ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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魚釣りと最後の休暇
二人と別れ俺は来た道を戻っていた。途中にあった湖で三十人ほどがわいわい騒いでいたので行ってみることにした
「こんにちは」
「おう、こんにちは」
わ、は、は、はと豪快に笑う爺さん……元気だな
「えっと、ここでは何をやっているんですか?」
「見ての通り釣りじゃよ。それで大会を開いておったんじゃ」
「へえ……おもしろそうですね……おっと、申し遅れました。俺はリンです」
「こりゃ、丁寧にどうも。ニシダというもんですわ」
わ、は、は、はとまた豪快に笑う……とその時、向こうからキリトと……生活に疲れたような人が来た。まあ、アスナだろう……人気者はつらいんだな。キリトたちは俺がいることに驚いたようだった
「なっ、何でいるんだ!?」
「たまたま、通りかかっただけだ。昨日ぶり、キリトとその奥さん?」
まあ、気をつかってアスナの名前は出さなかった
「助かる」
キリトが囁いてくる
「ねぇ……何でわかったの?」
アスナも囁いてくる
「キリトのそばにいる可能性のある女性でその身長はアスナだけさ……あとはもっと小さいし」
囁き返す俺……アスナがキリトに詰問してる
「おや、お知り合いですかな?」
「ええ……まあ」
言葉を濁すアスナ
「まあ、腐れ縁というやつです」
お茶を濁す俺
「まあ、いいです。それより晴れてよかったですなぁ!」
「こんにちはニシダさん」
その後、全員に挨拶する。幸いというか、アスナの正体はばれなかった
「え〜、それではいよいよ本日のメイン・イベントを決行します!」
周囲の連中が大いに沸いた。……何をするんだ?ニシダの手には長い竿と、太い糸それにぶらさがっている巨大なトカゲを見ながら思った
「何をするんだ?」
小声でキリトに尋ねる
「ヌシを釣るために竿のスイッチをするんだと。俺とニシダさんが」
「そうか……」
キリトの筋力パラメーターで釣れないわけがないが……オーバーすぎじゃね?口には出さないがそんなことを思っていると、釣りを見たこともやったこともない俺にでもわかるような見事なフォームで竿を振ると巨大なトカゲは飛んでいき、湖に沈んだ。しばらくするとピクピクと動く
「き、来ましたよニシダさん!!」
「何の、まだまだ!!」
ニシダがいつもよりもさらに爛々と輝かせ、竿の先をにらんでいる。その竿の先がいっそう深く沈み込んだ瞬間
「いまだっ」
ニシダが体を反らせ竿を引く。次の瞬間、キリトに手渡す
「掛かりました!!あとはお任せしますよ!!」
「うわっ!こ、これ、力一杯引いても大丈夫ですか?」
「最高級品です!思い切ってやってください!」
その言葉を聞いたキリトは全力をだした。竿が中程から逆Uの字に大きくしなっている。こんなときになんだが、俺、アスナ、キリトの力関係を説明するとレベルは俺>キリト>アスナで筋力はキリト>俺=アスナ。敏捷力は俺>アスナ>キリトである。技の好みはキリトは力での押しを得意とするが俺はどちらかというと絡め手の技を得意とする。アスナは技術で勝負するタイプ。俺はアスナに近いがキリトとも似たところがある。つまり中間なんだ。二人の。そんなことを考えているとアスナが身を乗り出し、水中を指差した
「あっ!見えたよ!!」
俺は無駄な思考を停止し、湖面を注視する。キリトが一際強く竿をあげると、何やら巨大な魚のようなものが湖から外に飛び出した
「……ふむ……」
シーラカンスに似た六本足のやつが立っている。キリトの前に。俺は剣を出す。次の瞬間キリトの姿が後ろに消えた。そして、後ろでキリトが何やら抗議をしているが、その間に巨大魚?はこちらに走ってくる。俺は知的好奇心を掻き立てられながら後ろ向きに後退した
「主婦さん」
「何〜?」
「倒してもいいのか?」
一応確認をとる
「いいけどわたしも行く」
すぐにいつもの姿に戻ったアスナが来た。手にはいつもの細剣
「もう、いいのか?ばらして」
「あっ……」
天然すぎるだろアスナ!!
「まあ、いいか……先制よろしく」
俺の方が大技を繰り出すためアスナが先に行った方がいいのだ。後ろでニシダさんとかニシダさんとかキリトとかが騒いでるが全く気にしない。その間にもアスナが確実に巨大魚のHPを減らす。まるで舞でも舞っているかのように剣を叩きこんでいく
「スイッチ!」
アスナが叫んだとたん俺はニ刀流重突進技、<<ダブル・サーキュラー>>を放った。この一撃でHPが0になったらしく魚?はポリゴンとなって砕け散った
「スイッチいらなかったよな?」
「まあ……ね。あのタイミングでスイッチするつもりだったんだけど、予想外にHPが減ってたから」
アスナは苦笑いで応じる。そして、二人でキリトのもとに戻る
「よ、お疲れ」
「わたしたちだけにやらせるなんてずるいよー。今度何かおごってもらうからね」
「もう財布も共通データじゃないか」
「残念。俺は違うぞ」
「げ。そうだった」
「それってわたしのところから出ることと同じだよね」
「あはは……」
フリーズしていた釣りメンバーのうちニシダがいち早く復活し口を開いた
「……いや、これは驚いた……。奥さん、リンさん、ず、ずいぶんお強いんですな。失礼ですがレベルはいかほど……?」
キリトとアスナは顔を見合わせた。君らが考えていることは予想がつくがもう手遅れだと思うぞ
「そ、そんなことよりホラ、今のお魚さんからアイテム出ましたよ」
アスナが白銀に輝く一本の釣り竿が出現した
「お、おお、これは!?」
ニシダは誤魔化せると思うが……
「あ……あなた、血盟騎士団のアスナさん……?」
一人の若いプレイヤーが前に出てくる。ほーらばれた
「そうだよ、やっぱりそうだ、俺写真持ってるもん!!」
「う……」
「か、感激だなあ!アスナさんの戦闘をこんな間近で見られるなんて……。そうだ、サ、サインお願いしていいで……」
キリトとアスナの間で視線を往復させて数秒
「け……結婚、したんすか……」
しょうがないから助けをしてやる
「はいはい、この二人は夫婦だからアスナを狙ってた人は、諦めてねー。もし二人の中を引き裂くような真似をしたら……」
そこで、言葉を切りいい笑顔で(目は笑っていないが)
「その身を引き裂くよ?」
「「「「「ひいっ!?」」」」」
そこにいたニシダ、キリト、アスナ以外が悲鳴を上げる。笑顔に恐怖するとは失礼な。俺はただお願いしてるだけなのに
「それじゃ、ニシダさんはこれで」
「ああ……わかった」
キリトとアスナの腕を引いてキリトとアスナの家に戻る
「リン君の顔、凄く恐かったよ」
「74層のボスより恐かった……」
……失礼な……
「でも、ありがとう。助かったよ」
「おう、じゃあ俺はこれで帰るわ」
「泊まっていけばいいのに……」
「新婚の夫婦の間に入るつもりはないんでね」
「ああ、じゃあおやすみ」
俺は無言で手を振る。この時は知らなかったが、数時間後、また会うことになる
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