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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百五十五話 光の影

               第百五十五話 光の影
「へえ、そうなんだ」
シンジはセフィーロの大広間で光と話をしていた。その中で声をあげたのである。
「君剣道しているんだ」
「うん」
光は明るい声で彼に答えた。
「そうだ。ちっちゃい頃から」
「凄いね、それって」84
「そうか?」
シンジのその言葉には首を傾げる。
「普通じゃないのか?」
「ううん、どうかな」
シンジはその言葉には今一つ同意しかねる顔を見せてきた。
「ちっちゃい頃から何かしていてそれを今もって人は少ないからね」
「ガキの頃から馬鹿なのはいるけどな」
その横でシンがカガリを見ながら言った。
「そっからずっと馬鹿なのはな。馬鹿は一生だ」
「何だと!」
カガリがそれを聞いて激昂を見せてきた。
「また御前はそう言うのか!」
「何度でも言ってやらあ!」
シンもさらに言い返す。
「御前を馬鹿と言わずに誰を馬鹿と言うんだ!」
「御前には言われたくはない!」
「この前だって酔ってブラ半分はだけさせていた癖によ!」
「なっ、それは」
それを言われて急に大人しくなる。思わず顔を赤くさせた。
「それは不可抗力だ。別に」
「それでまた白だったしな!」
「白の何処が悪い!」
下着の色でも喧嘩をはじめる。
「御前のその赤いトランクスばかりなのよりはましだ!」
「赤いトランクスは情熱の色なんだよ!」
シンは己のポリシーを高らかに宣言してきた。
「それに赤だけじゃない!紫もある!」
「何で紫なんだ?」
「最初からクライマックスになったからだ!」
「御前それは違うだろうが!」
カガリはムキになってまた反論した。
「それはレイだ!」
「何か向こうは凄いわね」
「ああ、いつものことだから」
シンジはそう海に返す。
「気にしないでいいよ」
「いつもなのね」
「うん。アスカも」
「悪い?」
シンジの横にいた。アスカがむっとした顔で言ってきた。
「いや、別に」
「それにしても何か奇遇ですね」
風がふと言ってきた。
「何か私達皆さんと息が合います」
「私達よりもプレセアとかがそうみたい」
「あの背の高い女の人だよね」
「ミサトさんと飲んどるな、今」
トウジが言った。
「リンさんやダイアンさんと一緒に」
「エリスさんやサフィーネさん、あとセニアさんも一緒だったね」
「あれ、何かこの顔触れだと」
海はふと気付いた。
「あのチゼータのお姫様もいるみたいな」
「あっ、本当だ」
シンジもその言葉に頷く。
「何でだろう、そんな気がするや」
「私はあのヒビキさんに」
風はマクロスに興味がいっていた。
「何か不思議な縁を感じます」
「そうなのか、海ちゃんと風ちゃん」
実は光もそうだったりする。
「じゃあ私もカミーユさん達に兄様達と似たのを感じるのも」
「同じなんでしょうね」
「声って不思議ですわ」
「不思議っていえばあれよ」
アスカは腕を組んで言ってきた。
「あのモコナって何なのよ」
「ああ、あれね」
海は彼女に応えてきた。
「とりあえずあまり考えないで」
「考えないでってあんた」
「私達にもよくわからないのよ」
海はそう答えてきた。
「何を考えてるのかもね」
「何も考えてないんじゃないの?」
アスカの言葉はある意味的を得ていた。
「そんな気がするけど」
「あら、思慮深げですわ」
しかし風はこう見ていた。
「モコナさんにも何かお考えが」
「どうだか」
「ぷう、しか言わないみたいだし」
海とアスカは同じようなことを言い合う。何か波長が合うようであった。
「ところで」
レイがふと口を開いてきた。
「あの三国はまた来るのね」
「うん」
光が彼女の言葉に頷いてきた。
「それは間違いない、絶対に来る」
「そう、やっぱり」
「何か個性的だけれどね」
「あの方達にも事情がおありですから」
「事情ねえ」
アスカは風のその言葉に眉を顰めさせてきた。
「どれもこれもかなり身勝手じゃない」
「そんなものじゃないかな」
だがシンジはそれを当然だと考えているようであった。
「戦争なんてそんな理由で起こるし」
「それはそうだけれどね」
アスカもそれは認める。
「けれどね。何かそれでセフィーロの人達が困るのは」
「わかるか、アスカちゃん」
「えっ、アスカちゃんって」
光の今の言葉には目を丸くさせた。ちゃん付けは実ははじめてなのだ。
「だからだ、戦おう」
「え、ええ」
引きながらも光に答える。
「そうね。皆迷惑しているんだし」
「そうなんだ、だから私達は戦うんだ」
彼女はまっすぐな目でそう語る。
「皆の為に」
「そうなんだ」
「ええ、そうよ」
シンジに海が答えた。
「最初呼ばれた時は何ここ、って思ったけれど」
「皆さん困っていらっしゃいますから。だから」
風もにこりと笑って述べる。
「私達はここで」
「皆の為に」
「ううん、何か凄い立派」
「そうね」
アスカも珍しく素直にそれに頷く。
「うちなんて格好いいから戦うなんて言ってるのもいるし」
甲児のことであるのは言うまでもない。
「まず仲間内で喧嘩ばかりしてるのもいるし」
「それはアスカのこと?」
「何言ってるのよ、あいつ等のことよ」
そう言ってシンとカガリを指差す。
「いっつもやってるでしょ、あの連中」
「いや、アスカだって」
「何よ、あたしが喧嘩ばかりしてるっていうの!?」
「うん」
シンジは正直に答えてきた。
「だって本当のことだし」
「喧嘩はよくないぞ」
ここで光が言葉を入れてきた。
「やっぱり仲良くしないと」
「わかてtるわよ」
アスカは一応はこう答えた。14
「けれどね、何て言うか」
「アスカって素直じゃないから」
「ええい、横から次から次に」
シンジに言い返す。
「それはいいのよ。何でこうも色々な人間が来るのよ」
「何か楽しそうですわね」
風はそんなアスカとシンジのやり取りを見て笑っていた。
「ロンド=ベルの皆さんは」
「そうね。連邦軍のエース部隊だっていうからどんなのかって思ったけれど」
「いい人達ばかりなんだな」
海と光も笑顔で言う。
「それで安心したよ。一緒にセフィーロを助けよう」
「困ってる人を見過ごさないのは仕方ないわね」
「口ではああ言うけどな」
「うん」
トウジが光に囁く。
「アスカはいざって時はお年寄りに席を譲ったり泣いてる子供を慰めたり子犬の世話してるんやで」
「本当にいい人なんだな」
「そうや。ちと素直でないだけや」
「何言ってるのよ、あたしはねえ」
「ほら、そうやってすぐ照れる」
「アスカさんって優しい方なんですね」
海と風に言われて言葉を詰まらせる。どうにも苦手といった感じであった。
「うう・・・・・・」
「それでさ」
シンジがさらに三人に尋ねてきた。
「何かあの三国それぞれ事情があるみたいだけれど」
「ええ、そうなのよ」
海がシンジのその問いに答えてきた。
「チゼータは聞いたわよね」
「うん」
海の言葉に頷く。
「狭いんだよね」
「ほら、これ見て」
ここでチゼータが描かれた絵を出してきた。
「これがチゼータなの」
惑星に何か大きな突起がついた星であった。かなり変わっている。
「大きいじゃない」
シンジはその星を見て言った。
「これ位なら」
「この突起には人は住めないわよ」
「えっ!?」
「住めるのはここだけなの」
指差したのはその小さな惑星であった。見ればかなり小さい。
「ここだけなの。狭いでしょ」
「うん、確かに」
その言葉に納得して頷く。
「これは困るね」
「そういうことなのよ。だから攻めて来たのよ」
そうシンジに説明した。
「困ったことにね」
「確かに困ったことだね」
「けれどあそこの人達は悪い人達じゃないわ」
けれどもこうも言う。
「一回会ったけれどね」
「ふうん」
「話し合うこともできるんだろうけれど。参ってるのよ」
「そうした複雑なことって結構あるよね」
今までの戦いでシンジもそれがわかってきていた。
「どうしても戦わなくちゃいけないって」
「まあそこまではいかないかもだけれどちょっと困ってるのよ」
「何とか穏やかにいきたいけれど」
「何馬鹿言ってるのよ」
アスカが話に復帰してきた。そのうえでシンジに言ってきた。
「攻めて来る相手なんか速攻でやっつける、これしかないでしょ」
「それはそうだけれど」
しかし海はそれにはあまり賛成してはいなかった。
「あまりね。やっぱり」
「ふん、甘いわね」
「そうは言うてもな」
「うんうん」
「だからあんたはいちいち言わないの!」
また光に話そうとするトウジに突っかかる、
「全く。あたしばかり何で」
「静かにするといいわ」
レイが彼女に言う。
「ここは」
「それができれば苦労はしないわよ」
だがアスカはこう返す。やはりアスカはアスカであった。
今度はファーレンについてであった。風が説明する。
「これがファーレンです」
土星のような輪が二つある大きな惑星であった。それを見て喧嘩を中断したシンが言ってきた。
「でかいじゃねえか」
「はい」
風も彼に答える。
「豊かな星らしいです」
「そんなところから何でわざわざ来るんだ?」
「何でもセフィーロをお菓子の国にするとか」
「あの我儘お姫様が言ってるんだな」
「そうなのです。アスカさんともお話しましたが」
ここで言うアスカはファーレンのアスカである。なおシンもアスカではある。
「お菓子がお好きらしくて」
「とんでもねえ話だな、おい」
シンもそれを聞いて呆れていた。
「攻めるにしちゃ滅茶苦茶な理由じゃねえか」
「けれどこうしたことは結構あるんじゃないかな」
キラが彼に言ってきた。
「そうなのか?」
「権力者の我儘でってのは。昔から」
「とするとあのお姫様はとんでもねえ我儘か」
「ふざけた話だ」
その我儘お姫様カガリも憤慨していた。
「そんなことで一国の主が務まるかと思っているのか」
「全くだね、本当に」
「カガリ様、ですがそれは」
「御前達は黙ってろ!」
明らかに何か言いたいユウナとキサカに言い返す。
「私はそんなに駄目君主なのか」
「言うまでもねえじゃねえか」
やはりシンが突っ込みを入れてきた。
「こんな馬鹿を補佐しなきゃいけないユウナさんとキサカさんが可哀想だよ」
「御前にだけは言われたくはない!」
カガリもシンに突っかかる。
「やっぱりここで死ね!」
「おう、その台詞百万倍にして返してやるぜ!」
「というわけなんで御気になさらずに」
アズラエルが風に二人は放置するように言う。
「あちらはあちらで」
「はい、それでですね」
風も全く動じることなく述べる。
「アスカさんも悪い方ではないのですがまだ子供ですので」
「そういうことなのね」
「はい。またお話できたらいいと思っています」
風はそうレイに答えた。
「また機会があれば」
「そうやな。悪い奴やなかったら話し合いをするのがええわ」
トウジもそれに頷く。
「それで最後やけれど」
「これがオートザムだ」
光は何か棘があちこちから飛び出た惑星を出してきた。
「何か凄いね」
シンジはその惑星を見て少し眉を顰めさせた。
「危なくない?凄いことになってるみたいだけれど」
「そうなんだ。精神エネルギーが枯渇してきているらしいんだ」
「それでなんだね」
「そうだ」
光は答えた。
「このままじゃオートザムも」
「大変だね、何か」
「けれど侵略してきたらやっつけるだけよ」
アスカはまた言ってきた。
「それだけよ、結局は」
「ううん、そうだけれど」
「まあそのまま何の罪もないオートザムの人達が死ぬのはあれだけれど」
アスカもそれを喜ぶタイプではない。
「何とかできればね。けれどとりあえずは」
「セフィーロってこと?」
「そういうこと、いいわね」
そうシンジに告げる。
「わかったらさっさとね」
「わかってるよ。戦うしかないのは」
「済まない」
光はシンジ達に謝ってきた。
「助けてもらって」
「いや、それはいいんだよ」
しかしシンジはそれはよしとした。
「それはね。僕達も縁があってここに来たし」
「そうなのか」
「そうだよ。だから気にしないで」
穏やかな声でこう述べてきた。
「お互い仲良くいこうよ」
「有り難う」
「それでこれからどうするの?」
「どうするって?」
海の言葉に顔を向けてきた。
「いえ。何かあちこちで宴会やってるけれど」
見ればミサトとプレセア達だけでなく他の面々も楽しげに飲み食いをはじめている。意外な顔触れではラファーガと京四郎といったものもあった。
「とりあえずモコナから何でも出せるけれど」
「ぷう」
「じゃあお野菜」
レイがそれに応えて言ってきた。
「お肉以外」
「お菓子がいいわね」
アスカはそれがリクエストであった。
「アイスクリームでも」
「私もだ」
光もそれに賛成してきた。
「アイス大好きなんだ」
「あっ、そうなの」
「そうなんだ。何がいい?」
「そうね、バニラかしら」
「じゃあ私もそれだ」
「僕はケーキがいいな」
シンジは言った。
「チョコレートケーキ。いい?」
「ぷう」
モコナはそれに応えてチョコレートケーキを出してきた。ここで海が言ってきた。
「実はセフィーロにはケーキはないのよ」
「そうなんだ」
「ええ。けれど出せるから安心して」
「うん」
「私も」
レイもチョコレートケーキを所望であった。
「お願いできるかしら」
「どうぞ」
またチョコレートケーキを出してレイに手渡す。
「有り難う」
「とにかく食べないとね」
アスカはここで言った。
「力にならないから」
「その通りだよアスカちゃん」
光はまたアスカをちゃん付けしてきた。
「だから食べよう」
「光ってお腹空くとすぐエネルギー切れになっちゃうからね」
海が光の方を見てくすりと笑ってきた。
「だから食べましょう」
「うんっ」
「しかし何やな」
トウジはクッキーを食べながら述べてきた。
「皆これで色々楽しんどるな」
「そうですわね」
風がそれに頷く。
「ロンド=ベルの皆さんと波長が合うといいますか」
「ええこっちゃ」
トウジはそのことに満足を覚えていた。
「やっぱり仲良うないとな」
「俺はこいつとは嫌だ」
「私もだ」
シンとカガリは相変わらずであった。
「どうしてこんな」
「馬鹿と」
「まあまあ。食べている間は仲良くね」
海がそんな二人に言う。
「食べましょうよ」
「そうだな。以前は不快な思いをした」
イザークが忌々しげにアスカを見て言ってきた。
「俺はこいつに河童と呼ばれた」
「河童ってアスカちゃん」
光がアスカを咎めるような目で見てきた。
「その言葉はあまり酷いんじゃないのかい?」
「だってあの時は初対面だったし」
「御前は初対面の相手に河童呼ばわりするのか!」
かなり滅茶苦茶だ。イザークが怒るのも無理はなかった。
「一体どういう」
「ああ、黙ってなさい!」
イザークの話を無理矢理終わらせた。
「食べた後でね。いいわね」
「うむ。しかしこのマロングラッセ」
「はい、美味しいですね」
シホが隣で応える。
「上品な味で」
「母上が作ってくれたのと同じ味がする」
「そうなんだ。母様と」
光がその言葉に顔を向けてきた。
「それはいいな」
「何だ、御前にも母親はいるだろう」
イザークはそう言って光に顔を向けてきた。
「違うのか?」
「いるよ。けれど」
だがここで微妙な顔をしてきた。
「家にはいないんだ」
「どういうことだ?」
「父様と一緒に。家を出た。兄様達に私を任せて」
「何があったんですか?」
シホが彼女に問うた。
「訳がおありのようですが」
「父様はその時子供だった私に剣道で負けてそれで修業の旅に出ているんだ」
光はそう語った。
「それで父様について」
「そうだったのか・・・・・・っておい」
ディアッカはそれを聞いて突っ込まざるを得なかった。
「何かの柔道漫画みたいじゃねえかよ、それって」
「よく知ってますね、ディアッカ」
「っていうかまんまじゃねえか」
そうニコルにも返す。
「この流れってよ」
「それで今家は兄様達と私、そしてヒカリだけなんだ」
そう説明する。
「また何時か戻って来るだろうけれど」
「ううむ、いい話だ」
イザークはそれを聞いて目を閉じつつ感動の言葉を述べた。
「光のお父上とお母上、どちらも立派な方だ」
「有り難う」
「そうなのか?」
「イザークはそう思っているみたいですね」
ディアッカとニコルはそれを聞いてこそこそと言葉を交あわせる。
「少なくとも」
「わかんねえな、あいつの感性も」
「まあそれは言わない約束で」
そんなことを話していたが他の者達の耳には入ってはいない。イザークは感動した様子でさらに光に対して言うのだった。
「その御両親を誇りにするといい」
「うん」
「素晴らしいことだ、俺は深く感動した」
「イザークさんっていい方ですね」
風は彼のその言葉を聞いて言った。
「俺は自分ではそうは思ってはいないがな」
「いやいや、何言ってるのよ」
海も彼に対して言う。
「凄いわよ、そこまでわかってたら」
「そうか」
「見直したわ。最初は何か血の気が多そうだと思っていたけれど」
「俺はそんなに血の気が多いのか」
「って自覚していないの?」
トールがそれに少し引く。
「それはちょっと」
「そうよ。幾ら何でも」
ミリアリアも眉を顰めさせていた。
「どうかと思うけれど」
「まあ自分じゃ自分のことはあまりわからないよ」
カズイの言葉は至って冷静であった。
「意外とね」
「そうなんだよな。僕も最近皆の間じゃ参謀みたいだって言われるけれど」
「サイはそんな感じだね」
「そうかな」
キラに言われても今一つぴんと来ない感じだった。
「あまりそうした意識は」
「皆色々なんだな」
光は彼等のやり取りを聞いて述べてきた。
「本当に」
「そうね。けれどこれって」
「楽しいですわ」
海と風はにこりと笑った。そうして戦いの前に交流を深めるのであった。
次の日はもう三国がまた来ていた。だがどうにも様子がおかしかった。
「おら、いったらんかい!」
タータはあの精霊をNSXと童夢に向けていた。
「目障りやからいねや!」
「アスカ様、チゼータが我々に攻撃を!」
「ぬうう、小癪な!」
アスカはそれを受けてまた幻術を使ってきた。
「そうなればわらわも!ついでにオートザムにも攻撃じゃ!」
「はっ!」
「あいつ等こっちにも仕掛けて来るよ!」
NSXの艦橋でザズが叫ぶ。
「イーグル、どうするの!?」
「当然迎撃です」
イーグルはそう指示を出す。
「ジェオ、ザズ、艦橋はお願いします」
「了解」
「わかったよ、イーグル」
彼等も彼等で戦いをはじめた。三国は三つ巴の戦いを繰り広げていた。
「何やってんだ、あいつ等」
忍は彼等が争う様を見て呟いた。
「勝手に喧嘩やってるけれどよ」
「同士討ち・・・・・・いや、違うか」
亮はその戦いを見てすぐに自分の言葉を変えた。
「あれはむしろ」
「最初から仲悪かったみたいだね」
雅人はそう読んだ。
「あの揉め方は」
「そうみたいだね」
それに沙羅が頷く。
「どういうわけか知らないけれど」
「あの三国は協力関係にはない」
クレフが彼等に説明する。
「だからああして互いに争うこともある」
「そうだったんですか」
それを聞いてエマが彼に顔を向けた。見下ろす形になっている。
「それでああして」
「そうだ。こうしたことは前にもあった」
クレフは言う。
「彼等は決して友好関係にあるわけにはない」
「じゃあそこに付け込めるか」
ヘンケンはそう判断してきた。
「相手が揉めているなら」
「そうですね。これは好機かと」
ナタルはそれを受けてヘンケンに告げてきた。
「全軍出撃してそうして」
「そうだな、よし」
ヘンケンは彼女の言葉を受けて断を下してきた。
「全軍出撃だ、いいな」
「よし!」
「これで全部終わらせるぜ!」
ロンド=ベルは一気に出撃した。その目の前では三国がまだ派手に争っていた。
「おんどりゃあ!今日こそは引導渡したる!」
「どちらも滅ぼすのじゃ!」
「そのまま!ラグナ砲用意だ!」
三国はまず自分達で争っている。しかしすぐにロンド=ベルの存在に気付いた。
「タータ、前」
「前って・・・・・・えっ」
タータは姉の言葉でふと前を見て声をあげた。
「地上人が。また」
「あちらに向かわないといけませんね」
「くっ、こんな時に!」
「どうするの、それで」
にこりと笑って妹に問う。
「どちらを先に」
「まずはセフィーロ!」
タータはそう決めた。
「セフィーロを攻める!攻撃は一旦中止!」
「わかったわ。じゃあそれでね」
チゼータだけでなく他の二国とセフィーロに顔を向けた。何とかそちらに戦闘用意を整える。
「ちぇっ、そのままやってくれたらよかったのよ」
勝平は三国がこちらを向いたのを見て舌打ちした。
「面白くねえなあ」
「まあ仕方ない」
宇宙太は彼にそう返す。
「それはそれだ」
「そうね、いいわね勝平」
「ああ、わかってるさ」
そう恵子に返す。
「それじゃあな」
「ええ」
「今度で勝負を決めるか」
ブライトは敵を見ながらそう呟いた。
「少なくとも一国は倒しておきたいな」
「そうですね」
皆それに頷く。彼等は三国に向けて動こうとしていた。
だがここで。ある気配を察する者達がいた。
「!?」
「これは」
シーラとエレであった。二人は急に沸き起こった邪悪な気配を察したのだ。
「皆さん、大変なことが」
「この邪悪な気配は」
「気配!?」
「一体何が」
彼等が声をあげた時だった。それが出て来た。
「あれは」
「ノヴァ!」
光がその謎の魔神の姿を見て驚きの声をあげた。
「また・・・・・・」
「暫く振りね、光」
ノヴァは無邪気でいて邪悪さも含んだ笑みを光に向けてきた。
「元気みたいでよかったわ」
「また出て来たなんて」
「何時でも出るわ」
にこりと笑って光に言う。
「そうよ、何時でもね」
またノヴァは言った。
「光を殺す為に」
「ノヴァ、どうして」
「何だ、あのノヴァっての」
甲児はそのノヴァと光のやり取りを見て言う。
「おかしいなんてものじゃねえぞ」
「そうだな」
鉄也がそれに頷く。
「何だ、あの女は」
「普通の人間ではないみたいだな」
大介はそれを見抜いてきた。
「そんな感じがする」
「そうですわね」
それにモニカが頷いてきた。
「この妖しくはないということはない気配は」
「ええ。文法はおかしいけれどね」
セニアがそれに応える。
「これはね」
「しかもまた来たぜ」
甲児はまた言った。
「見ろよ、前」
黒い渦が出て来ていた。それを指差していた。
「何だありゃ」
「わからない、けれどな」
マサキが言う。
「またとんでもねえのが出て来てるぜ」
「何なんだ、一体」
「いや、あれは」
そこから出て来たのはメディウスであった。しかしその姿はかなり変わっていた。さらに禍々しいものになっていたのだ。まるで邪神のように。
「先生、ここでも!」
「そうよ、これも縁ね」
ミッテはアクアに応えて何か狂気のある笑みを浮かべてきた。
「けれどこれはこれでいい話よ」
「何を考えているんですか、一体」
「それは貴女には関係のないこと」
それは言おうとはしない。
「けれど。貴女は倒してあげるわ」
「くっ・・・・・・!」
「そういうことだな、隊長」
ヒューゴはそれを聞いてアルベロに問うてきた。
「あんたも」
「そうだ」
アルベロは一言で返してきた
「それだけだ」
「わかった、ならいい」
ヒューゴもそれ以上聞こうとはしない。
「それなら」
「何じゃ、あれは」60
アスカはノヴァやミッテを見てその幼いながらも奇麗な眉を顰めさせた。
「どの国のものじゃ?オートザムかチゼータか?」
「はて」
その後ろでチャンヤンが首を傾げていた。
「あのようなものは二国にはない筈ですが」
「そうじゃのう。わらわも見たことがない」
アスカも答えて述べる。
「また面妖な」
「面妖どころじゃないかも知れませんよ、アスカ様」
サンユンが言ってきた。
「僕も案なのは見たこともないですし」
「確かに。しかも」
アスカはここで感じた。
「邪悪じゃな」
その気配を察しての言葉であった。
「あの者達、よからぬ者達じゃ」
「確かに」
チャンヤンがそれに頷く。
「あれは尋常ではありませぬ」
「そうじゃ。気をつけよ」
周りの者に声をかける。
「よいな」
「はっ」
ファーレンは彼等に警戒を向けた。それはオートザムも同じだった。
「おい、イーグル」
ジェオが出撃したイーグルに声をかけた。
「戻った方がいいな」
「彼等ですか」
今現われたノヴァとメディクスを見て述べる。
「そうだ、何かやばそうだ」
「そうですね」
イーグルもそれに頷く。
「不吉なものを感じます」
「だからだ。一旦NSXで様子を見た方がいい」
「はい」
イーグルもそれに頷く。
「それでは」
「もう着艦準備はできてるよ」
ザズが答えてきた。
「だからさ」
「わかりました、ザズ」
今度はザズに答えた。
「それでは」
「うん、すぐにね」
「しかし何か」
イーグルもアスカに似たものを感じていた。
「地上の兵器を思わせるような」
ファーレンでもチゼータではない。それは確信していた。NSXに戻ったイーグルはすぐに艦内で指揮にあたるのであった。彼等もファーレンと同じであった。
「な、何やあれは」
チゼータではタータがその口を大きく開けていた。
「またよおわからんのが出たな」
「タータ、お茶よ」
「お茶なんか飲んでる場合ちゃうでお姉様」
そうタトラに返す。
「またしても訳わからんのが。オートザムかファーレンか」
実はこの三国は仲が悪い。昔から何かと衝突していたりする。
「あいつ等またけったいなことを」
「彼等ではないみたいよ」
しかしタトラは冷静にそう述べてきた。
「そうなんか!?」
「だって。シルエットが違うし」
「言われてみれば」
タータは姉の言葉にふと気付く。
「あいつ等の悪趣味さがない。やっぱりちゃうんか」
「そうみたいね。けれど」
「ああ、わかってるで」
姉の言葉にこくりと頷く。
「警戒態勢や。いっちょやったらんかい!」
彼等も慎重な行動に出た。三国はセフィーロ、ロンド=ベルに向かうよりもまずノヴァとミッテに対して警戒態勢に入った。これは正解であった。
「邪魔ね」
ミッテは三国の戦艦を見て言った。最初の攻撃目標を彼等に定めたのだ。
「まずはあの三隻の戦艦をお願いします」
そうアルベロに言う。
「わかった」
「それでは」
アルベロの返事を受けて赤いマシンと青いマシンをメディクスの周りに出してきた。
「ではシニクトラ、デクストラ」
ミッテはそのマシン達の名を呼ぶ。優に数百はあった。
「我がAIの子供達よ、行きなさい」
三国に攻撃を仕掛けてきた。忽ち彼等は防戦一方となった。
「弾幕を!」
「ああ!」
NSXは弾幕を周囲に張る。それで何とか防ごうとする。
しかしかなりの数だ。防ぎきれずあちこちにダメージを受ける。
童夢も同じであった。龍が大きく揺れていた。
「うろたえるでないぞ!」
アスカはその艦橋に立ち皆に指示を出す。
「よいな!」
「は、はい!」
柱に捕まるサンユンがそれに頷く。何とかしがみついて頷くのであった。
チゼータも攻撃を受ける。タータが皆に叫ぶ。
「落ち着くんや!」
ここでも関西弁であった。
「焦ったら負けや、ええな!」
「ところでタータ」
タトラが場違いなおっとりとした声でタータに声をかけてきた。
「どないしたんや、姉様」
「ここは彼等の相手をしなくてはいけないわね」
「ああ」
姉の言葉に頷く。
「言うまでもないわ」
「だったらセフィーロや地上の人達は」
「今は相手してる暇やあらへん」
タータはきっぱりと言った。
「まずは目の前の相手や」
「そうよね。それじゃ」
タトラはその言葉ににこりと頷いた。
「一時停戦ね」
「向こうがうんと言わんで」
戦闘の指揮にあたっていたので今はそれに応えない。
「けれど今は」
「わかったわ。セフィーロの皆さん」
「えっ!?」
いきなりセフィーロに声をかけた姉に目を丸くさせる。
「姉様、一体何を」
「だから講和よ」
にこりと笑ってタータに述べる。
「戦えないのだから。仕方ないわ」
「けれどうち等はセフィーロと」
「今はね」
しかし穏やかに妹に何も言わせない。
「まあここは任せて」
「ええけど」
「それじゃあ。聞こえますか、セフィーロの皆さん」
「うむ」
クレフが彼女に応える。
「チゼータのタトラ王女か。何の用だ」
「今我が軍は謎の敵に攻撃を受けています」
彼女は言う。
「それで一時講和したいのですが」
「講和か」
「はい」
タトラはその言葉に頷く。
「そうです。宜しいでしょうか」
「矛を収めるというのだな」
「少なくとも今は」
にこりと笑って言葉を返す。
「駄目とあらば宜しいですが」
「いや」
だがクレフはその言葉に首を横に振った。それからまた述べた。
「その申し出喜んで受けよう」
「よいのですか、導師」
ラファーガが彼に問うてきた。
「それで」
「よい」
クレフはその言葉に頷いた。
「今はな。あのノヴァ、そして新たに現われた地上のマシンの方が」
「危険であると」
「そうだ、わかったな」
ラファーガに顔を向けて言う。
「とにかく今は敵が少ない方がいい」
「はい」
「そういうことだ」
チゼータとまず一時停戦となった。それを見てサンユンがアスカに声をかけてきた。
「アスカ様」
「わかっておる」
勘の鋭いアスカである。彼が何を言わんとしているのかもうわかっていた。6
「チゼータじゃな」
「はい、セフィーロと講和しました」
それをアスカに告げる。
「どうしますか?」
「どうするもこうするもない」
アスカは少し不機嫌な顔で言葉を返した。
「わらわとてわかっておるつもりじゃ。敵は少ない方がよい」
「それでは」
「うむ、セフィーロと一時講和じゃ」
彼女もまた決めた。
「それでよいのじゃな」
「はい」
「それではアスカ様」
チャンヤンも言ってきた。
「そのようにあちらには話をしますので」
「頼んだぞ、爺」
「お任せあれ」
ファーレンも講和となった。これで二国がセフィーロと講和した。
当然ながらそれはオートザムも見ていた。イーグルはまずは沈黙を守っていた。
その彼にジェオが声をかける。イーグルの表情を探りながら。
「わかってると思うけれどよ」
「ええ」
イーグルもそれに応える。
「一時停戦ですね」
「そうだ。どうする?」
「そうですね。ここはそうするべきかと」
彼は決断を下した。
「一時的にしろ」
「そうだな、それじゃあ決まりだな」
「ええ、そういうことですね」
「じゃあ俺が話をするよ」
ザズが名乗り出て来た。しかしジェオがそれを止めた。
「いや、俺が行く」
「ジェオが?」
「御前はまだ子供だろ。こうした話は大人がするものさ」
「ちぇっ、俺だってもう子供じゃないんだぜ」
「まあそういうな。俺にも出番をくれ」
「わかったよ。それじゃあな」
三国は一時セフィーロと講和した。これで三国が味方になったのであった。
「何か一気に訳わかんねえ戦艦が増えたな」
ケーンが合流したその三隻の戦艦を見て言う。
「何が何だかな、これは」
「個性派でいいかも知れないがな」
タップとライトはそれぞれ違った反応を見せていた。しかし強い関心を向けているのはケーンと同じであった。
「特にあのカレーだよな」
ケーンはチゼータのプラヴァーダを指差して言った。
「何だありゃ」
「魔法のランプだよな、どう見ても」
「まさかとは思うが中の人達が食べているのもやっぱり」
「アホ!当たり前のこと言うなや!」
いきなりここでタータの言葉が三人を襲った。
「カレー食べて何が悪い!」
「やっぱり」
「そう来ましたか」
「カレーは栄養があるんや!チゼータの誇りや!」
「けれどそればっかりだよな」
ケーンがタータに突っ込みを入れる。
「インド・・・・・・じゃなかったチゼータってよ」
「ちゃうわ!カレーばっかりやない!」
しかしタータはそれに反論する。
「羊のカレーも豚のカレーも鶏のカレーも山羊のカレーも魚のカレーもあるわ!カレーつっても一杯あるんや!」
「全部カレーだよな」
「そうだな」
タップとライトはそれを聞いて言い合う。
「どう考えても」
「牛はないんだな」
「牛はない」
ケーンにきっぱりと返してきた。
「牛は神聖な動物や。食べるなんてもっての他や」
「ああ、やっぱり」
「まんまインドね」
そのインドにいたクェスも言う。
「何か思い出したわ」
「まあここであんた等と会うたのも前世の縁やな」
「そうね、亜美ちゃん」
「ええうさぎちゃん・・・・・・って今言うたの誰や」
速攻でそこに顔を向ける。見ればミサトの声であった。
「私だけれど」
「あんたか」
「何かどっかで見たことがあるような気がしない?お互いに」
「確かに」
何故亜美とうさぎという名前が出たかは謎ではあるが二人は妙な親近感をお互いに感じてはいた。
「何でやろな」
「とにかく一時とはいえ仲良くやりましょうね」
「ああ」
タータはそれに頷く。
「じゃあ頼むで」
「ええ、こちらこそ」
ミサトはにこりと笑って彼に返す。
「そこの坊やもね」
「あれ、お姉さんを見ていると」
ザズは何かミサトを一目で気に入っていた。
「不思議と悪い気はしないや」
「そうね、初対面なのにね」
「何か不思議だけれど」
「車とか好きだよね」
ザズはふとミサトに尋ねた。
「わかるの?そうよ」
「やっぱりな。俺機械は得意さからさ」
「ええ、今度整備お願いね」
「乗るのも得意だぜ」
二人はそんな話もした。何故かそれを見てケーラが微笑んでいた。
これはプレシアとサンユンも同じだった。何故か初対面なのに妙に仲がいい。
「サンユン君っていうんだ」
「はい」
サンユンはプレシアの言葉に頷く。
「宜しく御願いします」
「こちらこそ。何か他人じゃないみたいよね」
「そうですよね。何か」
二人は穏やかな様子で言葉を交わす。
「不思議と」
「確かに不思議じゃな」
それを見てアスカも言う。
「二人の気配がそっくりじゃ。これはまた面妖な・・・・・・いや」
三国とロンド=ベル、セフィーロの気配を探って述べる。
「さてさて、同じ気配を持っている者同士が一杯おるのう。これはまた不思議なことじゃ」
「アスカさんはどうなんですか?」
「そなたと同じじゃ」
風に返す。
「そこの海という者はおるがな」
セレスを見て述べる。
「そこの光という者の気配も一つだけじゃ。ちと寂しいのう」
「アスカさんはどうなのでしょうか」
何故かテュッティやアイナとにこやかに話していたタトラがアスカに問うてきた。
「気配は」
「わらわも一つじゃな」
アスカは少し探ってから述べた。
「爺も」
「左様ですか」
「そこの惰弱そうな少年と」
「あっ、僕」
シンジのことであるのは言うまでもない。
「気の強そうな女」
当然リンである。
「そしてオートザムのな。御主達は同じじゃな」
「奇遇ですね、それは」
イーグルはそれを聞いてにこやかに笑う。
「同じ気を持つ方々がおられるとは」
「そうですね」
シンジも少しばかり困ったような笑みを浮かべてイーグルに応えた。
「何か」
「俺もいるみたいだな」
ジェオはその後ろで笑っていた。
「何かな」
「俺だな」
京四郎がそれに応える。
「それは」
「ああ、そうだな」
ジェオは笑って彼に応える。
「宜しくな」
「ああ」
一通り挨拶を交わす。その間に陣形を整えノヴァとミッテの迎撃態勢に入っていた。
「さて、と」
万丈が向かって来る彼女達を見て不敵な笑みを浮かべていた。
「どう来るのかな、ここは」
「正面からね」
それにミサトが答える。
「そのまま来てるわよ。ただ」
「敵のマシンの数が増えています」
マヤが報告する。
「メディクス=ロクスの周りの赤いマシンと青いマシンが」
「そうね。それじゃあロンド=ベルはメディクスを攻撃ね」
「了解」
皆ミサトの言葉に頷く。
「それじゃあ」
「ただし」
ミサトはここで付け加えてきた。
「セフィーロの防衛は忘れないで。いいわね」
「わかりました」
「しかし」
ショウはその中でふと呟いた。
「どうしたの?ショウ」
「いや、まだ何か感じるんだ」
不吉な気配をノヴァ、ミッテの後ろに感じていた。
「このドス黒いものは」
「はい、確かに」
その彼にシーラが応えてきた。
「感じます、これは」
「シーラ様もですか」
「注意して下さい」
シーラは警戒する声で告げてきた。
「この禍々しい気に」
「あの少女と同じもの。けれどさらに大きい」
エレもまたショウやシーラと同じものを見ていた。
「まるで光がそのまま闇になったような」
その闇を感じながら敵に向かう。ノヴァは光に向かっていた。
「うふふ、さあ光」
にこやかな顔で彼女に声をかける。
「殺してあげる。いいわね」
「何なんだ君は!」
光は自分に剣を向けるノヴァに問う。
「どうして私をいつも」
「だって貴女は私だから」
「私!?」
「そうよ。貴女は私」
ノヴァはその無邪気な笑みで述べる。
「だから大好きなの。そして」
その目が猫のようになりまた言った。
「殺してあげる」
邪悪さに満ちた声であった。その声も剣も光に向けるのだった。
「くっ!」
何とか剣を受け止める。しかしそれはあまりにも鋭かった。
「これは・・・・・・」
「光!」
「光さん!」
海と風はそれを受けて慌てて光を救おうとする。しかし光はそれを拒む。
「いや、大丈夫だよ!」
「けど」
「私に任せるんだ!」
光はさらに言う。
「ここは!だから!」
「いいのね」
海があらためて光に問う。
「それで」
「うん!」
強い声でそれに頷く。
「御願いだ。ノヴァの相手は私が!」
「わかりました」
風はその言葉を受け入れた。穏やかな微笑みになっていた。
「それじゃあ光さん」
「うん、海ちゃん風ちゃん」
「頑張ってね」
「期待しています」
二人は光に任せた。そして迫り来るミッテの軍に向かうのだった。
メディクスがその中心にいる。ミッテはその中で一人笑っていた。
「さて、このセフィーロも一緒にね」
「先生、貴女はまだ!」
アクアが彼女の側まで来て叫ぶ。
「わからないのですか!どうして!」
「いえ、わかってるわ」
しかしミッテは悠然と笑ってアクアに言う。
「このAI1のことが。何よりも」
「いえ」
しかしアクアはその言葉を首を横に振る。
「貴女は。何もわかっていません」
「何を言ってるのかしら」
「貴女はAIのことを何もわかっていません。そう、誰のことも」
「どうやら私を惑わせようとしているようね」
ミッテにはアクアの言葉がそう思えた。
「けれどそんなことで私は騙せはしないわよ」
「先生!」
「よせ」
まだ何か言おうとしたがそれはヒューゴに止められた。
「無駄だ、何を言ってもな」
「そんな」
「こうなってはもう」
「嫌よ、私」
アクアはヒューゴが何を言おうとしているのかすぐにわかった。だからこそそれを拒んだ。
「先生は、私の」
「アクア、御前はミッテに利用されているんだ」
ヒューゴはそんな彼女に言う。
「だから目を覚ませ」
「けれど」
「なら俺がやる」
アクアが動けないのを見て自分で前に出ることにした。
「それならな」
「そうか、御前が来るのか」
「ああ」
ヒューゴはアルベロに答えた。
「あんたも倒す、いいな」
「いいだろう、それで御前の気が済むのならな」
「隊長、一つ聞きたい」
ヒューゴはここでアルベロに問うてきた。
「何だ?」
「あんたが今ミッテと一緒にいる理由は何だ?」
それは長い間わからなかった。だから今問うたのだ。
「どうしてだ?ティターンズに入ってまで」
「戦いたいからだ」
それがアルベロの答えであった。
「息子を捨ててか、自分の」
「あいつは元気だな」
「ああ、今はスペインにいる筈だ」
そう彼に言う。
「あんたの奥さんがいたあの国にな」
「そうか。ならいい」
それだけを聞いて満足したようであった。
「それならな。あいつが元気なら」
「最後に伝えておきたい言葉はあるか?」
「伝言か」
アルベロはその言葉にふと顔を向けてきた。
「そうだ。何かあるか?」
「さしあたってはないな」
だが彼はそれは言おうとはしなかった。
「何もな」
「そうか。ならいいな」
「そうだな。それでは」
「行くぞ」
ヒューゴがメディクスに向かう。戦いはメディクスの周りで熾烈なものになっていた。
「はあああああああああっ!」
ショウがそのオーラで敵をまとめて叩き斬る。緑の光が唸り敵を屠っていく。
「ショウ、まだいるわよ!」
「わかってる!」
ショウはチャムの言葉に頷く。すぐ前にいる敵をまた斬った。
「感じるんだ、邪悪な気配を」
「感じるの!?」
「チャムもそうじゃないのか?」
チャムに問い返してきた。
「これだけの邪悪な気配。一つ一つのマシンから感じる」
「特にあれね」
ヒューゴと戦うメディクスを見てチャムは言った。
「何だろう、今にも暴走しそうな」
「ハイパー化・・・・・・まさか」
「いえ、それに近いわ」
マーベルがショウに答えてきた。
「マーベル」
「同じ気配ね、これは」
マーベルはそうショウに語った。
「自分自身が抑えられなくなり、そして」
「かつての私のようにか」
バーンはそれを聞いて顔を顰めさせる。
「見たくはないものだな、かつての自分自身というものは」
「そうは言ってもな、実際に今そうなってるってことはよ」
「わかっている、トッド」
ショウはトッドの言葉に頷いた。
「あのメディクスもまた倒さなくちゃいけないんだ」
「わかってるさ。けれどな」
しかしトッドはまだ言う。
「あのお嬢さんはそうはいかないみたいだぜ」
「ミッテさんか」
「どうするよ、あの人」
トッドは言葉は軽い調子だったが目は真剣だった。
「自分の先生には何も言えないみたいだけれどよ」
「ああ」
「けれど相手はそんなの気にしちゃいねえからよ。下手したら死ぬぜ」
「アクアさんに下がってもらう?」
キースが提案してきた。
「ここは」
「そうだな」
その提案にニーが賛成してきた。
「ここはそれが一番だな、やはり」
「じゃあ決まりだな。ショウ」
トッドがショウに声をかけてきた。
「御前さんの出番だぜ」
「わかった」
ショウは悪態をつかずにすぐに前に出た。こうしたところが彼らしかった。
そのまますぐにどうしていいかわからないアクアの前に出た。そのうえで言う。
「アクアさん、下がるんだ」
「けれど」
「いいから、ここは俺達に任せてくれ」
「ショウ・・・・・・」
「さあさあ、早く早く」
チャムも彼女に言ってきた。
「早く行かないと怪我じゃ済まないわよ」
「けれど私は」
「ミッテ博士を撃てないならそれでいい」
ショウはまだ戸惑いを見せる彼女にこう声をかけた。
「けれど今ここで自分が撃たれることはない。だから」
「下がれってことなのね」
「そうだ、別にそれでもいい」
そうアクアに告げる。
「だから今は」
「わかったわ」
アクアはようやくといった感じでその言葉に頷いた。
「それじゃあ。後は御願いね」
「了解」
「さあショウ、周りは一杯よ!」
見ればミッテの出すマシンがショウを取り囲もうとしていた。数はいちいち数えていられない程だ。それを見ただけで怖気付くには充分であった。
しかしショウは違っていた。敢然と彼等に立ち向かう。
周りの敵をその剣で薙ぎ払っていく。彼に関しては何の不安もなかった。
「何か凄いわね」
海はそんなショウを見て驚きとも賞賛とも取れる声を出した。
「あれが聖戦士ショウ=ザマなのね」
「噂以上ですね」
「ええ」
あらためて風の言葉に応える。
「あれはね」
「私達も負けていられませんね」
「わかってるわ。来たわよ」
二人のところにもミッテのマシンが来た。
「赤いのも青いのも」
「海さんは右を御願いします」
風はそう彼女に言ってきた。
「私は左に」
「わかったわ」
海はそれに頷く。そうして二人は互いに背中合わせに戦うのであった。
ヒューゴとアルベロ、光とノヴァの戦いは続く。ヒューゴも光も何とかもっているといった状況ではあったがそれでも戦っていた。
「さあ光、そろそろね」
ノヴァは相変わらず無邪気でいて邪悪な様子であった。
「やっと。殺してあげられるわ」
「そんなことは!」
光はその剣を払って言い返す。
「何かわからないけれど絶対にさせない!」
「あら、我儘ね」
その光に対して言う。
「そんなこと言ってももう」
「ノヴァだったな」
ノヴァにその名前を問う。
「どうしてこうまで私を」
「貴女は私じゃない。だからよ」
「どういうことなんだ、わからない」
「そのうちわかるわ。けれどその時は」
やはりまた邪な笑みを浮かべる。
「私が殺してあげる時よ」
「くっ!」
突き出された剣を右に身体を捻ってかわす。そこから素早く反撃に出ようとするがそれより前にノヴァはその剣を突いてきていた。
「速いわね。けれど私の方が速いわよ」
「そんな、もう」
その攻撃も慌ててかわす。しかしそこにまた攻撃が来る。
「光のことは何でもわかるし」
「何でもわかる筈がないんだ」
光はノヴァのその言葉に反論する。
「私は私なんだから」
「私は貴女の影よ」
ところがノヴァはまた光に言うのだった。
「貴女という光のね。影なの」
「影!?」
「そうよ」
光に語る。
「だから。わかるのよ、何でもね」
悪魔のように囁いてきた。
「貴女、今負い目を感じているわね」
「負い目・・・・・・」
「あのランティスって人に。そうでしょ?」
「それは・・・・・・」
「隠さなくていいの」
ノヴァはあえて優しい声を光にかけてきた。
「わかってるから」
「けど」
「そうなんでしょ?」
ノヴァはまた声をかける。まるで悪魔の囁きのように。
「あの人のお兄さんを殺して。そうよね」
「・・・・・・・・・」
光は答えられない。思わず俯いてしまった。
「ほら、やっぱり」
ノヴァは俯いてしまった光にまた声をかける。
「そうじゃない。けれどね」
「私は」
「許してもらえないわよ」
ノヴァはまた言ってきた。
「貴方がどう思っていても。お兄さんを殺したんだから」
「私は・・・・・・」
「だから。私がいるの」
光にまた囁く。
「光が大好きで殺したい私がね」
「私は・・・・・・」
「いかんっ!」
クレフは光の異変に気付いた。それで声をあげる。
「このままでは光は」
「はい」
それにシーラが出た。
「このままでは彼女に」
「しかしどうすれば」
「私達に任せて下さい」
エレも名乗り出てきた。
「おそらく相手は」
「何処に・・・・・・むっ!?」
クレフもここでこれまでにない邪悪な気配を察した。
「あそこか」
「はい、あそこです」
クレフとシーラは同じ一点を見ていた。そのうえで述べる。
「そこを攻撃すればとりあえずは」
「光は解放される。なら」
「シーラ様、オーラキャノンを」
エレはシーラに自分の考えを述べてきた。
「ゴラオンはオーラノヴァ砲を使います」
「はい、艦首をあのポイントに」
シーラはすぐにカワッセにあるポイントを指し示した。
「オーラキャノンを放って下さい」
「ですがシーラ様」
カワッセはシーラのその言葉に驚いて顔を向ける。
「あのポイントには敵は」
「います」
しかしシーラは言う。
「ですから」
「宜しいのですね?」
「はい」
カワッセの言葉にこくりと頷く。
「御願いします」
「わかりました」
カワッセはそれを了承した。そのうえでグランガランの艦首をシーラの指し示した方に向けるのだった。
それはエレのゴラオンも同じだった。二隻の戦艦は同時にそれぞれの最大攻撃を同じポイントに放った。するとその何もない筈の場所で異変が起こった。
「なっ!?」
「何だと!?」
皆それを見て思わず目を剥いた。グランガランとゴラオンの攻撃を受けて空がガラスの様に割れていた。そこは黒い漆黒の闇があるだけだった。
「黒い闇・・・・・・」
「何だあれは」
「いかん・・・・・・」
何処からか声がした。
「わらわの存在が知られてしまった」
「存在!?」
「誰なんだ一体」
「知られてしまったからには仕方がない」
声はまた言ってきた。大人の女の声だった。
「我が名はデボネア」
声は名乗った。
「このセフィーロの影の支配者だ」
「支配者だと!?」
「そうだ」
デボネアは言う。
「聞くのだ、全ての者よ」
そこにいる全ての者に告げる。
「わらわはこの世界を闇に包み込む。そして」
「そして!?」
「全ては終わりだ」
こう言うのだった。
「柱も取り込みセフィーロを全て取り込む。その為に今ここにいる」
「馬鹿な」
「どうしてここに」
「ふふふふふ」
ロンド=ベルの戦士達の言葉には答えない。ただ笑うだけだった。
「また会おう。ミッテ」
「ええ」
「ノヴァ」
「わかりました、お母様」
「お母様!?」
「そうよ、デボネアお母様」
ノヴァはそう語ってきた。
「私の大切なお母様なのよ」
光に語っていた。そのノヴァにまたデボネアから声がする。
「今は下がれ」
「はい」
再びその言葉に頷く。
「それじゃあね。光」
最後に光と別れる時にまた微笑んで来た。
「今度会う時こそね。殺してあげるから」
そう言い残して。姿を消すのであった。
戦いが終わったが謎が残った。ロンド=ベルの者達にとってはわからないことばかりであった。いきなり困難な問題用紙を突き付けられた生徒のようになっていた。
「またここで訳わかんねえことになってきたな」
彼等はセフィーロに戻り話をしていた。その中でトッドが言った。
「あれか?悪の黒幕ってやつか」
「いえ」
だがそれにはシーラが首を横に振る。
「そんな穏やかなものではありません」
「穏やかじゃないって」
「強いて言うのなら悪意そのものです」
今度はエレが述べてきた。
「悪意・・・・・・」
「そうです、あの邪悪な気は」
「気配・・・・・・」
「確かにな」
ニーがシーラのその言葉に頷く。
「あの気配は。確かにそうだ」
「私のお母様よりもずっと邪悪な」
リムルも感じていた。その邪悪さを。だから彼女も言う。
「底知れないものを感じます」
「どうしてそんなのが」
海にはそれがわからなかった。
「急に出て来たの!?どうして今」
「セフィーロの崩壊と関係しているかも知れませんわね」
風が海に答えてきた。
「セフィーロの崩壊と」
「はい。だからこそノヴァさん達が出て来られたものだと」
「崩壊と共に」
「おそらくは」
それに答えて述べる。
「そうでもなければ。説明がつきません」
「そうだな」
クレフはその言葉に頷く。
「おそらくはな。セフィーロとあの者達は無縁ではあるまい」
「ええ」
プレセアもそれに同意する。
「そうですね。だから今」
「じゃああの連中も倒して柱も守らないといけないってことだな」
トッドはそこまで聞いて納得したように言った。
「何か凄えことになってきたな」
「そうだな」
それにショウが頷く。
「それにミッテ博士も」
アクアがそこまで聞いて声をあげてきた。
「先生はやっぱり」
「仕方ない」
ショウは彼女にも言う。
「ミッテ博士はAI1の魅力に溺れた。もう」
「そう。じゃあ」
「ここで倒すしかないな」
「・・・・・・・・・」
アクアは黙ってしまった。どうしても頷くことができなかった。
「セフィーロを守る為にもな」
「そうだな。そういえば」
「どうしたバーン」
ショウは今度はバーンに顔を向けた。
「いや、あの赤い髪の少女がいないと思ってな」
「そういえばそうね」
マーベルもそれに気付く。
「どうしたのかしら」
「まあ今はいいさ」
トッドがここで言ってきた。
「今は難しい年頃だ。それでにな」
「そうだな」
彼が何を言わんとしているのかショウ達にもわかった。だからこれ以上は言わなかった。
「それじゃあ」
「ああ」
光は今はそっとされた。その時彼女は一人静かに窓辺にたたずんでいた。
ノヴァの言葉が今も胸に突き刺さっている。そのことについてあれこれと考えているのだった。幾ら考えても仕方のないことであった。
「ぷう、ぷう」
「モコナ」
そこにモコナがやって来た。いつもの顔で光に近付いてきた。
「来てくれたんだね」
「ぷう」
光の腕の中に入った。彼女が少し顔を上げるとそこに一人の若者が来た。
「あっ」
ランティスだった。彼の姿を見て言葉を詰まらせた。
「大変だったな」
彼は光に声をかけてきた。
「今の戦いは」
「うん、それよりも」
だが光は彼に何も言えなかった。言うことができなかった。
「あの」
また俯いてしまった。しかしそれでも言うのだった。
「御免なさい」
頭を垂れて言う。
「貴方のお兄さんのこと、謝って済むことじゃないけれど」
「いい」
だが彼はそれを問題としなかった。光の謝罪を受け入れてそれをよしとしたうえでだ。
「御前も苦しんだ筈だ」
「けれど」
「運命だった」
ランティスは言った。
「兄はそれを覚悟のうえだった。だからだ」
「いい・・・・・・の?」
「そうだ」
また光に言う。
「だから。気にするな」
「うん」
その言葉に頷く。それで心がかなり救われた。
「有り難う」
光は彼に礼を述べた。
「私、おかげで」
「御前はセフィーロの為に戦っている」
また述べてきた。
「それでどうして恨むのか」
「いいのか?それで」
「いい」
それにまた頷く。
「御前の苦しみはわかるつもりだ」
「わかった」
その言葉にこくりと頷く。そうして光の下を去る。
光は彼の後姿をじっと見詰めていた。だが少しして。救われたような顔でその場を後にしたのだった。それが彼女にとって救いになった。

第百五十五話完

2007・4・8  
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