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番外 リオINフロニャルド編 その2 箱庭滞在
前書き
今回は箱庭の中で何があったのか、です。
アオ達は本編とは経験した時間から若干考え方が変わっている(念関連)かもしれません。
パラレルの一つとして楽しんでいただければ幸いです。
学校から帰り、近くの公園に四人で集まるのが最近の日課になっている。
「コロナ、オーラが揺らいでるよ」
纏が揺らいだコロナを注意する。
「うっ…はーーい」
「アインハルトさんやヴィヴィオはきれいにオーラが纏えるようになったね」
「本当?」
「本当ですか」
「うん。だから、コロナも頑張らないと置いてきぼりを食らうことになるよ」
「そっ!それはやだっ!」
なんであたしが三人の念の修行を見ているのかといえば、それはあのフロニャルドでの滞在が切欠だった。
…
…
…
用事があるからと退出したアオさんと入れ替わりにヴィヴィオ達3人が入室してきた。
「リオ、大丈夫なの?」
ヴィヴィオがベッドの淵に手を突いて乗り出しながら問いかけた。
「大丈夫。ちょっとだるいけど、外傷は無いから」
オーラの使いすぎで少しだるいだけだ。
「よかったぁ」
「はい、心配しました」
コロナとアインハルトさんも心配してくれていたみたい。
「そう言えば戦ってどうなったの?どっちが勝った?」
あたしの質問に表情を曇らせる3人。
「兵士同士の戦いは互角だったのですが、舞台にいた3人が桁違いでした」
アインハルトさんがショックを隠しきれない表情で答えた。
「レオンミシェリ殿下、ダルキアン卿、ユキカゼさんは善戦してらしたのですが一歩及ばず。ガウル殿下、エクレールさん、ゴドウィン将軍では手も足もでずといった感じで…こちらの将がやられた後、舞台から乗り出した彼らを止める事はできず…」
負けちゃったか…
「ヴィヴィオたちは良いじゃないっ!舞台までたどり着けたんだから。わたしなんて一般兵にやられちゃったよぉ」
ああ…多勢に無勢で囲まれて撃破されちゃったのかコロナは。
「そうなんだけどね…ただ、相手がやっぱり強かったよぉ。それになんか手加減してくれたみたいだけど、なんかそれでもレベルが違ったみたいだし…相手もなんかわたしじゃないわたしを基準にしてたみたいで、っあーーっ!て事はわたしが弱いって事!?」
何を言ってるのか分からないよヴィヴィオ。
「ヴィヴィオさんはまだいいです…私の相手は手加減なんてしてくれなかったので、最初の一撃でノックアウトでした…」
あー、アオさんほどの実力者が他の舞台にもいたのならそうなるかな?
でもいったい誰だろう?
「相手はいったい誰だったの?」
「それは、わたしなのでしたっ!」
あたしの問いかけに答えたのはあたらしく部屋に入ってきた、猫耳猫尻尾の一人の少女だった。
ばっと一斉に振り向くあたし達。
「リオは久しぶりになるのかな。その他の皆にははじめまして。ナノハ・ジェラートと言います。よろしくね」
「なのはママ?だよね」
「ええ!?」
コロナが驚いている。
問いかけたヴィヴィオだが確証は持ててないのだろう。
「うーん。ヴィヴィオの知ってるわたしとは別人だと思うから、なのはさんって呼んで」
「なのは…さん?」
「うん」
「なのはお姉ちゃんですか!?」
あたしは目の前の彼女の優しい桃色のオーラを感じ取ってたずねた。
「うん。えっと、アオさんが言うには4年ぶりらしいけれど、本当に久しぶりだね」
「っ!はいっ!」
この彼女はあのなのはお姉ちゃんだ。
「どういう事か分からないのですが…いったいどういう事ですか?」
「まぁ、それは後で。今はアオさん達が呼んでいるから付いてきて欲しいんだけど」
アインハルトさんの疑問をスルーして来訪の目的を告げるなのはさん。
「あ、はい。分かりました」
なのはさんに付いて行く事十数分。
どうやら会議室のような所に招かれたあたし達は手前の椅子を勧められた。
案内したなのはお姉ちゃんは部屋の端へと向かった。
目の前にはミルヒオーレさん、レオ閣下、アオお兄ちゃんが座っている。
「まずは紹介を」
そう切り出したのはミルヒオーレさんだ。
「こちらはフリーリア王国の王子、アイオリア・ドライアプリコット・フリーリア殿下です」
「よろしく」
「そしてこちらが…」
続いたあたし達の紹介。
名前と、異世界から来てしまって帰還の方法が見つからないと言う事情。
「そういう訳で、異世界転移方法があると言われる貴国に戦の申し込みを行ったのです」
「なるほどねぇ」
アオお兄ちゃんは紅茶を一口飲んでからなにやら思案している。
「戦はうちの勝ちだから、異世界転移の方法は教えられない」
「ですよね…」
しょんぼりするミルヒオーレさん。
コロナやアインハルトさんも表情をゆがめる。
「じゃから、そこを何とかと申しておるっ!」
レオ閣下が激昂する。
「教えられないがっ!」
大声をあげて威嚇したレオ閣下に対抗するように声を荒げるアオお兄ちゃん。
「俺たちが彼女達を帰してあげる分には構うまい」
「は?」
「え?」
ミルヒオーレさんとレオ閣下は鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情だ。
「じゃったら最初からそう申せばよいのだっ!」
再度声を荒げたレオ閣下。
「帰れるの?」
そうつぶやいたのはコロナ。
「ミッドチルダにはすぐにでも帰してあげられるよ。…ただ、ロストロギアが関連しているとなると、時空間移動である可能性もある」
「そうなんですか?その場合は帰れないことも有るということですか?」
アインハルトさんが問う。
「ああ」
「そ、そんな!?」
ショックで表情が固まるコロナ。
「大丈夫、大丈夫だからねコロナ」
隣でヴィヴィオがコロナをなだめている。
「だれか、この世界に来た過程を記憶しているデバイスはいない?」
アオお兄ちゃんがあたし達に問いかけた。
「あ、ソルが多分記憶してくれてます」
「ソル?」
「えと…あたしのデバイスです。本当はソルフェージュって言うんだけど、その…」
まさかアオお兄ちゃんにあこがれてそう呼んでいるとは言えないよぉ…
「そっか、それじゃ、その時の映像データをちょうだい」
「はいっ!ソル」
『送信しました』
「ありがとう」
アオさんはソルフェージュにお礼を言うと、ソルさんにその映像を出してもらった。
眺めること数分。
「ど、どうでしょうか?」
コロナが緊張しながら問いかけた。
「うん、大丈夫そうだ。これなら今すぐにでも帰してあげられるよ」
「ほ、本当ですか!?やったね、ヴィヴィオ」
「うん、よかったねコロナ」
え?
今すぐ?
まだ、あたしはもう少しアオお兄ちゃんと居たいのに…会えた事なんて奇跡に近い。
「まってっ!もう少し、あたしはここに居る」
「リオっ!?」
コロナが戸惑いの声を上げる。
「だって、あたしまだアオお兄ちゃんとなにもお話ししていないんだもの!それになのはお姉ちゃんやソラお姉ちゃんや、フェイトお姉ちゃんともっ!」
「アオ…お兄ちゃん?…ってまさかっ!あのアオお兄ちゃん!?」
え?あのって、どの?
「ヴィヴィオ、知ってるの?」
あたしの問いには答えずにアオお兄ちゃんに問いかけるヴィヴィオ。
「昔…わたしを助けてくれたこと、ありますよね?」
「ああ。そんな事もあったなぁ」
「やっぱり…そうなんだ。…今更だけど、お久しぶりです、アオお兄ちゃん」
ヴィヴィオもアオお兄ちゃんに助けられた事があるって事?
「そうだなぁ…ソラ達も会いたがっていたから、裏技を使うかなぁ。リオ、ヴィヴィオ、こっちに。すぐに戻ってくるから皆はこのまま待っていて。なのは、行くよ」
「あ、はーい」
部屋の隅に居たなのはお姉ちゃんはアオお兄ちゃんに呼ばれて近寄ってきた。
そのままあたし達を連れて部屋の外へ出ようとして…
「って、何で皆付いてくるの?」
私がつぶやくと、それぞれ返した。
「いや、何が行われるのか興味がじゃな…」
「ヴィヴィオ達と離れるのはちょっと…ね?アインハルトさん」
「はい。それに私も興味があります」
「私はなんとなく…皆様が席を立たれたので…お邪魔でしたらお待ちしていますが…」
上からレオ閣下、コロナ、アインハルトさん、ミルヒオーレさんだ。
「まあいいよ。念話を入れたらフェイト達が歓迎の用意をして待ってるってさ」
アオさんが了承の声を上げた。
「えと、どちらに行かれるのでしょうか?」
「うち(フリーリア王国)の城まで」
「ええ!?ここ(砦)からお城までセルクルで飛ばしても一時間以上かかりますよ!?先ほどの会話を聞くとぽんといってぽんって帰ってくるような感じがしたのですが…」
問いかけたミルヒオーレさんが返された答えに驚いている。
「ま、実際そんな感じ。ソルっ!」
『転移魔法陣形成』
アオお兄ちゃんの胸元につるされていたソルが光ったかと思うと、あたし達の足元に転移魔方陣が形成された。
「転移」
アオさんのその言葉で一瞬で景色が変わる。
瞬きの後あたしが目にしたのは…
…あんまり変わらない趣の部屋でした。
「こ、これは!?」
「なんじゃと!一瞬で移動したじゃと!?」
混乱するのは知らなかったミルヒオーレさんとレオ閣下。
残りの人は魔法関係者なので転移魔法くらいでは驚かない。
「さて、こっちだよ」
アオさんが先頭になって案内したのは部屋の奥。
うん?特に何か変わったところは無いのだけれど?
アオさんが示したのは台座に固定された、野球のボールほどの大きさのガラス玉。
その玉を覗き込むと中には小さな大地が浮かんでいるのが見える。
「これは?」
「今からこの中に行くんだよ。ソラ達はすでに中で待ってるから」
なにやら台座を操作するアオさん。
台座を操作し終えると、私たちの足元に魔法陣とは違う輝きにつつまれると、また景色が一転。
今度はどこか神殿めいたところへと転送された。
「ここは?」
「どこー!?ここ!」
みな少々混乱しているようだ。
アオさんを見ると、神殿の中央の台座に入って来るときに見たものと似たようなものをいじっている。
「何しているんですか?」
「皆到着したからね。中の時間を速めている」
「は?」
これにはあたしも目が点になった。
「簡単に言えば、中の一日が外の十分ほどって事」
「えええええええぇぇぇぇぇえ!?」
「リオ、いきなり大声出してどうしたの?」
ヴィヴィオがあたしに問いかけた。
あたしの大声にみなの注目がこっちに移ったようだ。
「だって、アオさんがこの中の一日は外の十分だって言うものだから…」
「えええええっ!?」
その反応が普通だよね?
さて、混乱も落ち着きみなでこの神殿のようなところを出ると、あたりは一面の野原。
きれい…ミッドチルダの高層ビルが列挙している都市郡とは違う。
とは言え、このフロニャルドに来てからは空気もきれいだし緑もいっぱいだからそれほどの感動は無かったけれど。
神殿を抜け、案内されたのはミッドチルダでは見かけない様式の建物だった。
日本の武家屋敷が一番近いと、後でアオさんに教えてもらった。
「ヴィヴィオちゃん、久しぶりだね~」
「うにゃっ!?どっ!?どなたでしょうか!?」
玄関をくぐると二十代中ごろに見える女性が勢い良くヴィヴィオに抱きついた。
「ゆかり母さん、そのヴィヴィオはゆかりお母さんが知ってるヴィヴィオじゃ無いから。抱きつかれて困ってるよ」
奥から出てきた金髪の少女がたしなめる。
あのオーラの感じ、フェイトお姉ちゃんかな?
さらにその奥からもう1人少女が出てきてあたしの前まで来た。
「リオ、久しぶり。元気そうでよかった」
「うん、ソラお姉ちゃんもね」
「これは、フリーリア領主、ユカリ殿ではないですか」
「ミルヒちゃんもレオちゃんもお久しぶり」
「はい」
「レオちゃんはやめてくださいとあれほど言っておるのじゃが…聞き入れてはくれそうも無いのぉ」
相変わらずヴィヴィオを拘束しつつ、ミルヒオーレさんとレオ閣下に挨拶をするユカリと呼ばれた女性。
「どなたでしょうか?」
あたしがアオさんに尋ねると、
「俺の母さんだよ」
そう返された。
「母さん、準備とかはどうなってるの?」
「ああっ!みんなこっちに来ちゃったからシリカちゃん1人にまかせっきりかもしれない」
「…だめじゃん」
ユカリさんとアオさんの会話。
えと、誰?シリカさんて。
中庭に通されるとテーブルに椅子が用意され、簡素なおもてなしの準備が整っていたようだ。
「もうっ!皆であたしに準備を押し付けてっ!」
「ご…ごめんなさい」
「久遠ちゃん達が手伝ってくれたから良いですけどねっ!」
ぷりぷりかわいく怒っているのがおそらくシリカさんだろう。
彼女はヴィヴィオの前まで行くと自己紹介した。
「シリカです。はじめまして」
「あ、はい。ヴィヴィオです、はじめまして」
「…なんかいまさらヴィヴィオに自己紹介ってなんだか変な感じがします」
「とは言え、シリカはこのヴィヴィオとは初対面のはずだよ…俺たちも姿が変わっているから初対面みたいなものだけど」
シリカさんのつぶやきにアオさんが応えた。
そっか、きっと向こうの世界では彼女はヴィヴィオに会ってるんだ。
全員でテーブルに着くと、お互いに自己紹介。
アオお兄ちゃん、ソラお姉ちゃん、なのはお姉ちゃん、フェイトお姉ちゃん、シリカさんにユカリさん。
土地神で使い魔の久遠ちゃんにアルフさん、それとユニゾンデバイスのピナちゃんにクゥちゃん。
うーん、使い魔とユニゾンデバイスってどう違うのだろうか?
見かけだけではよく分からない。
こちらも自己紹介を返すと、アインハルトさんが疑問を口にした。
「それで、あの、あなた達とリオさんとの関係はいったい…ヴィヴィオさんも知っているみたいなのですが」
「そう言えば、わたしもどういう状況なのか分からないのでした。なのはさんはなのはママじゃないんだよね」
ヴィヴィオも追随する。
「うん」
そう言えばあたしもなんで姿が違うのか分からないな。
と言うか、交わらない平行世界の人たちだよね?
「なんじゃ?おぬしら知り合いじゃったのか?」
と、レオ閣下。
「まぁ、その辺は事情が複雑なんですよ」
と前置きをして、一応説明してくれたアオお兄ちゃん。
転生のこと。
平行世界(可能世界)のこと。
平行世界を越えてリオやヴィヴィオと会った事があること。
彼らの転生は時間や平行世界(可能世界)すら飛び越えると言うこと。
「ヴィヴィオ、分かった?」
コロナが眼をぐるぐるさせながらヴィヴィオに聞いた。
「い…一応…なのはさんとフェイトさんはわたしのママたちと同一人物だけど、違う人って事だよね?」
「少し違うかと。彼女達はヴィヴィオさんのお母様の違った可能性と言うことでは?」
アインハルトさんが纏めた。
ミルヒオーレさんとレオ閣下は説明されてもちんぷんかんぷんだった。
あー、平行世界(可能世界)とかそういった概念がこの世界には無いのか。
「でも、すこしその姿には戸惑うかな。…記憶の中の姿とは別人だし」
今の猫耳猫尻尾もかわいいけれどね。
「え~っと。あの頃の姿と言う事は…こんな感じか?」
そう言ったアオさんは印を組んで変化の術を発動した。
ぽわんっ
「わ、姿が変わった」
「あ、その姿は確かにアオお兄ちゃんだね」
それは記憶の中のアオお兄ちゃんの姿でした。
「あ、懐かしいな。私が始めてあった頃だね」
アオお兄ちゃんの姿を見て懐かしいと言ったのはフェイトお姉ちゃん。
「うん、わたしたちも変化しよっか、フェイトちゃん」
「そうだね」
なのはお姉ちゃんとフェイトお姉ちゃんが印を組むとその姿を変える。
年齢は14歳くらいだ。
「わっ、その姿は確かにすこし幼いけれど、なのはママとフェイトママだよ」
びっくりするヴィヴィオ。
「本当だ。ねぇ、アインハルトさん」
「はい。そっくりです」
同意するコロナとアインハルトさん。
「それじゃ、私たちも変化しようか、ソラちゃん、シリカちゃん」
ユカリさんがふたりを誘った。
「良いけど…」
「あたしとユカリさんの場合、知ってる人は居ないんじゃ?」
「良いじゃない別に、楽しければ」
「良いですけどね」
ぽわわんっ
変化した三人。
ソラお姉ちゃんの姿があたしの知っているものよりも14歳くらいの、すこし成長した姿に変わった。
「それにしても懐かしいねこの姿。えっと…いくつ前の姿だっけ?」
「3つ前だよなのは」
「そうだったけ、フェイトちゃん」
三つ?
アオお兄ちゃんたちにしてみればそんなに前の事なんだ…
「まあ、容姿の変化なんて些細な問題だよ」
なんか悟っているアオお兄ちゃん。
「ええ!?ぜんぜん些細なもんだいじゃありませんからっ!」
ヴィヴィオが突っ込む。
「あー…わたしも二回目からは普通になれちゃったなぁ」
「そうだね、なのは。重要なのはその人である事だよね」
「なのはさん…フェイトさん…」
ヴィヴィオが複雑そうな表情をうかべ、つぶやいた。
そうかもしれない。
あたしも姿かたちよりも、アオさん達に会えた、それだけがこんなにうれしい。
「さて、あらかた説明したところで。リオ、君の話をきこうか」
あ、そうだった。
あたしがもう少しと言ったから今こうしていたんだよね。
「あのっ!アオお兄ちゃん達にお願いがあるんです」
「何かな?」
あたしは意を決して緊張しながら言葉をつむいだ。
「あたしの修行を見てもらえませんか?」
…
…
…
「まずは纏、練、絶から」
「はいっ!」
今、あたしはアオお兄ちゃんに念の修行を見てもらっている。
「きれい…」
「本当だね、シリカ」
あたしの周りにはアオお兄ちゃんとシリカさん、フェイトお姉ちゃんが居て、すこし遠くにはアインハルトさんとヴィヴィオがこちらを見ている。
ソラお姉ちゃん、なのはお姉ちゃん、ユカリさんはコロナやミルヒオーレさん、レオ閣下と談笑中だ。
「次は応用技に行こうか」
「はいっ!」
周、流、円、硬
「うーん、すこし流が遅いかなぁ…でもまあ1人でよくそこまで出来るようになったね」
「えへへ」
アオお兄ちゃんに褒められた。
「リオ、影分身は何体出せる?」
「えと…念の行使をするなら3体が限界です」
「上等。フェイト、シリカ手伝って」
「はーい」
「はいっ」
フェイトお姉ちゃんとシリカさんが近づいてくる。
「リオ、影分身」
「えっと…はい」
印を組んで影分身を3体作り上げる。
「それじゃ、『流』の練習だよ。こちらの攻撃をリオがガードする。次はリオが攻撃する。これをゆっくりと『流』を使って行う。オーラの攻防力移動の訓練だね」
なるほど。戦闘を踏まえての流の行使は練習したことが無かった。
「それじゃ、はじめようか」
「はいっ!」
本体と分身二体にそれぞれアオお兄ちゃん、なのはお姉ちゃん、シリカさんが1人ずつついた。
相手の攻防力を目算で看破し、同量のオーラをガードするところへと振り分ける。
たったこれだけの事だが、これがなかなか難しい。
今まではなんとなくでやっていたからね。
これを時折影分身を回収しながら繰り返す事数時間。
「まぁ、いいんじゃないかな?シリカ、フェイト、どう?」
「大丈夫だと思います」
「うん、最初に比べると段違いに速くなったよ」
シリカさんとフェイトお姉ちゃんの合格の声。
その声で影分身を回収してとりあえずは終了。
つ…つかれた…三人ともスパルタすぎです。
「きゅー」
眼が回る…そう言えば今日はアオお兄ちゃんと全力戦闘したんだった…
地面にへたり込んだあたしはそこで意識を手放した。
◇
「あれは…シルエットかな?どう思いますアインハルトさん」
ヴィヴィオさんが目の前に現れた二人のリオさんを見てそう分析しました。
「…どうでしょうか?そんな物を作り出しても修行には余り意味を見出せませんが」
「ですよね…」
それから始まった組み手はとてもゆっくりしたもので。
「え?シルエットじゃ…ない?質量を持った幻術?…あるいはゴーレムかな?」
「だとしても、それぞれで組み手をする理由が分かりません」
「あの、なのはマ…なのはさん、あれはいったいどういう事ですか?」
ヴィヴィオさんが私達の様子を見に来たなのはさんに問いかけた。
「うーん」
なのはさんはどうしようかと言う表情を浮かべた後に言った。
「そうだなぁ、学校から国語、算数、理科の宿題が出て、どれも一時間かかります。これを一時間で終わらせるにはどうしたら良いでしょう」
「え?そんなの無理だよぉ」
確かに順番(・・)に一時間ずつ1人でやれば三時間掛かる計算だ。
だけど…
「三人で1教科ずつやる、ですか?」
「正解っ!」
「えええ!?」
「つまりはそう言う事です」
なのはさんはそれ以上は教えてくれる気は無いみたいだった。
「ど、どういう事?」
ヴィヴィオが私に問いかけた。
「つまり、分身したリオさん一人一人が経験したことも身につけることが出来ると言うことだと思います」
「ええ!?そんな事が出来たら他人より少ない時間で他人より多くのことを身につけられるんじゃ…」
「はい、おそらくそう言う事なんじゃないかと…」
私も自分で言っておきながらそんなまさかと言う感想が浮かぶが…おそらくそれで正解だろう。
「それにしても、いいなぁ、リオ。何しているのか分からないけれど楽しそうだなぁ」
「あ、そっか。この世界のヴィヴィオは念を覚えてなかったんだっけ」
「え?なのはマ…なのはさんの世界のわたしは念を使えたんですか?」
「そうだねー。なつかしいなぁ。よくヴィヴィオと組み手をしたんだよー」
「念を覚えるのは危険だとリオさんから聞いたのですが」
ちょっとした疑問。
「あ、そうだね。確かにリオなんかがやると危険かもしれないね」
「熟練者がやれば危険が少ないと?」
「まーねー」
「私も覚えられると言う事ですね?」
「出来るけど。何?アインハルトさんは念を覚えたいの?」
「…はい」
念。これを覚えないことにはリオさんと対等に戦う事は出来ないのですから。
「うーん。でも念を覚えてもミッドチルダじゃ余り意味は無いと思うよ?」
「…そう…なのですか?」
「あそこは魔法技術が発達しすぎていて、それで社会が回っているからね」
「…そう、ですね」
確かにそうかもしれない。高ランク魔導師はいろいろな職場で優遇されていると言う事を聞いたことがある。
先天性故に魔力資質が低い人たちがデモを行ったりするけれど、そう言った風潮は変えられそうに無かった。
そう言った世界なのだ。管理内世界と言うのは。
「でもっ!それじゃぁいつまでたっても彼女と対等になれないっ!」
列強の王を倒し、ベルカの地に覇を唱えると言う私の目的なんてどれほど遠い道のりであろうか。
今のままではいつまで経っても私は彼女の足元にすら及ばない。
それがとてつもなく悔しかった。
強さを求め、野場試合を繰り返していた私。
そんな私が彼女のよきライバルで居ることもできない自分が不甲斐なかった。
「アインハルトさん…そうだね、リオが何か隠している事はわたしも分かってたんだ。それをわたしも共有できればいいなって思うよ」
「…明日、たぶんアオさんはリオちゃんを連れて試練に出かけると思う」
「試練ですか?」
「そう。わたしも、その他に念を覚えた人や覚えようとした人たちには必ずやらせるの。リオちゃんはまだ受けてないと思うから。
もし、それをこなせたなら、わたしがアオさん達を説得してあげるわ」
きっとアオさんは反対すると思うから、となのはさんが付け加えた。
次の日。
アオさんに連れられてやってきたのは森と丘が悠然と広がるとても美しい場所でした。
ここに居るのは、アオさんを除くとミッドチルダ組の4人。
コロナには夜ヴィヴィオさんが試練の事を話していた。
「やってもらう事は君達にとってはけして難しいことではない」
そんなに簡単な事が試練なのだろうか?そんな疑問が浮かぶ。
「このあたりは草食竜種のテリトリーなんだ。だから…一人一頭、殺してきてね?」
え?
…
…
…
夕ご飯の食材だからと送り出された私達。
結局この試練を乗り越えられたのは私とリオさん、ヴィヴィオさんの3人。
コロナさんは結局殺すことは出来ませんでした。
屋敷に戻った私達。
コロナさんは蒼白の表情のまま部屋へと運び込まれました。
リオさん、ヴィヴィオさんが心配そうな表情で慰めています。
「ヴィヴィオたちは…さ、怖くなかったの?」
コロナさんが問いかけた。
「…怖かったよ。今でも手が震えているもの。とてもとても恐ろしかった」
と、ヴィヴィオ。
「だ、だよね?」
「あんなに簡単に殺せる力を持っていた自分が」
「え?」
そう。私も怖かった。
いくらクラウスの記憶を持っていると言っても、それはやはり夢のような物。
たった一撃。
魔導師の攻防においてはダメージらしいダメージすら通らない私の一撃でターゲットの草食竜は絶命した。
その恐怖はすさまじい物があった。
たぶん、これがあの人たちが私達に教えたかったこと。
自分の力が無力な人間なんて間単に殺せるんだと言う認識。
「コロナは違うの?」
「…わたし…は、血を噴き出して倒れるあの生き物がっ!それを行ったヴィヴィオ達がとても怖かったの」
コロナさんはそちらに比重が傾いたのか。
「でも、コロナも出来るんだよ?」
リオさんの言葉。
「っあ…」
そう、コロナさんだって出来る。
ゴライアスのコブシの一撃を耐えれる普通の生物なんて魔法生物を除けばほぼ存在しない。
あの試練にはとても多くの意味があると思う。
だから…
「つらかったらあの人たちが記憶を消してくれるはずです」
そう、彼らは言っていた。
「記憶を…消す?」
「はい」
魔法ではなかなか出来ないような行為も彼らならば多分出来るのだろう。
「今のミッドチルダを見ていると錯覚しそうですが、魔法が発展したのは人殺しの道具としてです」
私の中のクラウスの記憶がそう物語る。
多くの人が生きるために血を流した時代。
魔法は多くの人を殺す技術だった。
「そっか…そうなんだね…」
私達の言葉から何かを感じ取ったのか。
「もう一度、試練が受けられるようにわたしアオさんに頼んでくるよ」
「コロナ…」
「大丈夫?」
「大丈夫だから」
心配したヴィヴィオさんとリオさんの声に大丈夫と答えたコロナさん。
もう一度と再試練を受けたコロナさんは、その顔を涙で歪めながらも何とか試練をクリアしたのでした。
◇
さてと、皆が試練を終えると、アオさんがあたし達を呼び出した。
「本当はね、あんまり念を他人には教えたくないんだけど。なのはにリオにも切磋琢磨する仲間が居たほうがいいんじゃないかって言われたし、ただ1人秘密を抱えるのはリオも負担だろうからね」
しぶしぶと言った感じでアオさんが言った。
「教える前に守ってもらいたい事がいっぱい有るんだけど、守れそうも無い事は正直に言ってね。あ、嘘をついても無駄だから」
それからいくつか念を教えるにあたっての注意事項が伝えられる。
熟練者の言う事は絶対に聞くこと。
危ない技術だから、絶対に念能力者以外に向けて使ってはいけない。
魔法技術とは方向性が違うので、他人はもちろん、親や兄弟にも話したり、教えてはいけない。
管理局員などもっての外らしい。
他の人が居るところでの修行は禁止。
命の危険があれば別だけど、極力使うなと言うことらしい。
わたしも4年前に言われた事だ。
最後にどうしてもばれちゃったらアオさん達を頼ること。
「さて最後に、時間を掛けてゆっくりコースと、ちょっと危険だけど直ぐに覚えるコースとどちらがいい?」
「すぐでお願いします」
アインハルトさんが即答した。
それにヴィヴィオとコロナも同意した。
「そう?なんで、俺が教えるやつらは皆そんな感じなんだろうか…」
そんな感じでアオさんがぼやいていた。
他人の精孔を開くところははじめて見るな。
アインハルトさんを後ろに向かせてうなじあたりに手を添えると、アオさんはオーラを纏い、『発』を使ったようだ。
「こ、これは…」
アインハルトさんの体からオーラが噴出しているのが見える。
「リオ、『纏』のやり方を教えてやって。俺は残りの二人の精孔を開いちゃうから」
「う、うんっ!アインハルトさん、まずはね」
そう言ってあたしは『纏』のやり方をレクチャーした。
「こんな感じですか?」
「すごいすごい、まだぎこちないけど出来ているよ、アインハルトさん」
「わっ!」
「きゃっ!」
奥の方でヴィヴィオとコロナの声が上がった。
様子を見ると二人とも無事に精孔は開いたようで、今はアオさんから纏の方法を習っている。
「今日は後はずっとこの『纏』の練習だけだ。と言うか、一ヶ月は本当に地味な修行の繰り返しだからな。リオみたいに戦えるようになるのはずっと先だと言うことは覚えておいてよ」
「が…がんばります」
「うう…がんばる」
「はい…」
纏でいっぱいいっぱいになりながらも何とか返事を返したヴィヴィオ、コロナ、アインハルトさんの三人。
「リオは向こうで誰か家のやつらを捕まえて修行をつけてもらうといいよ。みんな得意な物が違うから、勉強になると思う」
「あ、はい。…でも、いいのかな…」
「リオさん、こちらはかまいませんから」
「うん、行って来て」
「こっちはきにしないでいーよー」
上からアインハルトさん、ヴィヴィオ、コロナと了承の言葉をもらったあたしはきびすを返して屋敷へと戻った。
夜。
「あーうー、つーかーれーたー」
「コロナ、お風呂でだれてると危ないよ」
「でも、確かに疲れました…」
「だよねー」
あたしがコロナを注意すると、アインハルトさんがそう言って伸びをして、ヴィヴィオも水面に突っ伏しそうな勢いでした。
「それにしても、この温泉って気持ちがいいね」
「美肌温泉って言うらしいよ、ヴィヴィオ」
「そうなんだ」
「この温泉の効能は本物じゃぞ。みてみ、激務ですさんだお肌に張りと艶が戻っておる」
あたし達がお風呂で雑談しているとレオ閣下が温泉に入ってきた。
その後ろからミルヒオーレさんも入ってくる。
「ですね。お肌すべすべで。どうしましょう、もうこの温泉の虜になってしまいました」
「あれ?そう言えばお二方ともまだいらしたんですね」
忙しそうな感じだし、帰ったほうが良いのではなかろうか?
「なに、この中の世界は現実よりも早く時間が流れておるらしいからの。現実世界では幾らも時間は経っておらんそうじゃ」
「それに、わたし達だけでは元の場所まで帰るのは時間が掛かりますからね」
転移魔法なんて使えませんと言う二人。
「じゃから、日ごろの休息を兼ねてお前達の修行とやらが一段落するのをまっておる」
「領主ともなると、なかなか休めませんからね」
と、レオ閣下とミルヒオーレさん。
「そうなんですか」
なかなか大変なんだね、領主って。
昨日は余り堪能できなかった温泉を思う存分浸かってから就寝。
ヴィヴィオ達はなれない念の修行もあってベッドにたどり着くやいなや寝息が聞こえてきた。
あたしもさすがに疲れが溜まっていて、ぐっすりと泥沼のように眠った。
明けて箱庭滞在三日目。
朝ごはんを食べると、ヴィヴィオ達は『纏』の練習、あたしは『堅』の修行だ。
3時間。『堅』を維持した後、アオお兄ちゃんと組み手。
ヴィヴィオ達は『練』の練習をソラお姉ちゃんに付けてもらっていた。
夜、あたしは大量の水風船を桶に積め、お風呂場へと来ていた。
温泉には結構先客が居たが、それなりに広い温泉なので問題ない。
あたしは軽く体を洗い流すと、湯船に浸りながら一つ水風船を手に取った。
手に取ると、オーラを手のひらに放出して回転させ始める。
だんだん中の水が渦を巻いてくる。
「リオ、何やってるの?」
コロナが興味深げにあたしに聞いた。
ヴィヴィオとアインハルトさんもコロナの声であたしを見ている。
「あー、螺旋丸の練習だね。なつかしいなぁ。この技は後から練習方法を教えてもらったって言って、わたしが会得したのはちょうど今の年くらいだったっけ」
いつの間に入ってきていたのか、なのはお姉ちゃんがあたしがしている練習を見て言った。
「ええ!?そうなんですか?あたしもアオさんに教えてもらって練習しているのですが、なかなかうまく出来なくて。まだ一度も割れたことが無いんですよ」
「あはははは」
なのはお姉ちゃんはあたしの周りに浮かんでいる水風船を一つつかむと、放出されたオーラで中の水が回転し始める。
ばしゃっ
瞬く間に水風船は割れ、中の水が湯船に落ちた。
「こんな感じかな」
「すごいです」
まぁ、リオも練習すれば出来るようになるよー、となのはお姉ちゃん。
「今のは、どんな技なのですか?」
興味津々のアインハルトさんがなのはお姉ちゃんに聞いた。
「簡単に言うと放出したオーラを乱回転させるわざ。印も魔法陣も必要ない。本当にオーラを操る技術のみの技かな?」
くるくるとなのはお姉ちゃんの手のひらにコブシ大の大きさのオーラの玉が乱回転している。
「慣れれば魔力でも輝力でも同じ事はできるよ」
今度は同じものを魔力で作って見せたなのはお姉ちゃん。
「原理を聞けば単純で、誰にでも出来そうだけど、単純だけに難しく、とても高度な技なんだよ」
「そうなんですか」
「それに高威力。なかなか危険な技なんだよー」
そう言いながらなのはお姉ちゃんは螺旋丸をお湯へと沈めた。
その瞬間、一瞬で温泉は渦を巻き、あたしたちは宙を舞った。
そう、宙を舞ったのだ。
「きゃーっ」
「わわわわわっ!」
「にゅわっ!」
「ひぃぃぃいいいっ!」
ベチっ
ザバーーーーーーッ
あたし達がタイルに着地すると、一歩遅れてお湯が雨のように降りそそいだ。
「なっ!なにっ!?なにがあったの!」
「なっ!なんですか!?」
「すごい物音がしたのですがっ!」
駆け込んできたのは脱衣所で今、正に脱いでいたフェイトお姉ちゃんとシリカさんそれとミルヒオーレさんだ。
「ごめーん、ちょっとしたいたずらだったんだけど、思ったよりも大惨事に…」
なのはお姉ちゃん…ごめんじゃないよぉ…
カポーン
さて、気を取り直して入浴を再開したあたし達。
「はうー、やっぱりこの温泉きもちいいですぅ…」
ミルヒオーレさんが幸せそうにつぶやいた。
さて、こう言った合宿施設のような場合、だんだん会話は恋バナになって行くのがスタンダードなようで。
「ミルヒちゃんって好きな人が出来たでしょう?」
「え?ええっと!?そのっ、あのですね」
なのはお姉ちゃんの突然のフリに大慌てのミルヒオーレさん。
「そうなの?そう言えば前よりもずっときれいになったよね」
と、フェイトお姉ちゃん。
「あの、ええっと…そのぉ」
「その反応は認めているようなものだよ?」
シリカさんのその言葉でぶくぶく顔の半分を湯船につけて真っ赤になって、
「えと…はぃ…」
蚊の鳴くかのような可細い声でつぶやいた。
「どんな人なの?」
「えっと、以前いらしていただいた異世界からの勇者さまで、強くて、やさしくて、かっこいい方なのですよ」
「へぇ、強くてやさしいはポイントが高いよねーシリカちゃん」
「はい。ですが、そう言った方はライバルが多そうです」
「そうなんですよね。シンクの周りにはいつも女の子が多くて困ります。あ、シンクって言うのは勇者さまのお名前なんです」
「そうだよねー。分かるよ。そう言う人ってライバルが多いよね」
「…はい…リコもエクレも、多分ユキカゼさんまで。…そう言うなのはさん達はどうなんですか?」
聞かれてばかりじゃ悔しいと、ミルヒオーレさんが反撃。
「わたしはアオさん一筋です」
「あたしも」
「…私も」
上からなのはお姉ちゃん、シリカさん、フェイトお姉ちゃんだ。
「えええ!?お三方とも同じ人が好きなんですか?」
「うん」
ミルヒオーレさんの問いかけに肯定するなのはお姉ちゃん。
「そっ…それじゃあどうするんです?全員で同じ人を好きになって…誰か1人が選ばれたりしたら、…その…気まずくなっちゃいませんか?」
「だねー。だからアオさんにはわたし達全員を選んでもらったの」
さも当然とばかりになのはお姉ちゃんが言った。
「ええ!?」
さすがのその言葉にそこに居た全員が大混乱。
「そそそっ…それはどう言う…」
「そのまんまの意味。みんな諦めるなんて事は出来なかったし、かといって全員を押しのけてアオさんを独占したとしたら、お互いにしこりが残るからね。…他人なら…ううん、親友とかでもけじめをつけれたんだと思うけれど…わたし達の場合家族みたいなものだったからね。
お互いに相手の事を知っているし、好きだったから。だから皆でもらってもらおうって」
「そ、そうなのですか…」
「まあ、それも一つの選択肢。あんまりお勧めはしないけど」
そんな恋愛の形もあるのか。
やば、お話しを聞いていたら結構な時間お風呂に居たことに。
ヴィヴィオ達はとっくにあがってるよぉ、のぼせる前にあがらなきゃ。
バシッ
バスッ
ガッ
念を使ったアオお兄ちゃんとの組み手。
あたしの全力での攻撃を受け止めてくれる事なんて今まで無かったから、とても楽しい。
この時間がいつまでも続いて欲しいと望むほどに。
「うん、まぁこんなものでしょう。続きはまた今度だね」
「はぁ、はぁ、はぁ…ありがとう…ございました」
「うん。昼飯食べたらミッドチルダに送るから」
そっか、いつまでもここには居られないものね。
「あ、あの…またここ(フロニャルド)へは来られるんですか?」
次元航行艦や個人転送魔法でならこられる…よね?
「次元世界には横の広がりじゃなくて縦にも積み重なっているんだけど…管理局じゃまだ知られてないよね」
「そうなんですか?」
「フロニャルドとミッドチルダは階層が異なる。だからリオの力だけじゃここに来る事は出来ないよ」
「そうですか…」
その言葉にあたしは表情を歪めた。
「まあ、会いたかったら俺がリオを召喚んであげるから、会おうと思えば会えるよ。」
「それじゃ、夏休みにっ!絶対っ!召喚んでくださいよ」
「はいはい。それまでのヴィヴィオ達の念の修行はリオがみてやってね。纏、練、絶の三つは教えたし、まずはこの三つを完璧に習得してもらわないと次に行けないから」
「はいっ!任せてください」
「俺からもヴィヴィオ達には釘をさしておくけれど、ねだられても他の事を教えてはいけないよ?」
「だいじょうぶですっ!」
「そっか、それは頼もしい」
むー。
それから皆で昼食を食べて、この箱庭の世界から出る。
ここを出たらミッドチルダまで送ってもらって、このフロニャルドでの滞在は本当に終わり。
最初は不安も大きかったけれど、新しい知り合いが出来て、思いっきり体を動かせる戦と言われる行事があって、そして何よりアオお兄ちゃん達に再会できたフロニャルドと言う世界。
あたしはこの世界がとっても、とっても大好きになりました。
後書き
恒例?の洗礼(アプトノスの殺傷)はさらっと…流せなかったですね。ここでコロナ脱落も考えたのですが…みんな一緒がいいよね、と言うことですかね。
遅ればせながらA’sの劇場版をようやく見てきました。
はやて…転生トラック…なんてツッコんだのは私だけじゃないと信じてます。
まぁ、面白かったのですけれどね。
見るとなんとなくぶった切ったA’s編を書きたくなりますね。
って事で次回更新はA’s編ですっ!(嘘
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