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ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者

作者:黒神
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第五十三話 修行

翌朝、闇慈達は広い庭の一角に集まっていた。服装はアザゼルを含めた全員ジャージだ。資料やデータらしき物を持ったアザゼルが口を開く。

「先に言っておく。今から俺が言うものは将来的なものを見据えてのトレーニングメニューだ。すぐに効果が出る者もいるが、長期的に見なければならない者もいる。ただ、お前らは成長中の若手だ。方向性を見誤らなければ良い成長をするだろう。さて、まずはリアス。お前だ」

アザゼルが最初に呼んだのはリアスだった。

「お前は最初から才能、身体能力、魔力全てが高スペックの悪魔だ。このまま普通に暮らしていてもそれらは高まり、大人になる頃には最上級悪魔の候補となっているだろう。だが、将来よりも今強くなりたい、それがお前の望みだな?」

「ええ。負けたくないもの」

アザゼルの問いにリアスは力強く頷き、それを見たアザゼルはリアスのトレーニングメニューが記された紙を渡すが、リアスはその内容を見て首を傾げた。

「・・・これって、特別凄いトレーニングとは思えないのだけれど?」

「そりゃそうだ。基本的な基本的なトレーニング方法だからな。お前はそれで良いんだ。全てが総合的にまとまっているから基本的な練習だけで力が高められる」

「要するにキングとしての自覚を上げさせる特訓ですね?これは」

リアスの特訓メニューを見た闇慈が右手を顎に置きながら言うとアザゼルはそれを肯定する。内容は歴代のゲームにおける戦闘データや記録ファイルの情報を頭に叩き込むものだった。これによりゲーム内における戦況分析力を上げようと言うものらしい。

「次に朱乃」

「・・・はい」

朱乃は相変わらず不機嫌な様子だった。
闇慈は一誠から朱乃の父親は堕天使『バラキエル』そして母親は人間だったようだが、父親のせいで朱乃の母親は死ぬ事になったらしく、今では堕天使の力を忌み嫌うようになったと言うことを聞かされたみたいだ。
ましてや父が総督アザゼルの部下であるから、それ絡みでアザゼルを嫌うのももっとだった。

「お前は自分の中に流れる血を受け入れろ」

「っ!?」

流石の朱乃もストレートに言われたせいか顔をしかめる。

「お前のフェニックス家との一戦も、記録した映像で見せてもらったぜ。何だありゃ。本来のお前のスペックなら、敵のクイーンを苦もなく打倒出来た筈だ。何故、堕天使の力を振るわなかった?雷だけでは限界がある。光を雷に乗せ、『雷光』にしなければお前の本当の力は発揮出来ない」

(朱乃さんは堕天使の血を引いているから『光』の力を操ることも出来る。そして『光』は『雷』にも良く合うはず、それは悪魔にとっては効果抜群だ)

闇慈は朱乃の力を一人で解析している間に話を進めようとするが朱乃は顔をしかめる。

「・・・私は、あの様な力に頼らなくても」

「否定するな。自分を認めないでどうする?最後に頼れるのは己の体だけだぞ?ツラくとも苦しくとも自分を全て受け入れろ。お前の弱さはお前自身だ。決戦日までにそれを乗り越えてみせろ。じゃなければ、お前は今後の戦闘で邪魔になる。『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろよ」

アザゼルの言葉に朱乃は応えられなかった。その後もアザゼルは各トレーニングメニューを告げて行った。

祐斗はバランス・ブレイカーの維持時間向上と祐斗の師匠から剣術の復習と新たな技の習得。

ゼノヴィアはデュランダルに慣れることともう一つの聖剣を操れるようになる特訓。

ギャスパーはとにかく恐怖心を克服するためのプログラム。

アーシアはセイクリッド・ギアの回復範囲と回復力の向上。そして身体と魔力の増加。

「次は小猫」

「・・・はい」

小猫はこの日、何故か気合いの入った様子でいた。闇慈は張り切りすぎて怪我をしないかと少し心配気味になっていた。

「お前は申し分ない程、オフェンス、ディフェンス。ルークとしての素養を持っている。身体能力も問題ない。だが、リアスの眷属にはルークのお前よりもオフェンスが上の奴が多い」

「・・・分かっています」

ハッキリ言うアザゼルの言葉に小猫は悔しそうな表情を浮かべていた

「リアスの『眷属』でトップのオフェンスは木場とゼノヴィア。禁手の聖魔剣、聖剣デュランダル。まあ凶悪な武器が有していやがるからな。まあ『部員』で言うならばアンジがトップだけどな。ここで禁手のイッセーが入ると・・・」

「僕の場合は『助っ人』ですからね」

アザゼルの言う通り、闇慈、祐斗、ゼノヴィアのパワーはこの中でもズバ抜けている。祐斗は『ソード・オブ・ビトレイヤー』。ゼノヴィアは『デュランダル』。闇慈は『デスサイズ・ヘル』と強力な力を有している。

「小猫、お前も他の連中同様、基礎の向上をしておけ。その上で、お前が自ら封じているものを晒け出せ。朱乃と同じだ。自分を受け入れなければ大きな成長なんて出来やしねぇのさ」

「・・・」

アザゼルの言葉に小猫は一気に消失してしまった。
闇慈はアザゼルが昨日聞かせてくれた『事実』を思い出し『封じた力』と言うのは猫又の力だと言う事はすぐに気付いた。確かに猫又の力を発揮すれば力は格段に上がるはずだった。しかし小猫は今までそんなことをだそうともしなかった。

(小猫ちゃん・・・君は『過去』に何があったんだ?)

闇慈がそう思っていると一誠は元気付けようと小猫の頭を撫でようとしたが闇慈が止める。

「何するだよ!?アンジ」

「今小猫ちゃんを慰めても良い事はない。今はそっとしておこう」

闇慈は小猫に聞こえないように小さく呟くと一誠も分かってくれたのか、その手を引っ込める。

「さて、最後はイッセーとアンジだ。お前らは・・・ちょっと待ってろ。そろそろなんだが・・・」

空を見上げたアザゼル。一誠はそれに釣られるが、闇慈は何か強大な力を感じ取り、空を見上げると・・・

「ドラゴン!?」

「そうだ、イッセー。こいつはドラゴンだ」

「アザゼル、よくもまあ悪魔の領土に堂々と入れたものだな」

「ハッ、ちゃんと魔王様直々の許可を貰って堂々と入国したぜ?文句でもあるのか、タンニーン」

それを聞いた闇慈がアザゼルに問いかける。

「アザゼル先生。まさかとは思いますけど・・・このドラゴンが僕達の?」

「あぁ。こいつがお前らの先生だ」

「「ええええええええっ!?」」

「ドラゴンとの修業は昔から実戦方式だ。目一杯鍛えてもらえ」

「そんなぁぁぁ・・・俺のハーレムの夢がぁぁぁ」

一誠はその時点で涙目になっていたが、闇慈はタンニーンに近づき・・・

「ドラゴンと戦うことが出来るなんて・・・僕はこれでもっと強くなれますか?」

「それはお前次第だ、黒衣の死神よ。安心しろ、手加減はしてやる」

「・・・いえ。僕の時は全力で掛かってきて下さい!!」

「貴様、正気か!?六龍王の一角、[魔龍聖]『ブレイズ・ミーティア・ドラゴン』であったこの『タンニーン』に全力で来いと言っているのか!?貴様、下手をしたら死ぬ事になるぞ!!」

「死との境地でしか見えないものがある・・・そしてそこには僕を強くする『何か』があると思うんです!!だからお願いします!!」

「・・・」

闇慈の曇りのない眼をじっとタンニーンは見ると・・・

「分かった。お前のその覚悟、気に入った!!」

「ありがとうございます!!」

「しかし。本当に危険とみなした時は我も加減をするぞ?」

「はい!!」

「話は纏まったみてえだな?じゃあ頑張れよ?」

「イッセー、気張りなさい!」

「部長―――!!!」

タンニーンは一誠と闇慈をムズッと手でそれぞれ掴むと山の中に飛んで行った。
果たして闇慈と一誠は無事に戻ること出来るのだろうか?
 
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