スーパーロボット大戦パーフェクト　第二次篇

　　　　　　　　　　　　　　　　第百三十一話　地獄元帥の恐怖
「ミケーネ帝国の軍勢が静岡に集結しております」
静岡に向かう中でマクロスにおいて作戦会議が開かれていた。大文字が会議の参加者達にそう述べていた。
「そうか、予想通りですな」
「ええ」
大文字はグローバルの言葉に応えた。
「指揮官は地獄大元帥のようです」
「やはり」
皆それを聞いて頷いた。
「そして横浜にも集結しています」
「横浜にもですか」
「ええ。どうやらそこに闇の帝王がいるようです」
「それで博士」
ブライトが彼に尋ねる。
「その闇の帝王というのは」
「はい。ゴーゴン大公との戦いでミケーネの支配者である闇の帝王は」
彼はそれを受けて語る。
「邪魔大王国の伝承に残されていた地獄の帝王であることが判明しました」
「やっぱりそうか」
宙はそれを聞いて言った。
「そうじゃないかと思っていたんだ」
「あの暗黒大将軍とミケーネの軍団を率いていたのだ」
獅子王博士がそれを聞いて言う。
「その名は相応しいだろうな」
「そして司馬博士は古文書の中にミケーネに関する記述を発見したとのことです」
「父さんが」
「そうだ。博士もまた戦っているのだ」
「そうだったのか」
「さすがは司馬博士ですね」
ミサトがそれを聞いて言う。
「古代史にかけてはまさに独壇場ですね」
「では今から」
シーラが述べる。
「ミケーネ帝国に決戦ですね」
「そうですね」
エレもそれに同意する。
「確かに」
シナプスがその言葉に頷いた。
「勝利すれば戦局を一気に逆転することも可能だ。だが」
彼はあることを危惧していた。
「敵の戦力もかなりなもの。覚悟はいる」
「覚悟ならとっくにできているぜ」
甲児が言った。
「そんなのとっくによ。それに」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず」
今度は鉄也が言った。
「そういうことです」
「あっ、ひでえよ鉄也さん」
甲児が彼に抗議をした。
「俺が言おうと思っていたのによ」
「ははは、済まない甲児君」
「だが鉄也君の言う通りだ」
大介は彼の言葉そのものには賛成していた。
「やはりここは戦うしかありません」
「そうだな」
大河がそれに頷いた。
「ではそれで行くとしよう」
彼等は決断した。
「三輪長官の言葉からではない。地球を守る為に」
「ああ、そうだ」
一矢がそれに応えた。
「俺達は負けるわけにはいかない。そして逃げるわけにもいかない。だから」
「この戦い、何としても勝つ」
京四郎も言う。
「そうだな」
「何か京四郎さんって思ったより熱血なんですね」
「そうですね。案外」
フィリスとエルフィは彼の意外な素顔に少し驚いていた。
「では行くとしよう」
「了解」
皆そのまま静岡に向かう。その中でククルはじっと静岡の方を見据えていた。
「どうした」
「そなたか」
ゼンガーが声をかける。それに顔を向ける。
「覚えているか。俺とはじめて会った時のことを」
「うむ」
ククルはその言葉に頷いた。
「よくな。覚えておるぞ」
「そうか。思えば遠い昔のことだな」
ゼンガーの声は昔を懐かしむようであった。
「かつては敵同士であったが」
「今はこうして共に戦う。運命とはわからぬものだ」
「それでだ」
ゼンガーはククルに問うてきた。
「御前は邪魔大王国の主であった」
「遠い昔の話だな」
今となってはそうであった。その時のククルはもういないのだ。
「だがミケーネのことは覚えているな」
「一応はな」
「それでも知らぬか、闇の帝王のことは」
「済まぬ」
ククルは申し訳なさそうに述べた。
「その様な者がいることすら知らなかった」
「そうか」
「それだけミケーネというのは謎に包まれた国なのだ」
「だがかなりの力は持っている」
それは確かであった。
「そうだな」
「それは間違いない」
言うまでもないことであった。
「そうだ。だが」
ゼンガーの言葉が強くなった。
「俺達は勝たねばならん」
「そうだな」
ククルもそれに頷く。
「しかし思えば不思議なことだ」
「何がだ？」
「かつて邪魔大王国の主だったわらわがこうして敵であるそなたと共にいるのだからな」
「それが運命なのだ」
ゼンガーの言葉は達観したものであった。
「それだけだ」
「そうか。では」
「うむ、行くぞ」
彼は言った。
「戦いに」
ゼンガーとククルもまた戦いに向かおうとしていた。そして彼等は程なくして静岡に到着したのであった。
「選り取りみどり」
「おいミオ」
マサキが出撃してミケーネの大軍を見て呟いたミオに対して言う。
「その言葉は止めろよ」
「何でよ」
「あのシーマを思い出すだろうが」
「わかる？狙ってたんだ」
「ったくよお。これからとんでもねえ大勝負だってのによ」
ミオの様子は変わらない。相変わらずひょうきんな様子であった。
「何でそうなんだよ、おめえはよ」
「かえってリラックスしないと駄目じゃない」
ミオはマサキにそう言い返す。
「ゲンちゃんもそう思うでしょ」
「・・・・・・うむ」
「・・・・・・おめえ本当にリラックスしているのかよ」
今一つ説得力のないゲンナジーであった。
「俺は何か楽しいぞ」
アハマドが言ってきた。
「口の中がアドレナリンで一杯だ」
「おめえもまた相変わらずだな、おい」
「ふふふ、そうかもな」
「まあ人それぞれちゅうこっちゃ」
「おっさんもなあ。何か皆そんなに緊張していねえな」
「だって神経が張り詰めてばかりだと切れちゃいますから」
デメクサがのほほんとした顔で述べる。
「やっぱりまだリラックスしていましょうよ」
「つってももう敵が目の前だぜ」
「いつものことじゃない」
リューネが彼に言う。
「昨日だって淡路で派手にやったしさ。同じことだよ」
「そうだな」
ヤンロンがリューネの言葉に頷く。
「決戦だからといって特に緊張することはない。かえってミスを起こしやすくなる」
「だからといっても何かリラックスし過ぎみたいな」
テュッティはどちらかというとマサキと同じ考えであった。
「甲児君なんかは凄く熱くなってるけれど」
「その方が甲児さんらしいですよ」
プレシアがそれをフォローする。
「落ち込んでる甲児さんなんか」
「想像できん」
ティアンが言う。
「その様なあ奴なぞな」
「そうですよね」
「その者それぞれの持ち味じゃ」
ティアンはあらためて述べる。
「そう思うがのう」
「しかしよ」
マサキがここで言う。
「何かこう妙にリラックスし過ぎていねえか、今回は」
「それはそれでいいじゃない」
シモーヌが右目をウィンクして言ってきた。
「油断さえしなきゃね」
「まあそうだな」
マサキは何か釈然としないまま頷いてきた。
「それはそれでいいか」
「そういうこと」
「じゃあ行く！」
エリスは相変わらずであった。
「邪魔をするのなら誰だろうと！」
「あいつはあいつでなあ」
「全く別人になるな」
ファングが述べる。
「どうしたものか」
「おそらく降りている時は本当の顔なのだ」
ジノがその横で言ってきた。
「しかし戦いとなると」
「別人になるってわけだな。何かこれはこれですげえな」
「何か最近のマサキって」
そんな彼のぼやきを聞いてシロが言ってきた。
「ぼやきが多くなってないかニャ？」
「私もそう思うニャ」
クロもそれに頷いてきた。
「個性的な顔触れが増えたせいで」
「どうにも愚痴が多くなってるみたいだニャ」
「何か御前等にまで言われるとな」
どうにも首を傾げてしまっていた。
「やっぱりなあ」
「ほらほらマサキ」
そんな彼にセニアが声をかけてきた。
「敵が一杯いるんだから。気合入れて」
「ああ」
「ここは一発最初にサイフラッシュで」
「そうだな。まずはそれでダメージを与えて」
そう言われるとのってきた。
「やってやるか」
「そうそう」
「セニア様ってやっぱり」
「マサキの扱いが上手いニャ」
二匹はセニアの言葉を聞いて頷く。何だかんだの間で戦いははじまろうとしていた。
「やいドクターヘル！」
甲児が敵軍に対して叫ぶ。
「いたら返事しやがれ！」
「兜甲児か！」
すぐにその返事が返って来た。
「そうだ、俺だ！」
甲児もそれに返す。
「いやがるんだな！」
「いない筈がなかろう！」
「今日こそ年貢の納め時だぜ！覚悟しな！」
「フン、それはこっちの台詞だ！」
ドクターヘルも負けてはいない。
「あしゅら男爵とブロッケン伯爵の仇、取らせてもらう！」
「そんなの知ったことかよ！」
甲児はまた言い返す。
「ここで手前を倒してそのままミケーネを滅ぼしてやる！」
これはロンド＝ベルの戦略目標でもあった。
「いいな！覚悟しやがれ！」
「何を！」
「まあ甲児君」
ここで鉄也が出て来た。
「鉄也さん」
「ここは正念場だ。落ち着いていこう」
「あ、ああ」
甲児はそれに頷いた。
「そうだったな」
「そうだ」
「甲児君、後ろは僕達に任せろ」
「大介さん」
そこには大介もいる。マジンガーチームの息は見事なまでに合っていた。
「いいな、君は地獄大元帥との最後の戦いに向かうんだ」
「わかった。それじゃあよ」
「全軍攻撃開始だ」
大河が指示を出してきた。
「作戦名ゴッドイリュージョン！」
「えっ」
リツコがそれを聞いて顔を顰めさせる。
「何時の間に今回の作戦名が決まったの！？」
「あれ、知らなかったの」
ミサトがそんな彼女に何を今更といった顔で声をかけてきた。今彼女達はゴラオンの艦橋にいる。
「昨日決まったじゃない」
「そうだったの」
「大河長官とユウナ補佐官で決めちゃったのよ。格好いい名前がいいってことで」
「あの二人が」
「あとアズラエルさんでね」
「また遊んでるわね」
「いい名前だと思うけれど」
ここでゴラオンのモニターにそのユウナが出て来た。
「もっとも殆どは大河長官が決めてくれたんだけれどね」
「そうだったんですか」
リツコはそれを聞いて何か今一つ面白くないようであった。
「何か」
「駄目かな」
ユウナ自身もどうやらこの名前が気に入っているようであった。そんなリツコの顔を見て残念そうに問う。
「格好よくない？」
「いえ、その名前ですと」
彼女が言いたいのは別のことであったのだ。
「何かある漫画のブローみたいで」
「確かに」
それに何故かライが頷く。
「俺としてはギャラクティカ＝ファントムの方がいいと思いますが」
「それはどうかと思う」
いきなりミリアルドがクレームをつけてきた。
「やはりブラックスクリューではないだろうか、ここは」
「そうだよな」
「流石にライトニングカウント。わかっていますね」
何故かムウとガムリンがそれに賛成してきた。
「何でここで彼等が賛成！？」
「さあ」
その訳はミサトにもわからない。
「いや、デビルプロポーズだ」
キョウスケの主張はこうである。
「いい名前だと思う」
「何かもうそこまでいくと作戦発動で白黒入れ替わっちゃいそうね」
エクセレンは額から汗を流して苦笑いして述べた。
「不思議なことに」
「スコルピオンクラッシュ」
ヒイロがポツリと呟いた。
「いいと思う」
「そうだな。それいいんじゃねえか？」
マサキも話に乗ってきた。
「作戦発動時にＣＬＡＳＨ！って効果音が鳴ってな」
「そうだ。それがいい」
「何かさ」
マコトはそんな彼等の言葉を聞いていてふと思った。
「僕は何も言えないけれどマサキ君達には何か言わないといけない気持ちになってきたよ」
「俺何でミリアルドさんに納得してるんだろ」
「それは考えない方がいいわね」
ミサトは彼等にそう忠告した。
「考えたらきりがないから。そうですよね、アムロ中佐」
「あ、ああ」
話を振られたアムロは少し戸惑いを見せていた。
「そうだな。そういうものだ」
「そうよ。だからね」
「やっぱりアムロ中佐だったら」
だがリツコはふと思った。
「ペガサス流星拳とかかしら」
「じゃあウラキ中尉はネビュラチェーンで」
「何か前世の記憶を感じるんだけれど」
コウはその中で苦笑していた。
「何でかな」
「ははは、気のせいにしておこう」
万丈がここでやけに必死にフォローしてきた。
「言い出したらきりがないからね」
「その通りだ」
しかも京四郎まで出て来た。
「俺も何だ。仮面を被っているような気がしてきた」
「そうなんですか」
アスランがそれを聞いて話に入ってきた。
「そうだ。わかるか」
「まあ。何か話を聞いていると」
そして彼は言う。
「ラクス嬢がいたら何か面白いかなって」
「そうなの」
ミサトはその言葉に少しキョトンとしていた。
「彼女もそっちと縁があるの」
「縁って」
「ああ、何でもないわ」
話がややこしくなりそうなので誤魔化した。
「そういうことよね、凱君、アズラエルさん」
「ま、まあそうだな」
「そういうことですね」
凱とアズラエルは話を振られて妙に焦っていた。
「何かとな」
「人によっては何かとこだわりのある世界というのもあります」
「羨ましいみたいね、何か」
リツコが妙に必死になっているミサトを見て言ってきた。
「何かあるの？」
「別に何もないわよ」
ミサトは一応はそう断った。
「けれど」
「けれど。何？」
「私はね。あの人の世界にはまだ出ていないのよ」
「何の話？」
「あっ、何でもないわよ。ただ」
それでも言う。
「一度は出たいなって」
「そうなの」
「そうよ。羨ましいのよ」
何か妙に嫉妬が入っていた。だがそれをどうこう言っても今はどうしようもなかった。
「作戦発動！」
「了解、作戦発動！」
命が大河の命令を復唱する。既に時間は動いていた。
「作戦開始！」
そしてまた叫ぶ。今戦いがはじまった。
「ギッタンギッタンにしちゃうもんねーーーーーーーー！」
マイクが最初に出て叫ぶ。
「おいマイク！」
それにゴルディマーグが叫ぶ。
「まだライブは早いぜ！」
「マイクもう大丈夫！」
だがマイクは彼の言葉にそう返す。
「今日は絶好調だもんね！」
「そうか、じゃあ派手にやりな！」
「オッケーーーーーッ！」
そう言ってチェンジをはじめた。
「システムチェーーーーンジ！マイクサウンダース十三世！」
ロックンローラーになる。そのままギターを手にしブラザー達と合流する。
「バリバリだっぜ！」
いきなりディスク攻撃を浴びせて戦闘獣達を粉砕していく。最初から派手な攻撃であった。
「よし！」
皆それで勢いに乗った。
「派手に仕掛けるぜ！」
バサラも叫ぶ。
「皆！準備はいいな！」
「ええ！」
「何時でもな！」
「・・・・・・・・・」
ファイアーボンバーの面々もこれに応える。彼等呼吸を合わせて演奏をはじめた。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ！」
バサラの曲が戦場に響き渡る。その曲もまたロンド＝ベルの士気を大いに高める効果があった。
「この曲」
ステラもまたバサラの曲を聴いていた。そこで何かを感じていた。
「いい。何か凄く」
「ああ」
それにアウルが頷く。
「何かな、乗ってきたぜ」
「ティターンズで戦っていた時とは何か違うな」
スティングもそれに続く。
「この感じ・・・・・・力が漲ってくるみたいだ」
「ステラ・・・・・・やれる」
今までとは全く違う感触が今彼女を包んでいた。
「シン」
「おい、結局はシンかよ」
「何か最近俺達はどうでもいいみたいだな」
「御免。けれどステラやっぱりシンが気になる」
「ああ、わかったよ」
「じゃあ行くんだ」
「わかった。シン！」
「ステラ！」
シンのデスティニーが今彼女の上にいた。
「一緒に・・・・・・戦う」
「よし！じゃあ」
「前・・・・・・敵がいる」
ステラは照準を合わせながら呟く。
「今・・・・・・撃つ」
「よし！合わせる！」
ガイアガンダムは獣の姿になりデスティニーは天使の翼を広げた。そして空と陸から敵に襲い掛かる。
「撃つ・・・・・・」
「うおおおおおおおおおおおっ！」
二人は動きを合わせてミケーネ軍に攻撃を仕掛ける。彼等のビームが敵を次々と屠っていく。
それにアウルとスティングも動きを合わせる。ステラは今度は彼等と動きを合わせた。
「頼むぜスティング！」
「わかった！」
スティングはアウルに応えてまずは変形した。そしてオールレンジ攻撃を浴びせる。
「アウル！ステラ！」
「わかってるぜ！」
「倒す・・・・・・」
ステラがスティングの撃ち漏らした敵を撃ち貫きアウルが止めに斬り裂く。三人がこれまで見せなかった見事なまでの連携攻撃であった。
「あいつ等何時の間に」
ロウはそんな彼等の戦いぶりを見て驚きを隠せなかった。
「あんな息の合った攻撃を」
「これもロンド＝ベルに入ったせいか？」
イライジャもそれを見ていた。そのうえで呟く。
「エクステンデッドでなくなっただけじゃなく」
「そうかもな」
ロウはイライジャのその言葉に応えてきた。
「ああした兵器として戦うのじゃなく人として戦っているからな」
「人としてか」
「ああ。だとしたらあいつ等にとっていいことだったな」
彼は言う。
「ロンド＝ベルに入ったのは」
「そうだろうな」
イライジャはその言葉に頷いてきた。
「今まであいつ等は人として扱われてはいなかった」
「ああ」
「それが人として受け入れられてああして自分の心で戦える。それがいいんだろうな」
「俺達の選択は間違っちゃいなかったか」
ロウはそれを確かめたかった。
「どうなんだろうな」
「それはまだわからない」
イライジャはそれにはこう返した。
「しかしだ」
だがそのうえで言う。
「少なくともティターンズにいるよりはいいな」
「そうか」
「そうだ。その証拠に今のあいつ等は」
「そうだな。いい顔をしている」
「おう、ロウさん達よ」
トッドのダンバインが彼等に声をかけてきた。
「そろそろそっちにも敵が山みてえに来るぜ。用心しな」
「わかった」
「ではすぐに迎撃に向かう」
「俺はこっから手が離せねえからな。宜しく頼むぜ」
「はああああああああああっ！」
「いっけえええーーーーーーっ！ハイパーオーラ斬り！」
その横からショウとチャムの声が聞こえる。どうやら手が離せないというのは本当らしかった。
「戦いは激しいけれどな」
「だがそれもまたよしだ」
彼等もまた戦いに向かう。今ロンド＝ベルはその全ての戦力でミケーネと戦っていた。
「フフフ、見事だ」
地獄大元帥はそんな彼等の戦いを見て不敵に笑っていた。
「そうでなくてはな。面白くはない」
「やいやい！」
そんな彼に甲児が叫ぶ。
「何余裕かましてやがる！」
「兜甲児か」
「そうだ！今からそっちに行ってやるからな！」
甲児は叫ぶ。
「覚悟しやがれ！」
「さて、それでわしを倒せるかな？」
「減らず口もこれまでだぜ！」
「それが減らず口かどうか」
地獄大元帥は笑ってそう返した。
「今それを見せてやろう」
「何ィ！？」
「わしがここに来るまでに何も策を用意していないと思ったか」
「どういうことだ」
「またあれかよ」
ケーンがそれを聞いて笑って言った。
「罠ってやつか！？」
「何かお決まりのパターンってやつだよな」
「そう言うと失礼だぜ。あれでも必死に考えてるんだからな」
タップとライトがそれに続く。
「けれど何かワンパターンですよね」
ジュンがそれに突っ込みを入れる。
「調べた結果パターンが本当に僅かです」
「ルリルリ、本当のこと言っちゃ駄目よ」
「そうですよ。あの人本当に大真面目ですから」
ハルカとメグミも案外容赦がない。
「大真面目にワンパターンなんだよな」
「ある意味漫画の王道ですよね」
「犬が鳴いてワンパターン・・・・・・」
三人娘もまた健在である。
「イズミ、おめえ最近何か別の方向にいってねえか？」
おまけにリョーコの突っ込みもまた。彼女達も結構ワンパターンだがそれは今はどうでもいいことであった。
「しかしだ！」
ダイゴウジが叫ぶ。
「その罠が問題だ！何をしてくるか！」
「伏兵とかそんなんじゃないかね」
サブロウタはそう見ていた。
「毎度毎度そうだし」
「そうしたところだろうな」
ナガレも同じ見方だった。
「さて、何か」
「フフフ、聞いて驚くのだ」
地獄大元帥は彼等の声も全く聞いてはいなかった。
「わしの恐ろしさを！」
「ええと」
ユリカはその声を聞いてアキトに声をかけてきた。
「アキト、この台詞これで何度目だったっけ」
「何で俺に聴くの？」
「だってアキトだから」
どうにも理屈の通らない言葉であった。
「聴いてるのよ。何度目？」
「いちいち覚えていないよ」
その返事は何か要領を得ないものであった。
「いつもだから」
「そうよね。じゃあやっぱり」
ユリカも言った。
「ワンパターンなのね」
「そうとしか言えないね」
「そういうことだドクターヘル！」
甲児は彼等の声を聞いてからドクターヘルに対して叫んだ。
「このワンパターン野郎！今度は何だ！」
「フン！マンネリなんかも何のその！」
「ちょっと待ちやがれ！」
その言葉に弁慶が怒ってきた。
「その言葉、許さねえぞ！」
「そうでごわすな！」
大作も出て来た。
「おいらもだ！何か癪に触るな！」
「おい大作」
「日吉も。一体どうしたんだ」
豹馬と健一は彼等が突然声をあげたので驚きを隠せなかった。
「弁慶がこんなに怒るとは」
「何か理由があるというのか？」
竜馬と隼人も首を傾げていた。それ程までに突拍子もないことであったのだ。
「とにかくだ！」
地獄大元帥は強引に話を進める。
「ここが貴様の墓場となる！」
「おい、その台詞も聞き飽きたぞ！」
今度はシンが突っ込みを入れる。
「たまには違うことを言え！」
「そうだ！」
カガリもそれに続く。
「御前の頭の中には言葉がないのか！それでも天才科学者か！」
「何かねえ」
ユウナがそんなシンとカガリを見てクサナギの艦橋で言う。
「あの二人って案外息が合うの？」
「どうやらそのようで」
トダカがそれに答える。
「おそらくは似ているということなのでしょう」
「言われてみればそうだね」
ユウナは顎に手を当てて考える顔をして述べた。
「やっぱりね。そうなるね」
「おい、待て！」
カガリは今度はユウナ達に文句をつけてきた。
「私とあいつが似ているっていうのか！」
「あっ、聞こえてたの」
「通信がばっちり入っているぞ！聞き捨てならない！」
「って言われてもねえ」
ユウナの返事は実にカガリにとっては気分の悪いものであった。
「実際にねえ」
「やはり似ておられます」
「許さん、貴様等！」
カガリはまた激昂してきた。
「よりによってあんな奴とか！」
「俺だってお断りだ！」
シンも怒っていた。
「こんな女と俺が似ているだと！」
「やっぱり似ていますね」
アズラエルが騒ぐ彼等を見て言った。
「というかそっくりですね」
「困ったものです」
キサカが腕を組んで本当に困った顔をしていた。
「どうしたものか」
「どうしたもこうしたもあるか！」
「何でこんな奴と！」
「ねえカガリ、シン」
そんな二人にキラが声をかけてきた。
「ん！？」
「何だ！？」
「今は戦闘中だから」
「あっ」
「そうだったな」
二人は言われてやっと思い出した。
「全く、こいつのせいで」
「この馬鹿のせいで」
それでも二人の対立は収まらない。
「どうにもな」
「変なことになっちまうぜ」
「しかし」
アスランも言ってきた。
「二人共言い合いながらも攻撃はしているんだな」
「そうだね」
キラもそれに頷く。
「無意識なのかな」
「特にシンだな」
アスランはシンに言及してきた。
「自然に身体が動いているな」
「うん」
「ああ、俺はそうなんだ」
シンの方でも答えてきた。
「俺はこうしたことじゃ考えるより先に身体が動くんだ」
「そうなんだ」
「御前とやり合った時もそうだったな」
彼は語る。
「何時だってそうだ」
「何か凄いね」
「御前だってそうじゃないのか？」
シンは逆にキラに聞き返した。
「僕も？」
「ああ。一人でに身体が動く時があるだろう」
「言われてみれば」
自分でも気が付いてきた。
「そうかも」
「そうだ。俺がそれなんだ」
彼はまた言う。
「だからな」
「心配ないのか」
「そうだ」
アスランにも答える。
「もっともあいつは単細胞なだけだがな」
「まだ言うのか！」
カガリはそれにすぐ反応してきた。
「やっぱり御前死ね！」
「うるせえ！お姫様なんだからちったあ大人しくしやがれ！」
「御前に言われる筋合いはない！」
「何だと！」
また喧嘩になる。この二人だけはどうにもならないものがあった。
「参ったなあ」
キラはそんな二人を見て溜息をつく。
「何でこんなに仲が悪いんだろ」
「御前とシンはどうにかなったんだがな」
アスランも困った顔になっていた。
「この二人はどうにも」
「似た者同士だからね」
フォウが話に入ってきた。
「フォウさん」
「二人は似ているのよ。だから反発し合うのよ」
「そうなんですか」
「ええ。けれど安心して」
彼女はそのうえで言う。
「二人共ね。お互いはわかっているから」
「はあ」
「喧嘩する程って言うでしょ。そういうことよ」
「そうなんですか」
「そうよ。だからね」
彼女が言う間にも二人の言い争いは続く。そしてその間にも戦闘は続いていた。
「フォウ！」
そのフォウにエマから声がかかった。
「来たわよ！」
「了解！」
フォウはそれに応える。そしてリ＝ガズィを駆った。
「見える！」
迫り来る二機のオベリウスの前で左右に動く。瞬く間にビームを放ちそれで急所を貫いたのであった。
「ガオオオオオン！」
これで二機のオベリウスを屠った。見れば戦いはロンド＝ベルの方に傾いていた。
「やい地獄大元帥！」
甲児が彼に声をかけてきた。
「そろそろ年貢の納め時だ！観念しやがれ！」
「フハハハハハハ！何を言うか兜甲児よ！」
「減らず口はもういいんだよ！」
「馬鹿め！わしが減らず口を言うと思うか！」
「じゃあ今までのは何だったんだ？」
「さてね」
真吾の突っ込みにキリーがおどけてみせる。
「あの爺さんの頭の中じゃ違うんだろ」
「ひょっとして所謂老人ボケかしら」
レミーがふざけて言う。
「ほら、第二次世界大戦の頃からの人だし」
「それを考えると仙人みたいだな」
「またタチの悪い仙人で」
「そのうち千人に増えたりして」
「そりゃ御勘弁を」
キリーもふざけてみせた。この言葉を聞いてイズミはその身体に青い炎を燃やしていた。
「面白い・・・・・・悔しい」
「イズミさんも悔しいと思うんですね」
マヤがそれを聞いて唖然としていた。
「何か意外」
「マヤさんが言うと説得力ありますね」
ユリカがそれに応えてきた。
「それかフレイさんが」
「私か」
フレイが少し嫌そうな顔で返してきた。
「どうにもな。縁があるな」
「私達三人あまり似ていないと思いますけれど」
「似ってねえ仁木弾正」
「・・・・・・流石にそれは」
「無理矢理過ぎるのではないか」
マヤとフレイの突込みが何故か他人のそれより深刻に聞こえる。
「やはりあれだ」
フレイは言う。
「その、駄洒落もタイミングだと思うぞ」
「そうですよね」
マヤもそれに頷く。
「やっぱり」
「ところでさ」
「はい」
ハルカが話に入ってきた。
「何ですか、エマさん」
「マヤちゃん、間違えてるわよ」
そうするとそのエマから通信が返ってきた。
「ハルカとは違うからね」
「あっ、すいません」
「まあ似ているけれどね」
「そうなのよねえ」
ハルカも言ってきた。
「どういうわけか」
「はあ」
「それでね」
ハルカは話を戻してきた。
「マヤちゃんって三人の中じゃ一番年上じゃなかったっけ」
「あれっ」
言われてはじめて気付いた。
「そうでしたっけ」
「そうだったのか！？」
「初耳」
フレイとイズミもそれに反応してきた。
「フレイちゃんまだ十代よね」
「あ、ああ」
フレイはハルカの言葉に頷く。
「そうだが」
「フレイって案外少女趣味なんですよ」
「そうだな。純情で」
「おい、待て」
ツグミとアイビスに言い返す。
「横から変なことを言うな」
顔を赤くしてそう忠告する。
「私は別に」
「それでイズミも実はまだね。花も恥らう年頃だし」
「私もう大学卒業して」
マヤは言う。
「それでネルフに入ってもう」
「そうよね。それじゃあ」
「一番おばさん・・・・・・」
「そういうことになるのかしら」
「そうだったんですか」
何かマヤの士気が急に下がってきた。
「何か急に力が」
「けれど外見は一番若いじゃない」
ハルカはすかさずフォローを入れてきた。
「だから大丈夫よ。そういうこと」
「そうですか」
「そのうち物凄い歳がわからない人が入るかも知れないしね」
「そうでしょうかね」
何かマヤには不安な話であった。
「まあ歳の話はね」
「あまりしてもいいものじゃないわ」
何故かミサトとリツコが入って来た。
「だからそれよりも戦闘」
「甲児君」
リツコが甲児に声をかけてきた。
「前線は上手くいっているみたいね」
「おうよ！」
甲児が元気よく返事を返してきた。
「ガーーーーッと攻めてピャーーーーーッと倒してるぜ！」
「それじゃあちょっと」
「わかると思ってんの！」
ミサトが言おうとしたらアスカが出て来た。
「何その馬鹿な説明！あんた何処の野球選手よ！」
「おっ、わかったか」
甲児はそれに返してきた。
「いいじゃねえか、これでも通じるんだからな」
「通じてないでしょ！何自分勝手に解釈してんのよ！」
「うるせえな。感性でわかんだろうが！」
「そんなんだから馬鹿って言われてるんでしょ！ちょっとは自覚しなさい！」
「うるせえ！おめえだって大概じゃねえか！」
「あたしの何処がそうなのよ！」
「時々日本語とドイツ語混ざって変な言葉になってんじゃねえか！」
「あれっ」
アスカはそれを言われてキョトンとする。
「そうかしら」
「おめえこの前いつもの面々で飲んでたよな」
「ええ、まあ」
ガンダムチームやドラグナーチーム、それにザフトやアークエンジェルの面々である。彼等がロンド＝ベルの集まりの主軸なのだ。十代の面々はここに集まり獣戦機隊もこれに加わる。
「その時混ざってたぜ」
「あれは酔ったから」
アスカはそれを言われてバツの悪い顔をしてきた。
「仕方ないじゃない」
「おめえ酒癖悪いんだよ」
甲児はまた言い返す。
「絡むし泣くし笑うし騒ぐしよ。ちったあ静かにしろよ」
「うう・・・・・・」
どうにもこうにも事実なので言い返せない。
「まあ俺も飲んでるんだけれどな」
「何か最近皆飲んでない？」
「そういえばそうね」
ミサトはリツコの言葉に頷いた。
「どうなってるのかしら、そこんとこ」
「でさ、馬鹿甲児」
アスカは気を取り直して甲児に尋ねてきた。
「何だよ」
「そろそろ決着なんでしょ」
アスカはこう言ってきた。
「さっさと決めなさい」
「そうしたいんだけれどよ」
「どうしたのよ」６
「今動けねえんだ。敵が周りにいてよ」
「そうなの」
「大介さん」
彼は大介に声をかけてきた。
「悪いけど頼めるか？」
「いいのか、甲児君」
大介はそれを聞いて甲児に声をかけてきた。
「地獄大元帥は君の宿敵じゃないか」
「いいってことよ。何か下手したらまた蘇ってきそうだしな」
「それはあるわね」
レインがそれを聞いて言った。
「何かありそう」
「普通に敵も味方も復活してるしね、最近」
アレンビーが笑いながら述べた。
「まあそれがいいんだけれど」
「それって俺のこと？」
「僕のこと？」
トールとキラがアレンビーの話を聞いて言ってきた。
「あはは、まあそうなんだけれど」
「じゃあ僕もですね」
ニコルも話に入ってきた。
「復活というと」
「まああの時は本当に死ぬかと思ったけれど」
「済まない」
アスランがトールに対して謝る。
「ああ、いいよ。生きてるしね」
「スカイグラスパーは真っ二つになってそれっきりだったっけ」
「確かね」
カズイとサイがその後ろで話していた。
「ミリアリアにとってはよかったかな」
「まあね」
そのミリアリア本人がサイに答えた。
「やっぱりサイは操縦してくれないと」
「あら、それだけ？」
マリューがここで彼女をからかってきた。
「えっ」
「それだけかしら、ハゥ少尉」
「勿論違いますけれど」
ミリアリアもそれを白状してきた。
「まあそれはそれで」
「ふふふ、そうね」
「結構マリュー艦長もお節介焼きなのね」
「そうだな」
アムとレッシィはそんな彼女を見て囁き合う。
「意外と」
「けれど似合うかも」
「やっぱり女ってのは二十六になると焦るからな。やっぱりな」
「何か言った！？シン君」
バキッ
何かが砕ける音がアークエンジェルの艦橋から聞こえてきた。モニターに映るマリューの顔はにこにことしていたがあちこちに血管が浮き出ていた。
「あっ、いや」
「だったらいいわ」
「はい・・・・・・」
「シンもねえ」
「いつも一言多いんだよ、あいつは」
リリスとキャオが彼を見て言うのであった。
「それじゃあ甲児君」
大介はあらためて甲児に声をかけてきていた。
「それでいいんだな」
「おうよ」
甲児はそれに応えた。
「今は周りの敵を相手にしなくちゃならねえからな。残念だけれどよ」
「わかった」
大介は頷いた。そしてスペイザーに変形し素早く地獄大元帥のところにやってきた。
「ふん、デューク＝フリードか」
「そうだ」
大介は地獄大元帥の言葉に答えた。
「御前の相手はこの僕がする、いいな」
「ふむ。相手にとって不足はないな」
「それはこちらもだ。では行くぞ」
大介はダイザーに戻して構えを取ってきた。
「覚悟！」
ダブルハーケンを手に闘いを挑む。地獄大元帥もそれを受ける。両者は激しい戦いを開始したのであった。
戦いはそのまま百合にも至った。だがそれでも決着はつかず次第に両者に疲れが見えてきた。
「流石にやるな」
「貴様こそ」
二人は睨み合って言い合う。
「だがこのデモニカは撃墜できぬぞ」
「それはどうかな」
「何っ！？」
「知っている筈だ、このダイザーもマジンガーチームの一員」
大介は言う。
「その力は乗る者の力が大きく影響する。だから！」
「ムウッ！」
「これで決める。スペースサンダーーーーッ！」
ダイザーの全身に雷が落ちる。それがデモニカに向かって放たれた。
「ヌウッ！」
「これはかわせはしない！」
攻撃を放った大介が叫んだ。
「終わりだ！」
「ヌオオオオオオーーーーーーーッ！」
大介の言う通りであった。その速さ、その威力。デモニカといえどかわせるものではなかった。巨大要塞は雷に撃たれ動きを止めたのであった。
「おのれ・・・・・・」
「これで最後だ、地獄大元帥」
大介は炎に包まれるデモニカに対して言った。
「僕達の勝利だ」
「フフフ、まずは褒めておこう」
地獄大元帥は苦悶の中でこう言ってきた。
「わしに勝ったことはな。だが」
そのうえでの言葉であった。
「闇の帝王に勝てはせぬ。それは覚えておけ」
「ヘン、最後もそれかよ！」
甲児がそれに言い返す。
「俺達は負けねえつってんだろ！」
「精々今のうちに楽しい夢を見ているがいい」
甲児に対して言った。
「地獄で待っておるぞ！ハハハハハハハハハハ！」
最後に高笑いが聞こえた。そのまま炎に包まれ消えていく。地獄大元帥、いやドクターヘルとの戦いも遂に終わったのであった。
「これでいよいよ次は」
「ああ」
サコンがピートの言葉に応える。
「闇の帝王だな」
「腕が鳴るってものだぜ」
サンシローはもう戦意に溢れていた。
「すぐにでも行くか」
「いや、待て」
だがそれをリーが止める。
「どうした、リー」
「まずは補給と修理だ」
「そうですね。また激しい戦いでしたし」
ブンタも言ってきた。
「ここは早乙女研究所にでも入って」
「それで飯でも食って」
「ヤマガタケ君は結局それなのね」
ミドリがヤマガタケの言葉に苦笑いを浮かべてきた。
「困ったものね」
「いや、ここはそれも大事だ」
しかし大文字は真面目にそれに応えた。
「食事も採っておこう、今のうちにな」
「了解。それじゃあ」
「うむ、早乙女研究所に向かうぞ」
戦いを終えた彼等は早乙女研究所に厄介になった。そしてすぐに整備と補給を受けたのであった。
「いよいよですな」
早乙女博士がロンド＝ベルの面々に対して言ってきた。
「ミケーネとの最後の戦いが」
「ええ」
「遂に」
大文字と獅子王博士がそれに応えてきた。
「僕達は負けるわけにはいきません」
「はい」
早乙女博士は獅子王博士の言葉に頷いた。
「それでは補給が終わり次第すぐに」
「はい、横浜に向かいます」
大文字はそう返した。
「わかりました。では健闘を祈ります」
「有り難うございます」
彼等は言葉を交あわせていた。その間に他の者達は食事を摂っていた。
凱は牛丼を命達と一緒に食べていた。ボルフォッグ達は整備を受けていた。
「私達の戦いも佳境でしょうかね」
「そうですね」
ボルフォッグに闇竜が応えていた。
「少なくとも地上においては」
「ミケーネの他に何がいたっけ」
「後はバルマーと」
「マスターアジアだったか」
光竜に風龍と雷龍が応えてきた。
「何だ、もう少しだな」
「だが気を抜けはしないぞ」
炎竜を氷竜が嗜める。
「あのマスターアジアだからな」
ゴルディマーグも流石にいつもの強気がない。
「確かに」
ボルフォッグがそれに頷く。
「マスターアジアは恐ろしい力を持っています。ですから」
「心配することはない！」
だがここでドモンが言ってきた。
「ドモン、やるの！？」
そんな彼にマイクが問う。
「そうだ！俺がマスターアジアを倒す！」
彼は右の拳を掲げて今言っていた。
「この拳にかけて！」
「そして彼の野望もまた」
ジョルジュが出て来た。
「私達が防ぎます」
「シャッフル同盟の名にかけて」
「任せておきな」
サイシーとヂボデーも出て来た。
「何としてもな」
「ああ、頼りにさせてもらうぜ」
凱がその言葉を受けた。
「相手が相手だしな」
「そうよね」
アスカが何時になく嫌悪感を丸出しにしてそこにいた。
「あの変態爺さんともいい加減お別れといきたいわよ」
「前から思っていたけれど何であの人をそんなに嫌うんだい？」
「敵なのはわかるけれど」
マサトと美久がそれに問う。
「拒絶反応なのよ。あんな無茶苦茶なことされたら」
「そうなの」
「そうよ」
またマサトに答える。
「ＢＦ団とかああいうのは受け付けないのよ。あんまり非常識だから」
「何かそこんところアズラエルさんと似てるわね」
命がそれを聞いて言った。
「アズラエルさんもＢＦ団に工場を一つ完全に破壊されてから変わっちゃったし」
「あの人の場合は多少はよくだがな」
凱はそれを聞いて述べた。
「偏見が和らいだ」
「そりゃそうでしょ」
アスカはそれを聞いてまた言う。
「あんなの見たらね」
「素敵なのに」
「だからあんたは黙ってなさい！」
レイに対して叫ぶ。
「何であんな変態爺さんに対してそんな感情持ってるのよ！」
「格好いいから」
「何処がよ」
「いや、あそこまでいけば」
「ねえ」
ちずるとめぐみが囁く。
「まあ無茶苦茶ではあるわね」
アスカはあくまで格好いいとは認めない。
「無茶苦茶過ぎるけれど」
「僕もあんなふうになれたらなあ」
シンジがぽつりと呟いた。
「もっと前向きになれるかな」
「なったらなったでＢＦ団に入れられるわよ」
「それはちょっと」
「そもそもや」
トウジが言う。
「あのビッグファイアって何者やったんや？」
「さあ」
その質問には誰も答えられない。
「確実に人間じゃないのは確かよ」
「じゃあ何や？」
「宇宙人かも」
「いや、あんなのはいないぞ」
タケルがそれにクレームをつける。
「多分」
「俺も知らない」
ダバも言ってきた。
「宇宙は確かに広いけれど」
「あんな奇天烈な戦闘力のはいねえな」
キャオも続いた。
「パナマ運河のあれは我が目を疑ったぜ」
「それと同じなんだろ？そのＢＦ団ってのは」
「あれが十人いるのよ」
アスカは憮然とした声で述べた。
「それでどういう現象か全く納得できない妖術か超能力か何かで攻撃仕掛けてくるのよ」
「オーブもそれでねえ」
ユウナまで来た。
「一瞬で大変なことになっちゃって」
「大変だったんですね」
「大変どころじゃなかったよ」
ユウナはシンジに述べた。
「針が急に出て来てだよ。それに素手でモビルスーツを破壊しちゃうし」
「はあ」
「こっちの攻撃は全く当たらないし。白昼の残月だってわかった時にはもうね」
「どうしようかと本気で悩みました」
「キサカさんまで」
「僕が驚くのは別にいいんだね」
「ユウナさんはしょっちゅうだからな」
「やれやれ」
キャオの言葉に苦笑いを見せてきた。
「まあ僕はそんな役どころだからね。仕方ないか」
「で、オーブも大損害ですか」
「一割がね。壊滅」
「たった一人で」
「だからよ、それだけで済んでまだ幸せなんだよ」
ムウが力説してきた。
「俺のいた基地は壊滅したんだからな」
「御前が会ったのはマスク＝ザ＝レッドか」
「ええ」
アルフレッドに答えた。
「ビッグゴールドで来てくれましたよ」
「俺のとこには命の鐘の十常侍が来たぞ」
「それはまた」
「訳わからないうちに基地は見事壊滅した」
「命からがらの脱出だったんだよ」
キースも一同に語る。
「全く。えらい目に遭った」
「ＢＦ団ってあちこちで暴れていたんですね」
「プラントにも来ましたしね」
ニコルがシンジに言った。
「直系の怒鬼が」
「宇宙空間から攻撃仕掛けてきたんだよね」
「そうです。公式には隕石の衝突にされていますが」
「あいつ等だけでバルマー帝国倒せたわよね」
アスカは嫌悪感に満ちた目で述べた。
「あんだけ非常識なんだから」
「それでそのビッグファイアだけれど」
ダバがアスカに尋ねてきた。
「三つの護衛兵団がいたんだよね、確か」
「はい」
アスカはそれに答えた。
「何か胡散臭いまでに強いのが三体いたそうです」
「どんなんだったんかな」
「ガルーダ、ネプチューン、アトラス」
シンジはその名を呟く。
「その十傑集が束になっても適わない程だったそうです」
「それでビッグファイアまでいる」
「とんでもねえ組織だな、おい」
キャオはあらためて驚きの言葉を口にした。
「化け物かよ」
「だからなのよ」
アスカはまた言う。
「ああした連中は嫌なのよ」
「けれどさ、アスカ」
「何！？」
「ＢＦ団の人って宇宙空間でも普通に行動できるんだよね」
「考えたくないけれどね」
「じゃああの人だって」
当然マスターアジアのことである。
「やっぱり宇宙空間でもさ」
「・・・・・・かもね」
さらに露骨に嫌悪感を見せてきた。
「あんだけ非常識なら」
「そして周りの敵を次々に倒す」
レイはその話を聞いて一人呟いていた。
「本当に素敵な方・・・・・・」
また頬を赤らめさせる。どうやら本気であるようだ。
「何でレイちゃんがあの人を好きになったのかはわからないけれど」
レインといえど苦笑いするしかなかった。
「とにかくあの人ともそろそろ決着の時ね」
「勝てるかな」
シンジはそれがかなり不安であった。
「勝つ！」
だがその不安にはドモンが答えた。
「俺が何としても倒す！安心しろ！」
「じゃあ期待させてもらうわ」
アスカが彼に対して声をかけた。
「頑張ってね」
彼等はミケーネとの決戦を前に次の戦いに想いを馳せていた。戦いはまだ終わることがない。だがその先の平和を見ることもまた戦士にとってはなくてはならない夢であった。

第百三十一話完

２００６・１２・１８