
行儀が悪いと諌めつつ、麗矢もパスタを食べ進める。
楯無は麗矢を見る。
幼いころに分かれて、何年も過ぎるのにほとんど変わらない麗矢。
昔を思い出す。
みんな笑って、笑顔が絶えなかったあの頃を。
楯無は思った。
今も昔も変わらない麗矢を見て。
――――麗矢を好きになって良かった。今でもその思いは変わらないよ。
重い恋愛感情だ。
◯
麗矢は自由を願う。
最近、楯無が生徒会に勧誘してくることは無くなった。
でも一夏が麗矢の行動を妨げる。
千冬に護衛を頼まれていなかったら、あいつを誘拐してそこら辺の組織に引き渡していたかもしれない。冗談抜きで。
――――俺の時間だ! 俺がどう過ごそうが俺の勝手だろう!!
と、言ってやりたい。
実際に言えば、あいつは崩れてしまう。どこか麗矢に頼っている節があるのだ。
それは分からなくもない。でも、二人しかいなくても、その二人が友達である必要はないはずだ。
なのにどうして友達であろうとするのか、麗矢には理解することはできなかった。
考えるだけで腹が立ってくる。
そして、クラス対抗戦の日が来る。
それが今だ。
麗矢はISを展開して、アリーナ上空で待機していた。
侵入者が来るならばここからと予想したからだ。
その予想は当たっていた。だが、外れてもいた。
一体だけと予想していたが、実際は三体だった。
「ちっ!」
何とか二体の注意は引きつけられた。
だが、一体の注意は引きつけることはできなかった。
しかもその一体が、アリーナを覆っているシールドを突き破って侵入していった。
「くっそ……」
麗矢は誰に言うわけでもなく、それでも悪態をつかずにはいられなかった。
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