スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇
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第百五十九話 勇気ある者達の誓い
第百五十九話 勇気ある者達の誓い
ミッテとの戦いを終えて異空間を抜けようとする。しかしここでまたしても異変が起こった。
「センサーに反応!」
マヤが報告してきた。
「えっ、誰!?」
「わかりません。しかしここに侵入してきています!」
ミサトにそう述べる。すると彼等の前にゾンダーが姿を現わしてきた。
「や、奴等は」
「ゾ、ゾンダーだ!」
凱と護は彼等を見て声をあげる。
「やはり」
シュウはそれを見て述べる。
「仕掛けてきましたか」
「あんた、まさかそれを見越して」
「ここに来られたのですか」
「はい」
ゴルディマーグとボルフォッグの言葉に頷く。
「そうです。ですがこれだけではありません」
「というと?」
「まだあるのですか」
「それはこれからです」
炎竜と氷竜に答える。
「どちらにしろ。彼等を倒さなければなりません」
「くそっ、用意周到な奴だらぜ!!」
「迎撃部隊を出撃させるしかない!」
火麻が呻く側で大河はそう決断を出してきた。
「諸君、出撃だ!」
「了解!」
それを受けてまた出撃する。こうしてロンド=ベルはゾンダー達と対峙した。
「んも~!」
フェイがその中で不満を口にする。
「一息つく間もないってわけ!?」
「一つ聞きたい」
チーフが甲児に問うてきた。
「この手の現象は頻発しているのか?」
「そういや多いな」
甲児はそう答える。
「セフィーロといいな」
「そうか」
「我々が来たのもそうだった」
ライデンが言う。
「なら何かあるか」
「歓迎パーティにしては物騒すぎるようだが」
ハッターが言うとフェイがすぐに突っ込みを入れる。
「ハッちゃん、ビビっちゃった?」
「ノンノンノン、ノープロブレム!」
だがハッターはそれにいつもの調子で返す。
「逆境にあってなお燃え立つ心!それこそ俺、アファームド=ザ=ハッター!」
そう叫びだす。
「ハートアンドソウル!スピリット!行くぞ兄弟!」
皆に対して言う。
「進むべき道は我が眼前にあり!!」
「おおう!」
「乗ってきましたね」
「そうでなくては」
風龍と雷龍がそれに乗ってきた。
「マイクも元気出て来たもんね!ナイスハッター!」
「おお!」
「ハッちゃん馬鹿っぽい」
フェイがそれを見て突っ込みを入れる。
「マイクまで」
「けれど馴染んでる感じ?」
闇竜と光竜もこう呟く。レミーがここで言う。
「馴染んでるとも言うわね。それにああいうタイプはウチの部隊に多いし」
「そして俺達はその横でクールに決める、と」
「どのみち、あいつらを倒さなきゃここから出られそうにない」
キリーと真吾もそれに続いて言う。
「お嬢ちゃんも頑張ってくれよ」
「あら、女の子をこき使うのは頂けないわよ」
「とは言うものの本当にここから出られるのかね」
ディアッカにとってはそれが気懸かりだった。
「若しかしてずっと閉じ込められたままとかか!?」
チャックはそれを考えて不吉になる。しかし凱が言う。
「諦めるな!」
「凱!」
「俺達はまだ敗北していない!絶望に屈しない限り勝利への道は必ずある!」
「そうか!」
「そうだ!」
彼はまた言う。
「俺達は地球を発つ時に誓った筈だ!必ず勝利して帰ると!」
そうして戦いに赴いた。そのことを今ここで言うのだ。
「その勇気ある誓いを忘れるな!!」
「勇気ある」
「誓い!」
護と命がその言葉を呟く。
「その通り!」
その言葉に感動してハッターがまた言う。
「誓いとは漢の絆!この言葉ある限り俺達に敗北はない!」
「ハッちゃん何時それ誓ったの?」
「いちいち突っ込むな!俺達はすでにロンド=ベルの一員!戦いの誓いごとき何時でもオーケーだ!」
「ホントに馴染んでるねぇ」
「皆、いいか」
獅子王博士が言ってきた。
「この空間からの脱出ポイントはもうわかっている。凱、御前達はゾンダーを倒せ!」
「わかったぜ、父さん!」
「各機、攻撃を開始せよ!」
大河がここで指示を出す。
「勝利への道を切り開くのだ!!」
「おおっ!」
ゾンダー達との戦いがはじまる。しかしそれは呆気なく終わった。気付けば相手を全滅させてしまっていたのだ。これには皆いささか拍子抜けした。
「あれっ、もう終わり?」
「俺達に恐れをなしたようだな!」
「いや、違うな」
フェイとハッターにチーフが答えてきた。
「様子を見ているだけだろう」
「そうだな」
その言葉にライデンが頷く。
「すぐに増援を送り込んでくるな」
「では今のうちにか」
「そうだな。じゃあ脱出ポイントに」
向かおうとする。しかしそこにこれまでにないゾンダーの大軍が来た。
「なっ、やっぱりかよ!」
「しかもこんなに!」
皆それを見て唖然とする。
「まずい、このままでは」
「どうする?」
「どうやら私の出番のようですね」
シュウがここで言ってきた。
「えっ、シュウさん」
「あんた、まさかこれを見越して」
「そのうちの一つです」
そうシンジとアスカに答える。
「これもまたね」
「これもまたって」
「まだ何かあるっていうの!?」
「それもおいおいおわかりになることです」
「へっ、お楽しみを置いておくっていうのは相変わらずだな」
マサキはその言葉を聞いて悪態をつく。
「ったくよお、まあいいぜ」
しかし彼はそれをよしとした。
「ネオ=グランゾンの力、見せてもらうぜ」
「わかりました。それでは」
ネオ=グランゾンは一機でゾンダー達に向かう。ここでチカがシュウに言ってきた。
「大丈夫ですよね」
「何がですか?」
「物凄い数の敵ですけれど」
「全く平気です」
平然と笑ってそうチカに返してきた。
「ゾンダーならね」
「まああたしもネオ=グランゾンの力は知っているつもりですけれどね」
それでも何か言いたそうであった。
「それでも一機だけって」
「御安心を。このネオ=グランゾンは来たるべき運命の戦いの為のもの」
悠然とした笑みに変えてまた言う。
「この程度の数、ものの数のうちに入りません」
「そりゃそうですけれどね。ここではその」
「間に合えばいいではないですか」
ここでシュウは妙なことを口にした。
「そうではないですか?彼が出て来る時に」
「それはそうですけれど。じゃあお任せしますね」
「はい」
シュウとチカは妙な会話をしていた。ロンド=ベルはゾンダーの大群を彼に任せて外へ向かう。しかし入り口にもまた敵が出て来たのだった。
「しつこかねえか、おい!」
キャオがそれを見て叫ぶ。
「一体どんだけいるんだよ!」
「くっ、ここまで出て来るなんて」
ダバもこれには顔を苦くさせていた。
「どうする?やはりここでも」
「ここは私に任せてもらおう」
「!?」
「今度は一体誰だ!?」
「私だ!」
掛け声と共にジェイダーが姿を現わした。ジェイもまたやって来たのだ。
「何と!」
「ジェイダー!」
獅子王博士と凱が彼の姿を見て声をあげる。
「ジェイの奴生きてやがったのか!?」
「無論だ。私はそう簡単には倒れはしない」
そうゴルディマーグに答える。
「御前達の生命、ここは私に預けてもらおう」
「あんた、覚悟はできているんだね」
「私は常に死を見据えている」
そうルネに返す。
「だからだ。ここにも来た」
「わかった」
凱もそれに頷く。これでジェイの参戦が決まった。
だがここで獅子王博士が言う。また敵が来ていた。
「センサーに反応があった!間も無く敵の増援が来るぞ!」
「時間がない!行くぞ」
「はい!」
皆大文字の言葉に頷く。そうして出口に向かう。
「アルマよ」
ジェイはその中で戒道に声をかける。
「通常空間に復帰したらすぐに仕掛けるぞ」
「わかっている。頼むぞ」
ジェイアークを残して通常空間に出る。その中で凱はジェイに声をかける。
「頼むぞ、ジェイ!」
「そちらも抜かるな!」
木星は既に原種が集結していた。彼等はそこでロンド=ベルを待ち受けていた。
「そろそろだな」
「うむ」
腕原種が同志達の言葉に頷く。
「おそらく来る。何があろうともな」
「その通りだ!」
それに応えるかのようにソルダートが姿を現わしてきた。
「来たかソルダートジェイ!」
そのジェイに対して言う。
「そしてロンド=ベルもか!」
「そうだ!」
ジェイはそれに応えて言う。
「御前達を消去するまで私は死なん!そしてあの者達もな!」
「むっ!」
木星を前にしてロンド=ベルが姿を現わした。その威容で原種と対峙する。
「来たか!J
「メガ=フュージョン!!」
ソルダートも合体する。そうして戦いに向かう。
「ジェイ、原種核は?」
「心配するな、回収済みだ」
「そう、それならいいよ」
戒道はジェイの言葉に満足して頷く。凱が彼等に対して叫ぶ。
「機界三一原種!御前達との決着の時だ!」
「残るは手前等だけだぜ!」
「ふん、小賢しい!」
宙の言葉を聞いても彼等の強気は変わりはしなかった。
「有機生命体の分際で勝てると思うか!」
「小賢しい!?それはこっちの台詞だっっ!!」
ハッターが彼等に言う。
「そーよ!今まで色々やってくれたわよね!」
「だがその消耗した戦力で我等を倒せるか?」
腕原種がフェイに返す。だが凱が叫んだ。
「人間の力を甘く見るな!」
「何だと!」
「俺達の底力を思い知らせてやる!!」
「ロンド=ベルの諸君!」
対峙する中大河が指示を出す。
「これより我々は機界三一原種殲滅作戦の最終段階へ入る!」
「オーケーだもんね!」
マイクが笑顔で応える。
「それでは」
「皆」
風龍と雷龍がまず言った。
「見せてあげましょう!」
「僕達の誓いを!」
「そうよ、ここでね!」
「勝利を私達の手に!」
氷竜と炎竜、光竜と闇竜も言う。
「そう、勇気ある者達の誓いを!」
「気合入れていくぜ!」
「愚か者め等が」
ボルフォッグとゴルディマーグも言うと腕原種は不敵な笑みと共に述べてきた。
「すぐに絶望の底へ叩き込んでくれる」
「よし」
獅子王博士がここで動いてきた。
「博士、一体何を」
「ザ=パワーの状態を確認してくる」
そうスワンに答える。
「何かあれば。僕が止めたい」
「獅子王博士、それは危険です!」
命がそれを止めようとする。
「大空魔竜へ戻って下さい!」
「いや」
しかし博士は命のその言葉に首を横に振ってきた。
「ボクはこのまま木星へ向かいザ=パワーの状態を確認する」
「父さん!」
「凱」
呼び止めようとする我が子にも言う。
「この戦いに生命を懸けておるのはお前達やソルダートジェイだけではない」
「えっ!?」
「僕もそうだ」
「父さんも」
「そうだ、だからここは行かせてくれ。いいな」
その言葉は凱の心を打った。彼もそれに頷くのだった。
「わかったよ父さん!くれぐれも気をつけてくれ!」
「御前達もな。信じているぞ勇気ある者達の誓いを」
博士はそのまま先へ行く。雷牙博士はそれを見送って呟く。
「気をつけろよ麗雄」
「全生命体の存亡はこの一戦にあり!」
大河の声がまた響く。
「各機攻撃を開始せよ!!」
「よし!」
「総攻撃だ!」
ロンド=ベルは総攻撃に入る。まずは前面のゾンダー達を掃討にかかる。
「これだけ数がいれば」
ナンガは照準を合わせることなく攻撃を繰り出していた。
「外れることはない。なら!」
ラッセもだ。ロンド=ベルは当たるを幸いに攻撃を繰り出していた。
「サンユン、前じゃ!」
アスカはその中でサンユンに指示を出していた。
「撃て!遠慮はいらぬ!」
「はい!」
「こちらもです」
イーグルも指示を出していた。
「前面の敵に一斉射撃です」
NSXの火力を最大限に使って攻撃を浴びせる。これでゾンダー達はかなり数を減らした。しかし原種達はまだまだ健在であった。
「さすがは機界三一原種」
ミリアルドはトールギスの派手な攻撃を繰り出しながら言う。
「そう簡単には倒れんか」
「長官!」
ここでスタリオンが大河に報告する。
「クラインスペースでの戦闘による消耗が予想以上に響いています!」
「むうっ!」
「敵のエネルギー総量はこちらを遥かに上回っておる!」
雷牙博士も言う。
「このままではいずれ押し切られるぞ!」
「数だけで決まる戦いではないということか」
「おいおい、ここまで来てかよ!」
「まだだ!この程度で!」
トロワ、デュオ、ウーヒェイも目の前の敵を次々に倒す。しかしそれでも敵は減りはしないのだった。
「あいつ等のエネルギーを何とかする方法はねえのかよ!?」
イサムがたまりかねたように言う。
「このままじゃマジでやばいせ、おい」
「これは定められた運命だ」
腕原種がここで彼等に告げる。
「そして機界昇華こそが御前達有機生命体を絶滅から救う唯一の方法なのだ」
「絶滅?」
「そう」
ガルドの言葉に応えてさらに言う。
「言うなれば有機生命体の補完だ」
「補完!?」
「それどういう意味よ!?」
「災厄の時は近い」
シンジとアスカに応えてまた言う。
「御前達がそれから逃れるには機界昇華しかない」
そしてさらに言葉を続けてきた。
「か弱き者共よ我々は御前達に救いの手を差し伸べているのだ」
「そういうのはな、大きなお世話ってんだよ!!」
甲児が言い返す。しかし腕原種の言葉は続く。
「だが時が経てば経つほど御前達は疲弊していく。それが有機生命体の限界なのだ」
「ふざけるな!それでも」
「俺達は御前等を倒す!」
凱と宙が言い返す。その時だった。
獅子王博士のシャトルであった。木星の真上に来ていた。
「む?」
「と、父さん!」
「諦めるな凱!」
博士は凱に叫ぶ。
「勇気ある者の誓いを思い出せ!」
「悪あがきを!!」
だがそこに腕原種の衝撃波が来た。それでシャトルは無残に破壊されてしまった。
「と、父さん!!」
「麗雄!」
「博士ぇっ!!」
護もそれを見て叫ぶ。だが全ては間に合わなかった。
シャトルは木星に落ちていく。それっきりだった。
「そ、そんな!」
「れ、麗雄!!」
護も雷牙博士も絶句する。そして凱は。
「う、あ、ああ!!」
叫ぶ。ただ叫ぶ。196
「うわあああああああっ!!」
父の元へ向かう。だが最早何も戻りはしなかった。
「な、何ということだ!!」
「そんな!嘘でしょ!?」
大河と護もまた受け入れられなかった。護は必死に呼び掛ける。
「嘘でしょ、獅子王博士ぇぇっ!!」
「あ、あああ!」
命も呆然としている。しかし腕原種はいたって平気であった。
「ククク。ゴミが木星へ落ちたか」
「貴様ぁぁぁぁぁぁあっ!!」
「サイボーグ凱!」
今度は激昂して向かって来る凱に攻撃を向ける。
「ノコノコやってきたのが貴様の運の尽きだ!貴様も木星の海へ沈むがいい!!」
「!!」
「凱ーーーーっ!!」
命の声が銀河に木霊する。ガオガイガーもその直撃を浴びた。
獅子王博士は今虚空の中を漂っていた。その中で感じていた。
「僕は・・・・・・死んだようだな」
それはわかる。しかしそれ以上はわからない。しかしここで何かが語り掛けてきた。
「絆!?」
遠くに失った妻のことに気付いた。
「御前なのか?」
「はい」
それは確かに彼女だった。死に別れた筈の妻だった。
「木星で遭難した私は不思議な力を使って心だけの生命体になったのです」
「ザ=パワーの力か」
「何度か地球に交信しようと試みましたが木星に危機が迫っていることを伝えるのがやっとでした」
「そうだったのか絆・・・・・・」
「あなた・・・・・・」
二人は今互いに歩み寄る。そうして心を通わせる。
「会いたかった、絆・・・・・・」
そう言って微笑み合う。二人は一つの大いなる意志の中に入ろうとしていた。
凱もまた虚空の中にいた。そこで思う。
「このまま俺は・・・・・・死ぬのか?」
「凱・・・・・・」
しかしここで誰かが語り掛けてくる。
「獅子王凱」
「誰だ?」
凱はその声に問う。
「俺を呼ぶのは誰なんだ?」
「凱、私の声が聞こえるか?」
「貴方は?」
「我が名はカイン」
見れば中年の穏やかな顔の男がそこにいた。緑の翼を持ちその背には同じ色の光の翼がある。護のそれを思わせる姿をして凱の前にいた。
「貴方が護の?」
「そう」
カインは凱の問いに頷く。
「今こうして話している私はギャレオンの中に保存されているコピーに過ぎない」
そう彼は言う。
「肉体を失い、ギャレオンの一部となった私には我が子を育てることは出来なかった」
「それで天海さん達に護を」
「そうだった」
彼は答える。答えながら凱に対して微笑んでいた。
「私の人格コピーはEI-01との最初の戦いで傷つき機能を失った」
また言う。声は凱の頭の中に直接響く。
「ザ=パワーの力でようやく話すことが出来る」
「ザ=パワー…」
「宇宙には多くの未知なるエネルギーが存在する」
「ビムラーと同じように」
「ザ=パワーもその一つと言えよう」
凱はそれがわかってきた。同時に宇宙の大きさも感じていた。
「そしてザ=パワーの力を得た者はその能力を増幅出来るのだ」
「力を」
「そう。そして」
凱に対して微笑む。そのうえでまた述べてきた。
「凱、君には感謝している」
「俺に?」
「そうだ。本来なら私がギャレオンとフュージョンする筈だった」
「そうだったんですか」
「だがそれが出来なくなった私に代わって戦ってくれて。感謝している」
「いえ」
しかしここで凱は言う。
「感謝するのは俺の方です」
そう言うのだった、カインに対して。
「大切な人を守る力の全ては貴方が与えてくれたのだから」
「すまない。しかし」
「しかし」
「私の寿命もこれまでのようだ」
そう述べて微笑む。そこに護がやって来た。
「父さん・・・・・・」
「護!?」
「うん、凱兄ちゃん」
護が彼にも答えてきた。
「僕、ここにいなくちゃいけないから」
「どういうことだ、それは」
「それは?何があるというんだ」
凱にはまだわかっていなかった。わかるのはこれからだった。
「ラティオ・・・・・・」
「父さん・・・・・・」
二人は向かい合う。そのうえで話をする。
「御前は心も身体も立派に成長した」
「僕が・・・・・・」
「そう、今こそ運命の時だ」
我が子に対して言う。
「最後の封印を解くとしよう」
何かが解かれた。護の中の何かが解放された。それは凱と護にも伝わった。
「この力を正しきことに使う時が来た。凱」
そしてまた凱に顔を向けて述べる。
「全てを君に託す」
「カイン・・・・・・」
「父さん・・・・・・」
「ラティオ、私はいつもそなたの側にいる」
最後の父としての言葉だった。それが今伝えられる。
「いつまでもな」
「僕、わかったよ」
護も遂にそれがわかった。それを自分でも言うのだった。
「Gストーンの本当の使い方が。そして緑の星でいつも僕を見守っていたあの優しい目」
それもまた見ていた。父の目を。
「ギャレオンと同じ優しい目、それは」
何も語らずに微笑む。父と子の最後の別れであった。
凱が倒れても戦いはまだ続いていた。腕原種はジェイに対して言う。
「カインの遺産は抹消した!」
「何っ!」
「残るはアベルの遺せし災いのみ!」
「ぬうっ・・・・・・!」
それは勝利への宣言だった。同時にロンド=ベルも。
「その次はロンド=ベルよ、貴様達だ!」
「そうはいくかぁぁっ!!」
しかしここで不死身の男が蘇った。木星から今高らかに現われる。
「!?」
「凱っ!!」
「待たせたな、命!!」
凱だった。ガオガイガーは今原種との最後の戦いの為に姿を現わしたのだった。
「あ奴、生きていたのか!?」
「俺は倒れん!」
凱は原種を前にして叫ぶ。
「勇気ある誓いある限り!!」
「凱、ザ=パワーの力を借りるのだ」
「父さん」
「お行きなさい、凱」
「母さん、わかった!」
今二人の言葉を受ける。そうして今大いなる力をその身体に宿す。
「その力で勝利を掴め」
「ああ!」
「でも気をつけて。ザ=パワーにおぼれてはいけませんよ」
「わかっているさ、母さん」
今凱の全身に力がみなぎる。緑の聖なる力が。
「父さん、母さん、カイン!貴方達の子供の戦いを最後まで見守っていて下さい!」
「この力、まさか!?」
「うおおおおおおおおっ!!」
凱の全身に力が宿る。その中で彼は己の全てを発揮するのだった。
その力で腕原種を撃つ。それで一気に吹き飛ばす。
「ぐうっ!!」
「腕原種!」
その腕原種に叫ぶ。
「これ以上御前達の好きにはさせない!!」
「が、凱!!」
「ガオガイガー、復活したのか!!」
命と牛山がそれを見て叫ぶ。それは今までのガオガイガーの力をも凌駕していた。
「どうやら、ザ=パワーを味方につけたようですね」
そこにネオ=グランゾンがやって来た。そしてシュウが言う。
「シュウ!」
「あんたも無事だったみたいね」
「あの程度では。私は倒れませんよ」
マサキとリューネに笑って述べる。
「そうかよ。しかし今の凱は」
「はい」
またマサキに答える。
「宇宙にある偉大なパワーの一つザ=パワーを得たのです。おそらくはカインの手により」
「カインのか!?」
「そうです」
今度はヤンロンに答える。
「カインが彼を認めたのです。そして人間の為に」
「ガオガイガーに力をね。そうなのね」
「ええ。今の彼は無敵です」
テュッティにも述べる。
「心が備わっているからこそ。だから」
「だから・・・・・・今だっ!」
凱自身が叫んだ。
「今が勇者の力を見せる時!決着の時だ!」
「そうだ、その通りだ!」
シンが彼の言葉を受けて叫んだ。
「俺達の力で原種を倒すんだ!」
「よし、私も!」
「カガリ、君もか」
アスランは意気高らかにシンに続くカガリに思わず問う。
「行くのか、この戦いに」
「行かなくてどうする!」
「そうだ!」
またシンが言う。
「この時こそ戦いの時だ!何があろうとも勝つ!」
「私もこの戦いに全てを捧げる!だから!」
「よし、わかった」
そのシンとカガリの心を受けて微笑む。彼もまたそれに続く。
「やれやれ」
三人の言葉をクサナギの艦橋で聞いていたアズラエルは思わず苦笑いを浮かべた。
「厄介ですね。こうした熱血な雰囲気は」
「そうですか?私は何か乗ってきましたが」
ユウナはその横で楽しそうに笑っていた。そのうえで言う。
「カガリも乗り気ですしね。国家元首が乗れば補佐役はそれをサポートするものですよ」
「やれやれ。では僕も御一緒しなければならないようですね」
「そうですね。それでは」
「はい、行きましょう。あのライオンロボ君と共に」
「俺達の機体のエネルギーまで上がっていくぜ!!」
甲児も叫ぶ。
「マジンパワーとリンクしてやがるぜ」
「こっちもだ」
竜馬も答えてきた。
「これがザ=パワーの力なのか!?」
「馬鹿な!」
ロンド=ベルの力がみなぎっているのを感じて腕原種は言う。
「この惑星のエネルギーがこれ程とは!」
「勝負だ、機界三一原種!」
「俺達に託された想い」
護と凱が言う。
「ザ=パワーと共に御前達へぶつけてやる!!」
ロンド=ベルは今一つになった。ゾンダーも原種も次々に倒し先へ進む。
「どけどけえっ!」
カガリは先頭に立って叫ぶ。
「この戦い、何があっても!」
「勝ってやる!」
その横からシンが飛び出た。両腕からの光で今原種を一体吹き飛ばした。
「うおおおおおおおおっ!」
「これで一つ!」
「シン、まだ一つだ!」
カガリがそのシンに言う。
「まだいるんだ!いいな!」
「わかっている!それなら!」
「だが。今度は私だ!」
カガリはここでビームライフルを乱射してきた。
「邪魔な奴はこれで・・・・・・消してやる!」
ゾンダー達をまとめて撃ち落す。そうして原種への道を開け自分がそこに突っ込む。
「喰らえっ!」
「カガリ様、私達も!」
「これで!」
「そうだ!動きを合わせろ!」
カガリはアサギ、マユラ、ジュリに対して言う。
「ここで・・・・・・決めるぞ!」
「はい!」
四人は原種に一斉攻撃を浴びせる。そうしてまた原種を一体葬るのだった。
「くっ、またしてもか!」
腕原種は同志達が次々と倒されていくのを見て歯噛みしていた。
「どういうことだ!有機生命体がここまでとは!」
「御前はわかっていなかった!」
凱が彼の前に来た。そして叫ぶ。
「俺達の勇気の力を!」
「勇気だと!」
「そうだ!それこそが全てに勝る力!」
彼の幾多の戦いがそれを証明していた。今それを見せる。
「くらえ!」
ブロウクンマグナムを放ちながら叫ぶ。
「これがザ=パワーの!俺達の勇気の力だぁぁぁっ!!」
「破滅をもたらす光、ザ=パワー!」
ジェイもまた原種達に攻撃を浴びせながら叫んでいた。
「その力で貴様ら原種を葬り去ってくれよう!ラディオ!」
「わかってる、ジェイ!」
ラディオもジェイの言葉に頷く。そしてジェイアークの背に翼が現われる。
「フラグ=アウト!プラズマウィング!」
そして剣を出す。一気に原種を薙ぎ払った。
「プラズマソォォォォドッ!」
彼もまた原種を倒す。気付けば戦場にはもう原種は腕原種だけしか残ってはいなかった。そしてその彼も今。倒れようとしていたのだった。
「お、おのれぇぇぇぇ!!」
ブロウクンマグナムによって倒れようとしていた。それで終わりに見えた。
「ジェイ・・・・・・」
「わかっている、ラディオ」
ジェイは戒道の言葉に頷く。
「奴との決着はつけた。後は我らの悲願を果たすのみだ!」
「うん」
ジェイの言葉に頷く。そうして今赤い光の球になった。
「原種の全滅を確認!」
命が報告する。確かにもう戦場に残っているのはロンド=ベルだけになっていた。
「原種核は全てガオガイガーとキングジェイダーが回収していマス!」
スワンも報告している。皆これで終わったと胸を撫で下ろしている。
「戒道!」
護もまた緑の光になっていた。ここで戒道に声をかける。
「うん」
そうして二人は自分達の力を放ちはじめた。
「クーラティオー!」
「テンペルム!」
声を合わせて詠唱する。
「テネリタースセクティオー。サルース=コクトゥーラ!」
「ムンドゥースインフィニ=トゥーム、レディーレ!」
何かが溶解する音が聞こえる。それは。
「おお、原種核が浄解されていく」
大河がそれを見て言う。
「浄解去れたゾンダークリスタルが一つに組み合わさっていくぞ」
雷牙博士もそれを見て言う。そうしてその中で笑顔になっていく。
ここで光の球が一つ現われる。そうして逃走に入った。
「何っ!?」
「げ、原種核の一体が逃走!」
命は驚いて報告する。
「ここで終わるわけにはいかぬ!!」
それは腕原種だった。そのままジェイアークに向かう。
「ぐうっ!!」
「御前は赤の星で消去しておくべきだった!」
「貴様!!」
「ジェイ!」
ゾンダークリスタルが奪われる。異変が起ころうとしていた。
「いかん!ゾンダークリスタルが奪われた!!」
「まさか!」
大河と雷牙博士は思わず声をあげる。ここであのパリアッチョが出て来た。
「木星エネルギー、ザ=パワー全解析完了」
パリアッチョは言う。
「Zマスター融合」
「これで原種は全て揃った!」
腕原種が叫ぶ。そこに力が集まっていく。
「復元、再結合開始」
「なっ・・・・・・」
「一体何が」
光の球から力が放たれる。そうして木星に何かが起こった。
「木星表面上超高密度エネルギーが発生しまシタ!」
「超高密度エネルギー!?」
凱はスワンの言葉に顔を向ける。
「な、何が起きてやがんだ!?」
「も、木星のザ=パワーがある一点へ流入しています!」
小介は豹馬にそう答える。
「まさか原種が復活しやがるのか!?」
「それどころじゃないみたい!」
フェイが珍しく深刻な声で叫ぶ。
「超ヤバ!!まずいよこれ!!」
「気をつけろ!」
「ジェイ、何だ!」
凱は彼に問う。
「奴が・・・・・・奴が機界三十一原種の全集合体、Zマスターだ!」
「Zマスター!?」
ジェイのその言葉に顔を向ける。ジェイは彼に説明を続ける。
「原種達は三十一体にして一つの存在。それぞれが全宇宙の機界昇華を司るZマスターの一部なのだ」
「そうだったのか」
「そうだ。しかし」
ジェイだけではなかった。戒道もその顔を強張らせていた。
「まさか・・・・・・原種がクリスタルから再生するとは!」
「な、何が起きるの!?」
「わからない。だが」
ジュンの言葉に普段は冷静沈着な鉄也も深刻な顔を見せている。
「恐ろしいことが起ころうとしている」
「合体した原種は機界昇華を数百倍のスピードで行うことが出来る」
ジェイは言う。
「それがもし木星の持つパワーを利用しているとしたら」
「おい、それってまさか」
「間違いない」
大介が甲児に答える。
「僕達は星を」
「その通りだ」
大河がここで彼等に述べる。
「我々は木星そのものを相手にすることになる!」
「うわっ!」
「くっ!」
ここで強烈な光が放たれた。そうして今巨大な一つ目の異形の巨人が姿を現わした。
「あ、あれが」
「機界三十一原種の集合体」
洸と一矢はそれを見て言う。
「Zマスターなのか!?」
そして竜馬も。多くの戦いを生き抜いてきた彼等もZマスターの巨大さと感じられるプレッシャーには言葉がなかった。呆然とさえしていた。
「Zマスターの周辺に大量の素粒子Z0を確認!!」
猿頭寺が報告する。
「ゾンダー粒子デス!」
「奴め、機界昇華をはじめる気か!!」
雷牙博士はスワンの言葉を聞いて言う。
「見るがいい」
ここでZマスターは言ってきた。声にまで恐ろしい力が感じられた。
「ザ=パワーによってマスタープログラム再結合を果たしたこの力を。そして」
「そして!?」
「我が分身達よ、青の星へ」
「何っ!?」
「一体何が!?」
また不思議な力が放たれる。それが今地球に向けられた。
「ESウインドウが開かれまシタ!」
「いかん!」
雷牙博士はスワンの言葉を聞いて叫ぶ。
「Zマスターは地球全土にゾンダー粒子をばらまく気だぞ!!」
「何ですって!?」
「そ、それじゃ防ぎようがないよ!」
アスカとシンジはそれを聞いて叫ぶ。
「どうすればいいのじゃ!」
童夢のアスカもこれには言葉もない。
「こんなことが起こるとは」
「まさか・・・・・・」
イーグルもタトラも言葉もない。だが確かにあまりにも大きな力が放たれたのは事実だった。それはもう避けられないものだと思われた。しかし。
「諦めんな!」
イサムが叫ぶ。
「だったらこっちもESウインドウに突っ込むまでだ!」
「何言ってるのよ!」
二号機のアスカがイサムに対して叫び返す。
「そんなことをしたらこっちが先にゾンダー化されるわよ!」
「しかしよ、それしかねえだろうが!」
「じゃああんたゾンダーになってもいいの!?あたしはそんなの絶対嫌よ!」
「こ、これで終わりなんか!?」
トウジが言う。しかしここで護が皆に対して言う。
「皆、諦めちゃいけないよ!」
「えっ!?」
「護、一体」
「僕と戒道にはわかるんだ!!」
彼は皆に対して言う。
「えっ!?」
チャックはその言葉に顔を向ける。
「どういうことなんだ、それは」
「あのZマスターの内部には三十一個の原種核が揃っている筈」
戒道はそう説明する。
「もう一度全ての原種をクリスタルに浄解すれば機界昇華を止められるよ!」
「あの超巨大不法戦闘体を破壊すればいいのね?」
マリアが護に問う。護もそれに頷く。
「うん!」
「フッ、ここが戦士の死に場所か」
「はい、そこ!」
ジェイをさやかが注意する。
「そういうこと言わない!」
「何っ?」
「そーゆーリキみ方、よくないわよ」
フェイがジェイに言う。
「ホントに死んだら仲間を悲しませちゃうんだよ!」
「そうね」
クスハがその言葉に頷いた。
「私達は生きて帰らなきゃ。この戦いで全てが終わるわけじゃないもの!」
「そうか、そうだな」
ジェイは彼等の言葉を聞き頷いた。
「御前達はそうだったな」
「Zマスターの全身を操っているのは中心にいる心臓原種なんだ!」
護はまた皆に叫ぶ。
「そいつを倒せば」
「勝てる!」
「イカロス基地より入電!」
凱が護の声に応えたところでまたスワンから報告が入った。
「ゾンダー粒子が地球圏へ到達したそうデス!」
「!!」
「計算の結果五分以内にZマスターを倒さなければ地球は壊滅的な打撃を受けマス!」
「地球の命運を懸けた五分間ってわけか」
凱はそのことにあらためて決意を固める。
「ロンド=ベル総攻撃開始!この五分間に全てを決するんだ!」
「心弱き者共よ」
大河の攻撃命令が下ったところでZマスターの声がまたしても響く。
「何処まで虚しくあがき続けるのか…」
「黙れ!」
しかし凱はその彼に叫ぶ。
「そのあがきこそ、勝利への執念!それを御前に見せてやる!」
「ならば来い!」
「ああ、やってやる。決着をつけるぞZマスター!!」
今原種との最終決戦がはじまった。まずはエヴァの四機が動いた。
「いいわね、皆」
アスカが他の三人に声をかける。
「一斉射撃よ、いいわね」
「ええ」
レイがその言葉に頷く。
「それも全弾ね」
「思いきってやるわ」
アスカはそのつもりだった。そして他の三人も。
Zマスターとロンド=ベル全軍の戦いは熾烈なものだった。その頃地球では深刻な事態になろうとしていたのだった。
「わあああ~!」
その中で数納は街の変貌を見て泣き叫んでいた。
「もう駄目だぁぁ!」4
「もう!泣いてる場合じゃないでしょ!」
レイコはその彼に対して言う。
「しっかりしなさいよ!」
「けど何なんだよぉ、あれ!」
それでも彼は泣き叫ばざるを得なかった。
「街が変な機械みたいになってくよぉ!」
「ありゃあゾンダーだ!」
その中で末男が言う。彼は何とか泣かずにそこにいた。
「一番上の兄貴が言ってた!」
「じゃあGGGは何やってるのぉ!?」
数納はまた叫ぶ。
「ロンド=ベルと一緒に戦ってるんだよね、確か」
「あ、ああ」
末男は数納の言葉に頷く。
「兄貴達は今木星へ行ってて」
「それじゃどうにもならないよぉ!」
「みんな、諦めちゃ駄目!」
華が皆に言ってきた。
「護君やロンド=ベルを信じて!!」
「そうよ!」
レイコがまた言う。
「あの人達は木星で戦っているのよ!」
「けれどさ!」
数納はまた叫ぶ。
「地球と木星じゃ距離があり過ぎるよ!そんなのでどうやって僕達を助けるの!?」
「るせえ!兄貴達は必ず勝つ!!」
「だからよ、静かにしなさい!」
末男とレイコは何とか踏み止まっていた。華は祈るのだった。
(護君、頑張って)
護を信じて祈る。
(私、信じてるから!)
木星ではロンド=ベルの攻撃が果敢に続けられる。マジンカイザーが腕を放つ。
「ターボスマッシャーーーーパーーーーーンチ!」
多くの敵を砕いてきた拳である。しかしそれを受けてもZマスターはびくともしなかった。
「何っ、ターボスマッシャーパンチを受けてもかよ」
「フフフフフ、フハハハハハ」
Zマスターは笑っていた。彼等はそれを見て驚きを隠せなかった。
「何っ!?全く動じていないのか」
「Zマスター、ダメージを受けていマセン!」
驚く凱にスワンが言う。
「受けてはいても微々たるものデス!」
「馬鹿な!」
ヘンケンはそれを聞いて叫ぶ。
「今までどれだけ攻撃を浴びせたというんだ」
「奴はバリアを持っているのか!?」
「というよりは
猿頭寺が大河に答えて言う。
「エネルギーの総量が桁違いなので海に角砂糖を溶かすようなものです」
「おい、そりゃ洒落にならねえぞ!」
火麻はそれを聞いて思わず叫ぶ。
「敵は甘かねえってことか!」
「くそっ!」
ガムリンもありったけのミサイルを放つ。しかしやはりびくともしていない。
「あんな巨大な物体をどうやって倒せばいいんだ!?」
「ガムリン、叫んでいる暇はないぞ!」
そこに金竜の声が響く。
「どんどん撃て!」
「わ、わかりました!」
「だが」
金竜はここで苦い顔をコクピットの中で浮かべた。
「あまりにも手強いな、これは」
「フフフ、感じるぞ」
Zマスターは彼等の攻撃を受けながら余裕の笑みを浮かべていた。まるで絶対者であるかのように。
「激しい憎しみと怒りを。御前達こそあふれ出るマイナス思念の源」
「何っ!?」
「俺達が」
ロンド=ベルの面々はそれを聞いて思わず耳を凝らした。
「そうだ。宇宙を混沌へ導く者よ、滅びよ!」
「戯言を!」
ジェイはZマスターのその言葉に返す。
「もがき、あがくことこそ生命の本質!」
彼は言う。
「我等生命ある者のあがき、とくと見せてやる!」
「愚かな」
Zマスターはその彼の言葉を冷笑する。
「滅びの道を自ら選択するつもりか」
「誰がそんなことを!!」
「御前は何もわかっていないだけだ!」
竜馬と一矢が攻撃を浴びせながら反論する。
「命のことを!俺は何があっても負けはしない!」
「機界昇華こそが破滅から逃れる唯一の術」
Zマスターは一矢に応える形でまた言う。
「破滅から逃れる唯一の術全宇宙を救うための答えなのだ」
「違う」
シンジはそれを聞いて呟く。
「全ての有機生命体は機界昇華によって補完されねばならぬのだ」
「それは違う!」
シンジは遂に叫んだ。全てを否定するかのように。
「それじゃあ逃げてるだけじゃないか!」
「シンジ君!?」
ニコルは彼の激昂を聞いて思わず彼に顔を向けた。
「一体」
「何もせずに破滅から逃げてるだけじゃないか!」
「違う」
Zマスターはシンジの今の言葉を否定する。
「これは逃げではない。救いなのだ」
「いえ、違うわね」
アスカはZマスターのその言葉を見据えて言ってきた。
「悪いけどバカシンジの言う通りよ!あんたの価値観を押し付けないでよね!」
「押し付けか」
「そうよ!あたし達は生きてやるわよ!自分の力でね!」
「だが非力な御前達ではこの私を倒すことは適わぬ」
「その台詞さっきも聞いたぜ」
勝蔽がそれに突っ込みを入れる。
「何度も聞くと聞き飽きるんだよ」
「その通りよ」
恵子も言う。
「何かね、いっつも聞いてるといい加減食傷気味なのよ!
「その手の台詞で俺達が怯むと思ったら大間違いだ、勝平!」
「ああ!」
勝平は宇宙太の言葉に頷いてザンボットを前にやる。
「万丈さん、仕掛けるぜ!」
「そうだ、その意気だ!」
万丈は三人の心意気に今頷く。
「塵も積もれば山となる。やって損はないんだ」
「あと三分デス!」
「それだけあれば充分だよ!」
万丈はスワンにも答える。
「じゃあ勝平君!」
「ああ!」
「ダイターンジェベリン!」
「ザンボットグラップ!」
接近して攻撃を浴びせる。皆それに続く。
「ギャブレー!アム!レッシィ!」
ダバは三人に声をかける。
「バスターランチャーだ!これなら」
「わかった!これならば!」
「ちょっとはダメージになるでしょうね!」
「喰らえ!」
四人はバスターランチャーを斉射する。それはZマスターの胸を撃つ。
「ありったけのビームライフルを撃ち込め!」
グローバルが全軍に命じる。
「全弾だ!これが最後と思ってな!」
「はい!」
クローディアがその言葉に頷く。
「接近戦を得意とする者は一撃離脱だ!」
彼はこうも指示を出す。
「三分で全てを決める!」
「了解!」
皆渾身の攻撃を続ける。その中でジェイが出て来た。
「マイナス思念と呼ばれる負の感情こそ生きている証!」
彼は叫びながら全ての砲門を開く。
「それなくして何の生命か!」
「だからこそ生命体は機械と融合を果たした」
Zマスターは相変わらずこう言うだけだった。
「次なる次元に向かうために」
「そんなものは逃げでしかない!」
「やがて訪れる破滅の日を乗り越えるための最善の策。理解出来ぬのなら滅びよ!」
「滅びるのは貴様だ!受けよ!」
今ジェイは全ての力を放ってきた。
「これが・・・・・・命の力だ!」
全砲門から攻撃を放つ。ここで遂にZマスターの巨体が揺らいだ。
「ムウッ!?」
「効いている!?」
「ああ、間違いない」
シーブックがセシリーに答える。
「効いている、間違いない」
「そうね。それじゃあ希望はあるわ」
「だからこそだ!希望を捨てるな!」
フォッカーが叫ぶ。
「俺達が敗れれば後がないんだからな!」
「はい!」
「だからこそ・・・・・・!」
さらに攻撃を続ける。一旦揺らげばそこからは速かった。さしものZマスターにも疲れが見えてきた。彼等は希望を遂に掴もうとしてきた。
「あと一分だ!」
大河がここで叫ぶ。
「あと一分で倒す!いいな!」
「了解!」
「もうすぐだ!」
「喰らえ・・・・・・!」
アキトが特攻気味に接近して零距離で攻撃を浴びせた。
「これならどうだ!」
「アキトがやるなら私も!」
ユリカもすぐに動いた。ナデシコを向かわせる。
「グラビティブラスト!発射です!」
「はい」
何故か答えるルリは微かに笑っていた。
「皆で勝利を掴む為に」
「そういうことです!だから!」
「発射です!」
「はい」
メグミに答えるルリの声は微かに感情が見られた。普段の彼女とは違っていた。
グラビティブラストも受ける。遂にZマスターの動きが止まった。
「よし!」
「うおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!」
凱がここで突っ込む。
「これで決める!」
「くっ、まだ戦うというのか。未来を見ずに」
「未来はもう見ている!」
凱は突撃しながら答える。
「俺達の未来!命ある者の未来を!」
「マイナス思念は宇宙に滅びを与える」
Zマスターはまたしても言った。
「生命体はマイナス思念を持たぬ機界生命体ゾンダーへと昇華されるべきなのだ」
「そんな勝手な結論で俺達の未来を!希望を!」
凱葉最早そのような言葉を受けてはいなかった。
「生命を渡してなるものか!Zマスター、滅びるのは御前の方だ!!」
最後の攻撃に入った。
「ヘル=アンド=ヘブン!」
今その両手に光を宿らせる。
「ゲム=ギル=ガン=ゴー=グフォーーーー・・・・・・」
拳を合わせ突っ込む。
「うおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーっ!!」
渾身の力でZマスターの胸を撃ち込む。そうしてそこから核を取り出した。
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
遂にZマスターを倒したのだった。最期の最後で彼等は勝利を掴んだ。
「ば、馬鹿な」
Zマスターは核を取り出されたまま言う。
「これは何かの間違いだ」
「宇宙に必要なのは御前達の機界昇華じゃない!」
凱は今高らかに言う。
「俺達の熱い勇気だ!」
「熱い勇気だと!?」
「そうだ!それをマイナス思念と呼ぶのなら滅ぶべきは」8
Zマスターを見据えて叫んだ。
「Zマスター!御前の方だ!」
「おおおおおお!!」
Zマスターは爆発し炎の中に消えていく。宙はそれを見て言う。
「やったか!?」
「まだだ!」
しかしここで戒道が言った。
「まだ奴は生きている!」
「行くぞアルマ!」
ここでジェイが動いてきた。
「これで最後だ!」
「わかった」
戒道はそれに頷く。そうしてZマスターの爆発に向かっていく。爆発しているといってもまだその身体は健在であった。
「何をする気なんだ!?」
光がその彼に問う。
「封印しないの?」
「どうしてですの?」
海と風も問う。ジェイの返事は驚くべきものであった。
「私が心臓の内部に入り、奴を倒す!」
「何っ!?」
「そんなことをしたらあんた達まで」
「ザ=パワーは滅びの力でもある」
戒道は静かに言った。
「それを忘れたのは愚かだったな!」
「ザ=パワー全開」
ジェイとトモロも言う。今彼等はZマスターの心臓の中へと入り込んだ。
「ぬおおおっ!!」
「うおおおおおおおおおおっ!」
ジェイの叫びとZマスターの断末魔が響き渡る。これで全てが終わったかと思われた。
「ザ=パワーがZマスターの心臓部から溢れ出しています」
シュウが言う。
「そのエネルギーが奴を絶対崩壊の臨界点へ導いています」
「おい!」
マサキが問う。
「ジェイアークはどうなるんだ!?」
「駄目だ・・・・・・」
雷牙博士は首を横に振る。
「もう助からん」
「ジェイ!!」
「安心しろ、凱」
ジェイが凱に告げる。
「決着はいずれ着ける」
「本当か!?」
「そうだ。だから貴様も死ぬな」
「戒道!!」
今度は護が戒道に問うた。
「君は!?」
「ラティオ」
戒道の声がいささか絶望が混ざったものだった。
「もうザ=パワーの流れを止めることは出来ない」
「でも・・・・・・でもっ!」
「心配ない」
しかしここで戒道は穏やかに笑ってみせてきた。それは友に見せる笑みであった。
「地球の皆を頼む」
「わかった、だから」
護はその言葉を受けたうで戒道にまた言う。
「戒道も死なないで!!」
「ジェイ、アルマ」
トモロが二人に言う。
「わかっている」
二人はそのトモロに対して頷いく。三人の心は一緒だった。
「我々は最後まで一緒だ」
「僕等の目的はこれで達成される、これで」
今Zマスターが爆発する。戒道がその中で最後に思ったのは。
(母さん・・・・・・)
母のことだった。今爆発の中に消える。
「ジェイ!!」
「戒道ぉぉぉっ!!」
凱と護が叫ぶ、今その中に彼等は消え去った。
「我は滅ぶ」
Zマスターはその爆発の中で呟いていた。
「だが・・・・・・」
炎の中に消えていく。そうして消え去ってしまった。
「Zマスターが!!」
「Zマスター、消滅していきマス!」
大河が叫ぶとスワンが報告してきた。それを見て凱は護に声をかけてきた。
「護!」
「うん、二つの力を一つに!」
凱に頷く。そうして。
「ゲム=ギル=ガン=ゴー=グフォー・・・・・・ウィータ!!」
マスタープログラムが消え去った。これで完全にZマスターが消え去ったのだった。
「マスタープログラムの浄解を確認!」
「木星からのエネルギー反応、消えました!」
スタリオンと牛山が言う。
「作戦終了か」
大河はその報告を聞いて呟く。
「これで」
「ああ」
雷牙博士もそれに頷く。
「僕達の勝利だ!」
「これで地球は救われたか」
「ハイ」
大河に対してまたスワンが言う。
「地球圏のゾンダー粒子も消滅したそうデス」
「よっしゃあ!!」
「GOODJOB!」
豹馬とハッターが叫ぶ。ちずるも胸を撫で下ろした。
「大変だったけれど」
「何とか終わったでごわす」
大作もそれは同じだった。
「ふ~っ、やれやれ。一時はどないなるかと思たで」
「全くですね。今回は流石に僕も予測がつきませんでした」
十三に小介が告げる。頭脳派の彼ですらそうだったのだ。
「けど、良かったですよ」
「そうだな」
ムウはキラの言葉に頷いた。
「わざわざ木星まで来た甲斐があったな」
「正直木星と合身したZマスターを見た時はさしもの俺も冷や汗かいたが」
真吾も胸を撫で下ろしている。
「何とかなるもんだ」
「そうね。これも正義の味方の特権かしら」
「俺的にはダークヒーローも悪くないかなって思ったりして」
そのうえでレミーもキリーもいつもの軽口だ。だがそれを言うだけの価値はあった。
「図体とパワーだけで俺達を倒せると思ったのが大間違いだぜ」
「とは言っても、桁違いだったけどね」
忍と沙羅も言う。
「そうだね。何か今までで一番」
「辛い戦いだったが。終わった」
そして雅人と亮も。二人も胸を撫で下ろしていた。
「護、よく頑張ったな」
「ううん」
護はここで首を横に振る。
「皆がいてくれたおかげだよ」
「そうか、そうだな」
「うん」
「諸君、よくやってくれた」
大河が皆に告げる。
「現時刻を以て、木星圏での作戦を終了する」
「俺達は勝った」
最後に凱は木星を見て言った。
「カイン、そしてザ・パワーの力を借りて。それに」
そして今。
「有り難う。父さん、母さん」
両親に礼を言う。
「俺達にも原種にもザ=パワーは制御できないものだった。もう二度とあの力を使うことはない。さらば木星」
父の墓標にもなった木星にも別れを告げる。
「さらばジェイ、ジュエルの戦士達」
「よかった、凱」
命も今嬉し涙を流していた。
「これで・・・・・・全て終わったのね・・・・・・」
「ああ、やっとな」
皆長い戦いが終わったことに喜びを感じていた。しかしシュウだけは違っていた。無言で木星と地球を見ていた。まるでそこに何かがまだあるように。
第百五十九話完
2007・4・25
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