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剣の世界の銃使い

作者:疾輝
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使い魔蘇生パーティ結成!

あーー、ドジった。こんな迷いの森の奥(といっても今の場所がだが)になんて、誰も来ないだろうなどと思ってた所為でつい銃を使っちまった。さて、どう言い繕いますかねぇ。

1、装備の見た目を変えられるアイテムなのさ!
これは無理。名前や出現方法まで聞かれたらアウトだし、そもそも銃でスキル使っちゃってるからなぁ。
2、白を切る
んー、これもちょっと辛いかな。このまま無視しても情報は漏れるだろうしな・・・。この装備は気に入ってるから、なるべく変えたくないし。
3、素直に話す
やっぱりこれかなぁ・・・。口止めできれば銃についての情報は漏れないし、嘘をつかなくていいから、ぼろも出ないだろう。
さてと・・・先に相手の出方を伺おうと思って少女の方を見てみたが、少女の方は今にも泣き出しそうになっている。

「大丈夫か?」

こちらから再度声をかけると、少女は緊張の糸が切れたようでその場にへたりと座り込んだ。

「お願いだよ・・・・私を独りにしないでよ・・・・・ピナ・・・」

少女はそのまま泣き始めてしまった。事情はよくわからんが、何か大切な物が死んだのだろう。ピナと言うからにはプレイヤーではないのだろうが・・・。
とりあえず、少女に事情を聞いてみると、

彼女は、SAOでは珍しい《ビーストテイマー》だったらしい。ビーストテイマーとは、とても低い確率で敵モンスターを飼いならし、自分の《使い魔》として使うことができるプレイヤーのことを指す。彼女はその中でも珍しい《フェザーリドラ》という竜種のモンスターをテイムしていたそうな。そいつの名前が《ピナ》だと。
だった。というのは、今日の冒険で些細な口論をしてしまい、迷いの森でパーティと分かれてしまい、それで、迷いの森で迷い、《ドランクエイプ》の集団にピナは、彼女をかばって殺されてしまったらしい。
んで、その直後に俺が来たと。
はぁ・・聞いちゃったからには、ほっとけないよなぁ。少し気になったこともあるし、記憶の奥底からある情報を引っ張り出す。

「どっかのフィールドに使い魔専用の蘇生アイテムがあるらしいんだが・・・んーと、47層だったかな・・・?」

使い魔なんて持ってないから、あまり興味がなかった情報なので若干あやふやだ。
それを聞くと少女はがばっと立ちあがって、顔をいきなり近づけてきた。

「ほんとですか!」

「えーと、ちょっと待ってくれ・・・。ああ、そうだ。どっかにその使い魔の羽がないか?」

「これのことですか!?」

少女が差し出してきたアイテム名を確認すると、《ピナの心》。よし、これなら大丈夫。

「うん、それだな。四十七層の・・・フィールド自体の名前は忘れたが、テイマー本人が行くと採れる《プネウマの花》ってアイテムを3日以内にその羽に使うと使い魔が蘇生できる・・・らしい」

それを聞いた彼女は、一瞬喜んだもののすぐに悲痛な面持ちに戻ってしまう。

「ん?どうかしたか?別にまだ死んでから、すぐなんだろ?あと2日ありゃ行って戻って来るには十ぶ・・」

そこまでいって気づく。それは俺だから可能なのであって、まだこの辺りでレベル上げをしている中層プレイヤーには47層は危険な場所でしかないということに。

「ここで帰るのも後味悪いし、取りに行くの手伝おうか?俺が護衛としてついてくのが、一番安全かな」

「っ!」

若干少女がこちらに期待の視線を向けてきたが、すぐにそれは疑惑に代わってしまった。
あー、なるほど。こんな時はどうすりゃいいのかねぇ・・・。
同性なら無理やり引っ張ってってもいいんだが、相手が異性で、んでもって少女とまで来るとそれもためらわれるしなぁ。

「なんで・・・・そこまでしてくれるんですか・・・・?」

やっぱり、そう来たか。
まあそうなるだろう。自分が相手にこんなことを言われても、警戒心が先に立つし、そもそもアインクラッドでは《甘い話にはウラがある》というのが常識となっている。

「まあ、これは俺の独自の持論なんだけどね?」

「はぁ」

「せっかくこの世界にいるんだから、楽しまなきゃ損でしょ」

「は?」

「いや、せっかくSAOというゲームをプレイしているんだったら、存分に楽しもうよ。今この世界にいるんだったら、この世界に居るときにしかできないことをやって楽しんだ方がおもしろい。何をしたって結果が変わらんのなら、自分の好きなほうを、自分がやりたいほうを俺は選ぶ」

「??」

「お前だってこれまでの相棒がいなくなるより、ずっと一緒にいたほうがいいだろ?だったらそれを実行しろ。それが自分だけの力で無理なら、誰かを頼れ。まあ、簡単に言うと、後悔するなってことだよ」

我ながらかなりクサイ台詞だと思う。だけど、これは俺がこのデスゲームの中でいつも忘れないようにしてきたことだ。純粋に楽しむ。簡単だけどとても大切なことだとは思う。すると、少女がいきなり噴き出した。

「ぷっ・・・、楽しむって、子供みたいじゃないですか。あはははっ」

「いいんだよ、実際俺らはまだ子供だ」

自覚はしていたはずだが、さすがに今の行動はちょっとハズいな・・・。だけど少女の方に笑顔が戻ったし、それでよしにしよう。

「よろしくお願いします。助けてもらったのに、その上こんなことまで・・・あの・・・こんなんじゃ、全然足らないと思うんですけど・・・」

トレードウインドウが開かれ、コルが表示される。おそらく少女の持っている全額なのだろう。別に現在金欠なわけじゃないし、首を振ってから答える。

「いや、お金はいいよ。それより、1つこっちの頼みを聞いてほしいんだけど」

まあ、俺も善意だけで動いてるわけじゃない。頼みと聞いて、少女の体がびくっと動いた。

「・・頼みですか・・・えと、なにを・・・」

「あー、違う違う。俺が頼みたいのは、これを黙っててほしいって事」

「え?」

そこで最初の考えに戻るわけだ。俺は腰に吊った2丁の銃を指して言った。少女の方は、いままで使い魔のことで頭がいっぱいだったようで、初めて銃に気がついたらしい。ぱちぱちと何度か瞬きしてから、答えた。

「そんなことでいいんですか?」

「俺にとってはかなり重要なことだからなー。うん、割とマジで」

「じゃあ、改めてお願いします」

そう言って、ペコリと頭を下げてくる。
彼女、使い魔助かる。俺、秘密守れる。どっちもハッピーじゃないか。

「すみません、何からなにまで・・・。あの、あたし、シリカっていいます」

「おっと、まだ自己紹介してなかったな。俺はレイト、これからよろしく」

目の前の少女、シリカと握手を交わす。二人のパーティが結成された瞬間だった。 
 

 
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