とある星の力を使いし者
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第42話
病院から寮に帰っている途中、麻生は久々に能力をフルに使ったのか酷い睡魔に襲われていた。
加えて昼間に会った愛穂には明日の始業式に遅刻したら罰則を与えるじゃん、と爽やかな笑顔で言われ寝坊が出来ない状況である。
一刻も早く寮に帰って寝ようと歩いている時だった。
「久しぶりだな、麻生恭介。」
いつの間に現れたのか、前に出会った喋る猫が麻生の二メートル先に座っていた。
「この前の猫か。
悪いが俺は今非常に眠い。
話ならまた今度にしてくれ。」
猫を見た麻生は少しだけ睡魔が晴れたがそれでも眠い事には変わりない。
欠伸をかきながら猫の横を通り過ぎていく。
猫の横を通り過ぎた時、猫から麻生に話しかけてきた。
「いい顔になった。
どうやら吹っ切れたようだな。」
その言葉を聞いた麻生は足を止めて振り返り猫に視線を向ける。
さっきまでとは違い、眠たそうな顔が無くなり真剣な面持ちで猫を見ていた。
「今のお前ならもう迷う事はないだろう。」
「そう言えばお前に聞きたい事があった。」
「今は眠いのではなかったのか?」
猫はそう聞き返すが麻生は無視して話す。
「お前は一体何者だ。
あの時俺自身ですら気づいていなかった俺の迷いをどうして知っていたんだ。」
麻生が猫に問いただすが猫は麻生の眼を見ずに明後日方向に目を向ける。
まるで誰かからの視線に気づき睨み返しているかのように見えた。
麻生も猫の視線を追うかのように見るがそこにはビルが建ち上るだけで人影など見当たらない。
「奴らはもうじき行動を開始するだろう。
お前も充分に気をつける事だな。」
「あ?」
麻生は再び猫の方を見るがそこに猫の姿は見当たらなかった。
(奴らって一体誰の事なんだ。)
そう考えながら麻生はもう一度猫が見ていたであろうビルを見つめる。
やはりそこには誰の姿も見当たらず麻生は首を傾げて寮に向かって歩き出す。
寮に着いて自分の部屋に入ろうとした時、隣の部屋、つまり上条の部屋から何やら言い争う声が聞こえた。
(どうせ、当麻がまたインデックスに余計な事を言ったんだろう。)
再び睡魔がやってきて適当に考えながら麻生は部屋に入りすぐにベットに寝ころび睡魔に身をゆだねるのであった。
次の日、突然携帯の着信音が部屋に鳴り響き麻生は目を覚ます。
寝起きなので意識が朦朧になりつつも携帯をとりボタンを押して耳に当てる。
「恭介、おはようじゃん。」
愛穂の声を聞いた麻生は一瞬、デジャブを感じた。
「愛穂さんが恭介が寝坊しないようにモウニングコールをしてあげたじゃん。」
「お前、昨日遅刻したら罰則を与えるとか言っていたよな。
なのにこんなことをしたら意味がないんじゃないのか?」
「ウチは教師じゃん。
生徒が遅刻すると分かっていて何もしないというのもおかしいじゃん。
そう言う事だからこれで遅れたら恭介に罰則を与えるから覚悟するじゃん。」
そう言って愛穂は勝手に電話をかけてきて勝手に電話を切った。
麻生は時計を見ると七時三〇分。
ゆっくり準備しても充分に間に合う時間だ。
欠伸をかきながらベットから起き上がり風呂に入る。
上がった後は制服に着替え、鞄に必要最低限の物を入れていつもより早い登校を始める。
校門が見えてくるとその前に緑のジャージを着た愛穂が生徒にあいさつしながら立っていた。
「お!麻生じゃん。
遅れずに登校できたじゃん。」
「あんたの罰則を受けるのは非常に面倒だからな。」
「それなら遅刻したら罰則するような制度にする?」
「そんな事をしたら俺は確実に学校をやめるぞ。」
他愛のない話をして麻生は下駄箱で靴を履きかえて教室に向かう。
自分の教室について扉を開ける。
扉を開けた瞬間に教室の中にいた生徒が一斉に麻生の方に見た。
どの生徒も信じられないものを見ているかのような目をしていた。
それもその筈、この教室で麻生は一番遅刻をしている生徒だ。
上条、土御門、青髪ピアス、麻生、この四人はこの学校の先生の頭痛の種の一つだ。
入学式ですら遅刻ギリギリで登校してそれ以外の日でも遅刻なんて日常茶飯事、そんな麻生が始業式に間に合いあまつさえ時間に余裕をもって教室に入ってくるなど、麻生の学校での日常を知っている者からすれば、まさに信じられない行動なのだ。
そんな生徒達の心情を知らない麻生は奇妙な目で見られている事に気づき、ゆっくりと全体を見渡して言った。
「俺の顔に何かついているのか?」
麻生がそう聞くと青髪ピアスは麻生に近づいて聞いてきた。
「麻生はほんまに麻生か?」
「何を訳の分からない事を言っているんだ。」
「遅刻で有名な麻生がこんな時間に来るなんてありえへんからな。
もしかしたら麻生の偽物が来たんやと思てな。」
青髪ピアスの言葉を聞いてようやく事情を呑み込めた麻生は大きくため息を吐く。
「いつもより早く起きて暇だったから登校しただけだ。」
そう言って麻生は自分の机に向かって椅子に座る。
あの麻生がこんなに早く来るなんて珍しい事があるんだな、という誰かの声が聞こえそこから世間話が再開される。
麻生は始業式が始まるまで窓の外を眺めていようと思った時だった。
「珍しい事もあるのね。」
麻生は声のする方に視線を送ると麻生の前の席に吹寄制理が座っていた。
麻生はそれを確認すると視線を再び窓の外へとやる。
「どうせ今日も遅刻ギリギリかそれとも遅刻するか。
どちらにしても小萌先生を困らせるような事をすると思ったんだけど。」
「さっきも言っただろう。
早く起きてしまって暇だから来たって。」
「貴様の私生活の事は全く知らないけど、早く起きても二度寝する奴かと思ったんだけど。」
確かに麻生は寝れるのなら二度寝をする。
だが、今日を遅れてしまったら愛穂からの罰則が待っている。
そんな如何にもめんどくさそうなイベントをわざわざ受ける麻生ではないので早く来た。
しかし、この事を話せば耳のいい青髪ピアスに聞こえ根掘り葉掘り聞いてくることは間違いない。
それもそれで面倒なので適当に言葉を濁す。
「たまには余裕の時間を持って行動するのもいいかと思っただけだ。」
「もしかして風邪でも引いている?」
麻生らしからぬ言葉を聞いた制理は本気で心配したような表情をしている。
ため息を吐いた麻生は視線を制理の方に向けた所で、制理の首に茶色い色のした小さな丸い物が貼ってあった。
「また健康商品を買ったのか、お前。」
「うっ、別にいいでしょう!!
何を買っても私の勝手でしょうが!!」
「それはあれか肩とかに張ると血行が良くなって肩こりがとれるとかそういうやつか。」
「何で貴様が知っているのよ!!」
「適当に言っただけだが・・・・・それで効果は出ているのか?」
「・・・・・・・」
「つまりまたハズレを引いたと。」
麻生と制理が会話?をしているとその話を聞いていた青髪ピアスが二人に近づいて言った。
「もしかして吹寄が肩こるのはその豊満な胸がえい・・・ぶばぁ!!!!」
青髪ピアスが何かを言い終える前に麻生の左手と制理の右手が青髪ピアスにクリティカルヒットする。
その時、上条当麻が緊張な面持ちで教室に入ってきた。
彼は記憶喪失なので自分のクラスでの立ち位置など全く分からない。
どうやって記憶を失っている事を気づかれずにやり過ごすかを考えている時だった。
教室に入った瞬間に前を見ると一八〇センチを越す長身が上条に向かって飛んできていた。
「へ?」
訳が分からないまま青髪ピアスの下敷きにされる上条。
学校でもどこでも不幸な立ち位置は変わりない事を知った上条だった。
「はいはーい、それじゃさっさとホームルーム始めますよー。
始業式まで時間が押しちゃっているのでテキパキ進めちゃいますからねー。」
小萌先生が入ってきた頃にはさっきまでの騒動が嘘のように静まり生徒のほとんどが着席していた。
「ありゃ?先生、土御門は?」
麻生に自分の座席を聞いた上条(ちなみに上条の席は麻生の右隣)は教室に土御門の姿が見えないので小萌に聞く。
「お休みの連絡は受けていませんー。
もしかしたらお寝坊さんかもしれませんー。
えー、出席を取る前にクラスのみんなにビッグニュースですー。
なんと今日から転入生追加ですー。」
おや?、と麻生の除くクラスの面々の注目が小萌先生に向く。
ちなみに麻生の視線は窓の外だ。
「ちなみにその子は女の子ですー。
おめでとう野郎どもー、残念でした子猫ちゃん達ー。」
おおおお!!、とクラスの面々がいろめき立つ。
そんな中、上条は一人だけ嫌な予感を感じながら転校生について考えていた。
(小萌先生繋がりなら姫神辺りが怪しい。
だが、年齢詐欺した御坂とか神裂が突撃してきそうだな。
いやいや、一方通行の本名が鈴科百合子ちゃんという名前で転校してくるとか。
もしかしたら、一万人弱もの妹達が押しかけてきて、一気に生徒総数が一〇倍以上に膨れ上がったりするかも。
最悪、羽を隠した天使が降臨してくるかもしれない。)
そんなありえない可能性の考えている上条は思った。
もし本当にそうなったら思いのほか楽しくなるのでは?と。
「い、いけない!それはちょっと楽しそうだと思った自分がいけない。」
「何を馬鹿な事を言っているんだ。」
横から鋭いツッコミが飛んでくる。
「とりあえず顔見せだけですー。
詳しい自己紹介とかは始業式が終わった後にしますからねー。
さあ転入生ちゃん、どーぞー。」
小萌先生がそんな事を言うと教室の入り口の引き戸がガラガラと音を立てて開かれた。
そこから三毛猫を抱えた白いシスターが突っ立っていた。
「なぼあっ!!!」
予想外といえば予想外の展開に上条の思考は真っ白になる。
麻生はチラリとインデックスに視線を向けて疲れたような溜息を吐いた。
クラスの面々も困惑している。
なんせ、着ている服が普通の制服ではない。
ありゃ一体どこのミッションスクールなんだ?、という感じのヒソヒソ声があっという間に教室中に広まっていく。
そんな中、インデックスは全くいつも通りだった。
「あ、とうまだ。
それにきょうすけもいる。
やっぱりここがとうま達が通うがっこーなんだね。
ここまで案内してくれたまいかには後でお礼を言っておいた方がいいかも。」
彼女の声を聞き、クラス中の皆が一斉に上条と麻生へ視線を集中させる。
麻生はまた勝手に巻き込まれた、と一人呟いている。
「あ、あれ?なのですよー。」
転入生を紹介した小萌先生もドアの前に立つインデックスの姿を見て凍りついている。
「ちょ、待って。
小萌先生、これは一体どういう・・・・?」
上条の声でようやく我に返る小萌先生。
「シスターちゃん!全くどこから入ってきたんですか!
転入生はあなたじゃないでしょう!?
ほら出てった出てったですーっ!」
「あっ、でも、私はとうまにお昼ご飯の事を・・・・」
インデックスは何かを訴えていたが小萌先生は聞く耳を持たずにインデックスの背中を押して教室から追い出す。
上条は反射的にインデックスを追いかけようとしたが、小萌先生の大声と泣きそうな顔をされたので追いかける事が出来なかった。
クラス中が唖然としている中、制理は麻生に近づき聞いてくる。
「あの女の子、知り合い?」
「ノーコメントでお願いする。」
ちなみに本当の転入生は姫神秋沙だった。
後書き
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