| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある星の力を使いし者

作者:wawa
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第44話

麻生と別れてた愛穂は侵入者がいるであろう地下街の出入り口に立っていた。
服装もいつもの緑のジャージではなく耐衝撃用の装甲服を着て、手にはライフルを持っている。
その周りにも自分と同じ装備で身を固めた警備員(アンチスキル)が突入の準備をしている。

(恭介を置いて来て正解じゃん。
 こんな所に連れて来れるわけがないじゃん。)

一人でそう思いながら今は自分の学生寮に戻っている事を祈りつつ、侵入者や今の地下街について情報を整理して作戦を考える。

「まず、敵の能力について考えよう。」

集まった警備員(アンチスキル)の中で隊長である男が話を始める。

「敵は門を強引に突破できることから何らかの能力を持っている可能性が高い。
 目撃証言によると土の塊を巨大な人型に変換して操っているらしい。」

「学園都市の敵対勢力で作られた能力者でしょうか?」

「おそらくな。
 だがこの学園都市でもあれほど巨大な土の塊を操れる能力者はそうはいない。
 何か学園都市とは別の方法で能力者を作っているのか、それとも天然の能力者かのどちらかだろう。」

天然の能力者、またの名を原石と呼ぶ。
学園都市のような人工的な手段に依らず、超能力を発現させた天然の異能者。
偶発的に周囲の環境が『開発』と同じ効果をもたらした場合に発生するとされる。
学園都市の開発によって作られる異能者を人工ダイヤモンドとするならば、天然のダイヤモンドにあたる存在。
警備員(アンチスキル)のほとんどは教師だ。
彼らは自分の持っている知識を使い敵の能力について解析していく。
彼らは魔術についての知識がないのであくまで科学の方面で独自に解析していく。

「敵の目的は?」

「それが分からない。
 敵が統括理事会の人間やこの学園都市に必要な科学者の抹殺などを目的としているのなら、どうして門から強引に突破して注目を集めたり地下街など、という逃げにくい場所を選んだ?」

「自分に注意を引き付けて他のメンバーが暗殺をするとか?」

「逆に強引に突破されたせいで警戒態勢はさらに厳しくなっている。
 この状況で侵入してくるなど見つけてくださいと言わんばかりの行動だ。」

「じゃあ敵は単独犯?」

「そうと考えるのが妥当だろうな。」

目的が分からないとなると敵がどういった行動をとるか分からない。
しかし目的が分からないから動けませんとはいかない。
侵入者がいる地下街には多くの生徒達が残っているからだ。

「最後に地下街の状況について説明する。
 今の地下街には数えきれないほどの学生がいる。
 風紀委員(ジャッジメント)念話能力(テレパス)者に協力をしてもらい、何とか騒ぎを起こさないように学生達には避難してもらっている。
 しかし、これは侵入者が行動を開始すれば一気にパニックになる可能性がある。
 侵入者がいるフロアはここだ。」

地下街の地図を開けて侵入者がいるであろうフロアを指さす。

「私達がするべきことはたった一つ。
 侵入者を即刻拘束して学生達の安全を確保する事だ。」

隊長がそう言うと他の隊員は応!!、と力強く返事をすると地下街に入っていく。
その中に愛穂の姿もある。

(帰ったら電話するといった以上さっさと終わらせるじゃん!!)

愛穂はそう思い、侵入者がいるであろう地下街に入っていった。






学校で麻生と別れた上条は門の前で待っているインデックスと何処に消えた風斬氷華と合流する。
話し合いの結果、というよりインデックスが地下世界(地下街の事)に行きたいと言ったので、昼ご飯を兼ねて地下街に行く事になった。
学食レストランという学校の給食を食べれるレストランで昼ご飯を食べた後、ゲームセンターで時間を潰す。
どうやらインデックスはそのゲームセンターが非常に気に入ったらしく、かなりのゲームがあるのにそれらを全部やってみたいと言い出すくらいだ。
大雑把に回っただけでも八〇〇〇円も使ってしまった。
もう一周してみる?、とインデックスは言ったが上条は全力で止めた。
その後、インデックスと風斬が超機動少女(マジカルパワード)カナミンの衣装にコスプレして写真を撮ろうとするが、着替え室のカーテンが外れてしまい、上条に何とも言葉で表現してはいけない状態を見られてしまった。
上条は二人がコスプレをしているのは分かっていたのでその場から離れようとした。
彼は学校にいるときインデックスと風斬が体操服に着替えている所を見てしまったので、同じ轍は踏まないようにしようとした。
だが、彼の不幸スキルが発動して偶然にもカーテンが落ちてしまい、再び着替えている所を目撃してしまった。
当然、そんな言い訳が通じる訳がなく彼女達が写真を撮ろうと騒いでいる頃には、上条はインデックスに問答無用で襲われぼろクズのように変わり果てていた。
何だかんだ楽しみながら次はどこに行こうか、と話をしている時に突然女の風紀委員(ジャッジメント)に呼び止められる。
何でも念話能力(テレパス)で何度も呼びかけているのだが、一向に反応しないので様子を見に来たという。
上条は右手の力のせいで念話能力(テレパス)が聞こえない事を説明すると今、地下街で起こっている事を説明する。
何でもテロリストがこの地下街に紛れ込んでいるので一般人は避難するように念話能力(テレパス)で呼びかけていたようだ。
周りを見ると念話能力(テレパス)を聞いた学生達は驚きながらも指示通り自然な感じで出口を目指していく。
上条達もこんなトラブルに巻き込まれる前に出ようとしたが、出口には警備員(アンチスキル)が四、五人固まっていた。
上条は何かやばい、と思った。
それはインデックスの事だ。
インデックスは一応ゲストIDを持ってはいるが、身元を調べられると捕まる可能性がある。
しかも、テロリストが紛れているこの状況なら、不審な人物はすべて調べ上げられるだろう。
上条は少し考えるがテロリストと銃撃戦に巻き込まれるよりかは、まだ検問の方がマシと考えて出口に向かおうとした時だった。

「見ぃつっけた。」

突然、女の声が聞こえた。
ただし何もない筈の壁から聞こえた。
上条は視線を壁に向けると硬直する。
そこには掌サイズの茶色い泥がへばりつきその中央に人間の眼球が沈んでいた。
上条と風斬はその目玉を見て驚いているがインデックスだけでは冷静にその目玉を眺めている。

「うふ、うふふ、うふうふうふふ。
 禁書目録に幻想殺し(イマジンブレイカー)に虚数学区の鍵。
 どれがいいかしら、どれでもいいのかしら。
 くふふ、迷っちゃう。
 よりどりみどりで困っちゃうわぁ。」

泥の表面がさざ波のように細かく揺れ、その振動が「声」を作り出す。
その女の声は妖艶だがどこか錆びついていた。

「ま、全部ぶっ殺しちまえば手っ取り早えか。」

酒場でも聞かれないような粗暴な声色へと切り替わる。
上条はこの奇妙な泥が超能力によるものか、魔術によるものか判断がつかない
だが、インデックスは違った。

「土より出でる人の虚像、そのカバラ術式、アレンジの仕方がウチと良く似ているね。
 ユダヤの守護者たるゴーレムを無理矢理に英国の守護天使に置き換えている辺りなんか、特に。」

「ゴーレムって、この目玉が?」

「神は土から人を創り出した、っていう伝承があるの。
 ゴーレムはそれの亜種でこの魔術師は探索・監視用に眼球部分のみを特化させた泥人形だと思う。」

インデックスは上条の疑問に目玉に視線を向けたまま答える。
上条はその理屈は分からないがようはラジコンのように誰かが操っているのだと独自に理解する。

「って事は・・・この魔術師がテロリストさんって訳か。」

上条がそう言うと泥は笑った。

「うふ、テロリスト?テロリスト!うふふ。
 テロリストっていうのは、こういう真似をする人達を指すのかしら?」

ばしゃ、と音を立てて泥と眼球は弾けて壁の中に溶けて消えた。
その瞬間だった。
ガゴン!!と地下街全体が大きく揺れた。

「なん・・・っ!?」

まるで嵐に放り出された小船のような震動に上条は思わずよろめき、インデックスも転びそうになるが風斬の腕の中にすっぽりと収まる。
さらにもう一度、砲弾が直撃したような揺れが地下街を襲う。
爆心地は遠いが、その余波が一瞬で地下全体に広がっている感じだ。
パラパラと、天井から粉塵のようなものが落ちてくると蛍光灯が二、三度ちらついたと思った途端にいきなり全ての証明が同時に消えた。
数秒遅れて非常灯の赤い光が薄暗く周囲を照らし始める。
それまでのんびりと避難していた人の波が一気にパニックを起こす。
すると、予定よりも早く警備員(アンチスキル)が隔壁を下ろし始めた。
隔壁が完全に下ろされ逃げ損ねた学生達は混乱したまま分厚い鋼鉄の壁をドンドンと叩いている。
閉じ込められた、と上条は思った。
敵はこの展開を予想していたのだ、目玉の泥を使い建物の構造や人の流れまで把握していたのだ。

「さあ、パーティを始めましょう。」

潰れた泥から女の声が聞こえた。
すでに壊れた「眼球」の最後の断末魔、ひび割れたスピーカーを動かすように。

「土に被った泥臭え墓穴の中で、存分に鳴きやがれ。」

さらに一度、一際大きな震動が地下街を揺らした。






同時刻。
麻生は愛穂と別れてからやっぱり心配になり地下街に向かって走っていた。
相手は魔術師。
上条のような右手や美琴のような超能力者(レベル5)や火織のような聖人などがついていれば、心配する必要はなかったが(最初の上条がいてもそれはそれで心配)警備員(アンチスキル)だけでは荷が重い筈だ。
愛穂を追いかけたが車に乗ったのか既に姿はなかった。
地下街という情報を頼りにとりあえず一番近い地下街に向かって走っていた。
すると、地下街の出入り口に大きな人だかりが出来ていた。
麻生は近くにいる学生に何が起こっているのか聞く。

「おい、何が起こったんだ?」

「何でもこの地下街にテロリストが紛れ込んでいるらしいぜ。
 んで、警備員(アンチスキル)が予定よりも早く隔壁を下ろしたんだとよ。
 まだ逃げ遅れた人がいるのにな。」

どうやら此処で間違いない、と麻生は考えた。
麻生は考える暇のなく野次馬の中をかき分けていく。
すると目の前に警備員(アンチスキル)が野次馬を近づけないように盾なので進行を防いでいる。
警備員(アンチスキル)が野次馬に気を取られている内に麻生は警備員(アンチスキル)の壁を突破する。

「おい!!そこのお前!!」

麻生が警備員(アンチスキル)の壁を突破したのを別の警備員(アンチスキル)が気づく。

「そこの学生を捕えろ!!」

すると盾を持った警備員(アンチスキル)が三人麻生の目の前に立ちはだかる。
麻生は迫ってくる先頭の警備員(アンチスキル)の目の前でジャンプして、後ろの二人の警備員(アンチスキル)の頭を飛び越える。
その光景に周りの警備員(アンチスキル)は驚き、野次馬も麻生のジャンプに釘付けになっている。






「ちょっと黒子!!あれを見なさい!!」

麻生が警備員(アンチスキル)の壁を突破したその場には御坂美琴と白井黒子もその場にいた。
白井の空間移動能力で逃げ遅れた学生を救助に向かう所だった。

「あれは麻生さんですの?」

「あいつ、あんな所で何をやってんのよ。」

目の前に盾を持った三人の警備員(アンチスキル)が立ち塞がるが麻生はそれをジャンプする事でかわす。

「黒子、追いかけるわよ!!」

「え!?ちょっと、お姉様!?」







麻生は警備員(アンチスキル)をジャンプして地下街に下りる階段を一気に下りていく。
隔壁が下ろされていて入れない状況だが、ただの鉄の壁など麻生からすれば無いに等しい。

(壁のすぐ傍には逃げ遅れた学生がいる可能性があるから破壊は出来ない。
 それなら・・・・)

麻生は能力を使って隔壁を、正確には隔壁を動かす部分に干渉する。
隔壁を上にあげるとそこから逃げ遅れた学生達が出てくるが、麻生はその人と人の間を抜けていく。
地下街に入った瞬間に隔壁を下ろすように操作して、外から警備員(アンチスキル)が入ってこれないようにした。






美琴は麻生を追いかけるが隔壁が上がった瞬間に、逃げ遅れた学生達の人の波が押し寄せ思うように前に進めなかった。

(何であいつはその人の波で進めんのよ!!)

対する麻生は人の波の間を移動していて、全く追いつく事ができない。
能力を使って人の波を静めたかったが、まわりに警備員(アンチスキル)などがいるのでそんな強引な手段が使える訳がなく、人の波が終える頃には既に隔壁は下がっていた。
少し遅れて白井がやってくる。

「お姉様、少し落ち着い・・・・」

「黒子、あんたの能力で隔壁の内側まで飛んで!」

「ですから一度落ち着い・・「早く、お願い!」・・・はぁ~、分かりましたですわ。」

黒子は美琴の肩に手を置くと次の瞬間には地下街に立っていた。
しかし、その場に麻生の姿はどこにもなかった。 
 

 
後書き
感想や意見、主人公の技の募集や敵の技の募集など随時募集しています。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧