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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百五十四話 セフィーロ

                第百五十四話 セフィーロ
ティターンズとの戦いは終わった。これで地球人同士の敵対はまずは終わった。
しかしそれで終わりではなかった。木星での異変が伝えられたのだ。
「原種がですか」
「そうだ」
ミスマルがティターンズとの戦いを終え月で休養していた彼等に告げてきていた。
「空になった木星を占領した。そこを拠点にするつもりらしい」
「それは放っておくことができませんな」
大河がそれを聞いて応えてきた。
「今度は木星へ」
「うむ、頼めるか」
「当然です。それではすぐに」
彼等はミスマルの言葉に頷く。戦いはまだ終わりではなかったのであった。
ロンド=ベルは今度は木星に向かうことになった。その中でヒューゴとアクアは浮かない顔を見せていた。勝利に湧く彼等の中では異質であった。
「どうしたんですか、一体」
ゼオラが彼に問う。
「浮かない顔ですけれど」
「ええ。ちょっとね」
浮かない顔のまま彼女に応える。
「気になることがあって」
「気になることって」
「何ですか、それって」
アラドがそれに応える。
「まあ御飯でも食べながら」
「ええ、それじゃあ」
「アラド、食べるのはいいけれど」
ゼオラがここで彼に言ってきた。
「アクアさんの分も残しておきなさいよ」
「わかってるよ。何だよ、それって」
ゼオラの言葉に口を尖らせる。
「俺そんなに食ってるかよ」
「いつも丼で五杯でしょ」
そうアラドに返す。
「滅茶苦茶食べてるじゃない」
「まあ私はそんなに」
アクアはその言葉に応える。
「お昼食べたばかりだから」
「そうですか。まあとにかく」
「ヒューゴさんもどうですか?」
アラドはヒューゴにも声をかけてきた。たまたまそこを通り掛かったのだ。これも縁というものであろうか。
「一緒に」
「ああ。じゃあ」
彼はそれに頷く。そうして四人は食事を採りながら話に入ったのであった。もっともアラドは食べてばかりであったが。主にゼオラが二人の話を聞いていた。
「ティターンズだけれどね」
「もう降伏していますよ」
ゼオラはそう答えた。
「けれど何かあるんですか」
「ええ、あるの」
彼女は答える。
「あの中に先生がいなかったから」
「エルデ=ミッテ博士が」
「そういえばそうですね」
飯をかっこんでいるアラドもふとそれに気付いた。箸を止めて言ってきた。
「ゼダンの時から急に」
「宇宙の渦でも」
「それを。どういうことなのかしら」
「隊長もだ」
ヒューゴも言う。
「いなくなった。どういうことかわからないが」
「脱走でしょうか」
ゼオラはふと述べてきた。
「若しかしたら」
「いや、違う」
だがヒューゴはそれを否定した。首を横に振る。
「隊長はそんなことはしない」
「じゃあ何なんでしょう」
「先生の考えだと」
アクアはミッテについて考えを及ばせてきた。
「多分ティターンズは利用していただけ。利用できなくなったから」
「離れたということですね」
「何かあまり好きになれないな、そういうのって」
ゼオラとアラドはそれぞれ述べた。
「そうね。けれど」
「ええ。先生はそれでいい人みたい」
アクアはそう二人に言う。
「残念だけれど」
「隊長は。何故だ」
ヒューゴにはそれがわからなかった。
「どうしてあの女と共にいる」
「それは俺はわかる気がする」
「あんたは」
声の主はゼンガーだった。彼は四人の側に立っていた。
「ゼンガーさん」
「戦いたい。それだ」
「それなんですか」
ゼオラはそれを聞いて目を少し丸くさせた。
「何かそれって」
「不思議ではない。俺はわかる」
ゼンガーはまた言う。
「戦いを求めている。それだけだ」
「そうなのか」
ヒューゴはゼンガーの言葉を聞いて思案に入った。
「それなら」
「ただしだ。問題は別にある」
「別に?」
「一つはミッテ博士だ」
ゼンガーは言う。
「もう一つはあのマシンは」
「メディウス=ロクス」
「あのマシンは危険だ。とてつもない気配も感じる」
「そうですね。それは何となくわかります」
アラドはその言葉に応えてきた。
「あのマシンは何か得体が知れないものがありますね」
「そうね。あれはどうして」
「そこだ」
ゼンガーはアラドとゼオラにも言う。
「何があるかだ。あのマシンに」
「先生は恐ろしいことを考えているのかも知れないわ」
アクアはうつむいて述べる。
「若しかしたらだけれど」
「止めなければならないか」
ヒューゴも言う。
「隊長も一緒なら」
「けれど今は」
「ええ、わかってるわ」
アクアはゼオラの言葉に頷く。
「木星に行かないといけないわね」
「木星かあ」
アラドはそれを奇異手ふと考える顔になった。
「実は行ったことないんですよね。どんなのかな」
「確かあのシロッコが木星帰りだから」
「かなりやばいところなんだような、やっぱり」
ゼオラの言葉を聞いて呟く。
「そうね」
それにアクアが頷いてきた。
「少なくとも地球とは全然違うわ」
「まあそうですよね」
「この月とも。はっきり言ってかなり過酷な場所よ」
そう二人に述べる。
「生きていくだけでもね。大変な場所」
「そこに原種が」
「何か大変そうですね」
「GGGが総力を結集するそうね」
アクアはまた二人に述べた。
「そろそろその話になるわ」
「わかりました」
「じゃあ食べ終わったら」
「そういえばアラド」
ゼオラはここでふと気付いた。
「あんた何時まで食べてるのよ」
「ってまだ四杯目だぜ」
「早く食べなさい。全くいつもそうなんだから」
「悪いのかよ」
「悪いわよ。大体あんたはいつも」
またお姉さんみたいな顔になる。
「そうやって遅いんだから」
「戦いじゃ逆だろ」
アラドはそうゼオラに言い返す。
「御前だってよ。この前」
「この前はこの前よ」
ゼオラも言い返す。
「大体戦闘だってあんたは」
「何だよ、俺が悪いっていうのかよ」
「そうでしょ、私がいないと何もできないのね」
「俺は弟かよ」
ついついそう言い返す。
「それだとよ」
「そういえば何か」
アクアはそんな二人を見てふと呟く。
「この二人って何か」
「何が言いたい?」
ヒューゴはアクアを横目で見てきた。
「俺は確かに御前より年下だがな。しかし」
「私もよ。むしろ私はね」
何故かムキになる。
「おじ様の方がいいのよ」
「そうだったのか」
「そうよ」
やはりムキになっていた。
「熟年の渋さがね。いいのよ」
「そうなのか」
「大人の魅力ってやつよ。わかるかしら」
「あれ、確かアクアさんって」
ゼオラとアラドはここで喧嘩を止めて二人に顔を向けてきた。
「彼氏とかは」
「そ、それはね」
今度は戸惑いを見せてきた。意外と表情豊かである。
「その。家の教育が厳しかったから」
「本当ですか?」
「何か怪しいよな」
それでも二人はあえて言う。
「本当よ、バジルール少佐のお家と同じで」
「ってことは」
「ナタルさんもひょっとして」
「見ればわかるじゃない」
アクアはそう返す。
「ナタルさんだってね」
「ま、待て」
そのナタル本人が慌ててやって来た。
「私はその。つまりだな」
顔を真っ赤にさせてアラド達から少し背けさせて言う。
「その。恋愛はいいと思うのだ。しかし」
「しかし?」
「キスとかそういうのは。やはり結婚して生涯の伴侶とだけするものだ。だから」
「そうですよね」
アクアがそれに同意して頷く。
「やっぱりきちんとしないと」
「そうだ。それとも」
何とか話題を必死に覆そうとゼオラ達に顔を向けてきた。
「シュバイツァー少尉、バランガ少尉、君達はまさか」
「ああ、それはないですね」
アラドがあっけらかんと言ってきた。
「俺は別に」
「何よ」
何故かゼオラが怒ってきた。
「あんたこの前いいわよって言ったのに何もしなかったし」
「あれ、そうだったの」
「あのね、二人きりだったのよ」
ムキになって言いだす。
「それでわからないなんてどういう神経してるのよ」
「だってさ。はっきり言わないとわからないじゃねえかよ」
「わからない方がどうかしてるわよ。大体そういうところがね」
「ということは」
「ゼオラも」
「そうですよ」
ナタルとアクアの言葉に憮然として腕を組んでふてくされた声を出す。
「私だってまだなんですよ、全然」
「いいことだ」
ナタルはその言葉を聞いて微笑みを浮かべてきた。
「そうではないとな。女の子は貞節であるべきだ」
「男はどうなんですか?」
「それはだ」
ナタルはさらに言う。
「女の子から声をかけられてようやくはいと答える位の。そうした謙虚さが必要だ」
「じゃあキースさんは」
「大尉は自然にだ」
そう答える。
「助けられたのもあるが。それはつまりだ」
また言葉の歯切れが悪くなる。
「どうにもな。積極的に声をかけられるというのも悪くはないものだ」
「矛盾しません?それって」
「そうですよね」
その道に詳しくないどころか全く無知のアクアとゼオラは首を傾げる。なおこれはナタルも同じである。
「そうか。しかしそれでも」
「何だかんだでキースさんが好きなんですね」
アラドが不用意に言った。
「ナタルさんも。何だ」
「何だではない」
狼狽した声で彼に返す。
「私は別にだな。その、つまり」
また焦りだしてきた。
「大尉とは何もない。一緒に歩いたりお話をしたりしているだけだ」
「はあ」
「不純なことは何もないぞ。これは誓ってもいい」
「わかりました。ですが」
「ですが。何だ?」
ここでゼオラに言われてふと我に返る。
「そろそろラーディッシュに戻らなくていいんですか?」
「むっ」
言われてそれに気付く。
「出撃は近いですし」
「そうだった。迂闊だった」
冷静さを取り戻してそう述べる。
「済まない。それでは」
「はい。それで大尉とは何時ですか?」
「何時とは何がだ?」
アクアの言葉にふと顔を向ける。
「ですから式ですよ。やっぱり結婚されるのですね」
「け、結婚だと!?」
また様子がおかしくなる。
「するんですよね、何かそんな感じですけれど」
「いや、待て」
かなり焦った様子で彼女に応える。
「私はそこまでは考えてはいない。それにだ、それに」
仕草まで焦ったものになっている。その仕草で言うのだ。
「今は戦争中だし。それが終わったら考えたいなというのは考えているが。それでもキース・・・・・・いや大尉には大尉の事情があるだろうし大体子供は多く欲しいし」
聞かれていないことまで勝手に話しだす。この話がまたしてもロンド=ベル中に伝わりナタルの立場がまた悪くなったのは言うまでもない。
そんなナタルの立場をさらに悪くさせている間も木星に向かっての出撃準備は進む。既に大河を中心として話はかなりまとまっていた。
「これで全ては整った」
彼は作戦会議の場で言ってきた。
「後は出撃だけだ」
「わかりました」
ミサトが真剣な顔でそれに頷く。
「それではいよいよですね」
「そうだな。それでは諸君」
「はい」
ミサトだけでなくそこにいた全ての者がそれに頷く。
「行くぞ」
「木星へ」
木星へ向けて次々に出撃する。長距離移動になるがそれでも彼等は向かう。だが月を出て暫く経った時だった。
「前方にレーダー反応です」
「連邦軍のパトロールか?」
「いえ、違います」
トーレスがブライトに答えた。
「これは・・・・・・まさか」
「どうした、敵か」
「はい、これはメディクス=ロクスです」
そう述べてきた。
「どうされますか?」
「放っておくわけにはいかない。迎撃だ」
今まで行方が知れなかったメディクス=ロクスが姿を現わした。それを受けてヒューゴとアクアが迎撃に出撃したのであった。二人はそのままメディクスの前まで来た。
「先生、もうティターンズはなくなったっていうのに」
「ティターンズなぞ大した存在ではないわ」
しかしミッテはそう返して彼女に取り合おうとはしない。
「所詮は俗物でしかないのだから」
「どういうことですか、それは」
アクアは彼女に問うた。
「私のこのAI1の成長の前にはその程度の存在だったということよ」
「では貴女は」
「そうよ、ティターンズを利用していただけ」
悠然と笑って述べる。
「それだけだったのよ」
「そうか、だからか」
ヒューゴはそれを聞いてアルベロに顔を向けてきた。
「隊長、あんたは」
「俺は戦いを求めているだけだ」
それに対する返事はこうであった。
「それだけだ」
「くっ」
「さあ、御覧なさい」
ミッテは彼等に言う。
「メディクル=ロクスの新しい姿を」
「むっ」
「なっ」
二人の前で変身したその姿は生物的であった。そして何処か異形を思わせるものであった。
「それがメディウス=ロクスの」
「新しい姿だというのか」
「そうよ。それに」
彼女はさらに言う。
「力もね。ほら」
「一体何をするつもりですか!?」
「さあ、消えなさい」
悠然と笑いながらメディクスの両手を拡げさせる。
「AI1の力で。このまま」
黒い闇が二人だけでなくロンド=ベルを包んできた。
「な、何だこれは!」
「何が起こるんだ!」
「艦長、大変です!」
ナタルがヘンケンに述べる。
「レーダーの反応が全く消えません!」
「何だと!」
「通信もです!」
アドレアも言ってきた。
「今何処にいるのかさえも」
「まさか」
「これがメディクスの新たな力」
「その通りよ」
ミッテは笑いながらヒューゴとアクアに答える。
「この力こそが。さあ行くのよ」
そう語ったうえでまた二人に言う。
「全く別の世界に」
そのまま二人だけでなくロンド=ベルの面々を何処かへと送り込んだ。だが彼等だけ送り込んだのではなかった。
「私達と一緒にね」
「いいのだな、それで」
アルベロは闇の中でミッテに問うた。
「別の世界に旅立とうとも」
「いいのよ」
ミッテは余裕の笑みを浮かべてそれに応える。
「そこの力を使えばAI1はまた成長するわ。だから」
「わかった」
彼はそれ以上聞かなかった。黙って頷くだけだった。
「では行くぞ。いいな」
「ええ」
メディクスも光の中に消えた。そのまま何処かへと行ったのであった。
ロンド=ベルが辿り着いた先は不思議な空間だった。宙の中に星が一個浮かんでいたのだ。彼等はその前にいたのだ。
「何だここは」
「異次元・・・・・・なのか」
「わかりません。ただ」
美久が言う。
「間違いなく地球ではありません。わかるのはそれだけです」
「そうね」
マリューが苦い顔でそれに頷く。
「それだけは間違いないわね」
「とりあえずはあの星について調べましょう」
マサトが冷静にそう述べてきた。
「まずは何もわかっていないんですから」
「そうね。それじゃあ」
マリューはそれに頷く。そして偵察にゼオライマーを出そうとした時だった。
その星から三機のマシンが姿を現わした。そして彼等に声をかけてきた。
「待て!地球の戦艦か!?」
「女の子の声!?」
「これは」
「どうしてここにいるんだ」
「どういうことなの、これは」
もう一人の声がした。三機のマシンは攻撃を仕掛けるわけでもなくただロンド=ベルの前にいるだけであった。
「どうして地球の兵器がここに」
「まさかこの方々もセフィーロの柱に導かれて!?」
「柱!?」
マサトは少女の言葉に目を向ける。
「何なんだ、それは」
「答えてくれ」
また少女の一人の声がした。
「貴方達は誰なんだ?一体どうしてここに」
「ちょっといいかな」
マサトが彼女に応えた。
「ん!?わかった」
少女はその言葉を聞いて彼に応えを返した。
「僕達はロンド=ベルなんだ」
「えっ、ロンド=ベルですって!?」
「あの連邦軍の」
それを聞いて二人の少女が言った。
「あのロンド=ベルがどうしてここにいるんだ」
「君達どうやら地球人みたいだね」
マサトは三人の驚きようを見てそう述べてきた。
「そうだよね」
「あ、ああ」
赤いマシンに乗る少女が答えてきた。
「そうだ。私は獅堂光」
そう名乗ってきた。
「私は龍咲海」
「鳳凰寺風です」
二人も名乗ってきた。それぞれ赤、青、緑のマシンに乗っている。
「日本人みたいだね」
「そうよ」
海がマサトに答える。
「このセフィーロに召還されて」
「それで今このウィンダムに乗っているんです」
「セフィーロ、ウィンダム」
マサトにはわからない言葉であった。
「少しいいかな」
それで彼女達に対してあらためて声をかけてきた。
「ああ。何だ?」
「話をしたいけれど。いいかな」
「敵じゃないんだな」
「ちょっと、光」
海が光に声をかけてきた。
「ロンド=ベルだから大丈夫よ」
「そうですね。それでしたら」
「けれどロンド=ベルかあ」
光は今度はそれに心がいった。
「それじゃあ兜甲児も」
「おう、呼んだか」
その甲児の声がした。
「うわあ、本当に兜甲児がいるんだ。本物のロンド=ベルなんだ」
「あたぼうよ、俺はロンド=ベルの顔だからな」
「じゃあグレートマジンガーも」
「俺のことも知っていてくれているんだな」
「そりゃそうだよ、子供達のヒーローなんだから」
光ははしゃぎながらまた言う。
「じゃあグレンダイザーも」
「僕に何か用かな」
「三人共いるんだ。何か凄いや」
「わかったから光」
海がまた光に声をかける。
「とりあえずゼオライマーの秋津マサトさんがお話したいっていうから」
「あっ、そうか」
言われてそれを思い出す。
「行きましょう」
「わかった、海ちゃん」
「風もね」
「はい」
風もにこりと笑って応える。こうしてロンド=ベルは一旦側にある星に招かれそこで話を聞くことになったのだった。この星こそがセフィーロであった。
話はこうであった。
東京タワーでの社会見学中に中学二年だった三人の少女光、海、風が偶然出会った途端に異世界セフィーロに導師クレフに神官ザガートに囚われたエメロード姫を救い出し同時にセフィーロを救う為に召喚された。
ザガートはセフィーロの要である『柱』のエメロード姫を捕らえ、セフィーロを危機に陥れていたのだ。魔法騎士となった三人はザガートを倒す為に旅立ち多くの困難を乗り越え、立ちはだかるザガートの手下と戦い、ついに魔神を手に入れザガートに戦いを挑んだ。
だがその先に待ち構えていた結末は誰もが予想していたものとは大きく異なっていたのだった。三人はそこで初めて魔法騎士の真の意味を知った。何とザガートとエメロード姫は愛し合っていて彼は姫をその柱の苦難から救う為に動いたのだ。愛するザガートを失った姫は暴走し三人と戦い、そして散った。
だが戦いはそれで終わりではなかった。柱を失ったことでセフィーロは崩壊をはじめそこに付け込んだ三国の国々が柱を狙ってセフィーロに攻め込んできたのだ。今セフィーロはそうした状況だったのだ。
「そうしたわけだ」
小柄な子供がセフィーロに入ったロンド=ベルの面々に語っていた。彼が導師クレフである。
「成程、そうだったのか」
ブライトはそれを聞いて頷く。
「それはまた大変なことですな」
「うむ。まさか貴方達が来るとは思わなかったが」
「正直参ったな」
カミーユが項垂れて述べる。
「木星に早く行かないといけないのに」
「そうよな」
ケーンがカミーユのその言葉に頷く。
「今も木星じゃあ原種がよお」
「それなら大丈夫だよ」
赤い髪を後ろで細く三つ編みにした少女が言ってきた。
「大丈夫なのか?」
「だってセフィーロと地球の時間は違うから」
「そうなのか」
ノイマンはそれを聞いて驚きの声をあげる。
「じゃあここは異次元なのか」
「そういうことになる」
クレフは彼に対して述べてきた。
「だから時間のことは気にしなくていい」
「わかった」
「それはそうと君が光なのか」
カミーユはその赤い髪の少女に顔を向けてきた。
「そうだ」
彼女はカミーユのその言葉に答えてきた。
「宜しくな」
「ああ、宜しく」
「貴方がカミーユ=ビダンなのか」
「そうさ、宜しくな」
「何か声が似てるな」
「声が!?」
カミーユは光のその言葉に眉を動かしてきた。
「誰の声と似ているんだい?それは」
「一番上の兄様に似てる」
光はこう言ってきた。
「そしてそこの人達も」
今度はケーンとノイマンに声をかけてきた。
「兄様達の声に」
「そうなのか」
「何か意外だな」
三人は光の今の言葉を聞いて驚いたような嬉しいような顔になっていた。
「俺達に似ている声があったなんて」
「何か」
特にノイマンは嬉しそうであった。どうにもコンプレックスがあるようだった。
「そういえば」
青いロングヘアの少女もふと言葉を出してきた。彼女が海である。
「アヤさんとセシリーさんって」
「あら」
「私達なのね」
「私のママに感じが」
「ううん、ちょっと複雑な気分」
アヤはその言葉を聞いて苦笑いを浮かべてきた。
「私まだ結婚もしていないから」
「私も」
それはセシリーも同じだった。
「だから」
「御免なさい。けれど」
「いいのよ、誰だって似ていたりするから」
「そうですか」
二人に言われる。
「それに海ちゃんだったわよね」
ここでナナが名乗り出てきた。
「ええ」
「私と似た感じするしね」
「そうね。何かね」
海はその言葉ににこりと笑う。彼女にも同じ感性の持ち主がいるようである。
それは風も少し同じだった。彼女はジュンコに声をかけていた。
「お姉様に雰囲気が」
「そういえばね」
ジュンコもそれに頷いていた。
「やっぱり。何か色々あるわね」
「はい」
「それでですな」
大文字はクレフに声をかけていた。クレフもそれに応える。
「その攻めてきている三国というのは」
「オートザム、ファーレン、チゼータ」
クレフはその三国の名を口にした。
「その三国だ」
「もう兵を向けているのでしょうか」
「来ている」
クレフは魔法を使った。そうして三隻のそれぞれ独特な形の戦艦を見せてきた。
「この三隻の戦艦でな」
「攻めてきていると」
「しかも他にも得体の知れないものも感じる」
クレフはさらに述べる。
「事態は深刻だ。このままでは」
「わかりました」
ここで大文字は言った。
「それでは協力致しましょう」
「貴方達が」
「はい、ここに来たのも何かの縁です」
彼は言う。
「セフィーロに力を貸させて頂きます」
「いいのか」
「はい」
毅然とした答えであった。
「それで宜しいでしょうか」
「済まぬ」
クレフはあらためて頭を垂れた。
「何もわからぬうちから」
「いえ、いいのです」
大文字はそれはよしとした。そのうえでまた言う。
「ですからどうか」
「礼は必ずする」
彼は言った。
「それでいいな」
「礼なぞいりません」
しかし彼はそれを断ってきた。
「義を見てせざるは勇なきと言いますし」
「そうだよ」
光がその言葉を聞いて声をあげる。
「だから皆こうして」
「そうね。だからね」
「今度は私達は自分の思い出来ましたし」
海も風も言う。
「一緒に戦おう、セフィーロの為に」
「ああ」
こうしてロンド=ベルはセフィーロの為に戦うことになった。十一隻の戦艦がセフィーロに入る。まずはセフィーロのメンバーと話をすることになった。
「宜しくな」
緑の髪の少年がイサム達に声をかけてきた。
「俺はフェリオ、ここの王子ってことになってるんだ」
「へえ、王子様かよ」
イサムはそれを聞いて楽しそうに声をあげる。
「また王子様とはね」
「何だ、俺だけじゃないんだな」
「大介だって王子だしな。うちは色々な人間がいるからな」
「そうなのか」
「そうさ。他にも色々いるぜ」
「そうみたいやな」
派手な格好の褐色の肌の女が出て来た。
「うわ、何だこいつ」
「こいつとは何やな。うちはカルディナや」
そう名乗ってきた。
「踊り子や。よろしゅうな」
「ああ。しかし」
ガルドは表情を変えないが少し驚いているようだった。
「凄い服だな」
「まあ踊り子やさかい」
彼女の調子は変わらない。
「こんなもんやろ」
「そうか」
「それで僕はアスコット」
白と緑の服の背の高い髪で目を隠した少年が名乗り出た。
「宜しく」
「ああ」
「この子は海が好きなんやで」
いきなりカルディナが言ってきた。
「ちょっとカルディナ」
アスコットは彼女に抗議をする。
「そんなこと言わないでよ」
「まあまあ」
「私はラファーガ」
青い鎧の男が名乗った。髪は金髪で見事な長身だ。
「宜しく頼む」
「こちらこそな」
京四郎が彼に応える。
「強いな、あんた」
彼はすぐにラファーガにこう言ってきた。
「剣を使う。そうだな」
「強いかどうかはわからないが確かに私は剣を使う」
自分でもそれを認める。
「それは事実だ」
「そうか。あんたとはいずれ手合わせしたいな」
「こちらこそその時は」
二人は笑みを浮かべ合い挨拶をする。そこに黒い鎧の男が通り掛かった。
「ん!?」
トッドが最初に彼に気付いた。
「何か面白そうな二枚目がいるな」
「ランティスっていうねん」
カルディナが彼に答える。
「ザガートの弟やで」
「そうなのか」
「強いんやけれどな」
彼女は言葉に何かを含ませてきた。
「ただな」
「ただ。何かあるのかよ」
「いや、実はや」
「カルディナ」
ラファーガが彼女の言葉を止めた。
「それ以上は」
「わかったわ。じゃあ口チャックしとくわ」
そう言って黙る。そこに小さな妖精が来た。
「あれっ」
チャムが彼女に気付く。
「貴女フェラリオ?」
「私のこと?」
その妖精もチャムに気付いた。
「うん。そうなの?」
「違うわ。私はプリメーラっていうの」
そう名乗ってきた。
「宜しくね」
「うん、こちらも」
「けれど何か不思議ね」
リリスもプリメーラのところへやって来て声をかける。
「こうして私達にそっくりな人達がまた出て来るなんて」
「そうね」
チャムもそれに頷く。
「声は違うけれど」
「声!?」
「なあチャム」
ヒギンズがチャムに声をかけてきた。
「この娘の声はアクアに似ていないか」
「そういえばそうね」
チャムもその言葉を聞いて頷く。
「何かね。そっくり」
「そうだな。面白いこともあるものだ」
「そういう貴女達も声が似てるわね」
プリメーラは三人に突っ込みを返した。
「何か不思議なものね」
「そうかな」
だがチャムはその言葉には首を捻る。
「別にそうは思わないけれど」
「そうなの。それでそのアクアさんって人は何処なの?」
「あの人よ」
リリスが紫の髪の女性を指差す。
「あの人ね」
プリメーラはアクアに顔を向けた。その顔を見る。
「奇麗ね」
「えっ、何?」
アクアはその言葉にすぐに反応を見せてきた。
「誰か私を呼んだ?」
「私よ」
プリメーラはにこりと笑って彼女に挨拶をした。
「宜しくね」
「ええ、こちらこそ」
アクアもにこりと笑みを返して彼女に応える。
「何か初対面だけれど他人のような気がしないわ」
「そうね」
「あと」
ここで丸くよく跳ねている白い生き物に気付いた。
「あれも」
「何だ、ありゃ」
トッドはアクアの言葉に顔を向けてその白い生き物を見た。一見うさぎに見える。
「見たことねえ生き物だな」
「モコナっていうんだ」
アスコットがアクアに答えてきた。
「セフィーロに一匹しかいない生き物なんだよ」
「一匹しか」
「そうなんだ」
彼はまたアクアに述べる。
「まあ魔法生物だと思ってくれればいいから」
「そうなの。何か不思議ね」
アクアはそのモコナを見ながら述べた。
「やっぱり他人のような気がしないわ」
「プウ、プウ」
モコナはそんな言葉をよそに楽しそうに跳ねている。
「何故かしら」
「それはそうとだ」
クリフがロンド=ベルの面々とセフィーロの者達に声をかけてきた。
「食事なぞどうだ。いきなりここに来て疲れただろうしな」
「ああ、だったら俺が作るぜ」
ディアッカが名乗り出てきた。
「炒飯でもな」
「アイスクリームあるか?」
光に問われた。
「ああ、デザートでな」
ディアッカは彼女に笑顔で返す。
「安心しな」
「そうなの。それにしても」
黄色の髪の美しい女もそこにいた。
「地上の人も私達と変わらないのね、本当に」
「あれ、あんたは」
「プレセアよ」
にこりと笑ってディアッカに答える。
「宜しくね」
「ああ」
「こちらこそ」
何故かここでミサトが彼女の前に姿を現わしてきた。
「何か仲良くなれそうな気がするわね」
「そうね」
プレセアもにこりと笑って彼女に返す。
「何処かで会った気分よ」
「そうね、不思議なことに」
「そ、そうですよね」
エリスもそれは同じだった。内気加減に出て来た。
「私も何かプレセアさんと」
「この娘は」
「エリス=ラディウス少尉よ」
ミサトがプレセアに説明する。
「地下世界のラ=ギアスにいたけれど今は私達と一緒にいるの」
「ラ=ギアス?」
「おっと、それも今から話すから」
ミサトは右目をウィンクさせてこう言ってきた。
「それでいいわね」
「ええ、宜しく」
プレセアは笑顔でそう返す。
「あとサフィーネを呼びたくなったわね。セーラー服でも用意して」
「何でセーラー服なんだろう」
キラはミサトのその言葉を聞いて首を傾げて呟く。
「よくわからないけれど」
「どうせ下らないことさ」
シンがキラに対して突っ込みを入れる。
「どっちにしろセーラー服なんてよ。いいおばさんが・・・・・・ぐわっ!」
そこにミサトとプレセアの拳が飛んで来た。シンは一撃で吹き飛ばされた。
「大きなお世話よ」
「中々面白い娘ね」
二人はそれぞれこめかみをピクピクと言わせていた。プレセアはそのまま倒れているシンに近寄って言うのだった。
「折檻なんていいかしら」
「ええ、いいわよ」
ミサトが許可を出す。
「好きなようにして」
「わかったわ。じゃあ」
「やれやれ。また言わなくていいこと言って」
ルナマリアは後ろ襟を捉まれて引き摺られていくシンを見送って言った。
「どうなるやら」
「自業自得だ」
イザークが冷たい言葉を言い捨てる。
「全く、いつもながら進歩のない奴だ」
「あんた人のこと言えないじゃない」
アスカがここで彼に突っ込みを入れてきた。
「そのカッパ頭には何が入ってるのよ」
「誰がカッパだ!」
イザークはその言葉に超反応を見せてきた。かなりの速さだった。
「あんたに決まってるでしょーーーが!」
「俺はカッパなぞではない!」
「その髪型で何言ってるのよこの銀ガッパ!」
「貴様ァ!言うにこと欠いて!」
「何よ、やろうっての!?」
「生かしてはおけん、今日こそは!」
「何か凄いことになってるな」
光は二人の喧嘩を見て少し呆然として言う。
「何がどうなってるんだ」
「ああ、あれいつものことだから」
シンジが光に声をかけてきた。
「気にしなくていいよ」
「そうなのか」
「結構喧嘩多いけれどね」
この部隊ではそうだ。シンジも流石に慣れてきていたのだ。
「多いのか」
「かなり」
そう答えるしかなかった。
「特にあの二人とさっきのシンは」
「あの人かなり滅茶苦茶みたいね」
海はすぐにシンを見抜いてきた。
「言わなくていいことばかり言ってそう」
「否定はしないよ」
シンジもそれを否定しない。
「それがシンの困ったところなんだ。けれど悪い奴じゃないから」
「そうですね」
風がその言葉に頷いてにこりと笑ってきた。
「それはわかります」
「それにしても」
シンジはここでそのシンの身の安全について考えだした。
「大丈夫かな。折檻って」
「気にせんでええで」
カルディナが彼に対して言う。
「あの人の趣味やさかい。死にはせんわ」
「そうなの。けれど僕も何か思い出したな」
シンジもふと言った。
「ダイアナさんとひかるさんとモニカさん達で・・・・・・あれ」
変な気分になった。
「セーラー服でって。何なんだろう」
「考えない方がいい」
アムロがシンジの側に来て声をかけてきた。
「それを言うと俺もあれだからな」
「アムロ中佐のタキシードが見たくなりました」
マリューが彼の横からくすりと笑って述べてきた。
「何か」
「そう言うと思った。ヒルデもそうかな」
「ええ、まあ」
ヒルデも笑ってアムロに応える。
「何かそんな気に」
「そうだな。妙な気分だ」
「何か私も他人事じゃない気がしてきた」
「そうね」
「まるで隣同士みたいな」
光達三人も妙な気分になってきていた。それがどうしてかはわからないがとにかくそんな気分になっていたのだ。世界は違えどすぐに打ち解けた間になっていたのであった。
その日はそのまま平和だった。だが次の日は違っていた。
敵が来たのだ。それも三つ共だ。
「三国共か」
「はい」
ラファーガがクレフに答える。
「それぞれの方向から来ます。どうされますか」
「光達は?」
「既に出撃しています」
そうクレフに告げる。
「そしてロンド=ベルも」
「そうか、彼等もか」
クレフはその言葉を聞いてまずは安心した。
「戦ってくれるのか」
「はい、我々の為に」
「申し訳ないな」
そのことに感謝の念を抱かずにはいられなかった。
「関係ないというのに」
「地上においても様々な心の持ち主がいるようですな」
「そうだな」
クレフはラファーガの言葉に頷いた。
「では見せてもらおう、彼等の戦いを」
「はい」
三隻の戦艦が迫る。光達とロンド=ベルは戦闘態勢で彼等の前にいた。
「何か変わったのがいるな」
甲児はその中の一隻を見て言った。
「えらく先進的なのと龍みたいなのはわかるけれどよ」
「あれか」
それが何かアキラにもわかった。
「確かにあれはな」
「そう思うだろ?何だありゃ」
「ちょっと待たんかい」
そのカレー鍋のような形の戦艦から関西弁が聞こえてきた。
「今言うた奴は何処のどいつじゃ!」
「って関西弁かよ」
「インドなのに関西弁!?」
これには皆思わず耳を疑った。だが確かに関西弁であった。
「インド!?何やそれ」
また声が返ってきた。
「うち等はチゼータや。インドやないで」
「チゼータ」
「誇り高き我が国の名ですわ」
今度は澄んだ奇麗な声が届いてきた。
「チゼータ」
「はい」
その声は答える。
「私はタトラ。そして」
「タータや」
また関西弁が返ってきた。
「何かまた変なのが出て来たな」
「なあ」
ロンド=ベルの面々は光達に尋ねた。
「ありゃ何だ?」
「よくわからないんだが」
「チゼータのお姫様達ですわ」
風が彼女達に答えてきた。
「お姫様、ねえ」
「一人はおかしな感じだけれど」
「大きなお世話や!」
また返事が返ってきた。
「あんた等に言われる筋合いはないわい。何がおかしなや!」
「御二人共とても奇麗な方々ですよ」
風はにこりと笑って皆に述べる。
「タータさんが妹さんでタトラさんがお姉さんです」
「へえ」
「そうなのか」
「あの」
そのタトラがロンド=ベルに声をかけてきた。
「貴方達は何処から来られたのでしょうか」
「ああ、地上から」
甲児が答えた。
「何かわからねえうちに来たんだよ」
「そうなのですか」
「そうさ。それであんた達はセフィーロに攻めてきてるんだよな」
「はい」
タトラはにこりと笑って答える。
「チゼータがあんまり狭いんでな」
タータが答える。
「攻めてきたんや。全てはチゼータの為や!」
「何か攻めるにはありきたりだな」
「そこっ、五月蝿い」
突込みを入れる勝平に言い返す。
「あんた等私等の敵やろ、それはそうと」
「御名答」
「セフィーロの為に」
「わかった。じゃあ容赦はせえへん」
これで話は決まりだった。するとカレー鍋から得体の知れないものが出て来た。
「いくで!」
「それでは!」
「おいおい、今度はそれかよ」
フォッカーがその出て来たものを見て思わず声をあげた。
「ランプの精かよ」
「何か凄いですね」
柿崎も言葉もない。
「まさかとは思いますけれど」
「あれだけじゃないわよ」
今度は海が言ってきた。
「あとの二つもね」
「ああ、あそこの二隻ね」
アスカがその二隻に顔を向ける。
「あっちがインドならこっちはアメリカと中国ってところね」
「日本はないんだ」
シンジはそれが少し残念そうであった。
「何か濃い顔触れね」
「こら、そこの女」
龍から少女の声がしてきた。
「少し言葉遣いが悪いぞよ」
「何よ、あんた」
「わらわの名はアスカ」
彼女は自分の名を名乗ってきた。
「覚えておくがよいぞ」
「何よ、子供じゃない」
アスカの毒舌はここでも発揮された。
「一体何の用よ」
「わらわを子供と思うて馬鹿にせんことじゃ」
そのアスカは言ってきた。
「よいな」
「何か私と同じ名前って」
「性格も同じだな」
「あんたもアスカでしょうが!」
そうシンに返す。
「そういじょそこいらの光の戦士みたいな名前の癖に」
「それは言うな!」
シンは何故か怒りだした。
「俺は関係ない!」
「関係あるわよ!格好だって!」
「俺に言うな!」
二人はまた喧嘩をはじめた。
「大体俺はだな」
「そこの二人」
少女のアスカが二人に対して言ってきた。
「何よ」
「何だ?」
「喧嘩は止めておけ。仲がいいようじゃが」
「仲悪いわよ!」
「こんな猿女!」
「猿ですってえ!?」
「しかも山猿だ!御前なんかな!」
「やっぱりあんた死になさい!」
シンに向かいだした。
「ここでね!」
「何を!」
「うう・・・・・・」
喧嘩する二人の横でアスランが右手で頭を抱えていた。
「またか。シンは」
「何か最近アスカとも喧嘩してるね」
シンジが彼に言う。
「カガリとばかりじゃなく」
「カガリとの喧嘩も減っていないしな」
二人は相変わらず仲が悪かった。
「困ったことだ」
「それはそうとさアスラン」
シンジは話を戦場に戻そうとしてきた。
「あの戦艦だけれど」
「そうだ。それでだ」
「何じゃ?」
「君達がファーレンなのか」
「左様」
アスカは少しふんぞりかえって答えてきた。
「どうしてセフィーロに攻めて来たんだ?よかったら教えてくれ」
「何でもセフィーロをお菓子の国にするですわ」
「えっ!?」
「お菓子の国に!?」
アスランとシンジは風のその言葉に耳を疑ってきた。
「まさか」
「まことじゃ」
アスカは驚きを隠せない三人に答える。
「わらわは嘘はつかぬ。だからこの童夢で来たのじゃ」
「それはまた」
「何かな」
シンジもアスランも言葉もないといった感じだった。
「さあ覚悟はよいか」
アスカは筆と紙を出してきた。
「奥儀、画竜転生!」
その筆で獅子を描き出してきた。それで攻撃を開始したのであった。
「何だ、これは!?」
喧嘩を止めたシンが思わず声をあげる。
「わからない、だが」
それにアスランが応える。
「攻撃してきたのは事実だ!」
「どうなってるんだよ、これは!」
「アスカ様」
アスカが攻撃をはじめたところで隣にいる老人のチャンアンが声をかけてきた。側には童子のサンユンもいる。
「何か得体の知れない相手ですので御気をつけを」
「大丈夫じゃ」
しかしアスカは平気な顔をしていた。
「わらわの術の前にはな」
そのまま攻撃を仕掛ける。その横ではオートザムが来ていた。
「あれはNSXっていうんだ」
光がロンド=ベルの面々に教えていた。
「気をつけてくれ、マシンもある」
「マシンもか」
マサトがそれに応えていた。
「それにあの艦自身も強いね」
「わかるのか?」
「うん」
マサトは光に答えた。
「大体ね。武装もいい」
「そうなんだ。乗っているのは」
「はじめまして」
若い美男子の声がした。
「地上の方々ですね」
「そうだ」
アムロが彼に答えた。
「君の名は?」
「僕の名はイーグル」
彼は名乗った。
「そしてジェオとザズです」
「よお」
「宜しく」
逞しい男と小柄な少年もそこにいた。
「貴方達とは敵同士のようですね」
「君達の目的は何だ?」
アムロは三人に問うた。
「どうしてセフィーロを攻めるんだ?訳を聞かせてもらおう」
「オートザムの為です」
イーグルはそう答えてきた。
「オートザムの」
「そうです。我が国は今困った状況にありまして」
「そうだ。悪いがな」
「柱を頂きたいんだ」
「何か色々とあるみたいだな」
「そうですね」
アムロとマサトは彼等の話を聞いて顔を見合わせた。
「しかしだ。柱がなくてはセフィーロは維持できない」
それはクリフから聞いている。だからこそ今彼等も戦っているのだ。
「だからそれを渡すわけにはいかない」
「それはこちらもなのです」
イーグルは彼等に答える。
「ですから無理にでも」
「やるというのか」
「はい」
またアムロに答える。
「貴方達が僕達の前に立ちはだかるというのなら」
「わかった。では相手をしよう」
アムロも言った。
「君達オートザムと」
「はい。では行きます」
「よし」
ジェオはイーグルの言葉に頷いた。
「出るか」
「ええ」
すぐにNSXから二機のマシンが出て来た。FTOとGTOであった。
「行きますよ」
イーグルはその中からアムロに声をかけてきた。
「来い」
「拝見させて頂いたところかなりの腕をお持ちのようですがね」
それはもう見抜いていた。動きだけでだ。
「それでも」
「やるな、あのイーグルという青年」
アムロも彼を見抜いていた。お互いにだ。
「光」
そのうえで光に声をかける。
「二人で行くぞ。いいか」
「わかった」
光はそれに頷く。
「それじゃあ私はイーグルを」
「よし、援護するぞ」
アムロは今回は援護をする側に回った。結果的に彼はジェオのGTOに向かうことになった。ロンド=ベルと三国の戦いがはじまったのであった。
アスランはシンジ達と共にアスカの獅子と戦っていた。同時に童夢も見据えていた。
「あの母艦も撃墜させたいがな」
「今はまだ無理だね」
シンジが彼に答えてきた。
「何かどんどん敵が増えてきているし」
「そうだな」
アスカは術を使って次から次に獅子や龍を出してきているのだ。その相手だけで手が一杯であった。
「仕方ない、まずはこの絵の相手をする」
「うん」
「ええい、幾ら来ても無駄だ!」
イザークはシヴァを放って敵を一層させていた。
「この程度ではな・・・・・・むっ!」
そこに絵の虎が来た。しかし彼の前に現われたシホが素早くそれを撃墜したのであった。
「大丈夫ですか、イザークさん」
「済まない」
イザークはシホにそう礼を述べた。
「助かった」
「気をつけて下さい、数は多いです」
シホもそうイザークに言う。
「ですから」
「一機だけの突出は危険だな」
「はい」
あらためて頷いてきた。
「シホの言う通りだ」
アスランはそれを聞いて言った。我が意を得たりであった。
「皆、ここは固まるんだ。そしてチームで相手をしていく」
「わかったわ」
レイがそれに頷く。
「じゃあそれで」
「頼む、いいなアスカ」
「ちょっと、何であたしなのよ」
「いや、何となくだけれど」
実は口が滑ってしまったのだ。言った瞬間にしまったと思った。
「悪気はないけれど。ちょっとそれは」
「いいわよ、とにかくチームプレーね」
「ああ」
あまりアスカの好きなものでないようなのは承知しても言う。
「頼むぞ」
「わかったわ。いいわね、バカシンジ」
「うん」
「あんたも」
「俺はあんたかい」
「つべこべ言わない」
トウジにも言い返す。
「あのお姫様どうやら洒落にならない相手みたいだしね」
「おーーーーほっほっほっほっほっほ!」
そのお姫様が高笑いを立てていた。
「どうやらわらわの相手ができるようじゃな。それでよい」
「それでアスカ様」
サンユンが彼女に声をかけてきた。
「何じゃ?」
「敵は少しずつですが近寄ってきています」
「むむっ」
「そしてあの人のマシンも」
「風のか」
既にアスカと風は面識がある。一度童夢の中で会っているのである。
その時話もした。悪い印象は受けていない。
「どうされますか?」
「童夢も迎撃態勢を整えておくのじゃ」
彼女はそう指示を出した。
「よいな」
「わかりました」
「そしてアスカ様」
今度はシャンアンが言ってきた。
「今回でセフィーロを陥落させるおつもりですか?」
「いつもそのつもりじゃ」
きっぱりと答えてきた。
「そうでなくて攻めていられるものか」
「左様ですか。それでは」
「うむ。まだまだやるぞ!」
攻撃を仕掛け続ける。
「地上の者達よ、覚悟するがいい」
「そうはいきませんわ」
「むっ、風」
ここで接近してきた風に気付く。
「アスカさん、ここはどうしても引いて下さいませんか」
「以前も申した筈じゃ」
しかしアスカは言う。
「そのつもりはない。わかったな」
「そうですか」
「では御主の相手もしてやる」
アスカはさらに筆で絵を描いていく。
「参るぞ」
ファーレンからの攻撃もかなり激しさを増していた。チゼータはチゼータは海とロンド=ベルの面々を困惑させていた。
「慣れてないわよね」
「無茶言うな」
甲児が海に言葉を返す。
「何だこの訳わかんねえのは」
「何だよこのランプの精霊は」
勝平も言う。
「無茶苦茶じゃねえかよ」
「私も最初見た時は気持ち悪かったわよ」
精霊は攻撃を受けると痛がって女の子のような動作を見せるのだ。海はそれを気味悪いと思っていたのだ。
「まあ慣れるわ」
「慣れたくねえな」
甲児は憮然として言う。
「こんなもんよ」
「そうは言っても来てるから」
「ちっ、しかも不死身かよ」
「精霊だから仕方ないでしょ。ほら、ザンボットのところに」
「おわっ、こっちかよ!」
「油断してるとやられるわよ!」
「御前そりゃ敵の台詞じゃねえのか!?」
勝平がそれに突っ込みを入れる。
「何かよ」
「それはいいから。とにかく頑張りなさいってことよ!」
半ば口喧嘩の状態でやり取りを続ける。こちらの戦いもかなり激しかった。
NSXからマシンが次々と出て来る。どうやらこの戦艦は空母でもあるようだ。
「無人機か!?」
「らしいな」
クワトロがアムロに答えた。
「だが性能は高いな」
「ああ」
アムロはクワトロのその言葉に頷く。彼等はそのマシンの相手もしていた。
イーグルは光の相手をしジェオが全体の指揮にあたっている。NSXの艦橋にはザズが残っている。
「ジェオ、下!」
「ああ!」
ジェオはザズの言葉に頷き素早くそこに兵を向ける。そうして敵を防ぐ。
「悪いなザズ!」
「いいってことさ!」
見事な連携であった。これにはロンド=ベルも唸る。
「やるな」
マサトがそれを見て言う。その陣は見事で打ち破れようにも破れなかった。
「相手もかなり」
「けれどマサト君」
しかしここで美久が彼に声をかけてきた。
「どうしたんだい?美久」
「何か敵の動きが」
「おかしいのかい?」
「ええ」
彼女はそれを見抜いていた。特にイーグルの動きを見ていた。
「全体としてはおかしくはないけれど」
「あの指揮官機がかい」
「そうなの。光ちゃんは気付いていないみたいだけれど」
「そういえば動きが鈍くなっている」
マサトもそれに気付いた。
「どういうことなんだ、一体」
「くっ・・・・・・」
イーグルはコクピットの中で苦しい顔をしていた。光の相手をするのが精一杯といった顔であった。
「このままだと・・・・・・」
「どうした、イーグル」
ジェオがその彼に声をかけてきた。
「疲れか?」
「あっ、いや」
その言葉に逡巡したがここはそれで誤魔化すことにした。
「はい。少し」
「そうか。じゃあ今日はここまでだな」
「そうだね」
ザズもそれに頷く。
「それじゃあジェオ」
「ああ」
ジェオはザズの言葉に頷く。そして全軍に告げた。
「今日はこれまでだ。撤退だ」
「わかったよ。イーグル」
ザズはそれを受けてイーグルにも声をかけた。
「帰ろう、それでいいね」
「わかりました」
こうしてイーグルも撤退した。NSXはすぐに後方に退いていった。
サンユンはそれを見てすぐにアスカに声をかけてきた。
「アスカ様、私達も」
「下がれと申すのか」
「はい、頃合いです」
「ふむ」
「引くのも肝心ですぞ」
「わかっておるわ。爺に言われなくともな」
シャンアンを見上げて憮然として述べる。だがここはそれに従うことにした。
「それではな。撤収じゃ」
「はい」
彼女等も戦場を後にする。だがタータはそれを好機と見ていた。
「よっし、いったらんかい!」
ブラヴァーダの艦橋で関西弁で叫んでいた。これがチゼータの方言である。
「あの目障りな奴等がおらんようになったんや!このままや!」
「あら、タータったら」
そのタータにタトラがにこりと笑って声をかけてきた。
「駄目よ。もう時間よ」
「時間って」
「お茶の時間だから」
「お茶って姉様」
姉のその言葉に思わず言葉を詰まらせる。
「今は戦ってるのに。それは」
「いいから。もう潮時よ」
「うう・・・・・・」
「わかったわね。さあ」
「わかったわよ。それじゃあ」
「ええ」
チゼータも退いた。ロンド=ベルはセフィーロでの初戦を凌いだのであった。
「しかし」
ブライトは艦橋で苦い顔をしていた。
「どれも変わった相手だな」
「そうですね」
それにサエグサが応える。
「特にチゼータですか。あれは」
「そうだな。何か訳がわからないものがある」
「しかも強いみたいですよ」
トーレスも話に入ってきた。
「戦いぶりを見ていると」
「それはわかる」
ブライトは溜息と共にそれに頷いた。
「だが。それにしても」
「どれも曲者です」
「一旦セフィーロに戻ろう」
「そこで会議ですか」
「そうだ、今後のことをな」
ロンド=ベルは一旦セフィーロに戻った。今行われた戦いはこれで終わりであった。しかし彼等は闇で胎動する勢力に気付いてはいなかったのであった。
「お母様」
「ノヴァか」
巨大な影の如き女がピンクの髪の少女の声に応えていた。
「また戦争があったわ」
「そうか」
女はその言葉を聞き楽しそうに笑っていた。
「それは何よりだ」
「けれど戦っていたのは光だけじゃなかったわ」
その少女ノヴァはまた母に語った。
「何か地上から来ているみたい」
「地上から」
女はその言葉に耳を澄ませてきた。
「それはまことか」
「ええ。だから」
「わかった」
女はそこまで聞いてまた頷いた。
「では手を打とう」
「私達に手を貸してくれるあの人達と一緒に戦うのね」
「そうだ。それでよいな」
「ええ」
闇から一人の女がすっと現われた。それはミッテであった。
「それで。いいわ」
「ふむ。ところでだ」
女はミッテに問うてきた。
「そなた達もまた地上から来たのだったな」
「そうよ」
ミッテは悠然とした笑みで女に返した。
「それが何か」
「あの魔神の力によるものか」
ミッテを見てまた問うてきた。
「やはり」
「そう思えるのね」
「そうとしか思えぬ」
それが女の答えであった。
「違うというのなら申してみよ」
「いえ、その通りよ」
ミッテはその笑みのまま女に答えた。
「まさか私達までとは思わなかったけれど」
「これも何かの縁であろう。それではだ」
「彼等を倒すのに力を貸して欲しいのね」
「左様。よいか」
ミッテを見ていた。まるで彼女の心の中を探るようにだ。
「それで」
「最初からそのつもりよ」
ミッテは彼女の問いに何か含みのある笑みで答えてきた。
「だから喜んで」
「うむ。それでは次に動こう」
女は言った。
「次にな」
「デボネアお母様、それじゃあ」
ノヴァが動くと聞いて無邪気な笑顔で母に声をかけてきた。
「光、今度で殺していいのね」
「うむ」
女も笑う声でそれに返した。
「頼むぞ。それでは」
「うん、絶対そうするから」
ノヴァもまた笑顔で頷く。
「今度こそ」
ノヴァの目がまるで猫のそれのようになった。そこには無邪気な悪意が感じられた。それを光に向けて楽しんでいたのであった。まるで無垢な少女のようにだ。

第百五十五話完

2007・4・1  
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